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特開2020-161223ガイドワイヤー、ガイドワイヤーの製造方法、及びガイドワイヤーに設けられるコネクタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-161223(P2020-161223A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】ガイドワイヤー、ガイドワイヤーの製造方法、及びガイドワイヤーに設けられるコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/58 20110101AFI20200904BHJP
   A61M 25/09 20060101ALI20200904BHJP
   A61B 5/0215 20060101ALI20200904BHJP
【FI】
   H01R24/58
   A61M25/09
   A61B5/0215 B
   A61B5/0215 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-56447(P2019-56447)
(22)【出願日】2019年3月25日
(71)【出願人】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 直義
【テーマコード(参考)】
4C017
4C267
5E223
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017EE01
4C017FF05
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB08
4C267BB29
4C267BB40
4C267BB62
4C267FF03
4C267HH04
5E223AA14
5E223AB17
5E223BA01
5E223BA06
5E223BB01
5E223BB05
5E223CB22
5E223CB24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガイドワイヤーに設けられるコネクタの強度を増し、電極リングと導線との接続作業の作業性を向上する。
【解決手段】1列で並んでおり、且つ複数の導線12を内側に通すことができる複数の電極リング21と、複数の導線12を内側に通すことができる中継リング22とを有している、ガイドワイヤーに設けられるコネクタである。前記中継リング22は、隣り合う2つの電極リング21の一方の電極リングに嵌まっている第1嵌合部22Aと、他方の電極リングに嵌まっている第2嵌合部とを有している。前記中継リング22は、前記一方の電極リングと前記他方の電極リングのうちの一方に電気的に接続され、他方に対して絶縁されている。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤーに設けられるコネクタであって、
1列で並んでおり、且つ複数の導線を内側に通すことができる第1電極リングと第2電極リングとを含む複数の電極リングと、
前記複数の導線を内側に通すことができる中継リングと
を有し、
前記中継リングは、前記第1電極リングに嵌まっている第1嵌合部と、前記第2電極リングに嵌まっている第2嵌合部とを有し、
前記中継リングは、前記第1電極リングと前記第2電極リングのうちの一方に電気的に接続され、他方に対して絶縁されている
コネクタ。
【請求項2】
前記中継リングは、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間に位置する中央部をさらに有し、
前記中継リングの第1嵌合部と第2嵌合部の長さの合計は前記中央部の長さよりも大きい
請求項1に記載されるコネクタ。
【請求項3】
前記第1電極リングと前記第2電極リングのうちの一方の電極リングに開口が形成され、
前記中継リングの外周面は、前記一方の電極リングの前記開口に対して、前記電極リングの径方向における内側に位置している部分を有している
請求項1に記載されるコネクタ。
【請求項4】
前記一方の電極リングの内周面と前記中継リングの外周面との間にある接着剤又は導電材料によって、前記電極リングと前記中継リングは互いに固定されており、
前記接着剤の少なくとも一部又は前記導電材料の少なくとも一部は、前記一方の電極リングの前記開口を通して視認可能である
請求項3に記載されるコネクタ。
【請求項5】
前記中継リング、前記第1電極リング、及び前記第2電極リングのうちの少なくとも1つのリングに開口が形成され、
