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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-159633(P2020-159633A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】油分離装置および圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/02 20060101AFI20200904BHJP
   F04B 39/04 20060101ALI20200904BHJP
   B01D 45/12 20060101ALI20200904BHJP
【FI】
   F25B43/02 A
   F04B39/04 G
   B01D45/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-59825(P2019-59825)
(22)【出願日】2019年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】石田 寿幸
(72)【発明者】
【氏名】上藤 陽一
(72)【発明者】
【氏名】兼子 泰明
(72)【発明者】
【氏名】三苫 恵介
(72)【発明者】
【氏名】左海 将之
(72)【発明者】
【氏名】大村 峰正
【テーマコード(参考)】
3H003
4D031
【Fターム(参考)】
3H003AA01
3H003AB01
3H003AC03
3H003BH05
4D031AC04
4D031BA01
4D031BA03
4D031BA07
4D031BA10
4D031EA01
(57)【要約】
【課題】冷媒から潤滑油を分離してより十分に圧縮機内部に戻すことが可能な油分離装置の提供。
【解決手段】冷媒ガスから潤滑油を分離する油分離装置10は、導入部11を通じて導入される冷媒ガスが旋回する筒状の分離室100と、潤滑油が分離された冷媒ガスを分離室100から流出させる冷媒出口12と、分離室100から潤滑油を流出させる油出口13と、分離室100を冷媒出口12側と油出口13側とに区分する区分壁20とを備える。分離室100の周方向D2における区分壁20の複数の箇所には、冷媒出口12側から油出口13側へと潤滑油が通過可能な開口21が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ガスから潤滑油を分離する油分離装置であって、
導入部を通じて導入される前記冷媒ガスが旋回する筒状の分離室と、
前記潤滑油が分離された前記冷媒ガスを前記分離室から流出させる冷媒出口と、
前記分離室から前記潤滑油を流出させる油出口と、
前記分離室を前記冷媒出口側と前記油出口側とに区分する区分壁と、を備え、
前記分離室の周方向における前記区分壁の複数の箇所には、前記冷媒出口側から前記油出口側へと前記潤滑油が通過可能な開口が形成されている、
ことを特徴とする油分離装置。
【請求項2】
前記開口は、前記区分壁における外周側に位置している、
請求項1に記載の油分離装置。
【請求項3】
前記開口における内壁の少なくとも一部は、前記周方向に対して直交または略直交している、
請求項1または2に記載の油分離装置。
【請求項4】
前記開口は、多角形状である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の油分離装置。
【請求項5】
前記区分壁には、前記周方向に分布した複数の干渉壁が設けられ、
前記干渉壁は、前記周方向に対して交差し、前記区分壁の面外方向に突出している、
請求項1から4のいずれか一項に記載の油分離装置。
【請求項6】
前記干渉壁は、前記開口の周縁の一部に連なる切り起こし片である、
請求項5に記載の油分離装置。
【請求項7】
前記区分壁は、前記分離室の軸方向における前記導入部と前記油出口との間の長さの1/2に相当する中間位置よりも前記油出口側に位置している、
請求項1から6のいずれか一項に記載の油分離装置。
【請求項8】
冷媒ガスから潤滑油を分離する油分離装置であって、
導入部を通じて導入される前記冷媒ガスが旋回する筒状の分離室と、
前記潤滑油が分離された前記冷媒ガスを前記分離室から流出させる冷媒出口と、
前記分離室から前記潤滑油を流出させる油出口と、
前記分離室の内周部から前記分離室の軸線に向けて突出した複数の干渉部を備え、
