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特開2020-157820車両の制御装置、車両の制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-157820(P2020-157820A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】車両の制御装置、車両の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/08 20120101AFI20200904BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20200904BHJP
【FI】
   B60W40/08
   G08G1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-56887(P2019-56887)
(22)【出願日】2019年3月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 育郎
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA26
3D241BA33
3D241BA51
3D241BB27
3D241CD05
3D241CE02
3D241CE03
3D241CE04
3D241CE08
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DB20Z
3D241DC02Z
3D241DC03Z
3D241DC22Z
3D241DC23Z
3D241DC31Z
3D241DC32Z
3D241DC33Z
3D241DC34Z
3D241DC43Z
3D241DC46Z
3D241DC51Z
3D241DC60Z
3D241DD05Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC02
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF05
5H181FF22
5H181FF25
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車両間の乗員の運転特徴に応じて、最適な自動運転を行う。
【解決手段】自動運転中に相互作用する車両を判定する相互作用判定部170と、相互作用する車両間の乗員の感情に基づいて、相互作用する車両を制御する車両制御部185と、を備える、車両の走行制御システム1000が提供される。この構成により、車両間の乗員の運転特徴に応じて、最適な自動運転を行うことが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転中に相互作用する車両を判定する相互作用判定部と、
前記相互作用判定部により相互作用すると判定された車両間の乗員の感情を取得する乗員感情取得部と、
前記乗員の感情に基づいて、相互作用する車両を制御する車両制御部と、
を備えることを特徴とする、車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御は、複数車両の協調制御であることを特徴とする、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記相互作用する車両の制御特徴パラメタを取得する制御特徴パラメタ取得部と、
前記相互作用する車両の前記制御特徴パラメタに基づいて、共通制御特徴パラメタを算出する共通制御特徴パラメタ算出部と、を備え、
前記車両制御部は、前記共通制御特徴パラメタに基づいて、車両を制御することを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御特徴パラメタは、乗員の運転特性を表すパラメタであることを特徴とする、請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記相互作用判定部は、予め設定された相互作用閾値に基づいて、前記相互作用する車両を判定し、前記相互作用閾値は、手動運転時の周囲環境と対応付けられた乗員の感情から設定されたことを特徴とする、請求項3又は4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
周辺環境を判断する周辺環境判断部を備え、
前記相互作用判定部は、前記周辺環境判断部が判断した周辺環境に対応する前記相互作用閾値に基づいて、前記相互作用する車両を判定することを特徴とする、請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記共通制御特徴パラメタ算出部は、前記相互作用する車両の乗員の感情に基づいて前記相互作用する車両の前記制御特徴パラメタの重みづけを行い、前記共通制御特徴パラメタを算出することを特徴とする、請求項3〜6のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記共通制御特徴パラメタ算出部は、前記相互作用する車両の乗員の感情に基づいて、前記相互作用する車両の乗員の感情が良化する前記共通制御特徴パラメタを算出することを特徴とする、請求項7に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記共通制御特徴パラメタ算出部は、前記相互作用する車両のうち、感情レベルがより悪い車両の前記制御特徴パラメタに前記共通制御特徴パラメタを近付けることを特徴とする、請求項7又は8に記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記乗員感情取得部は、前記共通制御特徴パラメタを反映した車両制御の前後において、乗員の感情を推定し、
前記共通制御特徴パラメタ算出部は、推定された前記感情に基づいて、車両制御の前後において乗員の感情が悪化しないよう前記共通制御特徴パラメタを算出することを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項11】
前記共通制御特徴パラメタ算出部は、前記相互作用する車両の乗員の運転安全レベルに基づいて重み付けを行い、前記共通制御特徴パラメタを算出することを特徴とする、請求項3〜6のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項12】
