【解決手段】太陽ローラ20と、複数の遊星ローラ30と、遊星ローラを保持するキャリア60と、遊星ローラの自転軸91よりも径方向外側に拡がるインタナルリング40、50と、インタナルリングの外周部を覆うケーシング100と、ケーシングとインタナルリングとの間に位置する回り止め部材110と、を有する。ケーシングは、周方向および軸方向の一部において、内周面から径方向外側へ凹むケーシング凹部101を有し、インタナルリングは、外周面から径方向内側へ凹むリング凹部400、500を有する。回り止め部材は、ケーシング凹部に位置する回り止め本体部と、回り止め本体部よりも径方向内側へ突出する回り止め突起部とを有し、回り止め突起部はリング凹部に嵌まる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、太陽ローラの回転軸と平行な方向を「軸方向」、回転軸に直交する方向を「径方向」、回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、上記の「直交する方向」は、略直交する方向も含む。また、以下では、説明の便宜上、
図2、
図3、
図6、および
図7中の右側を「入力側」、
図2、
図3、
図6、および
図7中の左側を「出力側」、とそれぞれ称する。
【0013】
<1.第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るトラクション減速機1および当該トラクション減速機1に接続されたモータ200の斜視図である。本発明のトラクション減速機1は、動力源である外部のモータ200から得られる第1回転数の回転運動を、第1回転数よりも低い第2回転数の回転運動に変換して、出力軸70を回転させる減速機である。トラクション減速機1は、モータ200のロータに取付板201を介して接続される。取付板201は、後述する太陽ローラ20の回転軸9に対して略垂直に配置されている。取付板201は、モータ200の外枠であるモータケーシングに固定される。本発明のトラクション減速機1は、例えば、プリンター等に搭載される部品等に使用される。
【0014】
図2は、本実施形態に係るトラクション減速機1の斜視断面図である。
図3は、本実施形態に係るトラクション減速機1の縦断面図である。なお、
図2では、太陽ローラ20を二点鎖線にて図示している。また、
図2では、後述する押圧部材90の図示を省略している。本実施形態のトラクション減速機1には、歯車を用いることなく、太陽ローラ20の外周面と複数の遊星ローラ30の外周面とを、互いに接触させながら回転させることで動力を伝達する、いわゆるトラクション型の遊星減速機構が用いられている。
図2および
図3に示すように、トラクション減速機1は、太陽ローラ20、複数の遊星ローラ30、第1インタナルリング40、第2インタナルリング50、キャリア60、出力軸70、出力軸受80、押圧部材90(
図3参照)、ケーシング100、および回り止め部材110を有する。
【0015】
太陽ローラ20は、回転軸9と同軸に配置された、円柱状の部材である。太陽ローラ20は、入力側(軸方向一方側)に位置するモータ200のロータに連結される。モータ200を駆動させると、太陽ローラ20は、回転軸9を中心として第1回転数で回転する。なお、本実施形態では、モータ200の出力シャフトが、太陽ローラ20となっている。このように、モータ200の出力シャフトと太陽ローラ20とを、単一の部品とすれば、トラクション減速機1の部品点数を削減できる。これにより、トラクション減速機1を軸方向に小型化し、かつ、コストを抑制できる。ただし、モータ200の出力シャフトとは別に、当該出力シャフトとともに回転する太陽ローラを設けてもよい。
【0016】
図4は、トラクション減速機1を入力側から見た平面図である。
図4に示すように、複数の遊星ローラ30は、太陽ローラ20の周囲に配置される。また、本実施形態では、太陽ローラ20の周囲に、3つの遊星ローラ30が周方向に等間隔に配置されている。3つの遊星ローラ30はそれぞれ、回転軸9と平行な自転軸91に沿って配置される。自転軸91は、各遊星ローラ30の中心を通る。
【0017】
各遊星ローラ30は、大径部301、第1小径部302、および第2小径部303を有する。大径部301、第1小径部302、および第2小径部303は、一繋がりに形成される。さらに、大径部301、第1小径部302、および第2小径部303は、それぞれ軸方向に見て自転軸91の周囲において同軸上で真円形状に拡がる。
【0018】
大径部301は、各遊星ローラ30における軸方向の中央部に位置する。大径部301の外径は、第1小径部302の外径および第2小径部303の外径よりも大きい。大径部301の一部は、各遊星ローラ30における最も径方向内側に位置する。大径部301の外周面である大径外周面61は、太陽ローラ20の外周面に接触して摩擦力を受ける。
【0019】
第1小径部302は、大径部301の入力側に隣接する。第1小径部302の外周面である第1小径外周面62の径は、大径外周面61の径よりも小さい。また、第1小径外周面62は、入力側(軸方向一方側)へ向かうにつれて縮径する。第2小径部303は、大径部301の出力側に隣接する。第2小径部303の外周面である第2小径外周面63の径は、大径外周面61の径よりも小さい。また、第2小径外周面63は、出力側(軸方向他方側)へ向かうにつれて縮径する。