前記複数の導線は、前記開口に対して前記少なくとも1つのリングの径方向における内側に位置している
請求項1に記載されるコネクタ。
【請求項6】
請求項1に記載されるコネクタと、
前記複数の導線と、を含む
ガイドワイヤー。
【請求項7】
前記中継リング、前記第1電極リング、及び前記第2電極リングのうちの少なくとも1つのリングに開口が形成され、
前記複数の導線は、前記開口に対して前記少なくとも1つのリングの径方向における内側に位置し、
前記少なくとも1つのリングと前記複数の導線のうちの1つの導線は、前記開口を通して視認可能な導電材料によって互いに接続されている
請求項6に記載されるガイドワイヤー。
【請求項8】
前記第1電極リングと前記第2電極リングのうちの一方の電極リングは、前記中継リングを介して、前記複数の導線のうちの1つに電気的に接続している
請求項7に記載されるガイドワイヤー。
【請求項9】
第1中継リングの第1嵌合部と第1電極リングとを嵌め入れ、第1電極リング組立体を形成する工程と、
第2中継リングの第1嵌合部と第2電極リングとを嵌め入れ、第2電極リング組立体を形成する工程と、
前記第1電極リング組立体の第2嵌合部と、前記第2電極リング組立体の第2電極リングと嵌め入れる工程と、
前記第1電極リング、前記第1中継リング、前記第2電極リング、及び前記第2中継リングに第1導線と第2導線とを通す工程と、
前記第1電極リングと前記第2電極リングを、前記第1導線と前記第2導線とにそれぞれ接続する工程と、を含む
ガイドワイヤーの製造方法。
【請求項10】
前記第1中継リングと前記第1電極リングのうちの一方のリングに形成された開口に導電材料を供給し、
前記第1導線と前記一方のリングとを電気的に接続する
請求項9に記載されるガイドワイヤーの製造方法。
【請求項11】
前記第1電極リングに形成されている開口を通して、前記第1電極リングと第1中継リングとの間に導電材料を供給する
請求項9に記載されるガイドワイヤーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はガイドワイヤーに設けられるコネクタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル治療において利用されるガイドワイヤーには、血液情報(例えば、血圧)を検出するためのセンサーをワイヤー先端に有しているものがある。センサーを通して検出した血液情報は、信号ケーブルを通してモニターに入力される。ガイドワイヤーは、その基端にコネクタを有し、コネクタは、信号ケーブルの先端にある相手コネクタに接続される。
【0003】
特許文献1で開示されるガイドワイヤーは、その先端にあるセンサーから伸びている複数の導線を有している。コネクタは1列で並んでいる複数の電極リングを有している。複数の電極リングは複数の導線にそれぞれ電気的に接続されている。電極リングは半田によって導線に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−255204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で開示されるコネクタにおいて、複数の電極リングは分かれて配置されている。そのため、隣り合う2つの電極リングの境でコネクタが撓みやすい。コネクタが撓みやすいと、例えば、コネクタと相手コネクタとの接続が正しくされないという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示で提案するコネクタは、1列で並んでおり、且つ複数の導線を内側に通すことができる第1電極リングと第2電極リングとを含む複数の電極リングと、前記複数の導線を内側に通すことができる中継リングとを有している。前記中継リングは、前記第1電極リングに嵌まっている第1嵌合部と、前記第2電極リングに嵌まっている第2嵌合部とを有している。前記中継リングは、前記第1電極リングと前記第2電極リングのうちの一方に電気的に接続され、他方に対して絶縁されている。
【0007】
本開示で提案するガイドワイヤーは、前記コネクタと、前記複数の導線とを含む。
【0008】
このコネクタとガイドワイヤーとによると、中継リングによりコネクタの強度を増すことができる。
【0009】
本開示で提案するガイドワイヤーの製造方法は、第1中継リングの第1嵌合部と第1電極リングとを嵌め入れ、第1電極リング組立体を形成する工程と、第2中継リングの第1嵌合部と第2電極リングとを嵌め入れ、第2電極リング組立体を形成する工程と、前記第1電極リング組立体の第2嵌合部と、前記第2電極リング組立体の第2電極リングと嵌め入れる工程と、前記第1電極リング、前記第1中継リング、前記第2電極リング、及び前記第2中継リングに第1導線と第2導線とを通す工程と、前記第1電極リングと前記第2電極リングを、前記第1導線と前記第2導線とにそれぞれ接続する工程と、を含む。この製造方法によると、中継リングによりコネクタの強度を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示で提案するガイドワイヤーの例を示す図である。
