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特開2020-160715むだ時間推定装置及びそれを備えた試験装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-160715(P2020-160715A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】むだ時間推定装置及びそれを備えた試験装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/02 20060101AFI20200904BHJP
【FI】
   G05B13/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-58568(P2019-58568)
(22)【出願日】2019年3月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】増井 陽二
【テーマコード(参考)】
5H004
【Fターム(参考)】
5H004GA03
5H004GA10
5H004GB12
5H004HA10
5H004HB10
5H004KC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】制御系におけるむだ時間を精度良く推定可能なむだ時間推定装置を提供する。
【解決手段】むだ時間推定装置は、制御対象Pの伝達関数からむだ時間要素を除いた要素の周波数特性をG^/e-L^1sとし、制御対象Pにおいてむだ時間要素を含まない伝達関数をG^′とした場合に、式(1)の評価関数Jの値が最小になるむだ時間L^′1を求めるむだ時間演算部を備える。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象のむだ時間を推定するむだ時間推定装置であって、
前記制御対象の伝達関数からむだ時間要素を除いた要素の周波数特性をG^/e-L^1sとし、前記制御対象においてむだ時間要素を含まない伝達関数をG^′とした場合に、式(1)の評価関数Jの値が最小になるむだ時間L^′1を求めるむだ時間演算部を備える、むだ時間推定装置。
【数6】
【請求項2】
請求項1に記載のむだ時間推定装置において、
前記制御対象のむだ時間初期値を求めるむだ時間初期値取得部と、
前記むだ時間初期値を用いて前記むだ時間要素を求めて、前記制御対象の伝達関数から前記むだ時間要素を除いた要素の周波数特性をG^/e-L^1sとして求める周波数特性取得部と、
を備える、むだ時間推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のむだ時間推定装置において、
前記むだ時間演算部は、前記むだ時間初期値を基準とした所定の範囲内で、且つ、前記評価関数Jの値が最小になるような前記むだ時間L^′1を求める、むだ時間推定装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のむだ時間推定装置において、
前記制御対象に信号を入力して、その応答結果から伝達関数を取得する伝達関数取得部をさらに備え、
前記むだ時間初期値取得部は、前記伝達関数取得部によって取得された前記伝達関数の制御対象に所定の入力信号を入力した場合に得られる応答信号から、前記むだ時間初期値を求める、むだ時間推定装置。
【請求項5】
請求項4に記載のむだ時間推定装置において、
前記むだ時間初期値取得部は、前記応答信号において、所定の閾値を超えるまでの時間を、前記むだ時間初期値として求める、むだ時間推定装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のむだ時間推定装置において、
前記所定の入力信号は、ステップ信号である、むだ時間推定装置。
【請求項7】
供試体に対して駆動力を与える制御対象と、
前記制御対象を制御する制御装置と、
前記制御装置に対し、推定したむだ時間を出力する、請求項1から6のいずれか一つに記載のむだ時間推定装置と、
を備える、試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象のむだ時間を推定するむだ時間推定装置及びそれを備えた試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象を制御する際に、サンプリング周期及び制御装置内での通信等によって、前記制御対象に実際に入力される指令が入力指令に対して遅れることが知られている。このような遅れは、一般的にむだ時間と呼ばれる。このむだ時間は、前記制御対象の制御に影響を与えることが知られている。
