【解決手段】固定具11は、フロアマット14に形成された孔23に挿入される筒状の挿入部24を有し、孔23に挿入部24が挿入された状態でフロアマット14に取り付けられる取付部材15と、挿入部24に挿入されて取付部材15を係止する係止位置と取付部材15を係止しない非係止位置との間で変位可能な係止部22を有し、且つ車体側に固定される固定部材13と、挿入部24における固定部材13側とは反対側の開口を覆うように挿入部24に挿入される蓋体16とを備える。蓋体16には、蓋体16を挿入部24に挿入する際に係止部22に係合することによって係止部22を非係止位置から係止位置に変位させる変位部35が設けられている。
前記係止部は、前記挿入部の軸線方向に延びる軸線を中心に前記係止位置と前記非係止位置との間で回動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の固定具。
前記蓋体を前記挿入部に挿入した際に、前記挿入部から前記蓋体が抜けないようにするための抜け止め機構を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の固定具。
前記蓋体及び前記取付部材には、前記蓋体を前記挿入部に挿入する際に前記蓋体と前記取付部材との位置を合わせるための目印がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の固定具。
前記取付部材には、前記挿入部に挿入された前記蓋体を引き抜く際に前記蓋体をつまみ易くするための凹部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の固定具。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、固定具の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び
図2に示すように、固定具11は、車体側の床面に固定されたカーペット12に固定される固定部材13と、車両用部品の一例としてのフロアマット14に取り付けられる取付部材15と、蓋体16とを備え、フロアマット14をカーペット12に固定している。
【0012】
固定部材13は、カーペット12の上側に配置された円形の上板17と、カーペット12の下側に配置された円形の下板18と、カーペット12に形成された貫通孔19に挿入されて上板17と下板18とを連結する円柱状の連結部20と、上板17上に一体形成された台座部21と、台座部21上に回動可能に支持された係止部22とを備えている。
【0013】
そして、固定部材13は、上板17と下板18とでカーペット12を挟持した状態で連結部20により貫通孔19を通して上板17と下板18との中央部同士を連結することによって、カーペット12に固定されている。この場合、連結部20は、上板17及び下板18のうちのいずれか一方に一体形成されていてもよいし、上板17及び下板18とは別体であってもよい。
【0014】
台座部21は、上板17の上面の中央部に配置され、上部が丸みを帯びた略矩形板状をなしている。係止部22は、上部が丸みを帯びた略直方体状をなしており、長手方向が水平方向となるように配置されている。すなわち、係止部22は、鉛直方向に延びる中心軸線を回動中心として回動可能に台座部21上に支持されている。
【0015】
取付部材15は、フロアマット14に形成された孔23に挿入される円筒状の挿入部24と挿入部24の上端に一体形成されてフロアマット14の上面上に配置される円環板状の外側フランジ部25とを有した本体26と、挿入部24に下端側から嵌合させて外側フランジ部25とでフロアマット14を挟持する円環状の嵌合板27とを備えている。すなわち、取付部材15は、挿入部24がフロアマット14の孔23に挿入された状態で外側フランジ部25と嵌合板27とによりフロアマット14を挟持することによって、フロアマット14に取り付けられている。
【0016】
図2及び
図3に示すように、取付部材15の挿入部24内の下端部には、水平方向で対向する一対の内側フランジ部28が形成されている。一対の内側フランジ部28は、挿入部24の下端開口部29よりも若干上側に位置している。挿入部24内における一対の内側フランジ部28同士の間には、水平方向に延びる略矩形状をなすフランジ開口部30が形成されている。
【0017】