前記制御特徴パラメタは、手動運転時の乗員の運転特徴に基づいて算出されることを特徴とする、請求項3〜11のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項13】
前記制御特徴パラメタは、手動運転時の乗員の運転特徴と、当該手動運転時の周辺環境に応じてデータベースに予め格納され、
前記制御特徴パラメタ取得部は、前記相互作用する車両が判定された際の周辺環境に応じて、当該周辺環境に対応する前記制御特徴パラメタを取得することを特徴とする、請求項12に記載の車両の制御装置。
【請求項14】
自動運転中に相互作用する車両を判定するステップと、
相互作用する車両間の乗員の感情に基づいて、相互作用する車両を制御するステップと、
を備えることを特徴とする、車両の制御方法。
【請求項15】
自動運転中に相互作用する車両を判定する手段、
相互作用する車両間の乗員の感情に基づいて、相互作用する車両を制御する手段、
前記共通制御特徴パラメタに基づいて、車両を制御する手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項16】
自動運転中に複数の車両の制御特徴パラメタを取得する制御特徴パラメタ取得部と、
前記複数の車両の乗員の感情に基づいて前記複数の車両の前記制御特徴パラメタの重みづけを行い、共通制御特徴パラメタを算出する共通制御特徴パラメタ算出部と、
前記共通制御特徴パラメタに基づいて、車両を制御する車両制御部と、
を備えることを特徴とする、車両の制御装置。
【請求項17】
自動運転中に複数の車両の制御特徴パラメタを取得するステップと、
前記複数の車両の乗員の感情に基づいて前記複数の車両の前記制御特徴パラメタの重みづけを行い、共通制御特徴パラメタを算出するステップと、
前記共通制御特徴パラメタに基づいて、車両を制御するステップと、
を備えることを特徴とする、車両の制御方法。
【請求項18】
複数の車両の制御特徴パラメタを取得する手段、
前記複数の車両の前記制御特徴パラメタに基づいて、前記複数の車両の乗員の感情に基づいて重みづけを行い、共通制御特徴パラメタを算出する手段、
前記共通制御特徴パラメタに基づいて、前記複数の車両を制御する手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置、車両の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1,2に記載されているように、自動運転車両において、走行制御へ乗員(ドライバや同乗者)の運転特性を反映することで、不安や違和感を抑制する技術が提案されている。
【0003】
また、下記の特許文献3,4に記載されているように、乗員の不安を測定、その不安が生じる要因を判定し、それに応じて走行制御を調整することで不安を小さくする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−89801号公報
【特許文献2】国際公開第2017/057060号
【特許文献3】特開2016−52881号公報
【特許文献4】特開2017−136922号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】自動車技術会論文集Vol.40, No.3, May 2009.「加速・操舵の個人差・状況差分析」
【非特許文献2】自動車技術会シンポジウムテキスト, No.06-05, p.71-78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の車両が走行している場合に、これらが協調した運転を行うためには、乗員の感情にストレスを生じさせることなく運転が行われることが望ましい。しかしながら、車両が同じ状況であっても、乗員が異なれば運転特徴や感情レベルは異なる。例えば、先行車との車間距離を例に挙げると、20mが最適でありこれ以下の車間距離では怖さを感じる人がいる一方、30mが最適でありこれ以下の車間距離では怖さを感じる人もいる。また、怖さを感じる距離は、車両の速度、道幅、交通量など、状況によっても変化する。
【0007】
また、車両毎に運転特性を反映した走行制御を適用すると、ある状況下において各車両の動作がバラバラになり、かえって不安や違和感が助長されうる。例えば自動運転車両が2台が連なって信号待ちをしている状況を想定した場合、前方車両ドライバが慎重かつ後方車両ドライバがせっかちであり、各々の車両にその特性が反映された走行制御が適用されている場合、前車と後車の停止状態からの加速が異なり、後車ドライバは苛立ちを感じると考えられる。
【0008】
また特許文献3, 4に記載されているような、測定した感情に応じて調整を加える方法では、不安や違和感を覚えてからの制御になるため、事後対応になってしまう問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、車両間の乗員の運転特徴に応じて、最適な自動運転を行うことが可能な、新規かつ改良された車両の制御装置、車両の制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、自動運転中に相互作用する車両を判定する相互作用判定部と、前記相互作用判定部により相互作用すると判定された車両間の乗員の感情を取得する乗員感情取得部と、前記乗員の感情に基づいて、相互作用する車両を制御する車両制御部と、を備える、車両の制御装置が提供される。
前記制御は、複数車両の協調制御であっても良い。
また、前記相互作用する車両の制御特徴パラメタを取得する制御特徴パラメタ取得部と、前記相互作用する車両の前記制御特徴パラメタに基づいて、共通制御特徴パラメタを算出する共通制御特徴パラメタ算出部と、を備え、前記車両制御部は、前記共通制御特徴パラメタに基づいて、車両を制御するものであっても良い。
【0011】
また、前記制御特徴パラメタは、乗員の運転特性を表すパラメタであっても良い。
【0012】
また、前記相互作用判定部は、予め設定された相互作用閾値に基づいて、前記相互作用する車両を判定し、前記相互作用閾値は、手動運転時の周囲環境と対応付けられた乗員の感情から設定されたものであっても良い。
【0013】
また、周辺環境を判断する周辺環境判断部を備え、前記相互作用判定部は、前記周辺環境判断部が判断した周辺環境に対応する前記相互作用閾値に基づいて、前記相互作用する車両を判定するものであっても良い。
【0014】
また、前記共通制御特徴パラメタ算出部は、前記相互作用する車両の乗員の感情に基づいて前記相互作用する車両の前記制御特徴パラメタの重みづけを行い、前記共通制御特徴パラメタを算出するものであっても良い。
【0015】