図2A】本開示で提案するガイドワイヤーが有しているコネクタの一例を示す斜視図である。
図2B】コネクタの分解斜視図である。
図3】コネクタを構成する電極リング組立体の分解斜視図である。
図4A】ガイドワイヤーの断面図である。
図4B】ガイドワイヤーの断面図である。
図5】ガイドワイヤーの断面図である。切断面は図4AのV−V線で示す面である。
図6A】ガイドワイヤーの製造方法を説明するための図である。
図6B】ガイドワイヤーの製造方法を説明するための図である。
図6C】ガイドワイヤーの製造方法を説明するための図である。
図7A】コネクタの変形例を示す斜視図である。
図7B】コネクタの変形例を示す斜視図である。
図8図7A及び図7Bで示すコネクタを有しているガイドワイヤーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本開示で提案するガイドワイヤーとコネクタの一例について説明する。本明細書では、ガイドワイヤー及びコネクタの一例として、図1等に示すガイドワイヤー10及びコネクタ20について説明する。以下の説明では、図1のY1−Y2で示す方向を「ワイヤー延伸方向」と称する。
【0012】
図1で示すように、ガイドワイヤー10は、その使用時に、カテーテル4内に挿入される。ガイドワイヤー10の先端にセンサー11が取り付けられている。ガイドワイヤー10の遠位端としての基端にコネクタ20が設けられてよい。モニター5に電気ケーブル2が接続され、コネクタ20は電気ケーブル2の先端に設けられている相手コネクタ3に接続される。ガイドワイヤー10の使用時、ガイドワイヤー10の近位端としての先端が患者の体内に挿入される。ガイドワイヤー10が目的の位置に到達すると、カテーテル4がガイドワイヤー10によって案内される。センサー11の出力信号はガイドワイヤー10が有している電気ケーブルとしての導線12(図2B参照)と電気ケーブル2とを通してモニター5に入力される。
【0013】
[電極リング組立体]
図2A及び図2Bで示すように、コネクタ20は、ワイヤー延伸方向において1列で並んでいる複数の電極リング組立体Uを有してよい。電極リング組立体Uの内側に、複数の導線12が通されている。一例において、ガイドワイヤー10は4本の導線12を有し、コネクタ20は4つの電極リング組立体Uを有する。導線12の本数は4本より少なくてもよいし、4本より多くてもよい。コネクタ20はさらに先端電極リング28を有してよい。先端電極リング28は、ガイドワイヤー10の基端(コネクタ20の先端)に位置している。
【0014】
[電極リング]
各電極リング組立体Uは、電極リング21と、中継リング22とで構成されてよい。図2Bで示すように、電極リング21はワイヤー延伸方向に細長い筒状であり、その内側に複数の導線12を通すことができる。電極リング21の断面は、複数の導線12を全周に亘って囲む環状であってよい。後において詳説するように、複数の電極リング21は複数の導線12に対してそれぞれ電気的に接続している。コネクタ20が相手コネクタ3に接続しているとき、各電極リング21の外周面に相手コネクタ3の端子が接触する。
【0015】
電極リング21は、例えばステンレスや、銅などの金属で形成される。電極リング21の外周面にめっき処理(例えば、金めっき)が施されてもよい。電極リング21の外周面の直径は、例えば、0.2mmから0.6mmであってよい。電極リング21の外周面の直径は、電極リング21の一端から他端において一定であってよい。
【0016】
[中継リング]
図3で示すように、中継リング22もワイヤー延伸方向において細長い筒状であり、その内側に複数の導線12を通すことができる。中継リング22の断面も、電極リング21と同様、複数の導線12を全周に亘って囲む環状であってよい。
【0017】
中継リング22は、電極リング21に嵌められているとき、同じ電極リング組立体Uを構成する電極リング21に嵌る部分と、電極リング21からワイヤー延伸方向において突出している部分とを有している。以下では、電極リング21から突出している部分を「第1嵌合部22A」と称し、同じ電極リング組立体Uを構成する電極リング21に嵌合している部分を「第2嵌合部22B」と称する。中継リング22は、2つの嵌合部22A、22Bの間に中央部22Cを有してもよい。中央部22Cは、後述するように、隣り合う2つの電極リング21のいずれにも嵌らない部分である。2つの嵌合部22A、22Bと中央部22Cとに複数の導線12を通すことができる。
