【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の概要
本開示は、化合物Iの作製、CVCのラセミ形態または光学的に純粋な形態の作製、及びそのメタンスルホン酸塩の生成(化合物I−MsOH)を行うプロセス経路を提示する。いくつかの実施形態では、化合物I及び化合物I−MsOHは、ラセミ体である。他の実施形態では、化合物I及び化合物I−MsOHは、光学的に活性なスルホキシド、例え
ば、(S)−化合物I−MsOHとして表される(S)−異性体を含む。
【化2】
【0007】
いくつかの実施形態では、化合物Iにメタンスルホン酸(MsOH)を加えることによって化合物I−MsOHを合成する。
【0008】
いくつかの実施形態では、化合物IIと化合物IIIとの反応によって化合物Iを合成し、
【化3】
【0009】
ここで、R
1は、H、OH、Cl、Br、OR
2、OCOR
2及びNHR
2からなる群から選択され;かつ
【0010】
R
2は、H、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールからなる群から選
択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、R
1=OHである化合物II(化合物II−OH)と化合物IIIとの反応によって化合物Iを合成する。
【化4】
【0012】
いくつかの実施形態では、化合物IVと化合物Vとの反応によって化合物II−OHを合成し、
【化5】
【0013】
ここで、R
3は、Ar
1またはOR
5であり、R
4は、Ar
2またはOR
6であり、かつ、R
5及びR
6は互いに独立して、H、アルキル及び置換アルキルからなる群から選択されるか、またはR
5とR
6は互いに結合して、任意選択による置換アルキルもしくは任意選択による置換アリールを形成し、Ar
1及びAr
2は互いに独立して、アリールまたは置換アリールである。
【0014】
いくつかの実施形態では、R
3及びR
4はいずれも化合物VのOMeであり、化合物V−OMeとして表される。
【0015】
いくつかの実施形態では、化合物Vを化合物VIから合成する。
【化6】
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示は、I−MsOH−A、I−MsOH−B、I−MsOH−C、I−MsOH−D、I−MsOH−E、(R)−I−MsOH、VII、VIII、IXの各化合物により表される不純物、及びMsOHから生じるメシル酸エステルを最小化するプロセス経路を教示する。
【化7-1】
【化7-2】
【0017】
本願開示には、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH)を調製する方法が含まれる。例えば、化合物I−MsOHの合成には、後に高純度の8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物II−OH)の生成に使用されるジメチル(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)ボロナート(化合物V)の生成が含まれる。
【0018】
いくつかの実施形態では、a)マグネシウムをテトラヒドロフラン(THF)中で加熱して活性化させ、b)ステップa)の混合物に対し1−ブロモ−4−(2−ブトキシエトキシ)ベンゼン(化合物VI)の一部を加熱しながら加えてグリニャール試薬の生成を開始させ、c)引き続き加熱しながら残りの化合物VIをゆっくりと加え、d)ステップc)の混合物を約−25℃まで冷却し、トリメトキシボランをゆっくりと加え、e)ステップdの混合物を約−25℃で約1時間攪拌した後、反応物を約20℃で約1時間加温することによって化合物Vを調製する。
【0019】
いくつかの実施形態では、化合物VIと使用トリメトキシボランのモル比は約1:1である。
【0020】
いくつかの実施形態では、ステップb)及び/またはc)において未希釈の化合物VIを使用する。他の実施形態では、ステップc)で、約55℃にて約3時間〜約5時間撹拌して反応させる必要がある。
【0021】
一実施形態では、本明細書に記載のように合成した化合物Vを、その後、化合物II−OHの合成で用いる。いくつかの実施形態では、a)化合物Vの溶液に塩基性水溶液を加えることにより二相性混合物を生成させ、b)ステップa)の混合物に触媒及び配位子を
加え、c)ステップb)の混合物に8−ブロモ−1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物IV)を加えて反応混合物を加熱し、d)ステップc)の混合物を酸性化させることによって化合物II−OHを調製する。いくつかの実施形態では、ステップa)で使用する塩基は、リン酸カリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム、フッ化カリウム、水酸化カリウム、カリウムtert−ブトキシド、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムtert−ブトキシド、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、フッ化セシウム、及びその組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ステップb)に使用する触媒は、酢酸パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、塩化パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート及びその組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ステップb)に使用する配位子は、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ピリジン、ビピリジン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル及びその組合せからなる群から選択される。別の実施形態では、ステップb)の触媒系は酢酸パラジウム及びトリ(o−トリル)ホスフィンを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、触媒と配位子の比は約1:2である。他の実施形態では、ステップb)に使用する触媒は、化合物IVに対して約0.001当量(当量(equiv))〜約2.500当量である。さらなる実施形態では、触媒を、化合物IVに対して約0.001当量〜約0.005当量の量で使用する。いくつかの実施形態では、ステップa)の後ステップd)まで、またはa)からd)の任意のステップ中、反応物内に窒素を通気させる。
【0023】
いくつかの実施形態では、化合物II−OHを生成させる際に化合物Vを化合物IVに対して約1.5当量〜約2.2当量の量で使用する。別の実施形態では、ステップc)の加熱を≦65℃で約2時間〜約6時間維持し、化合物II−OHへ高率で確実に変換させる。
【0024】
他の実施形態では、ステップd)の後の精製ステップ中、化合物II−OHを含有している反応混合物に木炭をセライト(登録商標)と共に、またはセライト(登録商標)を用いずに加える。別の実施形態では、木炭及び/またはセライト(登録商標)ならびに化合物II−OHを含有している混合物を撹拌した後ろ過する。一実施形態では、木炭とセライト(登録商標)の比は約1:2である。
【0025】
別の実施形態では、ステップd)の後の精製ステップ中、セライト(登録商標)を化合物II−OHを含有している反応混合物に加えて撹拌した後ろ過する。一実施形態では、ステップd)の後の精製ステップ中、反応混合物をろ過し、いかなる固体微粒子も除去する。
【0026】
いくつかの実施形態では、化合物II−OHの精製では、貧溶媒再結晶及び/または熱再結晶(hot recrystallization)を利用する。いくつかの実施形態では、粗物質を得るために貧溶媒再結晶に使用する貧溶媒はヘプタンである。他の実施形態では、熱再結晶(hot recrystallization)では、i)貧溶媒再結晶で得た粗物質を非プロトン性極性溶媒及び短鎖アルコールを用いて約70℃で溶解させ、ii)ステップi)の混合物の温度を約3時間〜約7時間かけて約20℃まで下げ、iii)ステップii)の混合物を約20℃で約2時間〜約6時間攪拌する、各ステップを行う。一実施形態では、非プロトン性溶媒は酢酸エチルである。別の実施形態では、短鎖アルコールはイソプロパノールである。
【0027】
いくつかの実施形態では、化合物II−OHを合成するための開示の方法により化合物II−OHが約>97.5%の純度で提供される。別の実施形態では、化合物II−OHを合成するための開示の方法により化合物II−OHが約>98.0%の純度で提供される。いくつかの実施形態では、化合物II−OHを合成するための開示の方法により化合物II−OHが約>99.0%の純度で提供される。
【0028】
他の実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、4,4’−ビス(2−ブトキシエトキシ)ビフェニル(化合物VII)の存在は約≦0.10%となる。
【0029】
他の実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、8,8’−(4−(2−ブトキシエトキシ)−1,3−フェニレン)ビス(1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸)(化合物VIII)の存在は約≦0.20%となる。他の実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、8,8’−(4−(2−ブトキシエトキシ)−1,3−フェニレン)ビス(1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸)(化合物VIII)の存在は約≦0.10%となる。いくつかの実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、8,8’−(4−(2−ブトキシエトキシ)−1,3−フェニレン)ビス(1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸)(化合物VIII)の存在は約≦0.05%となる。
【0030】
他の実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−ブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物IX)の存在は約≦0.50%となる。別の実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−ブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物IX)の存在は約≦0.25%となる。一実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−ブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物IX)の存在は約≦0.15%となる。
【0031】
いくつかの実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、化合物II−OH中の8−(4−(2−エトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物II−OH−A)の存在は約≦0.20%となる。他の実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、化合物II−OH中の8−(4−(2−エトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物II−OH−A)の存在は約≦0.10%となる。別の実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、化合物II−OH中の8−(4−(2−エトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物II−OH−A)の存在は約≦0.05%となる。
【0032】
いくつかの実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、化合物II−OH中の1−イソブチル−8−(4−(2−プロポキシエトキシ)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物II−OH−B)の存在は約≦0.20%となる。一実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、化合物II−OH中の1−イソブチル−8−(4−(2−プロポキシエトキシ)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物II−OH−B)の存在は約≦0.10%となる。別の実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、化合物II−OH中の1−イソブチル−8−(4−(2−プロポキシエトキシ)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5
−カルボン酸(化合物II−OH−B)の存在は約≦0.05%となる。
【0033】
一実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、化合物II−OH中の8−(4−ブトキシフェニル)−1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物II−OH−C)の存在は約≦0.50%となる。いくつかの実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、化合物II−OH中の8−(4−ブトキシフェニル)−1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物II−OH−C)の存在は約≦0.25%となる。他の実施形態では、化合物II−OHの開示される合成の結果、化合物II−OH中の8−(4−ブトキシフェニル)−1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物II−OH−C)の存在は約≦0.10%となる。
【化8】
【0034】
本願開示はさらに、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH)を調製する方法を記載する。化合物I−MsOHを合成する開示の方法では、a)化合物IIと4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)アニリン(化合物III)とを塩基の存在下で反応させて8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド(化合物I)を生成させ、b)ステップa)を水溶液で反応停止させ、c)メタンスルホン酸を加え、d)化合物I−MsOHを結晶化させる。いくつかの実施形態では、化合物IIのR
1は、H、OH、Cl、Br、OR
2、OCOR
2、及びNHR
2からなる群から選択され、化合物IIのR
2は、H、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールからなる群から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、化合物IIのR
1はClである。一実施形態では、化合物IIの合成は、i)化合物II−OHを溶媒に溶解させ、ii)ステップi)の混合物に塩素化試薬を加えるというステップで行う。いくつかの実施形態では、塩素化試薬は、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、塩化オキサリル、ホスゲン、及びその組合せからなる群から選択される。一実施形態では、塩素化試薬は塩化チオニルである。いくつかの実施形態では、塩素化試薬を化合物II−OHに対して約1.0当量〜約
1.2当量で使用する。
【0036】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHを合成するステップa)では、溶媒としてジクロロメタンを使用する。他の実施形態では、化合物I−MsOHの合成ステップa)では、塩基としてピリジンを使用する。別の実施形態では、化合物I−MsOHの合成ステップa)では、光学的に純粋な(S)−化合物IIIを化合物IIIとして使用する。
