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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-157847(P2020-157847A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】自動操舵制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20200904BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20200904BHJP
   B62D 111/00 20060101ALN20200904BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20200904BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20200904BHJP
【FI】
   B62D6/00ZYW
   B62D101:00
   B62D111:00
   B62D113:00
   B62D119:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-57258(P2019-57258)
(22)【出願日】2019年3月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 哲
(72)【発明者】
【氏名】白石 英一
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC12
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA29
3D232DA33
3D232DA76
3D232DA84
3D232DC21
3D232DC33
3D232DC34
3D232DC38
3D232DD02
3D232DE02
3D232DE10
3D232EA01
3D232EB11
3D232EC22
(57)【要約】
【課題】自動操舵制御実行時の車両のふらつきを防止することができる自動操舵制御装置を提供する。
【解決手段】自動操舵制御装置100は、自動操舵制御ユニット11と、カメラユニット21と、車速センサ13と、操舵角センサ14と、ヨーレートセンサ15とを備えている。自動操舵制御ユニット11は、横位置偏差演算部31と操舵角制御部32とを備えている。横位置偏差演算部31は、第1および第2の横位置偏差d1,d2を算出する。操舵角制御部32は、第1の横位置偏差d1の絶対値が減少するように操舵角θwtを制御する第1の操舵制御と、第1の操舵制御における操舵角θwtの変化量と実舵角θtの変化量の差が小さくなるように、第2の横位置偏差d2に基づいて操舵角θwtを制御する第2の操舵制御を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両を目標進行路に沿って走行させる自動操舵制御を行う自動操舵制御装置であって、
前記自車両の前方の走行環境を認識する前方認識装置と、
前記自車両の走行状態の情報を検出する走行状態検出部と、
前記前方認識装置の認識結果および前記走行状態検出部の検出結果に基づいて、前記自車両の前方における目標位置と前記自車両の推定位置を算出し、前記目標位置から前記推定位置までの前記自車両の車幅方向の偏差である横位置偏差を算出する横位置偏差演算部と、
前記横位置偏差に基づいて、前記自車両の操舵角を制御する操舵角制御部とを備え、
前記横位置偏差演算部は、任意の時点において第1の距離だけ前記自車両から前方に離れた位置における前記横位置偏差である第1の横位置偏差と、前記任意の時点において前記第1の距離よりも大きい第2の距離だけ前記自車両から前方に離れた位置における前記横位置偏差である第2の横位置偏差を算出し、
前記操舵角制御部は、前記第1の横位置偏差の絶対値が減少するように前記操舵角を制御する第1の操舵制御と、前記第1の操舵制御における前記操舵角の変化量と前記自車両の車輪の舵角である実舵角の変化量の差が小さくなるように、前記第2の横位置偏差に基づいて前記操舵角を制御する第2の操舵制御を行うことを特徴とする自動操舵制御装置。
【請求項2】
前記第2の操舵制御は、前記第1の操舵制御の前に行われることを特徴とする請求項1に記載の自動操舵制御装置。
【請求項3】
前記第2の操舵制御は、前記第2の横位置偏差の絶対値が所定の閾値以上の場合に行われることを特徴とする請求項1に記載の自動操舵制御装置。
【請求項4】
