【解決手段】非フッ素系樹脂により構成されたエレクトレット化フィルム(A)と、エレクトレット化フィルム(A)の少なくとも一方の面に設けられた非粘接着性絶縁層(B)と、非粘接着性絶縁層(B)上に設けられた電極層(C)と、を備えるエレクトレット素子10。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0014】
1.エレクトレット素子
以下、本実施形態に係るエレクトレット素子10について説明する。
図1および
図2は、本発明に係る実施形態のエレクトレット素子10の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るエレクトレット素子10は、非フッ素系樹脂により構成されたエレクトレット化フィルム(A)と、エレクトレット化フィルム(A)の少なくとも一方の面に設けられた非粘接着性絶縁層(B)と、非粘接着性絶縁層(B)上に設けられた電極層(C)と、を備える。ここで、エレクトレット化フィルム(A)における非粘接着性絶縁層(B)が設けられた側の表面の全体が電極層(C)または粘接着層で直接覆われた態様は本実施形態に係るエレクトレット素子10から除かれる。
【0016】
エレクトレット化フィルムをエレクトレット素子として用いる場合、エレクトレット化フィルムに保持された電荷を利用して発生させた電荷を外部に取り出すことが必要である。この電荷を外部に取り出すためには、エレクトレット化フィルムの少なくとも片方の面、好ましくは両面に、電気信号を伝達するための電極層を形成する必要がある。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、エレクトレット化フィルムの両面に電極層を直接形成する、あるいは粘接着層を介して形成すると、エレクトレット化フィルムの表面に保持された電荷が消失してしまい、その結果、エレクトレット化フィルムに保持された電荷を有効に利用することができず、発生させた電荷を外部に十分に取りだすことができない場合があることが明らかになった。
すなわち、従来のエレクトレット化フィルムを用いたエレクトレット素子は、保持された電荷を有効に利用し、発生させた電荷を外部に取り出すという点で改善の余地があった。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、エレクトレット化フィルム(A)と電極層(C)との間の少なくとも一部に、電気的に絶縁された非粘接着性絶縁層(B)を設けることによって、多くの電荷を取り出すことが可能なエレクトレット素子10が得られることを初めて見出した。
この理由は明らかではないが、エレクトレット化フィルム(A)と電極層(C)との間の少なくとも一部に、電気的に絶縁された非粘接着性絶縁層(B)を設けることによって、エレクトレット化フィルム(A)の両側全面が電極層(C)と直接接触した状態または粘接着層で覆われることを抑制できるため、エレクトレット化フィルム(A)の表面にたまった電荷が電極層(C)または粘接着層を通じて消失し難くなると考えられる。また、エレクトレット化フィルム(A)と電極層(C)との間の非粘接着性絶縁層(B)に保持された電荷を有効に利用することができるため、エレクトレット化フィルム(A)から電荷を外部に取り出すことが可能となる。
すなわち、本実施形態に係るエレクトレット素子10は、エレクトレット化フィルム(A)と電極層(C)との間の一部に、電気的に絶縁された非粘接着性絶縁層(B)を設けることによって、エレクトレット化フィルム(A)の表面にたまった電荷の消失を抑制しながら、エレクトレット化フィルム(A)から多くの電荷を取り出すことが可能となる。
ここで、電気的に絶縁された非粘接着性絶縁層(B)は、エレクトレット化フィルム(A)の少なくとも一方の面に設ければよい。エレクトレット化フィルム(A)の一方の面のみに電気的に絶縁された非粘接着性絶縁層(B)を有する場合、電気的に絶縁された非粘接着性絶縁層(B)が設けられていない側の電極層(C)は、エレクトレット化フィルム(A)の表面に直接形成されていてもよいし、粘接着層を介して形成されていてもよい。エレクトレット化フィルム(A)の表面に直接形成する場合、電極層(C)は、導電性塗料の塗工や金属の蒸着等によって形成してもよい。エレクトレット化フィルム(A)の一方の面のみに粘接着層および電極層(C)を直接形成する場合、エレクトレット化処理前に形成することが好ましい。
ここで、エレクトレット化フィルム(A)の少なくとも一部と非粘接着性絶縁層(B)の少なくとも一部とは直接接していることが好ましい。
【0017】
本実施形態に係るエレクトレット素子10の形状は特に限定されないが、例えば、フィルム状、シート状、板状等が挙げられる。これらの中でもフィルム状またはシート状が好ましい。
【0018】
本実施形態に係るエレクトレット素子10において、多くの電荷をより安定的に取り出す観点や、エレクトレット素子10の出力をより一層向上させる観点から、エレクトレット素子10の一面の面積は、好ましくは25cm
2以上である。
【0019】
次に、本実施形態に係るエレクトレット素子10を構成する各層について説明する。
【0020】
<エレクトレット化フィルム(A)>
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)は、電荷保持性や柔軟性、成形性、取扱い性、コスト等のバランスの観点から、非フッ素系樹脂を含み、吸湿性が低くて絶縁性に優れており、電荷保持力が高いことから、非フッ素系の熱可塑性樹脂を含むことがより好ましい。ここで、非フッ素系樹脂とは、フッ素原子を含まない樹脂をいう。
エレクトレット化フィルム(A)を構成する非フッ素系の熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、環状オレフィン系重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂;ポリシアン化ビニル、ポリシアン化ビニリデン等のシアノ系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸樹脂等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルイミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアセタール系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;ポリベンゾイミダゾール系樹脂;ポリベンゾオキサゾール系樹脂;ポリメチルペンテン系樹脂等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0021】
これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、絶縁性に優れており電荷保持力が高いことから、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂およびポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種または二種以上の樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂がより好ましく、環状オレフィン系重合体がさらに好ましい。
【0022】
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)中の樹脂の含有量は特に限定されないが、エレクトレット化フィルム(A)全体を100質量%としたとき、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
これにより、電荷保持性、機械的特性、取扱い性、成形性、柔軟性、耐熱性、耐湿性、透明性等のバランスにより優れたエレクトレット化フィルム(A)を得ることができる。
【0023】
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。すなわち、エレクトレット化フィルム(A)の数は1枚以上とすることができる。
また、エレクトレット化フィルム(A)を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、無延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、エレクトレット化フィルム(A)の耐熱性や機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。
【0024】
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)は、多孔性フィルムであっても、非多孔性フィルムであってもよいが、エレクトレット素子10の長期信頼性を良好にできる観点から、非多孔性フィルムであることが好ましい。また、エレクトレット化フィルム(A)が非多孔性フィルムの場合の方が、前述したエレクトレット化フィルムの表面に保持された電荷の消失が起きやすい。そのため、エレクトレット化フィルム(A)が非多孔性フィルムの場合の方が、エレクトレット化フィルム(A)の表面にたまった電荷の消失を抑制しながらエレクトレット化フィルム(A)から多くの電荷を取り出すことができるという本実施形態に係る効果をより一層効果的に得ることができる。
【0025】
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)は、柔軟性や透明性をより良好にする観点から、エレクトレット化フィルム(A)中の無機充填材の含有量が、エレクトレット化フィルム(A)の全体を100質量%としたとき、0質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
このような無機充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、焼成クレー、シリカ、けいそう土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、ガラスファイバー等が挙げられる。
【0026】
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)は、高温下での電荷保持性をより向上させる観点から、ガラス転移温度が80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることがさらに好ましく、120℃以上であることが特に好ましい。
また、本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)は、柔軟性および透明性を向上させる観点から、ガラス転移温度が220℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。
【0027】
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)の周波数1MHzでの比誘電率は、電荷保持性をより向上させ、感度がより優れるエレクトレット素子10を得る観点から、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましい。
【0028】
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)は、エレクトレット素子10の感度を良好にする観点から、エレクトレット化フィルム(A)の厚み方向に荷重0.5N、動的荷重±0.25N、周波数110Hz、温度23℃、湿度50%の条件で押圧力を加えて測定される、厚み方向の圧電定数d
33の絶対値が好ましくは30pC/N以上であり、より好ましくは50pC/N以上であり、さらに好ましくは100pC/N以上であり、さらにより好ましくは150pC/N以上であり、特に好ましくは180pC/N以上である。
また、上記厚み方向の圧電定数d
33の絶対値の上限値は特に限定されないが、高温下での電荷保持性をより良好にする観点から、500pC/N以下が好ましく、400pC/N以下がより好ましく、300pC/N以下がさらに好ましい。
このような圧電定数d
33を達成するためには、例えば、コロナ荷電処理の方法を工夫することが重要となる。
【0029】
