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特開2020-157897洗浄ノズルユニット、及び車載カメラユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-157897(P2020-157897A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】洗浄ノズルユニット、及び車載カメラユニット
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/60 20060101AFI20200904BHJP
   G03B 17/08 20060101ALI20200904BHJP
   G03B 17/56 20060101ALI20200904BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20200904BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20200904BHJP
【FI】
   B60S1/60 Z
   G03B17/08
   G03B17/56 H
   H04N5/225 430
   H04N7/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-58527(P2019-58527)
(22)【出願日】2019年3月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】クラリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 晋史
(72)【発明者】
【氏名】田村 英之
(72)【発明者】
【氏名】秦 哲男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信洋
(72)【発明者】
【氏名】持地 信彦
(72)【発明者】
【氏名】正嶋 博
(72)【発明者】
【氏名】中野 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 廣志
(72)【発明者】
【氏名】秋山 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】野口 直宏
(72)【発明者】
【氏名】津々見 裕子
【テーマコード(参考)】
2H101
2H105
3D025
5C054
5C122
【Fターム(参考)】
2H101CC01
2H105DD06
2H105DD07
3D025AA04
3D025AC02
3D025AC07
3D025AD11
3D025AF02
3D025AF03
3D025AF08
3D025AF16
3D025AF19
5C054CD01
5C054HA30
5C122DA14
5C122EA02
5C122FB03
5C122GE11
5C122HA82
5C122HA84
(57)【要約】
【課題】車載カメラのレンズの洗浄性能の向上を図ること。
【解決手段】空気と洗浄液とが混合したミスト状の洗浄液を、車載カメラ2の球面状のレンズ8に噴射する複数の噴射口48を有した洗浄ノズルユニット4において、前記噴射口48のそれぞれは、前記レンズ8の正面視において、前記レンズ8の頂点Oを通る線で前記レンズ8を二分した一方の側に配置されており、前記噴射口48のそれぞれから噴射した前記ミスト状の洗浄液同士を、前記レンズ8の表面8Aの所定箇所で衝突させる構成とした。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気と洗浄液とが混合したミスト状の洗浄液を、車載カメラの球面状のレンズに噴射する複数の噴射口を有した洗浄ノズルユニットにおいて、
前記噴射口のそれぞれは、前記レンズの正面視において、前記レンズの頂点を通る線で当該レンズを二分した一方の側に配置されており、
前記噴射口のそれぞれから噴射した前記ミスト状の洗浄液同士を、前記レンズの表面の所定箇所で衝突させる
ことを特徴とする洗浄ノズルユニット。
【請求項2】
前記所定箇所は、前記レンズの頂点である、ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄ノズルユニット。
【請求項3】
前記噴射口の数が2つであり、
前記頂点からみて2つの前記噴射口が成す角度が50度以上、かつ180度未満である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄ノズルユニット。
【請求項4】
前記噴射口が先端部に設けられ、当該先端部に前記洗浄液を導く内部液路が内部に設けられた柱状のノズル部を有し、