前記任意の時点における前記操舵角を第1の角度とし、前記第1の横位置偏差の絶対値が減少する方向に前記操舵角を前記第1の角度から変化させることを想定したときの、前記実舵角が変化し始めるときの前記操舵角を第2の角度とし、前記第2の角度から前記第1の角度を引いた値を第3の角度としたときに、前記操舵角制御部は、前記第1の操舵制御の開始時点における前記操舵角と前記第3の角度との差の絶対値が小さくなるように、前記第2の操舵制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の自動操舵制御装置。
【請求項5】
前記操舵角制御部は、前記操舵角を時間に応じて変化させ、且つ前記操舵角の変化の速度が所定の速度になるように前記操舵角を変化させて前記第2の操舵制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の自動操舵制御装置。
【請求項6】
前記操舵角制御部は、前記操舵角の変化量が所定の値になるように前記操舵角を変化させて前記第2の操舵制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の自動操舵制御装置。
【請求項7】
前記走行状態検出部は、前記自車両のヨー角速度の情報を検出し、
前記操舵角制御部は、前記第2の操舵制御の実行中に、前記ヨー角速度の絶対値が所定の閾値以上になった場合には、前記第2の操舵制御を終了することを特徴とする請求項1に記載の自動操舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両を車線に沿って走行させる自動操舵制御を行う自動操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、運転者の運転を、より快適且つ安全に行えるように自動運転の技術を利用した様々な運転支援装置が開発され実用化されている。このような運転支援装置の1つとして、自車両を車線に沿って走行させる自動操舵制御を行う自動操舵制御装置が知られている。自動操舵制御では、例えば、車両に搭載したカメラによる車線の認識結果に基づいて自車両の進行路を推定し、自車両の操舵角を制御することによって、自車両を上記進行路の中央に維持する制御が行われる。
【0003】
ところで、従来、伝動機構や操舵機構に存在するバックラッシュ等に起因して、ハンドルの操舵角を変化させたときの車輪の舵角(以下、実舵角とも言う。)が、ヒステリシス特性を示すことが知られている。このようなヒステリシス特性は、電動パワーステアリング装置の動作に遅れが生じる要因となる。
【0004】
また、電動パワーステアリング装置は、操舵トルクの大きさ等に応じて、電動パワーステアリングモータに与える駆動電流を制御して、運転者のハンドル操作をアシストするアシストトルクを発生させることができるように構成されている。また、電動パワーステアリング装置は、操舵トルクの大きさが0の近傍では、直進安定性を高めるために、アシストトルクを発生させないように、駆動電流を制御する。アシストトルクを発生させないように駆動電流が制御される操舵トルクの範囲を、不感帯域と言う。
【0005】
特開2002−331947号公報には、操舵トルクが不感帯域内にある場合に、予めモータを駆動させてバックラッシュを吸収しておくことによって、不感帯域以上の操舵トルクが検出された場合に、時間遅れを生じさせることなくアシストトルクの発生を発生させる電動パワーステアリング装置が開示されている。この電動パワーステアリング装置では、検出した操舵トルクの方向に基づいて、予め電動パワーステアリングモータに与える駆動電流の正負を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−331947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動操舵制御においても、上記のヒステリシス特性や不感帯域は、自動的に操舵角を変化させたときの実舵角の応答(以下、車両応答と言う。)に遅れを生じさせる要因となる。自動操舵制御における車両応答の遅れは、操舵角の切り遅れと、操舵角の切り遅れによる操舵角の切り過ぎを発生させてしまい、その結果、車両が蛇行してしまうという問題があった。
【0008】
なお、特開2002−331947号公報に開示された電動パワーステアリング装置では、操舵トルクの検出結果に基づいて、検出時点よりも後のハンドルの操作方向を推定し、その推定結果に基づいて、電動パワーステアリングモータに与える駆動電流の正負を決定している。しかし、自動操舵制御では、運転者によるハンドルの操作が行われないため、操舵トルクの検出結果から、検出時点よりも後のハンドルの操舵角を推定することは難しい。
【0009】
