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特開2020-158377アルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-158377(P2020-158377A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】アルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/076 20060101AFI20200904BHJP
【FI】
   C01B21/076 Z
   C01B21/076 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-62413(P2019-62413)
(22)【出願日】2019年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】597065282
【氏名又は名称】三菱マテリアル電子化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100129229
【弁理士】
【氏名又は名称】村澤 彰
(72)【発明者】
【氏名】影山 謙介
(72)【発明者】
【氏名】相場 直幸
(57)【要約】
【課題】アクリル樹脂等との相溶性を向上でき、またガスバリア性と相まって耐湿性も向上できる、アルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末は、その体積抵抗率が1×106Ω・cm以上である。また、窒化ジルコニウム粉末のアルミナによる被覆量は窒化ジルコニウム100質量%に対して1.5質量%〜9質量%である。更に、アルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末の等電点は5.7以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末であって、
体積抵抗率が1×106Ω・cm以上であり、
アルミナによる被覆量が窒化ジルコニウム100質量%に対して1.5質量%〜9質量%であり、
等電点が5.7以上である
ことを特徴とするアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末。
【請求項2】
窒化ジルコニウム粉末を水中で粉砕して窒化ジルコニウムスラリーを調製する工程と、
アルミニウム化合物を溶媒に溶かしてアルミニウム化合物溶液を調製する工程と、
前記窒化ジルコニウムスラリーに前記アルミニウム化合物溶液を窒化ジルコニウム粉末:アルミナが質量比で(100:1.5)〜(100:15)の割合になるように添加する工程と、
前記アルミニウム化合物溶液を添加した窒化ジルコニウムスラリーに酸を添加して窒化ジルコニウムスラリーのpHを調整し前記アルミニウム化合物を前記窒化ジルコニウム粉末の表面に析出させて前記アルミニウム化合物により前記窒化ジルコニウム粉末を被覆する工程と、
前記アルミニウム化合物により被覆された前記窒化ジルコニウム粉末を洗浄した後に回収する工程と、
前記回収されかつ前記アルミニウム化合物により被覆された前記窒化ジルコニウム粉末を大気又は窒素雰囲気中で60℃〜200℃の温度に1時間〜24時間保持して焼成することによりアルミナにより被覆された窒化ジルコニウムを得る工程と
を含むアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末の製造方法。
【請求項3】
前記アルミニウム化合物が、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム又はアルミン酸ソーダのいずれかである請求項2記載のアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末の製造方法。
【請求項4】
窒化ジルコニウム粉末を溶剤に分散させて窒化ジルコニウムスラリーを調製する工程と、
前記窒化ジルコニウムスラリーに前記アルミネートカップリング材を窒化ジルコニウム粉末:アルミナが質量比で(100:1.5)〜(100:15)の割合になるように添加する工程と、
デカンテーションにより上澄み液を除去して沈殿物を得る工程と、
前記沈殿物を窒素雰囲気中で200℃〜400℃の温度に3時間〜24時間保持して焼成することによりアルミナにより被覆された窒化ジルコニウムを得る工程と