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)は、高温高湿度下での電荷保持性をより向上させ、長期信頼性により優れるエレクトレット素子10を得る観点から、ASTM D570に準拠して測定される、温度23℃の水中に24時間浸漬した際の吸水率が0.3質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましい。本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)の吸水率の下限は特に限定されないが、例えば、0.0001質量%以上である。
【0030】
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)の厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上500μm以下であり、好ましくは10μm以上300μm以下であり、より好ましくは15μm以上200μm以下である。本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)の厚みがこの範囲内であると、機械的特性、取扱い性、成形性等のバランスがより優れている。
【0031】
(環状オレフィン系重合体)
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)は、非フッ素系樹脂として環状オレフィン系重合体を含むことが好ましい。これにより、厚み方向の圧電定数d
33をより一層良好にすることができる。また、温度変化に対する電荷の発生量(焦電性)を小さくすることができるため、温度変化の影響が小さいエレクトレット素子10を得ることができる。
【0032】
環状オレフィン系重合体としては、例えば、エチレンまたはα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体および環状オレフィンの開環重合体から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0033】
エチレンまたはα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体としては、例えば、国際公開第2008/047468号の段落0030〜0123に記載の重合体を用いることができる。
【0034】
例えば、繰り返し構造単位の少なくとも一部に脂環族構造を有する重合体(以下、単に「脂環族構造を有する重合体」ともいう)であり、重合体の繰り返し単位の少なくとも一部に脂環族構造を有するものであればよく、具体的には下記式(1)で表される1種ないし2種以上の構造を有する重合体を含むことが好ましい。
【0035】
【化1】
ここで、上記式(1)中、x、yは共重合比を示し、0/100≦y/x≦95/5を満たす実数である。x、yはモル基準である。
nは置換基Qの置換数を示し、0≦n≦2の実数である。
R
aは、炭素原子数2〜20の炭化水素基よりなる群から選ばれる2+n価の基である。
R
bは、水素原子、または炭素原子数1〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1価の基である。
R
cは、炭素原子数2〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる4価の基である。
Qは、COOR
d(R
dは、水素原子、または炭素原子数1〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1価の基である。)である。
R
a、R
b、R
cおよびQは、それぞれ1種であってもよく、2種以上を任意の割合で有していてもよい。
【0036】
また、上記式(1)において、R
aは、好ましくは、炭素原子数2〜12の炭化水素基から選ばれる1種ないし2種以上の2価の基であり、さらに好ましくはn=0の場合、下記式(2)で表される2価の基であり、最も好ましくは、下記式(2)において、pが0または1である2価の基である。R
aの構造は1種のみ用いても、2種以上を併用しても構わない。
【0037】
【化2】
ここで、上記式(2)中、pは、0〜2の整数である。
【0038】
また、エチレンまたはα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体としては、下記式(3)で表現される環状オレフィン系共重合体である。例えば、エチレンまたは炭素原子数が3〜30の直鎖状または分岐状のα−オレフィン由来の構成単位(A)と、環状オレフィン由来の構成単位(B)とからなる。
【0039】
【化3】
ここで、上記式(3)中、R
aは、炭素原子数2〜20の炭化水素基よりなる群から選ばれる2価の基である。
R
bは、水素原子、または炭素原子数1〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1価の基である。
R
aおよびR
bは、それぞれ1種であってもよく、2種以上を任意の割合で有していてもよい。
x、yは共重合比を示し、5/95≦y/x≦95/5を満たす実数である。好ましくは50/50≦y/x≦95/5、さらに好ましくは、55/45≦y/x≦80/20である。x、yはモル基準である。
【0040】
エチレンまたはα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体は、エチレンおよび環状オレフィンからなる共重合体が好ましく、環状オレフィンがビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、シクロペンタジエン−ベンザイン付加物およびシクロペンタジエン−アセナフチレン付加物からなる群から選ばれる一種または二種以上であるものが好ましく、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンから選択される少なくとも一種であるものがより好ましい。
エチレンまたはα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体としては、上記式(1)で表される1種ないし2種以上の構造を有する重合体または上記式(3)で表現される環状オレフィン系共重合体が水素添加処理された重合体であってもよい。
【0041】
また、環状オレフィン系重合体としては、環状オレフィンの開環重合体を用いることができる。
環状オレフィンの開環重合体としては、例えば、ノルボルネン系単量体の開環重合体およびノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物等が挙げられる。
