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特開2020-159872試料容器押圧機構、試料搬送装置、分析装置および試料搬送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-159872(P2020-159872A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】試料容器押圧機構、試料搬送装置、分析装置および試料搬送方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20200904BHJP
   G01N 25/20 20060101ALI20200904BHJP
【FI】
   G01N35/04 G
   G01N25/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-59761(P2019-59761)
(22)【出願日】2019年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100101867
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 寿武
(72)【発明者】
【氏名】則武 弘一郎
(72)【発明者】
【氏名】大竹 智士
(72)【発明者】
【氏名】松尾 秀一
【テーマコード(参考)】
2G040
2G058
【Fターム(参考)】
2G040AB12
2G040FA03
2G040FA04
2G058CB04
2G058CF06
(57)【要約】
【課題】 把持爪24,24により把持して搬送してきた試料容器50を測定位置へ配置し、位置ずれすることなく把持爪24,24の把持状態を解除することを実現する。
【解決手段】 測定位置に配置された試料容器50を押圧部材34により上方から押圧する。把持爪24,24が把持状態を解除する際に試料容器50が把持爪24,24に付着して引っ張られても、押圧部材34の押圧力をもって試料位置を測定位置に保持して位置ずれを防止することができる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料搬送装置に組み込まれる試料容器押圧機構であって、
前記試料搬送装置は、開閉する複数の把持爪により前記試料容器の周面を把持した状態で、当該試料容器を分析装置の測定位置まで搬送し配置する構成であり、
前記測定位置に配置された試料容器を上方から押圧する押圧部材を備えたことを特徴とする試料容器押圧機構。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記把持爪と一緒に移動するとともに、当該把持爪に対して上下方向へ相対移動自在であり、当該把持爪が把持する前記試料容器を自重により上方から押圧する構成であることを特徴とする請求項1に記載の試料容器押圧機構。
【請求項3】
前記押圧部材は、下端に線状の押圧エッジを有し、
蓋付きの前記試料容器に対しては、当該蓋に前記押圧エッジが当接して当該試料容器を押圧し、
上面が開口する蓋なしの前記試料容器に対しては、その開口縁部に前記押圧エッジが当接して当該試料容器を押圧する構成であることを特徴とした請求項1又は2に記載の試料容器押圧機構。
【請求項4】
請求項1に記載した、開閉する複数の把持爪により試料容器の周面を把持した状態で、当該試料容器を分析装置の測定位置まで搬送し配置する構成を備えた試料搬送装置であって、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の試料容器押圧機構を組み込んだことを特徴とする試料搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の試料搬送装置が組み込まれ、測定対象となる試料を挿入した試料容器を、当該試料搬送装置によって測定位置まで搬送する構成としたことを特徴とする分析装置。
【請求項6】
請求項4に記載の試料搬送装置を用いた試料搬送方法であって、
試料が挿入された試料容器の周面を前記把持爪で把持して測定位置まで搬送し配置する工程と、
前記測定位置に配置された前記試料容器を、前記押圧部材により上方から押圧した状態で、当該試料容器に対する前記把持爪の把持状態を解除する工程と、
前記測定位置に配置された前記試料容器に対する前記把持爪の把持状態を解除した後、当該把持爪と前記押圧部材とを上昇させて前記試料容器から離す工程と、を含むことを特徴とする試料搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試料搬送装置に組み込まれ、分析装置の測定位置まで搬送されてきた試料容器を押圧する試料容器押圧機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、示差走査熱量測定装置(DSC)や示差熱分析装置(DTA)などの熱分析装置にあっては、あらかじめ試料を挿入した試料容器を試料供給位置に配置しておき、試料搬送装置を用いて、試料供給位置から試料容器を取り出し、熱分析装置の測定位置まで搬送し配置することが行われている。
