特開2020-16272(P2020-16272A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2020016272-自動変速機 図000003
  • 特開2020016272-自動変速機 図000004
  • 特開2020016272-自動変速機 図000005
  • 特開2020016272-自動変速機 図000006
  • 特開2020016272-自動変速機 図000007
  • 特開2020016272-自動変速機 図000008
  • 特開2020016272-自動変速機 図000009
  • 特開2020016272-自動変速機 図000010
  • 特開2020016272-自動変速機 図000011
  • 特開2020016272-自動変速機 図000012
  • 特開2020016272-自動変速機 図000013
  • 特開2020016272-自動変速機 図000014
  • 特開2020016272-自動変速機 図000015
  • 特開2020016272-自動変速機 図000016
  • 特開2020016272-自動変速機 図000017
  • 特開2020016272-自動変速機 図000018
  • 特開2020016272-自動変速機 図000019
  • 特開2020016272-自動変速機 図000020
  • 特開2020016272-自動変速機 図000021
  • 特開2020016272-自動変速機 図000022
  • 特開2020016272-自動変速機 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-16272(P2020-16272A)
(43)【公開日】2020年1月30日
(54)【発明の名称】自動変速機
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/0638 20060101AFI20191227BHJP
   F16D 55/40 20060101ALI20191227BHJP
   F16D 65/12 20060101ALI20191227BHJP
   F16D 13/60 20060101ALI20191227BHJP
【FI】
   F16D25/0638
   F16D55/40 F
   F16D65/12 X
   F16D13/60 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-138730(P2018-138730)
(22)【出願日】2018年7月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】山川 將太
(72)【発明者】
【氏名】石坂 友隆
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 将倫
【テーマコード(参考)】
3J056
3J057
3J058
【Fターム(参考)】
3J056AA60
3J056BA05
3J056BB12
3J056BB50
3J056CD01
3J056CD10
3J056GA05
3J056GA12
3J057AA03
3J057BB04
3J057CA01
3J057DA20
3J057GA17
3J057HH01
3J057JJ04
3J058AA44
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA59
3J058AA70
3J058AA77
3J058AA87
3J058BA16
3J058BA46
3J058CB03
3J058CB04
3J058CB15
3J058CB17
3J058FA29
(57)【要約】
【課題】ハブ部材とドラム部材との間に複数の摩擦板が配置されたブレーキを備えた自動変速機において、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつドラム部材の縦壁部が軸方向に倒れることを抑制する。
【解決手段】ハブ部材20とドラム部材40との間に複数の摩擦板50が配置されたブレーキBR2を備えた自動変速機10において、ドラム部材40は、摩擦板50がスプライン係合される外側円筒部41と軸方向一方側から径方向内側に延びる縦壁部42とを備える。ドラム部材40の縦壁部42に軸方向他方側に延びる延設部43が設けられると共にハブ部材20に延設部43の外周側に支持部80cが設けられ、ドラム部材40は、延設部43と支持部80cとの間に配置された軸受部材45を介して支持部80cに支持される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケースに結合されるハブ部材と、所定の回転部材に結合されるドラム部材と、前記ハブ部材と前記ドラム部材との間に配置される複数の摩擦板とを有するブレーキを備えた自動変速機であって、
前記ハブ部材は、前記摩擦板がスプライン係合される内側円筒部を備え、
前記ドラム部材は、前記摩擦板がスプライン係合される外側円筒部と前記外側円筒部の軸方向一方側から前記内側円筒部より径方向内側に延びる縦壁部とを備え、
前記ドラム部材の縦壁部に軸方向他方側に延びる延設部が設けられると共に、前記ハブ部材に前記延設部の外周側に前記ドラム部材を支持する支持部が設けられ、
前記ドラム部材は、前記延設部と前記支持部との間に配置された軸受部材を介して前記支持部に支持されている
ことを特徴する自動変速機。
【請求項2】
前記ハブ部材は、前記内側円筒部を備えると共に前記変速機ケースにスプライン係合される第1ハブ部材と、前記第1ハブ部材に隣接して配置されると共に前記変速機ケースに嵌合される第2ハブ部材とを備え、
前記支持部は、前記第2ハブ部材に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
【請求項3】
前記変速機ケースの内周面に、スナップリングが嵌められる周溝が設けられ、
前記周溝は、軸方向他方側に径方向外側に向かうにつれて軸方向一方側に傾斜する周溝側傾斜面を備え、
前記スナップリングは、軸方向他方側に前記周溝側傾斜面に当接するスナップリング側傾斜面を備え、
前記第2ハブ部材は、前記周溝側傾斜面に前記スナップリング側傾斜面が当接することにより前記スナップリングによって軸方向他方側から軸方向に固定されている
ことを特徴とする請求項2に記載の自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される自動変速機に関し、車両用の自動変速機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動変速機として、エンジンなどの駆動源に連結されたトルクコンバータなどの流体伝動装置と、流体伝動装置に連結されると共に複数のプラネタリギヤセット(遊星歯車機構)及びクラッチやブレーキなどの複数の摩擦締結要素を備えた変速機構とを有し、油圧制御によって複数の摩擦締結要素を選択的に締結して減速比の異なる複数の変速段を達成するようにしたものが一般に知られている。
【0003】
近年、自動変速機の多段化や軽量化要求等に応じて流体伝動装置を廃止する傾向がある。この場合、発進時に1速の変速段で締結される少なくとも1つの摩擦締結要素をスリップ制御することによりエンジンストールを回避しながら円滑な発進を実現することが考えられる。
【0004】
発進時に1速の変速段で締結される摩擦締結要素をスリップ制御する場合、油圧室が回転するクラッチに比べて油圧室が回転しないブレーキの方が締結時の制御性が良いことから、発進時に1速の変速段で締結されるブレーキをスリップ制御することが考えられる。
【0005】
このように構成された自動変速機では、発進時に1速の変速段で締結されるブレーキは、スリップ制御の実施頻度が多くなることから、所要の耐久性を維持するためにスリップ制御による摩擦板の発熱を効果的に抑制する必要がある。
【0006】
摩擦板の発熱を抑制するために、摩擦板に供給する潤滑用の作動油の量を多くして冷却性能を高めることが考えられるが、変速機ケースの内周面と変速機ケース内に収納された所定の回転部材の外周面との間に複数の摩擦板が配置されたブレーキでは、変速機ケースの内周面付近に潤滑用の作動油が滞留して摩擦板間に引き摺り抵抗が生じて回転抵抗を増大させるおそれがある。
