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特開2020-159766測距システム、測距装置及び測距方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-159766(P2020-159766A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】測距システム、測距装置及び測距方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 11/02 20100101AFI20200904BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20200904BHJP
   E05B 49/00 20060101ALN20200904BHJP
【FI】
   G01S11/02
   B60R25/24
   E05B49/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-57263(P2019-57263)
(22)【出願日】2019年3月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真狩 弘夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 正樹
(72)【発明者】
【氏名】仁藤 与晴
(72)【発明者】
【氏名】大高 章二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB08
2E250CC12
2E250CC20
2E250DD06
2E250FF23
2E250FF27
2E250FF36
2E250HH01
2E250JJ03
2E250KK03
2E250LL01
(57)【要約】
【課題】周波数帯域が広い微弱電波を利用することでマルチパスの影響を軽減し、確実な測距を可能にする。
【解決手段】 実施形態の測距システムは、第1及び第2装置間で送受信に基づいて前記装置間の距離を算出する測距システムにおいて、第1の周波数帯及び/又は前記第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯で通信を行う通信部と、前記装置間における前記第1又は第2の周波数帯の位相検出結果に基づいて、前記第1装置が前記第2装置に対し所定の範囲内に位置するか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果により、前記第1装置が前記所定の範囲内に位置しないことが示された場合には前記第1の周波数帯を用いて測距を行い、前記第1装置が前記所定の範囲内に位置することが示された場合には前記第2の周波数帯を用いて測距を行うように制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2装置間で送受信に基づいて前記装置間の距離を算出する測距システムにおいて、
第1の周波数帯及び/又は前記第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯で通信を行う通信部と、
前記装置間における前記第1又は第2の周波数帯の位相検出結果に基づいて、前記第1装置が前記第2装置に対し所定の範囲内に位置するか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果により、前記第1装置が前記所定の範囲内に位置しないことが示された場合には前記第1の周波数帯を用いて測距を行い、前記第1装置が前記所定の範囲内に位置することが示された場合には前記第2の周波数帯を用いて測距を行うように制御する制御部と、
を備える測距システム。
【請求項2】
前記第2の周波数帯は、各国電波法で規定している微弱電波に相当する
請求項1に記載の測距システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記判定結果により前記第1装置が前記所定の範囲内に位置することが示された場合には、前記第1の周波数帯を用いた測距が不能のときに前記第2の周波数帯を用いた測距を行うように制御する
請求項1又は2に記載の測距システム。
【請求項4】
第1及び第2装置間で送受信に基づいて前記装置間の距離を算出する測距方法において、
第1の周波数帯及び/又は前記第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯で通信を行い、
前記第1装置が前記第2装置に対し所定の範囲内に位置するか否かを判定し、
前記判定により、前記第1装置が前記所定の範囲内に位置しないことが示された場合には第1の周波数帯を用いて測距を行い、前記第1装置が前記所定の範囲内に位置することが示された場合には第2の周波数帯を用いて測距を行うように制御する
測距方法。
【請求項5】
第1装置との間で送受信に基づいて前記第1装置との間の距離を算出する測距装置において、
