(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-161670(P2020-161670A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
H01G 11/28 20130101AFI20200904BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20200904BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20200904BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20200904BHJP
【FI】
H01G11/28
H01G11/30
H01M4/66 A
H01M10/058
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-60208(P2019-60208)
(22)【出願日】2019年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 海樹
(72)【発明者】
【氏名】河井 裕樹
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AB01
5E078AB07
5E078BA12
5E078BA30
5E078BA41
5E078BA52
5E078BA73
5E078BB33
5E078BB37
5H017AS10
5H017BB08
5H017CC01
5H017DD01
5H017DD03
5H017EE01
5H017HH03
5H029AJ11
5H029AJ14
5H029AM01
5H029CJ22
5H029DJ07
5H029DJ14
5H029DJ17
5H029EJ01
(57)【要約】
【課題】生産性に優れ、電極活物質層の脱落が生じにくい電極を備える電気化学デバイスを提供すること。
【解決手段】本発明に係る電気化学デバイスは、電極と、電解液とを具備する。上記電極は、金属箔である集電体と、上記集電体の主面上に形成され、凹凸を有する下塗り層と、上記下塗り層上に形成され、活物質を含む活物質層とを有する。上記電解液は、上記電極が浸漬される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔である集電体と、前記集電体の主面上に形成され、凹凸を有する下塗り層と、前記下塗り層上に形成され、活物質を含む活物質層とを有する電極と、
前記電極が浸漬される電解液と
を具備する電気化学デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学デバイスであって、
前記下塗り層の中心表面粗さは3.0μm以上である
電気化学デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気化学デバイスであって、
ポリアセンキャパシタである
電気化学デバイス。
【請求項4】
金属箔である正極集電体と、前記正極集電体の主面上に形成され、凹凸を有する正極下塗り層と、前記正極下塗り層上に形成され、正極活物質を含む正極活物質層とを有する正極と、
金属箔である負極集電体と、前記負極集電体の主面上に形成され、凹凸を有する負極下塗り層と、前記負極下塗り層上に形成され、負極活物質を含む負極活物質層とを有する負極と、
前記正極と前記負極を絶縁するセパレータと、
前記正極、前記負極及び前記セパレータが浸漬される電解液と
を具備する電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電及び放電が可能な電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
PAS(Polyacenic Semiconductor)キャパシタ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池等の電気化学デバイスは正極と負極を、セパレータを介して交互に積層した蓄電素子を備える。
【0003】
正極と負極は、金属箔である集電体の表面に電極活物質を積層した構造を有する。製造工程や充放電中にこの電極活物質が集電体から脱落すると、所望の電気特性を得られないため、集電体からの電極活物質の脱落が発生しないように検討が行われてきた。
【0004】
例えば特許文献1には、集電体に貫通孔を設け、アンカー効果により集電体と電極活物質をつなぎとめる方法が開示されている。また、特許文献2には、平坦な集電体に下塗り層を形成し、その上に電極活物質層を積層することで、電極活物質の脱落を防止する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−103314号公報
【特許文献2】特開2017−16927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、集電体に貫通孔を形成することが困難であり、加工工数の増加が否めない。また、特許文献2に記載の方法では、均一な厚みの下塗り層を設けることが推奨されているが、下塗り層の表面が平滑であると下塗り層と電極活物質層の物理的なつながりが弱く、長期信頼性が問題となるおそれがある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、生産性に優れ、電極活物質層の脱落が生じにくい電極を備える電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電気化学デバイスは、電極と電解液とを具備する。
上記電極は、金属箔である集電体と、上記集電体の主面上に形成され、凹凸を有する下塗り層と、上記下塗り層上に形成され、活物質を含む活物質層とを有する。