【0037】
いくつかの実施形態では、使用する化合物IIIの量は化合物II−OHに対して約1.0当量〜約1.2当量である。いくつかの実施形態では、使用するメタンスルホン酸の量は化合物II−OHに対して約0.97当量〜約1.02当量である。他の実施形態では、メタンスルホン酸と化合物II−OHの比は約1:1である。
【0038】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHを合成するステップb)では、水溶液としてクエン酸を使用する。他の実施形態では、化合物I−MsOHを合成するステップb)はさらに、化合物Iを抽出し、抽出溶液を3Åモレキュラーシーブスで乾燥させることを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHの純粋試料を、化合物I−MsOH合成の結晶化ステップd)での種結晶に使用する。いくつかの実施形態では、ステップd)の種結晶を入れた結晶化溶液を約0℃で攪拌して結晶化させ、生成した結晶を捕集し、捕集した結晶を冷却した酢酸エチルで洗浄するというさらなるステップを含む。一実施形態では、生成した結晶をろ過によって捕集する。
【0040】
他の実施形態では、ステップd)の後に熱再結晶(hot recrystallization)によるさらなる精製を必要とする。化合物I−MsOHの熱再結晶(hot recrystallization)では、i)ステップd)で得た化合物I−MsOHの粗結晶をアセトニトリル中で約70℃にて溶解させ、ii)ステップi)の混合物の温度を約1時間かけて約50℃〜約55℃まで下げ、iii)ステップii)に化合物I−MsOHを用いて種結晶を入れ、iv)約50℃〜約55℃で約6時間攪拌し、v)ステップiiiの混合物の温度を約20℃まで下げ、vi)約20℃で約8時間攪拌し、vii)ろ過して結晶を捕集し、viii)結晶を冷アセトニトリルで洗浄する。
【0041】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHを合成する開示の方法により、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせが約>96.0%の純度で提供される。別の実施形態では、化合物I−MsOHを合成する開示の方法により、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせが約>97.0%の純度で提供される。一実施形態では、化合物I−MsOHを合成する開示の方法により、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせが約>98.0%の純度で提供される。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHを合成する開示の方法により、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせが約>98.5%の純度で提供される。
【0042】
他の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物II−OH)の存在は約≦1.0%となる。一実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物II−OH)の存在は約≦0.80%ま
たは約≦0.50%となる。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物II−OH)の存在は約≦0.25%となる。
【0043】
他の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8,8’−(4−(2−ブトキシエトキシ)−1,3−フェニレン)ビス(1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸)(化合物VIII)の存在は約≦0.20%となる。一実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8,8’−(4−(2−ブトキシエトキシ)−1,3−フェニレン)ビス(1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸)(化合物VIII)の存在は約≦0.10%となる。一実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8,8’−(4−(2−ブトキシエトキシ)−1,3−フェニレン)ビス(1−イソブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸)(化合物VIII)の存在は約≦0.05%となる。
【0044】
他の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−ブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物IX)の存在は約≦0.20%となる。一実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−ブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物IX)の存在は約≦0.10%となる。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−ブチル−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボン酸(化合物IX)の存在は約≦0.05%となる。
【0045】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8,8’−(4−(2−ブトキシエトキシ)−1,3−フェニレン)ビス(1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド)ジメタンスルホナート(化合物I−MsOH−G)の存在は約≦0.40%となる。他の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8,8’−(4−(2−ブトキシエトキシ)−1,3−フェニレン)ビス(1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド)ジメタンスルホナート(化合物I−MsOH−G)の存在は約≦0.30%となる。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8,8’−(4−(2−ブトキシエトキシ)−1,3−フェニレン)ビス(1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド)ジメタンスルホナート(化合物I−MsOH−G)の存在は約≦0.20%となる。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8,8’−(4−(2−ブトキシエトキシ)−1,3−フェニレン)ビス(1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)
−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド)ジメタンスルホナート(化合物I−MsOH−G)の存在は約≦0.15%となる。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8,8’−(4−(2−ブトキシエトキシ)−1,3−フェニレン)ビス(1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド)ジメタンスルホナート(化合物I−MsOH−G)の存在は約≦0.10%となる。
【0046】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)アニリン(化合物III)もしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの存在は約≦0.25%となる。一実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)アニリン(化合物III)もしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの存在は約≦0.15%となる。別の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)アニリン(化合物III)もしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの存在は約≦0.10%となる。
【0047】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)アニリン(化合物III)もしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの存在は約≦2000ppmとなる。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)アニリン(化合物III)もしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの存在は約≦1750ppmとなる。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)アニリン(化合物III)もしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの存在は約≦1500ppmとなる。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)アニリン(化合物III)もしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの存在は約≦1250ppmとなる。
【0048】
一実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、(S)−4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)アニリン((S)−化合物III)の存在は約≦1500ppmとなる。
【0049】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−エトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−A)の存在は約≦0.25%となる。一実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−エトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イ
ル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−A)の存在は約≦0.15%となる。別の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−エトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−A)の存在は約≦0.10%となる。
【0050】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、1−イソブチル−8−(4−(2−プロポキシエトキシ)フェニル)−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−B)の存在は約≦0.25%となる。他の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、1−イソブチル−8−(4−(2−プロポキシエトキシ)フェニル)−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−B)の存在は約≦0.15%となる。一実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、1−イソブチル−8−(4−(2−プロポキシエトキシ)フェニル)−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−B)の存在は約≦0.10%となる。
【0051】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−ブトキシフェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−C)の存在は約≦0.40%となる。他の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−ブトキシフェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−C)の存在は約≦0.30%となる。別の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−ブトキシフェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−C)の存在は約≦0.20%となる。
【0052】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルホニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−D)の存在は約≦2.0%となる。他の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル
)メチル)スルホニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−D)の存在は約≦1.0%となる。別の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルホニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−D)の存在は約≦0.50%となる。
【0053】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)チオ)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−E)の存在は約≦0.40%となる。他の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)チオ)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−E)の存在は約≦0.30%となる。別の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)チオ)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−E)の存在は約≦0.20%となる。
【0054】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−ブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−F)の存在は約≦0.40%となる。他の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−ブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−F)の存在は約≦0.30%となる。一実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−ブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−F)の存在は約≦0.20%となる。一実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−ブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩(化合物I−MsOH−F)の存在は約≦0.15%となる。
【0055】
別の実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、MsOHから生じるメシル酸エステルの存在は約≦1.
