打設コンクリートに当接する表層10aと、排水層としての裏層10bとが積層されたコンクリート型枠用積層シート10であって、前記表層は、親水処理が施された芯鞘型繊維のみで構成された不織布シート。また、表層は、芯鞘型繊維のみで構成された複数枚の不織布シートからなるもの、裏層は、OH基を有する不織布や、芯鞘型繊維にOH基を有する不織布を混紡したシートであることが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<コンクリート型枠用積層シート>
図面を用いて、本発明の実施形態に係るコンクリート型枠用積層シートについて説明する。
図1(a)は実施形態に係るコンクリート型枠用積層シートの構成を示す断面図である。
図示するように、本実施形態のコンクリート型枠用積層シート10は、コンクリート混合物に当接される表層10aと、コンクリート混合物から排出される余剰水を排水するとともに、親水機能を有する裏層10bとが積層されている。
表層10aは、その表面の熱可塑性樹脂繊維同士が熱融着して繊維間隙間が狭くなっているが、コンクリート混合物からの余剰水を排出できるように適正な透水性を確保している。
なお、本発明のコンクリート型枠用積層シート10は、
図1(b)の断面図に示すように、中間層10cを介在させて、表層と裏層を積層することもできる。
【0014】
<積層シートの透水性、吸水性>
また、コンクリート型枠用積層シート10は積層シート全体としての透水性が重要である。
透水性は、多孔体中で流れの方向に直角な単位断面積を、単位の動水勾配の下で単位時間内に通過する水の量と定義され、積層シートの間隙(隙間)をぬって移動する水の移動しやすさをいう。
本発明では、その程度を透水係数として表し、コンクリート型枠用積層シート10の余剰水や空気の排出機能を判断する指標とした。
透水性の評価は、透水係数(JIS−A−1218の測定法に基づく)が、
本発明の型枠用積層シート10における透水係数の範囲は、1.00×10
−2〜1.00×10
−4であることが好ましい。
透水係数が1.00×10
−2を超える場合はコンクリート混合物からの排水性は高まるが、保水機能がなくなる。
一方、透水係数が1.00×10
−4未満の場合は積層シートが目詰まり状態であり、
コンクリート混合物からの余剰水や空気の排出ができなくなる状態である。
【0015】
<積層シートの厚み>
コンクリート型枠用積層シート10の厚みとしては特に規定するものではないが、型枠の形状やサイズが固定されており、厚いシートは仕上がり製品の厚みに著しく影響(断面欠損)するので、1mm以下とすることが好ましい。
一例としては、型枠が、幅60cm、高さ180cmの大きさ(2×6板)や幅90cm、高さ180cmの大きさ(3×6板)に、積層シート10を型枠の端部まで折り込んで、コンクリート混合物が浸入しないように留める使用形態に鑑みると、厚みは約0.1mm〜1.0mmのものが好ましい。
【0016】
<表層>
コンクリート型枠用積層シート10の表層は、親水処理が施された芯鞘型繊維のみで構成された不織布シートである。
熱融着後の芯鞘型不織布のみからなるシートは、打設コンクリートの仕上がり面を平滑面にする機能を有するために、細い繊維径同士でそれぞれが熱融着されていて毛羽立ちしにくいという性質も有する。
芯鞘型繊維とは、芯が高融点の樹脂で、芯の周りに、鞘が芯よりも低融点の樹脂が配された芯鞘構造の繊維である。
表層は、加熱によって、鞘の低融点樹脂が溶融して芯鞘型繊維同士が熱融着したシートである。
芯となる高融点の樹脂としては、高融点ポリエステル、結晶性ポリプロピレンなどが挙げられ、鞘となる低融点の樹脂としては、低融点ポリエステル、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エバールなどが挙げられる。
市販品の芯鞘型繊維としては、例えば、シンワ(株)製のハイボン9540FOFや9520FOF、9515FOFなどが挙げられる。これらは芯が結晶性ポリプロピレン(PP)で鞘がポリエチレン(PE)である。
なお、表層を構成する芯鞘型繊維については、水を吸って膨潤するものはシートの目が狭くなり、透水性が悪くなるので好ましくない。
膨潤性を有する綿やレーヨンなどはOH基を有するため、これらの繊維が混紡されていると透水性が時間経過とともに悪くなる。