そこで、本発明は、自動操舵制御による操舵角の切り遅れや切り過ぎを防止して、車両の蛇行を防止することができる自動操舵制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の自動操舵制御装置は、自車両を目標進行路に沿って走行させる自動操舵制御を行う自動操舵制御装置であって、前記自車両の前方の走行環境を認識する前方認識装置と、前記自車両の走行状態の情報を検出する走行状態検出部と、前記前方認識装置の認識結果および前記走行状態検出部の検出結果に基づいて、前記自車両の前方における目標位置と前記自車両の推定位置を算出し、前記目標位置から前記推定位置までの前記自車両の車幅方向の偏差である横位置偏差を算出する横位置偏差演算部と、前記横位置偏差に基づいて、前記自車両の操舵角を制御する操舵角制御部とを備え、前記横位置偏差演算部は、任意の時点において第1の距離だけ前記自車両から前方に離れた位置における前記横位置偏差である第1の横位置偏差と、前記任意の時点において前記第1の距離よりも大きい第2の距離だけ前記自車両から前方に離れた位置における前記横位置偏差である第2の横位置偏差を算出し、前記操舵角制御部は、前記第1の横位置偏差の絶対値が減少するように前記操舵角を制御する第1の操舵制御と、前記第1の操舵制御における前記操舵角の変化量と前記自車両の車輪の舵角である実舵角の変化量の差が小さくなるように、前記第2の横位置偏差に基づいて前記操舵角を制御する第2の操舵制御を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自動操舵制御による操舵角の切り遅れや切り過ぎを防止して、車両の蛇行を防止することができる車両制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る自動操舵制御装置を搭載する車両の概略の構成を示す説明図である。
図2】本発明の一実施の形態におけるカメラユニットの構成を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る自動操舵制御装置の要部の構成を示す機能ブロック図である。
図4】本発明の一実施の形態における第1および第2の横位置偏差を説明するための説明図である。
図5】本発明の一実施の形態における第1および第2の角度を説明するための説明図である。
図6】本発明の一実施の形態における自動操舵制御を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施の形態における第4の例の第2の操舵制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明する。始めに、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る自動操舵制御装置を搭載する車両の概略の構成について説明する。図1に示したように、車両1には、左前輪FLと、右前輪FRと、左後輪RLと、右後輪RRとが設けられている。以下、左右前輪FL,FRが駆動輪且つ操舵輪として構成された場合を例にとって説明する。
【0014】
車両1には、更に、例えばラックアンドピニオン機構等のステアリング機構2が設けられている。ステアリング機構2には、タイロッド3を介して左右前輪FL,FRが連設されていると共に、先端にステアリングホイール4が固設されたステアリング軸5が連設されている。左右前輪FL,FRは、運転者によるステアリングホイール4の操作によって、ステアリング機構2を介して、左右方向に転舵される。
【0015】
車両1には、更に、電動パワーステアリング装置(以下、EPS装置と記す。)6が設けられている。EPS装置6は、電動パワーステアリングモータ(以下、EPSモータと記す。)7と、電動パワーステアリング制御ユニット(以下、EPS制御ユニットと記す。)8とを有している。なお、図1では、EPS制御ユニットをEPS_ECUと記している。EPSモータ7は、図示しない伝達機構を介して、ステアリング軸5に連接されている。
【0016】
EPS制御ユニット8には、操舵トルクセンサ12が接続されている。EPS制御ユニット8は、操舵トルクセンサ12や後述する車速センサ等の検出結果に基づいて、運転者の操舵トルクをアシストするアシストトルクを設定する。また、EPS制御ユニット8は、設定したアシストトルクがステアリング軸5に付加されるように、EPSモータ7を制御する。
【0017】
車両1には、更に、自動操舵制御ユニット11が設けられている。EPS制御ユニット8と自動操舵制御ユニット11は、CAN(Controller Area Network)等の車内ネットワーク10に接続されている。図示しないが、車内ネットワーク10には、更に、エンジン制御ユニット、変速機制御ユニット、ブレーキ制御ユニット等の、車両1の走行状態を制御する複数の電子制御ユニットが接続されている。