前記ノズル部の先端部には、
前記内部液路の内部液路出口と、
前記内部液路出口と前記噴射口とを繋ぐ先端液路と、
前記内部液路出口を塞ぐとともに、前記内部液路に前記洗浄液が送られた場合に、当該洗浄液の水圧によって弾性変形して前記内部液路出口を開放する蓋体と、
を備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の洗浄ノズルユニット。
【請求項5】
球面状のレンズを有する車載カメラと、
請求項1から4のいずれかに記載の洗浄ノズルユニットと、
を備えたことを特徴とする車載カメラユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄ノズルユニット、及び車載カメラユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車載カメラのレンズを洗浄する技術として、特許文献1、及び特許文献2が知られている。
特許文献1には、車両後方向をセンシングする車載カメラのレンズの上側にノズルを設け、圧縮空気や洗浄液をノズルから噴射して、レンズに付着した汚れを、車載カメラによるセンシング機能を害さない程度に洗い流すシステムが開示されている。
特許文献2には、車載カメラのレンズの上側にノズルを設けた構成において、車載カメラのレンズの洗浄に使用する空気に、空調装置によって空調制御された空気を利用する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/010580号
【特許文献2】特開2012−132988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、及び特許文献2の技術のように、レンズの上側に設けられたレンズからの洗浄においては、レンズが球体であるためレンズの下側に汚れが残り易い。
この問題を解決するために、球体のレンズの表面に影を生じさせないように飛び出させた位置にノズルを設けることが考えられるが、そうすると、センシングに利用する画角内にノズルが入り込んだり、ノズルが車体から過度に突出したりする、といった新たな問題を生じる。
またレンズの下側の汚れを洗浄するためのノズルを、当該レンズの下側に別途に追加する構成も考え得るが、そのすると、洗浄のための部品点数の増加や構造の複雑化、大型化を招く、といった新たな問題を生じる。
【0005】
また特許文献2の技術では、車載カメラのレンズの洗浄に使用する空気が空調装置によって空調制御された空気であるため、ノズルから噴射される空気の圧力が比較的低いという問題もある。このため、車両前方に取り付けられた車載カメラの洗浄においては、噴射される空気の圧力が走行風の圧力に負けレンズが正常に洗浄されないこともある。また、噴射される圧力が弱いため、ノズルに生じた詰まりの排除能力も低くなり、軽度な詰まりであっても洗浄ができなくなることもある。
【0006】
本発明は、車載カメラのレンズの洗浄性能の向上を図ることができる洗浄ノズルユニット、及び車載カメラユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、空気と洗浄液とが混合したミスト状の洗浄液を、車載カメラの球面状のレンズに噴射する複数の噴射口を有した洗浄ノズルユニットにおいて、前記噴射口のそれぞれは、前記レンズの正面視において、前記レンズの頂点を通る線で当該レンズを二分した一方の側に配置されており、前記噴射口のそれぞれから噴射した前記ミスト状の洗浄液同士を、前記レンズの表面の所定箇所で衝突させることを特徴とする。
【0008】
本発明は、上記洗浄ノズルユニットにおいて、前記所定箇所は、前記レンズの頂点である、ことを特徴とする。
【0009】
本発明は、上記洗浄ノズルユニットにおいて、前記噴射口の数が2つであり、前記頂点からみて2つの前記噴射口が成す角度が50度以上、かつ180度未満である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記洗浄ノズルユニットにおいて、前記噴射口が先端部に設けられ、当該先端部に前記洗浄液を導く内部液路が内部に設けられた柱状のノズル部を有し、前記ノズル部の先端部には、前記内部液路の内部液路出口と、前記内部液路出口と前記噴射口とを繋ぐ先端液路と、前記内部液路出口を塞ぐとともに、前記内部液路に前記洗浄液が送られた場合に、当該洗浄液の水圧によって弾性変形して前記内部液路出口を開放する蓋体と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明は、球面状のレンズを有する車載カメラと、上記のいずれかに記載の洗浄ノズルユニットと、を備えたことを特徴とする車載カメラユニットを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車載カメラのレンズの洗浄性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車載カメラユニットの構成を示す斜視図である。
