【実施例1】
【0017】
図1(a)は、実施例1に係る多層基板の平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA−A断面図である。
図1(a)は主に、コア層10、ビア13、17および電子部品34を図示している。
【0018】
図1(a)および
図1(b)に示すように、多層基板100では、コア層10は本体部10aと島部10bを有している。本体部10aには開口30および32が形成されている。開口30内に島部10bが設けられている。本体部10aと島部10bとは絶縁されている。開口32内に電子部品34が埋め込まれている。開口30および32内には絶縁層11が埋め込まれている。
【0019】
コア層10上に絶縁層12が設けられ、絶縁層12上に金属層14が設けられている。金属層14および絶縁層12上に絶縁層22が設けられ、絶縁層22上に金属層24が設けられている。複数のビア13は絶縁層12を貫通し、島部10bと金属層14とを電気的に接続する。複数のビア23は絶縁層22を貫通し、金属層14と24とを電気的に接続する。絶縁層22上に金属層24上に開口を有する絶縁層25が設けられている。
【0020】
コア層10下に絶縁層16が設けられ、絶縁層16下に金属層18、18aおよび18bが設けられている。金属層18、18a、18bおよび絶縁層16下に絶縁層26が設けられ、絶縁層26下に金属層28、28aおよび28bが設けられている。複数のビア17、17aおよび17bは絶縁層16を貫通し、複数のビア27、27aおよび27bは絶縁層26を貫通する。ビア17は金属層18と島部10bとを電気的に接続する。ビア27は金属層18と金属層28とを電気的に接続する。
【0021】
金属層28aは、ビア27a、金属層18aおよびビア17aを介し本体部10aに電気的に接続されている。金属層28aにグランド電位を供給することで、本体部10aは接地される。金属層28bは、ビア27b、金属層18bおよびビア17bを介し電子部品34に電気的に接続されている。金属層28、28aおよび28bはランド等の端子として機能する。絶縁層26下に金属層28、28aおよび28b下に開口を有する絶縁層29が設けられている。
【0022】
コア層10は、例えば銅、銅合金、鉄または鉄合金等の金属層である。絶縁層11、12、16、22および26は、例えば合成樹脂であり、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂またはポリイミド樹脂であり、合成樹脂にガラス繊維等のフィラーが混合されていてもよい。絶縁層25および29は例えばエポキシ樹脂等のソルダーレジストである。金属層14、18、18a、18b、24、28、28a、28b、ビア13、17、17a、17b、23、27、27aおよび27bは、例えば銅、金または銀を主成分とする金属層であり、バリア層および/または密着層を含んでもよい。電子部品34は、例えばチップコンデンサ、チップインダクタまたはチップ抵抗等のチップ部品でもよく、集積回路またはトランジスタ等の半導体装置でもよい。半導体装置は、ベアチップでもよいし、ベアチップが実装されたパッケージでもよい。
【0023】
コア層10の厚さT1は、一例として340μmであり、例えば35μmから500μmである。絶縁層12および16の各々の厚さ(ビア13、17の高さT2)は、一例として34μmであり、例えば5μmから100μmである。金属層14および18各々の厚さT3は、一例として23μmであり、例えば5μmから100μmである。絶縁層22および26の各々の厚さT4は、一例として29μmであり、例えば5μmから100μmである。金属層24および28各々の厚さT5は、一例として23μmであり、例えば5μmから100μmである。絶縁層25および29の各々の厚さT6は、一例として15μmであり、例えば2μmから50μmである。多層基板100の厚さTは、一例として588μmである。
【0024】
比較例1として、スルーホール38を介し金属層14と18とを電気的に接続する場合と、実施例1のように、島部10bを介し金属層14と18とを電気的に接続する場合についてシミュレーションを行った。
【0025】
図2(a)および
図2(b)は、比較例1および実施例1における断面図である。
図2(a)に示すように、比較例1のスルーホール38では、開口30内の絶縁層11、12、16に開口20が形成されている。開口20の内面に金属層19が設けられている。金属層19内に絶縁層40が設けられている。スルーホール38の高さT7は、T1+2×T2である。スルーホール38の直径をD6とし、金属層19の厚さをD9とする。
【0026】
図2(b)に示すように、実施例1では島部10b上および下にピラー15としてビア13および17が設けられている。ピラー15の高さT2は絶縁層12および16の厚さである。ピラー15の直径をD1とし、島部10bの幅をD5とする。
【0027】
図3(a)から
図3(h)は、比較例1および実施例における開口30の平面図である。
図3(a)から
図3(d)は、比較例1のそれぞれサンプルAからDにおける開口30の平面図である。
図3(e)から
