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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-157452(P2020-157452A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20200904BHJP
【FI】
   B25J19/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-62261(P2019-62261)
(22)【出願日】2019年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中家 祐二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707CX01
3C707CY34
(57)【要約】
【課題】アームの内部に取り付けられた2つのモータの発熱量の大小によらず、アーム内の温度分布をより均一にする。
【解決手段】産業用ロボット1のアッパアーム20の内部には、第1および第2モータ21A、21Bが並設された状態で取り付けられており、アッパアーム20の内部に形成された内部空間Sには、第1モータ21Aおよび第2モータ21Bのうち、一方のモータの熱を他方のモータに熱伝導する第1熱伝導部材52Aが配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枢動自在に連接された複数のアームと、前記アームを動作させる複数のモータとを備えた産業用ロボットであり、
前記複数のアームのうち、少なくとも1つのアームの内部には、前記複数のモータのうち少なくとも第1および第2モータが並設された状態で取り付けられており、
前記少なくとも1つのアームの内部に形成された内部空間には、前記第1モータおよび前記第2モータのうち、一方のモータの熱を他方のモータに熱伝導する熱伝導部材が配置されていることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記熱伝導部材は、前記アームに接触していることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記第1モータは、ブラケットを介して前記アームに取り付けられており、
前記内部空間には、前記ブラケットと前記第2モータに接触するように、前記熱伝導部材が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記第1モータの第1出力シャフトと、前記第2モータの第2出力シャフトとは、反対方向に突出しており、
前記ブラケットは、前記第1モータの前記第1出力シャフト側に取り付けられており、
前記熱伝導部材は、前記第2モータの前記第2出力シャフト側とは反対側において、前記第2モータに接触していることを特徴とする請求項3に記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記ブラケットを第1ブラケットとし、前記熱伝導部材を第1熱伝導部材としたときに、
前記第2モータは、前記第2出力シャフト側において、第2ブラケットを介して、前記アームに取り付けられており、
前記第1出力シャフト側とは反対側の前記内部空間に、前記第1モータおよび前記第2モータのうち、一方のモータの熱を他方のモータに熱伝導する第2熱伝導部材が配置されており、
前記第2熱伝導部材は、前記第2ブラケットと前記第1モータに接触していることを特徴とする請求項4に記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、部材の溶接・搬送際に、産業用ロボットが利用されている。産業用ロボット(以下、「ロボット」という)は、枢動自在に連接された複数のアームと、アームを動作させる複数のモータとを備えている。ロボットは、各モータに電流を通電することで、連接されたアームを動作させ、アームの先端を所定の目標位置に移動させる。
【0003】