【0018】
自動操舵制御ユニット11は、本実施の形態に係る自動操舵制御装置100の主要部を構成する装置であり、車両1を目標進行路に沿って走行させる自動操舵制御を実行する装置である。自動操舵制御ユニット11は、自動操舵制御の実行時には、アシストトルクである目標トルクを設定し、設定した目標トルクに対応する指令信号をEPS制御ユニット8に送信する。EPS制御ユニット8は、受信した指令信号に基づいて、設定した目標トルクがステアリング軸5に付加されるように、EPSモータ7を制御する。
【0019】
自動操舵制御ユニット11は、例えば、運転者が自動操舵制御のためのスイッチをオンにする操作等を検出したときに、自動操舵制御を実行する。また、自動操舵制御ユニット11は、ハンドル操作等の運転者による所定の運転操作や、自動操舵制御の解除スイッチの操作等を検出したときに、自動操舵制御を解除する。
【0020】
自動操舵制御ユニット11には、車両1の車速を検出する車速センサ13と、車両1の操舵角と操舵方向を検出する操舵角センサ14と、車両1のヨーレート(ヨー角速度)を検出するヨーレートセンサ15と、車両1の横加速度を検出する横加速度センサ16等の、車両1の走行状態の情報を検出する走行状態検出部としてのセンサ類が接続されている。なお、車両1の操舵角およびヨーレートの正負は、車両1が左方向に曲がるか右方向に曲がるかによって定義される。また、車両1の横加速度の正負は、車両1が左方向に進むか右方向に進むかによって定義される。
【0021】
車両1には、更に、前方認識装置としてのカメラユニット21が設けられている。ここで、図1および図2を参照して、カメラユニット21について詳しく説明する。図2は、カメラユニット21の構成を示す機能ブロック図である。カメラユニット21は、メインカメラ22aとサブカメラ22bとを含むステレオカメラによって構成された車載カメラ22と、画像処理部23と、車線認識部24とを有している。
【0022】
カメラ22a,22bは、例えば、車室内におけるフロントガラスの近傍において、それぞれ、車幅方向の中央から所定の間隔をあけて配置されている。カメラ22a,22bは、それぞれ、CCDまたはCMOS等の撮像素子を含んでいる。撮像素子は、車両1が走行している進行方向の前方の走行環境の画像を撮像する。
【0023】
画像処理部23は、カメラ22a,22bによって撮像された一対のアナログ画像を所定の輝度階調のデジタル画像に変換する。また、画像処理部23は、メインカメラ22aによって撮像された画像に基づいて基準画像データを生成し、サブカメラ22bによって撮像された画像に基づいて比較画像データを生成する。そして、画像処理部23は、基準画像データと比較画像データの視差に基づいて、車両1から対象物までの距離である距離データを算出する。
【0024】
車線認識部24は、車両1が走行する車線の左右両側に描画されている車線区画線を認識すると共に、車線区画線の認識結果に基づいて、車両1の車幅方向の位置である車両横位置と、目標横位置と、車両1が走行する車線の曲率(以下、車線曲率と記す。)と、車線に対する車両1のヨー角(以下、対車線ヨー角と記す。)を算出する。本実施の形態では、目標横位置は、左右の車線区画線から規定される車線の中央である。なお、曲率の正負は、左方向に曲がるか右方向に曲がるかによって定義される。
【0025】
車線認識部24は、例えば以下のようにして、車線曲率を算出する。まず、基準画像データと比較画像データに基づいて、仮想道路平面を生成する。次に、距離データに基づいて、生成した仮想道路平面上に、左右の車線区画線の内側エッジをプロットする。次に、左右の内側エッジの曲率を算出する。次に、左右の内側エッジの曲率に基づいて、車線曲率を算出する。
【0026】
EPS制御ユニット8、自動操舵制御ユニット11およびカメラユニット21は、それぞれ、例えば、CPU、ROMおよびRAM等を備えたマイクロコンピュータを主体として構成されている。ROMにはシステム毎に設定されている動作を実現するための制御プログラムが記憶されている。EPS制御ユニット8、自動操舵制御ユニット11およびカメラユニット21の機能は、CPUがROMから制御プログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0027】
次に、図3を参照して、本実施の形態に係る自動操舵制御装置100の構成について説明する。図3は、自動操舵制御装置100の要部の構成を示す機能ブロック図である。自動操舵制御装置100は、自動操舵制御ユニット11と、カメラユニット21と、車速センサ13、操舵角センサ14およびヨーレートセンサ15等のセンサ類とを備えている。自動操舵制御ユニット11は、横位置偏差演算部31と、操舵角制御部32とを備えている。
