【解決手段】船外機昇降装置(1)は、ポンプ(42)と、1又は複数のチルトシリンダ(14)の第2室とを接続する第1の油路と、第1の油路と1又は複数のトリムシリンダ(12)の第2室とを接続する第2の油路と、ポンプ(42)と1又は複数のチルトシリンダ(14)の第1室とを接続する第3の油路と、第1の油路において、1又は複数のチルトシリンダ(14)の第2室と、第1の油路及び第2の油路の接続箇所との間に設けられた逆止弁(51)であって1又は複数のチルトシリンダ(14)の第2室からの作動油の流出を禁止する逆止弁(51)と、第3の油路に接続された第4の油路と、第2の油路上に設けられた切替弁(60)より構成される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る船外機昇降装置1について
図1〜
図10を参照して説明する。
【0011】
船外機昇降装置1は、船外機300を昇降させるための装置である。
図1は、船外機昇降装置1の使用例を示す図であり、船体(本体)200の後部と船外機300とに取り付けられた船外機昇降装置1を示している。
図1における実線は、船外機300が下降した状態を示し、
図1における破線は、船外機300が上昇した状態を示している。
図2は、船外機300の内部構成を概略的に示す模式図である。
図2に示すように、船外機300は、エンジン301と、プロペラ303と、エンジン301からプロペラ303に動力を伝達する動力伝達機構302とを備えている。ここで、動力伝達機構は、例えば、シャフトやギヤによって構成される。
【0012】
図3は、船外機昇降装置1の構成の一例を示す正面図であり、
図4は、船外機昇降装置1の側断面図である。
図3に示すように、船外機昇降装置1は、シリンダユニット10と、船体200の後部に取り付けられる1対のスターンブラケット70と、船外機300に取り付けられるスイベルブラケット80とを備えている。
【0013】
シリンダユニット10は、一例として、
図3に示すように、2本のトリムシリンダ12、1本のチルトシリンダ14、モータ16、タンク18、上部ジョイント22、基部24を備えている。トリムシリンダ12及びチルトシリンダ14は、基部24に対して相対移動不能に設けられている。
【0014】
なお、シリンダユニット10が備えるトリムシリンダ12及びチルトシリンダ14の数は本実施形態を限定するものではなく、1又は複数のトリムシリンダ12及び1又は複数のチルトシリンダ14を備えるシリンダユニット10も本実施形態に含まれる。また、そのように任意の数のトリムシリンダ12及びチルトシリンダ14を有するシリンダユニット10に対しても以下の説明が成り立つ。
【0015】
トリムシリンダ12は、シリンダ12aと、シリンダ12a内に摺動可能に設けられたピストン12c(
図5参照)と、ピストン12cに固定されたピストンロッド12bとを備えている。また、チルトシリンダ14は、シリンダ14aと、シリンダ14a内に摺動可能に設けられたピストン14c(
図5参照)と、ピストン14cに固定されたピストンロッド14bとを備えている。
【0016】
また、
図3に示すように、基部24とスターンブラケット70には、それぞれ貫通孔が形成されており、これらの貫通孔を貫通するアンダーシャフト26を介して、基部24とスターンブラケット70とが相対回転可能に接続されている。
【0017】
また、
図3に示すように、ピストンロッド14bの先端には、上部ジョイント22が設けられており、スイベルブラケット80には、支持部材28が固定されている。上部ジョイント22及び支持部材28には、それぞれ貫通孔が形成されており、こられの貫通孔を貫通するアッパーシャフト23を介して、上部ジョイント22とスイベルブラケット80とが相対回転可能に接続されている。
【0018】
また、スターンブラケット70及びスイベルブラケット80の上部一端にはそれぞれ貫通孔が形成されており、
図4に示すように、これらの貫通孔を貫通する支持軸32によって、スターンブラケット70とスイベルブラケット80とが相対回転可能に接続されている。
【0019】
(トリム域及びチルト域)
チルトシリンダ14のピストンロッド14bが上昇及び下降することにより、スイベルブラケット80が上昇及び下降するので、船外機300が上昇及び下降する。
【0020】
チルトシリンダ14のピストンロッド14bの上昇及び下降によって調整される船外機300の角度領域は、
図1の(a)に示したトリム域とチルト域とから構成される。チルト域は、トリムシリンダ12のピストンロッド12bの先端がスイベルブラケット80に当接不能な角度領域であり、チルト域での船外機300の角度調整はチルトシリンダ14のピストンロッド14bによって行われる。
【0021】
一方、トリム域は、トリムシリンダ12のピストンロッド12bの先端がスイベルブラケット80に当接可能な角度領域であり、チルト域での船外機300の角度調整はトリムシリンダ12のピストンロッド12b及びチルトシリンダ14のピストンロッド14bの双方によって行われ得る。ただし、後述するように、本実施形態では、チルト域においても、船外機300の角度調整がチルトシリンダ14のピストンロッド14bのみによって行われることもある。
【0022】
(油圧回路)
次に、船外機昇降装置1の油圧回路について、
図5を参照して説明する。以下の説明では、すでに説明した部材と同様の部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0023】
図5に示すように、船外機昇降装置1は、モータ16、ポンプ42(油圧源とも呼ぶ)、チルトシリンダ14、トリムシリンダ12、切替弁60、第1の逆止弁44a、第2の逆止弁44b、メインバルブ48(ポンプポートとも呼ぶ)、第3の逆止弁51、第4の逆止弁52、マニュアルバルブ53、サーマルバルブ54、アップブローバルブ55、上室給油バルブ56、第1のオリフィス45、第2のオリフィス46、タンク18、フィルタF1〜F3、及び第1の流路C1〜第13の流路C13を備えている。
【0024】
モータ16によって駆動される油圧源としてのポンプ42は、第1の吐出口及び第2の吐出口を備えた正転逆転方式の油圧源である。ポンプ42は、ユーザによる制御に応じて、「正転」「反転」「停止」の何れかの動作を行う。タンク18には作動油が貯えられている。
【0025】
メインバルブ48は、