第1の周波数帯及び/又は前記第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯で通信を行う通信部と、
前記第1装置が所定の範囲内に位置するか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果により、前記第1装置が前記所定の範囲内に位置しないことが示された場合には第1の周波数帯を用いて測距を行い、前記第1装置が前記所定の範囲内に位置することが示された場合には第2の周波数帯を用いて測距を行うように制御する制御部と、
を備える測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、測距システム、測距装置及び測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キーレスエントリが多くの車に採用されている。この技術は自動車の鍵と自動車間の無線通信を利用してドアの施錠・開錠を行う。更に、近年、鍵に触れることなくドアの施錠・開錠を行ったり、エンジンを始動させたりするスマートエントリも採用されている。
【0003】
しかしながら、攻撃者がキーと自動車間の無線通信に侵入し、車を盗難する事件が多発している。攻撃(リレーアタック)の防御策として、キーと自動車間の距離が所定値以上と判断されたときは通信による車の制御を禁止する策が検討されている。
【0004】
このような測距を行うシステムとして、位相検出方式を採用し、無線通信によって装置間の距離を求める通信型測距システムがある。
【0005】
ところで、スマートエントリは、車室内では、マルチパスの影響が極めて大きく、通信型測距では測距不能となり、エンジンスタートが困難になることがあるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018−155724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態は、周波数帯域が広い微弱電波を利用することでマルチパスの影響を軽減し、確実な測距を可能にする測距システム、測距装置及び測距方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の測距システムは、第1及び第2装置間で送受信に基づいて前記装置間の距離を算出する測距システムにおいて、第1の周波数帯及び/又は前記第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯で通信を行う通信部と、前記装置間における前記第1又は第2の周波数帯の位相検出結果に基づいて、前記第1装置が前記第2装置に対し所定の範囲内に位置するか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果により、前記第1装置が前記所定の範囲内に位置しないことが示された場合には前記第1の周波数帯を用いて測距を行い、前記第1装置が前記所定の範囲内に位置することが示された場合には前記第2の周波数帯を用いて測距を行うように制御する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る測距システムを採用した車載装置及びキー装置を示すブロック図。
図2】スマートエントリの仕組みを説明するための図。
図3】車両1におけるLFユニット20の搭載状況を示す説明図。
図4】LFユニット20の送信電波の電波到達範囲を示す説明図。
図5】車両1に対応したスマートキー2の外観の一例を示す図。
図6】測距結果を利用するスマートエントリの仕組みを説明するための図。
図7】微弱電波を説明するための図。
図8】RFユニット30の具体的な構成の一例を示すブロック図。
図9】車載装置10の動作を説明するためのフローチャート。
図10】キー装置40の動作を説明するためのフローチャート。
図11】本実施の形態におけるスマートエントリの仕組みを説明するための図。
図12】本発明の第2の実施の形態において採用される動作を示すフローチャート。
図13】本発明の第2の実施の形態において採用される動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る測距システムを採用した車載装置及びキー装置を示すブロック図である。図2はスマートエントリの仕組みを説明するための図である。本実施の形態は、測距対象が所定の範囲内に位置することを検知すると、微弱電波を用いて周波数を変更しながら通信を行うことにより、確実な測距を可能にするものである。本実施の形態は無変調キャリアを用いた位相検出方式を採用した通信型測距を採用する例を説明する。本実施の形態においては、測距対象はスマートキー2であり、所定の範囲として車近傍又は車室内を想定している。スマートキー2が車近傍又は車室内に位置することを、通信型測距以外の手法によって検知するものである。
【0011】
