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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-157818(P2020-157818A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】車両の制御装置及び車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20200904BHJP
   B60T 8/1761 20060101ALI20200904BHJP
   B62D 6/00 20060101ALN20200904BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20200904BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20200904BHJP
【FI】
   B60W50/14
   B60T8/1761
   B62D6/00
   B62D101:00
   B62D113:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-56864(P2019-56864)
(22)【出願日】2019年3月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】特許業務法人太田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100103
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100173163
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 信洋
(74)【代理人】
【識別番号】100134522
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 朝子
(74)【代理人】
【識別番号】100135024
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 敢
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 慧
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D232CC08
3D232DA03
3D232DA23
3D232DA29
3D232DA34
3D232DA92
3D232DA93
3D232DA97
3D232DB11
3D232FF01
3D232FF07
3D232GG01
3D241BA57
3D241BA60
3D241BB08
3D241CE05
3D241DA52
3D241DA55
3D241DB09
3D241DB13
3D241DC46
3D241DC47
3D241DC49
3D246GB01
3D246HA13A
3D246HA72B
3D246HA74B
3D246HA75B
3D246HA81A
3D246HA95A
3D246HB02B
3D246HB21A
3D246JB04
3D246MA13
(57)【要約】
【課題】車輪のスリップが発生した際に、車両の乗員に迅速に状況を把握させることが可能な車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両の制御装置は、各車輪に設けられたタイヤ力センサと、タイヤ力センサのセンサ信号に基づいて各車輪のタイヤ力を推定するタイヤ力推定部と、車両の旋回状態を検出する旋回状態検出部と、推定されたタイヤ力に基づいて少なくとも一つの車輪が限界状態と推定された場合に、旋回状態に応じた異なる態様で警告を発生させる警告部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各車輪に設けられたタイヤ力センサと、
前記タイヤ力センサのセンサ信号に基づいて各車輪のタイヤ力を推定するタイヤ力推定部と、
車両の旋回状態を検出する旋回状態検出部と、
推定されたタイヤ力に基づいて少なくとも一つの車輪が限界状態と推定された場合に、前記旋回状態に応じた異なる態様で警告を発生させる警告部と、