【0007】
これに対し、例えば特許文献1には、発進時にスリップ制御される1速の変速段で締結されるブレーキにおいて、変速機ケースに結合されたハブ部材の外周面と所定の回転部材に結合されたドラム部材の内周面との間に複数の摩擦板を配置するようにしたものが開示されている。
【0008】
図21は、従来の自動変速機のブレーキを示す断面図である。図21に示すように、このブレーキ200は、変速機ケース201に結合されたハブ部材202と、所定の回転部材203に結合されたドラム部材204と、ハブ部材202とドラム部材204との間に配置された複数の摩擦板205と、複数の摩擦板205を締結するピストン206とを有している。
【0009】
ブレーキ200では、潤滑用供給油路207は、矢印208で示すように、変速機ケース201から変速機ケース201に結合された連結部材209内を通じて径方向内側に延び、ハブ部材202の外周面に形成されたスプライン溝部210を通じて軸方向に延び、複数の摩擦板205に潤滑用の作動油を供給するようになっている。
【0010】
潤滑用の作動油は、ドラム部材204にスプライン係合された摩擦板205の遠心力を受けて、矢印211で示すように、径方向外側に移動して摩擦板205間に供給され、スリップ制御による摩擦板205の発熱を冷却するようになっている。そして、ドラム部材204の内周面に移動した潤滑用の作動油は、ドラム部材204の回転によって、矢印212で示すように軸方向外側に移動して滞留することを抑制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2016−90048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献1に記載されるように、変速機ケースに結合されるハブ部材と所定の回転部材に結合されるドラム部材との間に複数の摩擦板が配置されたブレーキを備えた自動変速機では、ブレーキの摩擦板に供給する潤滑用の作動油がドラム部材の回転によって滞留することが抑制され、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制することができる。
【0013】
しかしながら、図21に示すように、ドラム部材204が、摩擦板205がスプライン係合される外側円筒部204aと外側円筒部204aの軸方向一方側から径方向内側に延びる縦壁部204bとを備える場合に、ドラム部材204の縦壁部204bが軸方向に倒れてドラム部材204の外側円筒部204aが軸方向から傾斜するおそれがある。特に、ドラム部材204の縦壁部204bが長くなる場合などに、ドラム部材204の縦壁部204bの倒れ量が大きくなってドラム部材204の外側円筒部204aが軸方向から傾斜するおそれがある。
【0014】
このように、ドラム部材の縦壁部が軸方向に倒れて傾斜すると、ドラム部材の外側円筒部が軸方向から傾斜して、ブレーキの解放時に、外側円筒部にスプライン係合された摩擦板間に隙間が小さくなる部分が生じて摩擦板間の引き摺りを引き起こし得る。
【0015】
そこで、本発明は、ハブ部材とドラム部材との間に複数の摩擦板が配置されたブレーキを備えた自動変速機において、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつドラム部材の縦壁部が軸方向に倒れることを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0017】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、変速機ケースに結合されるハブ部材と、所定の回転部材に結合されるドラム部材と、前記ハブ部材と前記ドラム部材との間に配置される複数の摩擦板とを有するブレーキを備えた自動変速機であって、前記ハブ部材は、前記摩擦板がスプライン係合される内側円筒部を備え、前記ドラム部材は、前記摩擦板がスプライン係合される外側円筒部と前記外側円筒部の軸方向一方側から前記内側円筒部より径方向内側に延びる縦壁部とを備え、前記ドラム部材の縦壁部に軸方向他方側に延びる延設部が設けられると共に、前記ハブ部材に前記延設部の外周側に前記ドラム部材を支持する支持部が設けられ、前記ドラム部材は、前記延設部と前記支持部との間に配置された軸受部材を介して前記支持部に支持されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記ハブ部材は、前記内側円筒部を備えると共に前記変速機ケースにスプライン係合される第1ハブ部材と、前記第1ハブ部材に隣接して配置されると共に前記変速機ケースに嵌合される第2ハブ部材とを備え、前記支持部は、前記第2ハブ部材に設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の発明において、前記変速機ケースの内周面に、スナップリングが嵌められる周溝が設けられ、前記周溝は、軸方向他方側に径方向外側に向かうにつれて軸方向一方側に傾斜する周溝側傾斜面を備え、前記スナップリングは、軸方向他方側に前記周溝側傾斜面に当接するスナップリング側傾斜面を備え、前記第2ハブ部材は、前記周溝側傾斜面に前記スナップリング側傾斜面が当接することにより前記スナップリングによって軸方向他方側から軸方向に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本願の請求項1に記載の発明によれば、自動変速機のブレーキは、変速機ケースに結合されるハブ部材と、所定の回転部材に結合されるドラム部材と、ハブ部材とドラム部材との間に配置される複数の摩擦板とを有することにより、ブレーキの摩擦板に供給する潤滑用の作動油がドラム部材の回転によって滞留することが抑制され、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制することができる。
【0021】
また、ハブ部材は、摩擦板がスプライン係合される内側円筒部を備え、ドラム部材は、摩擦板がスプライン係合される外側円筒部と軸方向一方側から内側円筒部より径方向内側に延びる縦壁部とを備える。そして、ドラム部材の縦壁部に軸方向他方側に延びる延設部が設けられると共にハブ部材に延設部の外周側に支持部が設けられ、ドラム部材は、延設部と支持部との間に配置された軸受部材を介して支持部に支持される。
【0022】
これにより、ドラム部材は、変速機ケースに結合されたハブ部材に設けられた支持部に、縦壁部に設けられて軸方向に延びる延設部が軸受部材を介して支持されるので、ドラム部材の縦壁部が軸方向に倒れることを抑制することができる。
【0023】
したがって、ハブ部材とドラム部材との間に複数の摩擦板が配置されたブレーキを備えた自動変速機において、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつドラム部材の縦壁部が軸方向に倒れることを抑制することができる。
【0024】
また、請求項2に記載の発明によれば、ハブ部材は、変速機ケースにスプライン係合される第1ハブ部材と、変速機ケースに嵌合される第2ハブ部材とを備え、支持部は、第2ハブ部材に設けられる。これにより、第2ハブ部材を変速機ケースに嵌合して固定させることができ、変速機ケースに固定された第2ハブ部材に設けられた支持部に軸受部材を介してドラム部材を支持させてドラム部材の縦壁部が軸方向に倒れることを有効に抑制することができる。
【0025】
また、請求項3に記載の発明によれば、変速機ケースの内周面に設けられる周溝に周溝側傾斜面が備えられ、スナップリングにスナップリング側傾斜面が備えられ、第2ハブ部材は、スナップリングによって軸方向他方側から軸方向に固定される。これにより、第2ハブ部材を軸方向に固定させて第2ハブ部材に設けられた支持部を軸方向に固定させることができ、ドラム部材の縦壁部が軸方向に倒れることを有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る自動変速機の骨子図である。
図2】自動変速機の摩擦締結要素の締結表である。