【0028】
横位置偏差演算部31は、カメラユニット21の車線認識部24の認識結果と、車速センサ13および操舵角センサ14等のセンサ類の検出結果とに基づいて、車両1の前方における目標位置と車両1の推定位置を算出する。具体的には、横位置偏差演算部31は、車線認識部24が算出した車両横位置、目標横位置、車線曲率、対車線ヨー角と、車速センサ13が検出した車速と、操舵角センサ14が検出した操舵角とを用いて、所定の位置における目標位置と推定位置を算出する。そして、横位置偏差演算部31は、算出した目標位置と推定位置を用いて、目標位置から推定位置までの車両1の車幅方向の偏差である横位置偏差を算出する。
【0029】
操舵角制御部32は、横位置偏差演算部31が算出した横位置偏差に基づいて、車両1の操舵角を制御する。本実施の形態では、操舵角制御部32は、横位置偏差に基づいて目標操舵角を算出し、車両1の操舵角が目標操舵角になるように車両1を転舵させるための目標トルクを算出し、目標トルクに対応する指令信号をEPS制御ユニット8に送信する。EPS制御ユニット8は、目標トルクに対応する指令信号を受信して、受信した指令信号に基づいて、上記の目標トルクがステアリング軸5に付加されるように、EPSモータ7を制御する。このようにして、車両1の操舵角が制御される。
【0030】
ここで、目標操舵角の設定方法の一例について説明する。まず、操舵角制御部32は、車線認識部24から車線曲率の情報を取得し、車両1を車線曲率に沿って走行させるための目標操舵角(以下、第1の初期目標操舵角と記す。)を算出する。次に、操舵角制御部32は、車線認識部24から対車線ヨー角の情報を取得し、対車線ヨー角を所定の目標ヨー角に一致させるための目標操舵角(以下、第2の初期目標操舵角と記す。)を算出する。次に、操舵角制御部32は、横位置偏差演算部31から横位置偏差の情報を取得し、横位置偏差を0にするための目標操舵角(以下、第3の初期目標操舵角と記す。)を算出する。次に、操舵角制御部32は、第1ないし第3の初期目標操舵角の和を、目標操舵角として設定する。
【0031】
本実施の形態では特に、横位置偏差演算部31は、任意の時点において第1の前方注視距離だけ車両1から前方に離れた位置における横位置偏差である第1の横位置偏差d1と、上記の任意の時点において第1の前方注視距離よりも大きい第2の前方注視距離だけ車両1から前方に離れた位置における横位置偏差である第2の横位置偏差d2を算出する。第1の前方注視距離は、例えば、T1秒間に車両1が進む距離である。第2の前方注視距離は、例えば、T1+ΔT秒間に車両1が進む距離である。T1は、例えば1.2秒である。ΔTは、例えば0.3〜2秒の範囲内である。T1,ΔTは、それぞれ、車速に応じて変化する値であってもよいし、一定値であってもよい。
【0032】
以下、図4を参照して、第1および第2の横位置偏差d1,d2について詳しく説明する。図4は、第1および第2の横位置偏差d1,d2を説明するための説明図である。図4では、車両1の重心位置Cを原点とし、車両1の車幅方向をX軸とし、車両1の車長方向をZ軸とした。また、図4において、記号LL,LRを付した実線は走行車線の左右を区画する区画線であり、記号LTを付した破線は目標位置の軌跡である。
【0033】
ここで、第1の前方注視距離をZ1とし、第2の前方注視距離をZ2とする。図4において、記号PE1,PT1を付した点は、それぞれ、第1の前方注視距離Z1だけ車両1から前方に離れた位置における推定位置および目標位置を示している。また、記号PE2,PT2を付した点は、それぞれ、第2の前方注視距離Z2だけ車両1から前方に離れた位置における推定位置および目標位置を示している。横位置偏差演算部31は、第1の横位置偏差d1として、目標位置PT1から推定位置PE1までのX軸に平行な方向における偏差を算出する。同様に、横位置偏差演算部31は、第2の横位置偏差d2として、目標位置PT2から推定位置PE2までのX軸に平行な方向における偏差を算出する。
【0034】
操舵角制御部32は、第1の横位置偏差d1の絶対値が減少するように操舵角を制御する第1の操舵制御を行う。具体的には、操舵角制御部32は、第1の横位置偏差d1に基づいて、上述のように目標操舵角と目標トルクを設定して、操舵角を制御する。
【0035】
操舵角制御部32は、更に、第1の操舵制御における操舵角の変化量と車両1の車輪の舵角である実舵角の変化量の差が小さくなるように、第2の横位置偏差d2に基づいて操舵角を制御する第2の操舵制御を行う。第2の操舵制御は、第1の操舵制御の前に行われる。
【0036】
なお、図4は、第1の横位置偏差d1が第2の横位置偏差d2に比べて非常に小さい例を示している。図4では、便宜上、推定位置PE1と目標位置PT1を一致させて描いている。
