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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-157801(P2020-157801A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】車両用電池冷却システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/06 20060101AFI20200904BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20200904BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20200904BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20200904BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20200904BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20200904BHJP
   H01M 10/663 20140101ALI20200904BHJP
【FI】
   B60K11/06
   B60K1/04 Z
   H01M10/613
   H01M10/625
   H01M10/633
   H01M10/6563
   H01M10/663
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-56384(P2019-56384)
(22)【出願日】2019年3月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 邦彦
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AA01
3D038AA09
3D038AB01
3D038AC02
3D038AC22
3D235AA01
3D235BB23
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC15
3D235DD25
3D235DD27
3D235EE63
3D235FF12
3D235FF38
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH12
5H031KK00
(57)【要約】
【課題】冷却ファンの駆動頻度を低減しながら、電池の冷却性能を向上することができる車両用電池冷却システムを提供する。
【解決手段】冷却ファン22によって車室30内の空気を電池室25に供給して電池20を冷却可能な車両用電池冷却システム10。システム10は、電池温度センサ53と、車室温度センサ52と、車室30、電池室25及び車外を連通する排出経路44と、車室30と電池室25とで空気を循環可能な循環経路46と、これらの経路44,46の切替を行う切替手段48と、切替手段48を作動させるECU58とを備える。ECU58は、車室30が所定の与圧条件を満たし、電池20の温度が所定の低冷却範囲内にある場合であって、電池20の温度が車室30内の温度よりも高い場合には排出経路を選択し、電池20の温度が車室30内の温度よりも低い場合には循環経路46を選択する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源となる電池が収容された電池室に、冷却ファンによって車室内の空気を供給して前記電池を冷却可能な車両用電池冷却システムにおいて、
前記電池の温度を検知する電池温度センサと、
前記車室内の温度を検知する車室温度センサと、
前記車室、前記電池室及び車外を連通する排出経路と、
前記車室と前記電池室との間で空気を循環可能な循環経路と、
前記排出経路と前記循環経路との切り替えを行う切替手段と、
前記車室内の気圧が車外よりも高くなる所定の与圧条件を満たした場合に、前記電池温度センサ及び前記車室温度センサの検知結果に基づき、前記切替手段を作動させて前記排出経路又は前記循環経路を選択する制御部と、を備え、
該制御部は、
前記電池の温度が、予め設定された低冷却範囲内であって、且つ前記車室内の温度よりも高い場合に前記排出経路を選択し、