図3(h)は、実施例1のそれぞれサンプルEからHにおける開口30の平面図である。サンプルAとEはほぼ同じ開口30の面積を有している。サンプルBとFとはほぼ同じ開口30の面積を有し、サンプルCとGとはほぼ同じ開口30の面積を有し、サンプルDとHとはほぼ同じ開口30の面積を有している。サンプルBおよびFはサンプルAおよびEより開口30の面積が大きく、サンプルCおよびGはサンプルBおよびFより開口30の面積が大きく、サンプルDおよびHはサンプルCおよびGより開口30の面積が大きい。
【0028】
サンプルAでは、スルーホール38は3個×3個設けられている。サンプルBでは、スルーホール38は4個×3個設けられている。サンプルCでは、スルーホール38は4個×4個設けられている。サンプルDでは、スルーホール38は5個×5個設けられている。
【0029】
サンプルEでは、ピラー15は2個×2個設けられている。サンプルFでは、ピラー15は4個×2個設けられている。サンプルGでは、ピラー15は4個×4個設けられている。サンプルHでは、ピラー15は5個×5個設けられている。
【0030】
スルーホール38の直径はD6、スルーホール38の端の距離D7およびスルーホール38の端と開口30の端との距離D8は、各々サンプルAからDで同じである。ピラー15の直径D1、ピラー15の端の距離D2、ピラー15の端と島部10bの端との距離D3および島部10bの端と開口30の端との距離D4は、各々サンプルEからHで同じである。
【0031】
比較例1および実施例1において、開口30の面積に対する金属層14と18間の抵抗をシミュレーションした。
シミュレーションの条件は以下である。
コア層10、金属層14および18の材料:銅
コア層10の厚さT1:340μm
実施例1
ピラー15の高さT2:68μm、34μm
ピラー15の直径D1:50μm
ピラー15端の距離D2:100μm
ピラー15端と島部10b端との距離D3:75μm
島部10b端と開口30端との距離D4:200μm
ピラー15の高さT2が68μmのサンプルでは、T1:T2は5:1であり、T2が34μmのサンプルでは、T1:T2は10:1である。
比較例1
スルーホール38の高さT7:454μm
スルーホール38の直径D6:110μm
スルーホール38端の距離D7:130μm
スルーホール38端と開口30端との距離D8:95μm
金属層19の厚さD9:23μm
【0032】
図4は、比較例1および実施例1における開口30の面積に対する金属層14と18との間の電気抵抗を示す図である。ドットはシミュレーションした点を示し、線はドットをつなぐ線である。AからHはそれぞれサンプルAからHのドットを示す。
【0033】
図4に示すように、開口30を大きくすると抵抗が低くなる。開口30の面積が小さいとき、比較例1より実施例1の抵抗が高い。開口30の面積が大きくなると、実施例1の抵抗は比較例1より小さくなる。T1:T2=5:1では、サンプルDおよびHより開口30が大きくなると実施例1の抵抗は比較例1より低くなる。T1:T2ではサンプルBおよびFより開口30が大きくなると実施例1の抵抗は比較例1より小さくなる。
【0034】
以上のように、実施例1では、島部10bの厚さT1をピラー15の高さT2の5倍以上とすることで、金属層14と18との間の電気抵抗を低くできる。これにより、コア層10の上方と下方との間に大きな電流を流すことができる。また、ピラー15および島部10bを介し金属層14と18との間の熱抵抗を低くできる。これにより、コア層10の上方と下方との間の放熱性を高めることができる。金属層14と18との間の電気抵抗および熱抵抗を比較例1と同じとすると、比較例1より開口30の面積を小さくできる。これにより、多層基板100を小型化できる。
【0035】
図5(a)から
図6(c)は、実施例1における島部の平面図である。
図5(a)の例では、島部10bの平面形状は略正方形でありピラー15は10個×10個設けられている。ピラー15の平面形状は略円形状である。島部10bの平面形状を略正方形とすることで、島部10bの単位面積当たりのピラー15の個数を多くできる。ピラー15の個数を多くすることで、電気抵抗および熱抵抗を小さくできる。
【0036】
図5(b)の例では、島部10bの平面形状は略長方形状でありピラー15は10個×1個設けられている。
図5(c)の例では、島部10bはL字状でありピラー15はL字状に設けられている。
図5(a)から
図5(c)のように、島部10bの平面形状は任意であり、多層基板100を小型化できるように、設定できる。
【0037】
図6(a)の例では、ピラー15の平面形状は直線状の略長方形状である。
図6(b)の例では、ピラー15の平面形状は楕円形状である。
図6(a)および
図6(b)のように、ピラー15の平面形状は任意である。
【0038】
図6(c)の例では、平面形状が円形状と楕円形状のピラー15が設けられている。
図6(c)のように、同じ島部10bに接続されるピラー15の平面形状は異なっていてもよい。
図5(a)から
図5(b)のように、ピラー15の平面形状は互いに同じでもよい。
【0039】
比較例1では、スルーホール38内の金属層19はめっき法等を用い形成される。このため、金属層19を厚くすることが難しい。スルーホール38の直径D6を大きくしても金属層19の厚さD9を一定とするとスルーホール38内の金属層19の体積はスルーホール38の体積ほどは大きくならない。
【0040】