0%となる。他の実施形態では、化合物I−MsOHの開示される合成の結果、MsOHから生じるメシル酸エステルの存在は約≦0.50%となる。一実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、MsOHから生じるメシル酸エステルの存在は約≦0.25%となる。
【0056】
一実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、MsOHから生じるメシル酸エステルの存在は約≦20ppmとなる。他の実施形態では、化合物I−MsOHの開示の合成法により、MsOHから生じるメシル酸エステルの存在は約≦10ppmとなる。一実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、MsOHから生じるメシル酸エステルの存在は約≦5ppmとなる。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせは、用量150mgあたり10ppmメシル酸エステルを含有する。
【化9】
【0057】
一実施形態では、化合物I−MsOHの開示の合成法により(S)−化合物I−MsOHが得られる。いくつかの実施形態では、開示の合成法により、(S)−化合物I−MsOHが96%超の純度または98.5%超の純度で提供される。
【0058】
いくつかの実施形態では、(S)−化合物I−MsOHの開示の合成法により、(R)−8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((
1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩((R)−化合物I−MsOH)の存在は約≦1.00%となる。別の実施形態では、(S)−化合物I−MsOHの開示の合成法により、(R)−8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩((R)−化合物I−MsOH)の存在は約≦0.50%となる。一実施形態では、(S)−化合物I−MsOHの開示の合成法により、(R)−8−(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1−イソブチル−N−(4−(((1−プロピル−1H−イミダゾール−5−イル)メチル)スルフィニル)フェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b]アゾシン−5−カルボキサミド=メタンスルホン酸塩((R)−化合物I−MsOH)の存在は約≦0.25%となる。
【0059】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHもしくは鏡像異性体、立体異性体、またはその組合わせの開示の合成法により、含水率は5.0%w/w以下または2.0%w/w以下となる。
【0060】
いくつかの実施形態では、(S)−化合物I−MsOHの開示の合成法により、(R)−化合物I−MsOHは含まれるが(S)−化合物IIIは除外される不純物の存在は≦3.0%となる。一実施形態では、(S)−化合物I−MsOHの開示の合成法により、(R)−化合物I−MsOHは含まれるが(S)−化合物IIIは除外される不純物の存在は≦2.5%となる。別の実施形態では、(S)−化合物I−MsOHの開示の合成法により、(R)−化合物I−MsOHは含まれるが(S)−化合物IIIは除外される不純物の存在は≦2.3%となる。いくつかの実施形態では、(S)−化合物I−MsOHの開示の合成法により、(R)−化合物I−MsOHは含まれるが(S)−化合物IIIは除外される不純物の存在は≦2.0%となる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
開示の詳細な説明
定義
以下の用語は、当業者により理解されていると考えられているが、本願開示の主題についての説明を容易にするために以下の定義を記載する。
【0063】
用語「a」または「an」は、その実体の1つまたはそれ以上を指し、例えば、「a halogen」とは、1つまたはそれ以上のハロゲンまたは少なくとも1つのハロゲンを指す。したがって、用語「a」(または「an」)、「one or more(1つまたはそれ以上)」及び「at least one(少なくとも1つ)」は、本明細書では同義で使用される。さらに、不定冠詞「a」または「an」によって「an alkyl group(アルキル基)」に言及する場合、文脈からアルキル基が1つあり、アルキル基のうちの1つのみであることが明らかに要求されない限り、1つ以上のアルキル基が存在する可能性を除外するものではない。
【0064】
本明細書で使用する場合、本記載及び請求項内で使用される動詞「comprise(含む)」及びその変形は、その非限定的な意味で使用され、その後に続く項目が含まれることを意味するが、具体的に言及されていない項目を除外するものではない。
【0065】
本明細書で使用する場合、語句「アルキル基」とは、1〜約10個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素を指す。アルキル基の非限定的例には、C1〜C10アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0066】
本明細書で使用する語句「アリール基」とは、6〜14個の炭素原子を有する芳香族基を指す。アリール基の非限定的例には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基等が挙げられる。
【0067】
本明細書で使用する場合、任意選択で置換されたアルキル基及び任意選択で置換されたアリール基における語句「置換基(複数可)」には、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、ニトロ基、シアノ基、任意選択で置換されたヒドロキシル基(例えば、ヒドロキシル基、C1〜C4アルコキシ等)、任意選択で置換されたチオール基(例えば、チオール、C1〜C4アルキルチオ等)、任意選択で置換されたアミノ基(例えば、アミノ、モノ−C1〜C4アルキルアミノ、ジ−C1〜C4アルキルアミノ、5員または6員の環状アミノ基、例えば、ピロリジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピロール及びイミダゾール等)、任意選択でエステル化またはアミド化したカルボキシル基(例えば、カルボキシル、C1〜C4アルコキシカルボニル、カルバモイル、モノ−C1〜C4アルキルカルバモイル、ジ−C1〜C4アルキルカルバモイル等)、任意選択でハロゲン化したC1〜C4アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ等)、任意選択でハロゲン化したC1〜C4アルコキシ−C1〜C4アルコキシ基(例えば、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、トリフルオロメトキシエトキシ、トリフルオロエトキシエトキシ等)、ホルミル基、C2−C4アルカノイル基(例えば、アセチル、プロピオニル等)、及びC1〜C4アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル等)が挙げられる。
【0068】
本明細書で使用する場合、語句「短鎖アルコール」とは、1〜8個の炭素原子を含有するアルコールを指す。短鎖アルコールの非限定的例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等が挙げられる。
【0069】
本明細書で使用する場合、語句「nonprotic solvent(非プロトン性溶媒)」または「non−protic solvent(非プロトン性溶媒)」とは、強塩基性反応物質の存在下で容易に脱プロトン化されない有機溶媒または有機溶媒混合物を指す。非プロトン性溶媒の非限定的例には、エーテル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、プロピオニトリル、ギ酸エチル、酢酸メチル、ヘキサクロロアセトン、アセトン、エチルメチルケトン、酢酸エチル、スルホラン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、テトラメチル尿素、ニトロメタン、ニトロベンゼン、またはヘキサメチルホスホルアミド、ジエトキシメタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、フラン、ジエチルエーテル、テトラヒドロピラン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジ
メチルエーテル、アニソール、t−ブチルメチルエーテル等が挙げられる。
【0070】
本明細書で使用する場合、語句「プロトン性溶媒」とは、任意の未反応の強塩基性反応中間体をプロトン化するための酸として機能できる溶媒または混合溶媒を指す。プロトン性溶媒の非限定的例には、水、メタノール、エタノール、2−ニトロエタノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコール、1−、2−、もしくは3−ペンタノール、ネオペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェノール、グリセリン等が挙げられる。
【0071】
本明細書で使用する場合、液体の容量を表すために使用する場合の語句「部(複数可)」とは、そこで言及する、またはその前に記述されている化合物、物質、または液体に対する容量乗数の概推定を指す。例えば、化合物Aに対して水50部とは、化合物Aの容量の約50倍の容量の水を使用することを意味する。
【0072】
本明細書で使用する場合、符号「≦」は「以下」または「等しいかまたはそれ未満」であることを意味し、「<」は「未満」を意味し、「≧」は「以上」または「等しいかまたはより大きい」ことを意味し、「>」は「より大きい」ことを意味する。さらに、本明細書で純度または不純物含有量との関連で使用する場合、各数値には、その正確な数値だけではなく該数値の前後のおよその範囲の数値も含まれる。例えば、語句「99.0%の純度」は約99.0%の純度を意味する。
【0073】
化合物Vの合成方法
いくつかの実施形態では、化合物Vは、ボロン酸、ボロン酸エステル、ピナコールボラン、ボロン酸二量体、ボロン酸三量体、その混合物等を表す。当該技術分野では、化合物Vは、ボロン酸の各種誘導体として提示され得ることが一般的に理解されている。
【0074】
いくつかの実施形態では、1−ブロモ−4−(2−ブトキシエトキシ)ベンゼン(化合物VI)のグリニャール試薬を生成させ、続いて、トリメトキシボランと反応させることによってジメチル(4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)ボロナート(化合物V−OMe)を調製する。
【0075】
大規模のバッチ生産においてはグリニャール反応の開始が困難なことがわかった。以前の方法では、化合物VIの希釈溶液を使用し、化合物VIに対してテトラヒドロフラン(THF)は約50〜70部であった。イソプロピルマゲンシウムクロリド(isopropylmagensium chloride)(iPrMgCl)を用いた化合物VI希釈溶液中における反応開始は非常に遅く、長時間還流し、多量の化合物VIを加えて化合物VIに対するTHF濃度を約25部にした後にようやく開始された。グリニャール反応を開始させることが困難である上、iPrMgClを使用するとその後のステップにおいて有害作用があることがわかった(鈴木カップリングステップの変換が低い;化合物II−OHの合成方法の項を参照されたい)。
【0076】