前記電池の温度が、前記低冷却範囲内であって、且つ前記車室内の温度よりも低い場合に前記排出経路を選択することを特徴とする車両用電池冷却システム。
【請求項2】
前記所定の与圧条件は、前記車両の全ての窓及び全てのドアが閉状態であり、前記車室内を空調する空調装置のファンがON状態であり、且つ該空調装置が外気導入モードであるという条件であることを特徴とする請求項1に記載の車両用電池冷却システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定の与圧条件を満たし、且つ前記電池の温度が前記低冷却範囲の上限値以上の場合に、前記循環経路を選択して前記冷却ファンを駆動することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用電池冷却システム。
【請求項4】
前記低冷却範囲の上限値である高閾値温度は、前記電池温度センサの検出結果による電池温度の上昇速度と、前記制御部に記憶された高閾値温度と電池温度の上昇速度との関係を示すマップ情報と、に基づいて決定される可変値であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用電池冷却システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記電池の温度が前記低冷却範囲内にある場合に、前記冷却ファンを停止又は予め設定された一定の回転数で駆動し、前記電池の温度が前記低冷却範囲の上限値以上の場合に、前記冷却ファンを前記一定の回転数よりも高い回転数で駆動することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用電池冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電池冷却システムに関し、特に、電気自動車等の車両に搭載された駆動源である電池を冷却する車両用電池冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車等の車両では、駆動源として電池が搭載されている。この電池は、温度が上昇し過ぎることにより、性能が低下したり寿命が低下したりするため、冷却ファンを用いて、空調装置により空調された車室内の空気を電池室に導入し、電池を冷却する冷却システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、駆動源である電池と、この電池の温度を検知する電池温度センサと、車室内の空気を電池が収容された電池室に導入する冷却ファンと、車室内を空調するエアコンと、電池室と車外とを連通する排出ダクトと、電池室を通過した空気が再び車室内へ戻るように循環させる循環ダクトとを備えた車両用電池冷却システムが記載されている。
【0004】
この冷却システムにおいて、電池室と、排気ダクト及び循環ダクトとの間には、各ダクトの開閉状態を調節する切換えダンパが設けられており、この切換えダンパを作動することにより、排気ダクトを閉塞して循環ダクトによる空気の循環を行う循環モードと、循環ダクトを閉塞して排気ダクトにより空気を車外へ排出する排出モードと、各ダクトの開度を調節して所定の比率で空気の循環と排出を行う循環/排出モードとを選択可能に構成されている。また、冷却ファンは、電池温度センサで検知された電池の温度に基づき、送風量の多い高レベル、送風量の少ない低レベル、OFF状態のいずれかに切り替えられる。
【0005】
この車両用電池冷却システムでは、冷却ファンがOFF状態のときに、循環モードにすることで、車室内の空気が車外へ排出されてエアコンの効率が低下することを防止している。また、冷却ファンが低レベルである場合、エアコンが外気導入モードのときに排気モードにすることで、エアコンの外気導入効果を向上し、外気導入モードではないときに循環モードにすることで、車室の内圧低下によってエアコンの負荷が増加する、すなわち、内圧低下によって外気が車室内に入り込んでエアコンの負荷が増加することを防止している。また、冷却ファンが高レベルのときに、循環/排気モードにすることで、車室の内圧低下によってエアコンの負荷が増加することを防止するとともに、冷却ファンの送風量の低下を防止している。
【0006】
このような冷却ファンを備えた車両用電池冷却システムでは、車室内の空気を用いて電池を冷却することができるが、冷却ファンを駆動した際に、駆動音が乗員に騒音として認識されて、快適さが損なわれるという問題がある。