【0020】
さらに、各遊星ローラ30には、貫通孔300が設けられている。貫通孔300は、自転軸91に沿って、各遊星ローラ30を軸方向に貫通する。各貫通孔300には、後述するキャリア60のキャリアピン602が挿入される。各遊星ローラ30は、キャリアピン602の周囲において、すべり軸受603を介して自転可能に支持される。
【0021】
第1インタナルリング40は、大径部301よりも入力側(軸方向一方側)、かつ、3つの遊星ローラ30の自転軸91よりも径方向外側において、回転軸9を中心として円環状に拡がる部材である。第1インタナルリング40は、軸方向に移動可能となっている。また、第1インタナルリング40の内周面の一部は、大径部301の入力側(軸方向一方側)において、第1小径部302の第1小径外周面62と接触する。上述のとおり、第1小径外周面62は、入力側へ向かうにつれて縮径する傾斜面である。これにより、径方向の幅を抑えつつ、第1インタナルリング40と遊星ローラ30とを接触させることができる。
【0022】
図2に示すように、第1インタナルリング40は、外周面から径方向内側へ凹む第1リング凹部400を有する。本実施形態の第1リング凹部400は、第1インタナルリング40を軸方向に貫通する。これにより、第1リング凹部400を容易に加工して形成することができる。ただし、第1リング凹部400は、第1インタナルリング40の軸方向の一部のみに設けられてもよい。また、第1インタナルリング40は、複数(本実施形態では、9つ)の収容部401を有する。各収容部401は、第1インタナルリング40の入力側の端面の一部から出力側へ凹む。
【0023】
第2インタナルリング50は、大径部301よりも出力側(軸方向他方側)、かつ、3つの遊星ローラ30の自転軸91よりも径方向外側において、回転軸9を中心として円環状に拡がる部材である。第2インタナルリング50の出力側には、ケーシング100が軸方向に隣接する。これにより、第2インタナルリング50は、ケーシング100に対して軸方向の位置が固定されている。また、第2インタナルリング50の内周面の一部は、大径部301の出力側(軸方向他方側)において、第2小径部303の第2小径外周面63と接触する。上述のとおり、第2小径外周面63は、出力側へ向かうにつれて縮径する傾斜面である。これにより、径方向の幅を抑えつつ、第2インタナルリング50と遊星ローラ30とを接触させることができる。
【0024】
図2に示すように、第2インタナルリング50は、外周面から径方向内側へ凹む第2リング凹部500を有する。本実施形態の第2リング凹部500は、第2インタナルリング50を軸方向に貫通する。これにより、第2リング凹部500を容易に加工して形成することができる。ただし、第2リング凹部500は、第2インタナルリング50の軸方向の一部のみに設けられてもよい。
【0025】
なお、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50は、それぞれ金属の切削加工によって形成される。これにより、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50における軸方向の厚みを容易かつ十分に確保することができる。この結果、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50の強度が高まり、より高い出力トルクを得られる構造にも対応することができる。ただし、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50は、それぞれ金属のプレス加工によって形成されてもよい。
【0026】
キャリア60は、3つの遊星ローラ30を保持する部材である。キャリア60は、キャリア本体601、キャリアピン602、およびすべり軸受603を有する。キャリア本体601は、回転軸9を中心として円環状に拡がる。キャリア本体601の入力側の端面には、軸方向に延びる3本のキャリアピン602がそれぞれ挿入され、接着、溶着、またはネジ止め等によって固定されている。また、キャリア60は、キャリア貫通孔600を有する。キャリア貫通孔600は、回転軸9の周囲においてキャリア60を軸方向に貫通する。
【0027】
出力軸70は、回転軸9に沿って出力側に延びる円柱状の部材である。出力軸70は、キャリア貫通孔600に、例えば、圧入されることで、キャリア60に固定される。これにより、トラクション減速機1における減速後の出力を、出力軸70を介して外部に取り出すことができる。ただし、出力軸70をキャリア60に固定する方法は、接着または溶着等であってもよい。
【0028】