を含むアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細の液晶、有機EL用ブラックマトリックス、イメージセンサ用遮光材、光学部材用遮光材、遮光フィルタ、IR(赤外線)カットフィルタ、カバーレイフィルム、電子部材用遮光膜、黒色膜、UV硬化性接着剤等に用いられる、アルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末と、この粉末を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末母体と、この粉末母体の表面を被覆する厚さ2.5〜12nmのシリカ膜とを備え、5MPaの圧力で固めた圧粉体の状態での体積抵抗率が1×105Ω・cm以上であり、半導体封止用樹脂化合物に用いられる黒色酸窒化チタン粉末が開示されている(例えば、特許文献1(請求項1、段落[0007])参照。)。
【0003】
このように構成された黒色酸窒化チタン粉末では、粉末母体の表面を厚さ2.5〜12nmのシリカ膜で被覆し、黒色酸窒化チタン粉末を5MPaの圧力で固めた圧粉体の状態での体積抵抗率が1×105Ω・cm以上と大きいので、黒色酸窒化チタン粉末が高い電気絶縁性及び高いα線の遮蔽性を有する。この結果、黒色酸窒化チタン粉末を半導体素子等の封止用樹脂化合物のフィラーとして用いたとき、半導体素子等の配線ピッチが狭くなっても、このフィラーである黒色酸窒化チタン粉末が配線を短絡せず、また半導体素子等のα線による誤動作であるソフトエラーの発生を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−117302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の特許文献1に示された黒色酸窒化チタン粉末では、酸窒化チタン粉末をシリカ膜で被覆しているため、黒色酸窒化チタン粉末をエタノール等の溶液に分散させたときに、等電点が酸基を有するアクリル樹脂との相性が良くない酸側にあり、酸基を有するアクリル樹脂との相性が良くない不具合があった。
【0006】
本発明の目的は、アクリル樹脂等との相溶性を向上でき、またガスバリア性と相まって耐湿性も向上できる、アルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、アルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末であって、体積抵抗率が1×106Ω・cm以上であり、アルミナによる被覆量が窒化ジルコニウム100質量%に対して1.5質量%〜9質量%であり、等電点が5.7以上であることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点は、窒化ジルコニウム粉末を水中で粉砕して窒化ジルコニウムスラリーを調製する工程と、アルミニウム化合物を溶媒に溶かしてアルミニウム化合物溶液を調製する工程と、窒化ジルコニウムスラリーにアルミニウム化合物溶液を窒化ジルコニウム粉末:アルミナが質量比で(100:1.5)〜(100:15)の割合になるように添加する工程と、アルミニウム化合物溶液を添加した窒化ジルコニウムスラリーに酸を添加して窒化ジルコニウムスラリーのpHを調整しアルミニウム化合物を窒化ジルコニウム粉末の表面に析出させてアルミニウム化合物により窒化ジルコニウム粉末を被覆する工程と、アルミニウム化合物により被覆された窒化ジルコニウム粉末を洗浄した後に回収する工程と、この回収されかつアルミニウム化合物により被覆された窒化ジルコニウム粉末を大気又は窒素雰囲気中で60℃〜200℃の温度に1時間〜24時間保持して焼成することによりアルミナにより被覆された窒化ジルコニウムを得る工程とを含むアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末の製造方法である。
【0009】
本発明の第3の観点は、第2の観点に基づく発明であって、更にアルミニウム化合物が、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム又はアルミン酸ソーダのいずれかであることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の観点は、窒化ジルコニウム粉末を溶剤に分散させて窒化ジルコニウムスラリーを調製する工程と、窒化ジルコニウムスラリーにアルミネートカップリング材を窒化ジルコニウム粉末:アルミナが質量比で(100:1.5)〜(100:15)の割合になるように添加する工程と、デカンテーションにより上澄み液を除去して沈殿物を得る工程と、この沈殿物を窒素雰囲気中で200℃〜400℃の温度に3時間〜24時間保持して焼成することによりアルミナにより被覆された窒化ジルコニウムを得る工程とを含むアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の観点のアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末では、体積抵抗率が1×106Ω・cm以上であり、アルミナによる被覆量が窒化ジルコニウム100質量%に対して1.5質量%〜9質量%であり、等電点が5.7以上であるので、アクリル樹脂とのなじみが良く、アルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末(黒色顔料)とアクリル樹脂との相溶性を向上できる。また、窒化ジルコニウム粉末をアルミナにより被覆することにより、ガスバリア性と相まって耐湿性も向上できる。