図2】車載カメラユニットの正面図である。
図3】ノズル部の先端部を分解した分解斜視図である。
図4】ノズル部の先端部から先端カバーを外した状態の正面図である。
図5】車載カメラユニットの縦断面図である。
図6】洗浄液ミストの噴射状態を模式的に示す正面図である。
図7】レンズの下方側から洗浄ノズルユニットの噴射口を視た図である。
図8】洗浄ノズルユニットの噴射口近傍をレンズの側面から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は車載カメラユニット1の構成を示す斜視図であり、図2は車載カメラユニット1の正面図である。
図1、及び図2に示すように、車載カメラユニット1は、車両の周囲映像を撮像する車載カメラ2と、この車載カメラ2を洗浄するための洗浄ノズルユニット4と、を備えたユニットであり、車両の車体の前方、後方、左側、及び右側などに車外に露出した状態で設置される。以下では、車載カメラユニット1が車体の前方、又は後方に配置されており、車両走行時の走行風が車載カメラユニット1に正面から主に当たる場合を例示する。
【0015】
車載カメラ2は、カメラ本体ケース6と、レンズ8と、を備える。カメラ本体ケース6は、略直方形状を成し、その中に光学センサである撮像素子や各種の電気回路が収められている。レンズ8は、カメラ本体ケース6の前面6Aに取り付けられ、撮像素子に結像する光学素子であり、本実施形態では、凸レンズの一つである球面レンズが用いられている。
【0016】
このレンズ8は、その表面8Aが撥水コーティングによって撥水性を有している。また、カメラ本体ケース6にあっては、前面6Aの少なくともレンズ8と接触するレンズ接触部6A1が親水性素材(例えば親水性樹脂)から形成されることで親水性を有している。雨などでレンズ8が濡れた際には、撥水性を有する表面8Aから親水性を有するレンズ接触部6A1へ水がスムーズに移動し、表面8Aの良好な水捌けが実現されている。
【0017】
また車両には、停車中、及び走行中の適宜のタイミングで、ミスト状の洗浄液(以下、「洗浄液ミスト47」と言う(図6参照))を噴射して、車載カメラ2のレンズ8を洗浄する洗浄装置20が搭載されており、洗浄ノズルユニット4は、この洗浄装置20の一部品である。
洗浄装置20は、図1に示すように、洗浄ノズルユニット4の他に、洗浄液を貯留する洗浄液貯留タンク22と、洗浄液貯留タンク22の洗浄液を洗浄ノズルユニット4に洗浄液チューブ24を通じて送り出す洗浄液ポンプ26と、洗浄ノズルユニット4に空気チューブ28を通じて圧縮空気を送り出す空気ポンプ30と、洗浄液ポンプ26及び空気ポンプ30を制御する制御装置31と、を備えている。
【0018】
洗浄ノズルユニット4は、洗浄液チューブ24、及び空気チューブ28に接続自在に構成されたユニットであり、ユニット本体40と、ノズル部46と、を備えている。
ユニット本体40は、本体部50と、取付部51と、を有し、これらが一体成型されている。本体部50は、略直方体形状を成し、その上面50Aには、洗浄液チューブ24の接続端子である洗浄液用コネクタ42と、空気チューブ28の接続端子である空気用コネクタ44とが立設されている。また本体部50の内部には、洗浄液用コネクタ42に連通し洗浄液を貯留するタンクと、空気用コネクタ44に連通し圧縮空気のバッファーとなるチャンバー(空気室)とが設けられている。取付部51は、正面視矩形の平らな取付面51Aを前面側に有し、この取付面51Aに、上記車載カメラ2、及びノズル部46が螺子止め固定されている。
【0019】
ノズル部46は、取付面51Aからレンズ8の表面8Aに亘って延びる長さの略柱状を成し、その先端部46Aに、レンズ8の近傍で洗浄液ミスト47を噴射するための複数(本実施形態では2つ)の噴射口48が形成されている。このノズル部46が車載カメラ2の上側に取り付けられることで、各噴射口48がレンズ8の上側に対面配置される。
【0020】
図3はノズル部46の先端部46Aを分解した分解斜視図であり、図4はノズル部46の先端部46Aから先端カバー71を外した状態の正面図である。また図5は車載カメラユニット1の縦断面図である。
【0021】
ノズル部46の内部には、図5に示すように、ユニット本体40から洗浄液、及び空気を先端部46Aまで導く1本の内部液路60と、2本の内部空気路61とが、ユニット本体40からノズル部46の先端部46Aに向かって形成されている。そして、先端部46Aの先端面67には、図4に示すように、内部液路60の出口である1つの内部液路出口72と、この内部液路出口72の両側のそれぞれに、内部空気路61の出口である内部空気路出口74とが開口している。