また、前記共通制御特徴パラメタ算出部は、前記相互作用する車両の乗員の感情に基づいて、前記相互作用する車両の乗員の感情が良化する前記共通制御特徴パラメタを算出するものであっても良い。
【0016】
また、前記共通制御特徴パラメタ算出部は、前記相互作用する車両のうち、感情レベルがより悪い車両の前記制御特徴パラメタに前記共通制御特徴パラメタを近付けるものであっても良い。
【0017】
また、乗員の感情を推定する乗員感情推定部を備え、前記乗員感情推定部は、前記共通制御特徴パラメタを反映した車両制御の前後において、乗員の感情を推定し、前記共通制御特徴パラメタ算出部は、推定された前記感情に基づいて、車両制御の前後において乗員の感情が悪化しないよう前記共通制御特徴パラメタを算出するものであっても良い。
【0018】
また、前記共通制御特徴パラメタ算出部は、前記相互作用する車両の乗員の運転安全レベルに基づいて重み付けを行い、前記共通制御特徴パラメタを算出するものであっても良い。
【0019】
また、前記制御特徴パラメタは、手動運転時の乗員の運転特徴に基づいて算出されるものであっても良い。
【0020】
また、前記制御特徴パラメタは、手動運転時の乗員の運転特徴と、当該手動運転時の周辺環境に応じてデータベースに予め格納され、前記制御特徴パラメタ取得部は、前記相互作用する車両が判定された際の周辺環境に応じて、当該周辺環境に対応する前記制御特徴パラメタを取得するものであっても良い。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、自動運転中に相互作用する車両を判定するステップと、相互作用する車両間の乗員の感情に基づいて、相互作用する車両を制御するステップと、を備える、車両の制御方法が提供される。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、自動運転中に相互作用する車両を判定する手段、相互作用する車両間の乗員の感情に基づいて、相互作用する車両を制御する手段、としてコンピュータを機能させるためのプログラムが提供される。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、自動運転中に複数の車両の制御特徴パラメタを取得する制御特徴パラメタ取得部と、前記複数の車両の乗員の感情に基づいて前記複数の車両の前記制御特徴パラメタの重みづけを行い、共通制御特徴パラメタを算出する共通制御特徴パラメタ算出部と、前記共通制御特徴パラメタに基づいて、車両を制御する車両制御部と、を備える、車両の制御装置が提供される。
【0024】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、自動運転中に複数の車両の制御特徴パラメタを取得するステップと、前記複数の車両の乗員の感情に基づいて前記複数の車両の前記制御特徴パラメタの重みづけを行い、共通制御特徴パラメタを算出するステップと、前記共通制御特徴パラメタに基づいて、車両を制御するステップと、を備える、車両の制御方法が提供される。
【0025】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数の車両の制御特徴パラメタを取得する手段、前記複数の車両の前記制御特徴パラメタに基づいて、前記複数の車両の乗員の感情に基づいて重みづけを行い、共通制御特徴パラメタを算出する手段、前記共通制御特徴パラメタに基づいて、前記複数の車両を制御する手段、としてコンピュータを機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、車両間の乗員の運転特徴に応じて、最適な自動運転を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る車両走行制御システムとその周辺の構成を示す模式図である。
図2】車両走行制御システムで行われる処理を示すフローチャートである。
図3】車両走行制御システムで行われる処理を示すフローチャートである。
図4】車両走行制御システムで行われる処理を示すフローチャートである。
図5】相互作用閾値の決定方法を示す模式図である。
図6】車両同士が相互作用し得るか否かを判定する手法を示す模式図である。
図7】制御特徴パラメタの変更前と変更後を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
本実施形態では、運転特性が反映された走行制御下にある各々の車両について、それら車両が相互作用する位置に存在する場合、走行制御を特徴付けるパラメタ(制御特徴パラメタ)に対し、加重平均(重み付け)を行うことにより平均制御特徴パラメタを作成して、そのパラメタを反映した走行制御を当該車両それぞれに適用することで協調した走行を実現する。なお、「相互作用」とは、各々の車両が互いに影響を受け、一方の車両がドライバの意図する運転特性から外れた走行制御に至る場合をいう。また、「運転特性」とは、ドライバの意図する運転特性であって、ドライバによるアクセル、ブレーキ、操舵などにより実現される運転の特性である。例えば、前後車両が追従して走行する場合、または、車線変更の際に衝突する可能性のある程度に近距離に車両が存在する場合、などに相互作用を受け、一方の車両はドライバの意図する運転特性から外れることになる。例えば前記停止状態からの発進時であれば、前車は相対的に加速度が上昇、後車は低下することになる。
【0030】
また、前記の平均制御特徴パラメタを作成する際、各車両における乗員の感情状態を反映した重み付けを行っても良い。具体的には感情状態を生体情報などから把握し、当該車両間で感情状態が良化するよう重み付けをする。例えば前記停車状態からの発進時において、後車乗員の感情状態が悪く前車乗員が良い場合には、後車乗員に重きを置いた重み付けを行う。感情状態を数値化できるのであれば、その数値に基づき重み付けしても良い。
【0031】
平均制御特徴パラメタを作成する際、各々の車両乗員の運転安全レベルに基づき重み付けを行っても良い。つまり安全な運転をしているドライバの運転特性を優先する。
【0032】
この技術は運転特性の反映された自動運転車両に限らず適用できる。例えば運転特性の反映されていない自動運転の場合であっても、その走行制御を決めるパラメタはメーカが設定している。それらパラメタはメーカ毎に異なるため、この技術を適用可能である。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両走行制御システム1000とその周辺の構成を示す模式図である。車両走行制御システム(車両の制御装置)1000は、走行制御モード切替部100、周囲環境判断部110、運転操作学習部120、相互作用閾値決定部130、制御特徴パラメタデータベース(DB)140、相互作用閾値データベース(DB)150、乗員感情取得部160、相互作用判定部170、制御特徴パラメタ取得部175、平均制御特徴パラメタ算出部(共通制御特徴パラメタ算出部)180、車両制御部185、を有して構成されている。なお、車両走行制御システム1000の各構成要素は、回路(ハードウェア)、またはCPUなどの中央演算処理装置とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)によって構成されることができる。