【0012】
本発明の第2の観点のアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末の製造方法では、アルミニウム化合物溶液を水スラリーに添加した後に、この水スラリーをpH調整することによりアルミニウム化合物を窒化ジルコニウム粉末の表面に析出させ、更にこのアルミニウム化合物が表面に析出した窒化ジルコニウムを洗浄し焼成したので、上記アルミナにより被覆された窒化ジルコニウムを得ることができる。
【0013】
本発明の第3の観点のアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末の製造方法では、アルミニウム化合物が、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム又はアルミン酸ソーダのいずれかであるので、上記アルミニウム化合物溶液を添加した水スラリーをpH調整することにより、窒化ジルコニウム粉末の表面にアルミニウム化合物を速やかに析出させることができる。
【0014】
本発明の第4の観点のアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末の製造方法では、窒化ジルコニウムを溶剤に分散させて得られた窒化ジルコニウムスラリーに、アルミネートカップリング材を添加し、このアルミネートカップリング材が添加された窒化ジルコニウムスラリーからデカンテーションにより得られた沈殿物を焼成したので、上記アルミナにより被覆された窒化ジルコニウムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1のアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末(表面がアルミナ膜により被覆された窒化ジルコニウム粉末)を示す透過電子顕微鏡(TEM)写真図(50万倍)である。
図2】実施例1のアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末(表面がアルミナ膜により被覆された窒化ジルコニウム粉末)を示す透過電子顕微鏡(TEM)写真図(100万倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本発明のアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末は、体積抵抗率が1×106Ω・cm以上、好ましくは1×107Ω・cm以上であり、アルミナによる被覆量が窒化ジルコニウム100質量%に対して1.5質量%〜9質量%、好ましくは3質量%〜7質量%であり、等電点が5.7以上、好ましくは5.8以上である。
【0017】
ここで、アルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末の体積抵抗率は次のようにして求められる。先ず、上記粉末を圧力容器に入れて5MPa〜10MPaで圧縮して圧粉体とし、この圧粉体の抵抗値をデジタルマルチメーターで測定する。そして、得られた抵抗値に対し、圧粉体の厚み及び装置形状と圧粉体の厚みを元に参照される抵抗率補正係数(RCF)とを乗ずることで、粉体の体積抵抗率(Ω・cm)が得られる。上記粉末の体積抵抗率を1×106Ω・cm以上に限定したのは、1×106Ω・cm未満では高温高湿環境において絶縁不良が発生するおそれがあるためである。また、アルミナによる被覆量を窒化ジルコニウム100質量%に対して1.5質量%〜9質量%の範囲内に限定したのは、1.5質量%未満では等電点が酸側にあり、酸基を有するアクリル樹脂との相性が良くなく、9質量%を超えると着色力が低下してしまうからである。
【0018】
一方、アルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末の等電点とは、この粉末が分散した分散液の水素イオン濃度(pH)を変化させたときに、1個の粉末において電荷が全体としてゼロになり、分散液に電圧を印加しても粉末が移動しない水素イオン濃度(pH)をいう。換言すれば、窒化ジルコニウム粉末のような無機窒化物粉末は、水素イオン濃度(pH)が変わるとゼータ電位が大きく変化し、ある特定の水素イオン濃度(pH)で表面電位(ゼータ電位)がゼロとなり、電気泳動を全く示さない等電点を持つ。なお、ゼータ電位とは、分散液中で、ある極性の電荷を持つ粉末の周りに、反対極性の電荷を持つイオンが引き寄せられて形成された電気的二重構造である電気二重層に、液体流動が起こり始めるスベリ面の電位として定義される。