車載装置10は、アンテナ23を含む複数のLF(Low Frequency)ユニット20と、アンテナ33を含むRF(Radio Frequency)ユニット30とにより構成される。LFユニット20は、MCU(Micro Control Unit)21及びLF送信器22によって構成されている。MCU21は、LF送信器22の制御を行う。LF送信器22は、所定の低周波数、例えば、130KHz帯等の電波(LF信号)をアンテナ23を介して送信する。LFユニット20は、低周波数の電波を比較的低い電力でLF間欠送信しており、その電波到達範囲は十分に短い。
【0012】
図3は車両1におけるLFユニット20の搭載状況を示す説明図である。なお、車両1には、図示しない車両制御装置50が搭載されている。また、図4はLFユニット20の送信電波の電波到達範囲を示す説明図である。図4では一部のLFユニット20の電波到達範囲のみを丸で囲って示している。車両1には、7個のLFユニット20(20A1〜20A5,20B1,20B2)が配設されている。LFユニット20A1〜20A5は車外判定用であり、これらを区別する必要がない場合には、単にLFユニット20Aというものとする。また、LFユニット20B1,20B2は車内判定用であり、これらを区別する必要がない場合には、単にLFユニット20Bというものとする。
【0013】
LFユニット20は、各LFユニットを識別するID情報を送信電波に付加したLF間欠送信を行ってもよい。また、ID情報としてはLFユニットを、個別に識別可能にするものだけでなく、車外判定用と車内判定用とに識別可能にするものであってもよい。なお、LFユニット20は、相互に独立して動作することが可能であるが、LF間欠送信のタイミング制御が行われてもよい。
【0014】
LFユニット20Aは、車両1のドア部等の端部近傍に配置される。LFユニット20Aからの電波到達範囲15は、例えば、半径1m程度である。従って、LFユニット20Aからの電波は、車両1の車外の近傍において受信可能である。
【0015】
LFユニット20Bは、車両1の運転席や助手席等の車室内中央近傍に配置される。LFユニット20Bからの電波到達範囲16は、例えば、半径1m程度である。従って、LFユニット20Bからの電波は、車両1の車内においてのみ受信可能である。本実施の形態においては、LFユニット20Bからの電波を受信することによって、測距対象が所定の範囲である車両1の車内に位置することを検出する。
【0016】
図5は車両1に対応したスマートキー2の外観の一例を示す図である。スマートキー2には、各種操作ボタン2aが配設されており、図1のキー装置40が内蔵されている。なお、キー装置40は、操作ボタン2aの操作により、所謂リモコンキーとして動作する。その際、LF受信器42は一般的には無関係である。
【0017】
キー装置40は、MCU41、LF受信器42、RF送受信器43、及びアンテナ44a,44bにより構成される。MCU41は、キー装置40における各種判定/制御を行う。LF受信器42は、図4の電波到達範囲15,16に位置する場合には、LFユニット20からLF間欠送信された電波(LF信号)をアンテナ44aを介して受信する。LF信号をLF受信器42が受信すると、RF送受信器43はレスポンスとして高周波信号(RF信号)を送信する。これにより、RF送受信器43とRFユニット30との間で、RF信号による通信が行われる。なお、RF送受信器43及びRFユニット30の電波到達範囲は、リモコンキーための信号を出力することも可能なように、LFユニット20による電波到達範囲に比べて十分に長い距離に設定される。
【0018】
RFユニット30は、MCU31及びRF送受信器32により構成されている。MCU31は、車載装置における各種判定/制御を行う。RF送受信器32は、RF送受信器43との間で通信を行う。MCU31は、RF信号をRF送受信器32が受信すると、キー装置40との間で認証処理のための送受信を行うように制御する。
【0019】
MCU31は、認証処理において、受信したRF信号が車両1に対応するスマートキー2からの電波であると判定した場合には、認証成功の結果を得る。RFユニット30は、認証に成功したことを示す許可信号を車両制御装置50に出力する。車両制御装置50は、許可信号を受信すると、車両1のドアの開錠及びエンジンスタートを許可する。なお、1回の認証によって可能となる動作を、ドアの開錠又はエンジンスタートのいずれかに限定してもよい。また、LFユニット20Aのレスポンスに基づいて認証が行われた場合にはドアの開錠を許可し、LFユニット20Bのレスポンスに基づいて認証が行われた場合にはエンジンスタートを許可するようになっていてもよい。
【0020】
このように、スマートキーシステムでは、スマートキー2が車両1近傍のLFユニット20の電波到達範囲に位置する場合にのみ、LF受信器42がLFユニット20からの電波を受信可能となって、認証のためのRF通信が行われる。
【0021】
このようなスマートキーシステムに対してリレーアタックの攻撃者は、LFユニット20からの送信電波を中継してスマートキー2に伝達する。スマートキー2は、車両1の近傍に位置しない場合でも、LFユニット20からのLF間欠通信を受信することになり、スマートキー2と車載装置10との間でRF通信が行われて、車両1の開錠やエンジンスタートが可能となる。