よって、表層は、吸水して膨潤しない繊維で構成されている必要性がある。
このため、芯鞘型繊維の外側(鞘部分)には、低融点でかつOH基を有さないPEなどの樹脂で構成されている芯鞘型繊維を配設したのである。
表層10aの芯鞘型繊維の原料としては、3デニール〜6デニールの太さのものを用いることが好ましい。1デニールとは、長さ450メートルで0.05gのものをいう。
長さが同じで重さが2倍なら2デニール、3倍なら3デニールとする。
【0017】
<親水処理加工>
なお、上記した芯鞘型繊維は、疎水性を有するので、コンクリート混合物からの排水を通過させにくい。そこで、表層は親水処理加工することが望ましい。
親水処理加工は、親水処理液にディッピングする方法、スプレー塗布などの手段により、芯鞘繊維の表面に親水処理剤をコーティングする。
親水処理剤としては、例えば、カチオン系第4級アンモニウム塩類、アニオン系アルキルスルホン酸塩類、リン酸エステル塩類、非イオン系ポリエチレングリコール型、非イオン系シリコーンポリマー、ポリプロピレングリコール型等が挙げられる。
これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
表層シート乾燥後の残留量としては、1m
2当たり、1質量%〜10質量%とすることが望ましい。
1質量%未満では、親水処理の効果がない。
10質量%を超えると、効果が飽和してコストアップにつながる。
【0018】
<表層の目付量>
表層10aの目付量としては、35g/m
2〜100g/m
2とすることが好ましい。
目付量が大きくなると透水係数が小さくなり余剰水や空気を通しにくい。
目付量が小さくなると透水係数が大きくなるが、コンクリート粒子の浸入がある。
よって、上記範囲とすることが好ましい。
【0019】
<表層が複数>
なお、表層は、芯鞘型繊維からなるシートを2層以上配設することも可能である。
例えば、芯繊維がポリプロピレンで鞘繊維がポリエチレンと、芯繊維がポリプロピレンテレフタレートで鞘繊維がポリエチレンとを積層する場合などである。
複数層とすることによって、裏層を構成するレーヨンなどの混紡繊維の毛羽抜け防止という効果がある。
なお、表層を構成する複数シート同士の接着性を高めるために、芯鞘型繊維の鞘と同じ成分の繊維を用いることが好ましい。
また、エンボス模様を有する型枠用積層シートを製造する場合などにおいて、エンボスロールの鋭角デザインで表層の一部に強い圧力がかかることがある。このような場合において、不織布の一部に破れや部分的な溶融等で表層の損傷や破壊が生ずることがある。
そこで、芯鞘繊維の芯をより耐熱性のある素材(表層1)を用いて損傷を防止し、その一方で、その裏側(表層2)には、表層1よりも低融点の芯鞘繊維を積層することができる。
これにより、エンボスデザインに起因する低圧力で密着不良になる箇所(加工製品における凹凸の凸部分)においても、表層と裏層との積層密着度を向上させることができ、裏層に含まれる混紡繊維の表層への吐出を防止することができる。
【0020】
<表層デザイン加工>
平らな加熱ロールに代えて、任意のエンボス模様を有するエンボスロールでカレンダー加工して、表層の表面にエンボス模様を付与することにより、この模様が転写された積層シートを用いて、打設コンクリート面をデザイン化(凹凸模様を付与)することもできる。
例えば、木目調(本実仕上げ)、石調(例えば、洗出し石調、大磯石調)、タイル調、カキ落し調などが挙げられる。
これらの仕上げは、今までの一般的な単純な平滑仕上げから一転して、全く新しい世界をコンクリート面に優れた付加価値を導入することができる。
このような、エンボス模様を表層に形成させる場合には、エンボスロールの加圧突起加工で表層に穴あきが生じ易く、裏層からの毛羽抜け防止が重要な課題になる。
このため、表層を2層とすることが好ましい。
【0021】
<裏層>
裏層10bは、親水性を有するとともに排水機能を備え、コンクリート混合物から排出され表層10aを通過してきた余剰水を排水するとともに、一定時間保持して、コンクリート水和反応を確保するための機能を備える。
裏層としては、芯鞘型繊維単独、芯鞘型繊維に他の繊維を混紡したシート、低融点繊維からなるシート、芯鞘型繊維に低融点繊維を混紡したシートなども用いることができる。