ロボットの動作には、モータへの通電が必要であるが、モータの通電により、モータが発熱し、ロボット自体の温度が上昇する。ロボット自体の温度上昇は、アームの熱膨張によるアームの先端部の位置制御の精度の低下、モータの高温化によるモータの応答性の低下等に繋がるため、好ましいものではない。そこで、特許文献1の技術では、モータが配置されたロボットの外壁に着脱可能な熱伝導部材を取り付けている。これにより、熱伝導部材を介してモータから発熱した熱を、外部に放出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−127914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すロボットでは、モータの発熱した熱は、モータの周りの空間に放熱され、その放熱された熱が、ロボットの外壁面を介して熱伝導部材に伝達される。すなわち、熱伝導部材は、熱源であるモータに直接接触していないため、モータの発熱した熱が放熱され難く、モータの周りの空間が断熱空間となるため、モータの温度が上昇し易い。
【0006】
特に、ロボットのアームに2つのモータが設けられている場合には、ロボットの動作によっては、2つのモータの発熱量の大小が異なることがあり、この結果、アーム内の温度が分布の傾向が大きく異なることがある。このように、ロボットの動作によって、アーム内の温度分布の傾向が大きく異なると、アーム先端の位置制御に影響を与えることもある。
【0007】
本発明はこのような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アームの内部に取り付けられた2つのモータの発熱量の大小によらず、アーム内の温度分布をより均一にすることができる産業用ロボットを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ロボットの動作によって、アームの内部に取り付けられた2つモータの発熱量は異なるため、発熱量の高いモータから発熱量の低いモータに熱を伝導させれば、2つのモータの温度を近づけることができ、アーム内の温度分布をより均一にすることができると考えた。
【0009】
本発明はこのような考えによりなされたものであり、本発明に係る産業用ロボットは、枢動自在に連接された複数のアームと、前記アームを動作させる複数のモータとを備えた産業用ロボットであり、前記複数のアームのうち、少なくとも1つのアームの内部には、前記複数のモータのうち少なくとも第1および第2モータが並設された状態で取り付けられており、前記少なくとも1つのアームの内部に形成された内部空間には、前記第1モータおよび前記第2モータのうち、一方のモータの熱を他方のモータに熱伝導する熱伝導部材が配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、アームの内部空間には、第1モータおよび第2モータのうち、一方のモータの熱を他方のモータに伝導する熱伝導部材が配置されているので、第1および第2モータのうち、一方のモータの熱を他方のモータに伝導することができる。この結果、2つのモータの温度を近づけることができ、アーム内の温度分布をより均一にすることができる。
【0011】
なお、本発明でいう「一方のモータ」とは、第1モータおよび第2モータのうち、温度の高い(発熱量の大きい)モータであり、「他方のモータ」とは、第1モータおよび第2モータのうち、温度の低い(発熱量の小さい)モータである。また、第1モータおよび第2モータのうち、温度の高いモータは、ロボットの動作により(具体的にはモータの負荷率により)変化してもよい。
【0012】
ここで、第1および第2モータが相互に熱伝導するように、熱伝導部材が配置されているのであれば、熱伝導部材の配置状態は、特に限定されるものではないが、より好ましい態様としては、前記熱伝導部材は、前記アームに接触している。本発明によれば、熱伝導部材は、アームに接触しているので、第1および第2モータの熱を、熱伝導部材を介してアームからその外部に放熱することができる。
【0013】
ここで、たとえば、熱伝導部材を第1および第2モータのケーシング等に接続してもよいが、より好ましい態様としては、前記第1モータは、ブラケットを介して前記アームに取り付けられており、前記内部空間には、前記ブラケットと前記第2モータに接触するように、前記熱伝導部材が配置されている。
【0014】
この態様によれば、熱伝導部材が、内部空間において、ブラケットと第2モータとに接触するように配置されているので、第1および第2モータのうち、一方のモータの熱を、熱伝導部材とブラケットとを介して、他方のモータに伝導することができる。第1モータをアームに取り付けるためのブラケットを、熱を伝導するための熱伝導経路として利用しているので、熱伝導部材の大きさをコンパクトにすることができる。これにより、アーム内部の限られたスペースに、アームの設計変更等を行うことなく、熱伝導部材を配置することができる。