【0042】
ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)およびその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.0
1,6.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)およびその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)およびその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(慣用名:テトラシクロドデセン)およびその誘導体、等が挙げられる。
これらの誘導体の環に置換される置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基等が挙げられる。なお、置換基は、1個または2個以上を有することができる。このような環に置換基を有する誘導体としては、例えば、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン等が挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0043】
ノルボルネン系単量体の開環重合体、またはノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。
開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウム等の金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒;チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデン等の金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒;等を用いることができる。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系単量体等を挙げることができる。
【0044】
ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物や、ノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体の水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0045】
本実施形態において環状オレフィン系重合体は1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)中の環状オレフィン系重合体の含有量は特に限定されないが、エレクトレット化フィルム(A)全体を100質量%としたとき、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
これにより、高温や高温高湿度下での電荷保持性、機械的特性、取扱い性、成形性、柔軟性、耐熱性、耐湿性、透明性等のバランスにより優れたエレクトレット化フィルム(A)を得ることができる。
【0047】
(添加剤)
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)には、目的に応じて、各種添加剤を添加してもよい。添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて適宜選択される。
上記添加剤としては、耐熱安定剤、耐候安定剤、スリップ剤、耐放射線剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、摩擦磨耗性向上剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、耐衝撃剤、表面ぬれ改善剤、塩酸吸収剤および金属不活性化剤からなる群から選択される一種または二種以上の添加剤が挙げられる。
特に、熱可塑性樹脂を原料とし、押出機等を用いてフィルムを成形する場合、フィルム外観上のブツの原因となる押出機内でペレット同士の摩擦によって生じるゲル化をより一層抑制するため、固体原料がペレットである場合、押出機にペレットを供給する前に、予めペレットの外部に滑剤を添加することが好ましい。
このような摩擦やせん断によるゲル化を抑制する滑剤としては、脂肪酸アミド系滑剤や金属石鹸系滑剤、および液状滑剤等が挙げられる。より具体的には、脂肪酸アミド系滑剤の場合、エチレンビスステアリン酸アミド、金属石鹸系滑剤の場合、ステアリン酸カルシムやステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、および液状滑剤の場合、パラフィンオイルやナフテンオイル等が挙げられる。これらの滑剤の添加量としては、原料ペレット100質量部に対して、0.005〜0.3質量部であることが好ましく、0.01〜0.1質量部であることがより好ましく、0.03〜0.08質量部であることがさらに好ましい。
ここで、滑剤の添加量が上記下限値以上であると、滑剤の効果がより一層得られやすく、ゲルの発生をより一層抑制することができる。一方、滑剤の添加量が上記上限値以下であると、フィルムのヘイズがより一層低くなり、透明性をより良好にしたり、外観や機械物性をより一層良好にしたりすることができる。熱可塑性樹脂からなる固体原料であるペレットに対する滑剤の添加方法としては、タンブラーミキサー等の混合器を用いて、ペレットと滑剤とを均一に混合することが挙げられる。
【0048】
(エレクトレット化フィルム(A)の製造方法)
本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)の製造方法は、例えば、以下の2つの工程を含む。
(1)樹脂フィルムを作製する工程
(2)得られた樹脂フィルムに対してコロナ荷電処理をおこない、エレクトレット化する工程
以下、各工程について説明する。
【0049】
はじめに、樹脂フィルムを作製する。
樹脂フィルムの製造方法としては特に限定はされないが、例えば、公知の各種の成形方法(キャスト成形、押出成形、インフレーション成形、射出成形、圧縮成形、カレンダー成形等)により、樹脂をフィルム状に成形することにより得る方法が挙げられる。