このゼータ電位は、例えばDispersion Technorogy社製のゼータ電位計(型式:DT1202)を用いて次のように測定される。本装置はコロイド振動電流法を用いて測定される。上記分散液を容器に入れて一対の電極で挟み、これらの電極に所定の電圧を印加して分散液中の粉末が移動する。その結果、荷電粒子とその周囲のカウンターイオンの分極を生じコロイド振動電位と呼ばれる電場が発生し電流として検出できる。この電流がコロイド振動電流となる。測定されたコロイド振動電流からSmoluchowskiの式と連結総理論を用いてゼータ電位が求められる。そして、ゼータ電位がゼロになったときのpHが上記粉末の等電点である。上記粉末の等電点を5.7以上に限定したのは、アルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末の等電点をアルカリ側に位置させるためである。これにより、アルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末(黒色顔料)が、酸基を有するアクリル樹脂との相性が良くなり、アルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末(黒色顔料)とアクリル樹脂との相溶性が向上し、アルミナ被覆によるバリア性と相まって耐湿性が向上するからである。
【0019】
一方、上記粉末(黒色顔料)のL*値は13以下であることが好ましく、上記粉末(黒色顔料)のBET比表面積は20m2/g以上であることが好ましい。ここで、アルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末(黒色顔料)のL*値とは、CIE 1976 L***色空間(測定用光源C:色温度6774K)における明度指数である。上記CIE 1976 L***色空間は、国際照明委員会(CIE)が1976年にCIEXYZ表色系を変換し、表色系内の一定距離がどの色の領域でもほぼ知覚的に等歩度の差をもつように定めた色空間である。また明度指数L*値、a*値及びb*値は、CIE 1976 L***色空間内の直交座標系で定められる量であり、次の式(1)〜式(3)で表される。
*=116(Y/Y01/3 −16 ……(1)
*=500[(X/X01/3 −(Y/Y01/3] ……(2)
*=200[(Y/Y01/3 −(Z/Z01/3] ……(3)
但し、X/X0,Y/Y0,Z/Z0>0.008856であり、X,Y,Zは物体色の三刺激値である。また、X0,Y0,Z0は物体色を照明する光源の三刺激値であり、Y0=100に基準化されている。また、アルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末(黒色顔料)の明度指数L*値は、例えば日本電色工業社製の分光色差計(型式:SE7700)を用いて求める。ここで、アルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末(黒色顔料)の明度指数L*値は13以下であることが好ましい。L*値を13以下に限定したのは、13を超えると黒色度が不足して黒色顔料として所定の色調が得られないからである。
【0020】
一方、BET比表面積は、例えば柴田科学社製の比表面積測定装置(型式:SA1100)を用いて、上記粉末(黒色顔料)の表面に、吸着占有面積の分かったガス分子(例えば、窒素ガス等)を吸着させ、その吸着量から求められる。但し、粉末(黒色顔料)の表面に吸着したガス分子が1層目の吸着から多層吸着に移行する過程の情報に対して、BETの式(一定温度で吸着平衡状態であるとき、吸着平衡圧とこの圧力での吸着量との関係を示す式)を適用することにより、1層だけのガス分子の量が測定され、正確な比表面積を測定できるようになっている。ここで、上記粉末(黒色顔料)のBET比表面積の好ましい範囲を20m2/g以上に限定したのは、20m2/g未満では着色力(発色力)が低下してしまうからである。
【0021】
このように構成されたアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末を製造するには次の2つの方法がある。
<第1の製造方法>
先ず、窒化ジルコニウム粉末を作製する。具体的には、二酸化ジルコニウム粉末又はシリカがコーティングされた二酸化ジルコニウム粉末と、金属マグネシウム粉末と、窒化マグネシウム粉末とを、金属マグネシウムが二酸化ジルコニウムの2.0〜6.0倍モルの割合になるように、かつ窒化マグネシウムが二酸化ジルコニウムの0.3〜3.0倍モルの割合になるように、混合して混合物を得る。そして、この混合物を窒素ガス単体、又は窒素ガスと水素ガスの混合ガス、又は窒素ガスとアンモニアガスの混合ガスの雰囲気下、650〜900℃の温度で焼成することにより、二酸化ジルコニウム粉末を還元して、窒化ジルコニウム粉末を作製する。
【0022】