【0007】
冷却ファンによる騒音を低減する技術として、特許文献2には、車室内の騒音に応じて冷却ファンの回転速度を調節する技術が記載されている。この車両用電池冷却システムでは、例えば、車両速度が高くなって車室内に生じる走行ノイズが大きい場合に、冷却ファンの回転速度を高くし、車両速度が低くなって走行ノイズが小さくなる場合に、冷却ファンの回転速度を低くするように、冷却ファンの作動状態を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−306722号公報
【特許文献2】特開2004−48981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の車両用電池冷却システムでは、車両の走行ノイズ等に冷却ファンの駆動騒音を紛れさせることにより、乗員の体感騒音を低減することができる。
【0010】
しかしながら、車両の走行状態によっては、電池が高温になるまで冷却ファンが駆動されず、その間、電池が冷却されない状況が生じる。電池が高温になってしまうと、所望の温度に冷却させるまで、冷却ファンを長時間駆動することになり、その結果、冷却ファンによる騒音発生時間が長くなってしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、冷却ファンの駆動頻度を低減しながら、電池の冷却性能を向上することができる車両用電池冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、車両の駆動源となる電池が収容された電池室に、冷却ファンによって車室内の空気を供給して前記電池を冷却可能な車両用電池冷却システムにおいて、前記電池の温度を検知する電池温度センサと、前記車室内の温度を検知する車室温度センサと、前記車室、前記電池室及び車外を連通する排出経路と、前記車室と前記電池室との間で空気を循環可能な循環経路と、前記排出経路と前記循環経路との切り替えを行う切替手段と、前記車室内の気圧が車外よりも高くなる所定の与圧条件を満たした場合に、前記電池温度センサ及び前記車室温度センサの検知結果に基づき、前記切替手段を作動させて前記排出経路又は前記循環経路を選択する制御部と、を備え、該制御部は、前記電池の温度が、予め設定された低冷却範囲内であって、且つ前記車室内の温度よりも高い場合に前記排出経路を選択し、前記電池の温度が、前記低冷却範囲内であって、且つ前記車室内の温度よりも低い場合に前記排出経路を選択することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、電池の温度が予め設定された低冷却範囲内、すなわち、比較的低い温度である状況において、車室内が車外と比べて気圧の高い与圧状態にある場合に、電池の温度と車室内の温度をと比較して、排出経路と循環経路との切り替えを行うことにより、冷却ファンを駆動することなく、車室内の空気を用いて電池の冷却を行うことができる。
【0014】
すなわち、電池の温度が車室内温度よりも高い場合に、排出経路を選択することで、与圧状態にある車室内の空気を電池室を通して車外に排出することができ、これにより、冷却ファンを駆動することなく、電池よりも温度の低い車室内の空気によって電池を冷却することができる。また、電池の温度が車室内温度よりも低い場合には、循環経路を選択することで、車室内の温かい空気が電池室に流れることが抑制され、電池の温度上昇が抑えられる。これらにより、冷却ファンの駆動頻度を低減しながら、電池の冷却性能を向上することができる
【0015】
また、本発明は、上記車両用電池冷却システムにおいて、前記所定の与圧条件は、前記車両の全ての窓及び全てのドアが閉状態であり、前記車室内を空調する空調装置のファンがON状態であり、且つ該空調装置が外気導入モードであるという条件であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、車室内の与圧状態を適切に判断して、排出経路を選択した際に、車室内の空気を車外に排出させることができる。
【0017】