【0003】
例えば、PID制御において、むだ時間の影響により応答性を向上できない場合がある。
【0004】
制御の応答性を向上するために、例えば特許文献1に開示されている制御装置では、目標値とフィードバック値とに基づいて制御対象に対する操作量を演算する操作量演算手段の入力側に、むだ時間補償器の出力を与えるむだ時間補償制御を行う。すなわち、前記制御装置では、目標応答時には、いわゆるスミス補償法によるむだ時間補償制御を行う。
【0005】
これにより、制御対象の応答値を目標値に高速に到達させることができるとともに、オーバーシュートの発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−167605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のようなむだ時間補償制御を行う場合、制御対象のむだ時間の推定精度が重要である。すなわち、上述のむだ時間補償制御を行う場合には、制御対象のむだ時間に応じてフィードバック値を調整するため、前記むだ時間が誤差を有すると、むだ時間補償制御の制御性能に影響を与える。
【0008】
むだ時間の推定精度は、上述のむだ時間補償制御だけでなく、むだ時間の影響を受ける他の制御系設計においても制御性能に影響を与えるため、重要である。
【0009】
本発明の目的は、制御対象のむだ時間を精度良く推定可能なむだ時間推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係るむだ時間推定装置は、制御対象のむだ時間を推定するむだ時間推定装置である。このむだ時間推定装置は、前記制御対象の伝達関数からむだ時間要素を除いた要素の周波数特性をG^/e-L^1sとし、前記制御対象においてむだ時間要素を含まない伝達関数をG^′とした場合に、式(1)の評価関数Jの値が最小になるむだ時間L^′1を求めるむだ時間演算部を備える(第1の構成)。
【数1】
【0011】
これにより、制御対象のむだ時間を精度良く推定することができる。すなわち、むだ時間及び該むだ時間を除いた伝達関数をそれぞれ変数として、前記制御対象の伝達関数からむだ時間要素を除いた要素の周波数特性と、前記制御対象のむだ時間要素を含まない伝達関数とを用いて表される(1)式の評価関数において、該評価関数の値が最小になるむだ時間を求めることにより、前記制御対象のむだ時間を精度良く推定することができる。
【0012】
よって、むだ時間推定装置によって推定したむだ時間を用いて前記制御対象を制御することにより、前記むだ時間の推定誤差の影響を抑えて、前記制御対象を、設計した制御系で制御することができる。
【0013】
前記第1の構成において、むだ時間推定装置は、前記制御対象のむだ時間初期値を求めるむだ時間初期値取得部と、前記むだ時間初期値を用いて前記むだ時間要素を求めて、前記制御対象の伝達関数から前記むだ時間要素を除いた要素の周波数特性をG^/e-L^1sとして求める周波数特性取得部と、を備える(第2の構成)。
【0014】
これにより、制御対象のむだ時間を短時間で精度良く推定することができる。すなわち、むだ時間初期値取得部は、むだ時間初期値として、前記制御対象のむだ時間の真値により近い値を求めることができるため、むだ時間演算部で演算に用いる上述の(1)式において考慮するむだ時間に、より精度の良いむだ時間初期値を用いることができる。これにより、むだ時間演算部によって前記制御対象のむだ時間を迅速に求めることができる。
【0015】
前記第2の構成において、前記むだ時間演算部は、前記むだ時間初期値を基準とした所定の範囲内で、且つ、前記評価関数Jの値が最小になるような前記むだ時間L^′1を求める(第3の構成)。
【0016】
これにより、むだ時間初期値を精度良く求められない場合であっても、むだ時間演算部によって、制御対象のむだ時間を精度良く推定することができる。
【0017】
前記第2または第3の構成において、むだ時間推定装置は、前記制御対象に信号を入力して、その応答結果から伝達関数を取得する伝達関数取得部をさらに備える。前記むだ時間初期値取得部は、前記伝達関数取得部によって取得された前記伝達関数の制御対象に所定の入力信号を入力した場合に得られる応答信号から、前記むだ時間初期値を求める(第4の構成)。