出力軸受80は、第1出力軸受801と第2出力軸受802とを含む。第2出力軸受802は、第1出力軸受801よりも出力側に配置されている。第1出力軸受801および第2出力軸受802はそれぞれ、内輪と、複数のボールと、外輪とを有する。各内輪は、出力軸70の外周面に固定される。複数のボールは、各内輪と各外輪との間に介在し、周方向に沿って配列される。各外輪は、ケーシング100の内周面に固定される。これにより、出力軸70は、ケーシング100に対して、回転軸9を中心として回転可能に支持される。このように、本実施形態の第1出力軸受801および第2出力軸受802には、ボールベアリングが用いられる。ただし、ボールベアリングに代えて、ローラベアリング等の他方式の軸受が用いられてもよい。
【0029】
押圧部材90は、軸方向に伸縮する部材である。押圧部材90には、例えば、コイルばねが用いられる。
図3に示すように、押圧部材90は、上述の9つの収容部401のそれぞれに挿入され、第1インタナルリング40と取付板201との間に、自然長よりも軸方向に圧縮された状態で配置される。これにより、押圧部材90は、反発力によって、第1インタナルリング40に出力側へ向かう力を与える。
【0030】
上述したように、第1インタナルリング40は、遊星ローラ30の第1小径部302の傾斜面である第1小径外周面62と接触する。このため、第1インタナルリング40が出力側へ加圧されると、第1小径部302は、第1小径外周面62を介して、径方向内側に向けて押圧力を受ける。また、第1インタナルリング40が出力側へ加圧されると、同時に遊星ローラ30が第2インタナルリング50側へ加圧される。第2インタナルリング50は、遊星ローラ30の第2小径部303の傾斜面である第2小径外周面63と接触する。このため、第2小径部303は、第2小径外周面63を介して、径方向内側に向けて押圧力を受ける。この結果、遊星ローラ30を太陽ローラ20に確実に接触させることができる。
【0031】
ケーシング100は、太陽ローラ20、3つの遊星ローラ30、第1インタナルリング40、第2インタナルリング50、キャリア60、出力軸70の一部、出力軸受80、押圧部材90、および回り止め部材110を内部に収容する部材である。ケーシング100は、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50の外周部を覆う円筒状の内周面を有する。ケーシング100および後述する回り止め部材110はそれぞれ、例えば、樹脂の射出成型により形成される。ただし、ケーシング100および回り止め部材110は、金属の焼結により形成された焼結体であってもよい。
【0032】
図2に示すように、ケーシング100は、周方向の少なくとも一部の、入力側の端部を含む軸方向の少なくとも一部において、複数(本実施形態では、2つ)のケーシング凹部101を有する。ケーシング凹部101は、ケーシング100の内周面から径方向外側へ凹む凹部である。ただし、ケーシング100が有するケーシング凹部101の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0033】
回り止め部材110は、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50の径方向外側、かつ、ケーシング100の径方向内側に位置する部材である。
図5は、回り止め部材110の斜視図である。
図5に示すように、回り止め部材110は、回り止め本体部111、第1回り止め突起部112、および第2回り止め突起部113を有する。回り止め本体部111は、軸方向に柱状に延びる。第1回り止め突起部112は、回り止め本体部111よりも入力側に位置する。第2回り止め突起部113は、回り止め本体部111および第1回り止め突起部112よりも出力側に位置する。第1回り止め突起部112および第2回り止め突起部113は、回り止め本体部111よりも径方向内側へ突出する。
【0034】
なお、本実施形態では、2つの回り止め部材110が用いられる。ただし、回り止め部材110の数は、ケーシング凹部101の数に合わせて、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、回り止め部材110の構造は、これに限定されない。例えば、回り止め部材110は、回り止め本体部111および第1回り止め突起部112のみを有していてもよい。そして、第1インタナルリング40のみに、凹部である第1リング凹部400が設けられていてもよい。
【0035】
トラクション減速機1を組み立てる際、回り止め部材110は、入力側から、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50と、ケーシング100との径方向の間に挿入され、接着または溶着等によってケーシング100に固定される。その際、回り止め本体部111は、上述のケーシング凹部101に配置される。また、第1回り止め突起部112は第1リング凹部400に嵌まる。第2回り止め突起部113は第2リング凹部500に嵌まる。これにより、第1インタナルリング40の軸方向の移動を可能としつつ、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50がケーシング100に対して周方向に相対回転することを防止できる。この結果、遊星ローラ30、キャリア60、および出力軸70の回転が安定する。なお、回り止め部材110が挿入された状態において、回り止め本体部111の径方向内側の面は、遊星ローラ30の大径外周面61よりも径方向外側に位置する。これにより、遊星ローラ30の大径外周面61と回り止め本体部111との間に間隙が形成される。この結果、遊星ローラ30と回り止め部材110との接触を防止できる。
