特開2020-163250(P2020-163250A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-163250(P2020-163250A)
(43)【公開日】2020年10月8日
(54)【発明の名称】ガス分離膜システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20200911BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20200911BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20200911BHJP
【FI】
   B01D53/22
   B01D69/08
   B01D71/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-63778(P2019-63778)
(22)【出願日】2019年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】中村 智英
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA02
4D006HA18
4D006HA19
4D006HA43
4D006HA61
4D006JA57A
4D006JA58A
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA55
4D006KA56
4D006KA63
4D006MA01
4D006MA03
4D006MA25
4D006MA31
4D006MA33
4D006MB04
4D006MC03
4D006MC11
4D006MC49
4D006MC54
4D006MC58
4D006MC59
4D006MC62
4D006MC65
4D006MC68
4D006PA01
4D006PB64
4D006PB68
(57)【要約】
【課題】設備の分離膜面積を低減できかつランニングコストも抑えることが可能なガス分離膜システムを提供する。
【解決手段】
このガス分離膜システムは、a:第1のガス分離膜ユニット31と、b:第2のガス分離膜ユニット32と、c:第3のガス分離膜ユニット33と、d:第4のガス分離膜ユニット34と、e:前記原料ガスライン11に配置され原料ガスを昇圧させる昇圧手段21と、を備え、(i)前記第3のガス分離膜ユニットの透過ガスが前記原料ガスライン11のうち前記昇圧手段よりも上流側に再循環され、(ii)前記第4のガス分離膜ユニットの非透過ガスも前記原料ガスラインのうち前記昇圧手段11よりも上流側に再循環されるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも高透過性ガスと低透過性ガスを含む2種以上のガスを含む原料ガスからガス分離膜を用い所望のガスを分離回収するガス分離膜システムであって、
a:原料ガスラインから原料ガスが供給されるように構成され、そのガスをガス分離膜で分離することで透過ガスと非透過ガスとが得られる第1のガス分離膜ユニットと、
b:前記第1のガス分離膜ユニットの非透過ガスが供給されるように構成され、そのガスをガス分離膜で分離することで透過ガスと非透過ガスとが得られる第2のガス分離膜ユニットと、
c:前記第2のガス分離膜ユニットの非透過ガスが供給されるように構成され、そのガスをガス分離膜で分離することで透過ガスと非透過ガスとが得られる第3のガス分離膜ユニットと、
d:前記第2のガス分離膜ユニットの透過ガスが再圧縮されることなく供給されるように構成され、そのガスをガス分離膜で分離することで透過ガスと非透過ガスとが得られる第4のガス分離膜ユニットと、
e:前記原料ガスラインに配置され原料ガスを昇圧させる昇圧手段と、
を備え、前記第3のガス分離膜ユニットの非透過ガスを製品ガスとして取り出すシステムであって、
(i)前記第3のガス分離膜ユニットの透過ガスが前記原料ガスラインのうち前記昇圧手段よりも上流側に再循環され、(ii)前記第4のガス分離膜ユニットの非透過ガスも前記原料ガスラインのうち前記昇圧手段よりも上流側に再循環されるように構成されている、
ガス分離膜システム。
【請求項2】
前記原料ガスが、少なくとも、高透過性ガスである二酸化炭素と低透過性ガスであるメタンガスとを含む、請求項1に記載のガス分離膜システム。
【請求項3】
前記第3のガス分離膜ユニットの非透過ガス中の高透過性ガス成分が3%以下である、請求項1または2に記載のガス分離膜システム。
【請求項4】
前記第1のガス分離膜ユニットの透過ガスに含まれる高透過性ガスの流量が、原料ガス中の透過性ガスの流量の20%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス分離膜システム。
【請求項5】
前記各ガス分離膜ユニットのガス分離膜の分離度である、二酸化炭素とメタンの透過速度比が60以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス分離膜システム。
【請求項6】
前記第1のガス分離膜ユニットの透過側のライン、
前記第3のガス分離膜ユニットの透過側のライン、および
前記第4のガス分離膜ユニットの透過側のライン
の少なくとも1つに減圧手段が設置され、これにより、ガス分離膜の透過側圧力が大気圧以下に保持される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガス分離膜システム。
【請求項7】
