【解決手段】本発明のESD保護回路は、バイアス電圧を内部ノードに出力するバイアス回路と、内部ノードの電圧が、バイアス電圧なのか、ESD電圧なのかを検出して検出信号を出力する電圧検出回路と、検出信号を反転して検出信号の反転信号を出力するインバータと、検出信号の反転信号に応じて、内部ノードの電圧がESD電圧であることが検出された場合に、ESD電流を内部ノードからグランドノードに流して内部ノードの電圧をクランプするクランプ回路と、差動信号対の外部接続端子に印加されるプラス極性のESD電流を内部ノードに流す保護ダイオードと、差動信号対の外部接続端子に印加されるマイナス極性のESD電流をグランド端子から差動信号ノードに流す逆方向ダイオードと、を備える。
前記バイアス回路は、前記差動信号対に対応する2本の差動信号ノードの間に直列に接続された2つの抵抗素子を備え、前記2つの抵抗素子の間から前記第1の内部ノードに前記バイアス電圧が出力され、
前記第1の電圧検出回路は、前記第1の内部ノードと前記グランドノードとの間に直列に接続された第1の抵抗素子および第1の容量素子を備え、前記第1の抵抗素子と前記第1の容量素子との間から前記第2の内部ノードに前記第1の検出信号が出力され、
前記第1のインバータは、前記第1の内部ノードと前記グランドノードとの間に直列に接続された第1のP型MOSトランジスタおよび第1のN型MOSトランジスタを備え、前記第1のP型MOSトランジスタおよび前記第1のN型MOSトランジスタのゲートに前記第1の検出信号が入力され、前記第1のP型MOSトランジスタと前記第1のN型MOSトランジスタとの間から前記第3の内部ノードに前記第1の検出信号の反転信号が出力され、
前記第1のクランプ回路は、前記第1の内部ノードと前記グランドノードとの間に接続された第3のN型MOSトランジスタを備え、前記第3のN型MOSトランジスタのゲートに前記第1の検出信号の反転信号が入力され、
前記第1の保護ダイオードは、前記差動信号対の一方に対応する差動信号ノードから前記第1の内部ノードへ向かって順方向に接続された第1のダイオードと、前記差動信号対の他方に対応する差動信号ノードから前記第1の内部ノードへ向かって順方向に接続された第2のダイオードと、を備え、
前記逆方向ダイオードは、前記グランドノードから前記差動信号対の一方に対応する差動信号ノードへ向かって順方向に接続された第3のダイオードと、前記グランドノードから前記差動信号対の他方に対応する差動信号ノードへ向かって順方向に接続された第4のダイオードと、を備える、請求項1に記載のESD保護回路。
前記第2の電圧検出回路は、前記電源ノードと前記グランドノードとの間に直列に接続された第2の抵抗素子および第2の容量素子を備え、前記第2の抵抗素子と前記第2の容量素子との間から前記第4の内部ノードに前記第2の検出信号が出力され、
前記第2のインバータは、前記電源ノードと前記グランドノードとの間に直列に接続された第2のP型MOSトランジスタおよび第2のN型MOSトランジスタを備え、前記第2のP型MOSトランジスタおよび前記第2のN型MOSトランジスタのゲートに前記第2の検出信号が入力され、前記第2のP型MOSトランジスタと前記第2のN型MOSトランジスタとの間から前記第5の内部ノードに前記第2の検出信号の反転信号が出力され、
前記第2のクランプ回路は、前記電源ノードと前記グランドノードとの間に接続された第4のN型MOSトランジスタを備え、前記第4のN型MOSトランジスタのゲートに前記第2の検出信号の反転信号が入力され、
前記第2の保護ダイオードは、前記グランドノードから前記電源ノードへ向かって順方向に接続された第5のダイオードを備える、請求項4に記載のESD保護回路。
前記バイアス回路は、前記バイアス電圧として、前記差動信号対のコモンモード電圧を前記第1の内部ノードに出力する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のESD保護回路。
前記バイアス回路は、前記第1の内部ノードの代わりに、前記第2の内部ノードに前記バイアス電圧を出力する、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のESD保護回路。
前記差動信号対の一方の最大電位は前記電源電圧以下、前記差動信号対の他方の最小電位は前記グランド電圧以上であり、前記差動信号対の動作電圧範囲は、前記電源電圧と前記グランド電圧との間の電圧範囲である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載のESD保護回路。
【背景技術】
【0002】
ESD保護回路は、ICを静電破壊から守る役割を担っている。そのため、ESD保護回路は、ICを製品ボードに実装する工程に必須の重要な技術であり、ほぼ全てのIC製品に搭載されている。
【0003】
ESD保護回路の試験には、コンポーネントレベルESD試験およびシステムレベルESD試験がある。
【0004】
コンポーネントレベルESD試験は、HBM(人体モデル)およびCDM(帯電デバイスモデル)等のように、IC等のコンポーネント単体で行われるESD試験である。
コンポーネントレベルESD試験は、電源が印加されていない状態(非通電状態)でコンポーネントのESD試験が行われる。つまり、コンポーネントレベルESD試験は、ESD電流のパルス(ESDパルス)が、通常動作していない状態のコンポーネントに印加されることを想定している。
また、例えばHBM試験では、ESD電流を逃がすための外部接続端子として、コンポーネントの電源端子を基準(以下、電源基準ともいう)としてESDパルスを印加する場合、および、コンポーネントのグランド端子を基準(以下、グランド基準ともいう)としてESDパルスを印加する場合の2つが存在する。
【0005】
システムレベルESD試験は、IC等のコンポーネントがボード上に組み込まれたシステムで行われるESD試験である。
システムレベルESD試験には、電源が印加された状態(通電状態)で行われるPowered ESD試験、および、電源が印加されていない状態(非通電状態)で行われるUnpowered ESD試験がある。つまり、システムレベルESD試験は、ESDパルスが、電源が印加されて通常動作している状態のシステム、および、電源が印加されていない状態のシステムの両方に印加されることを想定している。