【0036】
なお、本実施形態の第1回り止め突起部112の軸方向の長さは、第2回り止め突起部113の軸方向の長さよりも長い。上述のとおり、第1インタナルリング40の複数の収容部401には、それぞれ押圧部材90が軸方向に挿入される。押圧部材90および回り止め部材110はそれぞれ、上述の取付板201の出力側に隣接する。このため、第1回り止め突起部112の軸方向の長さをより長く設けることによって、第1回り止め突起部112と平行に、押圧部材90を配置するスペースを十分に確保することができる。また、押圧部材90によって第1インタナルリング40が軸方向に変位した場合でも、第1リング凹部400に第1回り止め突起部112が嵌まった状態を維持できる。
【0037】
上述のとおり、本実施形態の第1インタナルリング40および第2インタナルリング50は、それぞれ金属の切削加工によって形成される。このため、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50に突起部を高精度に設けることは難しい。このため、本実施形態では、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50には凹部(第1リング凹部400および第2リング凹部500)を設ける。また、上述のとおり、ケーシング100は、金型を用いて樹脂の射出成型により形成する。ケーシング100は、トラクション減速機1の外周部を周方向全体に亘って形成し、かつ、トラクション減速機1の各部を収容するための複雑な形状を有する。このため、ケーシング100自体に新たに突起部を設けることは難しい。そこで、本実施形態では、ケーシング100とは別体として形成される回り止め部材110に突起部(第1回り止め突起部112および第2回り止め突起部113)を設ける。そして、トラクション減速機1を組み立てる際、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50と、ケーシング100との径方向の間に、回り止め部材110を挿入して、回り止め部材110側の突起部をリング側の凹部に嵌める構成とする。これにより、突起部を高精度に形成でき、かつ、ケーシング100を含むトラクション減速機1全体を容易に組み立てることができる。
【0038】
3つの遊星ローラ30はそれぞれ、太陽ローラ20、第1インタナルリング40、および第2インタナルリング50と、常に接触する。そして、太陽ローラ20と遊星ローラ30との間には図示を省略した潤滑剤(トラクションオイル)が介在する。これにより、太陽ローラ20と遊星ローラ30との間にはトラクションが発生する。モータ200の駆動力により、太陽ローラ20が回転軸9を中心として回転すると、3つの遊星ローラ30はそれぞれ、太陽ローラ20からの動力を受け、太陽ローラ20との間のトラクションによって自転軸91を中心として自転する。また、遊星ローラ30と、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50との間には図示を省略した潤滑剤(トラクションオイル)が介在する。これにより、遊星ローラ30と、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50との間には、トラクションが発生する。3つの遊星ローラ30はそれぞれ、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50との間のトラクションにより、第1インタナルリング40および第2インタナルリング50に沿って、回転軸9を中心として公転する。このとき、遊星ローラ30の公転の回転数は、第1回転数よりも低い第2回転数となる。
【0039】
3つの遊星ローラ30が減速後の第2回転数で公転すると、それに伴い、キャリア60も、回転軸9を中心として、第2回転数で回転する。また、キャリア60が回転すると、キャリア60に固定された出力軸70も、回転軸9を中心として、第2回転数で回転する。これにより、モータ200の第1回転数の回転運動は、第1回転数よりも低い第2回転数の回転運動に変換されて、出力軸70に出力される。
【0040】
さらに、本実施形態の遊星ローラ30は、径の大きい大径外周面61において入力側の太陽ローラ20と接触して自転し、径の小さい第1小径外周面62および第2小径外周面63において第1インタナルリング40および第2インタナルリング50と接触することによって、公転する。このため、遊星ローラ30が大径部301のみを有し、大径外周面61においてインタナルリングに接触する場合に比べて、公転の回転数がさらに低くなる。このように、本実施形態では、大径部と小径部とを有する遊星ローラ30を用いることによって、1台の減速機でより高い減速比を得ることができる。
【0041】
<2.第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態に係るトラクション減速機1Bの斜視断面図である。