【0015】
また、ブラケットと熱伝導部材により、第1および第2モータの熱が相互に伝導できるのであれば、ブラケットと熱伝導部材との配置状態は特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記第1モータの第1出力シャフトと、前記第2モータの第2出力シャフトとは、反対方向に突出しており、前記ブラケットは、前記第1モータの前記第1出力シャフト側に取り付けられており、前記熱伝導部材は、前記第2モータの前記第2出力シャフト側とは反対側において、前記第2モータに接触している。
【0016】
一般的に、モータの出力シャフト側の部分と、その反対側の部分を比較すると、モータの出力シャフト側の反対側の部分の発熱量の方が、モータの出力シャフト側の部分に比べて小さい。これは、モータのステータとロータの熱が、出力シャフト側に伝達され易いからである。
【0017】
そこで、本態様によれば、発熱量の大きい第1モータの第1出力シャフト側の部分からブラケットおよび熱伝導部材を介して、発熱量の小さい第2モータの第2出力シャフト側とは反対側の部分に、熱を効率良く伝達することができる。
【0018】
さらに好ましい態様としては、前記ブラケットを第1ブラケットとし、前記熱伝導部材を第1熱伝導部材としたときに、前記第2モータは、前記第2出力シャフト側において、第2ブラケットを介して、前記アームに取り付けられており、前記第1出力シャフト側とは反対側の前記内部空間に、前記第1モータおよび前記第2モータのうち、一方のモータの熱を他方のモータに熱伝導する第2熱伝導部材が配置されており、前記第2熱伝導部材は、前記第2ブラケットと前記第1モータに接触している。
【0019】
この態様によれば、第1ブラケットおよび第1熱伝導部材と、第2ブラケットおよび第2熱伝導部材とにより、第1および第2モータを挟み込んだ構造となる。これにより、第1モータおよび第2モータの熱を相互に伝導し易くなり、アーム内の温度分布をより均一にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、産業用ロボットにおいて、アームの内部に取り付けられた2つのモータの発熱量の大小によらず、アーム内の温度分布をより均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る産業用ロボットを一方側から視た斜視図である。
図2図1に示す産業用ロボットを他方側から視た斜視図である。
図3図1に示す産業用ロボットの側面図である。
図4図3に示す支持アームを90°旋回させた状態における、図2のA−A線に沿った矢視方向の断面図である。
図5】(a)は、図1のロボットのカバーを外した状態の側面図であり、(b)は(a)に、熱伝導部材を取り付けた状態を示す側面図である。
図6】(a)は、図5に示すブラケットと熱伝導部材の取り付けを説明するための模式的分解斜視図であり、(b)は、(a)の取り付け状態を説明する
図7】(a)および(b)は、図6(b)の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.産業用ロボット1について
以下に、本発明の実施形態に係る産業用ロボット(以下、ロボットという)を図1図6を参照しながら詳述する。なお、本明細書では、アッパアームのアーム本体は1つであり、図1等では、20aの符号を付しているが、図6及び図7では、アーム本体の部分が理解し易いように、アーム本体のすべての部分に20aを付している。
【0023】
図1に示すように、ロボット1は、図中に矢印で示した動きをする関節を備えており、それぞれの関節が回転(回動)または捻りを行って、各アームを回動、旋回、揺動または傾動させる多関節を有している。いずれの関節にも、後述するモータが装備され、制御装置(図示せず)からの指令を受けてロボット1が動作する。
【0024】
図1図3に示すように、ロボット1は、基台11を備えている。基台11は、設置面に設置されている。基台11は、設置面に固定された固定台11aと、設置面に対して直交する方向に沿った第1軸J1の周りに旋回する旋回台11bとを備えている。旋回台11bは、固定台11aに固定されたモータの出力軸(図示せず)が接続されている。これにより、旋回台11bを固定台11aに対して第1軸J1の周りに旋回する。
【0025】