グリニャール反応開始に伴う問題を解決するため、いくつかの実施形態では、グリニャール試薬の生成前に、加熱と撹拌による削状マグネシウムの活性化ステップが必要である。いくつかの実施形態では、削状マグネシウムを、約9部のエーテル系溶媒、例えばTHF中で約1時間撹拌した。その後、溶媒は、蒸留によって約3部に減量することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、未希釈の化合物VIを使用して先の方法よりも濃縮度の高い溶液を得ることによってグリニャール反応開始に伴う課題を解決する。いくつかの実施形態では、活性化削状マグネシウム溶液に化合物VIの総量の約20%を未希釈で少なくとも15分間にわたり加え、その間、反応温度が溶媒の沸点より低い温度に維持されるよう発熱を管理する。得られた溶液を溶媒の沸点またはその前後の温度で約1時間〜約4時間加熱する。その後、反応混合物を約10℃冷却し、先に使用した同一溶媒(5部)で希釈する。いくつかの実施形態では、本開示のグリニャール反応開始ステップにより、iPrMgClが完全に除かれる。
【0078】
いくつかの実施形態では、さらに希釈される、高温で反応開始させたグリニャール溶液に対し、残りの化合物VIを未希釈でゆっくり約30分〜約1時間にわたって加える。化合物VIの添加は発熱性であるので、添加中は、反応混合物を沸点よりもはるかに低温に維持するよう注意する。いくつかの実施形態では、得られる混合物を撹拌し、溶媒の沸点より低い温度、例えばTHFの場合は約55℃まで、約3時間〜約4時間加熱する。いくつかの実施形態では、加熱時間は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって、残留する化合物VIが約1%未満であることが示されるまで延長することができる。加熱時間の延長には、その後のステップの収率または主要不純物の生成防止における有益な効果が全くないことが認められた。
【0079】
化合物V−OMeを合成する以前のプロセス経路では、グリニャール混合物を約−15℃に冷却し、THFに溶解させたトリメトキシボランの溶液を加えた。発明者らは、この温度範囲が最適ではなかったために、低収率及び多量の不純物がもたらされることを発見した。また、かかる反応がトリメトキシボランの添加速度に敏感であることがわかった。
【0080】
上記の知見を考慮し、いくつかの実施形態では、グリニャール混合物(一旦生成が完了しているもの)を、約−25℃まで冷却し、未希釈のトリメトキシボランを約2時間かけて分割添加する。トリメトキシボラン添加完了時、反応混合物を約−25℃で約1時間〜約2時間撹拌した後、約20℃まで加温し、約1時間〜約2時間撹拌して化合物V−OMeを得た。いくつかの実施形態では、グリニャール混合物への添加前に、未希釈のトリメトキシボランを冷却した。
【0081】
いくつかの実施形態では、削状マグネシウム、化合物VI、及びトリメトキシボランの比は約1.08:1:1である。
【0082】
いくつかの実施形態では、化合物Vの合成に無水溶媒を使用する。他の実施形態では、化合物Vを合成するための反応を大気圧の窒素またはアルゴン下に維持し、反応容器及び装置は、使用前に水分を除去しておく。
【0083】
いくつかの実施形態では、リアクターの使用を最小限に抑えるために、化合物VI及びトリメトキシボランの両方を未希釈溶液として使用する。
【0084】
過剰のマグネシウム及びマグネシウム塩を除去するための粗化合物V−OMeのろ過は、主要不純物の生成防止という点でその後のステップに何ら影響がないことから、不要であるとされた。
【0085】
化合物II−OHの合成方法
いくつかの実施形態では、化合物IVと化合物Vの反応によって化合物II−OHを調製する。他の実施形態では、化合物IVと化合物Vの遷移金属触媒プロセス、例えば鈴木カップリング反応によって化合物II−OHを調製する。一実施形態では、使用する化合
物Vの量は化合物IVに対して約1当量(当量(equiv))〜約3当量である。他の実施形態では、使用する化合物Vの量は化合物IVに対して約2当量である。
【0086】
以前の化合物II−OHの合成方法では鈴木カップリング反応も利用され、そこでは、化合物Vを含有している反応混合物を酢酸パラジウム(Pd(OAc)
2)触媒及びトリフェニルホスフィン配位子(PPh
3)と共に投入してから、塩基性水溶液(水及び固体塩基)の添加を行った。この合成経路により、中程度の収率の約55%〜約64%の収率で、純度範囲約92%〜約99%の化合物II−OHが得られた。
【0087】
いくつかの実施形態では、先に塩基性水溶液を加えて二相性混合物を生成させてから、パラジウム(Pd)触媒と配位子の添加を行うことは、化合物Vのホモカップリングから生じる不純物である化合物VIIを減少させる上で有益であることが発見された。いくつかの実施形態では、塩基を約6.5部の水に溶解させた溶液を、先に記載のとおり調製した化合物V含有反応混合物に加える。他の実施形態では、塩基は、アルカリ炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等)、アルカリ金属炭酸水素塩(炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等)、アルカリ金属酢酸塩(酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等)、アルカリ金属リン酸塩(リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等)、アルカリ金属フッ化物(フッ化カリウム、フッ化セシウム等)、アルカリ金属アルコキシド(カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド等)、アルカリ金属水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)、及び有機塩基、例えば、アルキルアミン(トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等)ピリジン(ピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、環状アミン(モルホリン、4−メチルモルホリン等)、ならびにその組合せからなる群から選択されてよい。一実施形態では、塩基は炭酸カリウム(K
2CO
3)である。いくつかの実施形態では、塩基の当量は化合物IVに対して約1当量〜約8当量である。
【0088】
いくつかの実施形態では、塩基性水溶液の添加は、少なくとも30分〜少なくとも1時間にわたって行う。鈴木カップリング反応の収量においては塩基溶液をゆっくりと加えることが重要であることがわかった。これは、いかなる理論にも束縛されることなく、恐らく二相性混合物生成中の塩形成が妨げられることによると思われる。
【0089】
以前の鈴木カップリング反応の合成経路では、大規模で実施した場合の反応変換に関する問題が浮上した。N
2を直接反応混合物内に通気して窒素(N
2)で二相性反応混合物のパージを約1時間行い、酸素のような含有空気を除くことにより、所望の反応変換が得られることが発見された。この方法は脱気として知られる。反応混合物の脱気も、鈴木カップリングステップによる不純物である化合物VIIを減少させる上で有益であることがわかった。
【0090】
いくつかの実施形態では、化合物Vを含有する脱気した二相性反応混合物に対し、Pd触媒及び配位子を加える。以前の合成の経路では、Pd(OAc)
2とPPh
3を加えて達成したテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh
3)
4)触媒系を利用した。Pd(PPh
3)
4触媒系を使用した鈴木カップリング反応の収率は、化合物II−OHの中程度の収率(約55%〜約64%収率)に表されるように最適ではなかった。
【0091】
収率を改善し、化合物VIII不純物を抑えるため、触媒系のさらなる最適化を実施した。実施例1及び表1に記載のように、Pd(PPh
3)
4触媒系の最適化により、良好な変換が達成されるのは、触媒搭載を有意に多くした場合(約2mol%〜約10mol%、表1の実験番号6)または反応を実質的に長時間(約27時間、実験番号5)還流させた場合に限られることが実証された。触媒の搭載量を多くして用いると、化合物VII
I不純物の量は有意に低下するが(0.04%、実験番号6)、触媒搭載量が多いために生成物の結晶化を妨げることも認められた。また、鈴木カップリング反応の温度を下げたところ、化合物VIII不純物の生成をうまく防止できないことが示された。
【0092】
次に、実施例2及び表2に示すように、異なる触媒系を検討した。ホスフィン配位子を除くと(表2、実験番号1)、反応変換に有害であることが示された。発明者らは、Pd(OAc)
2/P(o−tol)
3の触媒系は、以前のPd(PPh
3)
4触媒系に比べて反応収率を高め(約80〜85%)、かつ生成物純度(>99%)を高めることを発見した。さらに、新たに発見したPd(OAc)
2/P(o−tol)
3触媒系を用いると、触媒搭載を約2mol%〜約0.25mol%に大幅に最小化できると思われる。開示の触媒系を用いた場合、反応物を脱気しても変換率、生成物の純度、または化合物VIIIの量に影響がないことも認められた。実施例1〜2による触媒最適化試験は、化合物VIII不純物の量は、鈴木カップリング反応の条件と相関がほとんどなく、無相関に近いことを示している。
【0093】
いくつかの実施形態では、化合物Vを含有している二相性反応混合物の反応にPd触媒及び配位子を加える。いくつかの実施形態では、Pd触媒はPd(0)種またはPd(II)種であり得る。Pd触媒の非限定的例には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh
3)
4)、トリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホフィノ(diphenylphophino))エタン]パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、酢酸パラジウム(Pd(OAc)
2)、塩化パラジウム(PdCl
2)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、シアン化パラジウム、水酸化パラジウム、硝酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム(II)塩化物n水和物、ジニトロジアミンパラジウム、ジ−μ−クロロビス(η−アリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、プロピオン酸パラジウム(palladium propionate)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロリド、テトラキス(トリ−O−トリルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム、ビス(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム、ビス(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム、テトラキス(トリエチルホスファイト)パラジウム、及びその組合わせが挙げられる。
【0094】
いくつかの実施形態では、配位子は、ホスフィン配位子(トリトリルホスフィン(tritolylphosphine)、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト、トリ−tert−ブチルホスフィン、ジ−tert−ブチルメチルホスフィン等)、窒素系配位子(ピリジン、ビピリジン等)、NHC配位子(N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン等)、及びその組合わせからなる群から選択される。
【0095】
いくつかの実施形態では、Pd触媒/配位子系はPd(OAc)
2/P(o−tol)
3である。他の実施形態では、反応混合物を連続脱気しながらPd触媒及び配位子を加える。
【0096】
いくつかの実施形態では、使用するPd触媒の量は化合物IVに対して約0.001mol%〜約10.0mol%である。一実施形態では、使用するPd触媒の量は化合物IVに対して約0.05mol%〜約0.25mol%である。