を備える、車両の制御装置。
【請求項2】
前記警告部は、前記車両の走行状態が旋回状態である場合に、限界状態と推定される車輪の位置に応じた異なる態様で前記警告を発生させる、
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記警告が音であり、
前記警告部は、前記旋回状態に応じて乗員に聞こえる音の到来方向又は種類を異ならせる、
請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記警告が音であり、
前記警告部は、前記タイヤ力に応じて音量又は音の発生間隔を異ならせる、
請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記警告が音であり、
前記警告部は、前記旋回状態及び車両の周囲の情報に基づいて車両の衝突予測位置を求め、前記衝突予測位置の方向から乗員に音が聞こえるように前記警告を発生させる、
請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置及び車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面の摩擦状態に基づいて車両の制御を実行する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、車両が走行している路面の路面摩擦係数あるいは路面状態を精度よく推定するとともに、推定された路面摩擦係数や路面状態を用いて車両の走行状態をフィードバック制御し、車両の安全性を高める技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−002472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、タイヤのスリップは、車両の走行状態でタイヤが発生する力(以下、単に「タイヤ力」ともいう)が限界を超えたときに生じうる。タイヤ力が限界を超えて、車両が運転者の意思とは異なる挙動を示した場合、運転者は違和感を受けて危険を察知することができるが、同乗者は状況を把握することが困難である。
【0005】
具体的に、車両がスリップし、横滑りして衝突する場合、運転者は状況を把握して、衝突に対して身構えることができるものの、同乗者は、車両の衝突前に状況を把握することが困難であり、身構えることすらできないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、車輪のスリップが発生した際に、車両の乗員に迅速に状況を把握させることが可能な、新規かつ改良された車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、各車輪に設けられたタイヤ力センサと、タイヤ力センサのセンサ信号に基づいて各車輪のタイヤ力を推定するタイヤ力推定部と、車両の旋回状態を検出する旋回状態検出部と、推定されたタイヤ力に基づいて少なくとも一つの車輪が限界状態と推定された場合に、旋回状態に応じた異なる態様で警告を発生させる警告部と、を備える、車両の制御装置が提供される。
【0008】
警告部は、車両の走行状態が旋回状態である場合に、限界状態と推定される車輪の位置に応じた異なる態様で警告を発生させてもよい。
【0009】
警告が音であり、警告部は、旋回状態に応じて乗員に聞こえる音の到来方向を異ならせてもよい。
【0010】
警告が音であり、警告部は、タイヤ力に応じて音量又は音の発生間隔を異ならせてもよい。
【0011】
警告部は、旋回状態及び車両の周囲の情報に基づいて車両の衝突予測位置を求め、衝突予測位置の方向から乗員に音が聞こえるように警告を発生させてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、車輪のスリップが発生した際に、車両の乗員に迅速に状況を把握させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両の制御装置が適用された車両の構成例を示す説明図である。
図2】車輪の限界状態を示す説明図である。
図3】路面摩擦係数と警告開始閾値及びタイヤ力限界値との関係を示す説明図である。
図4】同実施形態に係る車両の制御装置による制御処理を示すフローチャートである。
図5】同実施形態の制御処理の応用例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