【0034】
また、車両走行制御システム1000には、乗員認識センサ200、制御設定インタフェース300、周囲環境センサ400、車両操作センサ500、ナビゲーション装置600、生体センサ700、通信装置800、走行用アクチュエータ900が接続されている。車両走行制御システム1000は、通信装置800を介して、外部のサーバ2000と通信を行うことができる。
【0035】
乗員認識センサ200は、例えば乗員を撮影するカメラ等から構成され、乗員の顔の画像から乗員を認識する。制御設定インタフェース300は、運転制御モードの設定を行うインタフェースである。また、乗員認識センサ200は、乗員の発話を取得するマイクロフォン等を含む。
【0036】
周囲環境センサ400は、ステレオカメラ、単眼カメラ、ミリ波レーダ、赤外線センサ等から構成され、自車両周辺の人や車両などの位置、速度を測定する。周囲環境センサ400がステレオカメラから構成される場合、ステレオカメラは、CCDセンサ、CMOSセンサ等の撮像素子を有する左右1対のカメラを有して構成され、車両外の外部環境を撮像し、撮像した画像情報を車両走行制御システム1000へ送る。一例として、ステレオカメラは、色情報を取得可能なカラーカメラから構成され、車両のフロントガラスの上部に設置される。
【0037】
車両操作センサ500は、アクセル開度、ブレーキ踏み込み量、ステアリング操舵角などの車両操作量を検出するとともに、車両の速度、加速度、ヨーレートなど、車両操作の結果の運転状態を示すパラメタを検出するセンサである。車両操作センサ500は、車両内のCAN(Controller Area Network)で通信されている情報を取得するものであっても良い。
【0038】
ナビゲーション装置600は、地図情報に基づいて、現在地から目的地までの経路を検索する。このため、ナビゲーション装置600は、グローバル・ポジショニング・システム(GPS:Global Positioning System)等により車両の現在位置を取得することができる。また、ナビゲーション装置600は現在地まで車両が走行してきた経路を記憶している。
【0039】
生体センサ700は、脳波や脳血流、血圧、発汗、心電図、心拍数、眼球運動、瞳孔経などを検出するセンサである。生体センサ700が検出したこれらの情報、乗員認識センサ200が認識した乗員の顔情報などから、乗員の感情が推定される。
【0040】
ナビゲーション装置700は、地図情報に基づいて、現在地から目的地までの経路を検索する。このため、ナビゲーション装置700は、グローバル・ポジショニング・システム(GPS:Global Positioning System)等により車両の現在位置を取得することができる。また、ナビゲーション装置700は現在地まで車両が走行してきた経路を記憶している。
【0041】
通信装置800は、車両外部と通信を行い、各種情報を送受信する。特に、通信装置800は、外部のサーバ2000との通信や、他車両との車車間通信を行う。車両走行制御システム1000は、サーバ2000を介した通信、または車車間通信により、他車両と情報を共有する。
【0042】
図2図4は、車両走行制御システム1000で行われる処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS10では、システムを起動する。次のステップS12では、乗員認識センサ200により乗員の認識を行う。認識方法として、例えば、カメラを用いたドライバモニタリングシステム(DMS)などの顔画像から判別する方法を使用する。あるいは、スピーカによる車両走行システム1000からの問いかけに対し、マイクを用いて応答する形式などでも良い。
【0043】
次のステップS14では、運転制御モードの設定を行う。自動運転が可能な車両の場合、走行制御モードとして手動運転モードと自動運転モードの2種類が想定される。乗員が車両へ乗り込み、車両走行制御システム1000を起動した段階で、手動運転モードと自動運転モードのいずれかを選択することになる。また、走行中に切り替えが生じる場合もある。運転制御モードの設定は、乗員による、タッチパネルなどの制御設定インタフェース300への入力を介して行い、走行制御モード切替部100がモード切り替えを行う。
【0044】
次のステップS16では、自動運転モードであるか否かを判定し、手動運転モードである場合は、図4のステップS54に進む。車両を手動運転で操作する場合は、運転操作者(ドライバ)の運転操作特性を学習する機会となる。以下、ステップS54以降に行われる学習フェイズについて説明する。
【0045】
ステップS54では、乗員感情の取得を行う。手動運転により走行を開始する際、あるいは自動運転モードから手動運転に切り替わる際に、乗員(ドライバおよび同乗者)の感情を取得する。この段階で感情を取得する理由は、運転を開始した際、あるいは運転モードが変更された際の初期感情を把握することで、以降の手動モードにおける感情変化(例えばネガティブからポジティブへ変化したか)を継時的に把握できるようにするためである。
【0046】
乗員感情は、生体センサ700から取得した情報、乗員認識センサ200から認識した情報から、乗員感情取得部160により取得される。なお、乗員感情取得部160は、スマートフォンなどの機器から乗員感情を取得しても良い。これらのセンサが検出する情報として、脳波や脳血流、血圧、発汗、心電図、心拍数、眼球運動、瞳孔径、視線の動き、瞬きの回数などが挙げられ、これらを活用して乗員感情を推定する。一例として、血圧や心拍数が初期値よりも増加した場合、乗員が興奮して感情を害していることが推定できる。また、発汗量が初期値よりも増加した場合、乗員が感情を害していることが推定できる。また、乗員の感情は、乗員の発話内容、発話音量を取得し、発話内容や発話音量を分析することで推定することもできる。例えば、普段使わない言葉遣いをしたり、発話音量が普段よりも大きい場合、乗員が感情を害していることが推定できる。
【0047】