ここで、金属マグネシウムを二酸化ジルコニウムの2.0〜6.0倍モルの範囲内に限定したのは、2.0倍モル未満では、二酸化ジルコニウムの還元力が不足し、6.0倍モルを超えると、過剰な金属マグネシウムにより反応温度が急激に上昇し、粉末の粒成長を引き起こすおそれがあるとともに不経済となるからである。また、窒化マグネシウムを二酸化ジルコニウムの0.3〜3.0倍モルの範囲内に限定したのは、0.3倍モル未満では窒化ジルコニウム粉末の焼結防止にならず、3.0倍モルを超えると、焼成後の酸洗浄時に要する酸性溶液の使用量が増加する不具合がある。
【0023】
次いで、上記窒化ジルコニウム粉末を水中で粉砕して窒化ジルコニウムスラリーを調製した後に、アルミニウム化合物を溶媒に溶かしてアルミニウム化合物溶液を調製する。ここで、アルミニウム化合物としては、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ソーダが挙げられ、水酸化アルミニウムは塩酸や苛性ソーダ等の酸又はアルカリ溶媒に溶かし、硫酸アルミニウムは水やアルコール等の溶媒に溶かし、アルミン酸ソーダは水やアルコール等の溶媒に溶かして用いられる。そして、窒化ジルコニウムスラリーにアルミニウム化合物溶液を窒化ジルコニウム粉末:アルミナが質量比で(100:1.5)〜(100:15)、好ましくは(100:2)〜(100:10)の割合になるように添加する。ここで、窒化ジルコニウム粉末:アルミナを質量比で(100:1.5)〜(100:15)の範囲内に限定したのは、上記範囲外では十分な絶縁性が得られないか、或いは遮光性が不足するからである。
【0024】
次に、アルミニウム化合物溶液を添加した窒化ジルコニウムスラリーに酸を添加して窒化ジルコニウムスラリーのpHを調整しアルミニウム化合物を窒化ジルコニウム粉末の表面に析出させてアルミニウム化合物により窒化ジルコニウム粉末を被覆する。そして、アルミニウム化合物により被覆された窒化ジルコニウム粉末を洗浄した後に回収する。更に、この回収されかつアルミニウム化合物により被覆された窒化ジルコニウム粉末を大気又は窒素雰囲気中で60℃〜200℃の温度に1時間〜24時間保持して焼成することによりアルミナにより被覆された窒化ジルコニウムを得る。ここで、上記粉末の焼成温度を60℃〜200℃の範囲内に限定したのは、60℃未満では水分が残留して絶縁性が不足し、200℃を超えるとアルミナの粒成長が起こりアルミナによる窒化ジルコニウム粉末の被覆率が低下するからである。また、上記粉末の焼成時間を1時間〜24時間の範囲内に減定位したのは、1時間未満では乾燥が不十分であり、24時間を超えると経済的に好ましくないからである。
【0025】
<第2の製造方法>
先ず、上記第1の製造方法と同様の方法で窒化ジルコニウム粉末を作製する。次いで、この窒化ジルコニウム粉末を溶剤に分散させて窒化ジルコニウムスラリーを調製する。溶剤としては、イソプロパノール(IPA)、酢酸ブチル(BA)、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。次に、窒化ジルコニウムスラリーにアルミネートカップリング材を窒化ジルコニウム粉末:アルミナが質量比で(100:1.5)〜(100:15)の割合になるように添加する。ここで、窒化ジルコニウム粉末:アルミナを質量比で(100:1.5)〜(100:15)の範囲内に限定したのは、上記第1の製造方法と同じ理由に基づく。更に、デカンテーションにより上澄み液を除去して沈殿物を得た後、この沈殿物を窒素雰囲気中で200℃〜400℃の温度に3時間〜24時間保持して焼成することによりアルミナにより被覆された窒化ジルコニウムを得る。ここで、上記粉末の焼成温度を200℃〜400℃の範囲内に限定したのは、200℃未満では有機物の残留量が多くアルミナによる窒化ジルコニウム粉末の被覆強度が不十分になり、400℃を超えると酸化アルミニウムの粒成長が起こるためである。また、上記粉末の焼成時間を3時間〜24時間の範囲内に減定位したのは、上記第1の製造方法と同じ理由に基づく。
【0026】
このように製造されたアルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末では、等電点が5.7以上であるので、アクリル樹脂とのなじみが良く、アルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末(黒色顔料)とアクリル樹脂との相溶性を向上できる。また、窒化ジルコニウム粉末をアルミナにより被覆することにより、ガスバリア性と相まって耐湿性も向上できる。
【0027】