(車両の構成例)
まず、図1を参照して、本実施形態に係る車両1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る車両1の構成例を示す説明図である。
【0016】
図1に示した車両1は、左前輪3LF、右前輪3RF、左後輪3LR及び右後輪3RR(以下、特に区別を要しない場合には、車輪3と総称する。)が同時に駆動する四輪駆動車である。車両1は、内燃機関11を備える。内燃機関11の動力は、自動変速機13、センターデファレンシャル装置15、フロントデファレンシャル装置17及びリヤデファレンシャル装置19等を介して、前輪側車軸4F及び後輪側車軸4R(以下、特に区別を要しない場合には、車軸4と総称する。)に伝達される。内燃機関11の動力が前輪側車軸4F及び後輪側車軸4Rに伝達されることによって車輪3に駆動トルクが付加され、それぞれの車輪3が駆動される。
【0017】
図1に示すように、車両1の座標系として、車両1の進行方向をx軸、車両1の左右方向をy軸として定義する。また、車両1の上下方向をz軸として定義する。x軸は車両1の加速方向を正の方向とし、y軸は右方向を正の方向とし、z軸は上方向を正の方向とする。
【0018】
それぞれの車輪3の近傍の車軸4の内部には、タイヤ力センサ31LF,31RF,31LR,31RR(以下、特に区別を要しない場合には、タイヤ力センサ31と総称する。)が設けられている。タイヤ力センサ31によって、それぞれの車輪3に作用する前後力Fx、横力Fy及び上下力Fzが検出される。前後力Fxは、車輪3の外周を覆うタイヤの接地面に発生する摩擦力についての、車輪中心面に平行な方向(x軸方向、前後方向)への分力である。横力Fyは、車輪中心面に直角な方向(y軸方向、横方向)への分力である。上下力Fzは、鉛直方向(z軸方向)に作用する垂直荷重である。なお、車輪中心面は、車軸4と直交し、車輪幅の中央を通る面をいうものとする。
【0019】
それぞれのタイヤ力センサ31は、各車輪3に設けられたタイヤに作用する力を検出可能な適宜のセンサを用いることができる。例えば、各車輪3に生じる応力は、各車輪3に設けられたタイヤに作用する力に比例することから、タイヤ力センサ31は、各車輪3に対してx軸、y軸、z軸方向に生じる応力を検出可能なセンサであってもよい。x軸、y軸、z軸方向に生じる応力は、前後力Fx、横力Fy及び上下力Fzに対応する。本実施形態においては、特に、前後力Fx、横力Fyの検出値が用いられる。
【0020】
なお、タイヤ力センサ31の具体的な構成については、例えば、特開平04−331336号公報、特開平10−318862号公報、特許第4277799号等に開示されている構成を採用することができる。
【0021】
これらのタイヤ力センサ31に加えて、車両1の内部には、状態量センサ23及び操舵角センサ39が設けられている。状態量センサ23は、車速V、横加速度ay及びヨー加速度ω等の車両1の状態を示す情報である車両状態量を検出する。操舵角センサ39は、操舵角θ等の運転者の操作状態を示す情報である操作状態量を検出する。状態量センサ23は、周知の車速センサ、横加速度センサ及びヨー加速度センサ等により構成され、あるいは、各種検出を複合的に行う1つまたは複数のセンサによって構成される。
【0022】
また、車両1には、車両1の前方の画像を取得する撮像装置21が設けられている。撮像装置21は、二つのカメラ21L,21Rと、カメラ21L,21Rにより取得された画像データを処理して出力データを生成する図示しない信号処理回路とを備える。この他、車両1は、車両1の周囲の情報を検出する1つ又は複数のセンサを備える。かかるセンサとしては、超音波センサ、レーダセンサ、撮像装置等を用いることができる。
【0023】
タイヤ力センサ31、状態量センサ23、操舵角センサ39及び撮像装置21等の検出信号は、電子制御ユニット50によって取得可能になっている。電子制御ユニット50には、図示しないエンジン制御ユニット、変速制御ユニット、ブレーキ制御ユニット等の複数の電子制御ユニットが、CAN(Controller Area Network)等の通信バスを介して接続されている。これらの電子制御ユニットは、いずれもマイクロコンピュータを備えて構成される。電子制御ユニット50は、これらの他の電子制御ユニットから、車両の駆動トルク及びブレーキトルク等の情報を取得する。