次のステップS56では、車両がドライバによって手動で操作され、走行を開始する。次のステップS58では、周囲環境センサ400により周囲環境を認識し、周囲環境を把握する。例えば、周囲環境センサ400である前後方カメラや前後方レーザーレーダから得られる情報を用い、またナビゲーション装置600から得られる位置情報、地図情報などにより、周囲環境判断部110が周囲環境情報を認識、把握する。具体的には、周囲環境判断部110は、周囲環境センサ400を構成するステレオカメラの左右1組のカメラによって撮像した左右1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって対象物までの距離情報を生成して取得することができる。同時に、周囲環境判断部110は、画像情報から被写体の位置情報を取得することができる。また、周囲環境判断部110は、三角測量の原理によって生成した距離情報に対して、周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報を予め設定しておいた三次元的な立体物データ等と比較することにより、立体物データや白線データ等を検出する。これにより、周囲環境判断部110は、人物、他車両、一時停止の標識、停止線、ETCゲートなどを認識することもできる。また、周囲環境判断部110は、三角測量の原理によって生成した人物、他車両との距離情報を用いて、人物や他車両との距離の変化量、相対速度を算出することができる。距離の変化量は、単位時間ごとに検知されるフレーム画像間の距離を積算することにより求めることができる。また、相対速度は、単位時間ごとに検知される距離を当該単位時間で割ることにより求めることができる。なお、周囲環境の認識は、前述した特許文献1に記載されている手法を適宜適用することもできる。
【0048】
次のステップS60では、車両の走行中に、認識した周囲環境においてドライバがどのような操作を行うか、車両操作センサ500(アクセル開度センサ、舵角センサなど)を介して検出し、運転操作学習部120が学習する。学習結果は、ドライバの制御特徴パラメタとして、制御特徴パラメタDB140に格納される。
【0049】
検出した運転操作と周囲環境の組合せから、ドライバの運転操作特性を抽出する方法について、以下で説明する。状況に応じて異なる個人の運転操作に関する先行研究は種々あるが、ここでは、前述した非特許文献1に示される運転操作モデルに基づいて説明を行う。発進加速時およびカーブ走行時のモデルで例示する。
【0050】
非特許文献1によれば、車両停止状態(あるいは低速走行状態)からの発進加速において、加速開始から終了(目標速度に達するまで)の期間長tobjは、以下の式(1)で表される。
【0051】
【数1】
【0052】
ここで、vobjは加速後の目標速度で、個人の嗜好や道路形状、制限速度、先行車/周囲車両の速度などによって制限を受ける。このため、手動運転時の運転操作を学ぶ前に状況毎に収集しておき、ここでは既知とする。またvは加速開始時の車速、aは平均加速度である。更に車速の過渡応答を表すため、以下の式(2)、式(3)により加速中の車速およびフィードバックゲインを変化させる。
【0053】
【数2】
【0054】
ここで、kは加速の過渡応答の違いを表すパラメタで、(0, 1)の範囲の値である。以上より、手動運転時の車速時系列データへ式(2)、式(3)を適用し、パラメタフィッティングを行うことで、ある状況における加速時の個人特徴を表すvobj, kを取得することができる。vobj, kは、制御特徴パラメタとして、そのタイミングで対応する周辺環境情報、車両操作情報、乗員感情などの情報とともに制御特徴パラメタDB140に格納される。
【0055】
また、非特許文献1によれば、カーブ走行時における車両前後の速度調整を含む操舵モデルが提案されている。すなわち、ドライバが前方注視点と旋回時の目標軌道との位置誤差に対して操舵を行うモデルである。ここで前方注視点までの距離Lは、ドライバ固有の予見時間Tおよび旋回時の車速vから以下の式(4)にて表される。
【0056】
【数3】
【0057】
また旋回時の速度vは、カーブ曲率cおよび許容可能な横加速度aに依存すると仮定し、手動運転時の運転操作を学ぶ前にカーブ曲率などの周囲状況毎に収集しておき、ここでは既知とする。操舵ゲインGは以下の式(5)で表される。
【0058】
【数4】
【0059】
ここで、nは、操舵系のトータルギヤ比、lは前後車軸間距離を示す。式(5)を非特許文献2に示される予見・予測制御モデルに適用し、パラメタフィッティングを行うことで、カーブ走行時におけるドライバの個人特性を表すv, Tpを得る。v, Tpは、制御特徴パラメタとして、対応する周辺環境情報とともに制御特徴パラメタDB140に格納される。
【0060】
上記以外にも様々な状況について種々のモデルが提案されている。このようにして、様々な状況における運転操作について、ドライバ固有の特性(特徴量)を抽出することができる。抽出された特徴は、制御特徴パラメタDB140に格納する。なお、特許文献2に示されるような、運転特徴そのものを関数化する手法を採用しても良い。この場合、以降の平均化演算は当該関数を対象とする。
【0061】
なお、得られた制御特徴パラメタは、後述する平均制御特徴パラメタ算出に活用するため、通信装置800を介してサーバ2000へアップロードする。
【0062】
次のステップS62では、運転特性(個人に紐付いた制御特徴パラメタ)の抽出を行った後、乗員感情を取得する。これには2つの目的があり、1つ目は他車両との相互作用の判定のため(後述)であり、2つ目は手動操作に対して乗員(ドライバ/同乗者)がどのように感じたかを取得するためである。
【0063】
上記の2つ目の目的に関し、ドライバの感情が悪化した場合には、その操作を自らの意図とは関係なく行っている可能性が考えられる。例えば、急な横入りに対して急ブレーキを踏む場合などが考えられる。こういった操作は個人特徴を含むが、積極的に再現する必要が無いため、自動運転モード時に反映しなくても良い(より安全で確実な方法を車両システム側で提供できる場合に限る)。
【0064】
また、同乗者の感情が悪化した場合には、同乗者はドライバの運転操作特性を好まないと考えられる。また、感情が良化した場合、ドライバの運転操作特性を好意的に捉えていると考えられる。このため、同乗者が運転せず前記制御特徴パラメタを持たない場合、ドライバの運転特性に対する同乗者の感情応答をもって、同乗者の運転特性としても良い(同乗者の制御特徴パラメタとして、ドライバの好ましいパラメタを採用する)。
【0065】
次のステップS64では、手動運転中における乗員感情を基に、相互作用閾値決定部130が、他車両との相互作用閾値を決定する。ここで、他車両との相互作用とは、当該車両が自動運転モードにおいて乗員運転特性を反映して走行している際に、他車両と接近することで車両制御に変更を加える必要がある状態を指す。