図7は、第2実施形態に係るトラクション減速機1Bの縦断面図である。なお、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。
【0042】
図6および
図7に示すように、本実施形態のトラクション減速機1Bは、太陽ローラ20B、複数の遊星ローラ30B、第1インタナルリング40B、第2インタナルリング50B、キャリア60B、出力軸70B、押圧部材90B、ケーシング100B、および回り止め部材110Bを有する。なお、本実施形態の太陽ローラ20Bおよび出力軸70Bは、第1実施形態の太陽ローラ20および出力軸70と同等の構成を有するため、重複説明を省略する。
【0043】
図8は、トラクション減速機1Bの、
図7のA−A断面図である。
図9は、トラクション減速機1Bの、
図7のB−B断面図である。
図8および
図9に示すように、複数の遊星ローラ30Bは、太陽ローラ20Bの周囲に配置される。また、本実施形態では、太陽ローラ20Bの周囲に、3つの遊星ローラ30Bが周方向に等間隔に配置されている。3つの遊星ローラ30Bはそれぞれ、回転軸9Bと平行な自転軸91Bに沿って配置される。自転軸91Bは、各遊星ローラ30Bの中心を通る。
【0044】
各遊星ローラ30Bは、大径部301B、第1小径部302B、および第2小径部303Bを有する。大径部301Bの外径は、第1小径部302Bの外径および第2小径部303Bの外径よりも大きい。大径部301Bの一部は、各遊星ローラ30Bにおける最も径方向内側に位置する。大径部301Bの外周面である大径外周面61Bは、太陽ローラ20Bの外周面に接触して摩擦力を受ける。
【0045】
第1小径部302Bは、大径部301Bの入力側に隣接する。第1小径部302Bの外周面である第1小径外周面62Bの径は、大径外周面61Bの径よりも小さい。また、第1小径外周面62Bの入力側の一部は、入力側(軸方向一方側)へ向かうにつれて縮径する傾斜面となっている。第1インタナルリング40Bの内周面は、第1小径部302Bの当該傾斜面と接触する。第2小径部303Bは、大径部301Bの出力側に隣接する。第2小径部303Bの外周面である第2小径外周面63Bの径は、大径外周面61Bの径よりも小さい。また、第2小径外周面63Bの出力側の一部は、出力側(軸方向他方側)へ向かうにつれて縮径する傾斜面となっている。第2インタナルリング50Bの内周面は、第2小径外周面63Bの当該傾斜面と接触する。
【0046】
第1インタナルリング40Bは、第1実施形態の第1インタナルリング40と同等の構成を有する。ただし、第1インタナルリング40Bには、第1実施形態の第1インタナルリング40とは異なり、第1リング凹部400に相当する部位は設けられていない。また、第1インタナルリング40Bには、第1実施形態の第1インタナルリング40とは異なり、押圧部材90を収容するための収容部401に相当する部位は設けられていない。第1インタナルリング40Bの入力側には、モータ200Bの取付板201Bが軸方向に隣接する。これにより、第1インタナルリング40Bは、ケーシング100Bに対して軸方向の位置が固定されている。さらに、第1インタナルリング40Bは、外周面の一部に平面部402Bを有する。平面部402Bは、外周面の一部分が径方向内側に凹むことによって形成された、表面が平面の部位である。平面部402Bは、径方向に対して垂直に広がる。
【0047】
第2インタナルリング50Bは、第1実施形態の第2インタナルリング50と同等の構成を有する。ただし、第2インタナルリング50Bには、第1実施形態の第2インタナルリング50とは異なり、第2リング凹部500に相当する部位は設けられていない。また、第2インタナルリング50Bは、軸方向に移動可能となっている。さらに、第2インタナルリング50Bは、外周面の一部に平面部501Bを有する。平面部501Bは、外周面の一部分が径方向内側に凹むことによって形成された、表面が平面の部位である。平面部501Bは、径方向に対して垂直に広がる。
【0048】
キャリア60Bは、3つの遊星ローラ30Bを保持する部材である。
図6〜
図9に示すように、本実施形態のキャリア60Bは、複数の収容部604Bを有する。複数の収容部604Bは、回転軸9Bを中心とする周方向に配列され、各々が径方向外側へ向けて開いている。そして、複数の遊星ローラ30Bの大径部301Bの一部、第1小径部302B、および第2小径部303Bはそれぞれ、収容部604Bに収容される。このため、トラクション減速機1を組み立てる際、遊星ローラ30Bをキャリア60Bの収容部604Bに対して径方向外側から挿入できる。これにより、トラクション減速機1の組立作業が容易となる。
【0049】
また、キャリア60Bは、遊星ローラ30Bの第1小径外周面62Bおよび第2小径外周面63Bと対向する接触面64Bを有する(