図3】自動変速機のブレーキ及びその周辺の断面図である。
図4図3に示すブレーキ及びその周辺の要部拡大図である。
図5】自動変速機のブレーキ及びその周辺の別の断面図である。
図6】自動変速機のブレーキ及びその周辺の更に別の断面図である。
図7】自動変速機のブレーキ及びその周辺の更に別の断面図である。
図8】自動変速機のブレーキ及びその周辺の更に別の断面図である。
図9】ブレーキのハブ部材、油路形成部材及びピストンの組付状態を示す斜視図である。
図10】ブレーキのハブ部材及び油路形成部材の組付状態を示す斜視図である。
図11】ブレーキのハブ部材を示す斜視図である。
図12】第1ハブ部材を示す斜視図である。
図13】第2ハブ部材を示す斜視図である。
図14】ブレーキのハブ部材を示す別の斜視図である。
図15】ストッパ部材と付勢受け部材が取り付けられたピストンとを示す斜視図である。
図16】付勢ユニットを示す斜視図である。
図17図16のY17−Y17線に沿った付勢ユニットの断面図である。
図18】ストッパ部材と付勢ユニットとの配置を説明するための説明図である。
図19】解放状態及び接触直前状態にあるブレーキを示す断面図である。
図20】ゼロクリアランス状態及び締結状態にあるブレーキを示す断面図である。
図21】従来の自動変速機のブレーキを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る自動変速機の骨子図である。この自動変速機10は、エンジンなどの駆動源にトルクコンバータなどの流体伝動装置を介することなく連結されている。自動変速機10は、変速機ケース11内に、駆動源に連結されて駆動源側(図の左側)に配設された入力軸12と、反駆動源側(図の右側)に配設された出力軸13とを有している。自動変速機10は、入力軸12と出力軸13とが同一軸線上に配置されたフロントエンジン・リヤドライブ車用等の縦置き式のものである。
【0029】
入力軸12及び出力軸13の軸心上には、駆動源側から、第1、第2、第3、第4プラネタリギヤセット(以下、単に「第1、第2、第3、第4ギヤセット」という)PG1、PG2、PG3、PG4が配設されている。
【0030】
変速機ケース11内において、第1ギヤセットPG1の駆動源側に第1クラッチCL1が配設され、第1クラッチCL1の駆動源側に第2クラッチCL2が配設され、第2クラッチCL2の駆動源側に第3クラッチCL3が配設されている。また、第3クラッチCL3の駆動源側に第1ブレーキBR1が配設され、第3ギヤセットPG3の駆動源側且つ第2ギヤセットPG2の反駆動源側に第2ブレーキBR2が配設されている。
【0031】
第1、第2、第3、第4ギヤセットPG1、PG2、PG3、PG4は、いずれも、キャリヤに支持されたピニオンがサンギヤとリングギヤに直接噛合するシングルピニオン型である。第1、第2、第3、第4ギヤセットPG1、PG2、PG3、PG4はそれぞれ、回転要素として、サンギヤS1、S2、S3、S4と、リングギヤR1、R2、R3、R4と、キャリヤC1、C2、C3、C4とを有している。
【0032】
第1ギヤセットPG1は、サンギヤS1が軸方向に2分割されたダブルサンギヤ型である。サンギヤS1は、駆動源側に配置された第1サンギヤS1aと、反駆動源側に配置された第2サンギヤS1bとを有している。第1及び第2サンギヤS1a、S1bは、同一歯数を有し、キャリヤC1に支持された同一ピニオンに噛合する。これにより、第1及び第2サンギヤS1a、S1bは、常に同一回転する。
【0033】
自動変速機10では、第1ギヤセットPG1のサンギヤS1、具体的には第2サンギヤS1bと第4ギヤセットPG4のサンギヤS4とが常時連結され、第1ギヤセットPG1のリングギヤR1と第2ギヤセットPG2のサンギヤS2とが常時連結され、第2ギヤセットPG2のキャリヤC2と第4ギヤセットPG4のキャリヤC4とが常時連結され、第3ギヤセットPG3のキャリヤC3と第4ギヤセットPG4のリングギヤR4とが常時連結されている。
【0034】
入力軸12は、第1ギヤセットPG1のキャリヤC1に第1サンギヤS1a及び第2サンギヤS1bの間を通じて常時連結され、出力軸13は、第4ギヤセットPG4のキャリヤC4に常時連結されている。
【0035】
第1クラッチCL1は、入力軸12及び第1ギヤセットPG1のキャリヤC1と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3との間に配設されて、これらを断接するようになっており、第2クラッチCL2は、第1ギヤセットPG1のリングギヤR1及び第2ギヤセットPG2のサンギヤS2と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3との間に配設され、これらを断接するようになっており、第3クラッチCL3は、第2ギヤセットPG2のリングギヤR2と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
【0036】
第1ブレーキBR1は、変速機ケース11と第1ギヤセットPG1のサンギヤS1、具体的には第1サンギヤS1aとの間に配設されて、これらを断接するようになっており、第2ブレーキBR2は、変速機ケース11と第3ギヤセットPG3のリングギヤR3との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
【0037】
以上の構成により、自動変速機10は、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、第1ブレーキBR1、第2ブレーキBR2の締結状態の組み合わせにより、図2に示すように、Dレンジでの1〜8速と、Rレンジでの後退速とが形成されるようになっている。
【0038】
自動変速機10では、発進時に1速の変速段で締結される第2ブレーキBR2がスリップ制御され、第2ブレーキBR2が本発明に係る自動変速機の摩擦締結要素に相当する。以下、このブレーキBR2について説明する。
【0039】
図3は、自動変速機のブレーキ及びその周辺の断面図、図4は、図3に示すブレーキ及びその周辺の要部拡大図、図5は、自動変速機のブレーキ及びその周辺の別の断面図、図6図7及び図8はそれぞれ、自動変速機のブレーキ及びその周辺の更に別の断面図である。図3図5図6図7図8はそれぞれ、図9のY3−Y3線、Y5−Y5線、Y6−Y6線、Y7−Y7線、Y8−Y8線に沿った断面に対応する自動変速機のブレーキ及びその周辺の断面を示している。
【0040】
図3から図8に示すように、ブレーキBR2は、略円筒状に形成された変速機ケース11内に収容され、第3ギヤセットPG3のサンギヤS3に連結されて第1、第2、第3クラッチCL1、CL2、CL3の内外一対の回転部材の一方が一体化された動力伝達部材14の外周側に配置されている。
【0041】
動力伝達部材14は、第2ギヤセットPG2のキャリヤC2と第4ギヤセットPG4のキャリヤC4とを連結する動力伝達部材15の外周側に配置され、動力伝達部材15は、第1ギヤセットPG1のサンギヤS1、具体的には第2サンギヤS1bと第4ギヤセットPG4のサンギヤS4とを連結する動力伝達部材16の外周側に配置されている。
【0042】
ブレーキBR2は、変速機ケース11に結合されるハブ部材(内側固定部材)20と、ハブ部材20の反駆動源側に配置されて第3ギヤセットPG3のリングギヤR3に結合されるドラム部材(外側回転部材)40と、ハブ部材20とドラム部材40との間に軸方向に並べて配置される複数の摩擦板50と、複数の摩擦板50の反駆動源側に配置されて複数の摩擦板50を締結するピストン60とを有している。
【0043】
ブレーキBR2は、ピストン60を付勢する作動油が供給される油圧室70を有し、油圧室70は、ピストン60を締結方向に付勢する締結用作動油が供給される締結用油圧室71と、ピストン60を挟んで締結用油圧室71の反対側に配置されてピストン60を解放方向に付勢する解放用作動油が供給される解放用油圧室72とを備えている。
【0044】
ブレーキBR2は、図7に示すように、締結用油圧室71に締結用作動油を供給する締結用供給油路L2を形成する油路形成部材80を有し、油路形成部材80は、ピストン60の反駆動源側に配置されると共にハブ部材20の反駆動源側に配置されてハブ部材20に結合されている。