ロボット1は、基台11に第1枢動モータ40Aを介して枢動自在に連接されたロアアーム12と、ロアアーム12に第2枢動モータ40Bを介して枢動自在に連接されたアッパアーム20とを備えている。
【0026】
ロアアーム12は、その基端部において、第1軸J1と直交する方向に平行となる第2回転軸J2の周りに、基台11に対して枢動自在(回転自在)に連接されている。ロアアーム12は、第1枢動モータ40Aにより、第2回転軸J2の周りに枢動される。
【0027】
アッパアーム20は、その基端部において、第2回転軸J2と平行となる第3回転軸J3の周りに、ロアアーム12の先端部に対して枢動自在(回転自在)に連接されている。アッパアーム20は、第2枢動モータ40Bにより、第3回転軸J3の周りに枢動される。
【0028】
さらに、アッパアーム20は、アッパアーム20の軸線となる第4回転軸J4周りに、回動自在となっている。アッパアーム20の基端部には、回動モータ40Cが取り付けられている。アッパアーム20は、回動モータ40Cにより、第4回転軸J4周りに回動することができる。
【0029】
アッパアーム20の先端には、溶接トーチなどのエンドエフェクタ(図示せず)を支持する支持アーム30が取り付けられている。支持アーム30は、第3回転軸J3と平行となる第5回転軸J5の周りに、アッパアーム20に対して旋回自在に取り付けられている。支持アーム30は、後述する第1モータ21Aにより、第5回転軸J5の周りに旋回する。
【0030】
支持アーム30は、第5回転軸J5と直交し、支持アーム30の軸線となる第6回転軸J6の周りに、回動自在に取り付けられている。支持アーム30は、後述する第2モータ21Bにより、第6回転軸J6の周りに旋回する。
【0031】
2.アッパアーム20と支持アーム30について
以下に、アッパアーム20とその内部構造について、図4および図5を参照しながら、詳細に説明する。図4に示すように、アッパアーム20は、アーム本体20aと、アーム本体20aの両側面の開口を覆う一対のカバー20b、20bと、を備えている。アーム本体20aには、第1および第2モータ21A、21Bが配置されている。
【0032】
第1モータ21Aは、第1ブラケット51Aを介して、アーム本体20aに取り付けられている。第1モータ21Aの第1出力シャフト22Aには、第1プーリ23Aが取り付けられている。第1モータ21Aの第1プーリ23Aと、支持アーム30の入力プーリ33には、第1動力伝達ベルト24Aが巻き付いている。第1動力伝達ベルト24Aを介して、第1モータ21Aの動力が支持アーム30に伝達される。これにより、第1モータ21Aの動力で、支持アーム30は、アッパアーム20に対して第5回転軸J5周りに回動することができる。
【0033】
一方、第2モータ21Bは、第2ブラケット51Bを介して、アーム本体20aに取り付けられている。第2モータ21Bの第2出力シャフト22Bには、第2プーリ23Bが取り付けられている。第2モータ21Bの第2プーリ23Bと、支持アーム30の入力プーリ34には、第2動力伝達ベルト24Bが巻き付いている。第2動力伝達ベルト24Bを介して、第2モータ21Bの動力が支持アーム30に伝達可能になっている。
【0034】
支持アーム30の入力プーリ34に入力された動力は、入力シャフト35に伝達され、入力シャフト35の先端の傘歯車を介して、出力シャフト36に伝達される。出力シャフト36は、第6回転軸J6の周りに回動する。これにより、第2モータ21Bの動力で、支持アーム30は、第6回転軸J6の周りに回動する。
【0035】
3.第1および第2モータ21A、21Bの熱伝導構造について
以下に、図4および図5に加え、図6および図7をさらに参照しながら、第1および第2モータ21A、21Bの熱伝導の構造について説明する。本実施形態では、アッパアーム20の内部には、第1および第2モータ21A、21Bが並設された状態で取り付けられている。第1モータ21Aの第1出力シャフト22Aと、第2モータ21Bの第2出力シャフト22Bとは反対方向に突出している。
【0036】
図4に示すように、アッパアーム20の内部には、アーム本体20aにカバー20bを覆うことで、内部空間Sが形成されている。本実施形態では、図4図6に示すように、内部空間Sは、第1モータ21Aおよび第2モータ21Bのうち、一方のモータの熱を他方のモータに熱伝導する第1および第2熱伝導部材52A、52Bが配置されている。第1および第2熱伝導部材52A、52Bは、板状の金属製の部材である。
【0037】