【0097】
いくつかの実施形態では、配位子とPd触媒の比は約1:1〜約3:1である。いくつかの実施形態では、配位子とPd触媒の比は約2:1である。
【0098】
いくつかの実施形態では、化合物V及びPd触媒/配位子系を含有している二相性混合物に化合物IVを加える。一実施形態では、反応混合物を連続脱気しながら化合物IVを加える。
【0099】
いくつかの実施形態では、化合物IVの添加と同時に反応混合物を約2時間〜約5時間加熱し、その後、室温まで冷却する。いくつかの実施形態では、反応混合物を65℃未満まで加熱する。Pd触媒は、温度が65℃を超えると不活性になることが認められた。例えば、温度を90℃に設定した鈴木カップリング反応では反応完了に至らなかった。一実施形態では、HPLC分析によって、残存する化合物IVが≦2%であることが示され、化合物II−OHの生成が示されるまで反応物を加熱した。
【0100】
いくつかの実施形態では、HPLCによって反応が完了したと見なされたら、反応物を室温まで冷却し、酸性水溶性を用いて反応混合物のpHを約2.0〜約3.0に調整した。いくつかの実施形態では、塩酸(HCl)を使用する。
【0101】
いくつかの実施形態では、化合物Vは化合物V−OMeである。
【0102】
化合物II−OHの精製
化合物II−OHの以前の精製方法では、熱再結晶(hot recrystallization)を2回、木炭処理を2回行う必要があった。いくつかの実施形態では、開示の精製方法は、1回の木炭処理、1回の貧溶媒再結晶、及び/または1回の熱再結晶(hot recrystallization)を要する。
【0103】
いくつかの実施形態では、粗化合物II−OHを含有している酸性化させた二相性反応混合物を水層と有機層とに分離させる。いくつかの実施形態では、得られる水層を有機溶媒で抽出する。一実施形態では、水層をトルエン(約10部)で抽出する。
【0104】
いくつかの実施形態では、有機層を合わせた容量は約6.5部まで減少する。いくつかの実施形態では、有機層を合わせた容量を蒸留によって減量する。いくつかの実施形態では、得られた減量有機層を木炭で処理する。他の実施形態では、得られる減量有機層を木炭及びセライト(登録商標)で処理する。一実施形態では、木炭とセライト(登録商標)の比は重量基準で約1:2である。いくつかの実施形態では、木炭を含有している反応混合物を室温にて約1時間〜約5時間撹拌する。他の実施形態では、その後、木炭をろ過し、反応物の容量を約3部まで減量する。一実施形態では、容量を蒸留によって減量する。
【0105】
いくつかの実施形態では、化合物II−OHの精製に貧溶媒再結晶を使用する。減量した粗混合物に対し、イソプロパノール及び酢酸エチルなどの極性溶媒を加え、濃縮して油にする。一実施形態では、粗油混合物に対し、非極性貧溶媒を約1時間にわたって分割添加する。得られた懸濁液を室温にて約1時間〜約8時間撹拌した。いくつかの実施形態では、その後、析出した結晶をろ過により捕集する。いくつかの実施形態では、反応容器のあらゆる残存結晶を除去するため、母液は再循環させず、代わりに新鮮溶媒を使用して複数回の溶媒による洗浄を追加してよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、貧溶媒はヘプタンである。他の実施形態では、極性溶媒はイソプロパノールまたはイソプロパノールと酢酸エチルの混合物である。いくつかの実施形態では、貧溶媒を加えなくても生成物が析出する。
【0107】
いくつかの実施形態では、化合物II−OHの精製に熱再結晶(hot recrystallization)を使用する。化合物II−OHを含有している粗物質または化合物II−OHの粗結晶を、イソプロパノール及び酢酸エチルなどの極性溶媒に高温で溶解させる。溶液温度を徐々に室温まで下げ、再結晶が完了するまで撹拌した後、ろ過によって結晶を捕集する。
【0108】
いくつかの実施形態では、使用する極性溶媒はイソプロパノールまたはイソプロパノールと酢酸エチルとの混合物である。いくつかの実施形態では、粗化合物II−OHをイソプロパノールと酢酸エチルとの混合物中に約9:1の比で約70℃にて溶解させる。他の実施形態では、高温溶液の温度を約1時間おきに約10℃ずつ低下させて室温にする。いくつかの実施形態では、溶媒が一旦室温まで冷めたら、溶液を約2時間〜約6時間撹拌する。いくつかの実施形態では、得られた結晶をろ過によって捕集する。いくつかの実施形態では、反応容器のあらゆる残存結晶を除去するため、母液は再循環させず、代わりに新鮮溶媒を使用して複数回の溶媒による洗浄を追加してよい。
【0109】
再結晶溶媒試験から、イソプロパノール単独で熱再結晶(hot recrystallization)を行った場合、化合物II−OHの回収率は高く(90〜93%)、不純物である化合物VIIIの量は約50〜60%減少することが明らかになった。酢酸エチル単独で熱再結晶(hot recrystallization)を行った場合、イソプロパノール系よりも化合物II−OHの回収率は低かったが(70〜75%)、不純物である化合物VIIIの減少は大きかった(80〜83%減)。イソプロパノールと酢酸エチルの混合物で熱再結晶(hot recrystallization)を行った場合、化合物II−OHの高回収率(90〜92%)及び不純物である化合物VIIIの量の効果的減量(75〜80%減)の両方が得られた。
【0110】
いくつかの実施形態では、貧溶媒再結晶及び熱再結晶(hot recrystallization)のどちらも利用する。いくつかの実施形態では、貧溶媒再結晶と熱再結晶(hot recrystallization)の組合せにより不純物である化合物VIII及び化合物IXが有意に減少する。いくつかの実施形態では、所望の純度が達成されるまで再結晶ステップを繰り返すことができる。他の実施形態では、本明細書に記載の通りに、化合物II−OHの開示の合成方法に従うと、化合物II−OHの純度は>97.5%であり、化合物VIIは≦0.20%、化合物VIIIは≦0.20%、及び化合物IXは≦0.50%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の通りに、化合物II−OHの開示の合成方法に従うと、化合物II−OHの純度は>97.5%であり、化合物VIIは≦0.10%、化合物VIIIは≦0.10%、及び化合物IXは≦0.25%である。一実施形態では、本明細書に記載の通りに化合物II−OHの開示の合成方法に従うと、化合物II−OHの純度は>97.5%であり、化合物VIIは≦0.05%、化合物VIIIは≦0.05%、及び化合物IXは≦0.15%である。
【0111】
一実施形態では、本明細書に記載の通りに、化合物II−OHの開示の合成方法に従うと、化合物II−OHの純度は>97.5%であり、化合物II−OH−Aは≦0.20%、化合物II−OH−Bは≦0.20%、及び化合物II−OH−Cは≦0.50%である。別の実施形態では、本明細書に記載の通りに、化合物II−OHの開示の合成方法に従うと、化合物II−OHの純度は>97.5%であり、化合物II−OH−Aは≦0.10%、化合物II−OH−Bは≦0.10%、及び化合物II−OH−Cは≦0.25%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の通りに、化合物II−OHの開示の合成方法に従うと、化合物II−OHの純度は>97.5%であり、化合物II−OH−Aは≦0.05%、化合物II−OH−Bは≦0.05%、及び化合物II−OH−Cは≦0.15%である。
【0112】
一実施形態では、本明細書に記載の通りに、化合物II−OHの開示の合成方法に従うと、化合物II−OHの純度は>98.0%である。一実施形態では、本明細書に記載の通りに、化合物II−OHの開示の合成方法に従うと、化合物II−OHの純度は>99.0%である。
【0113】
化合物Iの調製
化合物I及びそれに続く化合物I−MsOHを調製する以前の方法では、最終生成物中に化合物II−OH(出発原料)が存在するという問題があった。化合物II−OHの生成は幾つかのステップまたは反応の特徴に依存することが発見された。第1に、酸塩化物の化合物II−Cl(R
1=Clである化合物II)が生成されること。第2に、どの反応溶媒を選択するかにより、生成される化合物II−OHの量が影響を受けること。第3に、塩形成ステップに関することである。本明細書に記載する開示方法は、これらの課題を対象とし、化合物II−OHの生成を大幅に低下させるプロトコルを記載する。
【0114】
いくつかの実施形態では、化合物IIと化合物IIIとの反応によって化合物Iを合成する。いくつかの実施形態では、化合物II−OHを塩素化試薬と反応させて化合物II−Clを生成させる。いくつかの実施形態では、化合物II−Clは、化合物IIIと反応して化合物Iを生成する。
【0115】
いくつかの実施形態では、化合物II−OHを溶媒に溶解させ、塩素化試薬を加えて化合物II−Clを得る。いくつかの実施形態では、使用溶媒には、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルフォラミド(dimethylforamide)(DMF)、ジエチルエーテル、及び塩化メチレン(DCM)が挙げられるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、溶媒は塩化メチレンである。
【0116】
以前の方法では、酸塩化物生成用の溶媒としてTHFを利用し、DMFを加えた。DCMを酸塩化物生成用の溶媒として使用すると、化合物II−OHの生成を最小限に抑えられることが発見された。
【0117】
塩素化試薬の添加に先立ち、化合物II−OHを含有する溶液を室温以下まで冷却する。いくつかの実施形態では、化合物II−OHを含有する溶液を約10℃〜約15℃まで冷却する。いくつかの実施形態では、塩素化試薬を約10分〜約30分かけて加えるが、その間、溶液温度を室温以下に維持した。いくつかの実施形態では、混合物を約10℃〜約15℃に維持し、約2時間〜約4時間撹拌した後、約0℃以下まで冷却する。一実施形態では、HPLC分析により、存在する化合物II−OHが≦3.0%であることが示されるまで反応物を撹拌した。
【0118】
塩素化試薬の非限定的例には、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、塩化オキサリル、ホスゲン等またはその組合わせが挙げられる。一実施形態では、塩素化試薬は塩化チオニルである。別の実施形態では、塩素化試薬を化合物II−OHに対して約1.0当量〜約2.0当量で使用する。一実施形態では、塩素化試薬を化合物II−OHに対して約1.0当量〜約1.1当量で使用する。別の実施形態では、塩素化試薬と化合物II−OHの比は約1:1である。
【0119】
別個の反応容器内で、化合物IIIを塩基と共に溶媒に溶解させる。化合物IIIと塩基の溶液に対し、化合物II−Cl溶液をゆっくり加える。いくつかの実施形態では、化合物IIIを溶解させるための使用溶媒は、テトラヒドロフラン、ジメチルフォラミド(dimethylforamide)、ジエチルエーテル、塩化メチレン、及びその混合物であり得る。一実施形態では、溶媒は塩化メチレンである。いくつかの実施形態では、反応物を約0℃まで冷却してから化合物IIIの添加を行う。一実施形態では、反応物は
、化合物IIIの添加後、HPLC分析によって、存在する化合物II−Clが≦0.5%であることが示されるまで約0℃で約3時間〜約7時間維持する。別の実施形態では、化合物IIIを、化合物II−OHに対して約1.0当量〜約1.2当量で使用する。
【0120】