また、本発明は、上記車両用電池冷却システムにおいて、前記制御部は、前記所定の与圧条件を満たし、且つ前記電池の温度が前記低冷却範囲の上限値以上の場合に、前記循環経路を選択して前記冷却ファンを駆動することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、電池の温度が低冷却範囲の上限値以上である高い温度となった場合に、循環経路を選択して冷却ファンを駆動することで、冷却ファンの負荷を低減することができる。すなわち、冷却ファンを駆動する際に、排出経路では、空調装置の空気路を通して車外から車室内に取り込んだ空気を電池室へ供給することになるが、循環経路では、車室内と電池室との間で空気を循環させるため、循環経路の方が小さい吸い込み力で同量の空気を電池室へ供給することができる。それ故、冷却ファンによって多量の空気を電池室に供給する際に、循環経路を選択することで、冷却ファンの回転数を低減して騒音を低減することができる。
【0019】
また、本発明は、上記車両用電池冷却システムにおいて、前記低冷却範囲の上限値である高閾値温度は、前記電池温度センサの検出結果による電池温度の上昇速度と、前記制御部に記憶された高閾値温度と電池温度の上昇速度との関係を示すマップ情報と、に基づいて決定される可変値であることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、電池の温度の上昇速度に応じて、適切な高温閾値温度を設定することができるので、電池を効率的に冷却して冷却ファンの駆動時間が長くなることを防止することができる。
【0021】
また、本発明は、上記車両用電池冷却システムにおいて、前記制御部は、前記電池の温度が前記低冷却範囲内にある場合に、前記冷却ファンを停止又は予め設定された一定の回転数で駆動し、前記電池の温度が前記低冷却範囲の上限値以上の場合に、前記冷却ファンを前記一定の回転数よりも高い回転数で駆動することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、電池の温度が低冷却範囲内であって比較的低い温度の場合には、冷却ファンによる騒音を低減しながら電池を冷却でき、電池の温度が高い場合には冷却ファンにより多量の空気を流して電池を十分に冷却することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る車両用冷却システムによれば、冷却ファンの駆動頻度を低減しながら、電池の冷却性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態である車両用冷却システムの概略説明図。
図2】車両用冷却システムの制御機構の構成説明図。
図3】車両用冷却システムの排出経路を説明する模式的な断面図。
図4】車両用冷却システムの循環経路を説明する模式的な断面図
図5】バッテリ温度と、バッテリの許容出力電力及び許容入力電力との関係を示すグラフ。
図6】ECUによる制御手順を示すフローチャート。
図7】ECUによる制御手順を示すフローチャート。
図8】バッテリ温度と冷却ファンの回転数との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の一実施形態である車両用冷却システムの概略説明図であり、図2は車両用冷却システムの制御機構の説明図である。本発明の車両用冷却システム10は、駆動源としてバッテリ(電池)20を使用する車両12、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車又はプラグインハイブリッド自動車等に適用される。なお、図1では、車両12のドア14及び窓16を破線で示し、車室30内を実線で示している。
【0026】
図1に示すように、車両用冷却システム10は、車両12に搭載されたバッテリ20と、バッテリ20を冷却するための冷却ファン22と、車室30内の空調を行う空調装置26とを備える。また、車両用冷却システム10は、空調装置26が設けられる空調ダクト40と、車室30とバッテリ20が収容されたバッテリ室(電池室)25とを連通する冷却ダクト42と、バッテリ室25と車外とを連通する排出経路を構成する排気ダクト44と、車室30からバッテリ室25へ導入された空気が再び車室内へ戻るように循環させる循環経路を構成する循環ダクト46とを備える。
【0027】
空調ダクト40には、車両12の外部と連通する第1取込口40aと、車室30内と連通する第2空気取込口40bとが設けられている。空調装置26は、空調ダクト40内に設けられた切替ダンパ28と、切替ダンパ28よりも車室30側に配置された送風手段であるブロアファン(空調装置のファン)27とを備え、切替ダンパ28は、空調ダクト40の第1取込口40a及び第2取込口40bの開閉状態を切り替える。ブロアファン27は、図示していないブロアモータによって駆動する。