これらの樹脂フィルムの製造方法のうち、単軸押出機およびTダイを用いてフィルムをキャスト成形することが量産性に優れ、製造コストを低減する上で好ましい。特に、樹脂がエチレンまたはα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体の場合であって、単軸押出機およびTダイを用いて、光線透過率が高く、かつヘイズが低い透明性に優れたフィルムを得る場合には、フィルム成形条件として、例えば、ポリマーフィルターの併用を含めて、特開2005−343148号公報に記載の方法を参考とすることができる。また、キャスティング時、フィルムの平滑性を付与する目的で、キャストロールに対するTダイから押し出された溶融ウェブの圧着方法として、公知の静電ピンニング方式、表面が鏡面仕上げされたスリーブタッチ方式(千葉機械工業社製)、または公知の金属弾性体ロールを圧着する手法を用いることができる。さらに、フィルムを二軸方向に加熱延伸することにより、フィルムの脆性を改良してもよい。ここで、フィルムを二軸方向に加熱延伸する手法としては、例えば、逐次延伸法、同時二軸延伸等を挙げることができる。
【0050】
つぎに、得られた樹脂フィルムに対して、例えばコロナ荷電処理をおこない、樹脂フィルムをエレクトレット化する。これにより、本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)を得ることができる。
ここで、(1)針が等間隔に配置された針状電極を用いてコロナ荷電処理をおこなうこと、(2)コロナ荷電処理時の電極間の距離、(3)コロナ荷電処理時の電圧、の3つの条件を高度に制御することが好ましい。すなわち、上記の3つの条件に係る各種因子を高度に制御する製造方法によって厚み方向の圧電定数d
33がより一層優れたエレクトレット化フィルム(A)を得ることができる。
より具体的には、直流高圧電源に繋がった針状電極とアース電極の間に樹脂フィルムを固定し電圧を印加することが好ましい。このとき、針状電極とアース電極の間の距離を20〜50mmに設定し、さらに印加する電圧を15〜30kVもしくは−30〜−15kVに設定することが好ましい。
これにより樹脂フィルムに電荷を十分に注入することができ、厚み方向の圧電定数d
33がより一層優れたエレクトレット化フィルム(A)を得ることができる。
【0051】
<非粘接着性絶縁層(B)>
非粘接着性絶縁層(B)は、エレクトレット化フィルム(A)および電極層(C)に対して粘接着性を示さず、かつ、絶縁性を有する層である。
非粘接着性絶縁層(B)は、エレクトレット化フィルム(A)および電極層(C)に対して粘接着性を示さず、かつ、絶縁性を有する層であれば特に限定されないが、例えば、絶縁樹脂層や絶縁性無機物層等が挙げられる。これらの中でも非粘接着性絶縁層(B)としては絶縁樹脂層が好ましい。
【0052】
上記絶縁樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、公知の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、環状オレフィン系重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体;スチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂;含フッ素環状オレフィン系重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂;ポリシアン化ビニル、ポリシアン化ビニリデン等のシアノ系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸樹脂等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルイミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアセタール系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;ポリベンゾイミダゾール系樹脂;ポリベンゾオキサゾール系樹脂;ポリメチルペンテン系樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0053】
これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、絶縁性に優れており電荷保持力が高いことから、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂およびフッ素系樹脂からなる群から選択される一種または二種以上の樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂がより好ましい。
【0054】
絶縁性無機物層を構成する無機物としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物等が挙げられる。例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、アルミニウム酸化物、アルミニウム窒化物、アルミニウム酸窒化物、チタン酸化物、タンタル酸化物、ゲルマニウム酸化物、マグネシウム酸化物等が挙げられる。これらの無機物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0055】
非粘接着性絶縁層(B)は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、非粘接着性絶縁層(B)が絶縁樹脂層の場合、絶縁樹脂層を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、非粘接着性絶縁層(B)の機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。
【0056】
非粘接着性絶縁層(B)の厚さは、エレクトレット素子10の出力安定性を向上させる観点から、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは20μm以上300μm以下、さらに好ましくは25μm以上150μm以下である。