芯鞘型繊維は強度があり型枠から剥離する際に破断しにくく、繰り返し使用することができる。
裏層に用いられる芯鞘型繊維としては、クラレクラフレックス株式会社製のフェリベンディ(登録商標)などが挙げられる。
このフェリベンディは、芯がPET、鞘がエバール(EVOH)からなる芯鞘構造の繊維を用いており、130〜160℃程度に加熱したロールに接触させることで鞘のエバールを溶融させて接合するとともに、繊維間隙間を調整することができる。
なお、エバールは、親水機能を備えたOH基を有する芯鞘型繊維であるので、水を吸水して膨潤し一定時間保持する機能を備えているので好ましい。
また、フェルベンディ以外の不織布でも、吸水、膨潤機能のあるものであれば用いることが可能である。例えば、綿やレーヨンなどの天然繊維が挙げられる。
また、芯鞘型繊維に混紡する繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの合成繊維、レーヨンなどの再生繊維、コットンなどの天然繊維などが挙げられるが、吸水性のある繊維が好ましい。
これにより、芯鞘型繊維の間に低融点不織布が溶け込んで、芯鞘型繊維の目を埋めるので、積層シートから型枠方向に水を排出することなく、積層シート中に一定時間保水する機能があり、コンクリートの水和反応時間を確保できる。
【0022】
<裏層の厚み、目付量>
裏層10bを構成する不織布シートとしては、その厚みや目付量を特に規定するものではないが、製造上の観点から、0.1mm〜5mm程度のものが好ましい。それ以上厚くなると作業性が著しく悪くなる。
なお、裏層の厚みは打設コンクリートの仕様に応じて決定される。
また、目付量は、作業性やコスト面から、100g/m
2〜300g/m
2程度のものが好ましい。
コンクリートの養生は適度な湿潤状態におくことによって固化反応が進むので、強度のあるコンクリートが形成される。
【0023】
<中間層>
図1(b)の断面図に示すように、実施形態の積層シート10は、表層10aと裏層10bが、中間層10cを介して積層されたものであることも好ましい。
中間層10cは、表層10a、裏層10bを強固に接合する役割を有しており、透水性の観点から、ホットメルト性のある樹脂を用いることが好ましい。
このホットメルト性のある樹脂には、ポリオレフィン系やポリアミド系などの一般の高分子素材を、ドット状やスポット状に、表層シートの裏側(裏層シートと接する側)、又は裏層シートの表側(表層シートと接する側)に付着させたり、スプレー塗布などをしたりして、中間層となるようにあらかじめ形成させておくことができる。
この場合も、積層シートの透水性を阻害しないように散布や塗布をすることが重要である。
なお、表層10aと裏層10bを加熱及び加圧積層すると、その積層境界面において繊維が融着されて不織布の繊維隙間が小さくなり、コンクリート混合物からの排水の通り道が塞がれ、透水性が悪くなる。
そこで、その中間層の素材としてクモの巣状シートを用いることとによって、上記問題点を解決することができる。
すなわち、中間層10cとしては、いわゆるクモの巣状の繊維間隔の大きいシートを用いることで、コンクリート混合物からの余剰水や空気を容易に通過させることができるようにした。
【0024】
上記のクモの巣状シートとしては、メッシュ状のホットメルト接着用シートを用いることが好ましい。市販品では、例えば、呉羽テック(株)製の商品名「ダイナックLNS0030」が挙げられる。
この「ダイナックLNS0030」は、ホットメルトレジンを使用するスパンボンド製法で製造されたクモの巣状の接着シートである。
【0025】
<離型部材付きシート>
また、実施形態のコンクリート型枠用積層シート10は、その裏層10bに離型部材を積層することもできる。
図2(a)は、粘着層15を介して離型部材16を積層シート10の裏層10bに設けた(離型部材付きシート11)状態を示す断面図であり、この離型部材付きシート11を用いることにより、積層シート10を型枠に簡易に接合することができる。
すなわち、積層シート10の裏層10bの離型部材16を剥がして型枠に接合する。
離型部材16としては、紙、樹脂フィルム、金属箔などが挙げられる。
なお、離型部材16は、全面穴無しでも、部分的に貫通孔が形成されていてもよい(例えばメッシュ部材など)。
