【解決手段】ワークを載置した状態で搬送する搬送面を有する搬送部と、少なくとも搬送面に進行波を発生させる進行波発生手段と、を備えるワーク搬送装置において、搬送部は、第1搬送部31及び該第1搬送部31の搬送方向下流側に隣接する第2搬送部41を備え、第1搬送部31は、ワークを貯留する貯留部32を備え、第2搬送部41は、第1搬送部31により搬送されたワークを続けて搬送するように構成され、第1搬送部31と第2搬送部41が一体に構成されている。
前記搬送部は、前記搬送面を有する搬送路を備え、前記第1搬送部と前記第2搬送部は、平面視において前記搬送路の形状が異なることを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク搬送装置。
【背景技術】
【0002】
従来のワーク搬送装置として、例えば特許文献1に記載されたものがある。このワーク搬送装置は、多数のワークを貯留する貯留部を備えるボウルフィーダと、ボウルフィーダから供給されたワークを整列させつつ搬送するリニアフィーダと、を有するパーツフィーダである。
【0003】
ボウルフィーダは、ボウルフィーダを構成するボール本体がねじり方向に振動されることで、ボール本体の底部上のワークが上縁に向かって螺旋状に搬送される構成であり、また、リニアフィーダは、リニアフィーダを構成する溝状の直線状の搬送路が形成されるシュートが板バネの共振によって直線振動されることで、ボウルフィーダとの乗継部で受け取ったワークを搬送する構成である。つまり、ボウルフィーダとリニアフィーダとが異なる周波数によってワークを搬送する構成であるため、ボウルフィーダとリニアフィーダを接触させて隙間の無い状態で設けることができない。この隙間の無い状態では、ボウルフィーダとリニアフィーダとが衝突するからである。したがって、前記乗継部において隙間を空けた状態でボウルフィーダとリニアフィーダを設置しなければならない。また、ボウルフィーダとリニアフィーダを設置する際に、ボウルフィーダ側の受け渡し側端部の高さとリニアフィーダ側の受け取り側端部の高さを同一にすることができない場合があり、両端部間に段差が発生することがある。
【0004】
上記のように乗継部に隙間や段差があると、ワークが搬送経路外へ落下する、あるいはワークの姿勢が乱れることがあり、ワークを良好に搬送することができない不都合が発生していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、ワークを良好に搬送することができるワーク搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワークを載置した状態で搬送する搬送面を有する搬送部と、少なくとも前記搬送面に進行波を発生させる進行波発生手段と、を備えるワーク搬送装置において、前記搬送部は、第1搬送部及び該第1搬送部の搬送方向下流側に隣接する第2搬送部を備え、前記第1搬送部は、ワークを貯留する貯留部を備え、前記第2搬送部は、前記第1搬送部により搬送されたワークを続けて搬送するように構成され、前記第1搬送部と前記第2搬送部が一体に構成されていることを特徴とするワーク搬送装置である。
【0008】
上記のように、第1搬送部と前記第2搬送部が一体に構成されているので、第1搬送部から前記第2搬送部へワークを受け渡す部分に隙間や段差が発生することがない。したがって、進行波により搬送されるワークを第1搬送部から第2搬送部にスムーズに移動させて良好に搬送することができる。
【0009】
また、前記第1搬送部は、ワークが循環する循環部を備え、前記第2搬送部は、ワークを取り出す取出部を備えていてもよい。
【0010】
上記のように、第1搬送部でワークを循環させながら第2搬送部に移動させて第2搬送部に備える取出部からワークを取り出すことができる。
【0011】
また、前記搬送部は、前記搬送面を有する搬送路を備え、前記第1搬送部と前記第2搬送部は、平面視において前記搬送路の形状が異なっていてもよい。
【0012】
上記のように、平面視において搬送路の形状が異なる第1搬送部と第2搬送部とすることで、各搬送部の目的に適した形状に第1搬送部と第2搬送部を形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1搬送部と第2搬送部を一体に構成することによって、ワークを良好に搬送することができるワーク搬送装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、本実施形態に係るワーク搬送装置としてのパーツフィーダ1を示している。このパーツフィーダ1は、ベース部2上に、円盤状のボウルフィーダ部3と、ボウルフィーダ部3の外周部の1か所から径外方向に直線状に延びるリニアフィーダ部4と、を備える。