【0057】
非粘接着性絶縁層(B)の絶縁性は一般的な絶縁体が有する絶縁性であれば特に限定されないが、例えば、ASTM D257に準拠し、印加電圧500Vで電圧印加後1分後に測定される、23℃での前記非粘接着性絶縁層(B)の体積抵抗率が1.0×10
6Ω・cm以上であり、好ましくは1.0×10
8Ω・cm以上、より好ましくは1.0×10
10Ω・cm以上、さらに好ましくは1.0×10
12Ω・cm以上である。
【0058】
本実施形態に係るエレクトレット素子10において、高温高湿度下での電荷保持性をより向上させ、長期信頼性により優れるエレクトレット素子10を得る観点から、ASTM D570に準拠して測定される、温度23℃の水中に24時間浸漬した際の非粘接着性絶縁層(B)の吸水率は0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましい。本実施形態に係る非粘接着性絶縁層(B)の吸水率の下限は特に限定されないが、例えば、0.0001質量%以上である。
【0059】
非粘接着性絶縁層(B)は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、UV処理等を行ってもよい。
【0060】
<電極層(C)>
電極層(C)としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、亜鉛箔、金箔、銀箔、プラチナ箔、ニッケル箔、チタン箔、クロム箔、タングステン箔、モリブデン箔、白金箔、タンタル箔、ニオブ箔、ジルコニウム箔、ステンレス箔、合金箔等の金属箔;ITO(酸化インジウム・スズ)膜、酸化スズ膜等の金属酸化物膜;有機導電樹脂膜等の膜;金属ナノワイヤー;金属ナノ粒子;導電性塗料等が挙げられる。
電極層(C)の厚みは特に限定されないが、例えば0.01μm以上50μm以下、好ましくは0.03μm以上20μm以下、さらに好ましくは0.05μm以上15μm以下である。
【0061】
<粘接着層(D)>
本実施形態に係るエレクトレット素子10は、
図2に示すように、非粘接着性絶縁層(B)と電極層(C)との間に粘接着層(D)をさらに備えてもよい。ここで、粘接着層(D)は、各層の位置ズレ等が起きないように各層の位置を固定させる役割を有する。
本実施形態において、粘着層と接着層を総称して粘接着層と呼ぶ。
【0062】
粘接着層(D)を構成する粘接着剤としては特に限定されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリル系粘接着剤、シリコーン系粘接着剤、ポリウレタン系粘接着剤、オレフィン系粘接着剤、スチレン系粘接着剤、ゴム系粘接着剤、ビニルエーテル系粘接着剤、ポリエステル系粘接着剤、エポキシ系粘接着剤、ポリアミド系粘接着剤、ポリ酢酸ビニル系粘接着剤、ABS系粘接着剤、紫外線硬化型粘接着剤等が挙げられる。本実施形態において、粘着剤と接着剤を総称して粘接着剤と呼ぶ。
これらの中でも、耐候性および透明性等に優れ、広範な用途に使用できることから、ポリ(メタ)アクリル系粘接着剤が好ましい。ポリ(メタ)アクリル系粘接着剤としては、エマルジョン型、溶剤型、ホットメルト型、溶液型等があり、本実施形態においては、いずれの型のものも使用できる。これらの中でも、安全面、品質面、コスト面からエマルジョン型のポリ(メタ)アクリル系粘接着剤が好ましい。
【0063】
粘接着層(D)は、必要に応じて他の任意成分を含有してもよい。他の任意成分としては、タッキファイヤー、粘着性微球体、増粘剤、pH調整剤、消泡剤、防腐防黴剤、顔料、無機充填剤、安定剤、濡れ剤、湿潤剤等が挙げられる。タッキファイヤーとしては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、水添石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
【0064】
粘接着層(D)の厚さは特に制限されないが、例えば、0.01μm以上50μm以下であることが好ましく、0.03μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0065】
粘接着層(D)は、例えば、形成部位上に粘接着剤を塗布することにより形成することができる。粘接着剤は溶剤に溶解して塗布液として塗布してもよいし、水系エマルジョンとして塗布してもよいし、液状の粘接着剤を直に塗布してもよい。
粘接着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、グラビアコーター法、コンマコーター法、バーコーター法、ナイフコーター法、ダイコーター法、ロールコーター法等の塗布方式;インクジェット方式;スクリーン印刷方式等を用いることができる。
【0066】
また、本実施形態に係るエレクトレット素子10は、エレクトレット化フィルム(A)、非粘接着性絶縁層(B)および電極層(C)を含む構造単位の全体を包装するための包装材をさらに備えてもよい。この場合、エレクトレット化フィルム(A)、非粘接着性絶縁層(B)および電極層(C)を含む構造単位が包装材によりラミネート包装されている。これにより、非粘接着性絶縁層(B)と電極層(C)との間に粘接着層(D)を設けなくても、各層がずれてしまったり、剥がれてしまったりすることを抑制することができる。すなわち、エレクトレット化フィルム(A)、非粘接着性絶縁層(B)および電極層(C)を含む構造単位を包装材によりラミネート包装することによって、各層の位置ズレ等を抑制でき、その結果、各層の位置を固定することができる。
包装材としては、特に限定されず、公知のラミネートフィルムを用いることができる。エレクトレット素子10の長期信頼性を向上させる観点から、ガスバリア性に優れたラミネートフィルムが好ましく、100℃以上の高温下で保持されても形状および接着性を維持できる耐熱性の高いラミネートフィルムがさらに好ましい。
【0067】
また、本実施形態に係るエレクトレット素子10は、エレクトレット化フィルム(A)、非粘接着性絶縁層(B)および電極層(C)を含む構造単位の周縁部の少なくとも一部が固定されていてもよい。これにより、非粘接着性絶縁層(B)と電極層(C)との間に粘接着層(D)を設けなくても、各層がずれてしまったり、剥がれてしまったりすることを抑制することができる。固定材としては特に限定されず、例えば、粘着剤や接着剤、粘着テープや接着テープ、クリップ等が挙げられる。
