【解決手段】ドライブレコーダ20において、煽り判断部22は、カメラ10により生成された車両周辺画像10Aに基づいて、車両が煽り運転を受けているか否かを判断する。車両が煽り運転を受けていると判断された場合、記録制御部23は、煽り運転を受けていると判断された時刻を含む保護期間において生成された記録対象画像51を記録部29に記録するとともに、記録対象画像51を保護する。優先度決定部24は、車間距離に基づいて、記録対象画像51の保護優先度33を決定する。記録制御部23が記録対象画像51の少なくとも1つの保護解除を決定した場合、選択部は、記録対象画像51に対応する保護優先度33に基づいて、保護を解除する記録対象画像51を選択する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
[1.構成]
[1.1.記録装置20の配置]
図1は、本発明の実施形態に係る記録装置を搭載した車両1の概略図である。
図1を参照して、車両1は、カメラ10と、記録装置20とを搭載する。
図1において、カメラ10及び記録装置20を実線により明確に示している。カメラ10及び記録装置20は、実際には車両1の内部に配置される。
【0025】
以下の説明において、車両1の前方は、車両1の直進方向であって、運転席からステアリングホイールに向かう方向である。車両1の後方は、車両1の前方の反対方向である。
【0026】
カメラ10は、車両1の後部に設置されたリアカメラである。カメラ10は、車両1の後方の景色を撮影して車両周辺画像10Aを生成する。車両周辺画像10Aは、複数のフレームを含む動画像である。カメラ10は、生成した車両周辺画像10Aを記録装置20に送信する。
【0027】
記録装置20は、車両1のダッシュボードの近傍に設置される。記録装置20は、車両周辺画像10Aをカメラ10から受け、その受けた車両周辺画像10Aを記憶する。記録装置20は、カメラ10と有線により接続される。なお、記録装置20は、カメラ10と無線通信してもよい。
【0028】
[1.2.記録装置20の構成]
図2は、
図1に示す記録装置20の構成を示す機能ブロック図である。
図2を参照して、記録装置20は、画像取得部21と、煽り判断部22と、記録制御部23と、優先度決定部24と、車両特定部25と、車両状態取得部26と、補正部27と、選択部28と、記録部29とを備える。
【0029】
画像取得部21は、車両周辺画像10Aをカメラ10から取得し、その取得した車両周辺画像10Aを、煽り判断部22と記録制御部23と車両特定部25とに出力する。具体的には、画像取得部21は、車両周辺画像10Aに含まれるフレーム10Fを取得するたびに、その取得したフレーム10Fを煽り判断部22と記録制御部23と車両特定部25とに出力する。
【0030】
煽り判断部22は、車両周辺画像10Aを画像取得部21から受け、その受けた車両周辺画像10Aに基づいて、車両1が他の車両から煽り運転を受けているか否かを判断する。詳細については後述するが、煽り判断部22は、車両1と、フレーム10Fに含まれる他の車両との車間距離に基づいて、煽り運転を受けているか否かを判断する。
【0031】
煽り判断部22は、煽り運転を受けていると判断した場合、煽り運転を受けていると判断した判断時刻と、車両1と他の車両との車間距離とを含む煽り検出情報31を、記録制御部23及び優先度決定部24に出力する。煽り判断部22は、煽り運転を受けていると判断した場合、フレーム10Fにおける他車両の領域を示す検出領域情報32を車両特定部25に出力する。
【0032】
以下の説明において、煽り判断部22が煽り運転を受けていると判断することを、「煽り判断部22が煽り運転を検出する」と記載する場合がある。
【0033】
記録制御部23は、煽り検出情報31を煽り判断部22から受け、その受けた煽り検出情報31から煽り判断時刻を取得する。記録制御部23は、その取得した煽り判断時刻を含む保護期間を設定する。記録制御部23は、カメラ10が生成した車両周辺画像10Aのうち、保護期間に生成された記録対象画像51を記録部29に記録する。記録制御部23は、記録部29に記録された記録対象画像51が上書きされないように保護する。
【0034】
優先度決定部24は、煽り検出情報31を煽り判断部22から受け、その受けた煽り検出情報31に含まれる距離に基づいて記録対象画像51の保護優先度33を決定する。保護優先度33は、記録部29に記録された記録対象画像51のうち、保護を解除する記録対象画像51をするために用いられる。優先度決定部24は、決定された保護優先度33を補正部27に出力する。