また、システムレベルESD試験では、ESDパルスが印加される場合の基準は常に、システムのグランド端子である。つまり、グランド基準でESDパルスが印加される。
【0006】
図13は、システムレベルESD試験で使用されるシステムの構成を表す一例の概念図である。
図13に示すシステム90においては、2つのIC92,94が差動信号線対96,98を介して互いに接続されている。2つのノイズフィルタ100,102の各々が差動信号線対96,98の各々に挿入され、外付けの2つのESD保護素子104,106の各々が差動信号線対96,98の各々とグランドとの間に接続されている。また、2つのIC92,94の各々の内部において、差動信号線対96,98の各々とグランドとの間にESD保護回路108,110の各々が接続されている(IC92については図示せず)。
【0007】
システムレベルESD試験では、ESDガン(ESDGUN)等のESD発生器を用いて差動信号線対96,98の各々の上の印加ポイント112,114の各々にESDパルスが印加される。
Powered ESD試験では、電源が印加された状態で、IC92,94間での信号の通信中に、ESDガンを用いてESDパルスが印加ポイント112,114の各々に印加される。ESDパルスの印加中は通信ができなくてもよいが、印加終了後に復帰して通信ができることが求められる。
Unpowered ESD試験では、電源が印加されていない状態で、同様にESDガンを用いてESDパルスが印加ポイント112,114の各々に印加される。その後、電源を印加した場合に、正常に通信ができることが求められる。
【0008】
【表1】
【0009】
図14は、ESD試験の場合に印加されるESDパルスを表す一例のグラフである。
図14のグラフの縦軸は電流値I、横軸は時間tを表す。
システムレベルESD試験において、例えば印加電圧が8kVの場合、
図14のグラフおよび表1に示すように、ESDガンを用いて印加されるESDパルスの電流値の最初のピークIpeakは約30Aである。続いて、ESDパルスは、そこから一旦低下した後に再び上昇して、30ns後のESDパルスの電流値の2つ目のピークI(30ns)は約16Aである。続いて、ESDパルスは、そこから次第に低下し、60ns後のESDパルスの電流値I(60ns)は約8Aとなる。
HBM試験において、例えば印加電圧が2kVの場合、同様に
図14のグラフおよび表1に示すように、ESDパルスの電流値のピークIpeakは1.20−1.47Aであり、ESDパルスは、そこから次第に低下する。また、印加電圧が8kVの場合、ESDパルスの電流値のピークは4.80−5.87Aであり、ESDパルスは、同様に、そこから次第に低下する。
【0010】
このように、システムレベルESD試験において、ESDガンを用いて印加されるESDパルスの電流値は、コンポーネントレベルESD試験において印加されるESDパルスの電流値よりも極めて大きく、外付けのESD保護素子があっても、かなりの残留電流がICへ突入する。従って、ICが破壊されないようにするためには、ESDガンを用いて印加されるESDパルスに対して十分低い電圧でクランプできるESD保護回路が必要である。
【0011】
ESD保護回路は、例えば車載分野の電子機器においても、各種の試験項目のうちの1つとして明記されており、その重要性は増している。通常の技術分野であれば、コンポーネントレベルESD試験に合格すれば、ICとしてのESD耐性は十分である。しかし、車載分野等の特殊な技術分野では、コンポーネントレベルESD試験に加え、システムレベルESD試験およびノイズイミュニティ試験の両方に対応する必要がある。
【0012】
ノイズイミュニティ試験は、信号の通信中にノイズを印加して、ESD保護回路のノイズに対する耐性を評価する試験である。
ノイズイミュニティ試験は、例えば
図13のシステム90において、電源が印加された状態で、IC92,94間で信号の通信中に、ノイズが差動信号線対96,98に印加される。ノイズイミュニティ試験中は、ESD保護回路108,110が保護動作をせず、正常に通信ができることが求められる。
【0013】
ここで、本発明に関連する先行技術文献としては、特許文献1〜7等がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図15は、ESD保護回路のIV(電流−電圧)特性を表す一例のグラフである。
図15のグラフの縦軸は電流値I、横軸は電圧値Vを表す。
図15のグラフに示すように、ESD保護回路は、ESDイベントの発生時において、ESD電圧が、ターンオン電圧に到達するとターンオンして、ESD電流を逃がす。システムレベルESD試験において、コンポーネントレベルESD試験の場合よりも極めて大きいレベルのESD電流が印加された場合でも、ESDパルスの印加後にシステムが正常復帰することが求められる。
【0016】
図16は、ノイズが印加された信号波形を表す一例のグラフである。
図16のグラフの縦軸は電圧値V、横軸は時間tを表す。
図16のグラフに示すように、ノイズイミュニティ試験では、信号波形にノイズが印加される。この場合でも、システムは、通常通り動作し続けることが求められる。
【0017】
このように、ESD保護回路は、ESDイベントの発生時には保護動作をする一方、ノイズイミュニティ試験時には保護動作をせず、ICの通常の動作を妨げないようにしなければならない。
【0018】
図17は、
図15に示すESD保護回路のIV特性のグラフの上に、
図16に示すノイズが印加された信号波形のグラフを重ねて表示した概念図である。
図17に示すように、ESD保護回路のターンオン電圧は、ノイズに反応しないように、ノイズが印加された信号波形の最大電位よりも高い電圧に設定する必要がある。
しかし、マージンをとってESD保護回路のターンオン電圧を高く設定し過ぎると、ノイズに反応するリスクは低下するが、クランプ電圧が高くなるため、ESD保護回路としての能力は低下する。
このように、ノイズに対する耐性、および、ESDパルスに対する耐性は相反する要求であるから、適切なターンオン電圧を設定する必要がある。
【0019】
図18は、従来のESD保護回路の構成を表す一例の回路図である。
図18に示すESD保護回路120は、アクティブクランプ型のものであり、電圧検出回路130と、インバータ132と、クランプ回路134と、保護ダイオード136と、を備えている。