ここで、ロボット1の動作により、第1モータ21Aの温度が、第2モータ21Bの温度よりも高い場合には、第1モータ21Aが上述した「一方のモータ」となり、第2モータ21Bが上述した「他方のモータ」となる。この場合、第1モータ21Aの熱が、第1および第2熱伝導部材52A、52Bを介して、第1モータ21Aから第2モータ21Bに伝導する。
【0038】
一方、ロボット1の動作により、第2モータ21Bの温度が、第1モータ21Aの温度よりも高い場合には、第2モータ21Bが上述した「一方のモータ」となり、第1モータ21Aが上述した「他方のモータ」となる。この場合、第2モータ21Bの熱が、第1および第2熱伝導部材52A、52Bを介して、第2モータ21Bから第1モータ21Aに伝導する。
【0039】
第1および第2熱伝導部材52A、52Bの材料は、熱伝導性が高い材料であればよく、たとえば金属材料からなり、金属材料としては、たとえば、鋼、銅、またはアルミニウムなどを挙げることができ、たとえば、これらに耐食性のめっきが施されていてもよい。
【0040】
本実施形態では、図4および図6(a)および(b)に示すように、第1熱伝導部材52Aは、第1ブラケット51Aと、第2モータ21Bとに接触するように、アッパアーム20の内部空間Sに配置されている。同様に、第2熱伝導部材52Bは、第2ブラケット51Bと、第1モータ21Aとに接触するように、アッパアーム20の内部空間Sに配置されている。
【0041】
このようにして、第1モータ21Aおよび第2モータ21Bの一方のモータの熱を、第1ブラケット51Aと第1熱伝導部材52Aとで形成される熱伝導経路と、第2ブラケット51Bと第2熱伝導部材52Bとで形成される熱伝導経路と、を介して、他方のモータに伝導することができる。
【0042】
第1および第2ブラケット51A、51Bを、熱を伝導するための熱伝導経路として利用しているので、第1および第2熱伝導部材52A、52Bの大きさをコンパクトにすることができる。これにより、アッパアーム20の限られたスペースに、アッパアーム20の設計変更等を行うことなく、第1および第2熱伝導部材52A、52Bを配置することができる。
【0043】
ところで、第1および第2モータ21A、21Bの第1および第2出力シャフト22A、22B側の部分25A、25Bと、その反対側の部分26A、26Bを比較すると、その反対側の部分26A、26Bの発熱量の方が、第1および第2出力シャフト22A、22B側の部分25A、25Bに比べて小さい。これは、第1および第2モータ21A、21Bの主に発熱するステータ(不図示)とロータ(不図示)の熱が、第1および第2出力シャフト22A、22B側に伝達され易いからである。これに加えて、本実施形態では、反対側の部分26A、26Bには、第1および第2出力シャフト22A、22Bの回転を制動するブレーキ(図示せず)、反対側の部分26A、26Bの回転角度を検出するエンコーダ(図示せず)、が配置されているので、ステータとロータとの熱は外部に伝わり難い。
【0044】
このような点から、本実施形態では、第1ブラケット51Aは、第1モータ21Aの第1出力シャフト22A側に取り付けられており、第1熱伝導部材52Aは、第2モータ21Bの第2出力シャフト22B側とは反対側において、第2モータ21Bに接触している。一方、第2ブラケット51Bは、第2モータ21Bの第2出力シャフト22B側に取り付けられており、第2熱伝導部材52Bは、第1モータ21Aの第1出力シャフト22A側とは反対側において、第1モータ21Aに接触している。
【0045】
これにより、発熱量の大きい第1モータ21Aの第1出力シャフト22A側の部分25Aから第1ブラケット51Aおよび第1熱伝導部材52Aを介して、発熱量の小さい第2モータ21Bの第2出力シャフト22B側とは反対側の部分26Bに、熱を効率良く伝達することができる。
【0046】
同様に、発熱量の大きい第2モータ21Bの第2出力シャフト22B側の部分25Bから第1ブラケット51Aおよび第1熱伝導部材52Aを介して、発熱量の小さい第1モータ21Aの第1出力シャフト22A側とは反対側の部分26Aに、熱を効率良く伝達することができる。
【0047】
このようにして、第1ブラケット51Aおよび第1熱伝導部材52Aを1つの熱伝導ユニットとし、第2ブラケット51Bおよび第2熱伝導部材52Bをもう1つの熱伝導ユニットとし、これらの熱伝導ユニットにより、第1および第2モータ21A、21Bを挟み込んだ構造となる。これにより、第1モータ21Aおよび第2モータ21Bの熱を相互に伝導し易くなり、アッパアーム20内の温度分布をより均一にすることができる。