【0035】
車両特定部25は、フレーム10Fを画像取得部21から受け、検出領域情報32を煽り判断部22から受ける。車両特定部52は、検出領域情報32を用いて、煽り運転をする車両をフレーム10Fから特定できる否かを判断する。車両特定部25は、煽り運転をする車両の運転者又はナンバープレートを特定できる場合、当該車両を特定できると判断する。車両特定部25は、車両を特定できるか否かを示す特定結果情報34を補正部27に出力する。
【0036】
車両状態取得部26は、車両1の走行状態を示す車両状態情報35を取得する。車両状態情報35は、車両1の速度と、ワイパー駆動信号とを含む。ワイパー駆動信号は、ワイパーが駆動しているか否かを示す。車両状態取得部26は、取得した車両状態情報35を補正部27に出力する。
【0037】
補正部27は、保護優先度33を優先度決定部24から受け、その受けた保護優先度33を補正する。具体的には、補正部27は、煽り運転をする車両を特定できることを示す特定結果情報34を車両特定部25から受けた場合、保護優先度33を高くする。補正部27は、車両状態情報35に含まれるワイパー駆動信号及び車両1の速度の各々に基づいて、保護優先度33を補正する。補正部27は、煽り運転を受けている期間の長さと、煽り運転を受けている期間における車両の接近回数とに基づいて、保護優先度33を補正する。保護優先度33の補正の詳細については、後述する。
【0038】
補正部27は、補正された保護優先度33を記録制御部23に出力する。記録制御部23は、補正された保護優先度33を記録部29に記録する。
【0039】
選択部28は、記録部29に記録された記録対象画像51の少なくとも1つの保護を解除すると記録制御部23が判断した場合、複数の記録対象画像51に対応する複数の保護優先度33を記録部29から取得する。選択部28は、取得した複数の保護優先度33に基づいて、保護を解除する記録対象画像51を選択する。選択部28は、選択した記録対象画像51を記録制御部23に通知する。記録制御部23は、選択部28から通知された記録対象画像51の保護を解除する。保護を解除された記録対象画像51は、新たに生成された車両周辺画像10Aにより上書きされる。
【0040】
記録部29は、不揮発性の記憶装置であり、メモリコントローラ291と、フラッシュメモリ292とを含む。メモリコントローラ291は、フラッシュメモリ292へのアクセスを制御する。フラッシュメモリ292は、記録対象画像51及び保護優先度33を記憶する記憶媒体である。
【0041】
[2.記録装置20の動作]
[2.1.動作概略]
図3は、
図2に示すフラッシュメモリ292における記憶領域の一例を示す図である。
図3を参照して、フラッシュメモリ292は、画像領域41と、管理領域42とを含む。
【0042】
画像領域41は、カメラ10により生成された車両周辺画像10Aを記憶する。
図3に示す例では、画像領域41は、記録対象画像51A〜51Eと、一時保存画像52A〜52Fとを記憶している。一時保存画像52A〜52Fは、画像領域41に記憶された車両周辺画像10Aのうち、保護されない画像である。一時保存画像52A〜52Fは、カメラ10により新たに生成された車両周辺画像10Aにより上書きされる。
【0043】
画像領域41は、リングバッファである。記録制御部23は、画像取得部21から受けた車両周辺画像10Aを、一時保存画像として画像領域41に記憶する。詳細については後述するが、一時保存画像のうち保護期間に対応する画像が、記録対象画像51として保護される。画像領域41の全領域が使用された場合、一時保存画像52A〜52Fが、新たな車両周辺画像10Aにより上書きされる。
【0044】
管理領域42は、画像領域41に記録された記録対象画像51を管理するためのデータを記憶する。具体的には、管理領域42は、優先度テーブル61と補正テーブル62と優先度記録データ63とを記憶する。優先度テーブル61は、記録対象画像51の保護優先度33の決定に用いられる。補正テーブル62は、記録対象画像51の保護優先度33の補正に用いられる。優先度記録データ63は、記録対象画像51の保護に用いられる。
【0045】