図9参照)。第1小径外周面62Bおよび第2小径外周面63Bのうち、遊星ローラ30Bの公転の回転方向前側に位置する面の少なくとも一部と、接触面64Bとは、周方向に接触する。すなわち、接触面64Bと、第1小径外周面62Bおよび第2小径外周面63Bの少なくとも一部とは、回転軸9Bを中心とする周方向に接触する。これにより、各遊星ローラ30Bは、太陽ローラ20Bの周囲で、自転可能に支持される。また、各遊星ローラ30Bの公転に伴い、キャリア60Bが回転軸9Bを中心として回転する。このように、遊星ローラ30Bの一部である第1小径部302Bおよび第2小径部303Bが、キャリア60Bによって支持される。このため、キャリアピンのような部材を別途設ける必要がなくなる。その結果、部品点数を減らして、トラクション減速機1Bを小型化できる。また、トラクション減速機1Bの組み立てが、さらに容易となる。
【0050】
さらに、キャリア60Bは、キャリア凹部605Bを有する。キャリア凹部605Bは、回転軸9Bの周囲において、キャリア60Bの出力側の端面の一部から入力側へ凹む。出力軸70Bは、キャリア凹部605Bに、例えば、圧入されることで、キャリア60Bに固定される。
【0051】
押圧部材90Bは、第1実施形態の押圧部材90と同等の構造を有する。
図6および
図7に示すように、押圧部材90Bは、後述するケーシング100Bのキャリア軸受180B付近の部位と第2インタナルリング50Bとの軸方向の間に、自然長よりも軸方向に圧縮された状態で配置される。これにより、押圧部材90Bは、反発力によって、第2インタナルリング50Bに入力側へ向かう力を与える。
【0052】
上述したように、第2インタナルリング50Bは、遊星ローラ30Bの第2小径部303Bの傾斜面である第2小径外周面63Bと接触する。このため、第2インタナルリング50Bが入力側へ加圧されると、第2小径部303Bは、第2小径外周面63Bを介して、径方向内側に向けて押圧力を受ける。また、第2インタナルリング50Bが入力側へ加圧されると、同時に遊星ローラ30Bが第1インタナルリング40B側へ加圧される。第1インタナルリング40Bは、遊星ローラ30Bの第1小径部302Bの傾斜面である第1小径外周面62Bと接触する。このため、第1小径部302Bは、第1小径外周面62Bを介して、径方向内側に向けて押圧力を受ける。この結果、遊星ローラ30Bを太陽ローラ20Bに確実に接触させることができる。
【0053】
ケーシング100Bは、太陽ローラ20B、3つの遊星ローラ30B、第1インタナルリング40B、第2インタナルリング50B、キャリア60B、出力軸70Bの一部、押圧部材90B、および回り止め部材110Bを内部に収容する部材である。ケーシング100Bの出力側かつ径方向内側の部位には、キャリア軸受180Bが形成されている。キャリア軸受180Bは、回転軸9Bを中心にキャリア60Bを回転可能に支持する。キャリア軸受180Bは、キャリア60Bの外周面の少なくとも一部と径方向に接触する。さらに、キャリア軸受180Bは、キャリア60Bの出力側の端面と軸方向に接触する。これにより、キャリア60Bは、径方向および軸方向の移動が規制され、安定的に保持される。
【0054】
また、ケーシング100Bは、周方向の少なくとも一部の、入力側の端部を含む軸方向の少なくとも一部において、複数(本実施形態では、2つ)のケーシング凹部101Bを有する。ケーシング凹部101Bは、ケーシング100Bの内周面から径方向外側へ凹む凹部である。ただし、ケーシング100Bが有するケーシング凹部101Bの数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0055】
回り止め部材110Bは、第1インタナルリング40Bおよび第2インタナルリング50Bの径方向外側、かつ、ケーシング100Bの径方向内側に位置する部材である。
図10は、回り止め部材110Bの斜視図である。
図10に示すように、回り止め部材110Bは、回り止め本体部111B、第1回り止め突起部112B、および第2回り止め突起部113Bを有する。回り止め本体部111Bは、軸方向に柱状に延びる。第1回り止め突起部112Bは、回り止め本体部111Bよりも入力側に位置する。第2回り止め突起部113Bは、回り止め本体部111Bおよび第1回り止め突起部112Bよりも出力側に位置する。第1回り止め突起部112Bおよび第2回り止め突起部113Bは、回り止め本体部111Bよりも径方向内側へ突出する。なお、回り止め部材110Bの径方向内側の面の一部分が曲面等の非真円となるように形成され、第1インタナルリング40Bおよび第2インタナルリング50Bの外周面の一部分が上述の平面ではなく、当該回り止め部材110Bの径方向内側の面の形状に対応するように、曲面等の非真円となるように形成されていてもよい。
【0056】