【0018】
第2嵌合部22Bは電極リング21の内側に嵌められている。第1嵌合部22Aは、隣の電極リング組立体Uの電極リング21の内側に嵌められる(図4B参照)。つまり、隣り合う2つの電極リング21の一方の電極リング21に、中継リング22の第1嵌合部22Aが嵌まり、他方の電極リング21に第2嵌合部22Bが嵌まっている。このため、コネクタ20が隣り合う2つの電極リング21の境で曲がることを、中継リング22によって防ぐことができる。すなわち、コネクタ20の強度を増すことができる。
【0019】
上述したように、中継リング22の断面は複数の導線12を全周(360度)に亘って囲む環状である。中継リング22の形状はこれに限られない。中継リング22の断面は導線12を囲む円弧であってもよい。例えば、中継リング22の断面は、270度以上の角度範囲に亘って導線12を囲む円弧であってもよい。このような構造を有することによって、コネクタ20の曲げに対する中継リング22の強度を十分に確保できる。
【0020】
1つの電極リング21には2つの中継リング22が嵌まる。すなわち、1つの電極リング21の内側に、一方の中継リング22の第1嵌合部22Aと、他方の中継リング22の第2嵌合部22Bとが嵌まる。電極リング21の内側に嵌まっている第1嵌合部22Aの長さ(L1)は、例えば、電極リング21の長さ(L3)の4分の1よりも大きい(L1>L3/4)。同様に、電極リング21の内側に嵌まっている第2嵌合部22Bの長さ(L2)は、例えば、電極リング21の長さ(L3)の4分の1よりも大きい(L2>L3/4)。このように、電極リング21に嵌まっている部分の長さが大きいので、コネクタ20の撓みをさらに効果的に抑えることができる。
【0021】
なお、第1嵌合部22Aの長さ(L1)は、電極リング21の長さ(L3)の3分の1より大きくてもよい(L1>L3/3)。同様に、第2嵌合部22Bの長さ(L2)は、電極リング21の長さ(L3)の3分の1より大きくてもよい(L2>L3/3)。第1嵌合部22Aの長さ(L1)と第2嵌合部22Bの長さ(L2)の和は、1つの電極リング21の長さ(L3)の半分よりも大きくてもよい(すなわち、(L1+L2)>L3/2)。第1嵌合部22Aの長さ(L1)と第2嵌合部22Bの長さ(L2)の和は、1つの電極リング21の長さ(L3)の3分の2よりも大きくてもよい(すなわち、(L1+L2)>L3×2/3)。
【0022】
また、中継リング22の第1嵌合部22Aと第2嵌合部22Bの長さの合計(L1+L2)は、中央部22Cの長さL4よりも大きい。これによると、中継リング22の大部分が電極リング21に差し込まれることとなるので、効果的にコネクタ20が曲がることを防止することができる。
【0023】
1つの電極リング組立体Uにおいて、電極リング21の中心位置と中継リング22(第2嵌合部22B)の中心位置は一致している。(ここで「中心位置」はリング21、22の径方向での中心の位置である。)このことにより、複数の電極リング21が中継リング22を介して連結されたとき、それらは同一直線上で並ぶ。
【0024】
[電極リングと中継リングの固定]
1つの電極リング組立体Uを構成する電極リング21と中継リング22は、互いに固定されてよい。また、この2つのリング21、22は電気的に絶縁されていてよい。中継リング22(第2嵌合部22B)と電極リング21は、例えば次の固定構造を有する。
【0025】
図3で示すように、中継リング22はリングコア22aを有してよい。リングコア22aは、ワイヤー延伸方向に細長い筒状である。リングコア22aは、第1嵌合部22Aを構成する部分と、第2嵌合部22Bを構成する部分と、中央部22Cを構成する部分とを有している。リングコア22aは導体で形成されてよい。また、リングコア22aの材料は電極リング21の材料とは異なっていてよい。リングコア22aの材料は、例えば、ニッケルや銅などの金属である。リングコア22aの材料は、電極リング21の材料と同じであってもよい。
【0026】
図3で示すように、中継リング22は、絶縁材料で形成されている複数の絶縁スペーサ22bをリングコア22aの外周面に有してよい。絶縁スペーサ22bの材料は、例えばセラミックであるが、絶縁性を有している材料であれば、これに限られない。複数の絶縁スペーサ22bの一部は第2嵌合部22Bに位置している。図4Aで示すように、絶縁スペーサ22bはリングコア22aとともに電極リング21の内側に嵌められ、リングコア22aの外周面と電極リング21の内周面との間に隙間(空間)を確保する。この隙間に供給される接着剤Bによって電極リング21の内周面と第2嵌合部22Bとが互いに固定されている。