記録制御部23は、煽り判断部22による煽り運転の検出に伴って保護期間を設定した場合、画像領域41に記憶された一時保存画像のうち、保護期間に対応する画像を記録対象画像51として保護する。具体的には、記録制御部23は、記録対象画像51の記憶領域を特定するアドレスと、記録対象画像51の保護優先度とを優先度記録データ63に記録する。つまり、記録制御部23は、保護期間に対応する車両周辺画像10Aを記憶するアドレス空間を優先度記録データ63に記録する。記録制御部23は、優先度記録データ63に記録されたアドレス空間のデータを、上書き対象から除外することにより、記録対象画像51を保護する。
【0046】
画像領域41において、記録対象画像51を記録できるサイズの上限値が予め設定されている。上限値は、例えば、画像領域41の記憶領域の50%である。記録制御部23が、煽り判断部22による煽り運転の検出に伴って保護期間を新たに設定した場合、選択部28は、画像領域41における記録対象画像51のデータサイズの合計値を算出し、算出した合計値が上限値を超えているか否かを判断する。
【0047】
算出した合計値が上限値を超えている場合、選択部28は、優先度記録データ63を参照して、画像領域41に記録されている記録対象画像51のうち、最も保護優先度の低い記録対象画像51を選択する。選択部28は、選択した記録対象画像51の保護解除を記録制御部23に通知する。記録制御部23は、選択部28から通知された記録対象画像51に関するデータを優先度記録データ63から削除する。通知された記録対象画像51は、一時保存画像として管理されるため、カメラ10により新たに生成された車両周辺画像10Aにより上書きされる。
【0048】
このように、記録対象画像51のデータサイズが上限値を超えた場合、記録装置20は、優先度の最も低い記録対象画像の保護を解除する。優先度の高い記録対象画像51の記録が継続されるため、優先的に保護すべき画像が消去されることを抑制できる。
【0049】
[2.2.動作詳細]
図4は、
図1に示す記録装置20の動作を示すフローチャートである。
図4を参照しながら、記録装置20の動作を詳しく説明する。記録装置20は、車両1のイグニッションスイッチがオンになった場合に
図4に示す処理を開始する。
【0050】
記録装置20は、画像取得部21により取得された車両周辺画像10Aを一時保存画像として画像領域41に記憶する処理を、
図4に示す処理と並行して実行する。
【0051】
(煽り運転の検出)
煽り判断部22は、フレーム10Fを画像取得部21から受けるたびに、その受けたフレーム10Fを用いて、車両1が煽り運転を受けているか否かを判断する(ステップS101)。煽り判断部22は、車両1が煽り運転を受けていると判断した場合(ステップS101においてYes)、煽り判断部22は、煽り運転を受けているとの判断に用いたフレーム10Fを用いて、車間距離を取得する(ステップS103)。
【0052】
煽り判断部22は、煽り運転を受けていると判断した判断時刻と、ステップS103で取得した車間距離とを含む煽り検出情報31を、記録制御部23及び優先度決定部24に出力する。記録制御部23は、煽り検出情報31に含まれる判断時刻を、煽り開始時刻として特定する(ステップS102)。
【0053】
以下、
図5〜
図7を用いて、煽り運転を検出する煽り判断部22の動作を詳しく説明する。
図5は、車両1と、煽り運転を行う車両2との位置関係の一例を示す図である。
図5は、車両1を基準とした車両2の相対位置の変化を示す。従って、
図5において、車両1が見かけ上停止している。車両1及び2は、矢印Aの方向に直進している。以下の説明において、車両1から車両2までの車間距離を、単に「車間距離」と記載する。
【0054】
図5を参照して、距離D1は、時刻T1における車間距離である。基準距離Dthは、車両1が煽り運転を受けているか否かを判断するための閾値である。車間距離が基準距離Dthを下回った場合、煽り判断部22は、車両1が煽り運転を受けていると判断する。距離D1が基準距離Dthよりも長いため、煽り判断部22は、時刻T1において、車両1が煽り運転を受けていないと判断する。
【0055】
距離D2は、時刻T2における車間距離である。時刻T2は、時刻T1よりも後の時刻である。距離D2が基準距離Dth以下であるため、煽り判断部22は、時刻T2において、車両1が煽り運転を受けていると判断する。
【0056】
図6は、時刻T1に生成されたフレーム10Fの一例を示す図である。フレーム10Fの原点は、左上頂点である。X軸は、フレーム10Fの横方向を示す。X軸の正方向は、