前記干渉部は、前記分離室の周方向に分布している、
ことを特徴とする油分離装置。
【請求項9】
冷媒を圧縮する圧縮機構と、
前記圧縮機構により吐出された前記冷媒が導入される、請求項1から8のいずれか一項に記載の油分離装置と、
前記油出口から、前記圧縮機構を収容するハウジングの内部へと連通した油戻し経路と、を備える、
ことを特徴とする圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒ガスから潤滑油を分離する油分離装置、および油分離装置を備える圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機や冷凍機等の冷媒回路には、一般に、圧縮機から吐出される冷媒から潤滑油を分離して圧縮機の内部に戻すため、油分離器(オイルセパレータ)が備えられている。圧縮機の外部に吐出された冷媒に潤滑油が混入していることで、熱交換器における熱伝達性能が低下したり、圧縮機内部の油量の減少によって摺動抵抗が増加したりすることを避けるため、油分離器が使用されている。
【0003】
冷媒を圧縮する圧縮機に用いられる油分離器としては、例えば特許文献1や特許文献2に示すように筒体を備え、筒体内部で旋回流をなす冷媒から遠心力により潤滑油を分離するものが採用されている。
特許文献1の油分離器は、筒体の軸線に沿って筒体の内部に挿入された冷媒ガスの出口管と、出口管の軸周りに、ガスの旋回する方向に対して逆向きに設けられた案内羽根と、案内羽根の下方に配置される油受けと、油受けから筒体下部の油溜まりに潤滑油を導く管路とを備えている。特許文献1の記載によれば、微粒の油滴を案内羽根により捕捉することで油分離効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1-83412号公報
【特許文献2】特開2014−118872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱交換器や空気調和機全体の性能向上、あるいは圧縮機の摺動部の潤滑性向上等に鑑みると、圧縮機から吐出される冷媒から潤滑油を分離し、より十分に圧縮機内部に戻したい。
本発明は、冷媒から潤滑油を分離し、より十分に圧縮機内部に戻すことが可能な油分離装置、および当該油分離装置を備える圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者による試験によると、図12に示すように、油分離器内部に溜まる潤滑油に強い渦9Vが発生する現象が観察された。圧縮機の大容量化等による冷媒吐出量の増加により油分離器内部の冷媒の流速が増加し、冷媒流の旋回力が増加すると、冷媒流から分離した潤滑油の慣性力も増加して潤滑油も旋回することで、油出口91から流出する潤滑油に渦9Vが発生するものと推定される。図12には、冷媒ガスが旋回する流れをF1で示し、潤滑油が旋回する流れをF2で示している。
図12に示すように、潤滑油の油面92から油出口91にかけて渦9Vが発生していると、油出口91には冷媒が存在している。そのため、油出口91から圧縮機内部に向けて流出する潤滑油に冷媒ガスが混入して二相流化するので、圧縮機に戻される油量が低下してしまう。
【0007】
以上で述べた新たな知見に基づいてなされた本発明は、冷媒ガスから潤滑油を分離する油分離装置であって、導入部を通じて導入される冷媒ガスが旋回する筒状の分離室と、潤滑油が分離された冷媒ガスを分離室から流出させる冷媒出口と、分離室から潤滑油を流出させる油出口と、分離室を冷媒出口側と油出口側とに区分する区分壁と、を備える。
分離室の周方向における区分壁の複数の箇所には、冷媒出口側から油出口側へと潤滑油が通過可能な開口が形成されている。
【0008】
本発明の油分離装置において、開口は、区分壁における外周側に位置していることが好ましい。
【0009】
本発明の油分離装置において、開口における内壁の少なくとも一部は、周方向に対して直交または略直交していることが好ましい。
【0010】
本発明の油分離装置において、開口は、多角形状であることが好ましい。
【0011】
本発明の油分離装置において、区分壁には、周方向に分布した複数の干渉壁が設けられ、干渉壁は、周方向に対して交差し、区分壁の面外方向に突出していることが好ましい。
【0012】
本発明の油分離装置において、干渉壁は、開口の周縁の一部に連なる切り起こし片であることが好ましい。