図5に示すように、スプール48a、第1チェック弁48b、及び第2チェック弁48cを備えている。メインバルブ48は、スプール48aによって、第1チェック弁48b側の第1のシャトル室48dと、第2チェック弁48c側の第2のシャトル室48eとに仕切られている。
【0026】
第1の流路C1は、ポンプ42の第1の吐出口と第1のシャトル室48dとを接続すると共に、ポンプ42の第1の吐出口と第1の逆止弁44aとを接続している。第2の流路C2は、ポンプ42の第2の吐出口と第2のシャトル室48eとを接続すると共に、ポンプ42の第2の吐出口と第2の逆止弁44bとを接続している。
【0027】
チルトシリンダ14は、ピストン14cによって上室14fと下室14gとに仕切られており、チルトシリンダ14のピストン14cは、
図4に示すように、ショックブローバルブ14d及びリターンバルブ14eを備えている。
【0028】
なお、本明細書において、「上室」及び「下室」における「上」及び「下」とは、単に互いを区別するための名称であり、当該上室が当該下室よりも鉛直方向上側に位置することを必ずしも意味するものではない。このため、「上室」とは、シリンダにおいてピストンによって仕切られる第1室及び第2室のうち、ピストンに接続されたロッドが貫通する方の室である第1室と表現してもよいし、「下室」とは、シリンダにおいてピストンによって仕切られる第1室及び第2室のうち、ピストンに接続されたロッドが貫通しない方の室である第2室と表現してもよい。
【0029】
トリムシリンダ12は、ピストン12cによって上室12fと下室12gとに仕切られている。
【0030】
第1チェック弁48bは、チルトシリンダ14の下室14gに、第3の流路C3を介して接続されている。一方、第2チェック弁48cは、チルトシリンダ14の上室14fに、第4の流路C4を介して接続されている。また、
図5に示すように、第4の流路C4には、上室給油バルブ56が接続されている。
【0031】
第3の流路C3と第4の流路C4とを接続する第5の流路C5にはマニュアルバルブ53及びサーマルバルブ54が接続されている。また、
図5に示すように、第4の流路C4上には、上室給油バルブ56の接続箇所と第5の流路C5の接続箇所との間に第1のオリフィス45が配置されている。
【0032】
なお、メインバルブ48を介してポンプ42の第1の吐出口とチルトシリンダ14の下室14gとを接続する第1の流路C1及び第3の流路C3を、纏めて第1の油路とも呼ぶ。また、メインバルブ48を介してポンプ42の第2の吐出口とチルトシリンダ14の上室14fとを接続する第2の流路C2及び第4の流路C4を、纏めて第3の油路とも呼ぶ。
【0033】
第10の流路C10(第2の油路とも呼ぶ)は、第3の流路C3とトリムシリンダ12の下室12gとを接続する。また、第10の流路C10上には、切替弁60が配置されている。
【0034】
第11の流路C11(第4の油路とも呼ぶ)は、切替弁60を介して、第2の流路C2と第10の流路C10とを接続する。なお、第11の流路C11は、切替弁60を介して、第2のシャトル室48eと第5の流路C5の接続箇所との間における第4の流路C4と、第10の流路C10とを接続する構成であってもよい。
【0035】
第3の流路C3上には、チルトシリンダ14の下室14gと第10の流路C10の接続箇所との間において、第3の逆止弁51が配置されている。第3の逆止弁51は、ポンプ42の第2の吐出口から作動油を圧送する場合に第3の流路C3を開放し、それ以外の場合に第3の流路C3を遮断する。具体的には、第3の逆止弁51は、ポンプ42の第1の吐出口から作動油を圧送する場合、及びポンプ42からの作動油の圧送が停止した場合に、第3の流路C3を遮断する。
【0036】
第6の流路C6は、チルトシリンダ14の下室14gと第3の逆止弁51との間の第3の流路C3と、第3の逆止弁51と第1のシャトル室48dとの間の第3の流路C3とを接続している。第6の流路C6には、第4の逆止弁52が配置されている。第4の逆止弁52は、ポンプ42の第1の吐出口から作動油を圧送する場合に第6の流路C6を開放し、ポンプ42の第2の吐出口から作動油を圧送する場合に、第6の流路C6を遮断する。
【0037】
なお、第3の逆止弁51と第4の逆止弁52とを、纏めて逆止弁とも呼ぶ。本実施形態に係る油圧回路は、この逆止弁によって、チルトシリンダ14の下室14gからの作動油の流出を禁止する。
【0038】
第7の流路C7は、フィルタF1を介して、第1の逆止弁44a及び第2の逆止弁44とタンク18とを接続している。
【0039】
第8の流路C8は、アップブローバルブ55を介して、第1の流路C1とタンク18とを接続している。
【0040】
第9の流路C9は、フィルタF2及びフィルタF3を介して、第2の流路C2とタンク18とを接続している。また、
図5に示すように、第9の流路C9上には、フィルタF2とフィルタF3との間に、第2のオリフィス46が配置されている。
【0041】
第12の流路C12は、複数のトリムシリンダ12の上室12fを互いに接続している。第12の流路C12の存在により、複数のトリムシリンダ12の上室12fの圧力が互いに均等化される。
【0042】
第13の流路C13は、複数のトリムシリンダ12の上室12fの一つとタンク18とを接続している。
【0043】
第1の逆止弁44aは、トリムシリンダ12及びチルトシリンダ14が収縮し切った状態になってもなおポンプ42が作動油を回収しようとする場合に、タンク18からポンプ42に作動油を供給する。
【0044】
第2の逆止弁44bは、チルトシリンダ14が伸長する際に、ピストンロッド14bの退出容積分の作動油をタンク18からポンプ42に供給し、また、トリムシリンダ12が伸長する際には、ピストンロッド12bの退出容積分の作動油をタンク18からポンプ42に供給する。
【0045】
マニュアルバルブ53は、手動による開閉が可能であり、船外機昇降装置1のメンテナンス時等においてマニュアルバルブ53を開状態とすることによって、作動油がチルトシリンダ14の下室14gからタンク18に戻される。これにより、チルトシリンダ14が手動で収縮可能となる。
【0046】
サーマルバルブ54は、温度上昇により作動油の体積が増大した場合に、余剰分の作動油をタンク18に戻す。
【0047】
アップブローバルブ55は、トリムシリンダ12及びチルトシリンダ14が伸長し切った状態になってもなおポンプ42が作動油を圧送する場合に、余剰の作動油をタンク18に戻す。
【0048】
(切替弁60)
第10の流路C10上に設けられた切替弁60は、