図6において原点から右方向である。Y軸は、フレーム10Fの縦方向を示す。Y軸の正方向は、
図6において原点から下方向である。基準線Lthは、
図5に示す基準距離Dthに対応する。カメラ10に搭載されるレンズの収差によっては、
図6に示す基準線Lthは、曲線となる場合がある。
【0057】
煽り判断部22は、エッジをフレーム10Fから抽出することにより、エッジ画像を生成する。エッジ画像の横方向及び縦方向のサイズは、フレーム10Fの横方向及び縦方向のサイズと同じである。煽り判断部22は、エッジ画像において左右中心軸の方向に位置する矩形状の物体を車両2として検出し、車両2が描かれている領域R21を特定する。
【0058】
図6において、領域R21は、基準距離Dthを示す基準線Lthよりも上に位置する。つまり、領域R21の下辺のY座標値は、基準線LthのY座標値よりも小さい。この場合、煽り判断部22は、車間距離が基準距離Dthよりも長いため、車両2から煽り運転を受けていると判断しない。
【0059】
図7は、時刻T2に生成されたフレームの他の例を示す図である。煽り判断部22は、
図7に示す車両周辺画像10Aから生成したエッジ画像から車両2を検出し、車両2が描かれている領域R22を特定する。
図7において、基準距離Dthを示す基準線Lthが領域R22を通過している。つまり、領域R22の下辺のY座標値は、基準線LthのY座標値よりも大きい。車間距離が基準距離Dthよりも短いため、煽り判断部22は、車両2から煽り運転を受けていると判断する。
【0060】
煽り判断部22は、車両2が描かれている領域の下辺のY座標値が基準線LthのY座標値よりも大きい状態が継続する期間を、煽り運転の検出期間として特定する。
【0061】
車間距離の特定(ステップS103)について説明する。カメラ10は、車両1の後部に固定されている。従って、フレーム10FのY座標値は、車両1の後端面からの距離を示す。煽り判断部22は、車両2が描かれている領域の下辺のY座標値を、煽り運転を検出したフレーム10Fから取得し、取得したY座標値に基づいて車間距離を取得する。煽り運転の検出時刻におけるフレーム41Fを用いて車間距離を特定するため、記録装置20は、車間距離を取得するための装置を別に備えなくてもよい。
【0062】
再び、
図4を参照して、記録装置20の動作の説明に戻る。煽り判断部22は、フレーム10Fを用いて、車両2による煽り運転の検出が終了したか否かを判断する(ステップS104)。
【0063】
車両2が描かれている領域の下辺が基準線Lthの下側領域から上側領域へ移動した場合、煽り判断部22は、煽り運転の検出を終了したと判断する(ステップS104においてYes)。記録制御部23は、煽り判断部22から最後に受けた煽り検出情報31に基づいて、煽り終了時刻を特定する(ステップS105)。
【0064】
車両2が描かれている領域の下辺が基準線Lthよりも下である場合、煽り判断部22は、煽り運転が継続していると判断する(ステップS104においてNo)。この場合、煽り判断部22は、ステップS103に戻る。つまり、煽り判断部22は、煽り運転を検出している場合、車間距離を継続的に取得する。これにより、記録装置20は、煽り運転の検出期間における車間距離の時間変化を取得することができる。
【0065】
(保護優先度33の決定)
優先度決定部24は、煽り判断部22からの煽り検出情報31の供給が停止した場合、車両2から受けた煽り運転を記録した記録対象画像51の保護優先度33を決定する(ステップS106)。
【0066】
図8は、優先度決定部24により用いられる優先度テーブル61の一例を示す図である。
図8を参照して、保護優先度33が、車間距離と対応付けられている。保護優先度33は、0から10まで数値である。記録対象画像51の重要度が最も高い場合、保護優先度33は、10である。記録対象画像51の重要度が最も低い場合、保護優先度33は、0である。優先度テーブル61に基づいて設定される保護優先度33の上限値及び下限値は、6及び4である。
図4に示すステップS107において保護優先度33が補正されることを考慮しているためである。
【0067】
車間距離が5m以上である場合、保護優先度33は6である。車間距離が3m以上5m未満である場合、保護優先度33は5である。車間距離が3m未満である場合、保護優先度33は4である。車間距離が短くなるにつれて、保護優先度33は増加する。車間距離が短くなるにつれて、煽り運転の危険度が増し、交通事故の原因となる可能性が高くなるためである。従って、優先度決定部24は、危険度の高い煽り運転を記録した記録対象画像を優先的に保護するように、保護優先度33を決定する。