挿入部24内にはフランジ開口部30から固定部材13の台座部21及び係止部22が挿入されている。この場合、台座部21の上面及び係止部22の下面は、一対の内側フランジ部28の上面と面一になっている。係止部22の上面は、挿入部24の上端開口部31よりも若干下側に位置している。係止部22の長手方向の長さ及び短手方向の長さは、フランジ開口部30の長手方向の長さ及び短手方向の長さよりもそれぞれ短くなっている。係止部22の長手方向の長さは、フランジ開口部30の短手方向の長さよりも長くなっている。
【0018】
したがって、係止部22は、その長手方向がフランジ開口部30の長手方向と一致する非係止位置(
図4に示す位置)にあるときにフランジ開口部30を通り抜けることができ、その長手方向がフランジ開口部30の短手方向と一致する係止位置(
図3に示す位置)にあるときにフランジ開口部30を通り抜けることができなくなる。すなわち、係止部22は、係止位置にあるときに長手方向の両端部が取付部材15の一対の内側フランジ部28を係止し、非係止位置にあるときに長手方向の両端部が取付部材15の一対の内側フランジ部28を係止しない。
【0019】
係止部22は、挿入部24内に挿入された状態で、挿入部24の軸線方向(鉛直方向)に延びる軸線を中心に係止位置と非係止位置との間で回動(変位)可能になっている。係止部22は、90°回動する度に係止位置と非係止位置とに交互に位置するようになっている。
【0020】
挿入部24の上端における内周縁には、中心に向かうほど徐々に高さが低くなる湾曲面32が形成されている。挿入部24を構成する周壁には、挿入部24の軸線方向(鉛直方向)に延びる一対の切欠溝33が形成されている。一対の切欠溝33は、湾曲面32から内側フランジ部28の上面の高さまで挿入部24を構成する周壁を貫通するように形成されており、互いに挿入部24の中心軸線を挟んで対向するように配置されている。一対の切欠溝33は、水平方向においてはフランジ開口部30の長手方向に延びている。
【0021】
図2及び
図5に示すように、蓋体16は、挿入部24における固定部材13側とは反対側の開口である上端開口部31を覆う円形の蓋板34と、蓋板34の裏面に一体となるように立設されて上端開口部31から挿入部24内に挿入される一対の変位部35とを備えている。蓋板34の径は、上端開口部31の径と略同じになるように設定されている。一対の変位部35間の間隔は、係止部22の短手方向の長さよりも若干広くなるように設定されている。
【0022】
図4及び
図5に示すように、一対の変位部35は、フランジ開口部30の短手方向に延びる互いに同一のブロック形状をなしている。一対の変位部35は、長手方向において互いに逆方向を向くように配置されている。各変位部35は、長手方向の略中央部から一方側の端部にかけて形成された傾斜面36を有し、他方側の端部に各切欠溝33に挿入可能な直方体状の凸部37を有している。傾斜面36は、凸部37側とは反対側の端部に向かうほど高さが低くなるように傾斜している。
【0023】
そして、蓋体16を挿入部24に挿入する際には、一対の変位部35の凸部37が一対の切欠溝33内に沿ってそれぞれ摺動することで、蓋体16がガイドされる。したがって、本実施形態では、一対の切欠溝33及び一対の凸部37により、蓋体16を挿入部24に挿入する際に蓋体16をガイドするガイド機構が構成されている。
【0024】
図1及び
図4に示すように、取付部材15の外側フランジ部25の上面の内周縁部には、目印の一例としての三角形状をなす一対の第1突起38がフランジ開口部30の短手方向において中心部を挟んで対向するように設けられている。蓋板34における変位部35側とは反対側の面である表面の外周縁部には、目印の一例としての三角形状をなす一対の第2突起39が中心部を挟んで対向するように設けられている。
【0025】
この場合、
図1、
図4及び
図5に示すように、蓋体16を上端開口部31から挿入部24に挿入する際に、蓋体16における一対の第2突起39の周方向の位置を取付部材15における一対の第1突起38にそれぞれ合わせることで、蓋体16における一対の凸部37の周方向の位置が取付部材15における一対の切欠溝33にそれぞれ合わせられる。すなわち、蓋体16及び取付部材15には、蓋体16を挿入部24に挿入する際に蓋体16と取付部材15との周方向の位置を合わせるための一対の第2突起39及び一対の第1突起38がそれぞれ設けられている。
【0026】
そして、蓋体16における一対の凸部37の周方向の位置を取付部材15における一対の切欠溝33にそれぞれ合わせた状態では、蓋体16の一対の傾斜面36が非係止位置にある係止部22の上面における長手方向の両端部とそれぞれ挿入部24の軸線方向(鉛直方向)で対向するようになっている。
【0027】
