【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による杭の施工管理システムの一態様は、
鋼管杭の上端がベースマシンのリーダーに沿って降下するオーガーに取り付けられ、該リーダーの下方に取り付けられている環状の振れ止め部材に前記鋼管杭が挿通されながら地盤に回転圧入される杭打ち機により、鋼管杭を施工する際に用いられる、杭の施工管理システムであって、
前記振れ止め部材の上、もしくは前記鋼管杭の周囲の地盤の上に固定されている二つのターゲットと、
前記二つのターゲットの位置を交互に計測する計測器と、
前記ベースマシンのオペレータもしくは施工管理者の有する携帯端末と、を有し、
前記携帯端末は、
前記計測器から送信される前記二つのターゲットの位置に関する計測データを受信する受信部と、
前記受信部から前記二つのターゲットの位置に関する計測データを読み出し、前記鋼管杭の杭芯位置を演算する演算部と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、振れ止め部材の上、もしくは鋼管杭の周囲の地盤の上に二つのターゲットが固定され、この二つのターゲットが計測器にて交互に計測される施工管理システムであることから、複雑な治具を必要としないシステムとなる。また、地盤の近傍にある振れ止め部材の上、もしくは地盤の上にある二つのターゲットの位置に関する計測データに基づいて、携帯端末にて鋼管杭の杭芯位置が演算されることから、回転圧入されている鋼管杭の杭芯位置を精度よく特定することができる。
【0013】
ここで、「計測器」は、ターゲットをレンズにて視準し、角度と距離を同時に計測する一般的なトータルステーションであってもよいし、トータルステーションがターゲットを自動的に視準する自動追尾機能を備えている、自動追尾型のトータルステーションであってもよい。また、「ターゲット」としては、反射プリズム等のプリズムが挙げられる。さらに、携帯端末は、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータなどを含んでいる。携帯端末は、ベースマシンの操縦席に載置され、杭打ち機のオペレータが携帯端末に表示されている演算結果を確認しながら鋼管杭の回転圧入を行ってもよいし、施工管理をしている施工管理者が携帯端末を有し、施工管理者が携帯端末に表示されている演算結果を確認してもよいし、オペレータと施工管理者の双方が携帯端末を有していてもよい。
【0014】
また、本発明による杭の施工管理システムの他の態様は、環状の治具を有し、該治具は二つの半割り治具を相互に接合することにより形成され、
前記半割り治具に前記ターゲットが固定され、
環状の前記治具の内側面には、鋼管杭に対して当接自在なローラが取り付けられており、
前記治具は前記振れ止め部材の上に、該振れ止め部材に対して相対移動自在に載置されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、振れ止め部材の上に二つのターゲットが固定されている形態において、二つの半割り治具が相互に接合されることにより形成される環状の治具の上にターゲットが固定され、治具の内側面においてローラが鋼管杭に当接自在に取り付けられていることにより、ターゲットが固定されている治具を回転姿勢の鋼管杭から縁切りしながら、鋼管杭の杭芯と環状の治具の中心を可及的に揃えることができる。例えば、振れ止め部材とその中を貫通する鋼管杭との間には、一般に10mm乃至20mm程度のクリアランスがある。そのため、振れ止め部材の上にターゲットを直接載置した場合、このクリアランスの中で移動し得る鋼管杭の杭芯と、振れ止め部材の中心との間には、このクリアランスに起因する誤差が生じ得る。そして、この鋼管杭の杭芯と振れ止め部材の中心の間の誤差は、携帯端末において計測データに基づいて演算される杭芯位置の精度に影響し得る。そこで、治具の内側面に鋼管杭に当接自在な複数のローラを取り付けておき、治具(のローラ)と鋼管杭の間のクリアランスを、0mm(複数のローラが全て鋼管杭に当接している状態)からせいぜい1,2mm程度とすることにより、治具と鋼管杭の間のクリアランスに起因する誤差を少なくすることができ、携帯端末において演算される杭芯位置の精度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明による杭の施工管理システムの他の態様は、環状の治具を有し、該治具は二つの半割り治具を相互に接合することにより形成され、
前記半割り治具に前記ターゲットが固定され、
環状の前記治具の内側面には、鋼管杭に対して当接自在なローラが取り付けられており、
前記治具は前記鋼管杭の周囲の地盤の上に載置されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、地盤の上に二つのターゲットが固定されている形態において、二つの半割り治具が相互に接合されることにより形成される環状の治具の内側面においてローラが鋼管杭に当接自在に取り付けられていることにより、ターゲットが固定されている治具を回転姿勢の鋼管杭から縁切りしながら、鋼管杭の杭芯と環状の治具の中心を可及的に揃えることができる。そのため、上記する振れ止め部材の上に二つのターゲットが固定されている形態と同様に、治具と鋼管杭の間のクリアランスに起因する誤差を少なくすることができ、携帯端末において演算される杭芯位置の精度を向上させることができる。
【0018】