【0018】
これにより、制御対象に入力信号を入力してむだ時間初期値を求めることができない場合でも、前記制御対象の伝達関数を求めた後、該伝達関数に所定の入力信号を入力した場合の応答信号から、前記むだ時間初期値を求めることができる。よって、前記制御対象の前記むだ時間初期値を精度良く求めることができる。
【0019】
前記第4の構成において、前記むだ時間初期値取得部は、前記応答信号において、所定の閾値を超えるまでの時間を、前記むだ時間初期値として求める(第5の構成)。これにより、制御対象のむだ時間初期値を容易に求めることができる。
【0020】
前記第4または第5の構成において、前記所定の入力信号は、ステップ信号である(第6の構成)。これにより、制御対象のむだ時間初期値を、伝達関数に対するステップ応答によって、容易に求めることができる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る試験装置は、供試体に対して駆動力を与える制御対象と、前記制御対象を制御する制御装置と、前記制御装置に対し、推定したむだ時間を出力する、第1から第6の構成のうちいずれか一つに記載のむだ時間推定装置と、を備える(第7の構成)。
【0022】
これにより、供試体の試験装置において、前記供試体に駆動力を与える制御対象のむだ時間を、むだ時間推定装置で精度良く推定することができる。よって、制御対象を、設計した制御系で制御することができるため、試験装置を精度良く駆動することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施形態に係るむだ時間推定装置は、制御対象の伝達関数からむだ時間要素を除いた要素の周波数特性をG^/e-L^1sとし、前記制御対象のむだ時間要素を含まない伝達関数をG^′とした場合に、式(1)の評価関数Jの値が最小になるむだ時間L^′1を求める。これにより、制御対象のむだ時間を精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態1に係るむだ時間推定装置を備えた試験装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、実施形態1に係る制御装置のブロック線図である。
図3図3は、むだ時間の推定精度による違いを説明するための制御系を用いた場合のボード線図である。
図4図4は、むだ時間推定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態2に係るむだ時間推定装置を備えた試験装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図6図6は、制御対象にランダム信号を入力して測定した周波数特性と、評価関数を用いて求めた伝達関数との関係の一例を示す図である。
図7図7は、ステップ応答の一例を示す図である。
図8図8は、実測したステップ応答の一例と、モデルを用いて求めたステップ応答の一例とを比較して示す図である。
図9図9は、むだ時間推定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、その他の実施形態に係る制御装置のブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
<実施形態1>
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態1に係るむだ時間推定装置6を備えた試験装置1の概略構成を機能ブロックで示す図である。この試験装置1は、自動車のモータなどの供試体Mの特性を試験するための試験装置である。なお、試験装置1で試験する供試体Mは、モータ以外の回転体であってもよい。
【0027】
具体的には、試験装置1は、制御装置2と、モータ駆動回路3と、電動モータ4と、トルク検出器5と、むだ時間推定装置6とを備える。
【0028】
制御装置2は、入力指令であるモータトルク指令rと後述のフィードバック値とを用いて、モータ駆動回路3に対する駆動指令を生成する。制御装置2は、トルク検出器5の出力値を用いてモータトルク指令rに対して負帰還するフィードバックループ10を有する(図2参照)。なお、制御装置2が前記駆動指令を生成する構成は、従来と同様であるため、制御装置2の詳しい説明は省略する。フィードバックループ10の構成については後述する。
【0029】