【0066】
例えば自車が、片側一車線の直線道を自動運転にて60km/hで定速巡航しており、自車乗員は60km/hが好ましい状況において、前方に40km/hで走行する他車があり、この他車の乗員は40km/hが好ましい場合を想定する。両車の距離が徐々に近づいている場合、両車が制御を変更せずに走行を続ければ衝突してしまうため、ある距離まで近づいたら速度を変化させ衝突を回避する。後続車両が減速する場合を考えると、減速を開始する際の距離(タイミング)によっては、乗員は怖さや不安、違和感を覚える。例えば、乗員が想像していたよりも前方車に近づいてから減速するなどの場合が該当する。このような場合、より手前から減速し始める必要がある。
【0067】
同様の状況は手動運転時にも発生するため、その際に乗員の特性を把握しておく。つまり、上述した追従走行の例を手動運転時に行うと、ドライバ操作によっては乗員が怖さや不安、違和感を覚えるため、様々な状況を繰り返し経験することで、各乗員が怖さなどを感じない距離を学習することが可能である。このため、感情取得から得られる情報と紐付いた、距離へマージンを持たせた値を適切な制御変更タイミングとし、相互作用閾値とする。なお、相互作用閾値の値は、車両出荷時には、所定の初期値に設定されていても良く、手動運転の履歴によって変更せずに一律の値としておいても良い。
【0068】
図5は、相互作用閾値の決定方法を示す模式図である。ここでは、相互作用に関する値を先行車(相互作用対象)との距離とする。図5では、相互作用対象である先行車との距離(横軸)と、乗員の不安レベル(縦軸)との関係を示している。図5に示すように、相互作用対象との距離が小さくなるほど、乗員の不安レベルは大きくなる。手動運転時に、先行車との距離と紐付いた乗員の不安レベルを取得しておくことで、図5に示すような怖さ発生ポイントの距離が判る。相互作用閾値は、怖さ発生ポイントの距離に対して、マージンを加味した値とすることができる。決定された相互作用閾値は、相互作用閾値DB150に格納される。また、相互作用閾値は、通信装置800を介して他車両と共有されても良い。
【0069】
なお、上述の例では、相互作用を判定するパラメタとして車間距離を例示したが、車間距離以外にも様々なパラメタを用いることができる。例えば、道路の道幅、路肩に駐車している駐車車両の台数、歩行者の数(人通り)、カーブの曲率、路面状況(ドライ、ウェット)、天候、時刻などの要因に応じて、乗員の不安レベルは異なる。また、手動運転時の車両操作によっても、乗員の不安レベルは異なる。相互作用閾値を定める際には、これらの要因(周囲環境情報、車両操作情報)と紐付けて相互作用閾値を定める。相互作用閾値DB150には、周辺環境情報、車両操作情報と紐付けた相互作用閾値が格納される。
【0070】
なお、相互作用の対象は同一車線上の前後数台、および左右車線(順方向/逆方向を含む)の数台とする。例えば前後20m、左右5m程度の車両を対象とする。
【0071】
以上から、ある状況における運転特性(制御特徴パラメタ)と、その特性に紐づけられた乗員感情および相互作用閾値が取得できたことになる。次のステップS66では、これらを制御特徴パラメタDB140へ登録し、自動運転時に活用する。
【0072】
なお、制御特徴パラメタ、乗員感情、相互作用閾値は、学習を重ねるほどドライバの本質的な特性を反映することが期待されるため、累積平均をとるなどして更新しても良い。
【0073】
手動運転時の学習は以上説明した処理により実施する。この処理は、ステップS68の判定において、運転制御モードが自動運転モードへ切り替わった際に終了する(処理内容が図2のステップS16に移行する)。あるいは、この処理は、ステップS70の判定で車両システムが停止状態に移行した場合に終了する。
【0074】
次に、自動運転時の運転特性反映フェイズについて説明する。当該車両を自動運転モードへ設定した場合、手動運転時に取得した制御特徴パラメタによって車両走行制御を行う。以下では自動運転モード下の複数車両において、それら車両が相互作用しうる位置に存在する場合、当該車両を協調して制御可能にする技術について説明する。
【0075】
先ず、図2のステップS16で自動運転モードと判定された場合はステップS18へ進む。ステップS18では、経路設定を行う。ナビゲーション装置600により目的地を設定することで、距離や所要時間、乗員趣向、交通状況などの観点から走行経路を複数提示する。複数の候補経路の中から、乗員の選択により、あるいはシステムが最適な選択を行うことにより、経路が設定される。
【0076】
走行経路の情報は状況変化に応じて修正されていくが、当該車両は現在からゴール地点までの経路を把握して走行する。この経路情報は車両間の相互作用を判定する際に使用する(後述)。このため、経路情報は、サーバ2000に送信され、サーバ2000を介して他車両に送信される。また、経路情報は、車車間通信により他車両に送信される。これにより、各車両は各々の経路情報を共有する。
【0077】
次のステップS20では、走行を開始する前に、乗員の感情を取得する。走行前に取得することで、走行開始時の感情初期値を把握することができる。次のステップS22では、乗員特性を反映した自動運転制御による走行を開始する。次のステップS24では、図4のステップS56と同様の手法で周囲環境を認識し、把握する。
【0078】
次のステップS26では、乗員運転特性、感情に応じた運転制御を行う。手動運転時の学習から、ある状況における運転特性とそれに紐づけられた乗員感情が得られている。自動運転時には、乗員感情変化が良好であった(あるいはニュートラルであった)走行制御を、運転操作モデルおよび制御特徴パラメタに基づいて実現する。上述したように、制御特徴パラメタと、周辺環境情報、車両操作情報、乗員感情などの情報が対応付けて制御特徴パラメタDB140に格納されている。従って、ステップS24で認識した周辺環境に対して、最も感情が良好な制御特徴パラメタを制御特徴パラメタDB140から抽出できる。そして、抽出した制御特徴パラメタで自動運転を行うことで、乗員の感情を良好にすることができる。
【0079】
次のステップS28では、周辺車両を検出する。そして、自動運転モードを実行中、他の自動運転車両との間で相互作用が生じるか判定する。
【0080】
具体的には、先ず、各車両の持つ経路情報を参照することで、車両同士が相互作用しうるか否かを判定する。図6は、車両同士が相互作用し得るか否かを判定する手法を示す模式図である。図6では、直線道路の途中に左への分岐路があり、車両A、車両Bが走行している場合に、相互作用する場合を左図に、相互作用しない場合を右図に示している。