なお、上記アルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末を用いて次の方法で塗膜を形成することができる。先ず、アミン系分散剤を添加して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、ジエチルケトン、酢酸ブチル等の溶剤中で分散処理を行って分散液を調製する。次に、この分散液にアクリル樹脂を、質量比で黒色顔料:樹脂=(10:90)〜(80:20)となる割合で添加し混合して黒色組成物を調製する。更に、この黒色組成物をガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、ポリカーボネート(PC)基板等の上にスピンコートし、60℃〜250℃の温度に1分間〜60分間保持することにより、厚さ0.5μm〜10μmの乾燥した塗膜を得られる。なお、樹脂基板の上に成膜する場合は、高温での焼成ができないため、光開始剤、反応性モノマーを加えたUV硬化を使用することもできる。
【実施例】
【0028】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0029】
<実施例1>
BET法により測定される比表面積から算出される平均一次粒径が50nmの単斜晶系二酸化ジルコニウム粉末7.4gに、平均一次粒径が150μmの金属マグネシウム粉末7.3gと平均一次粒径が200nmの窒化マグネシウム粉末3.0gを添加し、石英製ガラス管に黒鉛のボートを内装した反応装置により均一に混合した。このとき金属マグネシウムの添加量は二酸化ジルコニウムの5.0倍モル、窒化マグネシウムの添加量は二酸化ジルコニウムの0.5倍モルであった。この混合物を窒素ガスの雰囲気下、700℃の温度で60分間焼成して焼成物を得た。この焼成物を、1リットルの水に分散し、17.5%塩酸を徐々に添加して、pHを1以上で、温度を100℃以下に保ちながら洗浄した後、2.5%アンモニア水にてpH7〜8に調整し、濾過した。その濾過固形分を水中に400g/リットルに再分散し、もう一度、前記と同様に酸洗浄、アンモニア水でのpH調整をした後、濾過した。このように酸洗浄−アンモニア水によるpH調整を2回繰り返した後、濾過物をイオン交換水に固形分換算で500g/リットルで分散させ、60℃での加熱撹拌とpH7への調整をした後、吸引濾過装置で濾過し、更に等量のイオン交換水で洗浄し、設定温度;120℃の熱風乾燥機にて乾燥することにより、窒化ジルコニウム粉末を得た。
【0030】
上記窒化ジルコニウムを水中でビーズミル(直径0.3mmのジルコニアビーズ使用)により粉砕することにより、平均粒径30nmの窒化ジルコニウム粉末を得た。この粉砕した窒化ジルコニウムスラリー(窒化ジルコニウム粉末(黒色顔料)濃度10%)に、5%水酸化アルミニウム溶液(水酸化アルミニウムを苛性ソーダに溶かした溶液)を窒化ジルコニウム100質量%に対してAl23が5質量%になるように添加した。このときのスラリーのpHは10であった。次に、pHが5になるまで上記スラリーに17.5%塩酸を滴下した。これにより、水酸化アルミニウムが窒化ジルコニウム表面に析出した。このスラリーについてデカンテーションを数回行って洗浄した後、濾過してケーク(濾材の表面に堆積したカス)を回収した。得られたケークを窒素雰囲気下で300℃の温度に1時間保持して焼成することにより、アルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末を得た。このアルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末を実施例1とした。図1の50万倍の写真図及び図2の100万倍の写真図から明らかなように、窒化ジルコニウム粉末はアルミナ膜により被覆されていた。なお、窒化ジルコニウム粉末を被覆するアルミナの含有量(被覆量)は、誘導結合プラズマ発光分光分析(島津製作所社製のICP発光分析装置:ICPS−7510)により測定した。
【0031】
<実施例2〜5及び比較例1〜4>
実施例2〜5及び比較例1〜4の窒化ジルコニウム粉末のアルミナ被覆量(比較例1:被覆なし、比較例4:シリカ被覆量)は、表1に示すようにそれぞれ配合した。なお、表1に示した配合以外は、実施例1と同様にして、アルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末(比較例1:被覆なしの窒化ジルコニウム粉末、比較例4:シリカ被覆の窒化ジルコニウム粉末)を作製した。
【0032】
<比較試験1>
実施例1〜5及び比較例1〜4の各粉末について、体積抵抗率、等電点、L*値及びBET比表面積をそれぞれ測定した。
(1) 粉末の体積抵抗率
上記粉末6.0gを圧力容器に入れて9.8MPaで圧縮して圧粉体とし、この圧粉体の抵抗値をデジタルマルチメーターで測定した。そして、得られた抵抗値に対し、圧粉体の厚み及び装置形状と圧粉体の厚みを元に参照される抵抗率補正係数(RCF)とを乗ずることで、粉体の体積抵抗率(Ω・cm)を得た。この体積抵抗率を粉末の体積抵抗率(Ω・cm)とした。その結果を表1に示す。
(2) 粉末の等電点