【0016】
ボウルフィーダ部3とリニアフィーダ部4は、弾性を有する金属材料(例えばアルミニウム)で構成され、後述する進行波発生手段の駆動により波打つように変形できる程度の弾性を有している。具体的には、ボウルフィーダ部3とリニアフィーダ部4は、1枚の金属材料を打ち抜き加工する、又は切削加工することにより形成されているが、薄い肉厚の金属材料を複数枚重ね合わせて構成されていてもよい。このようにボウルフィーダ部3とリニアフィーダ部4が一体に構成されることにより、後述するボウルフィーダ部3の第1搬送部31から後述するリニアフィーダ部4の第2搬送部41へ受け渡す部分に隙間や段差がない。よって、1つのたわみ進行波(縦波進行波であってもよい)を利用してワークWを安定して搬送することができる。
【0017】
ボウルフィーダ部3は、円盤状の第1搬送部31を備える。この第1搬送部31は、それの中央部が図示していない固定手段(例えばボルト)にてベース部2に固定されている。この固定は、本実施形態では、1本又は複数本のボルト止めによってなされているが、他の手段により固定されてもよい。また、第1搬送部31の上面の中央部にワークWを貯留する所定幅を有する円環状の貯留部32が形成されている。貯留部32は、径方向外側に向かうほど低くなる傾斜面に形成されている(
図3参照)。この貯留部32の径方向外側に隣接して貯留部32から滑り落ちてくるワークWを受け取って略円環状に循環させるための循環部33を備えている。この循環部33は、貯留部32よりも一段低くなっているとともに、ワークWを循環させることができるように緩やかな下り傾斜面に構成されている。また、循環部33には、特に搬送できない区間(
図2で示す固定部20)に、他の部分の傾斜角度よりも大きな角度を有する下り傾斜面34(
図1及び
図2参照)が形成されている。この下り傾斜面34を利用してワークWを強制的に移動させることができる。また、循環部33の径方向外側を周回するワークWを1個ずつ長手方向に向いた状態に整列させながら上昇させつつ外周縁に沿って移動させることでリニアフィーダ部4のメイントラック部42に受け渡すための溝状(断面形状略V字形状)のらせんトラック部35が形成されている。らせんトラック部35は、ワークWが接触する搬送面351を有する。この搬送面351にワークWを載置した状態で搬送する搬送路を構成している。らせんトラック部35の外周端部352は、ワークWをリニアフィーダ部4のメイントラック部42に渡すことができる位置に形成されている。ボウルフィーダ部3の運転中、らせんトラック部35を移動し、ワークWは
図4に矢印で示すように、外周端部352からメイントラック部42に受け渡される。固定部20は、
図2にドットを付して示すように、ボウルフィーダ部3の外径よりも小さな径の円形部分201と、リニアフィーダ部4の幅よりも小さな幅を有する細長形状(長円形状)の部分202と、を備えている。
【0018】
リニアフィーダ部4は、平面視において長方形状の第2搬送部41を備える。この第2搬送部41は、幅方向中央に位置する固定手段(図示せず)にてベース部2に固定されている。ボウルフィーダ部3と同様に、この固定は、本実施形態ではボルト止めによってなされているが、他の手段によることもできる。リニアフィーダ部4における搬送トラック部は、メイントラック部42とリターントラック部43とにより構成されている。メイントラック部42は、リニアフィーダ部4の上面に送り側において長手方向に延びる直線状の溝(断面形状略V字形状の溝)を有する。溝の搬送方向終端部に搬送されてきたワークWを取り出す取出部44を備えている。なお、取出部44に取り出されたワークWは、例えば他の搬送装置により所定場所まで搬送される。リターントラック部43は、リニアフィーダ部4の上面に幅方向の一方側(以下「送り側」)及び幅方向の他方側(以下「戻し側」)において長手方向に延びる直線状の溝43A,43Bと、前記各溝をリニアフィーダ部4におけるボウルフィーダ部3から遠い側の端部近くで接続する湾曲した溝43Cと、を有する。メイントラック部42及びリターントラック部43は、ワークWが接触する搬送面421,431を有し、この搬送面421,431にワークWを載置した状態で搬送する搬送路を構成している。この搬送路は、第1搬送部31のらせん状の搬送路とは異なり、平面視において細長形状(長円形状)であり、詳細には、搬送面421の搬送路は、一直線状であり、搬送面431の搬送路は、平面視略U字形状である。このように、平面視において搬送路の形状が異なる第1搬送部31と第2搬送部41とすることで、各搬送部の目的に適した形状に第1搬送部31と第2搬送部41を形成することができる。
【0019】
本実施形態では、メイントラック部42とリターントラック部43とが平行して形成されており、メイントラック部42からボウルフィーダ部3に返されるべきワークW(姿勢が正常と異なると判断されたワークW)は、