【0037】
ここで、第1および第2の横位置偏差d1,d2を算出する上記の任意の時点における操舵角を第1の角度θ1とし、第1の横位置偏差d1の絶対値が減少する方向に操舵角を第1の角度θ1から変化させることを想定する。上述のように操舵角を変化させた場合、ステアリング機構2のバックラッシュ等に起因して、操舵角がある程度変化するまでは実舵角が変化しない場合がある。この場合、操舵角を変化させ続けることによって、実舵角を変化させることができる。ここで、上述のように操舵角を変化させときに実舵角が変化し始めるときの操舵角を、第2の角度θ2とする。
【0038】
以下、図5を参照して、第1および第2の角度θ1,θ2について詳しく説明する。図5は、第1および第2の角度θ1,θ2を説明するための説明図である。図5において横軸は操舵角θwtを示し、縦軸は実舵角θtを示している。図5における矢印は、操舵角θwtを変化させる方向を示している。なお、図5では、車両1が左方向に曲がるときのθwt,θtを正の値で表し、車両1が右方向に曲がるときのθwt,θtを負の値で表している。
【0039】
図5における横軸の近傍の右向きの矢印は、直進中すなわち操舵角θwtが0°の状態から車両1が左方向に曲がるように操舵角θwtを大きくしていく場合を示している。この場合、操舵角θwtがθa(θa>0)以下の場合には実舵角θtは変化せず、操舵角θwtがθaよりも大きくなると、操舵角θwtが大きくなるに従って実舵角θtも大きくなる。また、図5における横軸の近傍の左向きの矢印は、操舵角θwtが0°の状態から車両1が右方向に曲がるように操舵角θwtを大きくしていく場合を示している。この場合、操舵角θwtが−θa以上の場合には実舵角θtは変化せず、操舵角θwtが−θa未満になると、操舵角θwtが小さくなるに従って実舵角θtも小さくなる。0°の状態から操舵角θwtを変化させる場合、θa,−θaは、前述の第2の角度θ2に対応する。また、この場合、第1の角度θ1は0°である。このように、操舵角θwtが−θa以上θa以下の範囲内で実舵角θtが変化しない理由は、前述のバックラッシュや直進安定性を高めるための不感帯域が存在するからである。
【0040】
なお、操舵角θwtを左方向から右方向に切り返す場合と、操舵角θwtを右方向から左方向に切り返す場合にも、前述のバックラッシュに起因して、0°の状態から操舵角θwtを変化させた場合と同様の現象が生じ得る。図5における左向きの矢印(横軸の近傍の矢印を除く)は、操舵角θwtを左方向から右方向に切り返す場合を示している。この場合、操舵角θwtがある程度小さくなるまでは実舵角θtは変化せず、操舵角θwtがある程度小さくなると、操舵角θwtが小さくなるに従って実舵角θtも小さくなる。
【0041】
また、図5における右向きの矢印(横軸の近傍の矢印を除く)は、操舵角θwtを右方向から左方向に切り返す場合を示している。この場合、操舵角θwtがある程度大きくなるまでは実舵角θtは変化せず、操舵角θwtがある程度大きくなると、操舵角θwtが大きくなるに従って実舵角θtも大きくなる。
【0042】
ここで、第1の角度θ1と第2の角度θ2の差θ2−θ1を第3の角度と言い、記号θhysで表す。本実施の形態では、第2の操舵制御は、車両1が直線路からカーブに進入する際に実行される。言い換えると、第2の操舵制御は、操舵角θwtが0°または0°に近い角度の場合に実行される。この場合、第3の角度θhysは、θaまたは−θaと等しいかほぼ等しくなる。第2の操舵制御は、第1の操舵制御の開始時点における操舵角と第3の角度θhysとの差の絶対値が小さくなるように、操舵角θwtを制御する。
【0043】
次に、図6を参照して、本実施の形態における自動操舵制御について具体的に説明する。図6は、自動操舵制御を示すフローチャートである。自動操舵制御の実行時には、図6に示した一連の処理が繰り返し実行される。自動操舵制御では、まず、横位置偏差演算部31が、第1および第2の横位置偏差d1,d2を算出する(ステップS11)。次に、操舵角制御部32が、第2の横位置偏差d2の絶対値|d2|が、所定の閾値da(da>0)以上か否かを判定する(ステップS12)。閾値daは、例えば、自動操舵制御におけるノイズを除去する観点から規定される。|d2|がda以上ではない場合(NO)には、ステップS11に戻る。
【0044】
ステップS12において|d2|がda以上の場合(YES)には、操舵角制御部32は、第2の操舵制御を実行する(ステップS13)。操舵角制御部32は、例えば、操舵角θwtの変化量が第3の角度θhysと一致するかほぼ一致するように、第2の操舵制御を行う。以下、このような第2の操舵制御を、第1の例の第2の操舵制御と言う。