図5に示すように、ソレノイド61と、ソレノイド61によって駆動され切替弁60の接続状態を切り替えるプランジャ62とを備えている。ソレノイド61は、ユーザによる制御に応じて、切替弁60の接続状態を切り替える。
【0049】
切替弁60の接続状態には、
・第3の流路C3とトリムシリンダ12の下室12gとを遮断状態とし、第11の流路C11とトリムシリンダ12の下室12gとを連通状態とする第1の接続状態、
・第3の流路C3とトリムシリンダ12の下室12gとを遮断状態とし、第11の流路C11とトリムシリンダ12の下室12gとを遮断状態とする第2の接続状態、及び、
・第3の流路C3とトリムシリンダ12の下室12gとを連通状態とし、第11の流路C11とトリムシリンダ12の下室12gとを遮断状態とする第3の接続状態
が含まれる。
【0050】
なお、本実施形態では、プランジャ62には、第1の接続状態において、トリムシリンダ12の下室12gにおける油圧の過度な上昇を防止するための第1の保護バルブ66を備えている。また、プランジャ62には、第2の接続状態において、トリムシリンダ12の下室12gにおける油圧の過度な上昇を防止するための第2の保護バルブ65を備えている。また、プランジャ62には、第3の接続状態において、トリムシリンダ12の下室12gにおける油圧の過度な上昇を防止するための第3の保護バルブ64及び第4の保護バルブ63を備えている。
【0051】
(船外機昇降装置1の動作例)
次に、
図5〜10を参照して船外機昇降装置1の動作例を説明する。
【0052】
(第1の上昇動作)
以下では、
図6を参照して、チルトシリンダ14のみを用いた船外機300の上昇動作(第1の上昇動作と呼ぶ)を実施する場合の油圧回路の作動油の流れについて説明する。
【0053】
図6に示すように、チルトシリンダ14のみを用いた船外機300の上昇動作を実施する場合、まず、切替弁60は第2の接続状態に切替えられる。すなわち、切替弁60は、第3の流路C3とトリムシリンダ12の下室12gとを遮断状態とし、第11の流路C11とトリムシリンダ12の下室12gとを遮断状態とする。
【0054】
次に、ポンプ42が正転すると、作動油がポンプ42の第1の吐出口から、第1の流路C1を介して、メインバルブ48の第1のシャトル室48dに圧送される。これにより、第1チェック弁48bが開くと共に、スプール48aが第2チェック弁48c側に移動し、第2チェック弁48cが開く。
【0055】
ここで、上述したように、ポンプ42の第1の吐出口から作動油が圧送される場合、第3の逆止弁51が第3の流路C3を遮断し、第4の逆止弁52が第6の流路C6を開放する。そのため、第1チェック弁48bが開くと、メインバルブ48の第1のシャトル室48dに圧送された作動油が、第3の流路C3及び第6の流路C6を介してチルトシリンダ14の下室14gに供給される。作動油がチルトシリンダ14の下室14gに供給されることによって、チルトシリンダ14のピストン14cがチルトシリンダ14の上室14f側にスライドすると共に、チルトシリンダ14のピストンロッド14bが上昇する。
【0056】
そして、チルトシリンダ14のピストン14cがスライドすることによって圧送された作動油が、チルトシリンダ14の上室14fから第4の流路C4を介して、メインバルブ48の第2のシャトル室48eに供給される。メインバルブ48の第2のシャトル室48eに供給された作動油は、第2の流路C2を介してポンプ42に供給される。
【0057】
このように、切替弁60を第2の接続状態とした場合に、ポンプ42を正転させることによって、チルトシリンダ14が好適に伸長することができる。
【0058】
(第1の下降動作)
以下では、
図7を参照して、チルトシリンダ14のみを用いた船外機300の下降動作(第1の下降動作と呼ぶ)を実施する場合の油圧回路の作動油の流れについて説明する。
【0059】
図7に示すように、チルトシリンダ14のみを用いた船外機300の下降動作を実施する場合、まず、切替弁60は第2の接続状態に切替えられる。すなわち、切替弁60は、第3の流路C3とトリムシリンダ12の下室12gとを遮断状態とし、第11の流路C11とトリムシリンダ12の下室12gとを遮断状態とする。なお、第1の下降動作では、トリムシリンダ12は収縮している状態である。
【0060】
次に、ポンプ42が逆転すると、作動油がポンプ42の第2の吐出口から、第2の流路C2を介して、メインバルブ48の第2のシャトル室48eに圧送される。これにより、第2チェック弁48cが開くと共に、スプール48aが第1チェック弁48b側に移動し、第1チェック弁48bが開く。
【0061】
第2チェック弁48cが開くと、メインバルブ48の第2のシャトル室48eに圧送された作動油が、第4の流路C4を介してチルトシリンダ14の上室14fに供給される。作動油がチルトシリンダ14の上室14fに供給されることによって、チルトシリンダ14のピストン14cがチルトシリンダ14の下室14g側にスライドすると共に、チルトシリンダ14のピストンロッド14bが下降する。
【0062】
ここで、上述したように、ポンプ42の第2の吐出口から作動油が圧送される場合、第3の逆止弁51が第3の流路C3を開放し、第4の逆止弁52が第6の流路C6を遮断する。そのため、チルトシリンダ14のピストン14cがスライドすることによって圧送された作動油が、チルトシリンダ14の下室14gから第3の流路C3を介して、メインバルブ48の第1のシャトル室48dに供給される。メインバルブ48の第1のシャトル室48dに供給された作動油は、第1の流路C1を介してポンプ42に供給される。
【0063】
このように、切替弁60を第2の接続状態とした場合に、ポンプ42を逆転させることによって、チルトシリンダ14が好適に収縮することができる。
【0064】
(チルトシリンダ14の保持動作)
以下では、
図5を参照してチルトシリンダ14の保持動作について説明する。
【0065】
ポンプ42を停止しチルトシリンダ14を保持する場合、切替弁60の接続状態は第1〜第3の接続状態の何れであってもよい。
【0066】
上述したように、ポンプ42を停止した場合、第3の逆止弁51が第3の流路C3を遮断し、第4の逆止弁52が第6の流路C6を遮断する。このように、第3の逆止弁51及び第4の逆止弁52は、チルトシリンダ14の下室14gから作動油の流出を禁止する。これにより、チルトシリンダ14を保持する場合において、船外機300が下がってくることを抑制することができるので、船外機300の保持を好適に実施することができる。