電圧検出回路130は、抵抗素子144および容量素子146を有し、インバータ132は、PMOS(P型MOSトランジスタ)148およびNMOS(N型MOSトランジスタ)150を有し、クランプ回路134は、通常のNMOSと比べて非常に大きいサイズのNMOS152を有し、保護ダイオード136は、ダイオード154,156を有する。
【0020】
ESD保護回路120では、通常動作時において、電源電圧VDDが電源ノードに供給されている場合、容量素子146は電源電圧VDDに充電されている。そのため、電圧検出回路130の抵抗素子144と容量素子146との間から出力される検出信号はハイレベル、PMOS148およびNMOS150は、それぞれ、オフ状態およびオン状態であり、インバータ132から出力される検出信号の反転信号はローレベル、クランプ回路134のNMOS152はオフ状態である。
従って、ESD保護回路120は、通常動作時には、電源電圧VDDで動作する内部回路の動作に何ら影響しない。
【0021】
一方、ESDイベントの発生時において、ESDパルスが信号入力端子Sigに印加されると、ESD電流はダイオード154を介して電源ノードへ流れ、電源ノードの電圧が急峻に立ち上がるが、検出信号は、電圧検出回路130のローパスフィルタの作用によって電源ノードよりも緩やかに立ち上がる。そのため、検出信号は、抵抗素子144を介して容量素子146がESD電圧に充電されるまでの間、つまり、電圧検出回路130の抵抗素子144の抵抗値Rおよび容量素子146の容量値Cによる時定数RCに相当する時間、ローレベル、検出信号の反転信号はハイレベルになり、NMOS152がターンオンする。
従って、ESDイベントの発生時には、
図18に破線で示すように、信号入力端子Sigに印加されたESD電流が、ダイオード154、電源ノードおよびNMOS152を介してグランドノードに流れ、電源ノードの電圧がクランプされることにより、内部回路を保護することができる。
【0022】
しかし、
図18に示す従来のESD保護回路120の場合、保護動作時の印加ノイズがそのまま電源ノードを通過し、その電位に影響する。そのため、電源電圧VDDで動作する内部回路全体の動作に影響を与えるという欠点がある。
例えば、フリップフロップ等の保持回路を有する回路が含まれていれば、Powered ESD試験において、ESDパルスが印加された場合に、フリップフロップ等の保持回路のデータが破壊され、印加終了後に復帰することができず、正常な通信を行うことができない。
【0023】
従来のESD保護回路としては、他にもサイリスタなどが一般的に用いられているが、サイリスタは寄生バイポーラトランジスタで作られるため、そのターンオン電圧の調整には製造プロセスの変更が必要であり、調整が難しいという欠点がある。
【0024】
従って、車載分野等の電子機器で用いられるESD保護回路に求められる要件は、以下の(1)〜(3)の通りである。
(1)コンポーネントレベルESD試験において、電源基準およびグランド基準で放電経路を確保できる。
(2)システムレベルESD試験において、電源ノードを経由しない放電経路を確保できる。
(3)ノイズイミュニティ試験において、ノイズに反応して保護動作をしない。
また、ESD保護回路は、通常の製造プロセスを用いて製造することができ、コストの上昇を避けるために、小規模でコンパクトな回路であることが望ましい。
【0025】
従って、本発明の目的は、コンポーネントレベルESD試験に加え、システムレベルESD試験およびノイズイミュニティ試験にも対応することができるESD保護回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するために、本発明は、ESDイベントの発生時のESD電流およびESD電圧によってICの内部回路が破壊されるのを保護するESD保護回路であって、
第1の保護回路を備え、前記第1の保護回路は、
電源電圧とグランド電圧との中間電圧であるバイアス電圧を生成して第1の内部ノードに出力するバイアス回路と、
前記第1の内部ノードの電圧が、前記バイアス電圧なのか、前記ESD電圧なのかを検出して第1の検出信号を第2の内部ノードに出力する第1の電圧検出回路と、
前記第1の内部ノードの電圧と前記グランド電圧との間の電圧範囲で動作し、前記第1の検出信号を反転して前記第1の検出信号の反転信号を第3の内部ノードに出力する第1のインバータと、
前記第1の検出信号の反転信号に応じて、前記第1の内部ノードの電圧が前記ESD電圧であることが検出された場合に、前記ESD電流を前記第1の内部ノードからグランドノードに流して前記第1の内部ノードの電圧をクランプする第1のクランプ回路と、
前記ESDイベントの発生時において、差動信号対の外部接続端子の各々に印加されるプラス極性の前記ESD電流を前記差動信号対の外部接続端子の各々から前記第1の内部ノードに流す第1の保護ダイオードと、
前記ESDイベントの発生時において、前記差動信号対の外部接続端子の各々に印加されるマイナス極性のESD電流をグランド端子から前記差動信号対に対応する差動信号ノードの各々に流す逆方向ダイオードと、を備える、ESD保護回路を提供する。
【0027】
ここで、前記バイアス回路は、前記差動信号対に対応する2本の差動信号ノードの間に直列に接続された2つの抵抗素子を備え、前記2つの抵抗素子の間から前記第1の内部ノードに前記バイアス電圧が出力され、
前記第1の電圧検出回路は、前記第1の内部ノードと前記グランドノードとの間に直列に接続された第1の抵抗素子および第1の容量素子を備え、前記第1の抵抗素子と前記第1の容量素子との間から前記第2の内部ノードに前記第1の検出信号が出力され、
前記第1のインバータは、前記第1の内部ノードと前記グランドノードとの間に直列に接続された第1のP型MOSトランジスタおよび第1のN型MOSトランジスタを備え、前記第1のP型MOSトランジスタおよび前記第1のN型MOSトランジスタのゲートに前記第1の検出信号が入力され、前記第1のP型MOSトランジスタと前記第1のN型MOSトランジスタとの間から前記第3の内部ノードに前記第1の検出信号の反転信号が出力され、
前記第1のクランプ回路は、前記第1の内部ノードと前記グランドノードとの間に接続された第3のN型MOSトランジスタを備え、前記第3のN型MOSトランジスタのゲートに前記第1の検出信号の反転信号が入力され、