図1に示す分別部(切欠き形成された切欠き部)45において図示しない移動手段(エアノズル等)によって幅方向(メイントラック部42と直交する方向)に移動されることで、メイントラック部42からリターントラック部43に乗せ換えられる。
【0020】
このように、ボウルフィーダ部3及びリニアフィーダ部4は、
図2に示す固定部20のまわりを周回する形状であって、前記形状を有する部分のうちの少なくとも一部が、ワークWを載置した状態で搬送する搬送面351,421,431とされた搬送部(第1搬送部31、第2搬送部41)とされている。なお、前記「周回する形状」とは、搬送面で構成されるワークWを搬送する搬送路が途切れずに一周している形状のことを言うのではなく、進行波を発生させる部分(換言すれば、発生する進行波によって搬送部(第1搬送部31、第2搬送部41)において振動する部分)が周回する形状となっていることを言う。このため、この「周回する形状」は、円盤状である第1搬送部31はもちろんのこと、固定部20のまわりに長円形状の領域が存在する第2搬送部41も該当している。
【0021】
リニアフィーダ部4は、搬送部(第1搬送部31、第2搬送部41)をたわみ振動させる進行波を発生させる進行波発生手段を備える。この進行波発生手段は、超音波域(具体的には20kHz以上)の周波数で駆動される。この駆動により、各搬送面351,421,431を波打つように振動させることで、前記各搬送面に前記周回する方向に進行していく進行波を発生させる。なお、本実施形態では、ボウルフィーダ部3は、進行波発生手段を備えていない。このボウルフィーダ部3には、リニアフィーダ部4との共振により進行波が発生する。
【0022】
進行波発生手段は、複数の振動発生部から構成され、その振動発生部の具体例としては、通電により伸縮するように変形する圧電素子が例示できるが、通電により何らかの動作をなすバイブレータ、偏心モータ、ソレノイド等の他の手段を採用することもできる。進行波発生手段は、第2搬送部41の裏側、つまり、前記搬送面431,441が形成された側と反対側(裏側)の面に設けられている。前記圧電素子は、電気的に絶縁するための絶縁体であるセラミック部とセラミック部の両側面に形成された電極とから構成されている。
【0023】
前記第2搬送部41の裏側に設けられる進行波発生手段について説明すれば、
図5に示すように、進行波発生手段である複数の振動発生部5が、出力位相が異なる送り側の群5Fと戻し側の群5Bの2群が、第2搬送部41の周回方向における異なる位置に分かれて、それぞれ長手方向に所定ピッチ(λ/2)を置いて配列されている。
図5では、各群で8個の振動発生部5を設けている。なお、振動発生部5の数は、第2搬送部41の大きさや設定されるワークの搬送速度等に応じて決めることになる。各群5F,5Bに属する複数の振動発生部5は、隣り合う振動発生部5の極性(図示「+」「−」)が逆になるように配列されている。そして、リニアフィーダ部4において送り側に設けられた複数の振動発生部5と、戻し側に設けられた複数の振動発生部5とは、第2搬送部41の進行波経路に沿ってλ/4+λ/2・n(n:自然数)(図示「λ/4+λ/2・n」)の空間的位相差のある状態で配置されている。なお、自然数は0(ゼロ)を含んでもよい。また、送り側の群5Fに属する複数の振動発生部5は、第2アンプ612に接続され、戻し側の群5Bに属する複数の振動発生部5は、第1アンプ611に接続されている。これら第1アンプ611及び第2アンプ612には、電気的位相差調整手段613が接続され、第2アンプ612には、加振周波数調整手段614が接続されている。加振周波数調整手段614に、波形選択手段615が接続されている。
【0024】
電気的位相差調整手段613により、送り側の振動発生部5と戻し側の振動発生部5とで時間的に位相が90°ずれた正弦波振動を発生させることができる。本実施形態では、第1アンプ611によって励起される定在波モードを「0°モード」とし、第2アンプ612によって励起される定在波モードを「90°モード」とする。
【0025】
そして、個々の振動発生部5が駆動されることによって励起される2つの定在波(腹と節が現れるような振動で、一定の位置で単に上下動する波)が、空間的かつ時間的に重ね合わされることで、パーツフィーダ1の外周縁に位置する前記3つの搬送面351,421,431に、第1搬送部31及び第2搬送部41における周回方向に進行していく1つの進行波を発生させることができる。このため、従来のようにボウルフィーダ部3とリニアフィーダ部4とを別々に駆動させる必要がない。
【0026】