【0081】
例えば同一車線上にて、自車(車両A)が先行車(車両B)の後方からより速い速度で近づいている状況を考える。図6の左図に示すように、両車の経路が同一の場合、いずれ車間距離は相互作用閾値に至ることが予測される。このような状態の時、先行車(車両B)は自車(車両A)と相互作用し得る車両(周囲車両)として検出される。
【0082】
一方、図6の右図に示すように、車両Aと車両Bの経路が同じでなく、車両Bが分岐を左に曲がる経路を取る場合は、車間距離は相互作用閾値に至らない。このような状態の時、先行車(車両B)は自車(車両A)と相互作用しない車両(周囲車両)として検出される。
【0083】
ここで、相互作用しうるかを判断する条件を、t秒後に相互作用距離まで近づくかどうかとする。これは、両車の情報が共有されることで、両車の相対速度と経路上の相対距離を参照することで判断できる。tはユーザが個別に設定しても良いし、あらかじめメーカが設定しても良い。なお、t秒後に車両間隔が相互作用閾値以上であれば、相互作用しないと判断する。両車の情報(車速や加速度、経路上の相対距離など)は、サーバ2000を介した通信、または車車間通信にて共有する。
【0084】
次のステップS30では、相互作用の可能性があるか否かを判定し、相互作用の可能性がある場合は図3のステップS32へ進む。一方、相互作用の可能性が無い場合は、ステップS24に戻る。
【0085】
全ての他車両についてステップS32の相互判定を行うこととすると、相互判定のための処理負荷が増大する可能性がある。一方、各車両の経路情報に基づいて、相互作用し得る車両のみについて相互作用判定を行うことで、処理負荷を大幅に軽減することができる。
【0086】
図3のステップS32では、相互作用判定部170が、手動運転時に決定した相互作用閾値を用いて相互作用判定を行う。この際、相互作用閾値DB150には、周辺環境情報と紐付けた相互作用閾値が格納されているため、ステップS28で得られた周辺環境の情報に基づいて、対応する相互作用閾値を適用する。これにより、周囲環境情報に応じて、乗員を不安に感じさせることなく、相互作用する車両についての協調制御に移行することができる。相互作用判定について、自車と先行車との距離を例に挙げて説明すると、ステップS34で自車と先行車との距離が相互作用閾値以下であった場合、次のステップ36へ移行する。一方、自車と先行車との距離が相互作用閾値以下でない場合は、ステップS32に戻り、相互作用閾値による判定を継続する。なお、自車と先行車で相互判定閾値が異なる場合は、より相互判定がされ易い閾値を採用することができる。例えば、自車の相互判定閾値が車間距離30mであり、先行車の相互判定閾値が車間距離20mの場合、より相互判定がされ易い自車の相互判定閾値を用いて相互作用判定を行うことができる。この場合、自車の相互作用判定条件が成立すると、他車にその旨を送信することで、他車についても相互作用判定条件が成立することになり、両車が協調制御を開始する。
【0087】
ステップS36では、後述する協調制御による制御パラメタ変更の前に、乗員の感情(レベル)を取得し、乗員感情を把握しておく。取得の目的は、後のステップで、(1)パラメタ変更に対する制限フィードバックをかけるため、(2)感情レベル変化に応じて車両制御パラメタの重み付け計算を実施するため、の2つがある。いずれも後述する。
【0088】
次のステップS38では、相互作用する複数の車両の平均制御を実施する。具体的に、制御特徴パラメタ取得部175が、通信装置800を介して、相互作用する複数の車両(自車を含む)の制御特徴パラメタを取得し、平均制御特徴パラメタ算出部180が平均制御特徴パラメタ算出し、これらの複数の車両に適用する。そして、相互作用する各車両が、平均制御特徴パラメタを当該車両間で共有する。共有方法として、サーバ2000上にアップロードした平均制御特徴パラメタを各車両が取得する、車車間通信で相互に通信を行う、などの手法を適用できる。相互作用する各車両は、平均制御特徴パラメタに基づいて、車両制御部185が走行用アクチュエータ900を制御する。これにより、相互作用する複数の車両間において、共通の平均制御特徴パラメタ(共通制御特徴パラメタ)により車両制御が行われる。
【0089】
制御パラメタはドライバ運転特徴が反映されたものだけでなく、メーカなどが設定した値であっても良い。共有後、それら制御特徴パラメタの平均値を算出する。最も単純には、算術平均(相加平均)が考えらえる。
【0090】
制御特徴パラメタ変更前の感情に基づき、感情状態の悪い乗員がいる車両側を重視した重み付けしても良い。例えば、感情をポジティブ(Positive)、ネガティブ(Negative)の2通りで各5段階のレベル付けが可能であるシステムを搭載し、乗員運転特性を反映した自動運転が可能な車両を考える。この車両が2台連なって停止状態から発車する状況において、後車乗員の感情レベルがネガティブ3、前車乗員の感情レベルがポジティブ2であったとする。この時に、両者の感情レベルは、ポジティブ5(最も良い感情レベル)を基準にすると後車は8(=|−3−5|)、前車は3(=|2−5|)と表される。これに基づき、例えば加重平均を行う場合、加速時における平均制御パラメタを以下の式(6)、式(7)の様に算出することができる。
【0091】
【数5】
【0092】
但し、vobj,front, vobj,rearは、前車および後車乗員の加速後の目標車速であり、kfront, rearは前車および後車乗員の過渡応答パラメタである。これらの値は、上述した式(2)、式(3)により、制御特徴パラメタとして予め求められているものである。この結果、後車乗員の制御特徴パラメタに近い平均制御パラメタvobj,ave, kaveを得ることができる。
【0093】
図7は、上記の例の場合に、制御特徴パラメタの変更前と変更後を示す模式図である。自車(車両A)が先行車(車両B)の後方からより速い速度で近づいている状況を考える。制御パラメタの変更前は、車両Aの目標車速はvobj,rearであり、車両Bの目標速度はvobj,frontである。また、車両Aの過渡応答パラメタはkrearであり、車両Bの過渡応答パラメタはkfrontである。制御パラメタの変更後は、車両A、車両Bともに、目標車速はvobj,aveとなり、過渡応答パラメタはkaveとなる。これにより、車両Aと車両Bの乗員の全体として、乗員の感情を良化することができる。
【0094】
また、カーブ走行時において、車両2台が相互作用する距離で、前記同様の感情状態であった場合(後車乗員の感情レベルがネガティブ3、前車乗員の感情レベルがポジティブ2)、例えば加重平均を行う場合、平均制御パラメタは以下の式(8)、式(9)で算出される。