【0024】
例えば、エンジン制御ユニットは、内燃機関11を制御し、内燃機関11の回転数、スロットルバルブの開度、燃料噴射量、点火タイミング、水温及び油温に基づいてエンジントルクを推定する。変速制御ユニットは、自動変速機13を制御し、エンジン制御ユニットからエンジントルクの推定値を取得する。また、変速制御ユニットは、エンジントルクの推定値、内燃機関11の回転数、各車輪3の車輪速、変速段の位置、クラッチの締結力及びトルクコンバータの滑り量等に基づいて、各車輪3に付加される駆動トルク又はタイヤ表面の駆動力を推定する。ブレーキ制御ユニットは、ブレーキペダルの操作量を検出し、各車輪3の回転数を監視して各車輪3のブレーキトルク又はタイヤの制動力を推定する。
【0025】
また、車両1は、車室内にスピーカ35a,35b,35c,35d(以下、特に区別を要しない場合には、スピーカ35と総称する。)を備える。スピーカ35aは、車室内の左前部に設置され、スピーカ35bは、車室内の右前部に設置されている。スピーカ35cは、車室内の左後部に設置され、スピーカ35dは、車室内の右後部に設置されている。それぞれのスピーカ35は、電子制御ユニット50により制御され、警告音を発生する。
【0026】
電子制御ユニット50は、タイヤ力推定部51、警告部53及び旋回状態検出部55を備える。電子制御ユニット50の一部又は全部は、例えば、マイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサユニット等で構成されていてもよい。また、電子制御ユニット50の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0027】
この他、電子制御ユニット50は、マイクロコンピュータ等により実行されるコンピュータプログラムや、演算処理に用いられる種々のパラメータ、演算結果の情報等を記憶する記憶装置を備える。記憶装置は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子であってもよく、CD−ROMやHDD(Hard Disk Drive)、ストレージ装置等であってもよい。
【0028】
本実施形態において、上述のタイヤ力推定部51、警告部53及び旋回状態検出部55は、マイクロコンピュータ等によるコンピュータプログラムの実行により実現される機能である。タイヤ力推定部51は、各タイヤ力センサ31のセンサ信号に基づいて各車輪3のタイヤ力を推定する。旋回状態検出部55は、撮像装置21、状態量センサ23又は操舵角センサ39等の検出信号に基づいて車両1の旋回状態を検出する。車両1の旋回状態とは、旋回していない状態、すなわち直進状態も含む。
【0029】
警告部53は、推定されたタイヤ力に基づいて各車輪3が限界状態であるか否かを推定する。また、警告部53は、いずれかの車輪3が限界状態であると推定された場合に、車両1の旋回状態に応じた異なる態様で警告を発生させる処理を実行する。ここで、車輪3の限界状態とは、車輪3がスリップする可能性のある領域に近い状態を意味する。
【0030】
図2は、摩擦円を用いて車輪3の限界状態を示す説明図である。
車両1の走行中、各車輪3にはタイヤ力Fが発生する。車両1の加速時には正の前後力Fxが発生し、車両1の制動時には負の前後力Fxが発生する。また、車両1の旋回時には、前後力Fxと合わせて、正負いずれかの横力Fyが発生する。車輪3に作用する前後力Fx及び横力Fyの合力がタイヤ力Fとなる。かかるタイヤ力Fが、タイヤ力限界値F_maxを超える領域(危険領域)では、タイヤがスリップする可能性が生じる。
【0031】
本実施形態に係る電子制御ユニット50の警告部53は、車輪3に生じるタイヤ力Fが警告開始閾値F_minを超えたときに、車両1の旋回状態に応じた異なる態様で車両1の乗員に警告を発生させる警告処理を実行する。具体的に、警告部53は、車両1の旋回状態に応じて車室内の前後左右に設けられたスピーカ35を選択して警告音を発生させることにより、乗員に聞こえる警告音の到来方向を変更して、予測される衝突位置を乗員に知らせる。
【0032】
ある走行状態においてタイヤと路面との間に発生する摩擦力は、路面状態に応じて変化し得る。このため、タイヤ力限界値F_maxは、路面状態に応じた路面摩擦係数μに基づいて設定される。路面摩擦係数μは、あらかじめ設定された値であってもよいが、撮像装置21や状態量センサ23により生成される検出信号に基づいて推定される路面状態に応じて設定される値であってもよい。