【0003】
特許文献1は、分析装置に組み込まれた従来の試料搬送装置を開示している。同文献1に開示された試料搬送装置は、複数の把持部材によって試料容器を把持して搬送する構成となっている。この種の構成をした試料搬送装置では、把持部材が測定位置で試料容器を離す際に、試料容器が把持部材に付着して離れ難くなることがある。そのために、特許文献1の試料搬送装置では、把持部材の試料容器との接触部に、金属酸化膜やセラミック・コーティングを施して、試料容器が把持部材に付着し難くなるような対策を講じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−264096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、把持部材の試料容器との接触部に、金属酸化膜やセラミック・コーティングを施しても、試料容器の外周面の状態によっては、その外周面と把持部材との間に張力等が作用して、把持部材が開いた際に試料容器が引っ張られて位置ずれが生じるおそれを完全に無くすことは困難であった。測定位置に対する試料容器の位置ずれは、熱分析装置による分析精度を低下させる原因となる。
そこで、いっそう確実に試料容器を測定位置に配置して、搬送動作を終えることができる技術の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、把持爪により把持して搬送してきた試料容器を測定位置へ配置し、位置ずれすることなく把持爪の把持状態を解除することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る試料容器押圧機構は、試料搬送装置に組み込まれる。試料搬送装置は、開閉する複数の把持爪により試料容器の周面を把持した状態で、当該試料容器を分析装置の測定位置まで搬送し配置する構成である。そして、試料容器押圧機構は、測定位置に配置された試料容器を上方から押圧する押圧部材を備えたことを特徴とする。
このように、試料容器を上方から押圧することで、把持爪が把持状態を解除する際に試料容器が把持爪に付着して引っ張られても、押圧部材の押圧力をもって試料位置を測定位置に保持して位置ずれを防止することができる。
【0008】
ここで、押圧部材は、把持爪と一緒に移動するとともに、当該把持爪に対して上下方向へ相対移動自在であり、当該把持爪が把持する試料容器を自重により上方から押圧する構成とすることができる。
押圧部材の自重により試料容器を押圧する構成とすることで、押圧のために押圧部材以外の構成要素を必要とせず、構造を簡素化することができる。
【0009】
また、押圧部材は、下端に線状の押圧エッジを有する構成とすることが好ましい。蓋付きの試料容器に対しては、当該蓋に押圧エッジが当接して当該試料容器を押圧する。このとき、押圧エッジが蓋に対して線接触するため、接触面積がきわめて小さく、押圧部材が上昇した際に試料容器が付着して同容器を引っ張り上げてしまうおそれがない。また、上面が開口する蓋なしの試料容器に対しては、その開口縁部に押圧エッジが当接して当該試料容器を押圧するので、このときも接触面積がきわめて小さく、押圧部材が上昇した際に試料容器が付着して同容器を引っ張り上げてしまうおそれがない。
【0010】
次に、本発明に係る試料搬送装置は、開閉する複数の把持爪により試料容器の周面を把持した状態で、当該試料容器を分析装置の測定位置まで搬送し配置する構成を備え、上述した本発明の試料容器押圧機構を組み込んだことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る分析装置は、本発明の試料搬送装置が組み込まれ、測定対象となる試料を挿入した試料容器を、当該試料搬送装置によって測定位置まで搬送する構成としたことを特徴とする。
【0012】
これら本発明に係る試料容器押圧機構や分析装置においても、試料容器押圧機構の押圧部材が試料容器を上方から押圧することで、把持爪が把持状態を解除する際に試料容器が把持爪に付着して引っ張られても、押圧部材の押圧力をもって試料位置を測定位置に保持して位置ずれを防止することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る試料搬送方法は、本発明の試料搬送装置を用いて実行され、試料が挿入された試料容器の周面を把持爪で把持して測定位置まで搬送し配置する工程と、測定位置に配置された試料容器を、押圧部材により上方から押圧した状態で、当該試料容器に対する把持爪の把持状態を解除する工程と、測定位置に配置された試料容器に対する把持爪の把持状態を解除した後、当該把持爪と押圧部材とを上昇させて試料容器から離す工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