【0067】
(第2の上昇動作)
以下では、
図8を参照して、チルトシリンダ14及びトリムシリンダ12を用いた船外機300の上昇動作(第2の上昇動作と呼ぶ)を実施する場合の油圧回路の作動油の流れについて説明する。ここで、チルトシリンダ14の上昇動作を実施するための油圧回路の作動油の流れは、第1の上昇動作と同一である。そのため、以下では、トリムシリンダ12の上昇動作を実施するための作動油の流れのみを説明し、チルトシリンダ14の上昇動作を実施するための作動油の流れの説明を省略する。
【0068】
図8に示すように、チルトシリンダ14及びトリムシリンダ12を用いた船外機300の上昇動作を実施する場合、まず、切替弁60は第3の接続状態に切替えられる。すなわち、切替弁60は、第3の流路C3とトリムシリンダ12の下室12gとを連通状態とし、第11の流路C11とトリムシリンダ12の下室12gとを遮断状態とする。
【0069】
次に、ポンプ42が正転すると、作動油がポンプ42の第1の吐出口から、第1の流路C1を介して、メインバルブ48の第1のシャトル室48dに圧送される。これにより、第1チェック弁48bが開くと共に、スプール48aが第2チェック弁48c側に移動し、第2チェック弁48cが開く。
【0070】
次に、第1チェック弁48bが開くと、メインバルブ48の第1のシャトル室48dに圧送された作動油が、第3の流路C3及び第10の流路C10を介してトリムシリンダ12の下室12gに供給される。作動油がトリムシリンダ12の下室12gに供給されることによって、トリムシリンダ12のピストン12cがトリムシリンダ12の上室12f側にスライドすると共に、トリムシリンダ12のピストンロッド12bが上昇する。
【0071】
このように、切替弁60を第3の接続状態とした場合に、ポンプ42を正転させることによって、トリムシリンダ12が好適に伸長することができる。
【0072】
(第2の下降動作)
以下では、
図9を参照して、チルトシリンダ14及びトリムシリンダ12を用いた船外機300の下降動作(第2の下降動作と呼ぶ)を実施する場合の油圧回路の作動油の流れについて説明する。ここで、チルトシリンダ14の下降動作を実施するための油圧回路の作動油の流れは、第1の下降動作と同一である。そのため、以下では、トリムシリンダ12の下降動作を実施するための作動油の流れのみを説明し、チルトシリンダ14の下降動作を実施するための作動油の流れの説明を省略する。
【0073】
図9に示すように、チルトシリンダ14及びトリムシリンダ12を用いた船外機300の下降動作を実施する場合、まず、切替弁60は第3の接続状態に切替えられる。すなわち、切替弁60は、第3の流路C3とトリムシリンダ12の下室12gとを連通状態とし、第11の流路C11とトリムシリンダ12の下室12gとを遮断状態とする。なお、第2の下降動作では、トリムシリンダ12は伸長している状態である。
【0074】
ポンプ42が逆転すると、トリムシリンダ12の下室12g内の作動油が第10の流路C10及び第3の流路C3を介してメインバルブ48の第1のシャトル室48dに供給される。メインバルブ48の第1のシャトル室48dに供給された作動油は、第1の流路C1を介してポンプ42に供給される。トリムシリンダ12の下室12gから作動油が供給されることによって、トリムシリンダ12のピストン12cがトリムシリンダ12の下室12g側にスライドすると共に、トリムシリンダ12のピストンロッド12bが下降する。
【0075】
このように、切替弁60を第3の接続状態とした場合に、ポンプ42を逆転させることによって、トリムシリンダ12が好適に収縮することができる。
【0076】
(第3の下降動作)
以下では、
図10を参照して、チルトシリンダ14を用いた船外機300の下降動作を実施すると共に、トリムシリンダ12を伸長する場合(第3の下降動作と呼ぶ)の油圧回路の作動油の流れについて説明する。ここで、チルトシリンダ14の下降動作を実施するための油圧回路の作動油の流れは、第1の下降動作と同一である。そのため、以下では、トリムシリンダ12を伸長するための作動油の流れのみを説明し、チルトシリンダ14の下降動作を実施するための作動油の流れの説明を省略する。
【0077】
図10に示すように、チルトシリンダ14を用いた船外機300の下降動作を実施すると共に、トリムシリンダ12を伸長する場合、まず、切替弁60は第1の接続状態に切替えられる。すなわち、切替弁60は、第3の流路C3とトリムシリンダ12の下室12gとを遮断状態とし、第11の流路C11とトリムシリンダ12の下室12gとを連通状態とする。
【0078】
ポンプ42が逆転すると、ポンプ42の第2の吐出口から、第11の流路C11及び第10の流路C10を介して、作動油がトリムシリンダ12の下室12gに圧送される。作動油がトリムシリンダ12の下室12gに圧送されることによって、トリムシリンダ12のピストン12cがトリムシリンダ12の上室12f側にスライドすると共に、トリムシリンダ12のピストンロッド12bが上昇する。
【0079】
このように、切替弁60を第1の接続状態とした場合に、ポンプ42を逆転させることによって、トリムシリンダ12が伸長する。本実施形態に係る油圧回路では、ポンプ42からトリムシリンダ12の下室12gに作動油を圧送することができる。このため、船外機300を下降する場合において、船外機300の下降をサポートするために、トリムシリンダ12を十分に伸長することができるので、船外機300の昇降を好適に実施することができる。
なお、本実施形態に係る船外機昇降装置1は、図示しない制御部を備え、切替弁60を制御部による制御によって切り替える構成としてもよい。
【0080】
〔実施形態2〕
以下では、実施形態2に係る船外機昇降装置2について
図11〜
図16を参照して説明する。
【0081】
(油圧回路)
船外機昇降装置2の油圧回路について、
図11を参照して説明する。
図11は、船外機昇降装置2の油圧回路を示す図である。以下の説明では、すでに説明した部材と同様の部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0082】
図11に示すように、船外機昇降装置2は、モータ16、ポンプ42、チルトシリンダ14、トリムシリンダ12、第1の切替弁71、第2の切替弁81、第1の逆止弁44a、第2の逆止弁44b、メインバルブ48(第1のポンプポートとも呼ぶ)、第2のメインバルブ49(第2のポンプポートとも呼ぶ)、マニュアルバルブ53、サーマルバルブ54、アップブローバルブ55、上室給油バルブ56、第5の逆止弁57、第6の逆止弁58、第7の逆止弁59(逆止弁とも呼ぶ)、第1のオリフィス45、第2のオリフィス46、タンク18、フィルタF2、及び第1の流路D1〜第14の流路D14を備えている。