本実施形態では、住化加工(株)製のクレープ紙(型番:SL−72R)を用いた。
【0026】
図2(b)は、離型部材付きシート11の離型部材16を剥がした状態(離型部材なしシート11aという)で、粘着層15と型枠30の表面とが接するように取り付けられ留められている状態を示す断面図である。
図示するように、流動状のコンクリート混合物が離型部材なしシート11aの表層10a面に接するように流し込まれる。
流動状のコンクリート混合物31の余剰水や空気は離型部材なしシート11aに吸い取られる。
この状態でコンクリート混合物が硬化するのを待つ。
打設されるコンクリート面が垂直面の場合は、離型部材なしシート11aに吸い取られた余剰水は、裏層10bに形成されている空隙を縫って重力で下端から外部へ排出され、空気は上方へ抜ける。
その後、型枠30が離型部材なしシート11aと共に外され、硬化したコンクリート(打設コンクリート)を露出させる。
【0027】
粘着層15としては、有機溶剤系、水系などその種類を特定するものではないが、裏層10bとの粘着性を高めるためには有機溶剤系を用いるのが好ましい。
本実施形態では、綜研化学(株)製のSKダイン(登録商標)1604Nを用いた。
これは、固形分が40〜50質量%の酢酸エチルとトルエンとを含んでいるアクリル酸エステル共重合物である。
離型部材16上に塗工する塗工量としては、100〜500g/m
2、好ましくは250〜300g/m
2 とすることが好ましい。
100g/m
2 未満では粘着層15が少なすぎて、離型部材16を裏層10bの表面に十分な接合強度で粘着できない。
500g/m
2 を超える場合は粘着層15が厚過ぎて無駄になる。
【0028】
<カットファイバ添加>
また、粘着層15には、さらに、カットファイバを添加することもできる。
粘着層15には、無機系繊維(ガラス繊維や天然鉱物繊維など)、有機系繊維(各種高分子ポリマー繊維)の中から、径サイズや繊維長などが用途に応じて任意に選択されたフレキシブルなカットファイバが添加されていることが好ましい。
積層シート10の繊維にカットファイバが機械的に絡まり粘着層15を強く固定する効果がある。
すなわち、粘着層15が裏層10bの繊維との絡み合いにより強い接合性を発現するので、粘着層15を確実に積層シート10の裏面10bに接合させることができる。
粘着層15に有機溶剤系を用いる場合は、例えばポリプロピレン製は溶剤による膨潤や溶解が起きるおそれがあるので、添加するカットファイバは無機系繊維が望ましい。
一方、粘着層15に水系エマルジョンを用いる場合は、添加するカットファイバはポリプロピレン等の高分子ポリマー繊維が望ましく使用できる。
【0029】
カットファイバの添加量は、粘着層の乾燥後の固形分に対して1〜10質量%程度、好ましくは2〜3質量%とする。
1質量%未満では少なすぎて機械的な絡み合いの効果が少なく、10質量%を超えた添加はカットファイバが多すぎて粘着層15の効果が薄れるからである。
本実施形態では、カットファイバとして、径13μm、長さ3mmのユージー基材(株)製のガラス繊維EO3Aを使用した。
このようなカットファイバを添加した粘着層15を、離型部材16上に塗工する。
【0030】
このように、コンクリート型枠用積層シート10を用いて製造された打設コンクリートは、光沢性のある表層10aに当接して凝固するので、極めて平滑な平坦面となる。
また、本発明の積層シート10は、十分な透水性を備えているので余剰水や空気の排出ができ、打設コンクリートの表面にピンホールやアバタ(気泡)がなく、しかも毛羽立ちがない。
なお、型枠としては、ベニア型枠、合板型枠、プラスチック型枠、ゴム型枠、PC工場用の鋼板型枠やアルミ型枠、基礎立ち上がり鋼板型枠などであれば、いずれも使用可能である。
【0031】
<積層シートの製造方法>
次に、実施形態の
図1(b)に示すコンクリート型枠用積層シート10を例にとって、その製造方法を説明する。
図3に説明するように、まずは、裏層10bとなる不織布シートを巻き取りリールから繰り出し、その表面に、中間層10cを積層する。
さらに、その中間層10c上に、表層10aとなる不織布シートを積層して3層とする。
そして、この3層を、加熱ロール21(カレンダーロール)と受けロール22の間に挿入して、表層10a、中間層10c、裏層10bからなる積層シート10に加工する。