かかる本発明の試料搬送方法によっても、押圧部材が試料容器を上方から押圧することで、把持爪が把持状態を解除する際に試料容器が把持爪に付着して引っ張られても、押圧部材の押圧力をもって試料位置を測定位置に保持して位置ずれを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、把持爪により把持して搬送してきた試料容器を測定位置へ配置し、位置ずれすることなく把持爪の把持状態を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明の実施形態に係る分析装置の外観を示す斜視図、(b)は分析装置に組み込まれた試料供給装置の外観を拡大して示す斜視図である。
図2】(a)(b)は本発明の実施形態に係る試料搬送装置が備える把持爪の外観を示す斜視図、(c)(d)は試料容器の構成例を示す斜視図、(e)は把持爪による試料の把持状態を拡大して示す斜視図である。
図3】(a)〜(c)は本発明の実施形態に係る試料容器押圧機構の外観を示す斜視図、(d)は試料容器を把持爪が把持した状態を拡大して示す斜視図である。
図4】(a)〜(c)(e)は本発明の実施形態に係る試料容器押圧機構の作用を説明するための斜視図、(d)は同じく正面図である。
図5】(a)〜(i)は本発明に係る試料容器押圧機構における押圧部材の押圧エッジに関する各種構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)は本発明の実施形態に係る分析装置の外観を示す斜視図である。同図(a)に示す分析装置10には、試料搬送装置20が組み込まれており、さらにその試料搬送装置20には、試料容器押圧機構30が組み込まれている。
【0018】
本実施形態では、熱分析装置に本発明を適用した構成例を示す。
熱分析装置10は、装置本体11の内部に加熱炉(図示せず)を備え、その加熱炉内に測定位置が設けられている。分析対象となる試料は、後述する試料容器に挿入された状態で、測定位置に配置され、加熱炉により加熱されて、温度変化に伴う性状の変化等を分析する構成となっている。なお、熱分析装置10(例えば、DSC、DTA)の原理や基本構造についてはすでに周知であるため、詳細な説明は省略する。
【0019】
熱分析装置10には、試料搬送装置20が組み込まれている。試料搬送装置20は、複数(本実施形態では2本)の把持爪24,24が試料容器を把持して、上下方向および水平面上の2方向(以下、横方向ということもある)に移動することにより、試料供給位置Bに置かれた試料容器を、熱分析装置10の加熱炉内に設けられた測定位置へと搬送し配置する機能を有している。さらに、試料搬送装置20は、測定位置にある試料容器を把持して試料供給位置Bへと搬送して戻す機能も有している。
【0020】
熱分析装置10には、試料供給装置40も組み込まれている。試料供給装置40は、図1(b)に示すように、凹溝で形成された多数の試料配置部42を有する回転テーブル41を備えており、この回転テーブル41の回転軌道上に試料供給位置Bが設定してある。多数の試料配置部42には、試料を挿入した試料容器を配置しておき、回転テーブル41の回転操作をもって、試料容器を試料供給位置Bへ順次移送していく。なお、図1(a)では、回転テーブル41の周囲にカバー43が装着されている。
【0021】
熱分析装置10の装置本体11には、試料挿入口12が設けてあり、この試料挿入口12から加熱炉内に試料容器を挿入して、測定位置に配置できる構造となっている。測定位置は、試料挿入口12の下方に設けられている。
【0022】
試料搬送装置20は、搬送ヘッド21を上下方向に移動させる上下駆動機構22と、搬送ヘッド21を横方向に移動させる水平駆動機構23とを備えている。搬送ヘッド21は2本の把持爪24,24を支持しており、さらにこれら把持爪24,24を開閉駆動する開閉機構(図示せず)が搬送ヘッド21の内部に組み込まれている。
【0023】
搬送ヘッド21は、図1(b)に矢印で示すように、試料供給位置Bの上方から下降して、把持爪24,24の先端を試料容器の周面と同じ高さ位置に配置し、この位置で把持爪24,24を閉じる。この動作により、把持爪24,24が試料容器の周面を把持する。その後、搬送ヘッド21を上昇させ、さらに上昇端から横方向に移動させて、試料挿入口12の上方位置まで、把持爪24,24で把持した試料容器を搬送する。続いて、搬送ヘッド21を下降させて、把持爪24,24で把持した試料容器を試料挿入口12から加熱炉内に挿入して、測定位置に配置する。試料容器を測定位置に配置した後、搬送ヘッド21が把持爪24,24を開いて試料容器の把持状態を解除する。
なお、測定終了後に、測定位置にある試料容器を把持して試料供給位置Bへと搬送して戻す動作は、上述した測定位置まで搬送する動作と逆の動作となる。
【0024】