一方、実施例1によれば、コア層10(金属コア層)は、金属層14(第1金属層)と金属層18(第2金属層)との間に設けられている。コア層10は開口30(第1開口)が設けられた本体部10aと、本体部10a内に設けられ本体部10aと電気的に分離された島部10bとを含む。絶縁層12(第1絶縁層)および絶縁層16(第2絶縁層)は、金属層14および18とコア層10とに挟まれている。複数のビア13(第1金属ビア)は絶縁層12を貫通し、金属層14と島部10bとを接続する。複数のビア17(第2金属ビア)は絶縁層16を貫通し、金属層18と島部10bとを接続する。
【0041】
島部10bはコア層10の一部であるため、比較例1の金属層19のような厚さの制限がない。そこで、複数のビア13および17の厚さ(高さT2)を島部10bの厚さT1の1/5以下とする。これにより、同じ開口30の面積でも比較例1に比べ、金属層14と18との間の電気抵抗および熱抵抗を小さくできる。よって、損失を抑制しかつ放熱性を向上できる。同じ電気抵抗および熱抵抗を比較例1より小さい開口30で実現できる。このため、多層基板100を小型化できる。なお、本体部10aおよび島部10bの厚さは略等しくT1である。
【0042】
ビア13および17の厚さ(高さT2)は島部10bの厚さT1の1/7以下が好ましく、1/10以下がより好ましい。島部10bが厚くなると多層基板が大型化する。よって、ビア13および17の厚さ(高さT2)は島部10bの厚さT1の1/50以上が好ましく、1/20以上がより好ましい。島部10bの厚さT1は、多層基板100の厚さTの1/3以上が好ましく、1/2以上がより好ましい。
【0043】
図3(e)から
図3(h)、
図5(a)から
図5(c)および
図6(a)から
図6(c)におけるピラー15の面積の合計(ビア13および17が島部10bに接続する面における断面積の合計)は、島部10bの平面面積の5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。これにより、金属層14と18との間の電気抵抗および熱抵抗を低くできる。
【0044】
島部10bの幅D5は島部10bの厚さT1以上である。これにより、金属層14と18との間の電気抵抗および熱抵抗を低くできる。島部10bの平面形状が略矩形の場合、短辺の幅が島部10bの厚さT1以上であることが好ましい。島部10bの幅D5は厚さT1の2倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましい。
【0045】
隣接するビア13端間の最短距離D2は島部10bの厚さT1の2倍以下が好ましく、T1以下がより好ましく、T1の1/2以下がさらに好ましい。隣接するビア17端間の最短距離D2は島部10bの厚さT1の2倍以下が好ましく、T1以下がより好ましく、T1の1/2以下がさらに好ましい。
図6(c)のように、円形状のピラー15(すなわちビア13および17)の最短距離D2´と楕円形状のピラー15の最短距離D2が異なる場合、最も大きな距離D2がコア層10の厚さT1以下である。これにより、ビア13および17が島部10bに接続する面における断面積の合計を大きくできる。
【0046】
最も外側のビア13の端と島部10bの端との最短距離D3は島部10bの厚さT1以下が好ましく、T1の1/2以下がより好ましい。最も外側のビア17の端と島部10bの端との最短距離D3は島部10bの厚さT1以下が好ましく、T1の1/2以下がより好ましい。
図6(b)のように、ピラー15(すなわちビア13および17)端と島部10b端との最短距離D3´およびD3が異なる場合、最も大きな距離D3が島部10bの厚さT1以下である。これにより、ビア13および17が島部10bに接続する面における断面積の合計を大きくできる。
【0047】
1つの島部10bに接続される複数のビア13および17の個数は各々10以上である。これにより、金属層14と18との間の電気抵抗および熱抵抗を低くできる。1つの島部10bに接続される複数のビア13および17の個数は各々20以上が好ましく、50以上がより好ましい。
【0048】
複数のビア13および17は距離D2の一定間隔で設けられている。これにより、金属層14と18との間の電気抵抗および熱抵抗を低くできる。
【0049】
島部10bの端と開口30の端との距離D4は、島部10bの厚さT1の2倍以下が好ましく、T1以下がより好ましい。これにより、開口30の面積を小さくでき、多層基板100を小型化できる。
【0050】
本体部10aにはグランド電位が供給される。この場合、島部10bが本体部10aと接触すると、ピラー15が接地されてしまう。よって、島部10bは本体部10aと絶縁されている。
【0051】
電子部品34は本体部10aに設けられた開口32(第2開口)に埋め込まれている。電子部品34が埋め込まれた多層基板は、小型化が可能であるが、多層基板の熱密度が増大する。そこで、島部10bおよびピラー15を介し放熱することが有効である。2個以上の電子部品34が本体部10aに埋め込まれていてもよい。金属層24上に別の電子部品が実装されていてもよい。
【0052】
多層基板100にスルーホール38が設けられていてもよい。電流が小さい経路にはスルーホール38を用いることにより、多層基板100の面積を小さくできる。
【0053】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。