【0068】
エレクトレット素子10としては、特に限定されないが、例えば、圧電センサ素子、焦電センサ素子等のセンサ素子や、発電素子等が挙げられ、エレクトレット素子10は圧電性に特に優れることから、好ましくは圧電センサ素子である。エレクトレット素子10を用いたセンサとしては、例えば、衝撃検知センサ、振動検知センサ、変位検知センサ等合が挙げられる。
本実施形態に係るセンサは、例えば、公知の情報に基づいて作製することができる。
【0069】
2.電子装置
本実施形態に係る電子装置は、構成部品の一つとして本実施形態に係るエレクトレット素子10を備える。
本実施形態に係るエレクトレット素子10を用いた電子装置としては、例えば、発電装置、生体信号取得装置、振動検知装置、衝撃検知装置および変位検知装置等が挙げられる。
発電装置は、エレクトレット素子10に注入された電荷を外部へ出し入れすることによって発電する装置である。生体信号取得装置は、例えば、脈、呼吸、いびき、声、体動等の生体信号を取得するための装置である。このような生体信号取得装置は、例えば、椅子、椅子用カバー、シートベルト、クッション、ベッド、布団、マットレス、敷きパッド、敷き布団、枕、衣類、靴、首巻、リストバンド、指輪、絆創膏、腕時計、眼鏡、便座、浴槽、ソファー、床、体重計等に設置することにより、人体等の生体から生体信号を取得することができる。
振動検知装置、衝撃検知装置および変位検知装置は、例えば、振動や衝撃、変位に基づいて、人や乗り物の存在を検知したり、建造物または構造物の揺れや異常を検知したりするための装置である。
【0070】
当該電子装置において、本実施形態に係るエレクトレット素子10は、電極層(C)を介して受け取った電気エネルギーを機械的エネルギーに変換できる。これにより、本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)が変形して、振動し、ユーザーに触覚をフィードバックできる。
また、当該電子装置において、本実施形態に係るエレクトレット素子10は、電子装置が受けた振動の機械的エネルギーを電気エネルギーに変換できる。当該電気エネルギーは、電極層(C)を介して他の装置等に送られる。
また、当該電子装置において、本実施形態に係るエレクトレット素子10は、電極層(C)を介して受け取った電気エネルギーを機械的エネルギーに変換できる。これにより、本実施形態に係るエレクトレット化フィルム(A)が変形して、振動し、音を発生できる。
本実施形態に係る電子装置は、例えば、公知の情報に基づいて作製することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0072】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0073】
1.測定方法
【0074】
(1)荷重に対する発生電圧
一辺10cmの正方形の形状に切り出し角部分は約半径1cmで面取りしたエレクトレット素子を、厚み1mmのアルミニウム板で挟み、サンプルの両側面をエレクトロメーター(KEITHLEY社製、Model 617 Programmable Electrometer)に接続した。サンプルの厚み方向に引張試験機(エー・アンド・デイ社製、TENSILON RTG−1250)で繰り返し0.2Nから1Nの圧縮荷重を加え、その際に発生する電圧をエレクトロメーターで測定した。測定は5回繰り返し行い、ピークtoピークの値の平均値を採用した。
【0075】
(2)ガラス転移温度
DSC(Differential Scanning Calorimetry)装置(島津製作所社製、DSC−60A)を用いて、エレクトレット化フィルムのガラス転移温度を測定した。
【0076】
(3)吸水率
ASTM D570に準拠し、温度23℃の水中にエレクトレット化フィルムおよび非粘接着性絶縁層を24時間浸漬した際のエレクトレット化フィルムおよび非粘接着性絶縁層の重量増加率(=100×重量増加量/浸漬前のエレクトレット化フィルムの重量)を吸水率としてそれぞれ測定した。
【0077】
(4)比誘電率
プレシジョンLCRメーター(アジレント・テクノロジー社製、4284A)を用いて、エレクトレット化フィルムの周波数1MHzでの比誘電率を測定した。
【0078】
(5)体積抵抗率
非粘接着性絶縁層(B)の体積固有抵抗(Ω・cm)を、ASTM D257に準拠し、23℃、印加電圧500Vで電圧印加後1分後に測定した。
【0079】
[実施例1]
(エレクトレット化フィルム(A1)の作製)
単軸押出機とTダイキャスト成形装置を用いて、エチレンとテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンとからなる環状オレフィン系共重合体(エチレンの含有量:69モル%、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンの含有量:31モル%)により構成されたペレット100質量部に対し、ペレット外部に滑剤としてエチレンビスステアリン酸アミド(花王社製、カオーワックス EB−FF)0.05質量部を添加したものを押出成形することにより、環状オレフィン系重合体により構成された無延伸の非多孔性フィルムを得た。その後、二軸延伸機により、縦方向、横方向にそれぞれ延伸倍率2倍で加熱延伸し、厚みが50μmの非多孔性フィルムを得た。
次いで、直流高圧電源に繋がった針状電極とアース電極の間(電極間距離:35mm)に非多孔性フィルムを固定した。ここで、直流高圧電源に繋がった針状電極とアース電極を有する装置には、春日電機社製の直流高圧電源、針状電極およびアース電極を使用した。次いで、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、直流高電圧(−20kV)を非多孔性フィルムに5秒間印加して非多孔性フィルムを帯電させることによりエレクトレット化フィルムA1(ガラス転移温度:125℃、吸水率:<0.01質量%、周波数1MHzでの比誘電率:2.3)を作製した。
【0080】
(エレクトレット素子の作製)
図1に示すように、エレクトレット化フィルムA1の両面に、非粘接着性絶縁層(B)であるPETフィルム(東レ社製、製品名:ルミラーS10、厚み:50μm、体積抵抗率:4×10