図2(a)(b)に示すように、試料搬送装置20の把持爪24は、開閉アーム25の下端から下方へ延出して取り付けてあり、同図(e)に示すように、下端部に形成した把持部24aで試料容器50の周面を両側方から把持する構成となっている。
図2(c)は、蓋51付きの試料容器50を示しており、同図(d)は蓋なしの試料容器50を示している。同図(c)に示した蓋51付きの試料容器50は、試料を挿入した後、上面開口部50aに蓋51がカシメて装着される。同図(d)に示した蓋なしの試料容器50は、上面開口部50aから試料が挿入され、上面開口部50aが開口したままの状態で搬送される。いずれの試料容器50も、搬送に際して周面を把持爪24,24により把持される。
【0025】
図2(b)に示すように、2本の把持爪24,24とこれらを装着した開閉アーム25は、閉じた状態(試料容器50を把持する状態)にあっても接触することなく、各把持爪24,24(開閉アーム25を含む)の相互間には一定の隙間Sが形成されている。
【0026】
図3(a)〜(c)は本実施形態に係る試料容器押圧機構の外観を示す斜視図である。
試料容器押圧機構30は、取付板31と、支持案内部材32と、上下移動部材33と、押圧部材34とを含む構成としてある。支持案内部材32の背面には、上端から下端に延びる案内溝32aが形成してあり、この案内溝32aに嵌め込んだ状態で、支持案内部材32が上下移動部材33を支持している。上下移動部材33は、案内溝32aに沿って上下方向に移動自在となっている。
また、上下移動部材33の上端部には、ストッパの機能を有した当接部33aが形成してあり、この当接部33aが案内溝32aの上端開口縁部32bに当接して、上下移動部材33の案内溝32aからの抜け出し落下を防止している。上下移動部材33は、自重によって常時は当接部33aが案内溝32aの上端開口縁部32bに当接している。
【0027】
支持案内部材32は、背面の上半分程度の領域を取付板31の正面に接触させた状態で、取付板31に固定してある。これにより、案内溝32aの背面開口部は、上半分程度が取付板31によって閉塞されるので、当該背面開口部から上下移動部材33が脱落するおそれはない。
【0028】
押圧部材34は、上下移動部材33の下部に装着され、上下移動部材33と一体に上下移動自在となっている。押圧部材34は、図2(b)に示した各把持爪24,24(開閉アーム25を含む)の隙間Sよりも薄い板状に構成してあり、その下端縁が押圧エッジ34aを形成している。
【0029】
押圧部材34は、押圧エッジ34aを試料容器50に当接させて、当該試料容器50を上方から押圧する。本実施形態に係る押圧部材34は、図5(a)に示すように、下端縁を断面楔状に形成して、鋭利な線状の押圧エッジ34aを形成してある。
この線状の押圧エッジ34aは水平面と平行に配置され、図5(d)に示すように、蓋51付きの試料容器50に対しては蓋51の上面に線状に当接して、当該試料容器50を上方から押圧する。このように、押圧エッジ34aが蓋51に対して線接触するため、接触面積がきわめて小さく、押圧部材34が上昇した際に試料容器50が付着して同容器を引っ張り上げてしまうおそれがない。
また、図5(g)に示すように、蓋51なしの試料容器50に対しては上面の開口縁部50bの2箇所に当接して、当該試料容器50を上方から押圧する。この場合も、試料容器50に対する押圧エッジ34aの接触面積がきわめて小さく、押圧部材34が上昇した際に試料容器50が付着して同容器を引っ張り上げてしまうおそれがない。
【0030】
図3(b)に示すように、試料容器押圧機構30は、ねじ等の締結具35を用いて、取付板31が試料搬送装置20の搬送ヘッド21に固定される。このとき、押圧部材34が、各把持爪24,24(開閉アーム25を含む)の隙間Sに配置される。
ここで、図3(d)に示すように、把持爪24,24が試料容器50を把持しているとき、押圧部材34の押圧エッジ34aが試料容器50に当接した状態が形成されるように、把持爪24に対する押圧エッジ34aの相対的な高さ位置を調整する必要がある。すなわち、把持爪24,24に把持された試料容器50の上端位置Hを基準として、把持爪24,24が試料容器50を把持していない通常時はこの上端位置Hよりも下方に押圧エッジ34aが配置されるように、把持爪24に対する押圧エッジ34aの相対的な高さ位置を調整する。この調整作業は、例えば、取付板31を試料搬送装置20の搬送ヘッド21に固定する際に行う。
このように、押圧エッジ34aの高さ位置を調整することで、把持爪24,24が試料容器50を把持した際に、押圧エッジ34aが試料容器50に当接して持ち上げられ、押圧部材34の自重により試料容器50を上方から押圧する状態が形成される。
【0031】
なお、正しくは、押圧部材34と一体に上下方向に移動する上下移動部材33等の自重も含めて試料容器50に作用するが、本明細書ではこれらを含めて押圧部材34の自重としている。これら試料容器50に作用する押圧部材34等の総重量は、把持爪24,24のよる把持状態が解除された際に試料容器50を保持できる押圧力と、試料容器50の耐荷重とを総合的に勘案して調整することが好ましい。特に、アルミニウム製の試料容器50は耐荷重が小さいので、当該試料容器50が変形しない範囲の自重に設定することが好ましい。