【0022】
そこで、本実施の形態においては、無変調キャリアを用いた通信型測距により、車両1のRFユニット30とスマートキー2のRF送受信器43との間の距離を求める。求めた距離が所定の閾値よりも小さい場合にのみ、車両制御装置50へ許可信号を出力する。
【0023】
図6は測距結果を利用するスマートエントリの仕組みを説明するための図である。RFユニット30は、RF送受信器43との間のRF通信によって認証に成功すると、測距用RF信号による通信をRF送受信器43との間で行う。RFユニット30及びRF送受信器43は互いに相手からのRF信号を受信して位相差を検出する。例えば、RF送受信器43は、測距用RF信号の受信によって取得した位相情報をRFユニット30に送信する。位相情報は、例えば受信によって取得した位相又は位相差である。RFユニット30は、RF送受信器32が測距用RF信号の受信によって取得した位相情報と、キー装置40からの位相情報とを用いて、RFユニット30とRF送受信器43との間の距離を算出する。
【0024】
なお、この測距用RF信号としては、例えば、日本国内法で規定されている特定小電力無線局に許された送信電力及び周波数帯域のものを用いてもよい。例えば、RF送受信器32,43は、920MHz帯域の電波を0dBm程度の送信電力で送信するようになっていてもよい。
【0025】
MCU31は、算出した距離が所定の閾値よりも小さい場合には、スマートキー2が車両1の近傍に位置していると判定して、許可信号を車両制御装置50に出力する。なお、MCU31は、算出した距離が所定の閾値以上である場合には、スマートキー2が車両1の近傍に位置しないと判定して、許可信号を車両制御装置50に出力しない。
【0026】
このような通信は、所定の時間間隔で繰り返し実施される。車両1のドアの開錠時、エンジンスタート時に、繰り返し通信され、キー装置40と車載装置10との間で認証及び測距が行われる。
【0027】
しかしながら、スマートキー2が車両1の車室内に位置する場合には、通信時にマルチパスの影響を受ける。車室内においては、マルチパスの影響が極めて大きく、測距結果の誤差が極めて大きくなったり、測距不能となったりすることがある。そこで、本実施の形態においては、スマートキー2が車室内にある場合には、測距通信に微弱電波を採用して、測距周波数を変化させる。マルチパスの影響で周波数選択性フェージングにより、受信不能になっている場合、周波数の変更で受信できるようになる可能性がある。
【0028】
図7は微弱電波を説明するための図である。微弱電波は、無線局の免許を必要としない微弱な電波であり、日本国内法で定める微弱無線局から送信される電波のことである。微弱電波は、微弱無線局から3mの距離における電界強度の許容値が規定されている。電界強度は、周波数322MHz以下では500μV/m以下、周波数322MHzを超え10GHz以下では35μV/m以下、周波数10GHzを超え150GHz以下では3.5×fμV/m以下、周波数150GHzを超える場合では500μV/m以下である。なお、微弱電波として、日本国内法の規定に従った電波について説明したが、日本以外の国で実施の場合は、本実施の形態のスマートキーシステムを採用する国において規定された同様の微弱電波の法規に基づいて実施すればよい。
【0029】
本実施の形態においては、スマートキー2の位置が車外か車内かを判定する。車外の場合には例えば特定小電力無線局において許可された電波(以下、通常測距用電波という)を用い、車内の場合には微弱電波を用いて、測距を行うように制御する。なお、日本国外において本実施の形態のスマートキーシステムを採用する場合には、特定小電力無線局に相当する各国の法律により規定された送信電力及び周波数帯域の電波を通常測距用電波として用いればよい。
【0030】
判定部としてのMCU41は、受信したLF信号に付加されたID情報から、LF間欠通信を行った送信器がLFユニット20AであるかLFユニット20Bであるかを判定する。MCU41は、LFユニット20Aと判定した場合には、スマートキー2は車外に位置すると判定し、LFユニット20Bと判定した場合には、スマートキー2は車内に位置すると判定する。MCU41は、この判定結果を車載装置10に送信する。
【0031】
車載装置10がスマートキー2が車外に位置する判定結果を受信すると、判定部及び制御部としてのMCU31は、測距に際して通常測距用電波を用いるようにRF送受信器32を制御する。また、MCU31は、スマートキー2が車内に位置する判定結果を受信すると、測距に際して通常測距用電波及び微弱電波を用いるようにRF送受信器32を制御する。なお、MCU41はID情報をそのままMCU31に送信し、MCU31においてスマートキー2の位置を判定してもよい。
【0032】