【0027】
電極リング21には開口21a(図2B参照)が形成されてよい。図4Aで示すように、開口21aは、上述した絶縁スペーサ22bによって形成された隙間の位置に対応している。開口21aに対して、電極リング21の径方向における内側に、中継リング22(第2嵌合部22B)の外周面の一部が位置している。開口21aは電極リング21を貫通しており、開口21aを通して第2嵌合部22Bの外周面(リングコア22aの外周面)が露出する。ガイドワイヤー10の製造過程において、接着剤Bは、第2嵌合部22Bの外周面と電極リング21の内周面との間の隙間に開口21aを通して供給される。したがって、接着剤Bの少なくとも一部は、開口21aを通して視認可能であり、開口21aの縁の周りに沿って存在する。
【0028】
また、接着剤Bは中継リング22の全周に形成されてもよい。これによると、中継リング22と電極リング21は、広い範囲に亘って互いに接着されることとなり、中継リング22と電極リング21との間に高い固定強度が確保できる。
【0029】
接着剤Bとしては、例えば光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂、常温硬化樹脂、2液性硬化樹脂等の接着剤が利用できるが、絶縁性を備える樹脂であって、中継リング22と電極リング21を互いに固定する材料であればいかなるものであてもよい。
【0030】
図3で示すように、絶縁スペーサ22bはリングコア22aを取り囲む環状である。絶縁スペーサ22bの厚さは中継リング22の全周に亘って実質的に均等であってよい。こうすると、接着剤Bの厚さも、中継リング22の全周に亘って実質的に均一となる。このことにより、電極リング21の中心位置と中継リング22(第2嵌合部22B)の中心位置とが一致する。
【0031】
また、図4Aで示すように、第2嵌合部22Bは、ワイヤー延伸方向において離れた2つの位置に絶縁スペーサ22bを有し、この2つの絶縁スペーサ22bの双方が電極リング21の内側に嵌められてよい。こうすることによって、電極リング21に対する中継リング22の傾斜が抑えられる。2つの絶縁スペーサ22bは、例えば、第2嵌合部22Bの両端に形成される。接着剤Bを供給するための開口21aは2つの絶縁スペーサ22bの間に位置している。
【0032】
[電極リングと導線の電気的接続]
複数の電極リング21は複数の導線12にそれぞれ電気的に接続される。例えば、電極リング21は中継リング22に電気的に接続され、中継リング22が導線12に電気的に接続されてよい。すなわち、電極リング21は間接的に導線12に接続されてよい。
【0033】
中継リング22と隣の電極リング21との接続構造の例を説明する。(「隣の電極リング」とは、隣の電極リング組立体Uを構成する電極リングである。)図4Bに示すように、中継リング22と隣の電極リング21は、第1嵌合部22Aの外周面と隣の電極リング21の内周面との間(隙間)に充填された導電材料S1によって、電気的に接続し且つ互いに固定される。導電材料S1は、例えば、導電性接着剤や半田などである。
【0034】
図4Bで示すように、電極リング21に開口21bが形成されている。開口21bは、第1嵌合部22Aの外周面の位置に対応している。開口21bに対して、電極リング21の径方向における内側に、中継リング22(第1嵌合部22A)の外周面の一部が位置している。開口21bは電極リング21を貫通しており、コネクタ20の製造過程において第1嵌合部22Aが隣の電極リング21の内側に嵌められたとき、開口21bを通して第1嵌合部22Aの外周面(リングコア22aの外周面)が露出する。導電材料S1は開口21bを通して供給されてもよい。この場合、導電材料S1の少なくとも一部は、開口21bを通して視認可能であり、開口21bの縁の周りに沿って存在する。
【0035】
導電材料S1は中継リング22の全周に亘って形成されてよい。このことにより、中継リング22と電極リング21は広い範囲に亘って互いに電気的に接続することとなる。これにより、中継リング22と電極リング21との間に強固に且つ電気的に信頼性の高い接続が確保できる。
【0036】
絶縁スペーサ22bは中継リング22の全周に亘って実質的に均等な厚さで形成されている。そのため、導電材料S1の厚さも、中継リング22の全周に亘って実質的に均一となる。このことにより、隣の電極リング21の中心位置と中継リング22(第1嵌合部22A)の中心位置を高い精度で一致させることができる。
【0037】