トラクション減速機1Bを組み立てる際、回り止め部材110Bは、入力側から、第1インタナルリング40Bおよび第2インタナルリング50Bと、ケーシング100Bとの径方向の間に挿入され、接着または溶着等によってケーシング100Bに固定される。その際、回り止め本体部111Bは、上述のケーシング凹部101Bに配置される。また、第1回り止め突起部112Bは、第1インタナルリング40Bの平面部402Bに接触する。第2回り止め突起部113Bは、第2インタナルリング50Bの平面部501Bに接触する。これにより、第2インタナルリング50Bの軸方向の移動を可能としつつ、第1インタナルリング40Bおよび第2インタナルリング50Bがケーシング100Bに対して周方向に相対回転することを防止できる。この結果、遊星ローラ30B、キャリア60B、および出力軸70Bの回転が安定する。なお、第1回り止め突起部112Bと平面部402Bとの間、および第2回り止め突起部113Bと平面部501Bとの間には、グリースが介在してもよい。また、本実施形態では、回り止め部材110Bが挿入された状態において、回り止め本体部111Bの径方向内側の面は、遊星ローラ30Bの大径外周面61Bよりも径方向外側に位置する。これにより、遊星ローラ30Bの大径外周面61Bと回り止め本体部111Bとの間に間隙が形成される。この結果、遊星ローラ30Bと回り止め部材110Bとの接触を防止できる。
【0057】
さらに、
図8〜
図10に示すように、本実施形態の第1回り止め突起部112Bおよび第2回り止め突起部113Bの周方向の幅は、それぞれ径方向内側へ向かうにつれて縮小する。これにより、第1回り止め突起部112Bおよび第2回り止め突起部113Bのズレ、ガタツキ、または外れを抑制できる。このため、第1回り止め突起部112Bと第1インタナルリング40Bの平面部402Bとの接触状態、および第2回り止め突起部113Bと第2インタナルリング50Bの平面部501Bとの接触状態をより確実に維持できる。この結果、第1インタナルリング40Bおよび第2インタナルリング50Bがケーシング100Bに対して周方向に相対回転することを、より確実に防止できる。
【0058】
ただし、ケーシング凹部101Bおよび回り止め部材110Bの形状は、上記の形状には限定されない。例えば、ケーシング凹部101Bの開口102B(
図8参照)の少なくとも一部の周方向の幅は、回り止め本体部111Bの周方向の幅よりも小さく形成されていてもよい。また、当該ケーシング凹部101Bの形状に対応するように、第1回り止め突起部112Bまたは第2回り止め突起部113Bの少なくとも一部の周方向の幅が、回り止め本体部111Bの周方向の幅よりも小さく形成されていてもよい。これにより、同様に、第1回り止め突起部112Bおよび第2回り止め突起部113Bのズレ、ガタツキ、または外れを抑制できる。
【0059】
また、第1実施形態と同様に、本実施形態においても、ケーシング100Bとは別体として形成される回り止め部材110Bに突起部(第1回り止め突起部112Bおよび第2回り止め突起部113B)を設ける。そして、トラクション減速機1Bを組み立てる際、第1インタナルリング40Bおよび第2インタナルリング50Bと、ケーシング100Bとの径方向の間に、回り止め部材110Bを挿入して、回り止め部材110B側の突起部をリング側の平面部に接触させる構成とする。これにより、突起部を高精度に形成でき、かつ、ケーシング100Bを含むトラクション減速機1B全体を容易に組み立てることができる。
【0060】
3つの遊星ローラ30Bはそれぞれ、太陽ローラ20B、第1インタナルリング40B、および第2インタナルリング50Bと、常に接触する。そして、太陽ローラ20Bと遊星ローラ30Bとの間には図示を省略した潤滑剤(トラクションオイル)が介在する。これにより、太陽ローラ20Bと遊星ローラ30Bとの間にはトラクションが発生する。モータ200Bの駆動力により、太陽ローラ20Bが回転軸9Bを中心として回転すると、3つの遊星ローラ30Bはそれぞれ、太陽ローラ20Bからの動力を受け、太陽ローラ20Bとの間のトラクションによって自転軸91Bを中心として自転する。また、遊星ローラ30Bと、第1インタナルリング40Bおよび第2インタナルリング50Bとの間には図示を省略した潤滑剤(トラクションオイル)が介在する。これにより、遊星ローラ30Bと、第1インタナルリング40Bおよび第2インタナルリング50Bとの間には、トラクションが発生する。3つの遊星ローラ30Bはそれぞれ、第1インタナルリング40Bおよび第2インタナルリング50Bとの間のトラクションにより、第1インタナルリング40Bおよび第2インタナルリング50Bに沿って、回転軸9Bを中心として公転する。このとき、遊星ローラ30Bの公転の回転数は、第1回転数よりも低い第2回転数となる。
【0061】
3つの遊星ローラ30Bが減速後の第2回転数で公転すると、それに伴い、キャリア60Bも、回転軸9Bを中心として、第2回転数で回転する。また、キャリア60Bが回転すると、キャリア60Bに固定された出力軸70Bも、回転軸9Bを中心として、第2回転数で回転する。これにより、モータ200Bの第1回転数の回転運動は、第1回転数よりも低い第2回転数の回転運動に変換されて、出力軸70Bに出力される。
【0062】
さらに、本実施形態の遊星ローラ30Bは、径の大きい大径外周面61Bにおいて入力側の太陽ローラ20Bと接触して自転し、径の小さい第1小径外周面62Bおよび第2小径外周面63Bにおいて第1インタナルリング40Bおよび第2インタナルリング50Bと接触することによって、公転する。このため、遊星ローラ30Bが大径部301Bのみを有し、大径外周面61Bにおいてインタナルリングに接触する場合に比べて、公転の回転数がさらに低くなる。このように、本実施形態では、大径部と小径部とを有する遊星ローラ30Bを用いることによって、1台の減速機でより高い減速比を得ることができる。