【0028】
ブロアファン27が駆動している状態で、切替ダンパ28が第1取込口40aを閉塞して第2取込口40bを開放すると、第2取込口40bから車両12の内気が空調装置26の空調部に導入され、空調装置26の吹出し口から車室30内へ吹き出される、内気循環モードとなる。一方、ブロアファン27が駆動している状態で、切替ダンパ28が第1取込口40aを開放して第2取込口40bを閉塞すると、第1取込口40aから外気が空調ダクト40内に取り込まれて空調部に導入され、空調装置26の吹出し口から車室30内へ吹き出される、外気導入モードとなる。
【0029】
バッテリ室25は、車室30と車両後方の荷室32との間であって、車室30内に配設された後部座席19の近傍に配置され、本実施形態では、後部座席19の下方に配置されている。排気ダクト44と循環ダクト46との接続部には、排出経路と循環経路とを切り替えるための切替弁(切替手段)48が設けられている。
【0030】
また、車両用冷却システム10は、図2に示すように、ドアセンサ51と、窓センサ52と、バッテリ温度センサ(電池温度センサ)53と、車室温度センサ54と、切替弁48を作動させるアクチュエータ55と、冷却ファン22を駆動するファンモータ56と、制御部であるECU(電子制御ユニット)58とを備える。
【0031】
ドアセンサ51は、車両12に設けられた各ドア14の開閉状態を検知する。なお、ドア14は、車両12のサイドドアだけではなく、車両12後部のリアゲートやトランクゲート等のバックドアも含む。窓センサ52は、車両12に設けられた各窓16の開閉状態を検知する。ドアセンサ51及び窓センサ52は、各ドア14や窓16の開閉を行うウインドウ制御装置等に設けることができる。
【0032】
バッテリ温度センサ53は、バッテリ20の温度Tb(以下、バッテリ温度Tbとも称する)を検知するものであり、バッテリ20又はバッテリ室25に設けられ、バッテリ20の温度を直接的又は間接的に検知する。車室温度センサ54は、車室30内の温度Tr(以下、車室温度Trとも称する)を検知するものであり、車室30、空調装置26、冷却ダクト42、又はバッテリ室25の冷却ファン22とバッテリ22との間などに設けることができる。
【0033】
ECU58は、例えばCPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス等を有して構成されており、各センサ51,52,53,54、アクチュエータ55、ファンモータ56及び空調装置26と通信可能に接続されている。
【0034】
図3及び図4は、車両用冷却システム10の排出経路及び循環経路を説明する断面図である。車室30は、床面を形成するフロアパネル34、側壁を形成する内装トリム36、天面を形成するルーフトリム(図示略)等により仕切られており、この車室30とバッテリ室25とを繋ぐ冷却ダクト42に、冷却ファン22が配置されている。冷却ファン22は、ECU58に接続されたファンモータ56によって駆動され、車室30内の空気をバッテリ室25へ供給する。バッテリ20は、複数の電池セル21によって構成されている。
【0035】
排気ダクト44は、バッテリ室25と、車体後部側面を形成するアウタパネル38に形成された開口部63とを連通するダクトである。開口部63にはエアベントグリル60が設けられており、車内側の空気圧が高くなるとエアベントグリル60が開いて車外へ空気を排出する。循環ダクト46は、バッテリ室25から荷室32へ延びるダクトである。
【0036】
本実施の形態では、バッテリ室25と荷室32とを連通する第1のダクト61と、第1のダクト61と開口部63との間に配置された第2のダクト62とを備える。第2のダクト62は、一端側に、切替弁48を介して第1のダクト61と連通される第1開口62aと、荷室32と連通する第2開口62bとを有し、他端が開口部63に接続されている。第2開口62bには逆止弁64が設けられており、この逆止弁64は、第2開口62bから第2のダクト62内に空気が流入することを許容し、その逆方向の流れを阻止する。
【0037】
切替弁48は、アクチュエータ55により、図3に示す、第1のダクト61の下流端(すなわち、荷室32側の端部開口)と、第2のダクト62の第1開口62aとを連結する排気位置(以下、排気モードとも称する)と、図4に示す、第1のダクト61の下流端を開放して第2のダクト62と非連結にする循環位置(以下、循環モードとも称する)とに切り替えられる。本実施形態では、切替弁48を介して連結される第1及び第2のダクト61,62が排気ダクト44を構成し、第2のダクト62と非連結となった第1のダクト61が循環ダクト46を構成している。