【0032】
また、試料容器押圧機構30は、支持案内部材32にねじ孔32cを設け、そのねじ孔32cに固定ねじ36を螺合してある。図3(c)に示すように、固定ねじ36をねじ込むと、その先端が上下移動部材33の側面に圧接して、上下移動部材33の移動が規制される。例えば、押圧部材34により試料容器50を押圧する必要のないときは、上下移動部材33を上方に移動させた状態で、固定ねじ36により上下移動部材33の移動を規制することで、押圧部材34の押圧エッジ34aが上述した上端位置Hよりも上方の位置に固定され、試料容器50に当接しなくなる。
【0033】
次に、図1(b)および図4(a)〜(e)を主に参照して、上述した試料搬送装置20を用いた試料搬送方法について説明する。
図1(b)を参照して既述したように、搬送ヘッド21は、試料供給位置Bの上方から下降して、同位置に配置してある試料容器50の周面を把持爪24,24が把持する。このとき、押圧部材34が試料容器50に上方から当接して、自重により試料容器50を押圧する状態が形成される(図3(d)参照)。
【0034】
その後、搬送ヘッド21を駆動して、試料挿入口12の上方位置まで、把持爪24,24で把持した試料容器50を搬送する(図4(a)参照)。
続いて、搬送ヘッド21を下降させて、把持爪24,24で把持した試料容器50を試料挿入口12から加熱炉内に挿入して、測定位置Aに配置する(図4(b)参照)。
このようにして試料容器50を測定位置Aに配置した後、把持爪24,24を開いて試料容器50の把持状態を解除する(図4(c)(d)参照)。このとき、押圧部材34が試料容器50に上方から当接して、自重により試料容器50を押圧する状態が継続している。したがって、把持爪24,24が試料容器50の周面に付着していて、開く際に試料容器50を引っ張っても、押圧部材34が押圧力をもって試料位置を測定位置Aに保持する。その結果、試料容器50の位置ずれが防止され、試料容器50を正確に測定位置Aへ配置することができる。
続いて、搬送ヘッド21が上昇して押圧部材34を試料容器50から離す。このとき、図5(d)(g)を参照して既述したように、線状に形成した押圧エッジ34aの試料容器50に対する接触面積がきわめて小さいため、押圧部材34に試料容器50が付着して同容器を引っ張り上げてしまうおそれがない。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変形実施や応用実施が可能であることは勿論である。
【0036】
例えば、押圧部材34の押圧エッジ34aは、図5(b)に示すように、断面山形状に形成して、鋭利な線状に形成することもできる。この場合も、図5(e)に示すように、蓋51付きの試料容器50に対しては、押圧エッジ34aが蓋51の上面に線状に当接して、当該試料容器50を上方から押圧する。また、図5(h)に示すように、蓋51なしの試料容器50に対しては、押圧エッジ34aが上面の開口縁部50bの2箇所に当接して、当該試料容器50を上方から押圧する。
【0037】
また、押圧部材34の押圧エッジは、図5(c)に示すように、湾曲した凹部面34bを有し、その両端が押圧部材34の厚さ方向に延びる線状の押圧部34cを形成した形状とすることもできる。この押圧部材34によれば、図5(f)に示すように、蓋51付きの試料容器50に対しては、押圧エッジの押圧部34cが蓋51の上面(カシメ部分)に線状に当接して、当該試料容器50を上方から押圧する。また、図5(i)に示すように、蓋51なしの試料容器50に対しては、押圧エッジの凹部面34bが上面の開口縁部50bの2箇所に当接して、当該試料容器50を上方から押圧する。
【0038】
試料容器押圧機構は、試料搬送装置を製作する際に同装置の構成要素として組み込むことができる。また、試料搬送装置のオプション品として、後付けで試料搬送装置に組み込むことができる仕様としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10:分析装置(熱分析装置)、11:装置本体、12:試料挿入口
A:測定位置、B:試料供給位置、
20:試料搬送装置、21:搬送ヘッド、22:上下駆動機構、23:水平駆動機構、24:把持爪、24a:把持部、25:開閉アーム、S:隙間、
30:試料容器押圧機構、31:取付板、32:支持案内部材、32a:案内溝、32b:上端開口縁部、33:上下移動部材、33a:当接部、34:押圧部材、34a:押圧エッジ、34b:凹部面、34c:押圧部、35:締結具、32c:ねじ孔、36:固定ねじ、
40:試料供給装置、41:回転テーブル、42:試料配置部、43:カバー、
50:試料容器、50a:上面開口部、50b:開口縁部、51:蓋、
図1
図2
図3
図4
図5