いくつかの実施形態では、塩基を約1当量〜約4当量で使用する。塩基の非限定的例には、アルカリ炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等)、アルカリ金属炭酸水素塩(炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等)、アルカリ金属酢酸塩(酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等)、アルカリ金属リン酸塩(リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等)、アルカリ金属フッ化物(フッ化カリウム、フッ化セシウム等)、アルカリ金属アルコキシド(カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド等)、アルカリ金属水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)、及び有機塩基、例えば、アルキルアミン(トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等)ピリジン(ピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、環状アミン(モルホリン、4−メチルモルホリン等)、及びその組合わせが挙げられる。一実施形態では、塩基はピリジンである。いくつかの実施形態では、ピリジンは化合物II−Clと反応してピリジン−HCl塩を形成するので、塩の凝集を防止するために激しい撹拌が必要になる場合がある。
【0121】
化合物II−Clの化合物Iへの変換が一旦示されたら、一実施形態では、反応混合物を酸性化させる。いくつかの実施形態では、クエン酸溶液を使用して、粗化合物Iを含有している反応混合物を酸性化させる。一実施形態では、クエン酸を、化合物II−OHに対して約1.5当量〜約2.0当量を約10部の水に溶解させて使用し、約30分〜約1時間かけて加える。一実施形態では、冷却した反応混合物に対し、冷却したクエン酸水溶液を加え、その間、内部温度を約0℃に維持する。
【0122】
いくつかの実施形態では、揮発性の溶媒を除去して、約13部の総容量を得る。他の実施形態では、減量した反応混合物に対し別の溶媒を加え(約5部)、再度減量して約13部の総容量を得る。いくつかの実施形態では、酢酸エチルなどの極性溶媒を使用する。他の実施形態では、溶媒を減圧下で除去する。
【0123】
いくつかの実施形態では、大部分が酸性水層からなる減量した反応混合物を、約10部の極性溶媒、例えば酢酸エチルで抽出する。いくつかの実施形態では、所望の生成物である化合物Iを含有している有機層を水溶液、例えば炭酸水素ナトリウムと塩水の溶液で数回洗浄する。
【0124】
反応処理操作中の化合物Iの安定性を試験した。化合物Iは、反応処理中、光に対して特に感受性ということはなく、透明の反応容器または琥珀色の反応容器を使用しても化合物Iから化合物II−OHへの加水分解の進行を示さないことが実証された。さらに、反応処理操作中、さまざまなpHと温度で化合物Iを試験したが、化合物Iから化合物II−OHへの加水分解の進行との相関は発見されなかった。反応処理中に化合物Iが化合物II−OHに加水分解し得る可能性は依然としてあるものの、アミド結合は反応処理条件下でかなり安定である。
【0125】
抽出処理で得られる有機層中の含水率は、化合物Iの塩形成(化合物I−MsOH)の全体としての収率に影響を及ぼすことが見出される。いくつかの実施形態では、塩形成中の水の存在により、化合物Iから化合物II−OHへ戻る加水分解が進行したことから、徹底的な乾燥処理が理想的である。いくつかの実施形態では、化合物Iを含有している有機層を3Å粉末モレキュラーシーブスを用いて乾燥させる。いくつかの実施形態では、得られるスラリーを室温にて約15時間〜約30時間撹拌してから、ろ過によってモレキュラーシーブスを除去する。ろ過したモレキュラーシーブスを、酢酸エチルなどの極性溶媒
で洗浄する。いくつかの実施形態では、滴定によって残留含水率を決定する。いくつかの実施形態では、モレキュラーシーブスを使用する乾燥ステップは、残留水が≦2.5%になるまで繰り返され得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、化合物Iを含有する有機層が乾燥し、実質的に水を含まないと判定されたら、溶媒を除去して総容量を約3部にする。いくつかの実施形態では、蒸留によって溶媒を除去する。他の実施形態では、溶媒減量の前または後に溶液をHPLCによって評価し、存在化合物I量を算出する。
【0127】
化合物I−MsOHの調製
いくつかの実施形態では、濃縮された化合物I粗溶液に対し、溶媒を約4部加える。一実施形態では、使用溶媒はアセトニトリルである。化合物Iを含有する溶液に対し、メタンスルホン酸(MsOH)を加える。一部の実施形態では、MsOHを1部加える。他の実施形態では、MsOHを、HPLC法で測定した場合に、化合物Iに対し約0.9当量〜約1.5当量で使用する。一実施形態では、MsOHを約0.97当量〜約1.02当量で使用する。
【0128】
いくつかの実施形態では、別の溶媒、例えばアセトニトリルまたは酢酸エチルを用いて、化合物IとMsOHを含有する溶液中にMsOHを洗い流す。反応混合物を室温にて約30分〜約1時間撹拌する。過剰のMsOHは化合物Iのアミド結合を加水分解させて化合物II−OHの生成に対し有害作用を及ぼすことが発見されたため、塩形成中、存在する化合物Iの厳密な量及び1:1の化学量論比の達成に要するMsOHの厳密な量を決定するために、化合物Iを確実に測定することが重要である。一実施形態では、化合物IとMsOHを1:1の比で使用してアミド結合の加水分解を最小限に抑える。
【0129】
一実施形態では、化合物Iから化合物I−MsOHへの変換ステップに使用する溶媒はアルコール溶媒不含である。反応物中にアルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール等)が残留すると、化合物I−MsOHがメシル酸エステルで汚染されることが発見された。こうして生じるメシル酸エステルは、公知の変異原性物質である。
【0130】
いくつかの実施形態では、結晶化に先立ち、反応混合物を塩水で洗浄し、3Åモレキュラーシーブスを使用して乾燥させた。場合によっては、反応混合物中に微量の水が存在すると、結晶化の発生を妨げる得ること、及び/または化合物I−MsOHの収率を低下させ得ることが決定された。いかなる理論にも束縛されることは望まないが、含水率の高い系において収率が低いのは、含水率の高かった試験において母液に高濃度で見られた化合物II−OHへの加水分解速度が速いことによる。
【0131】
いくつかの実施形態では、反応混合物から化合物I−MsOHを析出させるため、化合物I−MsOHの純粋試料を種結晶として使用する。溶液は、種結晶の有無に係わらず、いくつかの実施形態では、室温にて約6時間〜約10時間撹拌する。いくつかの実施形態ではさらに、溶液を約0℃で約6時間〜約10時間撹拌する。析出した結晶は、いくつかの実施形態では、ろ過によって捕集する。いくつかの実施形態では、酢酸エチルなどの冷溶媒で結晶を洗浄して粗化合物I−MsOHを得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHの粗結晶をさらに熱再結晶(hot recrystallization)法を使用して精製する。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHの結晶を溶媒(約10部)に高温で溶解させる。他の実施形態では、化合物I−MsOHの結晶をアセトニトリルに約70℃で溶解させる。化合物I−MsOHの熱溶液を約1時間にわたって約50℃〜約55℃まで緩徐に冷却する。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHの溶液に化合物I−MsOHの純粋試料を用いて約50
℃〜約55℃で種結晶を入れた。いくつかの実施形態では、溶液を、種結晶の有無に係わらず、約50℃〜約55℃で約4時間〜約8時間撹拌する。いくつかの実施形態では、熱溶液を約1時間かけて室温まで冷却し、室温にて約6時間〜約10時間撹拌する。一実施形態では、アセトニトリルから化合物I−MsOHを熱再結晶(hot recrystallization)させることによりメシル酸エステルなどの汚染物が減少する。
【0133】
いくつかの実施形態では、析出した化合物I−MsOHの結晶をろ過によって捕集する。他の実施形態では、ろ過した化合物I−MsOHの結晶をアセトニトリルで洗浄する。一実施形態では、ろ過した化合物I−MsOHの結晶を冷アセトニトリルで洗浄する。結晶の純度を滴定及びHPLCによって評価する。必要に応じ、所望の純度が得られるまで熱再結晶(hot recrystallization)を繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、ろ過した化合物I−MsOHの結晶を減圧下で乾燥させる。他の実施形態では、粉砕ミル、ジェットミル等によって乾燥させた結晶をさらに粉砕する。
【0134】
顕微鏡下で化合物I−MsOHの結晶を試験したところ、結晶の表面が時間と共に油性になることが明らかになったが、これは結晶表面での加水分解の結果であることが確認される。アセトニトリルは、化合物I−MsOHよりも化合物II−OHのほうが可溶な溶媒であることがわかった。したがって、再結晶時、ろ過した結晶をアセトニトリルで洗浄することが有益である。化合物I−MsOHもアセトニトリルにある程度可溶性であるため、いくつかの実施形態では、結晶洗浄に冷アセトニトリルを用いるべきであり、その容量と洗浄回数は約2部容量〜約3部容量、約2回に制限する必要がある。
【0135】
水または酸の存在下では化合物Iまたは化合物I−MsOHの加水分解が生じやすい。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHを精製するステップの前及びステップ中は反応混合物は実質的に水不含でなければならない。他の実施形態では、化合物I−MsOHを精製するステップの前及びステップ中は反応混合物は実質的に水性酸不含でなければならない。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHの塩形成及び精製ステップを通じて穏やかな撹拌を維持しなければならない。
【0136】
いくつかの実施形態では、化合物Iまたは化合物I−MsOHを得るための反応に使用する化合物IIIは光学的に純粋である。その場合、光学的に純粋な化合物Iまたは光学的に純粋な化合物I−MsOHとなるであろう。一実施形態では、化合物IIIは(S)−化合物IIIである。別の実施形態では、化合物I−MsOHは(S)−化合物I−MsOHである。
【0137】
いくつかの実施形態では、化合物II−OHを開示の方法で合成し、それを、続く化合物I−MsOHの開示の合成方法で使用することにより、I−MsOH−A、I−MsOH−B、I−MsOH−C、I−MsOH−D、I−MsOH−E、I−MsOH−F、I−MsOH−G、II−OH、III、VI、VII、VIII、IX、及びMsOHから生じるメシル酸エステルといった各化合物を実質的に含まない、高純度の化合物I−MsOHとなる。いくつかの実施形態では、例えば、開示の方法によって合成した、本明細書に開示する化合物I−MsOHは純度>96%となるであろう。他の実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、本明細書に開示する化合物I−MsOHは純度>97%となるであろう。一実施形態では、例えば、開示の方法によって合成した、本明細書に開示する化合物I−MsOHは純度>98%となるであろう。別の実施形態では、例えば、開示の方法によって合成した、本明細書に開示する化合物I−MsOHは純度>99%となるであろう。
【0138】
いくつかの実施形態では、化合物II−OHを開示の方法で合成し、それを、続く化合物I−MsOHの開示の合成方法で使用することにより、(R)−化合物I−MsOH、