【0038】
冷却ダクト42及び排気ダクト44は、車室30、バッテリ室25及び車外を連通する排出経路を構成している。また、冷却ダクト42から及び循環ダクト46は、循環経路を構成しており、具体的には、車室30から冷却ダクト42、バッテリ室25及び循環ダクト46を通って荷室32に排出された空気は、荷室32と車室30との間の隙間から再び車室30内に戻され、これにより空気の循環が行われる。なお、荷室32内の気圧が車外よりも高くなった場合、図4に示すように、第2開口62bが開放され、荷室32内の空気が第2のダクト62を通って車外に排出される。
【0039】
この車両用電池冷却システム10において、ECU50は、各センサ51,52,53,54からの検知信号や空調装置26の運転状態を示す信号に基づいて、アクチュエータ55やファンモータ56の作動を制御する。
【0040】
ECU58には、切替弁48による排出モードと循環モードとの切り替えを行うためのバッテリ20の温度閾値が設定されている。本実施形態では、ECU58の記憶部に、予め設定されたバッテリ20の低冷却範囲の下限値温度及び上限値温度である低閾値温度THLO及び高閾値温度THHIが設定されているとともに、冷却ファン22の駆動・停止の基準となる閾値温度であるファン駆動閾値温度THが設定されている。ここで低冷却範囲とは、バッテリ20の温度が比較的低く、冷却ファン22による冷却が不要又は冷却ファン22による送風量が少なくてよい範囲(冷却ファン22の回転数が予め設定された高回転数よりも低い範囲)である。
【0041】
本実施の形態において低閾値温度THLO及び高閾値温度THHIは、図5に示すように、バッテリ20の温度Tbによる、バッテリ20の許可出力電力及び許可入力電力の関係に基づいて決定されている。図5の縦軸において、零点よりも上方は、バッテリ20の出力電力の許容量を表している。また、零点よりも下方は、バッテリ20の入力電力の許容量を表しており、下方に行くに従って許容量が大きくなる。低閾値温度THLOは、バッテリ20の許可出力電力及び許可入力電力の両方がほぼ一定になる温度範囲(図5の温度THLOから温度THHIMAXの範囲)の下限値である温度THLOに設定されている。また、高閾値温度THHIは、許可出力電力及び許可入力電力の両方がほぼ一定になる温度範囲の上限値(図5の温度THHIMAX)と同じ又はそれより低い温度に設定される。ECU58に設定された各閾値温度の大小関係は、低閾値温度THLO<ファン駆動閾値温度TH≦高閾値温度THHIとなっている。
【0042】
次に、図6のフローチャートを参照して、ECU58によって排出経路又は循環経路を選択する際の制御手順を説明する。
【0043】
ECU58は、車両12が駆動源によって走行が可能なレディー(Ready)ON状態であるか否かを判定する(ステップS11)。レディーON状態か、レディーOFF状態かは、例えば、ECU58と通信可能に接続されたイグニッションスイッチ等のパワースイッチの状態から検知する。レディーOFF状態の場合(ステップS11:No)、循環経路が選択される(ステップS12)。
【0044】
レディーON状態の場合(ステップS11:Yes)、ECU58は窓センサ52からの検知信号に基づき、車両12の全ての窓16が閉状態であるか否かを判定する(ステップS13)。全ての窓16が閉状態ではない場合(ステップS13:No)、循環経路を選択して(ステップS12)、制御処理をリターンする。
【0045】
全ての窓16が閉状態である場合(ステップS13:Yes)、ECU58はドアセンサ51からの検知信号に基づき、車両12の全てのドア14が閉状態であるか否かを判定する(ステップS14)。全てのドア14が閉状態ではない場合(ステップS14:No)、循環経路を選択して(ステップS12)、制御処理をリターンする。
【0046】
全てのドア14が閉状態である場合(ステップS14:Yes)、ECU58は空調装置26からの信号に基づき、空調装置26のブロアファン27がON状態であるか否かを判定する(ステップS15)。ブロアファン27がOFF状態の場合(ステップS15:No)、循環経路を選択して(ステップS12)、制御処理をリターンする。
【0047】