上記電解液は、電極が浸漬される。
【0009】
この構成によれば、凹凸を有する下塗り層と活物質層の間にアンカー効果が生じ、物理的なつながりが強化される。これにより、活物質層の脱落が防止されている。
【0010】
上記下塗り層の中心表面粗さは3.0μm以上あってもよい。
【0011】
上記電気化学デバイスは、ポリアセンキャパシタであってもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電気化学デバイスは、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを具備する。
上記正極は、金属箔である正極集電体と、上記正極集電体の主面上に形成され、凹凸を有する正極下塗り層と、上記正極下塗り層上に形成され、正極活物質を含む正極活物質層とを有する。
上記負極は、金属箔である負極集電体と、上記負極集電体の主面上に形成され、凹凸を有する負極下塗り層と、上記負極下塗り層上に形成され、負極活物質を含む負極活物質層とを有する。
上記セパレータは、上記正極と上記負極を絶縁する。
上記電解液は、上記正極、上記負極及び上記セパレータが浸漬される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、生産性に優れ、電極活物質層の脱落が生じにくい電極を備える電気化学デバイスを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る電気化学デバイスの斜視図である。
【
図2】同電気化学デバイスが備える蓄電素子の斜視図である。
【
図3】同電気化学デバイスが備える蓄電素子の一部の断面図である。
【
図4】同電気化学デバイスが備える蓄電素子の正極又は負極を構成する電極の断面図である。
【
図5】同電気化学デバイスが備える蓄電素子の正極又は負極を構成する電極の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る電気化学デバイスについて説明する。
【0016】
本実施形態に係る電気化学デバイスは、PAS(Polyacenic Semiconductor)キャパシタ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池等の充放電が可能なデバイスであり、その種類は特に限定されない。なお、以下の図において、X、Y及びZ方向は相互に直交する3方向である。
【0017】
[電気化学デバイスの構成]
図1は、本実施形態に係る電気化学デバイス100の構成を示す斜視図である。同図に示すように電気化学デバイス100は、蓄電素子110が容器120(蓋及び端子は図示略)に収容されている。容器120内には、蓄電素子110と共に電解液が収容されている。なお、本実施形態に係る電気化学デバイス100の構成は、
図1をはじめ、以降の図に示す構成に限定されるものではない。
【0018】
図2は蓄電素子110の斜視図であり、
図3は蓄電素子110の拡大断面図である。
図2及び
図3に示すように、蓄電素子110は、負極130、正極140及びセパレータ150を有し、これらが積層された積層体が捲回芯Cの回りに捲回されて構成されている。なお、捲回芯Cは必ずしも設けられなくてもよい。
【0019】
蓄電素子110を構成する負極130、正極140、セパレータ150の積層順は、
図2に示すように、捲回芯C側に向かって(捲回外側から)セパレータ150、負極130、セパレータ150、正極140の順となる。また、蓄電素子110は、
図2に示すように負極端子131と正極端子141を有する。負極端子131は負極130、正極端子141は正極140に接続され、
図2に示すように、それぞれ蓄電素子110の外部に引き出されている。
【0020】
負極130は、
図3に示すように、負極集電体132、負極下塗り層133及び負極活物質層134を備える。負極集電体132は金属箔であり、負極下塗り層133は負極集電体132の表裏両面に形成されている。負極活物質層134は、負極下塗り層133上に形成されている。
【0021】
正極140は、
図3に示すように、正極集電体142、正極下塗り層143及び正極活物質層144を備える。正極集電体142は金属箔であり、正極下塗り層143は正極集電体142の表裏両面に形成されている。正極活物質層144は、正極下塗り層143上に形成されている。
【0022】
負極130と正極140のいずれか一方又は両方は、後述するように活物質層の脱落が防止された構造を有する。
【0023】
セパレータ150は負極130と正極140を絶縁し、
図3に示すように、第1セパレータ151及び第2セパレータ152を含む。
【0024】
第1セパレータ151と第2セパレータ152は、負極130と正極140を隔て、後述する電解液中に含まれるイオンを透過する。具体的には、第1セパレータ151及び第2セパレータ152は、織布、不織布、合成樹脂微多孔膜等であるものとすることができ、例えばセルロース系樹脂を主材料としたものとすることができる。また、第1セパレータ151及び第2セパレータ152は連続した一枚のセパレータであってもよい。
【0025】
容器120は、蓄電素子110を収容する。容器120の上面及び下面は図示しない蓋によって閉塞されるものとすることができる。容器120の材質は、特に限定されず、例えばアルミニウム、チタン、ニッケル、鉄を主成分とする金属又はステンレス等からなるものとすることができる。
【0026】
蓄電素子110は、電解液と共に容器120に収容される。電解液は特に限定されないが、EDMI(エチルジメチルイミダゾリウム)・BF
4のポリカーボネート溶液等とすることができる。
【0027】
[電極の構造について]
上記負極130及び正極140として利用することが可能な電極160について説明する。