【0083】
第1の流路D1は、ポンプ42の第1の吐出口と第1のシャトル室48dとを接続すると共に、ポンプ42の第1の吐出口と第1の逆止弁44aとを接続している。第2の流路D2は、ポンプ42の第2の吐出口と第2のシャトル室48eとを接続すると共に、ポンプ42の第2の吐出口と第2の逆止弁44bとを接続している。
【0084】
第3の流路D3は、第1チェック弁48bとチルトシリンダ14の下室14gとを接続している。第4の流路D4は、第2チェック弁48cとチルトシリンダ14の上室14fとを接続している。また、
図11に示すように、第4の流路D4には、上室給油バルブ56が接続されている。
【0085】
第3の流路D3と第4の流路D4とを接続する第5の流路D5にはマニュアルバルブ53及びサーマルバルブ54が接続されている。また、
図11に示すように、第4の流路D4上には、上室給油バルブ56の接続箇所と第5の流路D5の接続箇所との間に第1のオリフィス45が配置されている。
【0086】
なお、メインバルブ48を介してポンプ42の第1の吐出口とチルトシリンダ14の下室14gとを接続する第1の流路D1及び第3の流路D3を、纏めて第2の油路とも呼ぶ。また、メインバルブ48を介してポンプ42の第2の吐出口とチルトシリンダ14の上室14fとを接続する第2の流路D2及び第4の流路D4を、纏めて第1の油路とも呼ぶ。
【0087】
第6の流路D6は、フィルタF1を介して、第1の逆止弁44a及び第2の逆止弁44とタンク18とを接続している。
【0088】
第7の流路D7は、アップブローバルブ55を介して、第1の流路D1とタンク18とを接続している。
【0089】
第8の流路D8は、フィルタF2を介して、第2の流路D2とタンク18とを接続している。また、
図11に示すように、第8の流路D8には、フィルタF2とタンク18との間に、第2のオリフィス46が配置されている。
【0090】
第9の流路D9は、複数のトリムシリンダ12の上室12fを互いに接続している。第9の流路D9の存在により、複数のトリムシリンダ12の上室12fの圧力が互いに均等化される。
【0091】
第10の流路D10は、複数のトリムシリンダ12の上室12fの一つとタンク18とを接続している。
【0092】
第2のメインバルブ49は、
図11に示すように、スプール49a、及びチェック弁49bを備えている。第2のメインバルブ49は、スプール49aによって、チェック弁49b側の第1のシャトル室49d(第3のシャトル室とも呼ぶ)と、スプール49aから見てチェック弁49bとは反対側の第2のシャトル室49e(第4のシャトル室とも呼ぶ)とに仕切られている。
【0093】
第2のメインバルブ49における第1のシャトル室49dは、第11の流路D11を介してメインバルブ48における第1のシャトル室48dにも接続されており、第2のメインバルブ49における第2のシャトル室49eは、第12の流路D12を介してメインバルブ48における第2のシャトル室48eにも接続さされている。
【0094】
第13の流路D13(第3の油路とも呼ぶ)は、第2の流路D2とトリムシリンダ12の下室12gとを接続している。また、
図11に示すように、第13の流路D13上には、第1の切替弁71及び第5の逆止弁57が配置されている。
【0095】
第14の流路D14(第4の油路とも呼ぶ)は、第2のメインバルブ49におけるチェック弁49bとトリムシリンダ12の下室12gとを接続している。換言すれば、第14の流路D14は、チェック弁49bを介して、第2のメインバルブ49における第1のシャトル室49dに接続している。また、
図11に示すように、第14の流路D14上には、第2の切替弁81及び第6の逆止弁58が配置されている。
【0096】
また、
図11に示すように、第14の流路D14は、マニュアルバルブ53にも接続している。また、
図11に示すように、第14の流路D14上には、第6の逆止弁58とトリムシリンダ12の下室12gとの間に、第7の逆止弁59が配置されている。第14の流路D14は、第7の逆止弁59介してタンク18に接続している。
【0097】
第5の逆止弁57は、第2の流路D2側から作動油が供給される場合に第13の流路D13を開放し、トリムシリンダ12の下室12g側から作動油が供給される場合に第13の流路D13を遮断する。
【0098】
第6の逆止弁58は、第2のメインバルブ49側から作動油を供給される場合に第14の流路D14を開放し、トリムシリンダ12の下室12g側から作動油が供給される場合に、第14の流路D14を遮断する。
【0099】
第7の逆止弁59は、トリムシリンダ12の下室12gにおける油圧の過度な上昇をした場合に、弁を開放し、作動油をタンク18に供給することによって、トリムシリンダ12の下室12gにおける過度な油圧を解放する。例えば、下降した船外機300によってトリムシリンダ12のピストンロッド12bが押し込まれ、トリムシリンダ12の下室12gにおける油圧が過度に上昇した場合に、第7の逆止弁59は、弁を開放し、トリムシリンダ12の下室12gにおける過度な油圧を解放する。
【0100】
(第1の切替弁71)
第13の流路D13上に設けられた第1の切替弁71は、
図11に示すように、ソレノイド72と、ソレノイド72によって駆動され、第13の流路D13を遮断状態又は開放状態とするプランジャ74とを備えている。
【0101】
第1の切替弁71は、ソレノイド72がOFFの場合にクローズ状態となることによって第13の流路D13を遮断し、ソレノイド72がONの場合にオープン状態となることによって第13の流路D13を開放するノーマリークローズ弁として構成してもよいし、ソレノイド72がOFFの場合にオープン状態となることによって第13の流路D13を開放し、ソレノイド72がONの場合にクローズ状態となることによって第13の流路D13を遮断するノーマリーオープン弁として構成してもよい。
【0102】
なお、本実施形態では、プランジャ74は、第13の流路D13の遮断状態においてトリムシリンダ12の下室12gにおける油圧の過度な上昇を防止するための保護バルブ76を備えている。
【0103】
(第2の切替弁81)
第14の流路D14上に設けられた第2の切替弁81は、