【0022】
先端面67は、図5に示すように、先端カバー71で覆われた平面状を成し、その面内に、内部液路出口72と各噴射口48とを繋ぐ先端液路64と、内部空気路出口74と噴射口48とを一対一で繋ぐ先端空気路66と、が設けられている。これら先端液路64と先端空気路66とは互いに噴射口48の手前の合流点49で合流し、この合流点49で洗浄液と空気とが混合することで洗浄液がミスト状になり、洗浄液ミスト47が噴射口48から噴射される。
【0023】
車載カメラユニット1は、ノズル部46が車載カメラ2の鉛直上方に位置する姿勢で車両に取り付けられるものである。そして、ノズル部46の先端面67においては、各噴射口48は、内部液路出口72、及び内部空気路出口74よりも鉛直下方に設けられており、先端液路64、及び先端空気路66のそれぞれが、対応する内部液路出口72、及び内部空気路出口74から噴射口48にかけて、洗浄液や空気が鉛直下方のみに流下するように(すなわち、経路の途中に流体を鉛直上方に導く箇所を設けずに)形成されている。また先端液路64の経路内の洗浄液はポンプ(図示せず)の圧力によって噴射口48に向かようになっており、洗浄動作後に、洗浄液が先端液路64の経路内に残り難くなる。
【0024】
ここで、洗浄動作後に、レンズ8の表面8Aに微小な水滴が残ることがある。そこで本実施形態の洗浄装置20は、制御装置31が洗浄液ポンプ26を停止させたまま、空気ポンプ30を動作させて噴射口48から表面8Aに空気を吹き付ける水滴除去動作を実行することで、表面8Aから水滴を吹き飛ばすように構成されている。
上述の通り、先端液路64内には洗浄液が残り難くなっているので、水滴除去動作時に、先端液路64に残留した洗浄液が空気と一緒に吹き出され、これが表面8Aに新たに付着する、といった事態を防止できる。しかしながら、ノズル部46に内設された内部液路60は、その経路長が比較的長く、また車両設置状態において、鉛直方向よりも水平方向に近い方向に延在するため、洗浄液が内部液路60に残留することがあり、水滴除去動作時には、この洗浄液が空気と一緒に吹き出される虞がある。
【0025】
そこで、本実施形態では、水滴除去動作時に内部液路60からの洗浄液の流出を防止するために、図3、及び図5に示すように、内部液路60の内部液路出口72に蓋体80が設けられている。
蓋体80は、内部液路出口72を塞ぐものであり、洗浄液ポンプ26の動作時には、水圧によって弾性変形し内部液路出口72を開放する。この蓋体80によって、水滴除去動作時には、内部液路60からの洗浄液の流出が阻止されるので、内部液路60の洗浄液が空気と一緒に吹き出されることが防止される。また、洗浄直後などに先端液路64内に洗浄液が仮に残っていたとしても、先端液路64の経路長は内部液路60に比べて短く、そこに残留する液量も僅かなため、水滴除去動作時には、最初だけ洗浄液が混じった空気を吹き出した後、速やかに、洗浄液を含まない空気を吹き出すことができる。
【0026】
本実施形態の蓋体80は、図3、及び図5に示すように、枠部81と、内部液路出口72に当接して塞ぐ蓋部82と、この蓋部82を枠部81に支持する支持部83とを備え、これらが弾性を有した樹脂材(例えばシリコンゴムなど)から一体成型されている。
【0027】
図3に示すように、先端面67には、図5に示すように、係合凹部84が形成されており、蓋体80の取付時には、係合凹部84に枠部81を嵌め込んだ状態で先端カバー71を固定することで、枠部81が先端カバー71によって係合凹部84に押さえ付けられる。また、この状態においては、蓋部82が内部液路出口72に弾性力によって押し当てられた状態となる。支持部83は、枠部81や蓋部82に比べて厚みが薄く形成されることで弾性変形し易くなっており、洗浄液ポンプ26の動作に伴う水圧によって容易に弾性変形することで蓋部82が内部液路出口72から速やかに離間し、当該内部液路出口72が開放される。
【0028】
このように、内部液路出口72を弾性変形する蓋体80で塞ぐ構造なので、安価であり、しかも簡単な組立で、水滴除去動作時に内部液路60からの洗浄液の流出を防止できる。
【0029】
次いで、洗浄ノズルユニット4によるレンズ8の洗浄について詳述する。
【0030】
図6は洗浄液ミスト47の噴射状態を模式的に示す正面図である。図7はレンズ8の下方側から洗浄ノズルユニット4の噴射口48を視た図であり、図8は洗浄ノズルユニット4の噴射口48の近傍をレンズ8の側面から視た図である。
図6に示すように、洗浄ノズルユニット4では、レンズ8の正面視において、レンズ8の頂点O(正面視におけるレンズ8の中心に一致)を通る水平線A1で当該レンズ8を二分した一方の側(本実施形態では上側)に2つの噴射口48が配置されている。この配置により、レンズ8の全周囲に亘って適宜の間隔で複数の噴射口48を配置する構成に比べて、車載カメラ2の画角内への噴射口48の入り込みが抑えられ、広い画角のセンシングが実現されている。