ブロアファン27がON状態である場合(ステップS15:Yes)、ECU58は空調装置26からの信号に基づき、空調装置26が外気導入モードであるか否かを判定する(ステップS16)。外気導入モードではない場合(ステップS16:No)、循環経路を選択して(ステップS12)、制御処理をリターンする。
【0048】
ここで、ステップ13、ステップ14、ステップ15及びステップ16は、車室30内の気圧車外よりも高くなる与圧状態であることを判定するための条件(所定の与圧条件)であり、ECU58は、これらの条件を全て満たすことにより、車室30内が与圧状態であると判定する。
【0049】
ステップ16において、外気導入モードであると判定した場合(ステップS16:Yes)、ECU58は、バッテリ温度センサ53の検知結果に基づき、バッテリ温度Tbが低閾値温度THLOよりも高い温度であるか否かを判定する(ステップS17)。
【0050】
バッテリ温度Tbが低閾値温度THLOよりも高い場合(ステップS17:Yes)、ECU58は、さらに車室温度センサ54からの検知結果に基づき、バッテリ温度Tbが車室温度Trよりも高い温度であるか否かを判定する(ステップS18)。
【0051】
バッテリ温度Tbが車室温度Trよりも高い場合(ステップS18:Yes)、ECU58は、アクチュエータ55を駆動し、切替弁48を作動させて排出経路を選択する(ステップS19)。
【0052】
一方、バッテリ温度Tbが車室温度Tr以下である場合(ステップS18:No)、ECU58は、循環経路を選択して(ステップS12)、制御処理をリターンする。
【0053】
また、ステップS17において、バッテリ温度Tbが低閾値温度THLO以下である場合(ステップS17:No)、ECU58は、さらに車室温度センサ54からの検知結果に基づき、バッテリ温度Tbが車室温度Tr以下であるか否かを判定する(ステップS20)。
【0054】
バッテリ温度Tbが車室温度Tr以下である場合(ステップS20:Yes)、ECU58は、アクチュエータ55を駆動し、切替弁48を作動させて排出経路を選択する(ステップS19)。
【0055】
一方、バッテリ温度Tbが車室温度Trよりも高い場合(ステップS20:No)、ECU58は、循環経路を選択して(ステップS12)、制御処理をリターンする。
【0056】
ECU58は、ステップ19において排出経路を選択した後、さらに図7のフローチャートに示す制御手順を行う。すなわち、排出経路が選択された場合、冷却ファン22の駆動が要求されているか否かを判定する(ステップS21)。冷却ファン22の駆動・停止は、ECU58の記憶部に予め設定された、バッテリ温度Tbと冷却ファン22の回転数との関係を示すマップ情報に基づいて行われる。
【0057】
図8は、バッテリ温度Tbと冷却ファン22の回転数との関係を示すマップ情報の例を示すグラフである。本実施形態では、バッテリ温度Tbが、ファン駆動閾値温度TH≦バッテリ温度Tb<高閾値温度THHIの範囲にある場合に、ECU58がファンモータ56を作動させて冷却ファン22を予め設定された一定の回転数(一定の低い回転数)Rで回転駆動させる。また、バッテリ温度Tbが上昇して高閾値温度THHIになると、回転数Rよりも高い回転数Rで回転駆動させ、その後、バッテリ温度Tbの上昇に伴って、冷却ファン22の回転数が最大回転数RMAXになるまで回転数が高くなるように設定されている。なお、図8において二点鎖線で示すように、冷却ファン22の回転数は、零から次第に回転数が高くなるように設定されていてもよい。
【0058】
本実施形態では、バッテリ温度Tbがファン駆動閾値温度TH以上の場合に、冷却ファン22の駆動が要求されている(ステップS21:Yes)と判定する。なお、冷却ファン22は、バッテリ温度Tbが高閾値温度THHI以上の場合に駆動され、それよりも低い場合に停止するように設定されていてもよい。かかる場合には、バッテリ温度Tbが高閾値温度THHIF以上の場合に、冷却ファン22の駆動が要求されていると判定する。
【0059】
ステップS21でYesと判定した場合、ECU58は、さらに、バッテリ温度Tbが高閾値温度THHI以上であるか否かを判定し(ステップS22)、高閾値温度THHI以上の場合(ステップS22:Yes)には、アクチュエータ55を駆動し、切替弁48を作動させて循環経路を選択し(ステップS23)、制御処理をリターンする。
【0060】
冷却ファン22の駆動が要求されていない場合(ステップS21:No)や、バッテリ温度Tbが高閾値温度THHIよりも低い場合(ステップS22:No)は、排出経路の選択状態を維持して、制御処理をリターンする。