【0063】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0064】
上述の実施形態において、トラクション減速機が有するケーシングは、トラクション減速機の外周部を周方向全体に亘って形成していた。しかしながら、
図11の変形例に示すように、ケーシング100Cは、第1扇形部81Cと第2扇形部82Cとを有していてもよい。本変形例において、第1扇形部81Cは、軸方向に見たときに回転軸を中心として扇形形状に拡がる。第2扇形部82Cは、軸方向に見たときに回転軸を中心として扇形形状に拡がり、かつ、第1扇形部81Cと互いに周方向の端部において接続される。また、第1扇形部81Cおよび第2扇形部82Cはそれぞれ、トラクション減速機1Cの外周部を形成する。さらに、本変形例では、ケーシング100Cにおいて、第1扇形部81Cおよび第2扇形部82Cの少なくとも一方よりも径方向内側へ突出する第1回り止め突起部112Cが形成される。一方、第1インタナルリング40Cは、外周面から径方向内側へ凹む第1リング凹部400Cを有する。
【0065】
トラクション減速機1Cを組み立てる際、第1回り止め突起部112Cは第1リング凹部400Cに嵌まる。これにより、第1インタナルリング40Cがケーシング100Cに対して周方向に相対回転することを防止できる。また、本実施形態では、突起部が形成されるケーシング100Cが、突起部の位置で2つの第1扇形部81Cおよび第2扇形部82Cに分かれる構成にすることによって、突起部を高精度に形成でき、かつ、ケーシング100Cを含むトラクション減速機1C全体を容易に組み立てることができる。
【0066】
また、上述の第2実施形態に示す構成を有するトラクション減速機1Bのケーシング100Bが、2つの扇形部から構成されていてもよい。
図12は、他の変形例に係るトラクション減速機1Dの横断面図である。
図12に示すように、トラクション減速機1Dは、上述の第2実施形態と同等の構成からなる太陽ローラ20D、複数の遊星ローラ30D、キャリア60D、出力軸、および押圧部材と、第1インタナルリング40Dおよび第2インタナルリングと、ケーシング100Dとを有する。
【0067】
ケーシング100Dは、第1扇形部81Dと第2扇形部82Dとを有する。第1扇形部81Dは、軸方向に見たときに回転軸を中心として扇形形状に拡がる。第2扇形部82Dは、軸方向に見たときに回転軸を中心として扇形形状に拡がり、かつ、第1扇形部81Dと互いに周方向の端部において接続される。また、第1扇形部81Dおよび第2扇形部82Dはそれぞれ、トラクション減速機1Dの外周部を形成する。また、ケーシング100Dにおいて、第1扇形部81Dおよび第2扇形部82Dの少なくとも一方よりも径方向内側へ突出する第1回り止め突起部112Dおよび第2回り止め突起部が形成される。第1インタナルリング40Dは、外周面の一部に平面部402Dを有する。第2インタナルリングは、外周面の一部に平面部(図示省略)を有する。
【0068】
トラクション減速機1Dを組み立てる際、第1回り止め突起部112Dは、第1インタナルリング40Dの平面部402Dに接触する。第2回り止め突起部は、第2インタナルリングの平面部に接触する。これにより、第1インタナルリング40Dおよび第2インタナルリングがそれぞれケーシング100Dに対して周方向に相対回転することを防止できる。また、本実施形態では、突起部が形成されるケーシング100Dが、突起部の位置で2つの第1扇形部81Dおよび第2扇形部82Dに分かれる構成にすることによって、突起部を高精度に形成でき、かつ、ケーシング100Dを含むトラクション減速機1D全体を容易に組み立てることができる。
【0069】
上述の実施形態および変形例のトラクション減速機には、大径部と小径部とを有する遊星ローラが用いられていた。しかしながら、本発明のトラクション減速機には、大径部のみを有する遊星ローラが用いられてもよい。また、上述の実施形態および変形例のトラクション減速機には、一対のリング(第1インタナルリングおよび第2インタナルリング)が用いられていた。しかしながら、本発明のトラクション減速機には、遊星ローラを軸方向のいずれかへ押圧する1つのインタナルリングのみが用いられてもよい。
【0070】
上述の実施形態および変形例では、太陽ローラの周囲に、3個の遊星ローラが周方向に等間隔に配置されていた。しかしながら、トラクション減速機が有する遊星ローラの数は、2個以下であってもよく、4個以上であってもよい。
【0071】
上述の実施形態および変形例では、押圧部材としてのコイルばねが周方向に複数配列されていた。しかしながら、押圧部材は、回転軸を中心として配置され、軸方向に伸縮する1つの円環状のばねであってもよい。また、押圧部材は、軸方向に反発力を発生させるものであればよく、ばね以外の他の部材により構成されるものであってもよい。
【0072】
また、トラクション減速機の形状については、本願の各図に示された形状と相違していてもよい。また、上述の実施形態および変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。