この積層加工時において、表層10aは、加熱ロール21に接触することによって、熱及び加圧加工(本明細書においてカレンダー加工という)され、表層10aの熱可塑性樹脂繊維同士が熱融着し、繊維間の隙間が小さくなり(目詰まりする)表面光沢度が増す。
加熱ロール21と接触する表層10aの熱可塑性樹脂繊維同士が熱融着することにより繊維の隙間が縮小し平滑となり、毛羽立ちもなくなり、表面の光沢度が増す。
カレンダー加工は、表層10aを加熱して熱可塑性繊維同士を熱融着させるとともに厚み方向に加圧して、積層シートとして一体化する加工方法である。
表層10aに接触させ熱可塑性繊維同士を熱融着させるために、以下の条件で加工することが望ましい。
加熱ロール21の加熱温度としては130〜160℃、
ロール間圧力としては3〜10Mpa、
加工スピードとしては1〜5m/分、
加工回数としては1〜3回の範囲内で、
使用目的に合うように、適宜、加熱温度、ロール間圧力、加工スピード、加工回数などを制御する。
目標仕上がり製品寸法としては厚み0.5〜1mm、
目標透水係数としては1.0×10
−2〜2.5×10
−4の範囲に収まるようにする。
なお、加熱ロール21の表面は、表層10aに転写されるので、その表面粗度は光沢面とすることが好ましい。
また、この加工時においては、加熱ロール21と受けロール22との間にはクリアランスを設けず両ロール間を加圧状態にしてもよいし、所定のクリアランスを設けてもよい。
なお、カレンダー加工は、加熱ロール21と受けロール22間を、通常1回通すことで所定の特性を有する積層シートを得ることができるが、
表層の目を細かくしたり、不織繊維の結合強度を増すために、複数回通すこともできる。
要求される積層シートとの仕様によって適宜の加工回数とする。
【0032】
上記した加熱ロール21及び受けロール22を備えた加工装置は、図示しないが、これらの両ロール間に不織布シートを供給するためのテンションロールや巻き取りロールを有しており、不織布シートに付加される張力を制御することができる。
加熱ロール21は、内部に設けられたヒータを介してその温度を所定範囲に設定することができる。
また、加熱ロール21及び受けロール22間の加圧力の制御機構を設け、挿入され挟圧される不織布シートを加圧圧力の調整をすることができる。
これによって、加熱ロール21の表面を表層10aに接触させ、表層10aの繊維同士を熱融着させ、繊維間の隙間を埋めることができる。
また、加熱ロール21及び受けロール22の回転スピード(加工速度)等を調整するための制御機構も設けることができる。
【0033】
なお、加熱ロール21とその受けロール22間を通過した積層シート10の表層10aの光沢度の値を測定して、表層10aの繊維の熱融着程度や繊維間隙間の程度を検出することもできる。
すなわち、加熱ロール21、受けロール22の出側に光沢度測定装置25を設け、加工後の表層の光沢度を測定することによって、表層10aの繊維間隙間の程度を判断するとともに、製造条件(加熱温度、加工圧力、加工スピードなど)を制御することによって積層シート10の透水係数などの調整することができるのである。
なお、ここで、光沢度の測定は、JIS−Z−8741(60度鏡面光沢)によることが好ましい。
【0034】
加熱ロール11に内蔵されたヒータなどの加熱装置は、図示しない制御装置によって制御される。
ここで、原反となる不織布シートの供給速度は毎分3〜5m程度で、両ロール間に供給される。
加熱ロール21は、内蔵ヒータにより所定温度に設定される鋳鉄製ロールであり、そのロール面は鏡面に加工されている。
受けロール22は、樹脂製のロールとすることが望ましく、例えば、そのロール面がシリコンゴムで被覆されるか又はシリコンゴムからなる円筒体であり、加熱ロール21に対向して配置される。
【0035】
<離型部材付きシートの製造方法>
次に、
図4を用いて、積層シート10に離型部材16を積層した離型部材付きシート11の製造方法を説明する。
図示するように、離型部材16の片面に粘着層15を塗工して離型部材16上に粘着層15を形成する。その後、乾燥炉23を通過させて、粘着層15を乾燥する。そして、別途製造した積層シート10の裏層10bの表面に接合して、離型部材付きシート11を完成させる。
【実施例】
【0036】