図11に示すように、ソレノイド82と、ソレノイド82によって駆動され、第14の流路D14を遮断状態又は開放状態とするプランジャ84とを備えている。
【0104】
第2の切替弁81は、ソレノイド82がOFFの場合にクローズ状態となることによって第14の流路D14を遮断し、ソレノイド82がONの場合にオープン状態となることによって第14の流路D14を開放するノーマリークローズ弁として構成してもよいし、ソレノイド82がOFFの場合にオープン状態となることによって第14の流路D14を開放し、ソレノイド82がONの場合にクローズ状態となることによって第14の流路D14を遮断するノーマリーオープン弁として構成してもよい。
【0105】
なお、本実施形態では、プランジャ84は、第14の流路D14の遮断状態においてトリムシリンダ12の下室12gにおける油圧の過度な上昇を防止するための保護バルブ86を備えている。
【0106】
(切替弁の接続状態)
第1の切替弁71及び第2の切替弁81の接続状態には、
・第1の切替弁71が第13の流路D13を遮断状態とし、第2の切替弁81が第14の流路D14を遮断状態とする第1の接続状態、
・第1の切替弁71が第13の流路D13を遮断状態とし、第2の切替弁81が第14の流路D14を連通状態とする第2の接続状態、及び、
・第1の切替弁71が第13の流路D13を連通状態とし、第2の切替弁81が第14の流路D14を遮断状態とする第3の接続状態
が含まれる。
【0107】
(船外機昇降装置2の動作例)
次に、
図11〜16を参照して船外機昇降装置2の動作例を説明する。
【0108】
(第1の上昇動作)
以下では、
図12を参照して、チルトシリンダ14のみを用いた船外機300の上昇動作(第1の上昇動作と呼ぶ)を実施する場合の油圧回路の作動油の流れについて説明する。
【0109】
図12に示すように、チルトシリンダ14のみを用いた船外機300の上昇動作を実施する場合、まず、1の切替弁71及び第2の切替弁81は第1の接続状態に切替えられる。すなわち、第1の切替弁71は、第13の流路D13を遮断状態とし、第2の切替弁81は、第14の流路D14を遮断状態とする。
【0110】
次に、ポンプ42が正転すると、作動油がポンプ42の第1の吐出口から、第1の流路D1を介して、メインバルブ48の第1のシャトル室48dに圧送される。これにより、第1チェック弁48bが開くと共に、スプール48aが第2チェック弁48c側に移動し、第2チェック弁48cが開く。
【0111】
第1チェック弁48bが開くと、メインバルブ48の第1のシャトル室48dに圧送された作動油が、第3の流路D3を介してチルトシリンダ14の下室14gに供給される。作動油がチルトシリンダ14の下室14gに供給されることによって、チルトシリンダ14のピストン14cがチルトシリンダ14の上室14f側にスライドすると共に、チルトシリンダ14のピストンロッド14bが上昇する。
【0112】
そして、チルトシリンダ14のピストン14cがスライドすることによって圧送された作動油が、チルトシリンダ14の上室14fから第4の流路D4を介して、メインバルブ48の第2のシャトル室48eに供給される。メインバルブ48の第2のシャトル室48eに供給された作動油は、第2の流路D2を介してポンプ42に供給される。
【0113】
このように、第1の切替弁71及び第2の切替弁81を第1の接続状態とした場合に、ポンプ42を正転させることによって、チルトシリンダ14が好適に伸長することができる。
【0114】
(第1の下降動作)
以下では、
図13を参照して、チルトシリンダ14のみを用いた船外機300の下降動作(第1の下降動作と呼ぶ)を実施する場合の油圧回路の作動油の流れについて説明する。
【0115】
図13に示すように、チルトシリンダ14のみを用いた船外機300の下降動作を実施する場合、まず、第1の切替弁71及び第2の切替弁81は第1の接続状態に切替えられる。すなわち、第1の切替弁71は、第13の流路D13を遮断状態とし、第2の切替弁81は、第14の流路D14を遮断状態とする。なお、第1の下降動作では、トリムシリンダ12は収縮している状態である。
【0116】
次に、ポンプ42が逆転すると、作動油がポンプ42の第2の吐出口から、第2の流路D2を介して、メインバルブ48の第2のシャトル室48eに圧送される。これにより、第2チェック弁48cが開くと共に、スプール48aが第1チェック弁48b側に移動し、第1チェック弁48bが開く。
【0117】
第2チェック弁48cが開くと、メインバルブ48の第2のシャトル室48eに圧送された作動油が、第4の流路D4を介してチルトシリンダ14の上室14fに供給される。作動油がチルトシリンダ14の上室14fに供給されることによって、チルトシリンダ14のピストン14cがチルトシリンダ14の下室14g側にスライドすると共に、チルトシリンダ14のピストンロッド14bが下降する。
【0118】
そして、チルトシリンダ14のピストン14cがスライドすることによって圧送された作動油が、チルトシリンダ14の下室14gから第3の流路D3を介して、メインバルブ48の第1のシャトル室48dに供給される。メインバルブ48の第1のシャトル室48dに供給された作動油は、第1の流路D1を介してポンプ42に供給される。
【0119】
このように、第1の切替弁71及び第2の切替弁81を第1の接続状態とした場合に、ポンプ42を逆転させることによって、チルトシリンダ14が好適に収縮することができる。
【0120】
(チルトシリンダ14の保持動作)
以下では、
図11を参照してチルトシリンダ14の保持動作について説明する。
【0121】
ポンプ42を停止しチルトシリンダ14を保持する場合、第1の切替弁71及び第2の切替弁81の接続状態は第1〜第3の接続状態の何れであってもよい。
【0122】
本実施形態に係る油路回路は、上述したように、チルトシリンダ14が第3の流路D3を介してメインバルブ48と接続し、トリムシリンダ12が第14の流路D14を介して第2のメインバルブ49に接続している。このように、本実施形態に係る油路回路は、チルトシリンダ14とトリムシリンダ12とを異なるメインバルブに接続することによって、ポンプ42を停止した場合に、チルトシリンダ14の下室14gから作動油の流出を禁止する。これにより、チルトシリンダ14を保持する場合において、船外機300が下がってくることを抑制することができるので、船外機300の保持を好適に実施することができる。
【0123】