また、本発明による杭の施工管理システムの他の態様は、前記治具の上面には、上方に突出して、前記二つのターゲットが固定される二つ以上のターゲット固定ピンが取り付けられ、そのうち、前記計測器から計測可能な位置にある二つの該ターゲット固定ピンが選定され、前記二つのターゲットが固定されていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、治具の上面に二つ以上のターゲット固定ピンが取り付けられ、計測器から計測可能な位置にある二つのターゲット固定ピンが選定されて二つのターゲットが固定されることにより、計測器の設置場所に対応しながら、二つのターゲットを計測器にて確実に視準することができる。
【0020】
また、本発明による杭の施工管理システムの他の態様において、前記振れ止め部材の上面には、上方に突出して、前記治具が固定される四つ以上の治具固定ピンが取り付けられ、
前記治具には、前記四つ以上の治具固定ピンにそれぞれ対応して該治具固定ピンよりも大寸法のピン孔が開設され、
前記ピン孔に対して前記治具固定ピンがクリアランスを有した状態で挿通されていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、治具の有するピン孔に対して、振れ止め部材の有する治具固定ピンがクリアランスをもった状態で挿通されて、振れ止め部材の上に治具が載置されていることにより、回転圧入される鋼管杭の水平変位に対して治具を追随させることができ、結果として、治具に固定されている二つのターゲットを追随させることができる。また、振れ止め部材は一般に、回動軸を介して回動自在に取り付けられている二つの半割り部材により形成されている。この二つの半割り部材の双方の上面に少なくとも二つずつ(合計で少なくとも四つ)の治具固定ピンを取り付けておき、治具を形成する二つの半割り治具には、二つ以上の治具固定ピンに対応する位置に二つ以上のピン孔を開設しておく。半割り治具が少なくとも二つの治具固定ピンにて振れ止め部材(を構成する半割り部材)に固定されることにより、振れ止め部材に対して半割り治具の相対位置を大きく変化させることなく(ピン孔と治具固定ピンの間のクリアランスでの相対変位のみ)、半割り治具を位置決めすることができる。そして、振れ止め部材を構成する半割り部材同士を繋ぐピンを外して、回動軸を中心に半割り部材を回動させて開き、鋼管杭から振れ止め部材を取り外す際には、半割り部材と同様に半割り治具も開いて治具が二つに分割される。
【0022】
また、本発明による杭の施工管理システムの他の態様において、前記携帯端末は格納部をさらに有し、
前記格納部には、前記鋼管杭の打設芯と前記二つのターゲットの間の二種類の距離に関するデータが予め格納されており、
前記演算部により、前記二つのターゲットの位置を中心とし、それぞれのターゲットに固有の前記距離を半径とする二つの円を作成し、該二つの円による二つの交点の一方が鋼管杭の杭芯位置として演算されることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、二つのターゲットの位置を中心とし、それぞれのターゲットに固有の距離(中心から打設芯(設計杭芯)までの距離)を半径とする二つの円を作成して二つの円による二つの交点を求め、そのうちの一方(計測器から遠い位置にある交点)を鋼管杭の杭芯位置とすることにより、杭芯位置を精度よく特定することができる。ここで、「二種類の距離」は、同じ距離(したがって二つの円の半径が同じ長さ)であってもよいし、異なる距離(したがって二つの円の半径が異なる長さ)であってもよいが、少なくとも二つの円が二点で交わるように双方の距離(半径)が設定される。
【0024】
また、本発明による杭の施工管理システムを構成する携帯端末の一態様は、
鋼管杭の上端がベースマシンのリーダーに沿って降下するオーガーに取り付けられ、該リーダーの下方に取り付けられている環状の振れ止め部材に前記鋼管杭が挿通されながら地盤に回転圧入される杭打ち機により、鋼管杭を施工する際に用いられる、杭の施工管理システムを構成する携帯端末であって、
前記杭の施工管理システムは、前記振れ止め部材の上、もしくは前記鋼管杭の周囲の地盤の上に固定されている二つのターゲットと、該二つのターゲットの位置を交互に計測する計測器と、を備えており、
前記携帯端末は、
前記計測器から送信される前記二つのターゲットの位置に関する計測データを受信する受信部と、
前記受信部から前記二つのターゲットの位置に関する計測データを読み出し、前記鋼管杭の杭芯位置を演算する演算部と、
前記演算部による演算結果を表示する表示部と、を備えていることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、携帯端末の有する表示部において、演算部にて演算された鋼管杭の杭芯位置を確認することができる。例えば、ベースマシンの操縦席に携帯端末が載置され、杭打ち機のオペレータは、表示部に表示されている演算結果を確認しながら鋼管杭の回転圧入を行うことができる。
【0026】
また、本発明による杭の施工管理システムを構成する携帯端末の他の態様において、前記表示部には、平面座標系が表示され、該平面座標系において許容杭芯誤差範囲が表示されるとともに、前記演算部にて演算された杭芯の位置が表示されることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、表示部に平面座標系(例えばX−Y平面座標)が表示され、この平面座標系において、許容杭芯誤差範囲が表示されるとともに、演算部にて演算された杭芯の位置が表示されることにより、杭打ち機のオペレータや施工管理者は、特定された杭芯が許容杭芯誤差範囲内にあることを確認しながら鋼管杭の施工を継続することができる。また、杭芯が許容杭芯誤差範囲から外れそうな場合には、回転圧入方向を臨機に調整することができる。さらに、杭芯が許容杭芯誤差範囲から外れている場合には、施工を速やかに中断して、正しい位置において鋼管杭の再打設を行うことができる。