次に、実施例及び比較例の積層シート及びその加工方法を示す。
<実施例1>
実施例1では、表層シートとしてはPP/PEの芯鞘型シート(シンワ(株)製、ハイボン9540FOF、目付量40g/m
2)を用い、中間層としてポリアミドクモの巣状シート(呉羽テック(株)製、ダイナックLNS0030、目付量30g)、裏層シートとしてPET/EVOH(クラレクレフレックス(株)製、フェリベンディTR0045、目付量250g/m
2)の芯鞘型シートを用いた。
表層シートは親水処理加工したものを用いた。
親水処理剤としては、非イオン系シリコーンポリマー(コタニ化学工業(株)製、PSO−7000)を水で希釈した混合液を用い、ディッピング処理して乾燥して残留した親水処理剤の質量は2.352g/m
2であった。
上記の親水処理加工した表層、中間層、裏層を、
加熱ロール温度140℃、
圧力3.4Mpa、
加工スピード2m/分の条件で加工し、コンクリート型枠用積層シートを製造した。
なお、実施例1は、一度加熱ロールと受けロールの間を通した不織布シートを、再度通して、表層シートの繊維間隙間をさらに狭めた。
その結果、得られた積層シートは、製品シートの厚みが0.6〜0.7mmであり、透水係数が7.56×10
−3であり、打設したコンクリートには目視ではピンホールの発生が見られなかった。
【0037】
<実施例2>
実施例2は、ロール間圧力、加工スピード、以外は、実施例1と同様の条件で加工した。
その結果、得られた積層シートは、製品シートの厚みが0.5〜0.6mmであり、透水係数が2.52×10
−3であり、打設したコンクリートには目視ではピンホールの発生が見られなかった。
【0038】
<実施例3>
実施例3は、親水処理加工時の液濃度、加熱ロール温度、ロール間圧力、加工回数、以外は、実施例1と同様の条件で加工した。
その結果、得られた積層シートは、製品シートの厚みが0.7〜0.8mmであり、透水係数が1.92×10
−3であり、打設したコンクリートには目視ではピンホールの発生が見られなかった。
表層シートは、10%濃度の液にディッピング処理にて親水処理加工した。
親水処理剤としては、非イオン系シリコーンポリマー(コタニ化学工業(株)製、PSO−7000)を水で希釈した混合液を用い、ディッピング処理して乾燥して残留した親水処理剤の質量は0.842g/m
2であった。
【0039】
<実施例4>
実施例4は、加熱ロール温度、ロール間圧力、加工回数、中間層の省略、裏層シートしてPP/PE芯鞘シートにレーヨン繊維を混紡したシート(シンワ(株)製、NP150)を用いたこと、以外は、実施例1と同様の条件で加工した。
なお、裏層シートとしては、PP/PEの芯鞘型繊維(シンワ(株)製、ハイボン9540FOF、目付量200g/m
2)に、低融点のレーヨン繊維を混紡したものを用いた。
芯鞘型繊維と低融点繊維との割合は、6:4とした。
その結果、得られた積層シートは、製品シートの厚みが0.6〜0.7mmであり、透水係数が2.41×10
−3であり、打設したコンクリートには目視ではピンホールの発生が見られなかった。
【0040】
<実施例5>
実施例5は、加熱ロール温度、ロール間圧力、加工スピード、加工回数、中間層の省略、裏層シートしてPET/PE芯鞘シートにレーヨン繊維を混紡したシート(シンワ(株)製、NP200)を用いたこと、以外は、実施例1と同様の条件で加工した。
なお、裏層シートとしては、PP/PEの芯鞘型繊維(シンワ(株)製、NP200、目付量200g/m
2)に、低融点のレーヨン繊維を混紡したものを用いた。
芯鞘型繊維と低融点繊維との割合は、1:9とした。
その結果、得られた積層シートは、製品シートの厚みが0.8〜0.9mmであり、透水係数が2.89×10
−3であり、打設したコンクリートには目視ではピンホールの発生が見られなかった。
【0041】
<実施例6>
実施例6は、加熱ロールをエンボスロールとして、シートに凹凸模様を形成した。
表層シートとしては、打設コンクリートに当接する面に、PP/PEの芯鞘型シート(シンワ(株)製、ハイボン9515FOF、目付量15g/m
2)を用い(表層1)、打設コンクリートに当接しない面(裏層に当接する面)に、PP/PEの芯鞘型シート(シンワ(株)製、ハイボン9520FOF、目付量20g/m
2)を用いた(表層2)。