前記第1の保護ダイオードは、前記差動信号対の一方に対応する差動信号ノードから前記第1の内部ノードへ向かって順方向に接続された第1のダイオードと、前記差動信号対の他方に対応する差動信号ノードから前記第1の内部ノードへ向かって順方向に接続された第2のダイオードと、を備え、
前記逆方向ダイオードは、前記グランドノードから前記差動信号対の一方に対応する差動信号ノードへ向かって順方向に接続された第3のダイオードと、前記グランドノードから前記差動信号対の他方に対応する差動信号ノードへ向かって順方向に接続された第4のダイオードと、を備えることが好ましい。
【0028】
また、前記第1の容量素子は、MOSのゲート容量であることが好ましい。
【0029】
さらに、第2の保護回路を備え、前記第2の保護回路は、
電源ノードの電圧が、前記電源電圧なのか、前記ESD電圧なのかを検出して第2の検出信号を第4の内部ノードに出力する第2の電圧検出回路と、
前記電源電圧と前記グランド電圧との間の電圧範囲で動作し、前記第2の検出信号を反転して前記第2の検出信号の反転信号を第5の内部ノードに出力する第2のインバータと、
前記第2の検出信号の反転信号に応じて、前記電源ノードの電圧が前記ESD電圧であることが検出された場合に、前記ESD電流を前記電源ノードから前記グランドノードに流して前記電源ノードの電圧をクランプする第2のクランプ回路と、
前記ESDイベントの発生時において、電源端子に印加されるマイナス極性のESD電流を前記グランド端子から前記電源ノードに流す第2の保護ダイオードと、を備えることが好ましい。
【0030】
また、前記第2の電圧検出回路は、前記電源ノードと前記グランドノードとの間に直列に接続された第2の抵抗素子および第2の容量素子を備え、前記第2の抵抗素子と前記第2の容量素子との間から前記第4の内部ノードに前記第2の検出信号が出力され、
前記第2のインバータは、前記電源ノードと前記グランドノードとの間に直列に接続された第2のP型MOSトランジスタおよび第2のN型MOSトランジスタを備え、前記第2のP型MOSトランジスタおよび前記第2のN型MOSトランジスタのゲートに前記第2の検出信号が入力され、前記第2のP型MOSトランジスタと前記第2のN型MOSトランジスタとの間から前記第5の内部ノードに前記第2の検出信号の反転信号が出力され、
前記第2のクランプ回路は、前記電源ノードと前記グランドノードとの間に接続された第4のN型MOSトランジスタを備え、前記第4のN型MOSトランジスタのゲートに前記第2の検出信号の反転信号が入力され、
前記第2の保護ダイオードは、前記グランドノードから前記電源ノードへ向かって順方向に接続された第5のダイオードを備えることが好ましい。
【0031】
また、前記第2の容量素子は、MOSのゲート容量であることが好ましい。
【0032】
また、前記バイアス回路は、前記バイアス電圧として、前記差動信号対のコモンモード電圧を前記第1の内部ノードに出力することが好ましい。
【0033】
また、前記バイアス回路は、前記第1の内部ノードの代わりに、前記第2の内部ノードに前記バイアス電圧を出力することが好ましい。
【0034】
また、前記差動信号対の一方の最大電位は前記電源電圧以下、前記差動信号対の他方の最小電位は前記グランド電圧以上であり、前記差動信号対の動作電圧範囲は、前記電源電圧と前記グランド電圧との間の電圧範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明のESD保護回路は、コンポーネントレベルESD試験に加え、システムレベルESD試験およびノイズイミュニティ試験にも対応することができるため、車載分野等の特殊な分野で使用される電子機器においても適用可能である。また、本発明は、通常の製造プロセスを用いて製造することができ、小規模でコンパクトな回路であるため、コストの上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のESD保護回路を詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明のESD保護回路の構成を表す一実施形態の回路図である。
図1に示すESD保護回路10は、ESDイベントの発生時の過電流(ESD電流)および過電圧(ESD電圧)によってICの内部回路が破壊されるのを保護するものであり、第1の保護回路12と、第2の保護回路14と、を備えている。
【0039】
なお、
図1には、ESD保護回路10によって保護される被保護回路である内部回路の一例として、電源電圧VDDとグランド電圧VSSとの間の電圧範囲で動作する差動回路16が表示されている。
差動回路16は、送信バッファ16Aおよび受信バッファ16Bを備え、送信バッファ16Aのプラス側およびマイナス側の出力端子の各々は、差動信号対SigP, SigNの各々に対応する差動信号ノードに接続されている。また、差動信号対SigP, SigNの各々に対応する差動信号ノードは、受信バッファ16Bのプラス側およびマイナス側の入力端子の各々に接続されている。
差動信号対SigP, SigNの各々の最大電位は電源電圧VDD以下、その最小電位はグランド電圧VSS以上であり、差動信号対SigP, SigNの動作電圧範囲は、電源電圧VDDとグランド電圧VSSとの間の任意の電圧範囲である。
【0040】
第1の保護回路12は、バイアス回路18と、第1の電圧検出回路20と、第1のインバータ22と、第1のクランプ回路24と、第1の保護ダイオード26と、逆方向ダイオード28と、を備えている。
【0041】
バイアス回路18は、電源電圧VDDとグランド電圧VSSとの間の任意の電圧(中間電圧)であるバイアス電圧を生成して第1の内部ノードに出力するものであり、2つの抵抗素子30,32を備えている。抵抗素子30,32は、差動信号対SigP, SigNに対応する2本の差動信号ノードの間に直列に接続され、2つの抵抗素子30,32の間から第1の内部ノードn1にバイアス電圧が出力される。
本実施形態の場合、抵抗素子30,32の抵抗値は同じであり、抵抗素子30,32の間から、バイアス電圧として、一方の差動信号SigPの電圧と他方の差動信号SigNの電圧との1/2の電圧を有する、差動信号対SigP, SigNのコモンモード電圧Vcmが第1の内部ノードn1に出力される。
【0042】