モータ駆動回路3は、特に図示しないが、複数のスイッチング素子を有する。モータ駆動回路3は、前記駆動指令に基づいて前記複数のスイッチング素子が駆動することにより、電動モータ4の図示しないコイルに電力を供給する。
【0030】
電動モータ4は、図示しない回転子及び固定子を有する。前記固定子のコイルにモータ駆動回路3から電力が供給されることにより、前記回転子が前記固定子に対して回転する。前記回転子は、図示しない中間軸を介して、供試体Mに対し、供試体Mと一体で回転可能に連結されている。これにより、前記回転子の回転によって、電動モータ4から供試体Mにトルクを出力することができる。なお、電動モータ4の構成は、一般的なモータの構成と同様であるため、電動モータ4の詳しい説明は省略する。
【0031】
トルク検出器5は、電動モータ4と供試体Mとを接続する中間軸に設けられている。トルク検出器5は、電動モータ4から出力されたトルクを検出する。トルク検出器5で検出されたトルクの出力値は、制御装置2にフィードバックループ10の入力値として入力される。すなわち、トルク検出器5の出力値は、フィードバック制御に用いられる。なお、トルク検出器5の構成は、従来の構成と同様であるため、トルク検出器5の詳しい説明は省略する。
【0032】
本実施形態において、制御装置2は、図2に示すように、入力指令であるモータトルク指令rに対してトルク検出器5の出力値をフィードバックするフィードバックループ10を有する。すなわち、本実施形態の試験装置1は、制御装置2、モータ駆動回路3、電動モータ4及びトルク検出器5を含み且つ供試体Mを含まない制御系によって、電動モータ4の駆動を制御する。
【0033】
なお、図2において、rはモータトルク指令としての目標値であり、yはトルク検出器5の出力値であり、KDは微分係数であり、sは微分要素であり、Fdはフィルタ52の伝達関数である。
【0034】
また、図2における符号Pは制御対象であり、本実施形態では、制御対象Pは、モータ駆動回路3、電動モータ4及びトルク検出器5を含む。なお、制御対象Pには、電動モータ4と供試体Mとを接続する中間軸のうち、電動モータ4からトルク検出器5までの範囲も含む。すなわち、制御対象Pは、供試体Mに駆動力を与える。
【0035】
フィードバックループ10は、微分要素sを含む微分フィードバック系である。フィードバックループ10には、トルク検出器5の出力値が入力される。フィードバックループ10は、減衰比調整部51と、フィルタ52とを有する。減衰比調整部51は、微分要素s及び微分係数KDによって、制御対象に対する減衰比を調整する。フィルタ52は、トルク検出器5の出力値からむだ時間の影響を排除する。フィードバックループ10では、トルク検出器5の出力値は、フィルタ52及び減衰比調整部51によって処理された後、フィードバック値としてモータトルク指令rに負帰還される。
【0036】
ところで、試験装置1において制御対象Pを制御する際には、制御装置2のサンプリング周期及び通信等によって、モータトルク指令rに対して供試体Mに入力されるトルクが遅れを生じる。このような遅れは、いわゆるむだ時間と呼ばれ、制御対象Pの制御に影響を与える。
【0037】
よって、むだ時間を考慮して制御系を設計する場合、制御対象Pのむだ時間を精度良く推定し、推定したむだ時間を用いて制御対象Pを制御する必要がある。例えば、むだ時間を考慮してフィードフォワード制御系を設計した場合、図3に示すように、推定したむだ時間に誤差がない場合(図3の実線)に対して、推定したむだ時間に誤差がある場合には、破線及び一点鎖線のように、設計した制御性能と異なる特性になる。
【0038】
むだ時間推定装置6は、制御対象Pのむだ時間を推定する。本実施形態の場合、むだ時間推定装置6によって推定されたむだ時間は、制御装置2のフィルタ52において、トルク検出器5の出力値からむだ時間の影響を考慮する際に用いられる。
【0039】
なお、以下の説明では、文章表記の都合上、数式及び図において各文字の上に付される“^”を、各文字の後ろに記載する。
【0040】
図1に示すように、むだ時間推定装置6は、周波数特性取得部11と、初期値設定部12と、むだ時間演算部13とを備える。
【0041】
周波数特性取得部11は、制御対象Pにランダム信号(信号)を入力して周波数特性G(応答結果)を取得する前記ランダム信号は、予測できない変動を有する信号である。本実施形態では、前記ランダム信号として、例えばホワイトノイズの信号を用いる。
【0042】