【0068】
優先度決定部24は、煽り運転の検出期間中に受けた煽り検出情報31に含まれる車間距離の中で、最小の車間距離を特定する。優先度決定部24は、優先度テーブル61を参照することにより、特定した車間距離に対応する保護優先度33を決定する。
【0069】
(保護優先度33の補正)
図4を参照して、補正部27は、ステップS106により決定された保護優先度33を補正する(ステップS107)。補正部27は、ステップS107において補正された保護優先度33を記録制御部23に出力する。
【0070】
図9は、補正部27により参照される補正テーブル62の一例を示す図である。
図8を参照して、補正部27は、煽り継続時間、接近回数、速度、天候及び車両情報に基づいて、保護優先度33を補正する。
【0071】
補正部27は、煽り継続時間に基づいて補正値を決定する。具体的には、補正部27は、ステップS102で特定された煽り開始時刻から、ステップS105で特定された煽り終了時刻までの時間を、煽り継続時間として算出する。補正部27は、補正テーブル62を参照して、算出した煽り継続時間に対応する補正値を特定する。例えば、煽り継続時間が1分未満である場合、補正部27は、補正値「−1」を決定する。煽り継続時間が長くなるにつれて、執拗な煽り運転が行われていると考えられる。このため、補正値は、煽り継続時間が長くなるにつれて、保護優先度33が高くなるように補正テーブル62に設定される。継続時間を保護優先度33の補正に用いることにより、優先的に保護すべき記録対象画像51を適切に決定することができる。
【0072】
補正部27は、煽り運転の検出期間における車両2の接近回数に基づいて、補正値を決定する。具体的には、補正部27は、煽り検出情報31を、優先度決定部24を介して煽り判断部22から取得する。補正部27は、取得した煽り検出情報31に含まれる車間距離を用いて、車間距離の時間変化を取得し、車間距離が減少する期間の出現回数を接近回数としてカウントする。補正部27は、補正テーブル62を参照して、接近回数に対応する補正値を特定する。例えば、接近回数が7回以上である場合、補正部27は、補正値「+2」を決定する。
【0073】
接近回数は、車両2が車間距離を詰める回数である。接近回数が多いほど、煽り運転の悪質性が増すと考えられる。このため、補正値は、接近回数の増加に伴って保護優先度33が高くなるように補正テーブル62に設定される。記録装置20は、車間距離を用いて保護優先度33を補正することにより、優先的に保護すべき記録対象画像51を適切に決定することができる。
【0074】
補正部27は、煽り運転の検出期間における車両2の速度に基づいて、補正値を決定する。具体的には、補正部27は、車両1の速度を含む車両状態情報35を車両状態取得部26から継続的に取得している。補正部27は、煽り運転の検出期間における車両1の最高速度を特定する。補正部27は、補正テーブル62を参照して、特定した最高速度に対応する補正値を特定する。例えば、最高速度が60km/hである場合、補正部27は、補正値「0」を決定する。
【0075】
煽り運転の危険度は、煽り運転の検出期間における車両1の速度に応じて変化する。例えば、車両1が高速道路の走行中に煽り運転を受けた場合、重大事故が発生する可能性が高くなる。このため、補正値は、速度の増加に伴って保護優先度33が高くなるように補正テーブル62に設定される。記録装置20は、車両1の走行状態に基づいて保護優先度33を補正することにより、優先的に保護すべき記録体操画像51を適切に決定することができる。
【0076】
補正部27は、煽り運転の検出期間における天候に基づいて、補正値を決定する。具体的には、補正部27は、車両状態情報35に含まれるワイパー駆動信号が、煽り運転の検出期間においてオンであるか否かを判断する。煽り運転の検出期間においてワイパー駆動信号がオンでる場合、補正部27は、補正値「+1」を特定する。車両1のワイパーが駆動している場合、煽り運転の検出期間の天候は雨であると考えられる。
【0077】
雨が降っている期間において車両1が煽り運転を受けた場合、スリップ等により交通事故が発生する可能性が高くなると考えられる。補正値は、雨天時における煽り運転を記録した記録対象画像51の保護優先度が高くなるように補正テーブル62に設定される。記録装置20は、車両1の状態に基づいて保護優先度33を補正することにより、優先的に保護すべき記録体操画像51を適切に決定することができる。