第1の電圧検出回路20は、第1の内部ノードn1の電圧が、通常動作時のバイアス電圧なのか、ESDイベントの発生時の過電圧(ESD電圧)なのかを検出して第1の検出信号を第2の内部ノードn2に出力するものであり、第1の抵抗素子34と、第1の容量素子36と、を備えている。第1の抵抗素子34および第1の容量素子36は、第1の内部ノードn1とグランドノードとの間に直列に接続されている。第1の抵抗素子34と第1の容量素子36との間から、その出力信号である第1の検出信号が第2の内部ノードn2に出力される。
本実施形態の場合、第1の容量素子36は、MOSのゲート容量、具体的にはソースおよびドレインがグランドノードに接続されたNMOSのゲート容量であるが、これに限らず、他の各種の容量素子を使用してもよい。
【0043】
第1のインバータ22は、第1の内部ノードn1の電圧とグランド電圧との間の電圧範囲で動作し、第1の検出信号を反転してその反転信号を第3の内部ノードn3に出力するものであり、第1のPMOS38と、第1のNMOS40と、を備えている。第1のPMOS38および第1のNMOS40は、第1の内部ノードn1とグランドノードとの間に直列に接続され、そのゲートには、第1の検出信号が入力される。第1のPMOS38と第1のNMOS40との間から、その出力信号である第1の検出信号の反転信号が第3の内部ノードn3に出力される。
【0044】
第1のクランプ回路24は、第1の検出信号の反転信号に応じて、第1の内部ノードn1の電圧がESD電圧であることが検出された場合に、ESD電流を第1の内部ノードn1からグランドノードに流して第1の内部ノードn1の電圧をクランプするものであり、通常のNMOSと比べて非常に大きいサイズの第3のNMOS42を備えている。第3のNMOS42は、第1の内部ノードn1とグランドノードとの間に接続され、そのゲートには、第1の検出信号の反転信号が入力される。
【0045】
第1の保護ダイオード26は、ESDイベントの発生時において、差動信号対SigP, SigNの外部接続端子の各々に印加されるプラス極性のESD電流を差動信号対SigP, SigNの外部接続端子の各々から第1の内部ノードn1に流すものであり、第1のダイオード44と、第2のダイオード46と、を備えている。第1のダイオード44は、一方の差動信号SigPに対応する差動信号ノードから第1の内部ノードn1へ向かって順方向に接続され、第2のダイオード46は、他方の差動信号SigNに対応する差動信号ノードから第1の内部ノードn1へ向かって順方向に接続されている。
【0046】
逆方向ダイオード28は、ESDイベントの発生時において、差動信号対SigP, SigN1の外部接続端子の各々に印加されるマイナス極性のESD電流をグランド端子から差動信号対SigP, SigNに対応する差動信号ノードの各々に流すものであり、第3のダイオード48と、第4のダイオード50と、を備えている。第3のダイオード48は、グランドノードから一方の差動信号SigPに対応する差動信号ノードへ向かって順方向に接続され、第4のダイオード50は、グランドノードから他方の差動信号SigNに対応する差動信号ノードへ向かって順方向に接続されている。
【0047】
第2の保護回路14は、アクティブクランプ型のものであり、第2の電圧検出回路60と、第2のインバータ62と、第2のクランプ回路64と、第2の保護ダイオード66と、を備えている。
【0048】
第2の電圧検出回路60は、電源ノードの電圧が、通常動作時の電源電圧VDDなのか、ESDイベントの発生時の過電圧(ESD電圧)なのかを検出して第2の検出信号を第4の内部ノードに出力するものであり、第2の抵抗素子74と、第2の容量素子76と、を備えている。第2の抵抗素子74および第2の容量素子76は、電源ノードとグランドノードとの間に直列に接続されている。第2の抵抗素子74と第2の容量素子76との間から、その出力信号である第2の検出信号が第4の内部ノードn4に出力される。
本実施形態の場合、第2の容量素子76は、MOSのゲート容量、具体的にはソースおよびドレインがグランドノードに接続されたNMOSのゲート容量であるが、他の各種の容量素子を使用してもよい。
【0049】
第2のインバータ62は、電源電圧VDDとグランド電圧VSSとの間の電圧範囲で動作し、第2の検出信号を反転してその反転信号を第5の内部ノードn5に出力するものであり、第2のPMOS78と、第2のNMOS80と、を備えている。第2のPMOS78および第2のNMOS80は、電源ノードとグランドノードとの間に直列に接続され、そのゲートには、第2の検出信号が入力される。第2のPMOS78と第2のNMOS80との間から、その出力信号である第2の検出信号の反転信号が第5の内部ノードn5に出力される。
【0050】
第2のクランプ回路64は、第2の検出信号の反転信号に応じて、電源ノードの電圧がESD電圧であることが検出された場合に、ESD電流を電源ノードからグランドノードに流して電源ノードの電圧をクランプするものであり、通常のNMOSと比べて非常に大きいサイズの第4のNMOS82を備えている。第4のNMOS82は、電源ノードとグランドノードとの間に接続され、そのゲートには、第2の検出信号の反転信号が入力される。
【0051】
第2の保護ダイオード66は、ESDイベントの発生時において、電源端子に印加されるマイナス極性のESD電流をグランド端子から電源ノードに流すものであり、第5のダイオード84を備えている。第5のダイオード84は、グランドノードから電源ノードに向かって順方向に接続されている。
第2の保護ダイオード66は、第2のクランプ回路64の第4のNMOS82の寄生ダイオードを利用してもよいし、あるいは第4のNMOS82とは別にダイオードを設けてもよい。
【0052】
次に、ESD保護回路10の動作を説明する。
以下、代表的に差動信号SigPについて説明するものとする。
【0053】
まず、通常動作時のESD保護回路10の動作を説明する。
この場合、ESD保護回路10が保護動作をしない、つまり、内部回路の動作に何も影響を及ぼさないことが求められる。
【0054】
通常動作時において、電源電圧VDDは3.3V、グランド電圧VSSは0Vであるとする。また、差動信号対SigP, SigNの動作電圧範囲(最低電位〜最高電位)は0V〜3Vであり、そのコモンモード電圧Vcmは1.5Vであるとする。第1のダイオード44、第2のダイオード46、第3のダイオード48、第4のダイオード50、および第5のダイオード84のターンオン電圧Vth_dioは1Vであるとする。
【0055】