上記粉末を水に分散し、この分散液に1N(1モル/リットル)のHClを添加して分散液のpHを変化させ、Dispersion Technology社製のゼータ電位計(型式:DT1202)を用いてゼータ電位の変化を測定した。そして、ゼータ電位がゼロになったときのpHを粉末の等電点とした。その結果を表1に示す。
(3) 粉末のL*
上記粉末の明度指数L*値は、日本電色工業社製の分光色差計(型式:SE7700)を用いて求めた。その結果を表1に示す。
(4) 粉末のBET比表面積
上記粉末のBET比表面積は、柴田科学社製の比表面積測定装置(型式:SA1100)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0033】
<比較試験2>
実施例1〜5及び比較例1〜4の各粉末について、アミン系分散剤を添加して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGM−Ac)溶剤中で分散処理を行って分散液を調製した。この分散液にアクリル樹脂を、質量比で黒色顔料:樹脂=5:5となる割合で添加し混合して黒色組成物を調製した。この黒色組成物をガラス基板上にスピンコートし、250℃の温度に30分間保持することにより厚さ1μmの乾燥した塗膜を得た。これらの塗膜の黒色度及び体積抵抗率をそれぞれ測定した。
(a) 塗膜の黒色度
塗膜の黒色度は上記塗膜の可視光(中心波長650nm)のOD値により評価した。具体的には、上記塗膜に入射する光量I0と、上記塗膜を透過した光量Iとをマクベス社製の品名D200の濃度計(densitometer)を用いてそれぞれ測定し、上記入射光量I0と透過光量Iを次の式(4)に代入してOD値を算出した。
OD値=−log10(I/I0) …………(4)
その結果を表1に示す。そして、表1において、可視光の650nmのOD値が2.5以上であった塗膜を「良好」とし、可視光の650nmのOD値が2.5未満であった塗膜を「不良」とした。
(b) 塗膜の体積抵抗率
塗膜の体積抵抗率は、この塗膜の作製直後(初期)と、温度80℃かつ湿度80%の雰囲気中に1000時間保持した後(加熱加湿後)にそれぞれ測定した。上記塗膜の初期及び加熱加湿後の体積抵抗率(Ω・cm)は、三菱化学アナリテック社製の抵抗率計(ハイレスタ(商標名)、型番:MCP−HT450)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
<評価>
表1から明らかなように、アルミナで被覆しなかった比較例1の窒化ジルコニウム粉末では、BET比表面積が60.6m2/gと好ましい範囲(20m2/g以上)内であり、L*値が11.2と好ましい範囲(13以下)内であったけれども、体積抵抗率が1.80×105Ω・cmと適切な範囲(1×106Ω・cm以上)より小さく、等電点が5.5と適切な範囲(5.7以上)より低かった。
【0036】
アルミナ被覆量が1.0質量%と適切な範囲(1.5質量%〜9質量%)より少なかった比較例2の窒化ジルコニウム粉末では、BET比表面積が50.2m2/gと好ましい範囲(20m2/g以上)内であり、L*値が10.9と好ましい範囲(13以下)内であったけれども、体積抵抗率が7.10×105Ω・cmと適切な範囲(1×106Ω・cm以上)より小さく、等電点が5.6と適切な範囲(5.7以上)より低かった。
【0037】
アルミナ被覆量が10質量%と適切な範囲(1.5質量%〜9質量%)より多かった比較例3の窒化ジルコニウム粉末では、体積抵抗率が1.20×109Ω・cmと適切な範囲(1×106Ω・cm以上)内であり、BET比表面積が80.0m2/gと好ましい範囲(20m2/g以上)内であり、等電点が8.0と適切な範囲(5.7以上)内にあったけれども、L*値が13.1と好ましい範囲(13以下)より高かった。
【0038】
これらに対し、アルミナ被覆量が1.5質量%〜9.0質量%と適切な範囲(1.5質量%〜9質量%)内であった実施例1〜5の窒化ジルコニウム粉末では、体積抵抗率が2.19×107Ω・cm〜4.80×108Ω・cmと適切な範囲(1×106Ω・cm以上)内であり、等電点が5.8〜7.8と適切な範囲(5.7以上)内にあり、L*値が11.0〜12.5と好ましい範囲(13以下)内にあり、BET比表面積が54.6m2/g〜75.0m2/gと好ましい範囲(20m2/g以上)内であった。
【0039】
一方、アルミナで被覆しなかった比較例1の塗膜では、塗膜の黒色度は良好であったけれども、塗膜の加熱加湿後の体積抵抗率は1×103Ω・cm未満と耐湿性が低下した。
【0040】
アルミナ被覆量が1.0質量%と適切な範囲(1.5質量%〜9質量%)より少なかった比較例2の塗膜では、塗膜の黒色度は良好であったけれども、塗膜の加熱加湿後の体積抵抗率は1×106Ω・cm未満と耐湿性が低下した。
【0041】
アルミナ被覆量が10質量%と適切な範囲(1.5質量%〜9質量%)より多かった比較例3の塗膜では、塗膜の加熱加湿後の体積抵抗率は1×108Ω・cmより大きく良好であったけれども、塗膜の黒色度が不良であった。