進行波が発生している各搬送面351,421,431の1点には楕円運動が生じている。この楕円運動の動く方向は、楕円運動の軌跡における頂部において進行波の進行方向と逆になっている。そして、各搬送面351,421,431上とワークWとの間の摩擦により、各搬送面351,421,431上のワークWに推進力が生じて、ワークWは進行波とは逆方向に搬送されていく。
【0027】
尚、本発明に係るワーク搬送装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0028】
例えば、各搬送部31,41を周回する形状に限られず、直線状や周回しない湾曲形状であってもよい。
【0029】
前記実施形態では、進行波発生手段により発生する振動の波が正弦波であったが、矩形波、三角波等、他の形状の波であってもよい。
【0030】
また、前記実施形態では、リニアフィーダ部4における送り側及び戻り側の両方に振動発生部5を設けたが、リニアフィーダ部4における戻り側にのみ振動発生部5を備えていてもよい。具体的には、
図6に示すように、2つの定在波のうちの一方の定在波(第1定在波)を発生させる4個の第1振動発生部51が、リニアフィーダ部4における戻り側の裏面に所定ピッチ(λ/2)を置いて配置され、かつ、長手方向で隣り合う振動発生部5の極性(図示「+」「−」)が逆になるように配列されている。他方の定在波(第2定在波)を発生させる4個の第2振動発生部52が、リニアフィーダ部4における戻り側の裏面に前記4個の第1振動発生部51に対してλ/4+λ/2・n(n:自然数)(図示「λ/4+λ/2・n」)の空間的位相差のある状態で配置されるよう、所定ピッチ(λ/2)を置いて配置され、かつ、長手方向で隣り合う振動発生部5の極性(図示「+」「−」)が逆になるように配列されている。なお、自然数は0(ゼロ)を含んでもよい。第1振動発生部51及び第2振動発生部52には、
図6と同じように第1アンプ611,第2アンプ612,電気的位相差調整手段613,加振周波数調整手段614,波形選択手段615が接続される。
図6に示すように、リニアフィーダ部4における戻り側の裏面に4個の第1振動発生部51及び4個の第2振動発生部52を取り付けることによって、リニアフィーダ部4における戻り側の剛性が変化して搬送されるワークWの搬送が不安定になるものの、リニアフィーダ部4の送り側及びボウルフィーダ部3では剛性が変化することがない。よって、本来ワークWの搬送を最も安定させたい部分(リニアフィーダ部4の送り側及びボウルフィーダ部3)においてワークWの搬送を安定よく行うことができる。
【0031】
また、前記実施形態では、リニアフィーダ部4にのみ振動発生部5を設けたが、ボウルフィーダ部3にのみ振動発生部5を設けてもよいし、リニアフィーダ部4及びボウルフィーダ部3の両方に振動発生部5を設けてもよい。なお、リニアフィーダ部4及びボウルフィーダ部3の両方に振動発生部5を設ける場合でも、1つの進行波が発生するようにリニアフィーダ部4及びボウルフィーダ部3のそれぞれに振動発生部5を配置することになる。
【0032】
また、前記実施形態では、第1搬送部31と第2搬送部41とがラケット型で構成され、かつ、1つの直線6(
図2参照)を介して左右対称形状に構成されているが、どのような形状であってもよく、例えば
図7〜
図10に示すように構成されていてもよい。
図7では、2つの搬送部7,8が直交するように一体になったL字形状で構成されていてもよい。この場合、1つの直線9を挟んで2つの搬送部7,8が対称形状になっている。また、
図8では、ボウルフィーダ部10とボウルフィーダ部10の外周縁に90度間隔で径外方向に延びる4つのリニアフィーダ部11とが一体になった形状で構成されている。この場合、2つの直線12,13を挟んで2つのリニアフィーダ部11,11又は11,11が対象形状になっており、しかも、ボウルフィーダ部10の中心に対して90度間隔でリニアフィーダ部11,11,11,11が配置される回転対称形状になっている。
図9では、ボウルフィーダ部10とそれの外周縁の2か所から平行に延びるリニアフィーダ部11,11が一体になった形状で構成されている。この場合、一方のリニアフィーダ部11に対して他方のリニアフィーダ部11がボウルフィーダ部10の中心に対して180度回転した位置に位置している回転対称形状になっている。
図10では、ボウルフィーダ部10とそれの外周縁に120度間隔で径方向に延びる3個のリニアフィーダ部11が一体になった形状で構成されている。この場合、1個のリニアフィーダ部11に対して残りの2個のリニアフィーダ部11,11がボウルフィーダ部10の中心に対して120度及び240度回転した位置にそれぞれ位置する回転対称形状になっている。また、図示していないが、第1搬送部と第2搬送部とを備えていれば、搬送部の形状は、長円形状や長方形状であっても構わない。