【0013】
本発明の油分離装置において、区分壁は、分離室の軸方向における導入部と油出口との間の長さの1/2に相当する中間位置よりも油出口側に位置していることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、冷媒ガスから潤滑油を分離する油分離装置であって、導入部を通じて導入される冷媒ガスが旋回する筒状の分離室と、潤滑油が分離された冷媒ガスを分離室から流出させる冷媒出口と、分離室から潤滑油を流出させる油出口と、分離室の内周部から分離室の軸線に向けて突出した複数の干渉部を備え、干渉部は、分離室の周方向に分布していることを特徴とする。
【0015】
本発明の圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構により吐出された冷媒が導入される、上述の油分離装置と、油出口から、圧縮機構を収容するハウジングの内部へと連通した油戻し経路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の油分離装置によれば、開口が形成された区分壁、あるいは干渉部を備えることにより、冷媒から分離された潤滑油の旋回する流れに干渉して潤滑油の旋回を抑えることができるので、油出口から流出する潤滑油に渦が発生することを防止することができる。そのため、分離した潤滑油を圧縮機の内部に十分に戻すことができる。本発明の油分離装置によれば、圧縮機の大容量化等による能力増大の促進に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】圧縮機および油分離装置を備えた冷媒回路を模式的に示す図である。
図2】第1実施形態に係る油分離装置を模式的に示す図である。
図3】(a)は、図2のIIIa矢印の向きから区分壁を示す平面図である。(b)は、(a)のIIIb−IIIb線断面図である。
図4】(a)〜(c)は、区分壁の開口の変形例を示す図である。
図5】(a)および(b)は、区分壁の開口の変形例を示す図である。
図6】第1実施形態の変形例に係る油分離装置の模式図である。
図7】第2実施形態に係る油分離装置を模式的に示す図である。
図8】(a)は、図7のVIIIa矢印の向きから区分壁を示す平面図である。(b)は、(a)のVIIIb−VIIIb線断面図である。
図9】干渉壁の変形例を示す図である。
図10】(a)は、第3実施形態に係る油分離装置の一部を示す模式図である。(b)は、(a)のXb矢印の向きから区分壁を示す平面図である。
図11】(a)は、第3実施形態の変形例に係る油分離装置の一部を示す模式図である。(b)は、(a)のXIb矢印の向きから区分壁を示す平面図である。
図12】従来の油分離器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る油分離装置10について説明する。油分離装置10は、例えば図1に示すように、空気調和機や冷凍機等の冷媒回路を構成する圧縮機1の吐出配管1Aに設置することができる。油分離装置10から潤滑油が流入する油戻し経路7は、圧縮機1の吸入配管1Bに接続することができる。
図2に示す冷媒回路は、圧縮機1と、油分離装置10と、凝縮器2と、膨張弁等の減圧部3と、蒸発器4と、アキュムレータ5とを備えている。
なお、油分離装置10は、図1に示す例に限らず、圧縮機1に一体に設けることもできる。
【0019】
油分離装置10は、冷媒を圧縮する圧縮機1に用いられ、圧縮機1に備わる圧縮機構により吐出される冷媒から潤滑油を分離する。油分離装置10は、導入される冷媒が旋回流をなす筒状の分離室100を備えており、遠心力を用いて冷媒から潤滑油を分離する。
【0020】
油分離装置10により冷媒から分離された潤滑油は、油戻し経路7を通じて圧縮機1のハウジングの内部へと戻される。潤滑油は、ハウジング内の冷媒の流れにより巻き上げられ、ミスト状の微細な液滴として冷媒に混入した状態で軸受等の摺動部に供給されるとともに、圧縮機構に吸入される。なお、ハウジング内の油溜まりから図示しないポンプ等により潤滑油が汲み上げられ、給油路を通じて軸受等の摺動部に直接的に供給されていてもよい。
【0021】
以下、冷媒を圧縮する圧縮機に採用可能な本発明の油分離装置に係る種々の構成を例示する。
【0022】
〔第1実施形態〕
図3を参照し、第1実施形態に係る油分離装置10を説明する。