【0078】
補正部27は、煽り運転をする車両の車両情報に基づいて、補正値を決定する。具体的には、補正部27は、車両特定部25から受けた特定結果情報34に基づいて、補正値を決定する。
【0079】
特定結果情報34の生成について説明する。車両特定部22は、煽り運転の検出期間において検出領域情報32を煽り判断部22から受ける。例えば、時刻T2における検出領域情報32は、
図7に示す車両2が描かれた領域R22を特定する座標値を含む。車両特定部25は、時刻T2における検出領域情報32に基づいて、時刻T2におけるフレーム10Fから領域R22の画像を抽出する。車両特定部25は、画像認識処理を用いて、車両2の運転者及びナンバープレートを、抽出した領域R22の画像から特定できるか否かを判断する。車両特定部25は、車両2の運転者及びナンバープレートの各々を特定できるか否かを示す特定結果情報34を生成し、補正部27に出力する。
【0080】
なお、車両特定部22は、領域R22の画像から人物の顔を検出できた場合、車両2の運転者の特定できたと判断すればよい。
【0081】
特定結果情報34が車両2の運転者を特定できたことを示す場合、補正部27は、補正値「+1」を決定する。特定結果情報34が車両2のナンバープレートを特定できたことを示す場合、補正部27は、補正値「+1」を決定する。車両2のナンバープレート及び運転者の両者が特定された場合、補正部27は、補正値「+2」を決定する。車両2の運転者又はナンバープレートを特定できた場合、記録対象画像51の証拠能力が高いと考えらえる。補正値は、車両2の運転者又はナンバープレートを特定できた場合に保護優先度33が高くなるように設定される。これにより、記録装置22は、煽り運転を行った車両を特定できる車両周辺画像51を優先的に保護できる。
【0082】
補正部27は、煽り継続時間、接近回数、速度、天候及び車両情報の各々に対応する補正値の合計を算出する。補正部27は、算出した補正値の合計を、ステップS106で決定された保護優先度33に加算することにより、保護優先度33が補正される。
【0083】
(記録対象画像の保護解除)
図4を参照して、記録制御部23は、画像領域41に記録された記録対象画像51のデータサイズが上限値よりも大きいか否かを判断する(ステップS108)。
図3に示す例では、記録制御部23は、記録対象画像51A〜51Eのデータサイズの合計を算出し、算出したデータサイズの合計を上限値と比較する。
【0084】
算出したサイズの合計が上限値以下である場合(ステップS108においてNo)、記録制御部23は、煽り運転の検出期間に生成された車両周辺画像10Aを記録対象画像51として保護するために、ステップS111に進む。ステップS111については後述する。
【0085】
算出したサイズの合計が上限値よりも大きい場合(ステップS108においてNo)、記録制御部23は、画像領域41に記憶されている記録対象画像51の少なくとも1つの保護を解除する必要があると判断する。記録対象画像51のサイズが上限値よりも大きい場合、新たな記録対象画像51を記録部29に記録できない虞があるためである。この場合、選択部28が、管理領域42に記録されている優先度記録データ63に基づいて、保護を解除する記録対象画像を選択する(ステップS109)。
【0086】
図10は、
図3に示す管理領域42に記録される優先度記録データ63の一例を示す図である。
図10に示す優先度記録データ63は、
図3に示す記録体操画像51A〜51Eの保護に用いられる。優先度記録データ63は、IDと、開始アドレスと、終了アドレスと、記録時刻と、ファイル名とを記録する。IDは、記録対象画像51の各々を一意に特定する識別番号である。開始アドレス及び終了アドレスは、フラッシュメモリ292における記録対象画像51の記憶領域を示す。優先度は、ステップS107で補正された保護優先度33を示す。記録時刻は、煽り運転が最初に検出された時刻を示す。
【0087】
選択部28は、優先度記録データ63に記録された記録対象画像51のうち、優先度の最も低い記録対象画像51を選択する。
図10に示す例では、記録対象画像51Dの保護優先度33が最も低いため、選択部28は、保護の解除対象として記録対象画像51Dを選択し、選択した記録対象画像51Dを記録制御部23に通知する。