(第2の上昇動作)
以下では、
図14を参照して、チルトシリンダ14及びトリムシリンダ12を用いた船外機300の上昇動作(第2の上昇動作と呼ぶ)を実施する場合の油圧回路の作動油の流れについて説明する。ここで、チルトシリンダ14の上昇動作を実施するための油圧回路の作動油の流れは、第1の上昇動作と同一である。そのため、以下では、トリムシリンダ12の上昇動作を実施するための作動油の流れのみを説明し、チルトシリンダ14の上昇動作を実施するための作動油の流れの説明を省略する。
【0124】
図14に示すように、チルトシリンダ14及びトリムシリンダ12を用いた船外機300の上昇動作を実施する場合、まず、第1の切替弁71及び第2の切替弁81は第2の接続状態に切替えられる。すなわち、第1の切替弁71は、第13の流路D13を遮断状態とし、第2の切替弁81は、第14の流路D14を連通状態とする。
【0125】
次に、ポンプ42が正転すると、作動油がポンプ42の第1の吐出口から、第1の流路D1を介して、メインバルブ48の第1のシャトル室48dに圧送される。メインバルブ48の第1のシャトル室48dに圧送された作動油は、第11の流路D11を介して第2のメインバルブ49の第1のシャトル室49dに圧送される。これにより、第2のメインバルブ49のチェック弁49bが開く。
【0126】
チェック弁49bが開くと、第2のメインバルブ49に圧送された作動油が、第14の流路D14を介してトリムシリンダ12の下室12gに供給される。作動油がトリムシリンダ12の下室12gに供給されることによって、トリムシリンダ12のピストン12cがトリムシリンダ12の上室12f側にスライドすると共に、トリムシリンダ12のピストンロッド12bが上昇する。
【0127】
このように、第1の切替弁71及び第2の切替弁81を第2の接続状態とした場合に、ポンプ42を正転させることによって、トリムシリンダ12が好適に伸長することができる。
【0128】
(第2の下降動作)
以下では、
図15を参照して、チルトシリンダ14及びトリムシリンダ12を用いた船外機300の下降動作(第2の下降動作と呼ぶ)を実施する場合の油圧回路の作動油の流れについて説明する。ここで、チルトシリンダ14の下降動作を実施するための油圧回路の作動油の流れは、第1の下降動作と同一である。そのため、以下では、トリムシリンダ12の下降動作を実施するための作動油の流れのみを説明し、チルトシリンダ14の下降動作を実施するための作動油の流れの説明を省略する。
【0129】
図15に示すように、チルトシリンダ14及びトリムシリンダ12を用いた船外機300の下降動作を実施する場合、まず、第1の切替弁71及び第2の切替弁81は第2の接続状態に切替えられる。すなわち、第1の切替弁71は、第13の流路D13を遮断状態とし、第2の切替弁81は、第14の流路D14を連通状態とする。なお、第2の下降動作では、トリムシリンダ12は伸長している状態である。
【0130】
ポンプ42が逆転し、チルトシリンダ14が収縮することによって、船外機300が下降する。船外機300が下降すると、トリムシリンダ12のピストンロッド12bが船外機300によって押し込まれ、トリムシリンダ12のピストン12cがトリムシリンダ12の下室12g側にスライドする。これにより、トリムシリンダ12のピストンロッド12bが下降する。そして、トリムシリンダ12のピストン12cがスライドすることによって圧送された作動油が、第7の逆止弁59を介してタンク18に供給される。
【0131】
このように、第1の切替弁71及び第2の切替弁81を第1の接続状態とし、トリムシリンダ12が伸長している状態である場合に、ポンプ42を逆転させることによって、トリムシリンダ12が好適に収縮することができる。
【0132】
(第3の下降動作)
以下では、
図16を参照して、チルトシリンダ14を用いた船外機300の下降動作を実施すると共に、トリムシリンダ12を伸長する場合(第3の下降動作と呼ぶ)の油圧回路の作動油の流れについて説明する。ここで、チルトシリンダ14の下降動作を実施するための油圧回路の作動油の流れは、第1の下降動作と同一である。そのため、以下では、トリムシリンダ12を伸長するための作動油の流れのみを説明し、チルトシリンダ14の下降動作を実施するための作動油の流れの説明を省略する。
【0133】
図16に示すように、チルトシリンダ14を用いた船外機300の下降動作を実施すると共に、トリムシリンダ12を伸長する場合、まず、第1の切替弁71及び第2の切替弁81は第3の接続状態に切替えられる。すなわち、第1の切替弁71は、第13の流路D13を連通状態とし、第2の切替弁81は、第14の流路D14を遮断状態とする。
【0134】
ポンプ42が逆転すると、ポンプ42の第2の吐出口から、第13の流路D13を介して、作動油がトリムシリンダ12の下室12gに圧送される。作動油がトリムシリンダ12の下室12gに圧送されることによって、トリムシリンダ12のピストン12cがトリムシリンダ12の上室12f側にスライドすると共に、トリムシリンダ12のピストンロッド12bが上昇する。
【0135】
このように、第1の切替弁71及び第2の切替弁81を第3の接続状態とした場合に、ポンプ42を逆転させることによって、トリムシリンダ12が伸長する。本実施形態に係る油圧回路では、ポンプ42からトリムシリンダ12の下室12gに作動油を圧送することができる。このため、船外機300を下降する場合において、船外機300の下降をサポートするために、トリムシリンダ12を十分に伸長することができるので、船外機300の昇降を好適に実施することができる。
【0136】
〔実施形態3〕
以下では、実施形態3に係る船外機昇降装置3について
図17を参照して説明する。
【0137】
(油圧回路)
船外機昇降装置3の油圧回路について、
図17を参照して説明する。
図17は、船外機昇降装置3の油圧回路を制御部と共に示す図である。
図17に示すように、本実施形態に係る船外機昇降装置3は、実施形態2に係る船外機昇降装置2において、第1の切替弁71及び第2の切替弁81に代えて第1の切替弁711及び第2の切替弁811を備える構成である。また、本実施形態に係る船外機昇降装置3は、実施形態2に係る船外機昇降装置2において、制御部100を更に備える構成である。以下の説明では、すでに説明した部材と同様の部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0138】
(第1の切替弁711)