【0045】
ブレーキBR2はまた、図5に示すように、ハブ部材20と共に複数の摩擦板50に潤滑用作動油を供給する潤滑用供給油路L1を形成するプレート部材85を有し、プレート部材85は、ハブ部材20の駆動源側に配置されてハブ部材20に結合されている。
【0046】
ブレーキBR2はまた、図3に示すように、ピストン60を付勢する付勢ユニット90を有している。付勢ユニット90は、ピストン60を付勢する付勢部材91を備え、付勢部材91として、ピストン60に締結方向に付勢力を作用させる第1付勢部材及び第2付勢部材としての第1スプリング92及び第2スプリング93を備えている。
【0047】
図9は、ブレーキのハブ部材、油路形成部材及びピストンの組付状態を示す斜視図、図10は、ブレーキのハブ部材及び油路形成部材の組付状態を示す斜視図、図11は、ブレーキのハブ部材を示す斜視図、図12は、第1ハブ部材を示す斜視図、図13は、第2ハブ部材を示す斜視図、図14は、ブレーキのハブ部材を示す別の斜視図、図15は、ストッパ部材と付勢受け部材が取り付けられたピストンとを示す斜視図、図16は、付勢ユニットを示す斜視図、図17は、図16のY17−Y17線に沿った付勢ユニットの断面図である。
【0048】
図3から図15に示すように、ハブ部材20は、摩擦板50がスプライン係合される第1ハブ部材21と、摩擦板50に潤滑用作動油を供給する第2ハブ部材31とを備え、第2ハブ部材31は、第1ハブ部材21の駆動源側に隣接して配置されている。
【0049】
第1ハブ部材21は、図3に示すように、変速機ケース11の軸方向と直交する径方向に延びて略円盤状に形成された縦壁部22と、縦壁部22の径方向内側から反駆動源側に略円筒状に延びる内側円筒部23とを備えている。
【0050】
第1ハブ部材21は、縦壁部22の外周面にスプラインが形成されたスプライン部24を有し、スプライン部24が変速機ケース11の内周面にスプラインが形成されたスプライン部11aにスプライン係合されて変速機ケース11に結合されている。
【0051】
第1ハブ部材21の内側円筒部23は、外周面にスプラインが形成されたスプライン部25を周方向に複数、具体的には6つ有し、スプライン部25には摩擦板50を構成する固定側摩擦板51がスプライン係合されている。
【0052】
第1ハブ部材21の内側円筒部23は、スプライン部25が複数の摩擦板50の解放状態においても複数の摩擦板50にスプライン係合する所定の軸方向長さを有し、スプライン部25を除く部分がスプライン部25より軸方向に短く形成されている。
【0053】
第2ハブ部材31は、図6に示すように、変速機ケース11の軸方向と直交する径方向に延びて略円盤状に形成された縦壁部32と、縦壁部32から反駆動源側に略円柱状に延びて摩擦板50に潤滑用作動油を供給する潤滑用供給部としての潤滑用ボス部33とを備えている。
【0054】
第2ハブ部材31は、図3に示すように、縦壁部32の外周面が第1ハブ部材21のスプライン部24の駆動源側において変速機ケース11の内周面11bに嵌合されている。第2ハブ部材31は、回り止めピン18を用いて変速機ケース11に周方向に固定され、変速機ケース11に結合されている。
【0055】
第2ハブ部材31はまた、図4に示すように、スナップリング17によって駆動源側から軸方向に固定されている。変速機ケース11の内周面11bには、スナップリング17が嵌められる周溝3が全周に亘って設けられている。周溝3は、変速機ケース11の内周面11bから径方向外側に断面略矩形状に窪むように形成され、駆動源側に径方向外側に向かうにつれて反駆動源側に所定角度で傾斜する周溝側傾斜面3aが設けられている。
【0056】
スナップリング17は、未装着時には装着時により大径とされて断面略矩形状に略環状に形成され、駆動源側に周溝側傾斜面3aに当接するスナップリング側傾斜面17aが設けられている。スナップリング側傾斜面17aは、径方向外側に向かうにつれて反駆動源側に所定角度で傾斜するように形成されている。
【0057】
第2ハブ部材31は、周溝3にスナップリング17が拡径方向に付勢された状態で嵌められて周溝側傾斜面3aにスナップリング側傾斜面17aが当接することによりスナップリング17によって駆動源側から軸方向に固定されている。第2ハブ部材31は、スナップリング17によって駆動源側から押圧されると共に第2ハブ部材31の縦壁部32が第1ハブ部材21の縦壁部22を駆動源側から押圧して第1ハブ部材21のスプライン部24の反駆動源側が変速機ケース11の内周面に形成された段部11cに当接することにより軸方向に固定されている。
【0058】
第2ハブ部材31には、図13に示すように、複数の潤滑用ボス部33、具体的には5つの潤滑用ボス部33が設けられている。5つの潤滑用ボス部33は、入力軸12及び出力軸13の軸心を中心とする略同一円周上に周方向に異なる位置に配置されている。潤滑用ボス部33はそれぞれ、摩擦板50に潤滑用の作動油を供給する潤滑用供給油路L1を備えている。
【0059】
変速機ケース11の下方には、図5に示すように、ブレーキBR2の油圧室70や摩擦板50などに作動油を供給するバルブボディ5が配設されている。バルブボディ5は、変速機ケース11の下方に取り付けられたオイルパン(不図示)内に収容され、変速機ケース11に固定されている。第2ハブ部材31は、バルブボディ5に接続するためのバルブボディ接続部34を有し、変速機ケース11に形成されたケース開口部11dを通じて潤滑用供給油路L1がバルブボディ5に接続されるように形成されている。
【0060】
第2ハブ部材31はまた、図7に示すように、縦壁部32から反駆動源側に略円柱状に延びて締結用油圧室71に作動油を供給する締結用供給油路L2を備えた締結用ボス部35を備えると共に、図8に示すように、縦壁部32から反駆動源側に略円柱状に延びて解放用油圧室72に作動油を供給する解放用供給油路L3を備えた解放用ボス部36とを備えている。
【0061】
図13に示すように、締結用ボス部35及び解放用ボス部36は、潤滑用ボス部33と共に入力軸12及び出力軸13の軸心を中心とする略同一円周上に異なる位置に配置され、変速機ケース11の下方側に配置される2つの潤滑用ボス部33の間に配置されている。
【0062】
自動変速機10では、締結用供給油路L2、解放用供給油路L3及び潤滑用供給油路L1が変速機ケース11の下方側に周方向に並んで配置され、第2ハブ部材31は、締結用供給油路L2、解放用供給油路L3及び潤滑用供給油路L1がそれぞれバルブボディ5に接続されるように形成されている。
【0063】
潤滑用供給油路L1は、ハブ部材20内、具体的には第2ハブ部材31内に形成されている。図5及び図6に示すように、第2ハブ部材31には、駆動源側に反駆動源側に窪んで潤滑用供給油路L1を形成する潤滑用凹部32aが設けられ、潤滑用凹部32aを覆うように駆動源側に略環状に形成されたプレート部材85が配置されている。
【0064】
第2ハブ部材31の潤滑用凹部32aは、断面略矩形状に窪んで径方向に延びる径方向凹部32bと、径方向凹部32bに接続されて断面略矩形状に窪んで周方向に円弧状に延びる周方向凹部32cと、周方向凹部32cに周方向の異なる位置において接続されて断面円形状に窪んで軸方向に延びる複数の軸方向凹部32dとを備えている。軸方向凹部32dは、潤滑用ボス部33に対応して潤滑用ボス部33内に反駆動源側まで軸方向に延びるように設けられている。
【0065】
自動変速機10では、ハブ部材20の第2ハブ部材31に油路形成部材80とプレート部材85とを結合する締結部材としての締結ボルト4が備えられ、締結ボルト4は、第2ハブ部材31に油路形成部材80とプレート部材85とを結合すると共に第2ハブ部材31とプレート部材85とによって潤滑用供給油路L1を形成するように設けられている。
【0066】
プレート部材85には、締結ボルト4を挿通するボルト挿通穴85aが設けられている。プレート部材85は、ボルト挿通穴85a及び第2ハブ部材31の潤滑用凹部32aを通じて締結ボルト4を油路形成部材80に設けられたネジ孔80aに螺合させることにより第2ハブ部材31を挟んで油路形成部材80に結合されて第2ハブ部材31に結合されている。