【0033】
例えば、警告部53は、撮像装置21の検出信号により、走行路が舗装路であるか未舗装路であるかを判別してもよく、走行路が雨や雪により濡れていたり凍結したりしていないかを判別してもよい。また、警告部53は、状態量センサ23の検出信号により、路面の凹凸状態を判別してもよい。さらに、警告部53は、路面温度検知センサの検出信号により、走行路が凍結していないかを判別してもよい。この他、警告部53は、種々のセンサの検出信号や、車内外の各種装置から送信される信号に基づいて走行路の路面状態を推定し、路面摩擦係数μを設定してもよい。
【0034】
図3は、路面摩擦係数μと、警告開始閾値F_min及びタイヤ力限界値F_maxとの関係を示す説明図である。タイヤ力限界値F_maxは、路面摩擦係数μと比例関係にある。例えば、タイヤ力限界値F_maxは、路面摩擦係数μにあらかじめ設定された係数をかけて設定されてもよい。また、警告開始閾値F_minも同様に、路面摩擦係数μと比例関係にある。例えば、警告開始閾値F_minは、タイヤ力限界値F_maxに、0.9を係数としてかけて設定されてもよい。
【0035】
また、警告部53は、車輪3に生じるタイヤ力Fがタイヤ力限界値F_maxに近付くにつれて、発生させる警告音の音量又は発生間隔の少なくともいずれかを変更してもよい。例えば、警告部53は、車輪3に生じるタイヤ力Fがタイヤ力限界値F_maxに近付くにつれて警告音の音量を大きくしたり、警告音の発生間隔を短くしたりしてもよい。
【0036】
本実施形態において、警告部53は、タイヤ力限界値F_maxと警告開始閾値F_minとの差Xから、タイヤ力限界値F_maxとタイヤ力Fとの差X1を引いた値(X−X1)が大きくなるにつれて警告音の音量を大きくし、かつ、警告音の発生間隔を短くする。これにより、路面摩擦係数μの違いによってタイヤ力限界値F_max及び警告開始閾値F_minが変動する場合であっても、警告音の音量や発生間隔の制御を適切に行うことができる。
【0037】
(制御装置の動作例)
次に、電子制御ユニット50による動作例を説明する。図4は、電子制御ユニット50による制御処理を示すフローチャートである。
【0038】
まず、電子制御ユニット50
の警告部53は、タイヤ力限界値F_max及び警告開始閾値F_minを算出する(ステップS11)。例えば、警告部53は、撮像装置21や状態量センサ23の検出信号及びその他の路面状態を推定可能な情報に基づいて走行路の路面摩擦係数μを設定し、当該路面摩擦係数μにあらかじめ設定された係数をかけて、タイヤ力限界値F_max及び警告開始閾値F_minを算出する。
【0039】
次いで、電子制御ユニット50のタイヤ力推定部51は、各車輪3に対応するタイヤ力センサ31の検出信号に基づいて、各車輪3のタイヤに生じているタイヤ力Fを算出する(ステップS13)。上述のとおり、各車輪3に発生するタイヤ力Fは、前後力Fx及び横力Fyの合力として算出される。
【0040】
次いで、警告部53は、各車輪3について、算出されたタイヤ力Fから警告開始閾値F_minを引いた差ΔFを算出する(ステップS15)。次いで、警告部53は、算出された差ΔFが正の値であるか否かを判別する(ステップS17)。ステップS17では、各車輪3のタイヤ力Fが警告開始閾値F_minに到達しているか否かが判別される。差ΔFが正の値でない場合(S17/No)、電子制御ユニット50は、本ルーチンを終了してステップS11に戻る。
【0041】
一方、差ΔFが正の値である場合(S17/Yes)、警告部53は、車両1が旋回中であるか否かを判別する(ステップS19)。車両1が旋回中であるか否かは、旋回状態検出部55の検出結果に基づいて判別される。例えば、旋回状態検出部55は、状態量センサ23により検出される車両1の横加速度ay又はヨー加速度ω、あるいは、操舵角センサ39により検出されるステアリングホイールの操舵角のうちの少なくとも一つの情報に基づいて車両1の旋回状態を検出する。転舵輪に設けられた転舵角センサを用いて車両1の旋回状態が検出されてもよい。
【0042】
車両1が旋回中でない場合、つまり、車両1が直進中である場合(S19/Yes)、警告部53は、左右前方のスピーカ35a,35bから警告音を発生させる(ステップS39)。車両1の直進走行中に少なくともいずれかの車輪3のタイヤ力Fが限界状態になっている場合、車両1が操縦不能になってそのまま前方に突っ込むおそれがある。このため、警告部53は、左右前方のスピーカ35a,35bから警告音を発生させ、車両1の乗員に対して車両1の前方からの衝突のおそれを事前に察知させる。