【0048】
本実施形態では、第1および第2熱伝導部材52A、52Bは、アーム本体20aに接触している。このように、第1および第2熱伝導部材52A、52Bを、アーム本体20aに接触させることにより、第1および第2モータ21A、21Bの熱を、第1および第2熱伝導部材52A、52Bを介してアッパアーム20から外部に放熱することができる。ここで、ロボット1の動作時に、第1および第2熱伝導部材52A、52Bが、上述した接触した状態が保持されれば、ネジ等で固定されていてもよく、固定することなく、内部空間Sに配置されていてもよい。
【0049】
さらに、本実施形態では、第1熱伝導部材52Aは、第1ブラケット51Aと接触する側とは反対側の位置において、アーム本体20aに接触している。同様に、第2熱伝導部材52Bは、第2ブラケット51Bと接触する側とは反対側の位置において、アーム本体20aに接触している。このような位置において、第1および第2熱伝導部材52A、52Bをアーム本体20aにさせることで、アッパアーム20のより広い範囲に、第1および第2モータ21A、21Bの熱を分散させることができる。
【0050】
第1および第2ブラケット51A、51Bを第1および第2モータ21A、21Bに取り付ける際には、第1および第2ブラケット51A、51Bに形成された第1挿通孔51aを、第1および第2出力シャフト22A、22Bに挿通する。
【0051】
次に、第2貫通孔51bにネジなどの固定具61を挿通し、固定具61を介して、第1および第2ブラケット51A、51Bを第1および第2モータ21A、21Bに取り付ける。さらに、第3貫通孔51cに固定具62を挿通し、ボルトなどの固定具62を介して、第1および第2ブラケット51A、51Bをアーム本体20aに取り付ける(図5(a)参照)。次に、第1および第2熱伝導部材52A、52Bを内部空間Sに配置する(図5(b)参照)。なお、図5(a)では、第2ブラケット51Bにハッチングをし、図5(b)では、第2ブラケット51Bと第2熱伝導部材52Bとにハッチングをしている。
【0052】
このように、本実施形態によれば、アッパアーム20の内部空間Sに第1および第2熱伝導部材52A、52Bが配置されているので、第1および第2モータ21A、21Bのうち、一方のモータの熱を、他方のモータに伝導することができる。この結果、第1および第2モータ21A、21Bの温度を近づけることができ、アッパアーム20内の温度分布をより均一にすることができる。
【0053】
ここで、図6(b)では、第1ブラケット51Aと第1熱伝導部材52Aとを別体にし、同様に、第2ブラケット51Bと第2熱伝導部材52Bとを別体にした。しかしながら、たとえば、図7(a)に示すように、第1ブラケット51Aと第1熱伝導部材52Aとを一体とした第1熱伝導ブラケット53Aとし、図7(a)に示すように、第2ブラケット51Bと第2熱伝導部材52Bとを一体とした第2熱伝導ブラケット53Bとしてもよい。
【0054】
これにより、第1ブラケット51Aと第1熱伝導部材52Aとの間の熱伝導性と、第2ブラケット51Bと第2熱伝導部材52Bとの間の熱伝導性とを高めることができるばかりでなく、これらの組み付け作業性も向上する。
【0055】
さらに、図7(b)に示すように、第1および第2モータ21A、21Bの胴体に、1つの熱伝導部材54が接触するように配置してもよい。これにより、第1および第2モータ21A、21Bの発熱し易い胴体の熱を、熱伝導部材54で相互に熱伝達することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0057】
本実施形態では、少なくとも1つのアームとしてロボットのアッパアームを例示したが、内部にモータを2つ配置したロボットであれば、他のアームであってもよい。また、図6(b)では、第1および第2熱伝導部材を設けたが、いずれか一方の熱伝導部材を省略してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1:ロボット(産業用ロボット)、20:アッパアーム(アーム)、21A:第1モータ、21B:第2モータ、22A:第1出力シャフト、22B:第2出力シャフト、51A:第1ブラケット(ブラケット)、51B:第2ブラケット、52A:第1熱伝導部材(熱伝導部材)、52B:第2熱伝導部材、S:内部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7