【0067】
第2ハブ部材31の潤滑用凹部32aがプレート部材85によって覆われて形成される潤滑用供給油路L1は、図5及び図6に示すように、径方向に延びる径方向油路131と、周方向に円弧状に延びて径方向油路131と接続される周方向油路132と、潤滑用ボス部33に設けられて軸方向に延びて周方向油路132と接続される軸方向油路133とを備えている。
【0068】
軸方向油路133には、潤滑用ボス部33に設けられて径方向に延びて軸方向油路133と接続されると共に潤滑用ボス部33の外周面に開口して摩擦板50に潤滑用作動油を供給する供給口134が設けられている。締結ボルト4は、潤滑用供給油路L1の軸方向油路133内を通じて軸方向に延びている。
【0069】
また、図8に示すように、ハブ部材20の第2ハブ部材31に油路形成部材80とプレート部材85とを結合する締結部材としての締結ボルト6が備えられている。プレート部材85には、締結ボルト6を挿通するボルト挿通穴85bが設けられ、ボルト挿通穴85bは、解放用ボス部36に対応して設けられている。
【0070】
解放用供給油路L3は、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられて径方向に延びて解放用油圧室72に開口する径方向油路121と、解放用ボス部36に設けられて軸方向に延びて径方向油路121と接続される軸方向油路122とを備え、締結ボルト6は、解放用供給油路L3の軸方向油路122内を通じて軸方向に延びている。
【0071】
プレート部材85はまた、ボルト挿通穴85b及び第2ハブ部材31に設けられた解放用供給油路L3の軸方向油路122を通じて締結ボルト6を油路形成部材80に設けられたネジ孔80bに螺合させることにより第2ハブ部材31を挟んで油路形成部材80に結合されて第2ハブ部材31に結合されている。第2ハブ部材31の駆動源側には、プレート部材85が接触する部分にシール材が塗布されている。
【0072】
第2ハブ部材31はまた、図3に示すように、第1ハブ部材21の内側円筒部23より径方向内側において縦壁部32から反駆動源側にそれぞれ略円筒状に延びる第1円筒部38及び第2円筒部39を備えている。第2円筒部39は、第1円筒部38より径方向内側において第1円筒部38より軸方向に長く形成されている。第1円筒部38及び第2円筒部39は、縦壁部32と共に解放用油圧室72のシリンダ72aを構成する。
【0073】
第2ハブ部材31の縦壁部32には、ピストン60が接触直前位置から締結方向に移動される際にピストン60に第1スプリング92による付勢力が作用することを規制すると共に第2スプリング93による付勢力が作用することを許容するストッパ部材37が取り付けられている。
【0074】
ストッパ部材37は、図15に示すように、略環状に形成され、縦壁部32に取り付けられる取付部分37aと、縦壁部32側とは反対側に設けられて第1スプリング92の中心軸が配置される円周に沿って周方向に延びて第1スプリング92による付勢力のみを受け止める複数の規制部分37bとを備えている。
【0075】
規制部分37bはそれぞれ、駆動源側が縦壁部32に接触して軸方向に延びると共に第1スプリング92の中心軸が配置される円周に沿って円弧状に周方向に延び、反駆動源側の端面が付勢ユニット90の第2保持プレート95に当接するように設けられている。ストッパ部材37の規制部分37bの周方向の端部は、径方向内側に延びて取付部分37aに連結されている。
【0076】
取付部分37aは、複数の規制部分37bを周方向に連結するように断面略矩形状に形成され、第2スプリング93より径方向内側において周方向に円弧状に形成されている。第2ハブ部材31の縦壁部32には、図3に示すように、ストッパ部材37の取付部分37aの形状に対応してストッパ部材側からストッパ部材側とは反対側に凹状に窪む取付用溝部32eが設けられ、ストッパ部材37は、取付用溝部32eに嵌められて縦壁部32に取り付けられている。
【0077】
図18は、ストッパ部材と付勢ユニットとの配置を説明するための説明図である。図18に示すように、ストッパ部材37の規制部分37bはそれぞれ、第1スプリング92が配置される部分では第1スプリング92の中心軸が配置される円周に沿って円弧状に周方向に延びて付勢ユニット90の第2保持プレート95に当接するように設けられ、第2スプリング93が配置される部分では付勢ユニット90の第2保持プレート95に当接しないように設けられている。
【0078】
ドラム部材40は、図3に示すように、第1ハブ部材21の内側円筒部23の外周側に対向配置されて略円筒状に軸方向に延びる外側円筒部41と、外側円筒部41の反駆動源側から内側円筒部23より変速機ケース11の軸方向と直交する径方向内側に延びて略円盤状に形成された縦壁部42とを備えている。
【0079】
ドラム部材40の縦壁部42は、反駆動源側がリングギヤR3に結合されている。ドラム部材40の外側円筒部41は、内周面にスプラインが形成されたスプライン部41aを有し、スプライン部41aには、摩擦板50を構成する回転側摩擦板52がスプライン係合されている。固定側摩擦板51と回転側摩擦板52とは、軸方向に交互に配置されている。
【0080】
ドラム部材40の縦壁部42にはまた、第1ハブ部材21の内側円筒部23より径方向内側において駆動源側に軸方向に円筒状に延びる延設部43が設けられている。ハブ部材20、具体的には第2ハブ部材31には、延設部43の外周側にドラム部材40を支持する支持部80cが設けられている。
【0081】
ハブ部材20の第2ハブ部材31には反駆動源側に油路形成部材80が結合され、油路形成部材80の反駆動源側に駆動源側に円筒状に窪んでドラム部材40の延設部43を収容する延設部収容穴80dが形成されている。延設部収容穴80dの外周面80cは、延設部43の外周側に配置されてドラム部材40を支持する支持部80cとして機能する。ドラム部材40は、延設部43と支持部80cとの間に配置された軸受部材45を介して支持部80cに支持されている。軸受部材45として、ラジアルころ軸受やラジアル玉軸受などのラジアル軸受が用いられる。
【0082】
ピストン60は、ハブ部材20とドラム部材40との間に、具体的には第1ハブ部材21の内側円筒部23とドラム部材40の外側円筒部41との間に配置されて第2ハブ部材31の第2円筒部39の外周側に摺動自在に嵌合されている。ピストン60は、スナップリング19により反駆動源側への抜け止めが図られている。
【0083】
ピストン60は、環状に形成され、外周側に設けられて摩擦板50を押圧する押圧部61と、内周側に設けられて締結用油圧室71を形成する締結用油圧室形成部62と、押圧部61と締結用油圧室形成部62とを連結して径方向に延びる連結部63とを備えている。
【0084】
押圧部61は、摩擦板50の反駆動源側に配置され、締結用油圧室形成部62は、第1ハブ部材21の内側円筒部23の径方向内側に配置され、連結部63は、押圧部61から締結用油圧室形成部62に連結するように設けられている。締結用油圧室形成部62は、連結部63から駆動源側に突出するように設けられている。
【0085】
油路形成部材80は、図5から図8に示すように、ピストン60の反駆動源側に配置されている。油路形成部材80は、第2ハブ部材31の第2円筒部39の外周側に嵌合されて第2ハブ部材31のボス部33、36、具体的には潤滑用ボス部33及び解放用ボス部36の駆動源側に配置されて結合されている。
【0086】
油路形成部材80は、外周側に設けられて第2ハブ部材31のボス部33、36の反駆動源側に配置されて結合される結合部81と、内周側に設けられてピストン60の反駆動源側に配置されて締結用油圧室71を形成する締結用油圧室形成部82と、結合部81と締結用油圧室形成部82とを連結して径方向に延びる連結部83とを備えている。
【0087】
締結用油圧室形成部82は、所定厚さを有して環状に形成され、図3に示すように、第2ハブ部材31の第2円筒部39とピストン60の締結用油圧室形成部62の外周側との間に嵌合されている。締結用油圧室71は、ピストン60の締結用油圧室形成部62と油路形成部材80の締結用油圧室形成部82と第2ハブ部材31の第2円筒部39とによって構成されている。