【0043】
一方、車両1が旋回中である場合(S19/Yes)、警告部53は、タイヤ力Fが警告開始閾値F_minを超えた車輪3は全ての車輪3であるか否かを判別する(ステップS21)。全ての車輪3のタイヤ力Fが警告開始閾値F_minを超えている場合(S21/Yes)、警告部53は、全てのスピーカ35から警告音を発生させる(ステップS23)。車両1の旋回中に全ての車輪3のタイヤ力Fが限界状態になっている場合、車両1が操縦不能になってどのような挙動を示すか予測することが困難である。このため、警告部53は、全てのスピーカ35から警告音を発生させ、車両1の乗員に対して衝突のおそれを事前に察知させる。
【0044】
一方、タイヤ力Fが警告開始閾値F_minを超えた車輪3が全ての車輪3ではない場合(S21/No)、警告部53は、タイヤ力Fが警告開始閾値F_minを超えた車輪3が前輪であるか否かを判別する(ステップS25)。タイヤ力Fが警告開始閾値F_minを超えた車輪3が前輪である場合(S25/Yes)、警告部53は、車両1が左旋回中であるか否かを判別する(ステップS27)。
【0045】
車両1が左旋回中である場合(S27/Yes)、警告部53は、右前方のスピーカ35bから警告音を発生させる(ステップS31)。車両1が左旋回中にいずれかの前輪3LF,3RFが限界状態になっている場合、車両1はアンダーステア状態になって右前方に突っ込むおそれがある。このため、警告部53は、右前方のスピーカ35bから警告音を発生させ、車両1の乗員に対して車両1の右前方からの衝突のおそれを事前に察知させる。
【0046】
一方、車両1が左旋回中でない場合、つまり、右旋回中である場合(S27/No)、警告部53は、左前方のスピーカ35aから警告音を発生させる(ステップS29)。車両1が右旋回中にいずれかの前輪3LF,3RFが限界状態になっている場合、車両1はアンダーステア状態になって左前方に突っ込むおそれがある。このため、警告部53は、左前方のスピーカ35aから警告音を発生させ、車両1の乗員に対して車両1の左前方からの衝突のおそれを事前に察知させる。
【0047】
上述のステップS25において、タイヤ力Fが警告開始閾値F_minを超えた車輪3が前輪でない場合(S25/No)、警告部53は、車両1が左旋回中であるか否かを判別する(ステップS33)。
【0048】
車両1が左旋回中である場合(S33/Yes)、警告部53は、右後方のスピーカ35dから警告音を発生させる(ステップS35)。車両1が左旋回中にいずれかの後輪3LR,3RRが限界状態になっている場合、車両1はオーバーステア状態になって右後方から突っ込むおそれがある。このため、警告部53は、右後方のスピーカ35dから警告音を発生させ、車両1の乗員に対して車両1の右後方からの衝突のおそれを事前に察知させる。
【0049】
一方、車両1が左旋回中でない場合、つまり、右旋回中である場合(S33/No)、警告部53は、左後方のスピーカ35cから警告音を発生させる(ステップS37)。車両1が右旋回中にいずれかの後輪3LR,3RRが限界状態になっている場合、車両1はオーバーステア状態になって左後方に突っ込むおそれがある。このため、警告部53は、左後方のスピーカ35cから警告音を発生させ、車両1の乗員に対して車両1の左後方からの衝突のおそれを事前に察知させる。
【0050】
このように、本実施形態に係る車両の制御装置では、いずれかの車輪3のタイヤ力Fが警告開始閾値F_minを超えた場合に、車両1の旋回状態に応じて選択されるスピーカ35から警告音が発生する。したがって、車両1の乗員は、警告音の到来方向に基づいて、聴覚により瞬時にスリップ限界に近い車輪3の存在、衝突の可能性及び予測される衝突位置を認識することができる。このため、スリップ限界に近い車輪3の存在、衝突の可能性及び予測される衝突位置を乗員が事前に察知することができ、仮に衝突が発生した場合の被害を軽減することができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、いずれかの車輪3のタイヤ力Fが警告開始閾値F_minを超えた場合に、車両1の旋回状態に応じて、乗員に聞こえる警告音の到来方向が異なっていたが、警告音の到来方向に代えて、あるいは、警告音の到来方向と併せて、警告音の種類が異なってもよい。例えば、車両1の旋回状態に応じて、警告音の高さや音色が異なってもよい。警告音の高さや音色を異ならせることによっても、運転者は、聴覚により瞬時にスリップ限界に近い車輪3の存在、衝突の可能性及び予測される衝突位置を認識することができる。