17Ω・cm、吸水率:0.4質量%)を介して、電極層(C)であるアルミ箔(三菱アルミニウム社製、FOIL、厚み11μm)を積層し、エレクトレット素子を得た。得られたエレクトレット素子について各種評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0081】
[実施例2]
(粘接着層(D)付きの電極層(C)の作製)
アルミ箔(三菱アルミニウム社製、FOIL、厚み11μm)の片面に、水性アクリルエマルジョン型接着剤(3M社製、SP−7533)を塗布し、塗膜を形成した。次いで、上記塗膜を、25℃で15分間静置した後、加熱乾燥することにより、粘接着層(D)付きの電極層(C)を得た。
【0082】
(エレクトレット素子の作製)
図2(a)に示すように、実施例1で得られたエレクトレット化フィルムA1の両面に、非粘接着性絶縁層(B)であるPETフィルム(東レ社製、製品名:ルミラーS10、厚み:50μm、体積抵抗率:4×10
17Ω・cm、吸水率:0.4質量%)を介して、粘接着層(D)付きの電極層(C)を、非粘接着性絶縁層(B)と粘接着層(D)とが接するように貼り合わせ、エレクトレット素子を得た。得られたエレクトレット素子について各種評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0083】
[実施例3]
(粘接着層(D)付きの非粘接着性絶縁層(B)の作製)
非粘接着性絶縁層(B)であるPETフィルム(東レ社製、製品名:ルミラーS10、厚み:50μm、体積抵抗率:4×10
17Ω・cm、吸水率:0.4質量%)の片面に、水性アクリルエマルジョン型接着剤(3M社製、SP−7533)を塗布し、塗膜を形成した。次いで、上記塗膜を、25℃で15分間静置した後、加熱乾燥することにより、粘接着層(D)付きの非粘接着性絶縁層(B)を得た。
【0084】
(エレクトレット素子の作製)
図2(b)に示すように、エレクトレット化フィルムA1の両面に、非粘接着性絶縁層(B)であるPETフィルム(東レ社製、製品名:ルミラーS10、厚み:50μm、体積抵抗率:4×10
17Ω・cm、吸水率:0.4質量%)を介して、電極層(C)であるアルミ箔(三菱アルミニウム社製、FOIL、厚み11μm)を積層した。次いで、得られた積層体の両面に、粘接着層(D)付きの非粘接着性絶縁層(B)を、電極層(C)と粘接着層(D)とが接するように貼り合わせ、エレクトレット素子を得た。得られたエレクトレット素子について各種評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0085】
[実施例4]
非粘接着性絶縁層(B)として、PETフィルム(東レ社製、製品名:ルミラーS10、厚み:12μm、体積抵抗率:4×10
17Ω・cm、吸水率:0.4質量%)を用いた以外は実施例1と同様にしてエレクトレット素子を得た。得られたエレクトレット素子について各種評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0086】
[比較例1]
図3(a)に示すように、実施例1で得られたエレクトレット化フィルムA1の両面に、アルミ箔(三菱アルミニウム社製、FOIL、厚み11μm)を積層し、エレクトレット素子を得た。すなわち、非粘接着性絶縁層(B)を設けない以外は、実施例1と同様にしてエレクトレット素子を得た。得られたエレクトレット素子について各種評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0087】
[比較例2]
実施例1で得られたエレクトレット化フィルムA1の両面に、真空蒸着によりアルミ蒸着膜を形成し、両面に電極層(C)が形成された、エレクトレット素子を作製した。
ここで、エレクトレット化フィルムA1の両面の全体にアルミ蒸着膜が形成されているため、エレクトレット化フィルムA1とアルミ蒸着膜との間には電気的に絶縁された領域は存在しない。得られたエレクトレット素子について各種評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0088】
[比較例3]
非粘接着性絶縁層(B)を設けない以外は実施例2と同様にして、
図3(b)に示すようなエレクトレット素子を得た。得られたエレクトレット素子について各種評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0089】
[比較例4]
図3(c)に示すように、比較例3で得られたエレクトレット素子の両面に、非粘接着性絶縁層(B)であるPETフィルム(東レ社製、製品名:ルミラーS10、厚み:50μm、体積抵抗率:4×10
17Ω・cm、吸水率:0.4質量%)を積層し、エレクトレット素子を得た。得られたエレクトレット素子について各種評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0090】
[比較例5]
(粘接着層(D)付きの非粘接着性絶縁層(B)の作製)
非粘接着性絶縁層(B)であるPETフィルム(東レ社製、製品名:ルミラーS10、厚み:50μm、体積抵抗率:4×10
17Ω・cm、吸水率:0.4質量%)の片面に、水性アクリルエマルジョン型接着剤(3M社製、SP−7533)を塗布し、塗膜を形成した。次いで、上記塗膜を、25℃で15分間静置した後、加熱乾燥することにより、粘接着層(D)付きの非粘接着性絶縁層(B)を得た。
【0091】
(エレクトレット素子の作製)
図3(d)に示すように、実施例1で得られたエレクトレット化フィルムA1の両面に、粘接着層(D)付きの非粘接着性絶縁層(B)を、エレクトレット化フィルムA1と粘接着層(D)とが接するように貼り合わせて積層体を得た。次いで得られた積層体の両面に、電極層(C)であアルミ箔(三菱アルミニウム社製、FOIL、厚み11μm)を積層し、エレクトレット素子を得た。得られたエレクトレット素子について各種評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1から明らかなように、実施例のエレクトレット素子は、荷重に対する発生電圧が高いことが分かった。これにより、各種電子装置へと利用することが有用であることが理解できる。