【0095】
【数6】
【0096】
但し、vfront, vrearは、前車および後車乗員の目標車速、Tp,front, Tp,rearは前車および後車乗員の予見時間である。これらの値は、上述した式(4)、式(5)により、制御特徴パラメタとして予め求められているものである。この結果、後車乗員の制御特徴パラメタに近い平均制御パラメタvave, Tp,aveを得る。
【0097】
複数の乗員が存在する場合、どの乗員を対象とするか設定しても良い。例えば運転席に座る乗員を対象とするなど走行前に設定する方法がある。あるいはその場で最も感情レベルが悪化している人を対象にする方法もある。もしくは当該車両の乗員全員の平均値であっても良い。
【0098】
重み付け方法として、乗員の感情以外を用いても良く、例えば乗員の安全運転レベルを変数としても良い。運転安全レベルの算出方法として、交通事故や違反の回数、頻度、あるいは日頃の(手動操作時の)運転操作、メーカなどの設定する指標に基づいて算出する方法が考えられる。上述した例では、後車乗員の重みづけを高くし、後車乗員の感情に近い平均制御特徴パラメタを設定したが、安全運転レベルを用いる場合は、安全運転レベルの高い乗員に近い平均均制御特徴パラメタを設定する。
【0099】
そして、算出した平均制御パラメタを相互作用する複数の車両に適用する。この結果、相互作用する車両間の制御パラメタは同一になる。そして、平均制御パラメタに基づき、相互作用する車両の各種走行用アクチュエータ900を駆動させる。相互作用する各車両の制御パラメタが同一になるため、協調した走行制御が可能になる。
【0100】
平均制御特徴パラメタを相互作用する各車両へ反映する場合、制御が変更されることで乗員が違和感を覚える可能性がある。このため変更に際しては、その旨を音声アナウンスしても良いし、ディスプレイに表示しても良い。
【0101】
次のステップS40では、相互作用する各車両において、制御パラメタを変更してから、乗員の感情状態を取得する。
【0102】
次のステップS42では、感情が良化したか否かを判定し、乗員の感情が良化した場合、次のステップS44へ進む。また、感情が良化していない場合(悪化した場合)、ステップS38へ戻り、その感情状態に応じて再度平均制御パラメタを算出する。
【0103】
ステップS42において、乗員感情の良化判定は、平均制御パラメタを算出する際の対象とした乗員について行う。あるいは最も感情レベルが悪い状態の乗員を対象として感情良化判定を行っても良い。また、車両の乗員全員の感情レベルの平均値に基づいて、感情良化判定を行っても良い。
【0104】
感情良化判定について、例えば車両Aの乗員aは感情が良化したが車両Bの乗員bは悪化したという状況が発生しうる。このような場合、相互作用する車両全体での感情が良化していれば、良化したとみなす。例えば、後車乗員の感情レベルがネガティブ3であり、前車乗員の感情レベルがポジティブ2である上述した追従走行において、パラメタ変更後に後車乗員の感情レベルがネガティブ1であり、前車乗員の感情レベルがポジティブ2になったとする。この時に、両車の感情レベルは、ポジティブ5を基準とすると、後車は6(=|−1−5|)、前車は3(=|2−5|)となり、変更前:11(=8+3)、変更後:9(=6+3)となる。この場合、良化したと判定する。
【0105】
安全運転レベルに応じた平均制御パラメタの場合は、感情状態に基づくフィードバックを行わない。
【0106】
なお、制御パラメタ変更において感情が大きく悪化した場合、その平均制御パラメタを乗員が嫌う運転特徴とみなし、以降の制御では避けるようにしても良い。
【0107】
ステップS44では、相互作用判定を行う。複数の車両が相互作用する状況(例えば、車間距離が相互作用判定閾値を下回る状況)になってから、走行を続けていくうちに、相互作用しなくなる状況に至る。例えば同一車線上を2台が連なって走行していたが、目的地に応じて一方が他の道に逸れた場合、その相互作用は無くなる。
【0108】
相互作用が無くなったかどうかは、ステップS34と同様に相互判定閾値から判断する。ステップS46において、車間距離が相互判定閾値以上の場合、次のステップS48へ進み、相互作用が無くなったため、制御特徴パラメタを元に戻す。これにより、車両乗員の運転操作特徴パラメタによる運転が行われる。また、制御特徴パラメタを元に戻す際にアナウンスをしても良い。
【0109】
以上説明した処理により自動運転時の制御が実施される。この処理は、ステップS50の判定において、運転制御モードが手動運転モードへ切り替わった際に終了する(処理内容が図2のステップS16に移行する)。あるいは、この処理は、ステップS52の判定で車両システムが停止状態に移行した場合に終了する。
【0110】
なお、上述した説明では、車両に設けられた車両走行制御システム1000による車両制御を例示したが、車両走行制御システム1000の一部または全ての構成要素は、外部のサーバ(クラウド)に設けられていても良く、サーバ側で運転操作の学習、制御特徴パラメタの取得、相互作用閾値の決定、相互作用の判定、平均制御特徴パラメタの算出等の処理を行っても良い。
【0111】
以上説明したように本実施形態によれば、相互作用しない条件下では乗員の運転特性を反映した自動運転を実現しながら、相互作用する条件下では協調した走行制御が実現できるため、乗員のフラストレーションや不安、違和感について、回避あるいは抑制が可能になる。
【0112】
また、不安や違和感などネガティブな感情を覚える前に、相互作用すると判断した時点で制御パラメタ調整(平均制御特徴パラメタの算出と適用)を行うため、乗員にネガティブな感情を抱かせないようにすることができる。
【0113】
また、仮にネガティブな感情を抱くことが回避できなかった場合でも、各車両乗員の感情を把握し平均制御特徴パラメタ作成へフィードバックすることで、その時の感情状態に応じ臨機応変な制御が可能になる。
【0114】
また、平均制御特徴パラメタを作成する際、各車両乗員の運転安全レベルを反映することで、複数の自動運転車両が相互作用する際に、より安全な走行制御を実現させることができる。
【0115】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0116】
100 装置
160 乗員感情取得部
170 相互作用判定部
175 制御特徴パラメタ取得部
180 平均制御特徴パラメタ算出部
185 車両制御部
1000 車両走行制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7