【0052】
また、上記実施形態において、タイヤ力Fが限界状態の車輪3の位置を特定し(ステップS25)、車両1の旋回状態を判別した後(ステップS27)、さらに、撮像装置21による検出結果に基づいて車両1の進行方向に存在する障害物を検知し、警告音を発生させるスピーカ35を選択してもよい。これにより、車両1の旋回方向及びアンダーステア状態又はオーバーステア状態の判別結果と併せて障害物の有無の情報を用いて、車両1の衝突位置が予測され、車両1の乗員に対して予測される衝突位置を認識させることができる。
【0053】
(応用例)
以上説明した本実施形態に係る車両の制御装置は種々の変形が可能である。
例えば、警告部53は、警告音を発生させる際に、タイヤ力Fの大きさに応じて音量又は警告音の発生間隔を異ならせてもよい。具体的に、警告部53は、タイヤ力限界値F_maxと警告開始閾値F_minとの差Xから、タイヤ力限界値F_maxとタイヤ力Fとの差X1を引いた値(X−X1)が大きくなるにつれて警告音の音量を大きくし、かつ、警告音の発生間隔を短くすることができる。これにより、路面摩擦係数μの違いによってタイヤ力限界値F_max及び警告開始閾値F_minが変動する場合であっても、警告音の音量や発生間隔の制御を適切に行うことができる。
【0054】
図5は、警告部53が、車輪3に生じるタイヤ力Fがタイヤ力限界値F_maxに近付くにつれて警告音の音量を大きくし、かつ、警告音の発生間隔を短くする例を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、例えば、図4に示すフローチャートのステップS17とステップS19との間に実行される。
【0055】
ステップS17において、タイヤ力Fから警告開始閾値F_minを引いた差ΔFが正の値であると判別された場合(S17/Yes)、警告部53は、タイヤ力限界値F_maxから警告開始閾値F_minを引いた差X、及び、タイヤ力限界値F_maxからタイヤ力Fを引いた差X1を算出する(ステップS41)。
【0056】
次いで、警告部53は、差Xから差X1を引いた値に、あらかじめ設定された係数αをかけて、警告音の音量Dを算出する(ステップS43)。ステップS43では、タイヤ力Fがタイヤ力限界値F_maxに近付くほど、音量Dは大きな値に設定される。また、差Xから差X1を引いた値を用いることにより、走行路の路面状態によってタイヤ力限界値F_maxが変化する場合であっても音量Dを適切に設定することができる。
【0057】
次いで、警告部53は、差Xから差X1を引いた値に、あらかじめ設定された係数βをかけて、警告音の発生間隔tを算出する(ステップS45)。例えば、ステップS45では、タイヤ力がタイヤ力限界値F_maxに近付くほど、警告音の発生間隔tが短く設定される。また、差Xから差X1を引いた値を用いることにより、走行路の路面状態によってタイヤ力限界値F_maxが変化する場合であっても警告音の発生間隔tを適切に設定することができる。
【0058】
なお、警告音の発生間隔tを異ならせるにあたり、間欠的に発生させる警告音の発生時間を異ならせてもよく、間欠的に発生させる警告音の無音の時間を異ならせてもよく、その両者を異ならせてもよい。
【0059】
警告部53は、ステップS29、ステップS31、ステップS35及びステップS37において警告音を発生させる際に、算出された音量D及び発生間隔で警告音を発生させる。これにより、車両1の乗員は、車両1がスリップする可能性の大きさを察知して衝突に対して身構えることができるため、仮に衝突が発生した場合の被害を軽減することができる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0061】
1 車両
3,3LF,3RF,3LR,3RR 車輪
31,31LF,31RF,31LR,31RR タイヤ力センサ
35,35a,35b,35c,35d スピーカ
50 電子制御ユニット
51 タイヤ力推定部
53 警告部
55 旋回状態検出部
図1
図2
図3
図4
図5