油分離装置10は、図2に示すように、導入部11を通じて導入される冷媒ガスが旋回する円筒状の空間を内包する分離室100と、分離室100の軸方向D1の一端部(上端部)に位置する冷媒出口12と、分離室100の軸方向D1の他端部(下端部)に位置する油出口13と、分離室100を冷媒出口12側と油出口13側とに区分する区分壁20とを備えている。区分壁20には、潤滑油が通過可能な開口21が形成されている。
【0023】
分離室100は、図2に示す例では上下方向(鉛直方向)に沿って配置されている。この場合、分離室100の軸方向D1は上下方向である。但し、分離室100が上下方向に対して傾斜して配置されていてもよい。
【0024】
図2に示す例において、分離室100の上端部の径は、上方に向かうにつれて次第に縮小しており、分離室100の上下方向における中央部の径に対して径が小さい冷媒出口12に連なっている。同様に、分離室100の下端部(底部102)の径は、下方に向かうにつれて次第に縮小しており、中央部の径に対して径が小さい油出口13に連なっている。油出口13には、圧縮機1のハウジングの内部へと連通した油戻し経路7が接続される。
【0025】
導入部11は、分離室100の側壁101における区分壁20と冷媒出口12との間の位置に、側壁101を貫通して設けられている。分離室100内に導入された冷媒が旋回流F1をなすように、導入部11は、分離室100の内周部の接線方向に沿って分離室100内に冷媒を導入する。導入部11の孔軸は、分離室100の内周部の接線方向に合わせて設定されている。
【0026】
分離室100、導入部11、冷媒出口12、および油出口13のそれぞれの形状や寸法は、分離室100内で冷媒と潤滑油とが分離され、冷媒および潤滑油をそれぞれ分離室100から流出させることができる限りにおいて、適宜に定めることができる。例えば、分離室100の径が、上端から下端までに亘り一定であってもよい。
【0027】
圧縮機1の圧縮機構から吐出された冷媒は、導入部11から分離室100に導入される。導入部11を通じて分離室100の内周部の接線方向に導入された冷媒は、分離室100の内側で螺旋状に旋回しながら、冷媒旋回流F1に作用する遠心力により、冷媒と潤滑油との密度差に基づいて潤滑油と分離される。密度差により、分離室100内で潤滑油が外周側(径方向外側)に、冷媒ガスが内周側(径方向内側)に位置することとなる。
【0028】
潤滑油に対して密度が小さい冷媒ガスは、冷媒旋回流F1の中心部を通り抜けて冷媒出口12に至り、冷媒出口12から図示しない冷媒配管へと流出する。
【0029】
冷媒ガスに対して密度が大きい潤滑油は、自重により下方へ移動し、区分壁20の開口21を通じて冷媒出口12側(上側領域R1)から油出口13側(下側領域R2)へと通過し、分離室100の底部102に溜まる。図2において、分離室100に溜まっている潤滑油を網掛けパターンで示している。底部102に溜まる潤滑油の量は変動しうる。なお、区分壁20上にもある程度の量の潤滑油が溜まる場合がある。
分離室100の軸方向D1の長さは、冷媒と潤滑油とを十分に分離させるために冷媒旋回流F1を形成する軸方向D1の範囲や、底部102に溜まる油量等を考慮して、適切に定めることができる。
【0030】
冷媒と、冷媒に混入した潤滑油は、分離室100内で冷媒旋回流F1をなして旋回している。このため、冷媒から分離された潤滑油も、慣性力により少なからず旋回する。図2には、下側領域R2に溜まっている潤滑油による油旋回流F2を示している。
【0031】
本実施形態では、開口21が形成された区分壁20により、潤滑油の旋回する力を低減する。
仮に、分離室100に区分壁20が配置されておらず、潤滑油に作用している旋回力が過大であることにより、図12に示すように油面92から油出口91に至る渦9Vが発生するとすれば、油出口91から流出する潤滑油に冷媒ガスが混入することとなる。
区分壁20と、区分壁20に形成されている開口21の内壁210とが、冷媒や潤滑油の旋回流に干渉することにより、潤滑油の旋回する力が弱められるため、油出口13から流出する潤滑油が溜まる底部102において、潤滑油に渦が発生することを防止することができる。
【0032】
区分壁20は、図2および図3に示すように、円形の板状に形成され、分離室100の内側に配置されている。軸方向D1における区分壁20の位置は、導入部11と油出口13との間で適宜に設定することができる。区分壁20は、軸方向D1に対して直交して配置されているが、必ずしもこれに限られない。