また、MCU31において各LFユニット20のLF間欠通信のタイミングを把握できる場合には、キー装置40からのレスポンスのタイミングによって、スマートキー2の位置が車内か車外かを判定することも可能である。例えば、MCU31が複数のLFユニット20を制御している場合には、各LFユニット20の送信直後にRF信号の受信ウィンドウを開けて、RF送受信器43からのレスポンスを待つことで、いずれのLFユニット20の送信に基づくレスポンスであるか、即ち、スマートキー2がいずれのLFユニット20の近傍に位置するかを判定できる。この場合には、LFユニット20はID情報を送信できなくてもよい。
【0033】
図8はRFユニット30の具体的な構成の一例を示すブロック図である。MCU31は、スマートキー2の認証のための情報の生成及び認証処理を実行する。エンコーダ34は、MCU31からの情報をエンコードして変調器35に出力する。変調器35は、入力された情報を所定の変調方式で変調してRF送受信器32に出力する。
【0034】
RF送受信器32は、送受信回路32a及びPLL回路32bを有している。PLL回路32bは、MCU31に制御されて、所定周波数の発振出力を出力する。送受信回路32aは、PLL回路32bの出力を用いて、RF信号を発生する。
【0035】
また、送受信回路32aは、アンテナ33からの受信信号を復調器36に出力する。復調器36は、RF送受信器43の変調方式に対応した復調方式で復調した受信信号をデコーダ37に出力する。デコーダ37は、復調信号をデコードしてMCU31に出力する。
【0036】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図9から図11を参照して説明する。図9は車載装置10の動作を説明するためのフローチャートである。図10はキー装置40の動作を説明するためのフローチャートである。図11は本実施の形態におけるスマートエントリの仕組みを説明するための図である。車載装置10の各LFユニット20は、低い周波数の電波(LF信号)を間欠送信する(S1)。なお、スマートキー2の位置を判定するために、例えば、MCU21は、LFユニット20を識別するID情報をLF信号に付加してLF間欠送信を行う。
【0037】
一方、キー装置40のLF受信器42は、LF間欠送信の受信待機状態である(S21)。スマートキー2を所持するユーザが車両1に近づきLFユニット20の電波到達範囲内に入ると、LF受信器42はLF信号を受信する。LF受信機42がLF信号を受信すると(S22、YES)、RF送受信器43はレスポンスとしてRF信号を送信し認証処理を行う(S23)。キー装置40は、車載装置10からの測距信号の受信待機状態となる(S24)。
【0038】
車載装置10はLF信号送信後、レスポンスとしてのRF信号の待機状態である(S2)。RF信号がRF送受信器32において受信される(S2、YES)と、車載装置10はレスポンスを返したキー装置40に対して、認証処理を開始する(S3)。キー装置40と車載装置10との間でRF通信が行われると、MCU31は、キー装置40が車両1に対応しているか否か、即ち、認証に成功したか否かを判定する(S4)。MCU31は認証に成功しない場合(S4、NO)には、処理をS1に戻す。
【0039】
MCU31は、認証に成功する(S4、YES)と、スマートキー2が車内に位置するか否かを判定する(S5)。例えば、MCU31は、レスポンス発生の元がLFユニット20AであるかLFユニット20Bであるかを、ID情報により判定する。MCU31は、LFユニット20Bからのレスポンスと判定した場合にはスマートキー2は車内に位置すると判定する(S5,YES)。一方、LFユニット20Aからのレスポンスと判定した場合スマートキー2は車外に位置(S5、NO)すると判定する。
【0040】
MCU31は、リレーアタック攻撃対策のために、キー装置40と車載装置10との間の測距を開始する。スマートキー2が車外に位置する場合には、MCU31はRF送受信器32に、例えば周波数及び送信電力を含む通常測距用電波の送信を指示する(S6A)。この指示に従って、PLL回路32bは発振出力を発生し、送受信回路32aは所定レベルの送信信号を発生する。こうして、アンテナ33から通常測距用電波による測距信号が送信される。
【0041】
キー装置40は受信待機状態において、測距信号を受信する(S24,YES)と、車載装置10に通常測距用電波を用いた測距信号を送信する(S25)。こうして、キー装置40と車載装置10との間で通常測距用電波を用いた測距が行われる。MCU41は、受信によって取得した位相情報についても、車載装置10に送信する。
【0042】
MCU31は取得した位相情報に基づいて、RF送受信器32とRF送受信器43との間の距離を算出する。MCU31は算出した距離が所定範囲内であったか否かを判定する(S7)。所定の範囲内は概ね、各LFユニット20から発生される電波の到達範囲である。
【0043】