第1の保護回路12において、第1の内部ノードn1の電圧は、常にコモンモード電圧Vcmの1.5Vである。第1の電圧検出回路20の第1の容量素子36は、コモンモード電圧Vcmの1.5Vに充電されて、第1の検出信号の電圧Vrcも1.5Vである。
この場合、第1のインバータ22の入力信号の論理レベルはハイレベル、その出力信号の論理レベルはローレベルであり、第1のクランプ回路24の第3のNMOS42はオフ状態である。
また、グランド電圧VSSは0Vであり、差動信号SigPの動作電圧範囲は、0V〜3Vであるから、逆方向ダイオード28の第3のダイオード48もオフ状態である。
従って、通常動作時において、第1の保護回路12は保護動作をせず、内部回路の動作に何ら影響を及ぼさない。
【0056】
第2の保護回路14において、第2の電圧検出回路60の第2の容量素子76は、電源電圧VDDの3.3Vに充電されて、第2の検出信号の電圧は3.3Vである。
この場合、第2のインバータ62の入力信号の論理レベルはハイレベル、その出力信号の論理レベルはローレベルであり、第2のクランプ回路64の第4のNMOS82はオフ状態である。
また、電源電圧VDDは3.3V、グランド電圧VSSは0Vであるから、第2の保護ダイオード66の第5のダイオード84もオフ状態である。
従って、通常動作時において、第2の保護回路14は保護動作をせず、内部回路の動作に何ら影響を及ぼさない。
【0057】
続いて、ノイズイミュニティ試験時のESD保護回路10の動作を説明する。
この場合も、ESD保護回路10が保護動作をしないことが求められる。
【0058】
ノイズイミュニティ試験において、±1Vのノイズを印加した時の差動信号対SigP, SigNの動作電圧範囲は、
図2に示すように、−0.5V〜3.5Vであるとする。これ以外の条件は、通常動作時の場合と同じであるとする。
【0059】
第1の保護回路12において、ノイズ印加前の第1の内部ノードn1の電圧の初期値は、
図3に示すように、通常動作時と同じコモンモード電圧Vcmの1.5Vであるから、第1の検出信号の電圧Vrcの初期値も1.5Vである。
【0060】
第1の電圧検出回路20は、ローパスフィルタ構造であるため、第1の検出信号の電圧Vrcは、差動信号対SigP, SigNにノイズが印加されて、コモンモード電圧Vcmが変動したとしても追従することができず、一定の期間1.5Vである。従って、ノイズによって第1の内部ノードn1の電圧が、第1の検出信号の電圧Vrcの2倍となる、1.5V×2=3Vまで上昇しない限り、第1のインバータ22の入力信号の論理レベルはハイレベル(High)、その出力信号の論理レベルはローレベル(Low)のままであり、第1のクランプ回路24の第3のNMOS42はオフ状態(OFF)である。
【0061】
差動信号SigP側から見ると、第1のインバータ22の入力信号の論理レベルがローレベル、その出力信号の論理レベルがハイレベルになり、第1のクランプ回路24の第3のNMOS42がターンオンする時の差動信号SigPのプラス側の最小電位Vt1は、式(1)から4Vである。つまり、差動信号SigPのプラス側の最小電位Vt1は、第1のダイオード44のターンオン電圧Vth_dioと、第1の検出信号の電圧Vrcの初期値×2と、を足し合わせることによって決定される。
【0062】
(式1)
差動信号SigPのプラス側の最小電位Vt1
=第1のダイオード44のターンオン電圧Vth_dio+第1の検出信号の電圧Vrcの初期値×2
=1V+1.5V×2
=1V+3V
=4V
【0063】
これに対し、±1Vのノイズを印加した時の差動信号SigPのプラス側の最大電位は、
図2に示すように、3.5Vであるから、第1のクランプ回路24の第3のNMOS42がノイズに反応してターンオンすることはない。
また、グランド電圧VSSは0Vであり、差動信号SigPの動作電圧範囲は、−0.5V〜3.5Vであるから、逆方向ダイオード28の第3のダイオード48はターンオン電圧以下なので、オフ状態である。
従って、ノイズイミュニティ試験時において、第1の保護回路12は、ノイズに反応して保護動作をすることはない。
【0064】
なお、バイアス電圧の初期値の与え方には様々なバリエーションが考えられ、バイアス電圧の初期値を任意の電圧に設定することにより、差動信号SigPのプラス側の最小電位Vt1を自由に設定することができ、任意のノイズ振幅に対応することができる。
例えば、バイアス電圧の初期値を2Vに設定した場合、差動信号SigPのプラス側の最小電位Vt1は、Vt1=1V+2V×2=5Vとなる。
また、第3のダイオード48の段数を増やすことにより、第1のクランプ回路24の第3のNMOS42がターンオンする時の差動信号SigPのマイナス側の最大電位も簡単に調整することができる。
【0065】
続いて、システムレベルESD試験の1つであるPowered ESD試験において、プラス極性のESDパルスが印加される場合のESD保護回路10の動作を説明する。
この場合、ESD保護回路10が保護動作をすることが求められる。
【0066】
Powered ESD試験においては、電源電圧VDDが印加されているため、
図4に示すように、コモンモード電圧Vcmの初期値は1.5V、従って、第1の検出信号の電圧Vrcの初期値も1.5Vであるとする。これ以外の条件は、通常動作時の場合と同じであるとする。
この場合、第1の保護回路12において、第1のインバータ22の入力信号の論理レベルはハイレベル、その出力信号の論理レベルはローレベルであり、第1のクランプ回路24の第3のNMOS42はオフ状態である。
また、逆方向ダイオード28の第3のダイオード48もオフ状態である。
【0067】
ESDガンを用いてプラス極性のESDパルスを差動信号SigPの外部接続端子に印加すると、第1のダイオード44がターンオンし、第1のダイオード44を介してESD電流が第1の内部ノードn1に流れ込んで第1の内部ノードn1の電圧は即座に上昇する。
一方で、第1の電圧検出回路20は、ローパスフィルタ構造であるため、第1の検出信号の電圧Vrcは即座に上昇することができず、上昇するまでには、第1の電圧検出回路20の第1の抵抗素子34の抵抗値Rおよび第1の容量素子36の容量値Cによる時定数RC程度の遅延を要する。時定数RCは、ESDパルスのパルス幅よりも大きく設定されているため、時定数RCの期間、第1のインバータ22の入力信号の論理レベルはローレベル、その出力信号の論理レベルはハイレベルとなり、第1のクランプ回路24の第3のNMOS42はターンオンする。