また、図3で示すように、第1嵌合部22Aは、ワイヤー延伸方向において離れた2つの位置に絶縁スペーサ22bを有し、この2つの絶縁スペーサ22bの双方が隣の電極リング21の内側に嵌められてよい。こうすることによって、隣の電極リング21に対する中継リング22の傾斜が抑えられる。2つの絶縁スペーサ22bは、例えば第1嵌合部22Aの両端に形成される。第1嵌合部22Aが隣の電極リング21に嵌められたとき、導電材料S1を供給するための開口21bは2つの絶縁スペーサ22bの間に位置する。前述のように、中継リング22の傾斜が抑えられ、中継リング22の第1嵌合部22Aと電極リング21との間の均等な隙間に、開口21bを通して導電材料S1が供給されるので、電極リング21の中心位置と中継リング22の中心位置とをさらに精度よく、一致させることができる。
【0038】
なお、中継リング22と隣の電極リング21との接続構造は、コネクタ20の例に限られない。例えば、中継リング22と隣の電極リング21は、溶接によって互いに固定され且つ電気的に接続してもよい。この場合、中継リング22と隣の電極リング21との溶接には、例えばレーザー溶接が利用できる。
【0039】
また、中継リング22の構造は、コネクタ20の例に限られない。例えば、リングコア22aの外周面が全体的に絶縁材料で覆われてもよい。そして、電極リング21の開口21a、21bの近くだけ、リングコア22aが露出し、そこに接着剤Bと導電材料S1がそれぞれ供給されてもよい。
【0040】
次に、中継リング22と導線12との接続構造を説明する。図4B及び図5で示すように、導線12は、導体で形成されている芯線12aと、芯線12aを覆う外被12bとを有している。導線12は、外被12bが剥がされ芯線12aが露出しているストリップ部12cを有している。各導線12は1つのストリップ部12cを有している。複数の導線12のストリップ部12cの位置は、複数の中継リング22の中央部22C(図2B参照)の位置にそれぞれ対応している。中央部22Cの内周面と導線12のストリップ部12cが、中央部22Cの内側に供給された導電材料S2によって電気的に接続されている。
【0041】
図4B及び図5で示すように、中継リング22(詳細には、中央部22C)には、開口22cが形成されている。開口22cに対して、中継リング22の径方向における内側に、複数の導線12が位置している。開口22cは1つの導線12のストリップ部12cの位置に対応しており、開口22cに対して、中継リング22の径方向における内側にストリップ部12cが位置している。開口22cは中継リング22を貫通しており、ガイドワイヤー10の製造過程においては、開口22cを通してストリップ部12cが露出する。中継リング22の内側に開口22cを通して導電材料S2が供給される。また、導電部材として半田を利用する場合、中継リング22の内周面に、めっき処理(例えば、金めっき)が施されてもよい。これにより、芯線12aと中継リング22との電気的な接続安定性を向上できる。
【0042】
中継リング22を介して電極リング21と導線12とを電気的に接続するガイドワイヤー10の構造によると、すなわち、中継リング22と導体12とを直接、電気的に接続する構造によると、コネクタ20と相手コネクタとが嵌合した状態で、電極リング21が相手コネクタとの電気的接触力を受けるが、中継リング22が負荷を受けることがない。したがって、中継リング22と導線12との接続部分に負荷がかかることがないため、中継リング22と導線12が断線することを防止できる。
【0043】
図2A及び図5で示すように、中継リング22の中央部22Cに、中継リング22の開口22cを覆うチューブ27が嵌められていてもよい。チューブ27としては、例えば加熱により収縮する熱収縮チューブが利用できる。このチューブ27によってコネクタ20の外面の凹凸を低減できる。
【0044】
なお、ガイドワイヤー10の例とは異なり、電極リング21は直接的に導線12に接続されてもよい。例えば、中継リング22は、電極リング21の開口21bの位置に、電極リング21の内面を露出させる開口を有してもよい。導線12は、この開口の位置にストリップ部12cを有してもよい。そして、電極リング21の内面が露出している部分とストリップ部12cとに導電材料が供給されてよい。こうすれば、電極リング21は、中継リング22を経由することなく、導線12と電気的に接続することとなる。
【0045】
[先端電極リング]
コネクタ20は、上述したように、その先端に先端電極リング28を有している。先端電極リング28は、先端が閉じた筒状である。先端電極リング28は、最も先端に近い電極リング組立体U(図2Bにおいて符号U1)の中継リング22の第1嵌合部22Aに嵌合する。
【0046】