リレーアタック攻撃によるレスポンスが発生している場合には、スマートキー2は、車両1から比較的離れた位置(所定範囲外)に存在することになる。MCU31は、算出した距離からスマートキー2は車両1近傍に位置しないものと判定して(S7、NO)、処理をS1に戻す。一方、算出した距離が所定範囲内であった場合(S7、YES)、MCU31は開錠を許可する許可信号を車両制御装置50に出力する(S8)。
【0044】
ドアを開錠して車内に入ったユーザがエンジンスタートを試みるものとする。同様に、車載装置10においてS1〜S5の動作が行われ、キー装置40においてS21〜S25の動作が行われる。
【0045】
MCU31は、スマートキー2が車内に位置すると判定すると(S5、YES)、通常測距用電波の送受信による測距を行う(S6B)。MCU31は、測距が可能であったか否かを判定する(S11A)。マルチパスの影響が比較的強い車内においては、通常測距用電波を用いた測距が不能である場合もある。この場合には、キー装置40と車載装置10との間で、通常測距用電波に代えて微弱電波を用いた測距を行う。
【0046】
微弱電波は帯域が広く、周波数を変化させながら多数回の測距が可能であり、それだけフェージングの影響を回避して測距できる可能性が高まる。しかし、ユーザエクスペリエンスの観点から、限定した時間内に測距を終了させる必要がある。そこで、リトライ回数nを設定し、異なる周波数での測距回数がnに到達する場合には、測距を終了する。
【0047】
即ち、MCU31は、測距不能と判定する(S11A、NO)と、微弱電波での測距回数がn回未満であるか否かを判定する(S11B)。n回未満の場合には(S11B、YES)、MCU31は、微弱電波の送信をRF送受信器32に指示する(S12)。MCU31は、微弱電波として利用可能な周波数帯の指定をすると共に、微弱な送信電力を指定する。PLL回路32bは微弱電波として利用できる発振出力を発生し、送受信回路32aは微弱な所定レベルの送信信号を発生する。アンテナ33から微弱電波を用いた測距信号が送信される(S13)。なお、測距回数nは適宜変更可能である。
【0048】
一方、MCU41は、通常測距用電波の送信が終了したことを判定する(S26、YES)と、微弱電波による送信の設定を行い(S27)、測距信号の受信待機状態となる(S28)。所定期間が経過しても測距信号が受信されない場合(S28、NO)には、MCU41は処理をS21に戻す。
【0049】
RF送受信器43は、微弱電波の測距信号を受信する(S28、YES)と、微弱電波を用いた測距信号を送信する(S29)。MCU41は、取得した位相情報についても、車載装置10に送信する。MCU31は、微弱電波を用いた測距信号の送受信によって取得した位相情報に基づいて、キー装置40と車載装置10との間の距離を算出する。次に、MCU31は、測距が可能であったか否かを判定する(S11A)。
【0050】
MCU31は、設定された微弱電波で測距不能と判定した場合には、前回とは異なる周波数の微弱電波を設定する。そして、RFユニット30は、設定した微弱電波による測距信号の送受信を行う(S13)。一方、MCU41においても、前回とは異なる周波数の微弱電波を設定する(S27)。車載装置10とキー装置40での微弱電波の設定・再設定は、例えば予め決められた周波数の順に設定する。そして、MCU41は、設定と同じ周波数の微弱電波を受信すると(S28)、微弱電波の測距信号を送信する(S29)。以後、同様の動作が繰り返されて、測距回数n回未満の範囲内で、MCU31で測距可と判定されるまで、車載装置10は周波数を変化させながら微弱電波の測距を繰り返す。なお、MCU31は、測距回数がn回に到達すると(S11B、NO))、処理をS1に戻す。
【0051】
周波数を変化させることで、マルチパスの影響を回避できることが多い。MCU31は、測距可と判定する(S11A、YES)と、S7を実行する。スマートキー2を所持するユーザが車両1内に位置する場合には、MCU31が算出した距離は所定の範囲内の値となるので、MCU31はエンジンスタートを許可する許可信号を車両制御装置50に出力する(S8)。こうして、車両制御装置50により、車両1のエンジンのスタートが許可される。なお、測距可の場合には、微弱電波の送信が停止し、MCU41は、S28から処理をS21に戻す。
【0052】
このように本実施の形態においては、測距対象であるスマートキーが車内に位置することを検知すると、微弱電波の周波数を変更しながら測距用の通信を行うように制御が行われる。これにより、変更可能な測距周波数が増大するので、マルチパスの影響を回避することができ、確実な測距が可能である。
【0053】
なお、上記実施の形態においては、通常測距用電波の周波数を変更する例を説明しなかったが、測距不能と判定された場合には、先ず通常測距用電波の周波数を変更してもよい。また、通常測距用電波の周波数を所定回数変更しても測距可とならない場合に、微弱電波を用いた測距を開始するようにしてもよい。
(第2の実施の形態)