【0033】
区分壁20は、例えば、ろう付け、溶接、締結等の適宜な方法で分離室100の内周部に接合することができる。あるいは、金属粉体を用いた熱溶融積層造形等により分離室100と区分壁20とを形成することにより、油分離装置10を一体成形することもできる。
【0034】
図3(a)に示すように、分離室100の周方向D2における区分壁20の複数の箇所に開口21が形成されている。開口21は、区分壁20において周方向D2に所定のピッチで分布している。
各開口21は、図3(b)に示すように、区分壁20を厚さ方向に貫通している。なお、潤滑油が上側領域R1から下側領域R2へと通過可能な開口21が存在する限りにおいて、1以上の開口21が、区分壁20を非貫通であることも許容される。
【0035】
冷媒との密度差により、潤滑油は上側領域R1の外周側に偏在するため、開口21を通じて潤滑油を上側領域R1から下側領域R2へと効率良く移動させる観点からは、各開口21が、区分壁20における外周側に位置していることが好ましい。
また、外周側では内周側と比べて旋回流の周速が大きいため、内壁210により潤滑油の旋回流に対して効果的に干渉することができる観点からも、開口21が外周側に位置していることが好ましい。
【0036】
開口21の内壁210は、区分壁20の上面20Aから下面20Bまでに亘り形成されている。内壁210により、接触する冷媒や潤滑油の旋回する流れに対して干渉することができる。周方向D2に対して交差する内壁210の部分に旋回流が衝突することにより、旋回流に対して効率良く干渉することができる。開口21の形状を問わず、内壁210の一部は、分離室100の周方向D2に対して交差しており、当該一部は、潤滑油の旋回する流れに対して交差する。特に、内壁210の一部が、周方向D2に対して直交または略直交していると、潤滑油が衝突する力を内壁210に受けて弱める効果が高いため好ましい。
また、区分壁20の板厚が厚いほど内壁210の面積が増加するため、旋回流を内壁210に衝突させて旋回力を弱める効果が高い。
【0037】
図3(a)および(b)に示す例では、開口21は平面視において矩形状に形成されている。そのため、開口21における内壁210は4つの壁面からなる。内壁210の一部、つまり4つの壁面のいずれかは、分離室100の周方向D2に対して交差している。
図3(a)および(b)に示す例では、矩形状の開口21が、区分壁20の平面中心に対して回転対称に配置されている。そのため、内壁210の4つの壁面のうち対向する2つの壁面210A,210Bが、周方向D2に対して略直交している。これらの壁面210A,210Bは、分離室100の内部で旋回する冷媒旋回流F1や油旋回流F2の向きに対して略直交している。
矩形状に代えて、開口21を三角形状等の多角形状に形成することもできる。その場合も、内壁210における1以上の壁面が、周方向D2に対して直交または略直交するように開口21の向きを定めることが好ましい。
【0038】
分離室100に区分壁20が配置されていることにより、上側領域R1において冷媒から分離した潤滑油の旋回する流れに区分壁20が干渉する。具体的には、潤滑油は冷媒から分離して慣性力により外周側に旋回流を発生させるため、区分壁20の外周側に配置された開口21を通過する流れが内壁210に衝突することで旋回力が弱められる。下側領域R2においても、区分壁20の下面20Bに接触する潤滑油の旋回する力が、区分壁20による干渉により弱められる。
上側領域R1において区分壁20に受け止められた潤滑油は、いずれ開口21を通過して下側領域R2に流入する。
【0039】
潤滑油が開口21を通過する際には、周方向D2に分布した複数の開口21のそれぞれにおいて、内壁210が潤滑油の旋回する成分に干渉することで、潤滑油の旋回する力が弱められる。潤滑油の回転成分に対して交差している内壁210の部分(例えば壁面210A,210B)により、潤滑油の回転成分に効率良く干渉して、潤滑油の旋回力を効率良く弱めることができる。
【0040】
ところで、底部102に溜まる潤滑油の油面14の上昇により、区分壁20が油面14よりも下方に位置している場合には、区分壁20の各開口21の内壁210の一部が、潤滑油の旋回する流れに対して継続的に干渉する。つまり、各開口21の内壁210が、潤滑油の旋回する流れの抵抗として働く。そのため、仮に区分壁20の全体が油面14よりも下方に位置しており、冷媒から分離された潤滑油が油面14に滴下するとしても、開口21が形成された区分壁20により、潤滑油の旋回する力を十分に弱めることができる。