裏層シートとしてNP150、目付量150g/m
2)の芯鞘型シートを用いた。
表層シートは、2層とも親水処理加工したものを用いた。
親水処理剤としては、非イオン系シリコーンポリマー(コタニ化学工業(株)製、PSO−7000)を水で希釈した混合液を用い、ディッピング処理して乾燥して残留した親水処理剤の質量は2.352g/m
2であった。
上記の親水処理した表層シート、裏層シートとを、
加熱ロール温度160℃、
圧力7.4Mpa、
加工スピード2m/分の条件で、積層シートを製造した。
その結果、得られた積層シートは、製品シートの厚みが0.6〜0.7mmであり、透水係数が2.54×10
−3であり、打設したコンクリートには目視ではピンホールの発生が見られなかった。
なお、実施例1〜6において、親水処理剤の溶液は、水100kgに対し、親水剤原液40kgを加えたものと、水100kgに対し、親水剤原液11kgを加えたものとを準備した。
計算上、40kgの場合は、
40kg/100+40kg=0.285(表には28%溶液と記載)となり、
11kgの場合は、
11kg/100+11kg=0.099(表には10%溶液と記載)となる。
本発明では、親水処理剤の溶液濃度は10%未満の溶液は、乾燥後の残留量が少なく親水処理効果が薄く、10%以上の濃度とすることが望ましいことがわかった。
なお、これらの実施例1〜6の積層シートを型枠に取り付けて用いた結果、打設コンクリートからの剥離性は良好であり、コンクリートの仕上がり面はピンホールの存在は無かった。
【0042】
<比較例>
比較例1は、表層シートとしてPP/PEの芯鞘型シート(シンワ(株)製のハイボン(商品名:9540FOF)を用い、裏層シートとして、PP/PE芯鞘シートにレーヨン繊維を混紡したシート(シンワ(株)製、NP150)を用いた。
芯鞘型繊維と低融点繊維との割合は、6:4とした。
表層シートは、7%濃度の溶液にディッピング処理にて親水処理加工した。
親水処理剤としては、非イオン系シリコーンポリマー(コタニ化学工業(株)製、PSO−7000)を水で希釈した混合液を用い、ディッピング処理して乾燥して残留した親水処理剤の質量は0.59g/m
2であった。
上記の親水処理加工した表層シートと、裏層シートとを、
加熱ロール温度160℃、
圧力7.4Mpa、
加工スピード2m/分の条件で加工し比較例1の積層シートとした。
その結果、得られた比較例1の積層シートは、製品シートの厚みが0.5〜0.6mmであり、透水係数が1×10
−4未満であったため排水機能が悪く、打設したコンクリートには目視ではピンホールの発生が多数見られた。
【0043】
<比較例2>
比較例2は、表層シートとしてはPP/PEの芯鞘型シート(シンワ(株)製、ハイボン9732FOF、目付量32g/m
2)を用い、中間層としてポリアミドクモ蛛の巣状シート(呉羽テック(株)製、ダイナックLNS0030、目付量30g)、
裏層シートとして、PP/PE芯鞘シートにレーヨン繊維を混紡したシート(シンワ(株)製、NP200)を用いた。
芯鞘型繊維と低融点繊維との割合は、1:9とした。
表層シートは、5%濃度の溶液にディッピング処理にて親水処理加工した。
親水処理剤としては、非イオン系シリコーンポリマー(コタニ化学工業(株)製、PSO−7000)を水で希釈した混合液を用い、ディッピング処理して乾燥して残留した親水処理剤の質量は0.42g/m
2であった。
上記の親水処理加工した表層シートと、中間シート及び裏層シートとを、
加熱ロール温度140℃、
圧力7.4Mpa、
加工スピード2m/分の条件で加工し、比較例2の積層シートとした。
その結果、得られた比較例1の積層シートは、製品シートの厚みが1.0〜1.1mmであり、透水係数が1×10
−4未満であったため排水機能が悪く、打設したコンクリートには目視ではピンホールの発生が多数見られた。
【0044】
<透水性の比較>
図5は、実施例1の積層シートと比較例1の積層シートとで、吸水比較試験を行った結果を示す平面図である。
両積層シートの上から水10mlを滴下した結果、実施例1の積層シートは15秒で完全に吸水したが、比較例1の積層シートは60秒経過しても吸水しなかった。
よって、実施例1の積層シートは打設コンクリートからの排水処理性に優れていることがわかる。
【0045】
【表1】