【0045】
次に、操舵角制御部32は、第1の操舵制御を実行して(ステップS14)、1回の一連の処理を終了する。
【0046】
次に、第2の例の第2の操舵制御について説明する。第2の例の第2の操舵制御は、第1の例の操舵制御の代わりに実行される。第2の例では、操舵角制御部32は、操舵角θwtの変化量を所定の値とする。所定の値は、例えば、その絶対値が0°より大きく2°以下になる範囲内である。車両1が左方向に曲がるように操舵角θwtを大きくしていく場合、一例では、所定の値は2°である。また、操舵角制御部32は、操舵角θwtが時間に応じて変化し、且つ操舵角θwtの変化の速度が所定の速度になるように操舵角θwtを変化させる。所定の速度は、例えば、その絶対値が0°/sよりも大きく5°/s以下になる範囲内である。所定の値と所定の速度は、車速に応じて変化させてもよいし、一定値であってもよい。
【0047】
次に、第3の例の第2の操舵制御について説明する。第3の例の第2の操舵制御は、第1の例の操舵制御の代わりに実行される。第3の例では、操舵角制御部32は、操舵角θwtの変化量を所定の値とする。所定の値は、例えば、その絶対値が0°よりも大きく2°以下になる範囲内である。車両1が左方向に曲がるように操舵角θwtを大きくしていく場合、一例では、所定の値は2°である。所定の値は、車速に応じて変化させてもよいし、一定値であってもよい。
【0048】
次に、図7を参照して、第4の例の第2の操舵制御について説明する。図7は、第4の例の第2の操舵制御を示すフローチャートである。第4の例では、操舵角制御部32は、前述の第2の例と同様に、操舵角θwtを時間に応じて変化させる。
【0049】
図7に示したように、第4の例では、まず、操舵角制御部32が、第2の操舵制御による操舵角制御を実行する(ステップS21)。次に、操舵角制御部32は、ヨーレートセンサ15から、ヨーレートφを取得する(ステップS22)。次に、操舵角制御部32は、ヨーレートφの絶対値|φ|が所定の閾値φa(φa>0)以上であるか否かを判定する(ステップS23)。|φ|がφa以上である場合(YES)には、操舵角制御部32は、第2の操舵制御を終了する。|φ|がφa以上ではない場合(NO)には、ステップS21に戻る。
【0050】
次に、本実施の形態に係る自動操舵制御装置100の作用および効果について説明する。本実施の形態では、操舵角制御部32は、第1の横位置偏差d1の絶対値が減少するように操舵角θwtを制御する第1の操舵制御と、第1の操舵制御における操舵角θwtの変化量と実舵角θtの変化量の差が小さくなるように、第2の横位置偏差d2に基づいて操舵角θwtを制御する第2の操舵制御を行う。本実施の形態では特に、第2の操舵制御は、第1の操舵制御の前に行われ、第1の操舵制御の開始時点における操舵角θwtと第3の角度θhysとの差の絶対値が小さくなるように、操舵角θwtを制御する。これにより、本実施の形態によれば、自動操舵制御による操舵角θwtの切り遅れや切り過ぎを防止して、車両1の蛇行を防止することができる。
【0051】
以下、本実施の形態における上記の効果について、比較例の操舵角制御部と比較しながら詳しく説明する。比較例の操舵角制御部は、本実施の形態における第2の操舵制御を行わず、本実施の形態における第1の操舵制御に相当する比較例の操舵制御を行う。比較例の操舵制御では、第1の横位置偏差d1に基づいて操舵角θwtを制御する。
【0052】
ここで、比較例の操舵制御による操舵角θwtを記号θw0で表し、比較例の操舵制御による操舵角θwtの変化量を記号θd0で表す。バックラッシュや不感帯域の影響を除いた実効的な操舵角は、第3の角度θhysを用いて、θw0−θhys(但し|θd0|>|θhys|)または0(但し|θd0|≦|θhys|)となる。また、実舵角θtは、実効的な操舵角に所定のゲインgを乗じた値で表されるものとする。比較例の操舵制御による実舵角θtは、g(θw0−θhys)(但し|θd0|>|θhys|)または0(但し|θd0|≦|θhys|)となる。
【0053】
比較例では、|θd0|が|θhys|を超えるまで、すなわちθw0が前述の第2の角度θ2を超えるまでは、実舵角θtが変化しない。すなわち、比較例では、θw0がθ2を超えるまでの時間に応じて切り遅れが発生する。切り遅れが発生すると、操舵角θwtの切り過ぎが発生してしまい、その結果、車両が蛇行してしまう。
【0054】
これに対し、本実施の形態では、第2の操舵制御によって、第1の操舵制御における操舵角θwtの変化量と実舵角θtの変化量の差を小さくしている。ここで、第2の操舵制御における操舵角θwtの変化量であって、変化後の操舵角θwtから変化前の操舵角θwtを引いた値を記号θdで表し、第1の横位置偏差d1に基づいて算出される操舵角θwtを記号θw1で表す。第1の操舵制御による実効的な操舵角は、θw1+θd−θhysとなる。