先端電極リング28は中継リング22に電気的に接続されてよい。その接続構造は、例えば、図4Bで示した例と同様であってよい。すなわち、先端電極リング28の内周面が導電材料によって中継リング22の第1嵌合部22Aの外周面に接続されてよい。先端電極リング28には、この導電材料を供給するための開口が形成されてよい。
【0047】
上述したように、ガイドワイヤー10は4本の導線12を有している。一方、コネクタ20は、4つの電極リング21と1つの先端電極リング28とを有している。したがって、4つの電極リング21のうち1つは導線12に電気的に接続されていなくてもよい。例えば、先端電極リング28とは反対側に位置する電極リング組立体U(図2Aにおいて符号U4)の電極リング21は、導線12に接続していなくてもよい。
【0048】
[シャフト]
図2Aで示すように、ガイドワイヤー10は複数の導線12が通るシャフト14を有している。先端電極リング28とは反対側に位置する電極リング組立体U4の電極リング21はシャフト14に嵌合してもよい。
【0049】
[製造方法]
ガイドワイヤー10の製造方法の例を説明する。
【0050】
図6Aで示すように、複数の中継リング22を複数の電極リング21にそれぞれ嵌合する。そして、電極リング21の開口21a(図2B参照)から接着剤Bを供給し、中継リング22と電極リング21とを固定する。これにより、複数の電極リング組立体Uが得られる。接着剤Bはいかなる接着剤でもよいが、接着剤Bとして光硬化性、例えば紫外線硬化性の樹脂を利用する場合、複数の電極リング組立体Uに対して同時に紫外線を照射してよい。図6Aでは4つの電極リング組立体Uを構成するリング21、22が示されているが、同時に紫外線が照射される電極リング組立体Uの数は4つよりも多くてよい。
【0051】
図6Bに示すように、複数の導線12の外被12bを剥がし、各導線12にストリップ部12cを形成する。ストリップ部12cの位置はそれぞれ複数の中継リング22の位置に対応する。
【0052】
次に、図6Cに示すように、複数の電極リング組立体Uを順番に導線12に挿入する。そして、中継リング22(第1嵌合部22A)と隣の電極リング21とを嵌合させる。このとき、中継リング22の中央部22Cは2つの電極リング21の間で露出する。そして、電極リング21の開口21b(図4B参照)から導電材料(例えば、導電性接着剤や糸半田等)を供給し、中継リング22と電極リング21とを電気的に接続し且つ相互に固定する。また、中継リング22の中央部22Cに形成されている開口22c(図4B参照)を通して導電材料(例えば、導電性接着剤や糸半田等)を供給し、導線12のストリップ部12cと中継リング22とを電気的に接続する。
【0053】
先端電極リング28(図2B参照)を、先端に位置している電極リング組立体U1の中継リング22に嵌合させる。先端電極リング28も中継リング22に導電材料で接続される。また、後端に位置している電極リング組立体U4の電極リング21の内側にシャフト14(図2A参照)を嵌める。シャフト14と電極リング21も接着剤によって固定される。最後に、中継リング22の中央部22Cにチューブ27を嵌め、中継リング22の開口22cを覆う。チューブ27としては、上述した熱収縮チューブが利用できる。
【0054】
[コネクタの別の例]
図7A図7B、及び図8は、本開示で提案するコネクタ20の変形例であるコネクタ120を示す図である。これらの図では、これまで説明した要素(部品、部材、及び部位)と同一の要素について、同じ符号を付している。以下では、コネクタ20とコネクタ120の相違点を中心にして説明する。説明の無い事項については、コネクタ20と同じ構造が適用されてよい。
【0055】
図7Bで示すように、各電極リング組立体Uは、電極リング121と中継リング122とを有している。電極リング121は、図3で示した電極リング21と同様、開口21a、21bを有している。一方、中継リング122は第1嵌合部122Aと第2嵌合部122Bと中央部122Cとを有している。
【0056】
1つの電極リング組立体Uにおいて、電極リング121と中継リング122は、電気的に絶縁されている状態で互いに固定されている。図8で示すように、電極リング121の開口21aの位置は、第2嵌合部122Bにあるリングコア22aの位置に対応している。中継リング122と電極リング121は、第2嵌合部122Bの外周面と電極リング121の内周面と間に開口21aを通して供給される接着剤Bによって、固定される。中継リング122の外周面には複数の絶縁スペーサ22bが形成されている。
【0057】