【0042】
これらに対し、アルミナ被覆量が1.5質量%〜9.0質量%と適切な範囲(1.5質量%〜9質量%)内であった実施例1〜5の塗膜では、塗膜の黒色度がいずれも良好であり、塗膜の加熱加湿後の体積抵抗率が1×108Ω・cmより大きく耐湿性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末は、高精細の液晶、有機EL用ブラックマトリックス、イメージセンサ用遮光材、光学部材用遮光材、遮光フィルタ、IR(赤外線)カットフィルタ、カバーレイフィルム、電子部材用遮光膜、黒色膜、UV硬化性接着剤等に利用できる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2020年3月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
このように構成されたアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末を製造するには次の2つの方法がある。
<第1の製造方法>
先ず、窒化ジルコニウム粉末を作製する。具体的には、二酸化ジルコニウム粉末又はシリカがコーティングされた二酸化ジルコニウム粉末と、金属マグネシウム粉末と、窒化マグネシウム粉末とを、金属マグネシウムが二酸化ジルコニウムの2.0倍モル〜6.0倍モルの割合になるように、かつ窒化マグネシウムが二酸化ジルコニウムの0.3倍モル〜3.0倍モルの割合になるように、混合して混合物を得る。そして、この混合物を窒素ガス単体、又は窒素ガスと水素ガスの混合ガス、又は窒素ガスとアンモニアガスの混合ガスの雰囲気下、650〜900℃の温度で焼成することにより、二酸化ジルコニウム粉末を還元して、窒化ジルコニウム粉末を作製する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
ここで、金属マグネシウムを二酸化ジルコニウムの2.0倍モル〜6.0倍モルの範囲内に限定したのは、2.0倍モル未満では、二酸化ジルコニウムの還元力が不足し、6.0倍モルを超えると、過剰な金属マグネシウムにより反応温度が急激に上昇し、粉末の粒成長を引き起こすおそれがあるとともに不経済となるからである。また、窒化マグネシウムを二酸化ジルコニウムの0.3倍モル〜3.0倍モルの範囲内に限定したのは、0.3倍モル未満では窒化ジルコニウム粉末の焼結防止にならず、3.0倍モルを超えると、焼成後の酸洗浄時に要する酸性溶液の使用量が増加する不具合がある。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
<実施例2〜5及び比較例1〜4>
実施例2〜5及び比較例1〜4の窒化ジルコニウム粉末のアルミナ被覆量(比較例1:被覆なし、比較例4:シリカ被覆量)、表1に示す値になるように各原料をそれぞれ配合した。なお、表1に示したアルミナ被覆量以外は、実施例1と同様にして、アルミナ被覆の窒化ジルコニウム粉末(比較例1:被覆なしの窒化ジルコニウム粉末、比較例4:シリカ被覆の窒化ジルコニウム粉末)を作製した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
アルミナ被覆量が10質量%と適切な範囲(1.5質量%〜9質量%)より多かった比較例3の窒化ジルコニウム粉末では、体積抵抗率が1.20×109Ω・cmと適切な範囲(1×106Ω・cm以上)内であり、BET比表面積が80.0m2/gと好ましい範囲(20m2/g以上)内であり、等電点が8.0と適切な範囲(5.7以上)内にあったけれども、L*値が13.1と好ましい範囲(13以下)より高かった。また、被覆量が5.0質量%と適切な範囲(1.5質量%〜9質量%)内であったけれども、アルミナではなくシリカで被覆された比較例4の窒化ジルコニウム粉末では、体積抵抗率が6.00×107Ω・cmと適切な範囲(1×106Ω・cm以上)内であり、BET比表面積が60.0m2/gと好ましい範囲(20m2/g以上)内であり、L*値が11.5と好ましい範囲(13以下)内にあったけれども、等電点が3.5と適切な範囲(5.7以上)より低かった。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
アルミナ被覆量が10質量%と適切な範囲(1.5質量%〜9質量%)より多かった比較例3の塗膜では、塗膜の加熱加湿後の体積抵抗率は1×108Ω・cmより大きく良好であったけれども、塗膜の黒色度が不良であった。また、被覆量が5.0質量%と適切な範囲(1.5質量%〜9質量%)内であったけれども、アルミナではなくシリカで被覆された窒化ジルコニウム粉末を用いた比較例4の塗膜では、塗膜の黒色度は良好であったけれども、塗膜の加熱加湿後の体積抵抗率は1×104Ω・cm未満と耐湿性が低下した。