勿論、区分壁20の上面20A側が油面14よりも上方に位置し、下面20B側が潤滑油に浸かっている状態であっても、上面20Aにより潤滑油に干渉しつつ、内壁210により潤滑油の旋回成分に抵抗を与えることで、潤滑油の旋回力を効率良く弱めることができる。
【0041】
上述のように区分壁20と開口21の内壁210とが潤滑油の旋回する流れに干渉することより、下側領域R2に溜まる潤滑油の旋回する力が弱められる結果、仮に下側領域R2に油旋回流F2が存在しており油面14が窪んでいたとしても、油面14から油出口13に至る渦の発生を防止することができる。そのため、油出口13には冷媒ガスが存在しないので、油出口13から流出する流れが潤滑油と冷媒ガスとの二相流となることなく、油出口13からは潤滑油のみが流出し、油戻し経路7を通じて圧縮機1のハウジングの内部に戻される。
【0042】
本実施形態の油分離装置10によれば、渦の発生に起因して油出口13から圧縮機1の内部に戻される油量が低下することなく、油分離装置10により吐出冷媒から分離された潤滑油を圧縮機1の内部に十分に戻すことができる。
そうすると、摺動部の潤滑に必要な油量をハウジングの内部に維持し、圧縮機1から、熱交換器等の冷媒回路要素に向けて冷媒と共に流出する潤滑油の量を許容される限度に留めることができる。
油分離装置10によれば、圧縮機1の大容量化等による冷媒吐出量の増大に見合う量の潤滑油を圧縮機1の内部に戻すことができる。そのため、圧縮機1から流出した潤滑油による不具合、例えば熱交換器における熱伝達率の低下を抑えつつ、圧縮機1の能力増大の促進、圧縮機1を備えた空気調和機等の性能向上に寄与することができる。
【0043】
〔区分壁の開口の変形例〕
図4および図5を参照し、区分壁20に形成可能な開口の他の形状や配置を例示する。以下に示すいずれの開口の内壁によっても、潤滑油の旋回流に干渉することができる。
図4および図5に示す開口の形状や配置は、後述する第2実施形態の区分壁30にも適用することができる。
【0044】
図4(a)に示す例では、区分壁20における径方向外側に、複数の矩形状の開口22が90°ピッチで放射状に形成され、区分壁20における径方向内側にも、複数の矩形状の開口23が90°ピッチで形成されている。複数の開口22と、複数の開口23とは、互いに45°だけ位相がシフトした状態に配置されている。潤滑油を上側領域R1から下側領域R2へと効率良く移動させるため、径方向外側に位置する開口22が、径方向内側に位置する開口23と比べて大きい。
【0045】
図4(b)に示す例では、複数の開口24を区分壁20に適宜に配列している。なお、複数の開口24を区分壁20上に不規則に配置することもできる。
図4(c)に示す例では、円弧状の複数の開口25を区分壁20における平面中心の周りに配置している。
【0046】
図5(a)に示す例では、複数の楕円状の開口26が周方向D2に分布している。開口26は円形であってもよい。ここでは、開口26の内壁において、旋回流に対して交差する壁面の面積を広く確保するため、楕円状の開口26の長軸が区分壁20の径方向に沿うように開口26の向きを設定している。
【0047】
区分壁20に形成される開口は、図5(b)に示すような切欠27であってもよい。図5に示す例では、区分壁20の外周縁から径方向内側に向けて、矩形状の切欠27を形成している。切欠27は、平面視でV字状に形成することもできる。
【0048】
〔第1実施形態の変形例〕
上述したように、区分壁20が油面14よりも下方に位置していたとしても、冷媒から分離された潤滑油の旋回を抑えて、渦の発生を防止することができる。
そのため、図6に示す例では、区分壁28を図2に示す区分壁20の位置よりも下方に配置することで、冷媒旋回流F1の進路を軸方向D1に長く確保している。具体的に、区分壁28は、導入部11と油出口13との間の軸方向D1の長さの1/2に相当する中間位置Mよりも油出口13側に位置している。
【0049】
〔第2実施形態〕
次に、図7および図8を参照し、本発明の第2実施形態に係る油分離装置10Aについて説明する。以下、第1実施形態の油分離装置10と相違する事項を中心に説明する。第1実施形態と同様の構成要素には同じ符合を付している。
【0050】