【0088】
再び
図4を参照して、記録制御部23は、ステップS109で選択された記録対象画像51の保護を解除する(ステップS110)。
図10に示す例では、記録対象画像51Dが保護解除対象として選択されるため、記録制御部23は、記録対象画像51Dを記録したレコードを優先度記録データ63から削除する。レコードは、優先度記録データ63において各IDに対応する横一行のデータである。保護が解除された結果、記録対象画像51Dは、一時保存データとして記憶領域に記憶される。なお、記録対象画像51Dは、保護が解除された後に直ちに上書きされるとは限らない。画像領域41はリングバッファであるためである。
【0089】
ステップS109において、複数の記録対象画像51が、保護の解除対象として選択される場合がある。この場合、選択部28は、選択された複数の記録対象画像51のうち、記録時刻の最も古い記録対象画像51を保護の解除対象として再度選択すればよい。
【0090】
(記録対象画像51の保護)
上述のように、記録装置20は、
図4に示す処理と並行して、車両周辺画像10Aを画像領域41に記憶する処理を実行している。記録制御部23は、ステップS111〜S112を実行して、煽り判断部22により検出された煽り運転を撮影した車両周辺画像10Aを、新たな記録対象画像51として保護する。
【0091】
記録制御部23は、画像領域41における新たな記録対象画像51の記憶領域を、優先度記録データ63に追加する(ステップS111)。具体的には、記録制御部23は、新たなレコードを優先度記録データ63に追加し、新たに追加したレコードにIDを設定する。記録制御部23は、新たに追加されたレコードにおける記録時刻の欄に、煽り開始時刻を書き込む。記録制御部23は、煽り開始時刻に対応するフレーム10Fが記憶されたアドレスを、新たに追加されたレコードの開始アドレスの欄に書き込む。記録制御部23は、煽り終了時刻に対応するフレーム10Fが記憶されたアドレスを、新たに追加されたレコードの終了アドレスの欄に書き込む。記録制御部23は、新たな記録対象画像51のファイル名を決定し、決定したファイル名を新たに追加されたレコードに設定する。
【0092】
つまり、記録制御部23は、煽り開始時刻から煽り終了時刻までの煽り継続期間を保護期間に設定し、保護期間においてカメラ10により生成された車両周辺画像10Aを記録対象画像51として保護する。
【0093】
記録制御部23は、ステップS107で補正された保護優先度33を、新たに追加されたレコードに記録する(ステップS112)。これにより、新たに検出された煽り運転に対応する記録対象画像51の保護が終了する。
【0094】
ステップS112の後に、記録装置20は、イグニッション信号がオフか否かを判断する(ステップS113)。イグニッション信号がオフである場合(ステップS113においてYes)、記録装置20は、
図4に示す処理を終了する。
イグニッション信号がオンである場合(ステップS113においてNo)、記録装置20は、ステップS101に戻り、新たな煽り運転の検出を開始する。
【0095】
以上説明したように、記録装置20は、煽り運転を検出した場合、煽り運転の検出期間に生成された車両周辺画像10Aを記録対象画像51として保護する。また、記録装置20は、車間距離に基づいて、記録対象画像51の保護優先度33を決定する。記録対象画像51のデータサイズが上限値を超えた場合、記録装置20は、優先度の最も低い記録対象画像51の保護を解除する。保護優先度33の高い記録対象画像51が消去されることを抑制できる。
【0096】
[3.変形例]
上記実施の形態において、選択部28は、ステップS109において、記録時刻から予め設定された経過時間を経過していない記録対象画像51を、保護の解除対象から除外してもよい。これにより、最も新しい記録対象画像51が削除されることを抑制できる。
【0097】
上記実施の形態において、保護期間が、煽り開始時刻から煽り終了時刻までの期間である例を説明したが、これに限られない。記録制御部23は、煽り開始時刻から所定の時間を遡った時刻を保護期間の開始時刻に設定してもよい。あるいは、記録制御部23は、煽り終了時刻から所定の時間を経過した時刻を、保護期間の終了時刻に設定してもよい。
【0098】