第1の切替弁711は、第13の流路D13上に設けられている。第1の切替弁711は、
図17に示すように、ソレノイド712と、ソレノイド712によって駆動され、第13の流路D13を遮断状態又は開放状態とするプランジャ714とを備えている。第1の切替弁711は、後述する制御部100による制御によって第1の切替弁の接続状態が制御される。より具体的には、第1の切替弁711は、後述する制御部100制御信号SIG_CONTが供給され、制御信号SIG_CONTに基づき、ソレノイド712のON/OFFが切り替えられる。
【0139】
第1の切替弁711は、ソレノイド712がOFFの場合にクローズ状態となることによって第13の流路D13を遮断し、ソレノイド712がONの場合にオープン状態となることによって第13の流路D13を開放するノーマリークローズ弁として構成してもよいし、ソレノイド712がOFFの場合にオープン状態となることによって第13の流路D13を開放し、ソレノイド712がONの場合にクローズ状態となることによって第13の流路D13を遮断するノーマリーオープン弁として構成してもよい。
【0140】
なお、本実施形態では、プランジャ714は、第13の流路D13の遮断状態においてトリムシリンダ12の下室12gにおける油圧の過度な上昇を防止するための保護バルブ716を備えている。
【0141】
(第2の切替弁811)
第14の流路D14上に設けられた第2の切替弁811は、
図17に示すように、ソレノイド812と、ソレノイド812によって駆動され、第14の流路D14を遮断状態又は開放状態とするプランジャ814とを備えている。第2の切替弁811は、後述する制御部100による制御によって第1の切替弁の接続状態が制御される。より具体的には、第2の切替弁811は、後述する制御部100から制御信号SIG_CONTが供給され、制御信号SIG_CONTに基づき、ソレノイド812のON/OFFが切り替えられる。
【0142】
第2の切替弁811は、ソレノイド812がOFFの場合にクローズ状態となることによって第14の流路D14を遮断し、ソレノイド812がONの場合にオープン状態となることによって第14の流路D14を開放するノーマリークローズ弁として構成してもよいし、ソレノイドがOFFの場合にオープン状態となることによって第14の流路D14を開放し、ソレノイドがONの場合にクローズ状態となることによって第14の流路D14を遮断するノーマリーオープン弁として構成してもよい。
【0143】
なお、本実施形態では、プランジャ814は、第14の流路D14の遮断状態においてトリムシリンダ12の下室12gにおける油圧の過度な上昇を防止するための保護バルブ816を備えている。
【0144】
(制御部)
制御部100は、ユーザによる船外機300の昇降制御に応じて、モータ16、第1の切替弁711及び第2の切替弁811に制御信号SIG_CONTを供給する。これにより、制御部100は、モータ16の動作並びに、第1の切替弁711及び第2の切替弁811の接続状態を制御する。
【0145】
(制御部100の制御例)
次に、船外機昇降装置3の動作に則した、制御部100の制御例を説明する。
【0146】
(第1の上昇動作)
制御部100は、第1の上昇動作の制御を実施する場合、ポンプ42が正転するようにモータ16を制御すると共に、第1の切替弁711及び第2の切替弁811は第1の接続状態に切替えられる。すなわち、第1の切替弁711は、第13の流路D13を遮断状態とし、第2の切替弁811は、第14の流路D14を遮断状態とする。これにより、第2の実施形態にて上述したように、チルトシリンダ14が好適に伸長することができる。
【0147】
(第1の下降動作)
制御部100は、第1の下降動作の制御を実施する場合、ポンプ42が逆転するようにモータ16を制御すると共に、第1の切替弁711及び第2の切替弁811は第1の接続状態に切替えられる。すなわち、第1の切替弁711は、第13の流路D13を遮断状態とし、第2の切替弁811は、第14の流路D14を遮断状態とする。これにより、第2の実施形態にて上述したように、チルトシリンダ14が好適に収縮することができる。
【0148】
(チルトシリンダ14の保持動作)
制御部100は、チルトシリンダ14の保持動作の制御を実施する場合、ポンプ42が停止するようにモータ16を制御する。なお、チルトシリンダ14の保持動作の制御を実施する場合、第1の切替弁711及び第2の切替弁811の接続状態は第1〜第3の接続状態の何れに制御してもよい。
【0149】
(第2の上昇動作)
制御部100は、第1の上昇動作の制御を実施する場合、ポンプ42が正転するようにモータ16を制御すると共に、第1の切替弁711及び第2の切替弁811は第2の接続状態に切替えられる。すなわち、第1の切替弁711は、第13の流路D13を遮断状態とし、第2の切替弁811は、第14の流路D14を連通状態とする。これにより、第2の実施形態にて上述したように、トリムシリンダ12が好適に伸長することができる。
【0150】
(第2の下降動作)
制御部100は、第1の下降動作の制御を実施する場合、ポンプ42が逆転するようにモータ16を制御すると共に、第1の切替弁711及び第2の切替弁811は第2の接続状態に切替えられる。すなわち、第1の切替弁711は、第13の流路D13を遮断状態とし、第2の切替弁811は、第14の流路D14を連通状態とする。これにより、第2の実施形態にて上述したように、トリムシリンダ12が好適に収縮することができる。
【0151】
(第3の下降動作)
制御部100は、第1の下降動作の制御を実施する場合、ポンプ42が逆転するようにモータ16を制御すると共に、第1の切替弁711及び第2の切替弁811は第3の接続状態に切替えられる。すなわち、第1の切替弁711は、第13の流路D13を連通状態とし、第2の切替弁811は、第14の流路D14を遮断状態とする。これにより、第2の実施形態にて上述したように、船外機300を下降する場合において、船外機300の下降をサポートするために、トリムシリンダ12を十分に伸長することができる。
【0152】
本実施形態に係る船外機昇降装置3は、制御部100を備えることによって、モータ及び切替弁等に作動不良が生じた場合に、制御部100において、当該作動不良を検知し、トリムシリンダ12及びチルトシリンダ14等における異常な動作を防止することができる。
【0153】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。