【0031】
本実施形態では、2つの噴射口48は、正面視において、上記水平線A1の上側であり、なおかつ、頂点Oを通る鉛直線A2に対する配置角度αが45度になる位置に配置されている。各噴射口48は、図7に示すように、その開口全体がレンズ8の厚みTに収まる位置、及び寸法形状で設けられている。このような噴射口48とレンズ8のレイアウトにおいては、図8に示すように、各噴射口48からはレンズ8の頂点Oに向かう所定の仰角βで洗浄液ミスト47が噴射される。なお、仰角βは、レンズ8が取り付けられるカメラ本体ケース6の前面6Aと洗浄液ミスト47の噴射方向Bとが成す角で表すことができる。
【0032】
この場合、レンズ8の表面8Aのうち、正面視において、水平線A1でレンズ8を二分した他方の側(本実施形態では下側)の範囲は噴射口48に対面しないことから、この範囲に洗浄液ミスト47が直接届くことはない。したがって、何ら対策を施さなければ、洗浄後でも、この範囲の特にレンズ8の縁部に近い範囲(以下、「他方側縁部近傍範囲C」と言う)に汚れが残り易くなる。また、車載カメラユニット1が車両の前方に設置されている場合、車両の走行中、前走車によって跳ね上げられた汚れなどがレンズ8に直接当たり、汚れがレンズ8に強固に付着し易くなるため、他方側縁部近傍範囲Cに汚れが更に残り易くもなる。
【0033】
そこで本実施形態では、各噴射口48から噴射した洗浄液ミスト47同士の衝突(ぶつかり合い)によって生じる乱流によって、正面視においてレンズ8の水平線A1よりも下側の範囲、特に他方側縁部近傍範囲Cの洗浄力を高めることとしている。
【0034】
詳述すると、本実施形態の車載カメラユニット1は、洗浄動作時には、図6に示すように、レンズ8の頂点Oに向かって噴射口48の各々から同程度の流速で洗浄液ミスト47を正面視扇状に連続的に噴射する。洗浄液ミスト47が正面視扇状に噴射されることで、レンズ8の頂点Oよりも上側の表面8Aの広い範囲を洗い流しながら頂点Oに向かって洗浄液ミスト47が進行する。
【0035】
その後、頂点Oにおいて連続した流量の洗浄液ミスト47同士が衝突することで、圧力が低い方に洗浄液ミスト47が流れる乱流が、図8に模式的に示すように、側面視において、洗浄液ミスト47同士の衝突を生じている範囲Dで連続的に発生する。この場合、範囲Dにおいて圧力が低い方向は、レンズ8から離れる方向と、レンズ8に近づく方向との2方向であるため、レンズ8から離れる方向の第1気流E1と、レンズ8に向かう第2気流E2とを含む乱流が範囲Dで連続的に発生する。
そして、この第2気流E2が他方側縁部近傍範囲Cに向かう速い流速の洗浄液ミスト47を生じさせ、この洗浄液ミスト47によって他方側縁部近傍範囲Cの汚れが掻き出され洗浄される。これにより、他方側縁部近傍範囲Cの洗浄力が向上することとなる。
【0036】
ここで、各噴射口48から噴射した洗浄液ミスト47が、車両の走行時の走行風や車外の風の風圧によって頂点Oから外れると、乱流の第2気流E2が弱まり、他方側縁部近傍範囲Cの洗浄力が低下する。このため、噴射口48とレンズ8との距離、及び、噴射時の洗浄液ミスト47の流速は、走行風や車外の風の風圧に抗して頂点Oに確実に届く値に設定されている。
【0037】
また、2つの噴射口48の配置角度αが小さくなるほど、頂点Oで衝突する洗浄液ミスト47の合成ベクトルにおいて正面視下向きの力が増大し、その方向に多くの洗浄液ミスト47が流れる。この結果、第2気流E2が弱くなり、他方側縁部近傍範囲Cの洗浄力が低下する。
したがって、2つの噴射口48の配置角度αは、ある程度の角度以上であることが望ましく、配置角度αが少なくとも25度以上(2つの噴射口48が成す角度が50度以上)であれば、他方側縁部近傍範囲Cを洗浄できることが確かめられている。この場合、各噴射口48の配置角度αの上限は、頂点Oで衝突する洗浄液ミスト47の合成ベクトルにおいて、正面視下向きの成分を生じさせる最大の角度、すなわち90度未満の角度(2つの噴射口48が成す角度は180度未満)である。
【0038】
また噴射口48の数は2つに限定されるものではない。この場合、噴射口48のそれぞれは、正面視において、水平線A1の上側の範囲であって、鉛直線A2に対して左右対称な位置に配置される。そして、車載カメラユニット1は、頂点Oで衝突する洗浄液ミスト47の合成ベクトルにおいて、正面視下向きの成分が生じる流速で噴射口48のそれぞれから洗浄液ミスト47を噴射される。この場合において、各洗浄液ミスト47の流速は同じでも、噴射口48ごとに異なってもよい。