従って、ESD電流は、
図4に破線で示すように、差動信号SigPの外部接続端子から、第1のダイオード44および第1のクランプ回路24の第3のNMOS42を介してグランドノードに流れ、グランド端子から外部へ逃がすことができる。
【0068】
第1のクランプ回路24の第3のNMOS42がターンオンする時の差動信号SigPのプラス側の最小電位Vt1は、同様に式(1)から4Vである。Powered ESD試験において印加されるESDパルスによって、差動信号SigPの最大電位は4V以上になるため、前述のように第1のクランプ回路24の第3のNMOS42はターンオンし、ESD電流を逃がすことができる。
【0069】
続いて、Powered ESD試験において、マイナス極性のESDパルスが印加される場合のESD保護回路10の動作を説明する。
この場合も、ESD保護回路10が保護動作をすることが求められる。
【0070】
図5に示すように、Powered ESD試験において、コモンモード電圧Vcmの初期値は1.5V、従って、第1の検出信号の電圧Vrcの初期値も1.5Vであるとする。これ以外の条件は、通常動作時の場合と同じであるとする。
この場合、第1の保護回路12において、第1のインバータ22の入力信号の論理レベルはハイレベル、その出力信号の論理レベルはローレベルであり、第1のクランプ回路24の第3のNMOS42はオフ状態である。また、逆方向ダイオードの第3のダイオード48はオフ状態である。
【0071】
ESDガンを用いてマイナス極性のESDパルスを差動信号SigPの外部接続端子に印加すると、第3のダイオード48がターンオンし、ESD電流は、
図5に破線で示すように、グランド端子から、グランドノードおよび第3のダイオード48を介して差動信号SigPに対応する差動信号ノードに流れ、差動信号SigPの外部接続端子から外部へ逃がすことができる。
【0072】
続いて、システムレベルESD試験の1つであるUnpowered ESD試験において、プラス極性のESDパルスが印加される場合のESD保護回路10の動作を説明する。
この場合、ESD保護回路10が保護動作をすることが求められる。
【0073】
Unpowered ESD試験においては、電源電圧VDDが印加されないため、差動信号対SigP, SigNは動作せず、
図6に示すように、コモンモード電圧Vcmの初期値は0V、従って、第1の検出信号の電圧Vrcの初期値も0Vであるとする。これ以外の条件は、通常動作時の場合と同じであるとする。
この場合、第1の保護回路12において、第1のインバータ22の入力信号の論理レベルはローレベルであるが、コモンモード電圧Vcmもローレベルであるため、その出力信号はローレベルであり、第1のクランプ回路24の第3のNMOS42はオフ状態である。
また、逆方向ダイオード28の第3のダイオード48もオフ状態である。
【0074】
なお、Unpowered ESD試験において、プラス極性のESDパルスが差動信号SigPの外部接続端子に印加される場合のESD保護回路10の動作は、Powered ESD試験において、プラス極性のESDパルスが差動信号SigPの外部接続端子に印加される場合の動作と同じである。
つまり、ESD電流は、
図6に破線で示すように、差動信号SigPの外部接続端子から、第1のダイオード44および第1のクランプ回路24の第3のNMOS42を介してグランドノードに流れ、グランド端子から外部へ逃がすことができる。
【0075】
続いて、Unpowered ESD試験において、マイナス極性のESDパルスが印加される場合のESD保護回路10の動作を説明する。
この場合も、ESD保護回路10が保護動作をすることが求められる。
【0076】
図7に示すように、Unpowered ESD試験においても、差動信号対SigP, SigNは動作せず、コモンモード電圧Vcmの初期値は0V、従って、第1の検出信号の電圧Vrcの初期値も0Vであるとする。これ以外の条件は、通常動作時の場合と同じであるとする。
この場合、第1の保護回路12において、第1のインバータ22の入力信号の論理レベルはローレベルであるが、コモンモード電圧Vcmもローレベルであるため、その出力信号はローレベルであり、第1のクランプ回路24の第3のNMOS42はオフ状態である。
また、逆方向ダイオード28の第3のダイオード48もオフ状態である。
【0077】
なお、Unpowered ESD試験において、マイナス極性のESDパルスが差動信号SigPの外部接続端子に印加される場合のESD保護回路10の動作は、Powered ESD試験において、マイナス極性のESDパルスが差動信号SigPの外部接続端子に印加される場合の動作と同じである。
つまり、ESD電流は、
図7に破線で示すように、グランド端子から、グランドノードおよび第3のダイオード48を介して差動信号SigPに対応する差動信号ノードに流れ、差動信号SigPの外部接続端子から外部へ逃がすことができる。
【0078】
このように、ESD保護回路10においては、システムレベルESD試験において、電源ノードを経由しない放電経路を確保できる。ESD電流の放電経路に電源ノードが含まれないため、電源電圧VDD−グランド電圧VSSは変動せず、電源供給を受ける内部回路のフリップフロップ等の保持回路のデータが破壊されることはない。
【0079】
続いて、コンポーネントレベルESD試験の1つであるHBM試験において、電源基準でESDパルスが印加される場合のESD保護回路10の動作を説明する。
この場合、ESD保護回路10が保護動作をすることが求められる。
HBM試験においては、電源電圧VDDが印加されないため、全ての条件は、Unpowered ESD試験の場合と同じであるとする。
【0080】
HBM試験において、電源基準でプラス極性のESDパルスが差動信号SigPの外部接続端子に印加される場合の第1の保護回路12の動作は、Unpowered ESD試験において、プラス極性のESDパルスが差動信号SigPの外部接続端子に印加される場合の第1の保護回路12の動作と同じである。
従って、ESD電流は、
図8に破線で示すように、差動信号SigPの外部接続端子から、第1のダイオード44および第1のクランプ回路24の第3のNMOS42を介してグランドノードに流れる。続いて、ESD電流は、さらに、グランドノードから第5のダイオード84を介して電源ノードに流れ、電源端子から外部へ逃がすことができる。