【0088】
結合部81は、締結用油圧室形成部82より厚さが薄く形成され、図9及び図10に示すように、円弧状に形成されている。油路形成部材80には、周方向に複数の結合部81、本実施形態では5つの結合部81が設けられ、周方向に離間して配置されている。
【0089】
結合部81には、前述したようにネジ孔80a、80bが設けられている。油路形成部材80は、第2ハブ部材31を挟んで油路形成部材80とプレート部材85とを締結する締結ボルト4、6を結合部81に設けられたネジ孔80a、80bに螺合させることによりハブ部材20のボス部33、36の反駆動源側に結合されている。
【0090】
油路形成部材80の連結部83は、結合部81と略等しい厚さを有し、図9及び図10に示すように、結合部81の周方向中央側から径方向内側に延びて締結用油圧室形成部82に連結するように設けられている。
【0091】
図10に示すように、油路形成部材80には、周方向両側が2つの締結ボルト4、6を用いて第2ハブ部材31のボス部33、36に結合される結合部81と、周方向中央側が1つの締結ボルト4を用いて第2ハブ部材31のボス部33に結合される結合部81とが設けられている。
【0092】
ピストン60の連結部63には、油路形成部材80の結合部81及び連結部83に対応して結合部81及び連結部83と略同一形状に切り欠かれた油路形成部材用切欠部63aが形成されている。油路形成部材80は、ピストン60の径方向範囲内に配置され、油路形成部材80の結合部81及び連結部83がピストン60の連結部63の油路形成部材用切欠部63aに嵌合されてピストン60の連結部63と軸方向にオーバーラップする位置に配置されている。
【0093】
ピストン60の連結部63にはまた、第1ハブ部材21の内側円筒部23のスプライン部25に対応してスプライン部25と略同一形状に切り欠かれたスプライン部用切欠部63bが形成されている。第1ハブ部材21の内側円筒部23のスプライン部25の反駆動源側は、ピストン60の連結部63のスプライン部用切欠部63bに嵌合され、第1ハブ部材21の内側円筒部23とピストン60とは、軸方向にオーバーラップして配置されている。
【0094】
ピストン60の締結用油圧室形成部62は、図3に示すように、油路形成部材80の締結用油圧室形成部82の外周側に嵌合して軸方向に延びる外側円筒部62a、外側円筒部62aの駆動源側から径方向内側に延びる締結用油圧受け部62bと、締結用油圧受け部62bの径方向内側から反駆動源側に延びて第2ハブ部材31の第2円筒部39に嵌合して軸方向に延びる内側円筒部62cとを備えている。
【0095】
自動変速機10では、締結用油圧室71及び解放用油圧室72はそれぞれ、第1ハブ部材21の内側円筒部23及び第2ハブ部材31のボス部33、35、36の径方向内側に配置されている。
【0096】
締結用油圧室71は、前述したように、ピストン60の締結用油圧室形成部62と油路形成部材80の締結用油圧室形成部82と第2ハブ部材31の第2円筒部39とによって形成されている。ピストン60の内側円筒部62cは、スナップリング19により反駆動源側への抜け止めが図られている。
【0097】
解放用油圧室72は、図3に示すように、ピストン60の締結用油圧受け部62bの径方向内側が駆動源側に断面略コ字状に膨出した膨出部62dが、シール部材73、74を介して第2ハブ部材31のシリンダ72a内に摺動自在に嵌合され、ピストン60の膨出部62dと第2ハブ部材31のシリンダ72aとによって形成されている。
【0098】
自動変速機10では、解放用油圧室72は、締結用油圧室71より外径が小さく形成され、解放用油圧室72の外周側に、ピストン60に結合されると共に付勢ユニット90の付勢部材91による付勢力を受ける付勢受け部材100が配置されている。
【0099】
付勢受け部材100は、環状に形成され、図3に示すように、第1ハブ部材21の内側円筒部23と第2ハブ部材31の第1円筒部38との間で径方向に延びる径方向延設部101と、径方向延設部101の径方向内側から反駆動源側に軸方向に延びる軸方向延設部102とを備えている。
【0100】
付勢受け部材100は、軸方向延設部102の反駆動源側がピストン60の締結用油圧受け部62bにおける膨出部62dより径方向外側に結合されてピストン60に結合されている。付勢受け部材100、具体的には径方向延設部101と油路形成部材80との間に付勢ユニット90が装着されている。
【0101】
図16及び図17に示すように、付勢ユニット90は、軸方向に延びる第1スプリング92及び第2スプリング93と、第1スプリング92及び第2スプリング93の反駆動源側の端部をそれぞれ保持する第1保持プレート94と、第1保持プレート94と軸方向に離間して配置されて第1スプリング92の駆動源側の端部を保持する第2保持プレート95とを備えている。
【0102】
第1保持プレート94は、環状に形成され、駆動源側に円筒状に突出して第1スプリング92及び第2スプリング93がそれぞれ装着される第1スプリングガイド部94a及び第2スプリングガイド部94bを備えている。第1スプリング92と第2スプリング93とは、径方向にオーバーラップする位置且つ周方向に異なる位置に分散して配置されている。
【0103】
第2保持プレート95は、第1保持プレート94と軸方向に略対称に形成されている。第2保持プレート95は、反駆動源側に円筒状に突出して第1スプリング92が装着される第1スプリングガイド部95aを備えている。第2保持プレート95はまた、第2スプリング93の駆動源側の端部が反第1保持プレート側に突出可能であるように第2スプリング93を挿通する挿通穴95bを備えている。
【0104】
第1スプリング92は、第2スプリング93より付勢力が大きく設定されている。第1スプリング92及び第2スプリング93は、コイルスプリングであり、第1スプリング92は、第2スプリング93よりコイル径が大きく大型のコイルスプリングである。第2スプリング93は、第1スプリング92より自由長さが長く形成され、第2スプリング93の他端部が第2保持プレート95の反第1保持プレート側に突出可能に第1保持プレート94に保持されている。
【0105】
自動変速機10では、第1スプリング92と第2スプリング93とはそれぞれ、中心軸が同一円周上において周方向に異なる位置に配置されるように周方向に複数設けられ、8つの第1スプリング92と6つの第2スプリング93とが周方向に異なる位置に分散して配置されている。
【0106】
付勢ユニット90は、第1保持プレート94が油路形成部材80の結合部81の周方向両側及び連結部83の駆動源側に支持されると共に第2保持プレート95が付勢受け部材100の径方向延設部101の反駆動源側に支持され、変速機ケース11に取り付けられている。
【0107】
付勢受け部材100の径方向延設部101は、第2保持プレート95を支持すると共に第2保持プレート95の挿通穴95bに挿通された第2スプリング93の他端部を支持するように形成され、第2保持プレート95の外径と略等しい径方向寸法を有するように形成されている。
【0108】
付勢受け部材100の径方向延設部101にはまた、ストッパ部材37の規制部分37bに対応して規制部分37bと略同一形状に切り欠かれたストッパ部材用切欠部101aが形成されている。第2ハブ部材31の縦壁部32に取り付けられたストッパ部材37の規制部分37bは、径方向延設部101のストッパ部材用切欠部101aに挿通されてピストン60が接触直前位置から締結方向に移動される際に付勢ユニット90の第2保持プレート95を受け止めて第1スプリング92による付勢力を規制する。
【0109】
第1ハブ部材21の内側円筒部23の内周面は、第1保持プレート94及び第2保持プレート95より径方向に大きく形成され、内側円筒部23の内周側に付勢ユニット90が配置されている。付勢ユニット90は、第2ハブ部材31のボス部33、35、36に対応して第1保持プレート94、第2保持プレート95にそれぞれボス部用切欠部94c、95cが形成されている。付勢受け部材100の径方向延設部101についても、第2ハブ部材31のボス部33、35、36に対応してボス部用切欠部101bが形成されている。
【0110】