図12及び図13は本発明の第2の実施の形態において採用される動作を示すフローチャートである。図12及び図13においてそれぞれ図9又は図10と同一の手順には同一符号を付して説明を省略する。図12は車載装置10の動作を示し、図13はキー装置40の動作を示している。なお、本実施の形態におけるハードウェア構成は第1の実施の形態と同様である。本実施の形態はスマートキー2が車内に位置する場合には、通常測距用電波を用いずに、最初から微弱電波を用いて測距を行うものである。
【0054】
車載装置10のMCU31は、認証成功後(S4,YES)、スマートキー2が車内に位置するか否かを判定する(S31)。MCU31は、スマートキー2が車外に位置すると判定した場合(S31、NO)、通常測距用電波を用いた測距通信を行う(S6A)。
【0055】
キー装置40のMCU41は、レスポンスとしてのRF送信及び認証のためのRF通信を行うと(S23)、スマートキー2が車内に位置するか否かを判定する(S41)。MCU41は、スマートキー2が車外に位置すると判定した場合(S41、NO)、通常測距用電波を用いた測距通信の待機状態となる(S24)。キー装置40は通常測距用電波を受信すると、通常測距用電波を用いた測距通信を行う(S25)。
【0056】
MCU31は、通常測距用電波を用いた測距が終了すると、算出した距離が所定の範囲内であるか否かを判定し(S7)、所定の範囲内である場合(S7、YES)に許可信号を発生する(S8)。
【0057】
また、MCU31は、スマートキー2が車内に位置すると判定した場合(S31,YES)、微弱電波を用いた測距通信を行う(S12)。MCU41においても、スマートキー2が車内に位置すると判定した場合(S41、YES)、微弱電波を設定し(S27)、微弱電波の通信待機状態となる(S28)。キー装置40は微弱電波を受信する(S28,YES)と、微弱電波を用いた測距通信を行う(S29)。
【0058】
また、MCU31は、微弱電波を用いた測距によっても測距不能と判定(S11A、NO)すると、測距回数がn回未満の場合には(S11B、YES)、微弱電波の周波数を再度設定して(S12)、測距通信を繰り返す。MCU31は測距可と判定する(S11A、YES)と、処理をS7に移行する。MCU31は、算出した距離が所定範囲内である場合(S7、YES)に許可信号を発生する(S8)。
【0059】
本実施の形態においては、先にスマートキー2が車内に位置するかどうか判定する。スマートキー2が車内に位置する場合には、微弱電波を用いた測距通信を行う。これにより、本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。即ち、変更可能な測距周波数が増大し、マルチパスの影響を回避した測距が可能となる。
【0060】
なお、上記各実施の形態においては、測距対象が所定範囲内に位置する場合を判定して、微弱電波を用いた測距を行う例を説明したが、車外であってもマルチパスの影響が大きい場所がある。そこで、測距対象がマルチパスの影響が高い範囲内に位置するか否かによって微弱電波を用いた測距を判定してもよい。
【0061】
また、上記各実施の形態においては、スマートキー2が車内に位置することを、LFユニット20BのLF間欠通信に対するレスポンスの発生よって判定する例を説明したが、ドアが開いてから一定時間内にはスマートキー2が車内に位置するものと推定して、微弱電波を利用した測距を行ってもよい。
【0062】
更に、測距対象がマルチパスの影響の高い所定の範囲内に位置することを、位相測定の安定性、測距結果の信頼性、あるいは、測距の失敗回数により判定してもよい。また、同様に、測距周波数の変更は、位相測定の安定性、測距結果の信頼性、測距の失敗回数、又はキャリアセンスでの周波数の空き状況を条件としてもよい。
【0063】
また、上記各実施の形態においては、ユーザのボタン操作やモード設定等のユーザ操作に基づいて微弱電波を用いた測距に切換えてもよい。また、RSSI(Received Signal Strength Indication)が良好な場合には、キー装置40が車載装置10の近傍に位置していると判定して、微弱電波を用いた測距に切換えてもよい。微弱電波を用いた測距では消費電力を削減することが可能である。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0065】
1…車両、2…スマートキー、10…車載装置、20…LFユニット、20A…LFユニット、20B…LFユニット、21…MCU、22…LF送信器、23…アンテナ、30…RFユニット、31…MCU、32…RF送受信器、32a…送受信回路、32b…PLL回路、33…アンテナ、34…エンコーダ、35…変調器、36…復調器、37…デコーダ、40…キー装置、41…MCU、42…LF受信器、43…RF送受信器、44a…アンテナ、44b…アンテナ、50…車両制御装置。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
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図10
図11
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図13