図4は電極160の断面図であり、
図5は
図4の一部の拡大図である。
【0028】
図4に示すように、電極160は、集電体162、下塗り層163及び活物質層164を備える。
【0029】
集電体162は、アルミニウム等の金属からなる金属箔である。集電体162の一方の主面を第1主面162aとし、その反対側の主面を第2主面162bとする。集電体の厚みは例えば20μmとすることができる。
【0030】
下塗り層163は、第1主面162a及び第2主面162b上に形成され、活物質層164を集電体162に密着させる。下塗り層163の厚みは例えば3μmとすることができる。下塗り層163は、導電性を有する材料からなり、例えば高分子、無機粒子及び導電助剤を混合した材料からなるものとすることができる。
【0031】
高分子は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリルアミド、エポキシ樹脂、ポリエチレンイミン又はポリアクリル酸エステルが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0032】
無機粒子は、シリカ、チタニア、酸化スズ、アルミナ、水酸化鉄、水酸化マンガン、水酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化アルミ、ジルコニア、チタン酸バリウム又は炭酸ストロンチウムが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0033】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、例えば、Ag、Cu、Al等の金属粉末、黒鉛やカーボンブラック等の炭素材料、導電性高分子が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0034】
下塗り層163は、
図5に示すように、活物質層164側の表面に凹凸が設けられている。この凹凸は中心表面粗さ(Ra)が3.0μm以上が好適である。なお、中心表面粗さはデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製 VHX-5000)で撮影し、解析することによって測定することができる。
【0035】
活物質層164は、下塗り層163上に形成されている。活物質層164の厚みは例えば10μmとすることができる。活物質層164の材料は、活物質がバインダ樹脂と混合されたものとすることができ、さらに導電助材を含んでもよい。
【0036】
活物質は、例えば、ポリアセン炭化物、活性炭、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、グラファイトやソフトカーボン等の炭素系材料や、Si、SiOなどの合金系材料、または、それらの複合材料を用いることができる。
【0037】
バインダ樹脂は、活物質を接合する合成樹脂であり、例えばスチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、フッ素系ゴム、ポリビニリデンフルオライド、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びエチレンプロピレン系ゴム等を用いてもよい。
【0038】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、負極活物質の間での導電性を向上させる。導電助剤は、例えば、黒鉛やカーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電助剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
【0039】
電極160は以上のような構成を有する。なお、
図5では、電極160の第1主面162a側を示すが、第2主面162b側も同様に下塗り層163に凹凸が形成されているものとすることができる。また、第1主面162a側と第2主面162b側のどちらか一方にのみ下塗り層163に凹凸が形成されていてもよい。
【0040】
電極160では上記のように下塗り層163に凹凸を設けることにより、下塗り層163と活物質層164の間にアンカー効果が生じ、物理的なつながりが強化されている。これにより、活物質層164の脱落が防止されている。
【0041】
また、集電体162に貫通孔等を形成する必要がないため、工数の増加が発生せず、生産性に優れている。
【0042】
電極160の製造方法としては、集電体162の表面にグラビア印刷により下塗り層163を形成する。この際グラビア印刷の型に、凹凸を設けておくことにより、下塗り層163に凹凸を形成することが可能である。活物質層164は、材料を混合したスラリーをダイから下塗り層163上に吐出させることにより形成することが可能である。
【0043】
電極160は、蓄電素子110負極130及び正極140(
図3参照)のいずれか一方又は両方として用いることが可能である。なお、下塗り層163及び活物質層164は集電体161の表裏面のうち一方にのみ形成されてもよい。
【0044】
また、蓄電素子110は
図2に示すような捲回型のものに限られず、負極130と正極140が積層された積層型のものであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
100・・・電気化学デバイス
110・・・蓄電素子
120・・・容器
130・・・負極
132・・・負極集電体
133・・・負極下塗り層
134・・・負極活物質層
140・・・正極
142・・・正極集電体
143・・・正極下塗り層
144・・・正極活物質層
150・・・セパレータ
160・・・電極
162・・・集電体
163・・・下塗り層
164・・・活物質層