(I−MsOH−A、I−MsOH−B、I−MsOH−C、I−MsOH−D、I−MsOH−E、I−MsOH−F、I−MsOH−G)のR型もしくはS型、II−OH、III、VI、VII、VIII、IX、及びMsOHから生じるメシル酸エステルを実質的に含まない、高純度の(S)−化合物I−MsOHとなる。いくつかの実施形態では、例えば、開示の方法で合成した、本明細書に開示する(S)−化合物I−MsOHの純度は>96%となるであろう。他の実施形態では、例えば、開示の方法で合成した、本明細書に開示する(S)−化合物I−MsOHの純度は>97%となるであろう。一実施形態では、例えば、開示の方法で合成した、本明細書に開示する(S)−化合物I−MsOHの純度は>98%となるであろう。別の実施形態では、例えば、開示の方法で合成した、本明細書に開示する(S)−化合物I−MsOHの純度は>99%となるであろう。
【0139】
他の実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHは化合物I−MsOH−A、I−MsOH−B、I−MsOH−C、I−MsOH−F、I−MsOH−G、VII、VIII、及びIXなどの各不純物を≦0.2%含有するであろう。他の実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHはI−MsOH−D及び化合物II−OHなどの各不純物を≦1.0%、≦0.8%、≦0.6%、または≦0.4%含有するであろう。他の実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHは化合物IIIを≦1,500ppm含有するであろう。別の実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHは化合物I−MsOH−C、I−MsOH−E、及びI−MsOH−Fなどの各不純物を≦0.3%含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHは、MsOHから生じるメシル酸エステルを≦0.002%(20ppm)含有するであろう。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHは、用量150mgあたり≦0.002%(20ppm)のメシル酸エステルを含有する。いくつかの実施形態では、化合物I−MsOHは、用量150mgあたり≦15ppmのメシル酸エステルを含有する。一実施形態では、化合物I−MsOHは、用量150mgあたり≦0.001%(10ppm)のメシル酸エステルを含有する。
【0140】
他の実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHは、化合物I−MsOH−A、I−MsOH−B、I−MsOH−C、I−MsOH−F、I−MsOH−G、VII、VIII、及びIXなどの各不純物を≦0.3%含有するであろう。他の実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHは、I−MsOH−D及び化合物II−OHなどの各不純物を≦0.5%含有するであろう。他の実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHは、化合物IIIを≦1,000ppm含有するであろう。別の実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHは、化合物I−MsOH−C、I−MsOH−E、及びI−MsOH−F、VII、VIII、及びIXなどの各不純物を≦0.15%含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHは、MsOHから生じるメシル酸エステルを≦0.001%(10ppm)含有するであろう。
【0141】
他の実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHは、化合物I−MsOH−A、I−MsOH−B、I−MsOH−C、I−MsOH−F、I−MsOH−G、VII、VIII、及びIXなどの各不純物を≦0.05%含有するであろう。他の実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHは、化合物I−MsOH−D及び化合物II−OHなどの各不純物を≦0.30%含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHは、I−MsOH−A、I−MsOH−B、I−MsOH−C、I−MsOH−F、I−MsOH−G、VII、VIII、及びIXなどの各不純物を≦0.1%含有するであろう。他の実施形態では、例えば開示の方法によって合成した、化合物I−MsOHは、
化合物I−MsOH−D及び化合物II−OHなどの各不純物を≦0.15%含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、(R)−化合物I−MsOHを≦1.0%含有するであろう。別の実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、(R)−化合物I−MsOHを≦0.5%含有するであろう。一実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、(R)−化合物I−MsOHを≦0.25%含有するであろう。一実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、(R)−化合物I−MsOHを≦0.20%含有するであろう。
【0142】
いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、米国薬局方(USP)<921>、方法1Cで測定した場合に、≦5.0%w/wの水分を含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<921>、方法1Cで測定した場合に、≦2.5%w/wの水分を含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<921>、方法1Cで測定した場合に、≦2.0%w/wの水分を含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<921>、方法1Cで測定した場合に、≦1.0%w/wの水分を含有するであろう。
【0143】
いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、メタンスルホン酸を≦20%w/w含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、メタンスルホン酸を≦15%w/w含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、メタンスルホン酸を≦13%w/w含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、メタンスルホン酸を約5%〜約15%w/w含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、メタンスルホン酸を約11%〜約13%w/w含有するであろう。
【0144】
いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、残留溶媒としてアセトニトリルを≦500ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、残留溶媒としてアセトニトリルを≦425ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、残留溶媒としてアセトニトリルを≦410ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、残留溶媒としてアセトニトリルを≦350ppm含有するであろう。
【0145】
いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、残留溶媒として酢酸エチルを≦7500ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、残留溶媒として酢酸エチルを≦5000ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、残留溶媒として酢酸エチルを≦4000ppm含有するであろう。
【0146】
いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、残留溶媒としてピリジンを≦300ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、残留溶媒としてピリジンを≦200ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、残留溶媒としてピリジンを≦100ppm含
有するであろう。
【0147】
いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、残留溶媒としてジクロロメタンを≦750ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、残留溶媒としてジクロロメタンを≦600ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、残留溶媒としてジクロロメタンを≦500ppm含有するであろう。
【0148】
いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合の金属不純物のカドミウムを≦1.0ppm、及び/または鉛を≦1.0ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合の金属不純物のカドミウムを≦0.5ppm、及び/または鉛を≦0.5ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合の金属不純物のカドミウムを≦0.25ppm、及び/または鉛を≦0.25ppm含有するであろう。
【0149】
いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のヒ素を≦2.0ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のヒ素を≦1.5ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のヒ素を≦1.0ppm含有するであろう。
【0150】
いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合の金属不純物の水銀を≦10.0ppm、及び/またはコバルトを≦10.0ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合の金属不純物の水銀を≦5.0ppm、及び/またはコバルトを≦5.0ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合の金属不純物の水銀を≦3.0ppm、及び/またはコバルトを≦2.5ppm含有するであろう。一実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物の水銀を≦2.0ppm含有するであろう。一実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のコバルトを≦2.0ppm含有するであろう。
【0151】
いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合の金属不純物のバナジウムを≦20.0ppm、及び/またはパラジウムを≦20.0ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合の金属不純物のバナジウムを≦10.0ppm、及び/またはパラジウムを≦10.0ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合の金属不純物のバナジウムを≦5.0ppm、及び/またはパラジウムを≦5.0ppm含有するであろう。
【0152】
いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOH
は、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のニッケルを≦30.0ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のニッケルを≦20.0ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のニッケルを≦10.0ppm含有するであろう。
【0153】
いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のクロミウムを≦1500ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のクロミウムを≦1250ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のクロミウムを≦1100ppm含有するであろう。一実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のクロミウムを≦1000ppm含有するであろう。
【0154】
いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のモリブデンを≦500ppm含有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のモリブデンを≦300ppm含有するであろう。一実施形態では、例えば開示の方法で合成した、(S)−化合物I−MsOHは、USP<232>により測定した場合に、金属不純物のモリブデンを≦250ppm含有するであろう。
【実施例】
【0155】
特に明記しない限り、化合物の純度は、標準的HPLC分析を使用して評価されたものである。例えば、サイズが4.6cm×150cm、5ミクロンのCapcellpak C18カラム(資生堂)を、PDA290nm検出器と共に使用した。カラム温度を40℃に設定し、2つの移動相は、A:水に溶解させた100%0.05M NH
4OAc、及びB:100%アセトニトリルとした。流量を1.0mL/分に設定し、試料あたりのランタイムを45〜60分とした。注入量は10μLであった。異なる系において、Clark装置をPDA293nm検出器と共に使用した。注入量は20μL、またランタイムは試料あたりの120分であった。
【0156】
実施例1:Pd(PPh
3)
4系を用いた鈴木カップリングの最適化
【0157】
表1には、Pd(PPh
3)
4触媒系を使用した化合物IVと化合物V−OMeの鈴木カップリング反応の最適化への取組みが記載されている。表1に表される反応では、化合物IV(5g、1当量)、化合物V−OMe(2当量)、及び塩基(6.3当量)を溶媒(化合物IVに対するv/w比)に溶解させて使用し、加熱還流させた。この一連の実験から、Pd(PPh
3)
4系を使用して反応条件をさまざまに変えることにより不純物である化合物VIIIがいくらか減少することが示されたが、生成物の再結晶の停止または失敗がほとんどの条件下で観察された。
【表1】
【0158】
実施例2:Pd触媒系を用いた鈴木カップリングの最適化
【0159】
表2に、Pd(PPh
3)
4触媒系を使用した化合物IVと化合物V−OMeの鈴木カップリング反応の最適化への取組みを概説する。表2に表される反応では、化合物IV(5g、1当量)、化合物V−OMe(2当量)、及び塩基(6.3当量)を溶媒(化合物IVに対するv/w比)に溶解させて使用し、加熱還流させた。表2の結果によると、Pd(OAc)
2/P(o−tol)
3系では有意に少ない触媒、有意に少ないホスフィン配位子を使用しているが、脱気をせずとも停止が観察されることなく全体的に常に2時間以内に完了まで進行した。Pd(OAc)
2/P(o−tol)
3触媒系では、元のPd(PPh
3)
4触媒系に比べて化合物II−OHが高収率及び高純度(>99%)で生成した。その上、この一連の実験は、Pd(PPh
3)
4系の場合と比べ、反応条件をさまざまに変えても不純物である化合物VIIIは有意に減少しなかったことも示している。
【表2】
1別個の2試験の結果を示す。
2化合物II−OHを洗浄した。
【0160】
実施例3:化合物II−OHの合成
【0161】
マグネシウム(0.185kg、2.15当量)に対し無水テトラヒドロフラン(THF、9部)を加え、溶液を1時間撹拌した。溶液の総容量が約3部になるまでTHFを蒸留によって除去した。その溶液に対し、未希釈の化合物VI(0.775kg、0.4当量)を加え、溶液を約66℃まで2時間加熱した。反応を約55℃まで冷却して、さらなる無水THF(5部)を加えた。その熱溶液に対し、未希釈の化合物VI(1.163kg、1.6当量)を1時間かけて加え、混合物を約55℃で約4時間撹拌してグリニャール試薬を生成させる。HPLC分析によって残存する化合物VIが約1%未満であること
が示された後、反応混合物を約−25℃まで冷却した。冷却した反応混合物に対し、未希釈のトリメトキシボラン(0.739kg、2.0当量)を2時間かけて分割添加した。得られた混合物を−25℃で1時間撹拌した後、約20℃まで加温して1時間撹拌し、化合物V−OMeを得た。
【0162】
化合物V−OMeを含有している反応混合物に対し、水(25mL)に溶解させた炭酸カリウム(3.64kg、6.25当量)の溶液を1時間かけて分割添加した。二相性溶液を窒素で1時間脱気した後、脱気を継続しながら酢酸パラジウム(0.002kg、0.0025当量)及びトリ−O−トリルホスフィン(0.0054kg、0.0050当量)を加えた。続いて、脱気を継続しながら化合物IV(1.200kg、1.0当量)を加えた。得られた反応混合物を、65℃以下で4時間、またはHPLC分析によって残存化合物IVが≦2%であることが示されるまで撹拌した。反応が完了したと見なされた後、反応物を室温まで冷却した。
【0163】
反応混合物は、pHが約2.0〜3.0に調整されるまで塩酸水溶液を使用して酸性化させた。一旦酸性化させたら、各層は分離させ、トルエン(10部)で水層を抽出した。混成有機層を蒸留して容量を約6.5部とし、その後、セライト(登録商標)(0.6w/w、0.720kg)及びDraco KBG(0.3w/w、0.360kg、木炭)を加えて約20℃で3時間撹拌した。木炭とセライト(登録商標)をろ過によって除去し、ろ液を減圧下で濃縮して容量約3部とした。
【0164】
減量した溶液に対し、イソプロパノール(5部)を加え、混合物を容量3部まで再び濃縮した。得られる油に対し、ヘプタン(12部)を1時間かけて分割添加した。得られた懸濁液を約20℃で6時間撹拌し、ろ過によって結晶を捕集した。
【0165】
次いで、ろ過して捕集した粗結晶を酢酸エチル(0.4部)及びイソプロパノール(3.6部)に70℃で溶解させた。溶液温度を温度20℃になるまで1時間毎に10℃ずつ低下させた。溶液を20℃で4時間撹拌し、ろ過によって結晶を捕集し、ヘプタンで洗浄した。化合物II−OHを乾燥させて0.938kgの黄色固体(収率58.5%、純度99.42%)を得た。
【0166】
HPLC純度測定法:
カラム:Capcellpak C18、資生堂、4.6x150cm、5ミクロン
検出器波長:PDA290nm
カラム温度:40℃
移動相:A:100%0.05M NH
40Ac含有水
B:100%ACN
流量:1.0mL/分
ランタイム:45分。注入量:10μL
勾配表:
【表3】
化合物VI=8.3分
化合物V=2.3〜2.6分(3種混合物:化合物V−(OMe)2、
化合物V−(OMe)(Ar1)、及び化合物V−(Ar1)(Ar2))
化合物IV=3.0分
化合物II−OH=8.3分;純度=99.42%。
【0167】
実施例4:化合物I−MsOHの合成
【0168】
化合物II−OH(34.7kg、1.0当量)をジクロロメタン(5部)に溶解させ、約10〜15℃まで冷却した。未希釈の塩化チオニル(10.1kg、1.10当量)を10分かけて分割添加し、混合物を約10〜15℃で3時間撹拌した。HPLC分析によって残存する化合物II−OHが≦3%であることが示された後、反応混合物を0℃まで冷却した。(S)−化合物III(21.2kg、1.05当量)及びピリジン(21.3kg、3.5当量)をジクロロメタン(6部)に溶解させた溶液を別個に調製し、0℃まで冷却した。(S)−化合物IIIの溶液に対し、酸塩化物溶液を0℃でゆっくり加え、5時間撹拌した。
【0169】
HPLC分析によって化合物II−Clが≦0.5%であることが示され、反応が完了したら、クエン酸(27.7kg、1.7当量)を水(10部)に溶解させた冷却溶液を内部温度を0℃に維持しながら30分かけて加えた。ジクロロメタンを減圧下で除去して総容量約13部とし、その後、酢酸エチル(5部)を加え、容量を再び約13部まで加圧下で減量する。得られる残渣を酢酸エチル(10部)で抽出し、炭酸水素ナトリウム(41.7kg、6.45当量)を水(10部)に溶解させた水溶液で有機層を洗浄し、かかる洗浄を繰り返した。有機層をさらに塩水(10部)で洗浄した。
【0170】
得られる有機層に対し、3Å粉末モレキュラーシーブス(100%w/w、34.8kg)を加え、スラリーを20時間撹拌した後ろ過した。ろ滓を酢酸エチル(2部)で洗浄した。化合物Iを含有している乾燥有機層をHPLCで分析し、存在量を決定した。溶液に対し、アセトニトリル(4部)を加えた後、メタンスルホン酸(6.9kg、1.01当量)を1回で加えた。酢酸エチル(1部)を使用してメタンスルホン酸をもれなく移した。混合物を20℃で約30分撹拌した。
【0171】
その後、反応混合物に(S)−化合物I−MsOHを用いて種結晶を入れ、混合物を2
0℃で8時間撹拌した。析出した結晶をろ過によって捕集し、冷却した酢酸エチル(1部)で洗浄した。粗結晶をアセトニトリル(10部)に70℃で溶解させ、溶液を50〜55℃まで1時間かけて冷却し、(S)−化合物I−MsOHを用いて種結晶を入れた。溶液を50〜55℃で6時間撹拌し、その後、1時間かけて20℃まで冷却した後、8時間撹拌した。析出した結晶をろ過によって捕集し、冷却したアセトニトリルで2回(各回2.5部)洗浄した。結晶を乾燥させ、47.72kgの(S)−化合物I−MsOHを澄明な黄色の固体として得た(収率78%、純度99.10%)。その後、乾燥させた結晶を粉砕ミル及びジェットミルによって粉砕し、最終生成組成物を得た。
【0172】
上記の説明は例示的な実施形態及び例を代表しているに過ぎないことを理解されるべきである。読者の便宜のために、上記の説明は、本開示の原理を教示するあらゆる可能な実施形態、例のうち代表的な限定数の例に焦点を当てている。本記載は、可能なあらゆる変形、さらにはそれら記載の変形の組合わせすべてをもれなく列挙することは意図していない。本開示の特定の部分の代替的実施形態が提示されていない場合があること、またはある部分の未記載のさらなる代替的実施形態が利用可能な場合があることによって、それらの代替的実施形態を放棄すると見なされるべきではない。当業者は、それら多くの未記載の実施形態には、本開示の原理を適用する上での相違ではなく、むしろ技術及び材料に相違があることを理解するであろう。したがって、本開示は、以下の請求項に記載の範囲より狭く限定することを意図するものではない。
【0173】
HPLC純度測定法:
カラム:Capcellpak C18、資生堂、4.6x150cm、5ミクロン
検出器波長:PDA290nm
カラム温度:40℃
移動相:A:水に溶解させた100%0.05M NH
4OAc
B:100%ACN
流量:1.0mL/分
ランタイム:60分
注入量:10μL
勾配表:
【表4】
化合物II−OH=18.54分
化合物I/化合物I−MsOH=26.05
【0174】
参照による組み込み
本明細書で引用されている参考文献、論文、刊行物、特許、特許公開、及び特許出願はすべて、あらゆる目的のために参照によりその全体が組み込まれる。ただし、本明細書で引用されているいかなる参考文献、論文、刊行物、特許、特許公開、及び特許出願への言及も、先行する技術を有効とする、もしくは世界の任意の国において共通した一般知識の一部をなすことを、認めるもの、または示唆するものとして捉えるべきではない。