初期値設定部12は、むだ時間推定装置6で用いる、むだ時間初期値L^1及びむだ時間要素を除いた伝達関数を取得する。前記むだ時間初期値及びむだ時間要素を除いた伝達関数は、図示しない記憶部に予め記憶されていてもよいし、むだ時間推定装置6に入力されたデータから得た値であってもよい。
【0043】
むだ時間演算部13は、初期値設定部12で取得したむだ時間初期値L^1及びむだ時間要素を除いた伝達関数G^/e-L^´1sをそれぞれ変数として、該伝達関数G^/e-L^´1sの周波数特性G^´と前記変数とで構成される式(1)の評価関数Jの値が最小になるL^´1を求める。具体的には、むだ時間演算部13は、式(1)を用いて、シンプレックス法などの手法によって、最適解を求める。
【数2】
【0044】
以上のように式(1)式を用いて制御対象Pにおけるむだ時間L^´1を求めることにより、むだ時間L^´1を精度良く求めることができる。
【0045】
上述の構成を有するむだ時間推定装置6を、試験装置1が有することにより、供試体Mに駆動力を与える制御対象Pのむだ時間を、むだ時間推定装置6で精度良く推定することができる。よって、制御対象Pを、設計した制御系で制御することができるため、むだ時間の推定誤差の影響を抑えて、試験装置1を精度良く駆動することができる。
【0046】
(むだ時間推定装置の動作)
次に、上述の構成を有するむだ時間推定装置6の動作を、図4に示すフローを用いて説明する。
【0047】
図4に示すフローがスタートすると、ステップSA1において、むだ時間推定装置6の周波数特性取得部11は、制御対象Pにランダム信号を入力する。続くステップSA2で、周波数特性取得部11は、制御対象Pにランダム信号を入力した際の出力から周波数特性Gを測定する。
【0048】
その後、ステップSA3で、むだ時間演算部13は、初期値設定部12で取得したむだ時間初期値L^1及びむだ時間要素を除いた伝達関数G^/e-L^´1sをそれぞれ変数として、該伝達関数G^/e-L^´1sの周波数特性G^´と前記変数とで構成される既述の式(1)の評価関数Jの値が最小になるL^´1を求める。具体的には、むだ時間演算部13は、既述の式(1)を用いて、シンプレックス法などの手法によって、最適解を求める。
【0049】
これにより、制御対象Pのむだ時間L^´1を精度良く求めることができる。
【0050】
<実施形態2>
(全体構成)
図5に、実施形態2に係るむだ時間推定装置60を備えた試験装置101の概略構成を機能ブロックで示す。この試験装置101は、むだ時間推定装置60の構成以外は、実施形態1の試験装置1と同様の構成を有する。よって、以下では、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
なお、以下の説明でも、文章表記の都合上、数式及び図において各文字の上に付される“^”を、各文字の後ろに記載する。
【0052】
図5に示すように、むだ時間推定装置60は、伝達関数取得部61と、むだ時間初期値取得部62と、周波数特性取得部63と、むだ時間演算部64とを備える。
【0053】
伝達関数取得部61は、制御対象Pにランダム信号(信号)を入力して得られた周波数特性G(応答結果)から、制御対象Pの伝達関数G^を取得する。制御対象Pにランダム信号を入力して得られた周波数特性Gの一例を図6に実線で示す。伝達関数G^は、後述のむだ時間初期値取得部62でむだ時間初期値L^1を取得するために用いられる伝達関数である。前記ランダム信号は、予測できない変動を有する信号である。本実施形態では、前記ランダム信号として、例えばホワイトノイズの信号を用いる。
【0054】
伝達関数取得部61は、式(2)の評価関数J0の値が最小になる伝達関数G^を求める。具体的には、伝達関数取得部61は、式(2)の評価関数J0の値が最小になるように、式(3)に示す伝達関数の一般式における、分母及び分子の次数、a0〜amの値及びb0〜bnの値を求める。図6に、評価関数J0の値が最小になる伝達関数G^を求める際に繰り返し演算で得られる伝達関数の計算結果の一例(計算例)を、破線で示す。
【数3】
【数4】
【0055】
むだ時間初期値取得部62は、伝達関数取得部61で取得した伝達関数G^を用いて、制御対象Pのむだ時間初期値L^1を取得する。具体的には、むだ時間初期値取得部62は、伝達関数G^を有する制御対象Pのモデルに対してステップ信号(所定の入力信号)を入力することにより得られるステップ応答から、むだ時間初期値L^1を取得する。図7に、前記ステップ応答の一例を示す。本実施形態では、図7に示すように、むだ時間初期値取得部62は、前記ステップ応答において、前記ステップ信号の入力時(図7における時間0)から出力値が閾値Xを超えるまでの時間を、むだ時間初期値L^1として取得する。閾値Xは、例えば、ステップ応答の収束値に対して所定の割合(例えば10%)の値に設定される。