なお、取付部材15の外側フランジ部25の上面の内周縁部における一対の第1突起38と周方向で隣り合う位置には、挿入部24に挿入された状態の蓋体16を挿入部24から引き抜く際に蓋体16を指でつまみ易くするための一対の凹部40がそれぞれ設けられている。
【0028】
次に、固定具11によってフロアマット14をカーペット12に固定するときの作用について説明する。
フロアマット14をカーペット12に固定する場合には、まず、カーペット12の貫通孔19に連結部20が挿入されるようにして上板17と下板18とでカーペット12を挟持することによって、固定部材13をカーペット12に固定する。続いて、挿入部24をフロアマット14の孔23に挿入した状態で挿入部24に嵌合板27を嵌合させて外側フランジ部25と嵌合板27とによりフロアマット14を挟持することによって、取付部材15をフロアマット14に取り付ける。
【0029】
続いて、固定部材13の係止部22を、非係止位置に位置させた状態で取付部材15のフランジ開口部30から挿入部24内に挿入する。続いて、蓋体16の裏面を挿入部24の上端開口部31に対向させた状態で、蓋体16における一対の第2突起39の周方向の位置を取付部材15における一対の第1突起38にそれぞれ合わせる。すると、蓋体16における一対の凸部37の周方向の位置が取付部材15における一対の切欠溝33にそれぞれ合わせられる。
【0030】
これにより、蓋体16の一対の傾斜面36が非係止位置にある係止部22の上面における長手方向の両端部とそれぞれ対向する。続いて、蓋体16の一対の凸部37が取付部材15の一対の切欠溝33に挿入されるように、蓋体16の一対の変位部35を挿入部24内に挿入する。すると、
図6(a)に示すように、蓋体16の一対の変位部35の傾斜面36が非係止位置にある係止部22の上面における長手方向の両端部にそれぞれ当接する。
【0031】
引き続き、蓋体16の一対の変位部35を挿入部24内に押し込むと、一対の変位部35の傾斜面36上を係止部22の上面における長手方向の両端部が摺動することで、
図6(b)に示すように、非係止位置にある係止部22が係止位置に向かって回動する。つまり、蓋体16の一対の変位部35の傾斜面36は、蓋体16を下方に向かって挿入部24内に押し込むときの押圧力を、係止部22を非係止位置から係止位置に向かって回動させるための回動力に変換して係止部22に伝達する。
【0032】
このとき、蓋体16は、係止部22からの反力を受けて周方向に回動しようとするが、周方向において一対の凸部37が取付部材15の一対の切欠溝33の側壁面に当接するため、周方向への回動が抑制される。つまり、蓋体16の一対の変位部35は、一対の凸部37及び一対の切欠溝33によってガイドされながら挿入部24内に挿入される。
【0033】
引き続き、蓋体16の一対の変位部35を挿入部24内に完全に押し込むと、一対の変位部35の傾斜面36上を係止部22の上面における長手方向の両端部がさらに摺動することで、
図6(c)に示すように、非係止位置にある係止部22が係止位置に回動した状態になる。すなわち、蓋体16の一対の変位部35は、挿入部24に挿入する際に係止部22に係合することによって係止部22を非係止位置から係止位置に変位させる。
【0034】
これにより、取付部材15の内側フランジ部28が固定部材13の係止部22によって係止され、固定具11によってフロアマット14がカーペット12に固定される。このとき、一対の凸部37の先端(下端)は内側フランジ部28の上面の高さと同じ高さの一対の切欠溝33の下壁面に当接し、且つ挿入部24の上端開口部31は蓋板34によって覆われる。
【0035】
また、フロアマット14をカーペット12から取り外す場合には、まず、取付部材15の一対の凹部40に指を入れて蓋体16をつまんで挿入部24から引き抜く。続いて、係止位置にある係止部22を指でつまんで非係止位置に回動させる。その後、係止部22をフランジ開口部30に通しながらフロアマット14をカーペット12から持ち上げることで、フロアマット14をカーペット12から取り外すことができる。