【0061】
上述した車両用電池冷却システム10では、バッテリ温度Tbが低閾値温度THLO<バッテリ温度Tb<高閾値温度THHIの範囲内、すなわち、比較的低い温度である状況において、車室30内が車外と比べて気圧の高い与圧状態にある場合に、電池の温度と車室内の温度をと比較して、排出経路又は循環経路を選択することにより、冷却ファン22の駆動を低減しながらバッテリ20の冷却性能を高めることができる。
【0062】
具体的には、バッテリ温度Tbが車室温度Trよりも高い場合に、排出経路を選択することで、与圧状態にある車室30内の空気をバッテリ室25を通して車外に排出することができ、これにより、冷却ファン22を駆動することなく、低温の車室30内の空気によってバッテリ20を冷却することができる。また、排出経路を選択する前に、ECU58により、車室30が所定の与圧条件を満たすこと判定しているので、車室30内の空気を適切にバッテリ室25に流すことができる。また、バッテリ温度Tbが車室温度Trよりも低い場合には、循環経路を選択することで、車室30内の温かい空気がバッテリ室25に流れることが抑制され、バッテリ20の温度上昇が抑えられる。
【0063】
さらに、バッテリ温度Tbが高閾値温度TH以上となる高い温度となった場合に、循環経路を選択して冷却ファン22を駆動することで、冷却ファン22の負荷を低減することができる。具体的には、冷却ファン22を駆動する際に、排出経路が選択されている状態では、空調ダクト40を通して車外から車室30内に取り込んだ空気をバッテリ室25へ供給することになる一方、循環経路では、車室30内とバッテリ室25との間で空気を循環させるため、循環経路の方が小さい吸い込み力で同量の空気をバッテリ室25へ供給することができる。バッテリ温度Tbが高閾値温度TH以上となるバッテリ高温領域では、特に、冷却ファン22による騒音よりもバッテリ20の冷却が優先されるが、このバッテリ高温領域において、循環経路を選択することで、冷却ファン22の回転数を低減しながら、多量の空気をバッテリ室25へ供給することができ、冷却ファン22による騒音を低減と、バッテリ20の冷却性の向上との両立を図ることができる。
【0064】
また、バッテリ温度Tbが低閾値温度THLO以下となるバッテリ低温領域では、バッテリ20を温めることにより、バッテリ20の性能を向上できる。本実施形態では、バッテリ低温領域であって車室30内が与圧状態にある状況において、バッテリ温度Tbが車室温度Trよりも低い場合に排出経路を選択することで、車室30内の温かい空気をバッテリ室25へ流してバッテリ20を温めて、バッテリ性能を向上させることができる。また、バッテリ温度Tbが車室温度Trよりも高い場合には循環経路を選択することで、バッテリ20が車室30内の空気により冷却されることを防止することができる。
【0065】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、バッテリ20の低冷却範囲の上限値である高閾値温度THHIは、バッテリ温度センサ53の検出結果によるバッテリ温度Tbの上昇速度と、ECU58に記憶された高閾値温度THHIとバッテリ温度Tbの上昇速度との関係を示すマップ情報と、に基づいて決定される可変値であってもよい。このマップ情報は、適宜設定することができるが、一例として、基準となるバッテリ温度Tbの上昇速度(基準上昇速度)と、基準となる高閾値温度(基準高閾値温度)を設定し、バッテリ温度センサ53によるバッテリ温度Tbの上昇速度が基準上昇速度よりも速い場合に、高閾値温度THHIが基準高閾値温度よりも低い値になり、バッテリ温度Tbの上昇速度が基準上昇速度よりも遅い場合に、高閾値温度THHIが基準高閾値温度よりも高い値となるように設定することができる。このように、バッテリ温度Tbの上昇速度に応じて、適切な高温閾値温度THHIを設定することで、バッテリ20をより効率的に冷却して冷却ファン22の駆動時間が長くなることを防止することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 車両用電池冷却システム
12 車両
14 ドア
16 窓
20 バッテリ
22 冷却ファン
25 バッテリ室
26 空調装置
27 ブロアファン
30 車室
44 排気ダクト
46 循環ダクト
48 切替弁
58 ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8