ただし、噴射口48の数が増えるほど、第2気流E2の制御が困難となり、所望の強さの第2気流E2を生じさせ難くなる。換言すれば、噴射口48を2つにすることで、所望の強さの第2気流E2を簡単に発生させることができる。
【0039】
本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0040】
本実施形態の洗浄ノズルユニット4は、噴射口48のそれぞれが、レンズ8の正面視において、当該レンズ8の頂点Oよりも上側に配置されており、噴射口48のそれぞれから噴射した洗浄液ミスト47同士がレンズ8の表面8Aで衝突するように構成されている。
この洗浄ノズルユニット4によれば、洗浄液ミスト47同士の衝突が生じる範囲Dに、レンズ8から離れる方向の第1気流E1と、レンズ8に向かう第2気流E2とを含む乱流が発生するので、この第2気流E2よって生じた洗浄液ミスト47を使ってレンズ8の表面8Aを洗浄し、洗浄能力の向上を図ることができる。
【0041】
本実施形態の洗浄ノズルユニット4では、レンズ8の頂点Oで洗浄液ミスト47同士が衝突するので、頂点Oよりも下側の範囲を、第2気流E2よって生じた洗浄液ミスト47で洗浄することができる。
【0042】
本実施形態の洗浄ノズルユニット4では、噴射口48の数を2つとし、頂点Oからみて2つの噴射口48が成す角度が50度以上、かつ180度未満としたので、頂点Oよりも下側の範囲の洗浄に適度な強さの第2気流E2を、3つ以上の噴射口48を設ける構成に比べて簡単に発生させることができる。
【0043】
本実施形態の洗浄ノズルユニット4は、ノズル部46の先端部46Aに、内部液路60の内部液路出口72と、内部液路出口72と噴射口48とを繋ぐ先端液路64と、内部液路出口72を塞ぐとともに、内部液路60に洗浄液が送られた場合に、当該洗浄液の水圧によって弾性変形して内部液路出口72を開放する蓋体80と、を備える。
これにより、噴射口48から空気だけを吹き出す際に、内部液路60に残留した洗浄液が漏れ出て空気に混じることを防止できる。したがって、レンズ8に空気を吹き付けて、その表面8Aの水滴を吹き飛ばす際に、洗浄液が混じった空気が吹き付けられることで新たな水滴が表面8Aに付着する、といった事態を防止できる。
【0044】
上述した実施形態は、本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0045】
上述した実施形態において、洗浄装置20は、水滴除去動作時に、空気のみをレンズ8に吹き付けたが、これに限らず、液体状の洗浄液をレンズ8に噴射口48から注いでもよい。上述の通り、レンズ8の表面8Aからレンズ接触部6A1への水捌けが良好なので、レンズ8に注がれた洗浄液がレンズ接触部6A1に速やかに向かう際に、レンズ8の表面8Aの水滴を一緒に除去することができる。
【0046】
上述した実施形態において、レンズ8として球面状のレンズを例示したが、表面8Aは必ずしも完全な球面である必要はない。
【0047】
上述した実施形態では、車載カメラユニット1が車体の前方、又は後方に配置された例を説明したが、車載カメラユニット1が車体の左側、又は右側に配置されてもよい。車体の左側、及び右側では、走行風は主に車両の前方から後方に向かうので、この走行風の風上側に噴射口48が位置し、風下側に他方側縁部近傍範囲Cが位置する向きで車載カメラユニット1を設けることが好ましい。これにより、走行風の向きに洗浄液ミスト47の噴射方向が合わせられるので、洗浄液ミスト47が走行風の風圧に負けて頂点Oよりも噴射口48に近い側(他方側縁部近傍範囲Cから遠ざかる側)で衝突してしまうことがない。
【0048】
上述した実施形態において、水平、及び垂直等の方向、各種の数値、及び形状は、特段の断りがなされていない限り、これらの方向、及び数値の周辺の範囲、並びに近似の形状を意識的に除外するものではなく、同一の作用効果を奏し、また数値にあっては臨界的意義を逸脱しない限りにおいて、その周辺の範囲、並びに近似の形状(いわゆる、均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0049】
1 車載カメラユニット
2 車載カメラ
4 洗浄ノズルユニット
8 レンズ
8A レンズの表面
20 洗浄装置
40 ユニット本体
46 ノズル部
46A 先端部
47 洗浄液ミスト(ミスト状の洗浄液)
48 噴射口
60 内部液路
61 内部空気路
64 先端液路
66 先端空気路
67 先端面
72 内部液路出口
74 内部空気路出口
80 蓋体
81 枠部
82 蓋部
83 支持部
A1 水平線
A2 鉛直線
B 噴射方向
C 下端側範囲
E1 第1気流
E2 第2気流
O 頂点
α 配置角度
β 仰角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8