上記実施の形態において、優先度決定部24が、車両2が描かれている領域の下辺のY座標値に基づいて、保護優先度33を決定する例を説明したが、これに限られない。煽り判断部22は、車両2が描かれている領域がフレーム10Fにおいて占める割合に基づいて、保護優先度33を決定してもよい。この場合、優先度決定部24は、車両2が描かれている領域が占める割合の増加に伴って、保護優先度33を高くすればよい。
【0099】
上記実施の形態において、カメラ10は、車両1の後方の景色を撮影する例を説明したが、これに限られない。カメラ10は、車両1の前方、左方及び右方を撮影してもよい。また、カメラ10は、スマートフォン、携帯電話等の携帯通信端末であってもよい。
【0100】
上記実施の形態において、記録装置20は、車両1に搭載された複数のカメラ10により生成された複数の車両周辺画像10Aを記録してもよい。複数のカメラのうち一のカメラが煽り運転を検出した場合、記録装置20は、当該一のカメラにより生成された車両周辺画像10Aを保護してもよいし、複数のカメラ10により生成された複数の車両周辺画像10Aを保護してもよい。
【0101】
上記実施の形態において、補正部27が、ステップS106で決定された保護優先度33を補正する例を説明したが、これに限られない。記録装置20は、補正部27を備えなくてもよい。この場合、記録装置20は、車両特定部25及び車両状態取得部26も備えなくてもよい。
【0102】
上記実施形態において、カメラ10とは、車両1の内部に配置される例を説明したが、これに限られない。カメラ10は車両1の外部に配置されてもよい。車両1の外部に配置されたカメラ10は、車両1の内部に配置されたカメラ10に比べて、車両1のガラスの影響を排除した車両周辺画像10Aを生成することができる。
【0103】
また、上記実施の形態で説明した記録装置20の各機能ブロックは、LSIなどの半導体装置により個別に1チップ化されても良いし、一部又は全部を含むように1チップ化されても良い。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0104】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。
【0105】
また、上記各実施の形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、プログラムにより実現されるものであってもよい。そして、上記各実施の形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、コンピュータにおいて、中央演算装置(CPU)により行われる。また、それぞれの処理を行うためのプログラムは、ハードディスク、ROMなどの記憶装置に格納されており、ROMにおいて、あるいはRAMに読み出されて実行される。
【0106】
また、上記実施の形態の各処理をハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア(OS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア、あるいは、所定のライブラリとともに実現される場合を含む。)により実現してもよい。さらに、ソフトウェアおよびハードウェアの混在処理により実現しても良い。
【0107】
例えば、上記実施の形態(変形例を含む)において、記録装置20の各機能ブロックをソフトウェアにより実現する場合、
図11に示したハードウェア構成(例えば、CPU、ROM、RAM、入力部、出力部等をバスBusにより接続したハードウェア構成)を用いて、各機能部をソフトウェア処理により実現するようにしてもよい。
【0108】
また、上記実施の形態における処理方法の実行順序は、必ずしも、上記実施の形態の記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えることができるものである。
【0109】
前述した方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明の範囲に含まれる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、大容量DVD、次世代DVD、半導体メモリを挙げることができる。
【0110】
上記コンピュータプログラムは、上記記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0111】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。