自動変速機10では、付勢ユニット90の第1スプリング92及び第2スプリング93は、第2ハブ部材31の潤滑用ボス部33、締結用ボス部35及び解放用ボス部36と径方向にオーバーラップする位置且つ周方向に異なる位置に配置されている。
【0111】
第2ハブ部材31の縦壁部32に取り付けられたストッパ部材37は、規制部分37bの反駆動源側の端面によって付勢部材91による付勢力を受けて第2保持プレート95が駆動源側に移動されるときに第2保持プレート95を受け止めるようになっている。
【0112】
ストッパ部材37は、規制部分37bの反駆動源側の端面に付勢受け部材100に支持された第2保持プレート95が当接したときに、ピストン60は、複数の摩擦板50に接触する直前である接触直前位置となるように設定されている。ピストン60の接触直前位置は、複数の摩擦板50が解放状態となる解放位置とゼロクリアランス状態となるゼロクリアランス位置との間に適宜設定される。
【0113】
ストッパ部材37に第2保持プレート95が当接すると、付勢受け部材100は、第2スプリング93のみによって締結方向に付勢力を受けるようになっている。第2スプリング93が自由長さとなったときに、ピストン60はゼロクリアランス位置となるように設定されている。
【0114】
このようにして、付勢ユニット90は、第1スプリング92が付勢受け部材100を介してピストン60に解放位置から接触直前位置まで締結方向に付勢力を作用させ、第2スプリング93が付勢受け部材100を介して解放位置からゼロクリアランス位置まで締結方向に付勢力を作用させるようになっている。
【0115】
ストッパ部材37は、ピストン60が接触直前位置から締結方向に移動される際にピストン60に第1スプリング92による付勢力が作用することを規制すると共に第2スプリング93による付勢力が作用することを許容するようになっている。
【0116】
そして、ピストン60がゼロクリアランス位置にあるときに締結用油圧室71に締結用油圧を供給すると、ピストン60が複数の摩擦板50を押し付けて、複数の摩擦板50が第1ハブ部材21の縦壁部22に反駆動源側に突出して設けられた保持部26とピストン60との間に挟み込まれて相対回転不能になる締結状態となる締結位置まで移動される。
【0117】
一方、ピストン60が締結位置にあるときに、締結用油圧室71から締結用油圧を排出して解放用油圧室72に解放用油圧を供給すると、ピストン60が解放方向に付勢されて移動され、ピストン60がゼロクリアランス位置に移動される。
【0118】
ピストン60はさらに、第2スプリング93に抗して解放方向に付勢されて移動され、接触直前位置に移動される。次いで、ピストン60は、第1スプリング92及び第2スプリング93に抗して解放方向に付勢されて移動され、解放位置に移動される。
【0119】
次に、ブレーキBR2に作動油を供給する供給油路について説明する。
ブレーキBR2の締結用油圧室71に締結用作動油を供給する締結用供給油路L2は、第2ハブ部材31及び油路形成部材80内に形成されている。ブレーキBR2の解放用油圧室72に解放用作動油を供給する解放用供給油路L3と摩擦板50に潤滑用作動油を供給する潤滑用供給油路L1とは、第2ハブ部材31内に形成されている。
【0120】
締結用供給油路L2は、図7に示すように、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられて径方向に延びる径方向油路111と、締結用ボス部35に設けられて軸方向に延びて径方向油路111と接続される軸方向油路112と、油路形成部材80の結合部81に設けられて軸方向に延びて軸方向油路112と接続される軸方向油路113と、油路形成部材80の結合部81、連結部83及び締結用油圧室形成部82に設けられて径方向に延びて軸方向油路113と接続される径方向油路114と、油路形成部材80の締結用油圧室形成部82に設けられて軸方向に延びて径方向油路114と接続されると共に締結用油圧室71に開口する軸方向油路115とによって構成されている。
【0121】
第2ハブ部材31内の径方向油路111は、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられると共にバルブボディ接続部34の下面に開口し、バルブボディ5に接続されている。バルブボディ5は、締結用供給油路L2を通じて締結用油圧室71に締結用作動油を供給して所定の締結用油圧を供給できるようになっている。
【0122】
油路形成部材80の径方向油路114は、油路形成部材80の結合部81の外周面から径方向内側に延びるように形成され、結合部81の外周面に径方向油路114の開口部を閉塞する閉塞部材86が取り付けられている。
【0123】
前述したように、解放用供給油路L3は、図8に示すように、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられて径方向に延びて解放用油圧室72に開口する径方向油路121と、解放用ボス部36に設けられて軸方向に延びて径方向油路121と接続される軸方向油路122とによって構成されている。
【0124】
第2ハブ部材31内の径方向油路121は、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられると共にバルブボディ接続部34の下面に開口し、バルブボディ5に接続されている。バルブボディ5は、解放用供給油路L3を通じて解放用油圧室72に解放用作動油を供給して所定の解放用油圧を供給できるようになっている。
【0125】
第2ハブ部材31内の軸方向油路122は、解放用ボス部36の反駆動源側の端面から駆動源側に軸方向に延びるように形成され、軸方向油路122の両側は、締結ボルト6を油路形成部材80のネジ孔80bに螺合させることにより閉塞されている。
【0126】
前述したように、潤滑用供給油路L1は、図5及び図6に示すように、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられて径方向に延びる径方向油路131と、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられて周方向に円弧状に延びて径方向油路131と接続される周方向油路132と、潤滑用ボス部33に設けられて軸方向に延びて周方向油路132と接続される軸方向油路133とによって構成され、軸方向油路133には、潤滑用ボス部33に設けられて径方向に延びて軸方向油路133と接続されると共に締結用ボス部35の外周面に開口する供給口134が設けられている。
【0127】
自動変速機10では、図13に示すように、締結用供給油路L2、解放用供給油路L3及び潤滑用供給油路L1をそれぞれ構成する径方向油路111、121、131が変速機ケース11の下方側に周方向に並んで配置されている。潤滑用供給油路L3を構成する周方向油路132は、径方向油路131に接続されると共に反径方向油路121側に円弧状に周方向に沿って延び、径方向油路111の反径方向油路121側まで延びている。
【0128】
5つの潤滑用ボス部33にはそれぞれ、周方向油路132に接続されて軸方向に延びる軸方向油路133と、軸方向油路133から径方向外側に潤滑用ボス部33の外周面まで延びて摩擦板50に潤滑用作動油を供給する供給口134とが設けられ、供給口134は、軸方向に並んで複数設けられている。
【0129】
第2ハブ部材31の径方向油路131は、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられると共にバルブボディ接続部34の下面に開口し、バルブボディ5に接続されている。バルブボディ5は、潤滑用供給油路L1を通じて複数の摩擦板50に潤滑用作動油を供給できるようになっている。
【0130】
ブレーキBR2では、第2ハブ部材31の潤滑用ボス部33の外周面から摩擦板50に潤滑用作動油を供給し、摩擦板50の発熱を冷却するようになっている。摩擦板50に供給した潤滑用作動油は、ドラム部材40の外側円筒部41の内周面に移動し、ドラム部材40の外側円筒部41の回転によって軸方向に移動して滞留することが抑制されている。
【0131】