【0081】
一方、HBM試験において、電源基準でマイナス極性のESDパルスが差動信号SigPの外部接続端子に印加される場合の第1の保護回路12の動作は、Unpowered ESD試験において、マイナス極性のESDパルスが差動信号SigPの外部接続端子に印加される場合の第1の保護回路12の動作と同様である。
【0082】
つまり、HBM試験において、電源基準でマイナス極性のESDパルスが差動信号SigPの外部接続端子に印加されると、第3のダイオード48がターンオンし、グランドノードの電圧は即座に下降する。
一方で、第2の電圧検出回路60は、ローパスフィルタ構造であるため、第2の検出信号の電圧Vrcは即座に上昇することができず、上昇するまでには第2の電圧検出回路60の時定数RC程度の遅延を要する。時定数RCは、ESDパルスのパルス幅よりも大きく設定されているため、時定数RCの期間、第2のインバータ62の入力信号の論理レベルはローレベル、その出力信号の論理レベルはハイレベルとなり、第2のクランプ回路64の第4のNMOS82はターンオンする。
従って、ESD電流は、
図9に破線で示すように、電源端子から、電源ノード、第2のクランプ回路64の第4のNMOS82を介してグランドノードに流れ、続いて第3のダイオード48を介して差動信号SigPに対応する差動信号ノードに流れ、差動信号SigPの外部接続端子から外部へ逃がすことができる。
このように、ESD保護回路10においては、HBM試験において、電源基準でマイナス極性のESDパルスが印加される場合の放電経路も問題なく確保される。
【0083】
続いて、コンポーネントレベルESD試験の1つであるHBM試験において、グランド基準でESDパルスが印加される場合のESD保護回路10の動作を説明する。
この場合も、ESD保護回路10が保護動作をすることが求められる。
【0084】
HBM試験において、グランド基準でプラス極性のESDパルスが差動信号SigPの外部接続端子に印加される場合の第1の保護回路12の動作は、Unpowered ESD試験において、プラス極性のESDパルスが差動信号SigPの外部接続端子に印加される場合の第1の保護回路12の動作と同じである。
従って、ESD電流は、
図10に破線で示すように、差動信号SigPの外部接続端子から、第1のダイオード44および第1のクランプ回路24の第3のNMOS42を介してグランドノードに流れ、グランド端子から外部へ逃がすことができる。
【0085】
一方、HBM試験において、グランド基準でマイナス極性のESDパルスが差動信号SigPの外部接続端子に印加される場合の第1の保護回路12の動作は、Unpowered ESD試験において、マイナス極性のESDパルスが差動信号SigPの外部接続端子に印加される場合の第1の保護回路12の動作と同じである。
従って、ESD電流は、
図11に破線で示すように、グランド端子から、グランドノードおよび第3のダイオード48を介して差動信号SigPに対応する差動信号ノードに流れ、差動信号SigPの外部接続端子から外部へ逃がすことができる。
このように、ESD保護回路10においては、HBM試験において、グランド基準でESDパルスが印加される場合の放電経路も問題なく確保される。
【0086】
以上のように、ESD保護回路10は、コンポーネントレベルESD試験に加え、システムレベルESD試験およびノイズイミュニティ試験にも対応することができるため、車載分野等の特殊な分野で使用される電子機器においても適用可能である。また、ESD保護回路10は、通常の製造プロセスを用いて製造することができ、小規模でコンパクトな回路であるため、コストの上昇を抑えることができる。
【0087】
なお、代表的に差動信号SigPについて説明したが、差動信号SigNについても同様に動作する。差動信号SigNの場合、第1のダイオード44および第3のダイオード48の代わりに、第2のダイオード46および第4のダイオード50が動作する。
【0088】
バイアス電圧は、コモンモード電圧Vcmに限らず、電源電圧VDDとグランド電圧VSSとの間の任意の中間電圧を使用することができる。
例えば、抵抗素子30,32の抵抗値を変えることにより、バイアス電圧を変更することができる。あるいは、抵抗素子30,32を電源ノードとグランドノードとの間に直列に接続し、同様に抵抗素子30,32の抵抗値を変えることにより、バイアス電圧を、電源電圧VDDとグランド電圧VSSとの間の任意の中間電圧に設定することができる。
これにより、ノイズが印加された信号波形の最大電圧よりもESD保護回路のターンオン電圧を高く設定して、ノイズに反応するリスクを低下させることができる。また、ESD保護回路としての能力を最大限に発揮することができるように、ESDパルスに対して素早く反応することができる適切な電圧にESD保護回路のターンオン電圧を設定することができる。
【0089】
差動回路においては、コモンモード電圧が使用されている場合が多々ある。従って、第1の保護回路12において、差動回路で使用されている既存のコモンモード電圧を利用することにより、バイアス回路18を省略し、回路規模を削減することができる。
また、
図12に示すように、バイアス回路18から、第1の内部ノードn1の代わりに、第2の内部ノードn2にバイアス電圧を出力しても、第1の保護回路12は同様に動作することができる。
【0090】
第2の保護回路14は、
図18に示す従来のESD保護回路と同様の構成のものであり、本発明のESD保護回路が搭載されるICにおいても従来のESD保護回路が設けられる場合がある。従って、ESD保護回路10において、ICで使用されている従来のESD保護回路を第2の保護回路14として利用することにより、第2の保護回路14を省略し、回路規模を削減することができる。
【0091】
なお、第1および第2の保護回路12、14、バイアス回路18、第1および第2の電圧検出回路20、60、第1および第2のインバータ22、62、第1および第2のクランプ回路24、64、第1および第2の保護ダイオード26、66、および逆方向ダイオード28として具体的な回路を挙げて説明したが、これに限定されず、同様の機能を実現することができる各種構成の回路を使用することができる。
【0092】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。