【0056】
なお、むだ時間初期値取得部62は、前記ステップ応答において、前記ステップ信号の入力時から出力値の移動平均値が閾値を超えるまでの時間を、むだ時間初期値L^1として取得してもよい。
【0057】
ところで、トルク指令によって駆動されるモータにステップ信号を入力した場合、前記モータが加速し続けて該モータの速度上限に達する可能性がある。そのため、前記ステップ信号の調整が必要である。これに対し、上述のように、制御対象Pの伝達関数G^を求めるとともに、その伝達関数G^を有するモデルに対してステップ信号を入力してステップ応答を得ることにより、制御対象Pに対してステップ信号を直接入力しなくても、制御対象Pにおけるむだ時間初期値L^1を取得できる。したがって、前記ステップ信号の調整が不要になり、制御対象Pにおけるむだ時間初期値L^1を容易に取得できる。
【0058】
また、上述のようにむだ時間初期値L^1を求めることにより、制御対象Pの周波数特性Gを取得する過程及び伝達関数G^を推定する過程の少なくとも一方の過程において、ノイズ処理を行うことにより、伝達関数G^を有するモデルのステップ応答にノイズの影響が現れにくくすることができる。図8に、ステップ応答の実測結果と、上述のように伝達関数G^を有するモデルを用いて求めたステップ応答とを比較して示す。図8に示すように、ノイズの少ない周波数特性を得ることができる。これにより、前記ステップ応答から、むだ時間初期値L^1を容易に取得することができる。
【0059】
なお、制御対象Pに対してステップ信号を入力することにより得られるステップ応答から、むだ時間初期値を取得してもよい。この場合にも、得られたステップ応答において、前記ステップ信号の入力時から出力値が閾値Xを超えるまでの時間を、前記むだ時間初期値として取得してもよいし、前記ステップ信号の入力時から出力値の移動平均値が閾値を超えるまでの時間を、前記むだ時間初期値として取得してもよい。
【0060】
周波数特性取得部63は、伝達関数取得部61で取得した伝達関数G^と、むだ時間初期値取得部62で取得したむだ時間初期値L^1を用いて求められるむだ時間要素e-L^´1sとを用いて、伝達関数G^からむだ時間初期値L^1を用いて求められるむだ時間要素を除いたG^/e-L^´1sの周波数特性を求める。
【0061】
ここで、L^´1は、例えば、以下の関係を満たす値である。なお、L^´1は、L^1を基準とした他の範囲で規定された値であってもよい。
L^1min=L^1−L^1/10
L^1max=L^1+L^1/10
L^1min≦L^´1≦L^1max
【0062】
むだ時間演算部64は、式(1)の評価関数Jの値が最小になるL^´1を求める。
【数5】
【0063】
なお、式(1)において、G^/e-L^´1sの導出には、伝達関数取得部61で求めたG^を用いてもよいし、制御対象Pにランダム信号を入力して得られた周波数特性Gを用いてもよい。
【0064】
これにより、L^1min≦L^´1≦L^1maxを満たすL^´1のうち、式(1)の評価関数Jの値が最小になる値を求めることができる。このように、むだ時間初期値L^1を基準とした所定の範囲内で且つ式(1)の評価関数Jの値が最小になる値を求めることにより、むだ時間初期値L^1を精度良く求めることができない場合でも、制御対象Pのむだ時間を精度良く推定することができる。
【0065】
以上のように式(1)式を用いて制御対象Pにおけるむだ時間L^´1を求めることにより、むだ時間L^´1を精度良く求めることができる。
【0066】
しかも、本実施形態のようにむだ時間初期値L^1を求めることにより、制御対象Pのむだ時間により近いむだ時間初期値を求めることができる。よって、実施形態1の構成に比べて、制御対象Pのむだ時間を迅速に推定することができる。
【0067】
(むだ時間推定装置の動作)
次に、上述の構成を有するむだ時間推定装置60の動作を、図9に示すフローを用いて説明する。
【0068】