中継リング122の第1嵌合部122Aに開口122c(図7B参照)が形成されている。図8で示すように、隣り合う2つの電極リング組立体Uが連結されている状態では、一方の組立体Uの中継リング122の開口122cの位置と、他方の組立体Uの電極リング121の開口21bの位置とが一致している。2つの開口21b、122cに対して、リング122、121の径方向における内側に導線12が位置し、2つの開口21b、122cを通して導線12が露出している。複数の導線12のうちの1つは、この開口21b、122cの位置にストリップ部12cを有している。
【0058】
図8で示すように、電極リング121と中継リング122は、中継リング122の外周面と電極リング121の内周面との間に電極リング121の開口21bを通して供給される導電材料S3によって、電気的に接続され且つ互いに固定されている。また、開口21bと中継リング122の開口122cとを通して中継リング122の内側に供給される導電材料S4によって、導線12のストリップ部12cと中継リング122の内周面とが電気的に接続している。このように2つの開口21b、122cの位置が一致しているので、導電材料付け作業を容易化できる。
【0059】
なお、電極リング121に形成されている開口21bのサイズは、中継リング122の開口122cよりも大きい。このため、開口21bを通して中継リング122の外周面の一部122d(開口122cの縁の近傍部、図8参照)が露出している。このことにより、中継リング122の外周面と電極リング121の内周面との間に導電材料S3を供給する作業が容易化できる。
【0060】
中継リング122は、中央部122Cに絶縁スペーサ122e(図7B参照)を有している。絶縁スペーサ122eは、隣り合う2つの電極リング121の間に位置し、それらを電気的に絶縁している。絶縁スペーサ122dの外周面は電極リング121の外周面と実質的に面一となっている。
【0061】
[まとめ]
以上説明したように、本開示で提案するコネクタは、1列で並んでおり、且つ複数の導線を内側に通すことができる複数の電極リング21と、複数の導線12を内側に通すことができる複数の中継リング22とを有している。複数の中継リング22のそれぞれは、隣り合う2つの電極リング21の一方の電極リング21に嵌まっている第1嵌合部22Aと、他方の電極リング21に嵌まっている第2嵌合部22Bとを有している。このコネクタ20、120とガイドワイヤー10、110とによると、中継リング22によりコネクタ20、120の強度を増すことができる。すなわち、2つの電極リング21の境でコネクタが曲がることを防ぐことができる。
【0062】
[変形例]
なお、本開示で提案するコネクタ及びガイドワイヤーは、上述したコネクタ20、120に限られない。
【0063】
コネクタ20、120とは異なり、1つの電極リング組立体Uを構成する電極リング21と中継リング22とが電気的に接続されていてもよい。例えば、電極リング21の開口21a(図2B参照)を通して導電材料が供給されて、電極リング21と中継リング22とが電気的に接続され且つ互いに固定されてもよい。そして、中継リング22の開口22c(図2B参照)から供給される導電材料によって、導線12と中継リング22とが電気的に接続されてよい。他の例として、中継リング22と電極リング21は、溶接(例えばレーザー溶接)によって互いに固定され且つ電気的に接続してもよい。中継リング22と電極リング21との接続に溶接が用いられる場合、コネクタ20は、1つの電極リング組立体Uを構成する中継リング22と電極リング21との間に、絶縁スペーサ22bを有していなくてもよい。
【0064】
また、1つの電極リング組立体Uを構成する電極リング21と中継リング22とが電気的に接続される構造においては、中継リング22の第1嵌合部22Aは、隣の電極リング21に嵌合し、接着剤によって接着されてよい(すなわち、2つのリング21、22は絶縁される)。さらに他の例として、中継リング22の第1嵌合部22Aは、隣の電極リング21に嵌合するものの、接着剤による2つのリング21、22の固定はなされなくてもよい。
【符号の説明】
【0065】
2 電気ケーブル、3 相手コネクタ、4 カテーテル、5 モニター、B 接着剤、U・U1・U4 電極リング組立体、10 ガイドワイヤー、11 センサー、12 導線、12a 芯線、12b 外被、12c ストリップ部、14 シャフト、20 コネクタ、21 電極リング、21a 開口、21b 開口、22 中継リング、22A 第1嵌合部、22C 中央部、22a リングコア、22b 絶縁スペーサ、22c 開口、27 チューブ、28 先端電極リング、S1〜S4 導電材料、120 コネクタ、121 電極リング、122 中継リング、122C 中央部、122c 開口、122d・122e 絶縁スペーサ。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8