油分離装置10Aは、干渉壁31が設けられた区分壁30を備えている。図8(a)に示すように、複数の干渉壁31が周方向D2に分布している。各干渉壁31は、分離室100の周方向D2に対して交差し、区分壁30の面外方向に突出している。図8(a)に示す干渉壁31は、区分壁30から上方に向けて突出している。本実施形態の干渉壁31は、開口21の周縁の一部に連なる切り起こし片である。つまり、干渉壁31は、区分壁20に用いる板状の素材から開口21に対応する箇所を打ち抜いて、面外方向に曲げる切り起こし加工により、区分壁30と一体に形成されている。
なお、図9に示すように、三角形状の切り起こし片としての干渉壁32を区分壁30に形成することもできる。
【0051】
さて、図8に示す干渉壁31は、開口21の内壁210と同様に、周方向D2に対して交差している、特に、周方向D2に対して直交または略直交していることが好ましい。潤滑油が衝突する力を干渉壁31に受けて弱める効果を高めるため、干渉壁31は、区分壁30に対して垂直に起立していることが好ましい。
【0052】
干渉壁31は、切り起こし片には限らない。干渉壁31が、区分壁30とは別体であって、区分壁30上の開口21とは異なる位置に設置されていてもよい。
【0053】
開口21に加えて干渉壁31を備えた区分壁30によれば、潤滑油の旋回する流れが干渉壁31に衝突することにより、潤滑油の旋回する力をさらに低減して、潤滑油の旋回をより一層抑制することができる。
【0054】
干渉壁31は、区分壁30から必ずしも上方に向けて突出している必要はなく、区分壁30から下方に向けて突出していたり、あるいは、上方と下方との双方に向けて突出していたりしてもよい。いずれにしても、開口21の周縁部の近傍に位置する干渉壁31により、開口21を通じて滴下しようとする潤滑油の旋回する力を弱めることができる。
また、干渉壁31が潤滑油に浸かっている場合にも、干渉壁31により潤滑油の流れに抵抗が与えられるため、潤滑油の回転力を弱め、潤滑油の旋回を抑えることができる。
【0055】
〔第3実施形態〕
次に、図10を参照し、本発明の第3実施形態に係る油分離装置10Bについて説明する。
第3実施形態の油分離装置10Bは、分離室100の内周部103から分離室100の軸線に向けて突出した複数の干渉部41を備えている。干渉部41は、分離室100の周方向D2に所定のピッチで分布している。
【0056】
例えば熱溶融積層造形により、複数の干渉部41と分離室100とを一体に成形することができる。あるいは、複数の干渉部41を内周部103に適宜な方法で接合することができる。
各干渉部41は、上述の干渉壁31と同様に、周方向D2に対して直交または略直交していることが好ましい。
【0057】
干渉部41には、冷媒から分離した潤滑油の旋回する流れが衝突する。こうして干渉部41が潤滑油の旋回する流れに干渉することで、潤滑油の旋回する力を低減して、潤滑油の旋回を抑えることができる。そのため、油面14から油出口13に至る渦の発生を防止することができる。
したがって、第1実施形態と同様に、渦の発生に起因して油出口13から圧縮機1の内部に戻される油量が低下することなく、油分離装置10Bにより吐出冷媒から分離された潤滑油を圧縮機1の内部に十分に戻すことができる。
【0058】
干渉部41に代えて、図11に示すように、軸方向D1に沿った第1壁部421と、第1壁部421に対して直交した第2壁部422とを備えた干渉部42を採用することも可能である。第2壁部422により、第1実施形態の区分壁20と同様の効果を得ることができる。
【0059】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 圧縮機
1A 吐出配管
1B 吸入配管
2 凝縮器
3 減圧部
4 蒸発器
5 アキュムレータ
7 油戻し経路
9V 渦
10,10A,10B 油分離装置
11 導入部
12 冷媒出口
13 油出口
14 油面
20,28,30 区分壁
20A 上面
20B 下面
21〜26 開口
27 切欠(開口)
31,32 干渉壁
41,42 干渉部
91 油出口
92 油面
100 分離室
101 側壁
102 底部
103 内周部
210 内壁
210A,210B 壁面
421 第1壁部
422 第2壁部
D1 軸方向
D2 周方向
F1 冷媒旋回流
F2 油旋回流
M 中間位置
R1 上側領域
R2 下側領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12