【0055】
前述のように、第1の例では、θdは、θhysと一致するかほぼ一致する。その結果、第1の例では、実効的な操舵角は、θw1と等しいかほぼ等しくなり、第1の操舵制御による実舵角θtは、g・θw1と等しいかほぼ等しくなる。その結果、第1の操舵制御における操舵角θwtの変化量と実舵角θtの変化量の差は、0またはほぼ0になる。従って、第1の例では、第1の横位置偏差d1に基づいて算出されたθw1通りに、実舵角θtが変化する。
【0056】
また、前述の第2および第3の例のように、操舵角θwtの変化量を所定の値とする場合や、前述の第4の例のように、ヨーレートφが所定の閾値φa以上になった場合に第2の操舵制御を終了させる場合には、θdはθhysに必ずしも一致しない。しかし、これらの場合においては、θdとθhysの符号は互いに一致する。そのため、θdの分だけ、第1の横位置偏差d1に基づいて算出されたθw1と実効的な操舵角との差が小さくなる。これにより、第1の操舵制御における操舵角θwtの変化量と実舵角θtの変化量の差は、第2の操舵制御を行わない場合に比べて小さくなる。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態では、第2の操舵制御によって、第1の操舵制御における操舵角θwtの変化量と実舵角θtの変化量の差は小さくなる。これにより、本実施の形態によれば、自動操舵制御による操舵角θwtの切り遅れや切り過ぎを防止して、車両1の蛇行を防止することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、第2の操舵制御による実効的な操舵角の変化量は、θd−θhys(但し|θd|>|θhys|)または0(但し|θd|≦|θhys|)となる。第1の例のようにθdをθhysに一致させるかほぼ一致させると、実効的な操舵角は0またはほぼ0になる。また、第3および第4の例では、|θd|≦|θhys|の場合には、実効的な操舵角は0になり、|θd|>|θhys|の場合には、実効的な操舵角の変化量の絶対値は、|θd|よりも小さくなる。従って、本実施の形態では、第2の操舵制御によっては、実舵角θtは変化しないかほぼ変化しない。
【0059】
また、本実施の形態では、第2の操舵制御は、第2の横位置偏差d2の絶対値が所定の閾値da以上の場合に行われる。これにより、本実施の形態によれば、自動操舵制御の安定性を高めることができ、その結果、車両1の蛇行を防止することができる。
【0060】
また、本実施の形態における第4の例の第2の操舵制御では、操舵角制御部32は、第2の操舵制御の実行中に、ヨーレートφの絶対値|φ|が所定の閾値φa以上になった場合には、第2の操舵制御を終了する。言い換えると、操舵角制御部32は、第2の操舵制御の実行中に、車両1がわずかに傾いた場合には、第2の操舵制御を終了する。これにより、本実施の形態によれば、自動操舵制御の安定性を高めることができ、その結果、車両1の蛇行を防止することができる。
【0061】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。例えば、第1の例の第2の操舵制御では、操舵角制御部32は、操舵角θwtの変化量が第3の角度θhysと一致するかほぼ一致するように、操舵角θwtが時間に応じて変化し、且つ操舵角θwtの変化の速度が所定の速度になるように操舵角θwtを変化させてもよい。
【0062】
また、第4の例の第2の操舵制御では、ヨーレートφの絶対値|φ|が所定の閾値φa未満の場合であっても、操舵角θwtの変化量が第3の角度θhysと一致するかほぼ一致した場合、または、操舵角θwtの変化量が所定の値に達した場合には、操舵角制御部32は、第2の操舵制御を終了してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…車両、2…ステアリング機構、3…タイロッド、4…ステアリングホイール、5…ステアリング軸、6…EPS装置、7…EPSモータ、8…EPS制御ユニット、10…車内ネットワーク、11…自動操舵制御ユニット、12…操舵トルクセンサ、13…車速センサ、14…操舵角センサ、15…ヨーレートセンサ、16…横加速度センサ、21…カメラユニット、22…車載カメラ、23…画像処理部、24…車線認識部、31…横位置偏差演算部、32…操舵角制御部、100…自動操舵制御装置、θ1…第1の角度、θ2…第2の角度、θhys…第3の角度、θt…実舵角、θwt…操舵角、θd…第2の操舵制御における操舵角の変化量。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7