第2ハブ部材31内の5つの軸方向油路133は、潤滑用ボス部33の反駆動源側の端面から駆動源側に軸方向に延びるように形成され、軸方向油路133の両側は、締結ボルト4を油路形成部材80のネジ孔81aに螺合させることにより閉塞されている。
【0132】
第1ハブ部材21の内側円筒部23には、図11に示すように、第2ハブ部材31の潤滑用ボス部33に対応して周方向に切り欠かれた潤滑用切欠部27が形成されている。第2ハブ部材31の潤滑用ボス部33は、第1ハブ部材21の内側円筒部23の潤滑用切欠部27に対応して配置され、潤滑用切欠部27を通じて供給口134から摩擦板50に潤滑用の作動油を供給できるようになっている。
【0133】
次に、ブレーキBR2の作動について説明する。
図19は、解放状態及び接触直前状態にあるブレーキを示す断面図、図20は、ゼロクリアランス状態及び締結状態にあるブレーキを示す断面図である。図19(a)、図19(b)、図20(a)、図20(b)はそれぞれ、解放状態、接触直前状態、ゼロクリアランス状態、締結状態にあるブレーキを示している。図19及び図20では、図3に示すブレーキBR2の要部を拡大して示している。
【0134】
図19(a)では、締結用油圧室71から締結用油圧が排出されると共に解放用油圧室72に解放用油圧が供給されて付勢受け部材100を介して第1スプリング92及び第2スプリング93を圧縮してピストン60が反駆動源側である解放方向に移動され、ピストン60の位置が複数の摩擦板50が解放状態となる解放位置にあるブレーキBR2の解放状態が示されている。
【0135】
ブレーキBR2の締結時には、図19(a)に示す解放状態において解放用油圧室72から解放用油圧が排出され、図19(b)に示すように、ピストン60が付勢受け部材100を介して第1スプリング92及び第2スプリング93の付勢力を受けて第2保持プレート95がストッパ部材37に当接するまで駆動源側である締結方向に移動され、ピストン60の位置が複数の摩擦板50に接触する直前である接触直前位置になり、ブレーキBR2が接触直前状態となる。
【0136】
図19(b)に示す接触直前状態において第2保持プレート95がストッパ部材37に当接すると、図20(a)に示すように、ピストン60が付勢受け部材100を介して第2スプリング93の付勢力のみを受けて第2スプリング93の自由長さまで締結方向に移動され、ピストン60の位置が複数の摩擦板50を押圧することなく摩擦板50に接した状態若しくはほぼ接した状態であるゼロクリアランス状態となるゼロクリアランス位置になり、ブレーキBR2がゼロクリアランス状態となる。
【0137】
そして、図20(a)に示すゼロクリアランス状態において締結用油圧室71に締結用油圧が供給されると、図20(b)に示すように、ピストン60が締結用油圧室71に供給された締結用油圧によって締結方向に付勢されて移動され、ピストン60が複数の摩擦板50を押し付けてピストン60の位置が複数の摩擦板50が相対回転不能になる締結位置になり、ブレーキBR2が締結状態となる。
【0138】
一方、ブレーキBR2の解放時には、図20(b)に示す締結状態において締結用油圧室71から締結用油圧が排出されると共に解放用油圧室72に解放用油圧が供給され、ピストン60が解放用油圧室72に供給された解放用油圧によって反駆動源側である解放方向に付勢されて移動され、図20(a)に示すゼロクリアランス状態及び図19(b)に示す接触直前状態を経て、図19(a)に示す解放状態となる。
【0139】
ブレーキBR2は、前述したように、車両の発進時にスリップ制御される。ブレーキBR2の締結時には、締結用油圧室71に締結用油圧よりも低い油圧が供給されて複数の摩擦板50がスリップ状態とされた後に締結用油圧室71に締結用油圧が供給されて複数の摩擦板50が締結される。一方、ブレーキBR2の解放時には、解放用油圧室72に解放用油圧よりも低い油圧が供給されて複数の摩擦板50がスリップ状態とされた後に解放用油圧室72に解放用油圧が供給されて複数の摩擦板50が締結解除される。
【0140】
ブレーキBR2の締結時及び解放時には、潤滑用供給油路L1を通じて複数の摩擦板50に潤滑用作動油が供給され、ブレーキBR2がスリップ制御されるときに潤滑用供給油路L1を通じて複数の摩擦板50に潤滑用作動油が供給される。
【0141】
このように、本実施形態に係る自動変速機10では、ブレーキBR2は、変速機ケース11に結合されるハブ部材20と、所定の回転部材R3に結合されるドラム部材40と、ハブ部材20とドラム部材40との間に配置される複数の摩擦板50とを有することにより、ブレーキBR2の摩擦板50に供給する潤滑用の作動油がドラム部材40の回転によって滞留することが抑制され、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制することができる。
【0142】
また、ハブ部材20は、摩擦板50がスプライン係合される内側円筒部23を備え、ドラム部材40は、摩擦板50がスプライン係合される外側円筒部41と軸方向一方側から内側円筒部23より径方向内側に延びる縦壁部42とを備える。そして、ドラム部材40の縦壁部42に軸方向他方側に延びる延設部43が設けられると共にハブ部材20に延設部43の外周側に支持部80cが設けられ、ドラム部材40は、延設部43と支持部80cとの間に配置された軸受部材45を介して支持部80cに支持される。
【0143】
これにより、ドラム部材40は、変速機ケース11に結合されたハブ部材20に設けられた支持部80cに、縦壁部42に設けられて軸方向に延びる延設部43が軸受部材45を介して支持されるので、ドラム部材40の縦壁部42が軸方向に倒れることを抑制することができる。
【0144】
したがって、ハブ部材20とドラム部材40との間に複数の摩擦板50が配置されたブレーキBR2を備えた自動変速機10において、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつドラム部材40の縦壁部42が軸方向に倒れることを抑制することができる。
【0145】
また、ハブ部材20は、変速機ケース11にスプライン係合される第1ハブ部材21と、変速機ケース11に嵌合される第2ハブ部材31とを備え、支持部80cは、第2ハブ部材31に設けられる。これにより、第2ハブ部材31を変速機ケース11に嵌合して固定させることができ、変速機ケース11に固定された第2ハブ部材31に設けられた支持部80cに軸受部材45を介してドラム部材40を支持させてドラム部材40の縦壁部42が軸方向に倒れることを有効に抑制することができる。
【0146】
また、変速機ケース11の内周面11bに設けられる周溝3に周溝側傾斜面3aが備えられ、スナップリング17にスナップリング側傾斜面17aが備えられ、第2ハブ部材31は、スナップリング17によって軸方向他方側から軸方向に固定される。これにより、第2ハブ部材31を軸方向に固定させて第2ハブ部材31に設けられた支持部80cを軸方向に固定させることができ、ドラム部材40の縦壁部42が軸方向に倒れることを有効に抑制することができる。
【0147】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0148】
以上のように、本発明によれば、ハブ部材とドラム部材との間に複数の摩擦板が配置されたブレーキを備えた自動変速機において、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつドラム部材の縦壁部が軸方向に倒れることを抑制することが可能となるから、この種の自動変速機ないしこれを搭載する車両の製造技術分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0149】
3 周溝
10 自動変速機
11 変速機ケース
17、19 スナップリング
20 ハブ部材
21 第1ハブ部材
23 内側円筒部
31 第2ハブ部材
40 ドラム部材
41 外側円筒部
42 ドラム部材の縦壁部
43 ドラム部材の延設部
45 軸受部材
50 摩擦板
60 ピストン
70 油圧室
71 締結用油圧室
72 解放用油圧室
80 油路形成部材
80c 支持部
BR2 第2ブレーキ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21