【0036】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)固定具11において、蓋体16には、蓋体16を挿入部24に挿入する際に係止部22に係合することによって係止部22を非係止位置から係止位置に変位させる一対の変位部35が設けられている。この構成によれば、蓋体16を挿入部24に挿入するだけで固定部材13の係止部22を隠しながら非係止位置から係止位置に変位させることができる。すなわち、固定部材13の係止部22を蓋体16によって隠すことができ、且つフロアマット14に取り付けられた取付部材15を固定部材13の係止部22によって確実に係止することができる。このため、意匠性を維持しつつフロアマット14を確実にカーペット12に固定することができる。したがって、固定部材13の係止部22がフロアマット14に取り付けられた取付部材15を係止しない状態でフロアマット14が使用されることを抑制できる。加えて、蓋体16によって挿入部24に異物が入ることを抑制できる。因みに、挿入部24に異物が入ると、係止部22の回動が妨げられるおそれがある。
【0037】
(2)固定具11において、係止部22は、挿入部24の軸線方向に延びる軸線を中心に係止位置と非係止位置との間で回動可能に構成されている。この構成によれば、係止部22を係止位置と非係止位置との間で直線的に移動可能に構成する場合に比べて、固定具を小さくすることができる。
【0038】
(3)固定具11は、蓋体16を挿入部24に挿入する際に蓋体16をガイドする一対の凸部37及び一対の切欠溝33を備えている。この構成によれば、蓋体16を挿入部24に挿入する際に、一対の凸部37を一対の切欠溝33に係合させることで、蓋体16をガイドすることができる。
【0039】
(4)固定具11において、蓋体16及び取付部材15には、蓋体16を挿入部24に挿入する際に蓋体16と取付部材15との周方向の位置を合わせるための一対の第2突起39及び一対の第1突起38がそれぞれ設けられている。この構成によれば、蓋体16を挿入部24に挿入する際に一対の第2突起39の周方向の位置を一対の第1突起38に合わせることで、蓋体16を挿入部24に対して正しい位置で容易且つ迅速に挿入することができる。
【0040】
(5)固定具11において、取付部材15には、挿入部24に挿入された蓋体16を引き抜く際に蓋体16をつまみ易くするための一対の凹部40が設けられている。この構成によれば、一対の凹部40によって蓋体16がつまみ易くなるので、挿入部24に挿入された状態の蓋体16を容易に引き抜くことができる。
【0041】
(変更例)
なお、上記実施形態は次のように変更してもよい。
・
図7及び
図8に示すように、固定具11は、蓋体16を挿入部24に挿入した際に、挿入部24から蓋体16が抜けないようにするための抜け止め機構として、挿入部24に係止孔50を形成するとともに蓋体16に係止孔50に係止可能な鉤部51を形成するようにしてもよい。すなわち、蓋体16の一対の変位部35のうちの一方における凸部37側とは反対側の端部を省略して当該省略した領域に鉤部51を設け、且つ蓋体16を挿入部24に挿入した際に挿入部24における鉤部51と対応する位置に係止孔50を貫通するように形成してもよい。このようにすれば、蓋体16を挿入部24に挿入した際に、
図9に示すように、挿入部24の係止孔50に蓋体16の鉤部51が係止されるため、挿入部24から蓋体16が抜けることを抑制できる。なお、抜け止め機構として、蓋体16に係止孔50を形成するとともに挿入部24に係止孔50に係止可能な鉤部51を形成するようにしてもよい。
【0042】
・
図10に示すように、取付部材15における一対の切欠溝33の水平方向の延びる方向が挿入部24の径方向になるようにしてもよい。この場合、
図11に示すように、一対の切欠溝33の水平方向の延びる方向に合わせて蓋体16における一対の凸部37の水平方向の延びる方向を変更する必要がある。
【0043】
・一対の凹部40のうち少なくとも一方を省略してもよい。
・一対の第2突起39及び一対の第1突起38は、省略してもよい。
・目印は、一対の第2突起39及び一対の第1突起38の代わりに、塗料やステッカーなどによって構成してもよい。この場合、目印の形状は、三角形状に限らず、円形や四角形など任意の形状でよい。
【0044】
・ガイド機構を構成する一対の凸部37及び一対の切欠溝33は省略してもよい。
・ガイド機構を構成する一対の凸部37のうちの一方及び一対の切欠溝33のうちの一方を省略するようにしてもよい。
【0045】
・ガイド機構として、蓋体16に一対の切欠溝33を形成し、挿入部24に一対の凸部37を形成するようにしてもよい。
・固定具11において、係止部22は、係止位置と非係止位置との間で直線的に移動可能に構成してもよい。
【0046】
・一対の変位部35のうちいずれか一方を省略してもよい。
・固定具11によって固定される車両用部品は、フロアマット14に限らず、ドアトリムやラゲージボートなどの車両用内装部品やキャリアーなどの車両用外装部品であってもよい。