図9に示すフローがスタートすると、ステップSB1において、むだ時間推定装置60の伝達関数取得部61は、制御対象Pにランダム信号を入力する。続くステップSB2で、伝達関数取得部61は、制御対象Pにランダム信号を入力した際の出力から周波数特性Gを測定する。その後、ステップSB3で、伝達関数取得部61は、周波数特性Gを用いて、既述の式(2)の評価関数J0が最小になるように制御対象Pの伝達関数G^を推定する。
【0069】
次に、むだ時間初期値取得部62は、伝達関数G^を有する制御対象Pのモデルに対してステップ信号を入力して、ステップ応答を取得する(ステップSB4)。その後、むだ時間初期値取得部62は、前記ステップ応答から、むだ時間初期値L^1を取得する(ステップSB5)。この際、むだ時間初期値取得部62は、前記ステップ応答において、ステップ信号の入力から出力値が閾値を超えるまでの時間を、むだ時間初期値L^1として取得する。
【0070】
続くステップSB6では、周波数特性取得部63は、ステップSB3で取得した伝達関数G^からむだ時間初期値L^1を用いて求められるむだ時間要素を除いたG^/e-L^´1sの周波数特性を求める。ここで、L^´1は、例えば、以下の関係を満たす値である。
L^1min=L^1−L^1/10
L^1max=L^1+L^1/10
L^1min≦L^´1≦L^1max
【0071】
そして、ステップSB6では、むだ時間演算部64は、既述の式(1)の評価関数Jが最小になるように制御対象Pにおけるむだ時間L^´1を求める。
【0072】
これにより、制御対象Pのむだ時間L^´1を精度良く求めることができる。
【0073】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0074】
前記各実施形態では、制御装置2は、微分フィードバック系を有する。しかしながら、制御装置は、制御対象におけるむだ時間が影響する制御系であれば、他の制御系を有していてもよい。
【0075】
例えば、制御装置102は、図10に示す2自由度制御系を有していてもよい。制御装置102は、フィードフォワードループ120を有する。制御装置102では、フィードフォワードループ120で伝達関数の逆モデルを用いている。そのため、むだ時間を除いた伝達関数を求める必要がある。よって、制御装置102では、制御性能を向上するために、むだ時間を精度良く推定することが要求される。
【0076】
なお、図10において、符号112は、フィードバック系のコントローラである。また、符号111,121は、フィードフォワード系のコントローラである。
【0077】
前記実施形態2では、むだ時間初期値取得部62は、伝達関数G^を有する制御対象Pのモデルに対してステップ信号を入力することにより得られるステップ応答から、むだ時間初期値L^1を取得する。しかしながら、むだ時間初期値取得部は、前記モデルにおけるランプ応答から、むだ時間初期値を取得してもよい。すなわち、むだ時間初期取得部は、応答から、むだ時間初期値を取得できれば、前記モデルに対してどのような種類の信号を入力してもよい。なお、得られるむだ時間初期値の精度を考慮すると、前記モデルからステップ応答を得るのが最も好ましい。
【0078】
前記各実施形態では、制御対象Pは、モータ駆動回路3、電動モータ4及びトルク検出器5を含む。しかしながら、制御対象は、供試体に駆動力を与えることができる構成を有していれば、他の構成を含んでもよいし、他の構成を有する軸系を含んでいてもよい。
【0079】
前記各実施形態では、むだ時間推定装置6,60は、試験装置1に設けられている。しかしながら、むだ時間推定装置は、むだ時間の推定を必要とする他の装置に設けられていてもよいし、単独で構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、制御対象のむだ時間を推定するむだ時間推定装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1、101 試験装置
2、102 制御装置
3 モータ駆動回路
4 電動モータ
5 トルク検出器
6、60 むだ時間推定装置
10 フィードバックループ
11、63 周波数特性取得部
12、64 初期値設定部
13 むだ時間演算部
51 減衰比調整部
52 フィルタ
61 伝達関数取得部
62 むだ時間初期値取得部
112 フィードバック系のコントローラ
120 フィードフォワードループ
111、121 フィードフォワード系のコントローラ
P 制御対象
M 供試体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10