前記第1のガス分離膜ユニット、および/または、前記第4のガス分離膜ユニットの透過ガス中から高透過性ガスを回収し、有効利用をする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のガス分離膜システム。
【請求項8】
前記ガス分離膜がポリイミド中空糸からなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のガス分離膜システム。
【請求項9】
昇圧手段が多段からなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のガス分離膜システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離膜を利用して混合ガスからメタン等を分離回収するガス分離膜システムに関し、特には、設備の分離膜面積を低減できかつランニングコストも抑えることが可能なガス分離膜システムに関する。
【背景技術】
【0002】
異なる2種類以上のガスを含む混合ガスから所定のガスを分離する方法として、膜分離法が知られている。この方法では、ガス分離膜を利用し、透過ガスまたは非透過ガスを回収することにより、目的ガスである高純度の高透過性ガスまたは高純度の低透過性ガスを得ることができる。
【0003】
混合ガスに含まれる各ガスの膜に対する単位膜面積・単位時間・単位分圧差あたりの透過体積である透過速度はP′(単位は×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg)で表すことができる。また、膜のガス分離選択性は、高透過性ガスの透過速度と低透過性ガスの透過速度との比(高透過性ガスの透過速度/低透過性ガスの透過速度)で表すことができる。
【0004】
一般に、ガス分離膜は、ガス分離選択性の高い膜はガス(特に高透過性ガス)の透過速度が低く、反対にガス(特に高透過性ガス)の透過速度が高い膜はガス分離選択性が低い。したがって、一段のガス分離膜を用いて混合ガスから低透過性ガスを回収する場合、回収するガスの純度が一定のときには、ガス分離選択性が高い膜を用いた場合、回収率は高くなる。しかし、ガスの透過速度が低いため、膜面積を大きくするか、又は運転圧力を高くする必要がある。一方、ガスの透過速度が高い膜は、膜面積を大きくしたり、運転圧力を高くしたり必要はないが、ガス分離選択性が低いため、回収率が低くなる。
【0005】
ガス分離膜は、一例として、少なくともガス入口、透過ガス排出口、非透過ガス排出口が備えられている容器内に分離膜を収容してなるガス分離膜モジュールとして使用される。ガス分離膜は、そのガス供給側とガス透過側の空間が隔離されるように、容器内に装着されている。ガス分離膜システムにおいては、所要の膜面積とするために、一般に複数のガス分離膜モジュールを並列に組み合わせたガス分離膜ユニットとして使用される。ガス分離膜ユニットを構成する複数のガス分離膜モジュールは、ガス入口、非透過ガス排出口、透過ガス排出口を共用するため、ガス分離膜ユニットは、実質的に膜面積が大きいガス分離膜モジュールとして作用する。
【0006】
目的とする低透過性ガスを高純度かつ高回収率で回収するために、このガス分離膜ユニットを多段に備えたガス分離膜システムを用いる方法が知られている。多段のシステムのガス分離膜システムとして例えば特許文献1などがある。この分離膜システムでは、3段の分離膜と1台の圧縮機(昇圧手段)によって構成されている。図3は、3段のシステムの一例であり、第1、第2および第3の分離膜ユニット210、220、230を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許5858992号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の構成では、1段目の透過ガスを再圧縮することなく3段目の供給ガスとするため、1段目あるいは3段目の分離膜の圧力差が得にくく、分離効率が低下し、システム全体の膜面積が増加する(それに伴い初期設備の増大を招く)問題があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、設備の分離膜面積を低減できかつランニングコストも抑えることが可能なガス分離膜システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一形態に係るガス分離膜システムは下記の通りである:
少なくとも高透過性ガスと低透過性ガスを含む2種以上のガスを含む原料ガスからガス分離膜を用い所望のガスを分離回収するガス分離膜システムであって、
a:原料ガスラインから原料ガスが供給されるように構成され、そのガスをガス分離膜で分離することで透過ガスと非透過ガスとが得られる第1のガス分離膜ユニットと、
b:前記第1のガス分離膜ユニットの非透過ガスが供給されるように構成され、そのガスをガス分離膜で分離することで透過ガスと非透過ガスとが得られる第2のガス分離膜ユニットと、
c:前記第2のガス分離膜ユニットの非透過ガスが供給されるように構成され、そのガスをガス分離膜で分離することで透過ガスと非透過ガスとが得られる第3のガス分離膜ユニットと、
d:前記第2のガス分離膜ユニットの透過ガスが再圧縮されることなく供給されるように構成され、そのガスをガス分離膜で分離することで透過ガスと非透過ガスとが得られる第4のガス分離膜ユニットと、
e:前記原料ガスラインに配置され原料ガスを昇圧させる昇圧手段と、
を備え、前記第3のガス分離膜ユニットの非透過ガスを製品ガスとして取り出すシステムであって、
(i)前記第3のガス分離膜ユニットの透過ガスが前記原料ガスラインのうち前記昇圧手段よりも上流側に再循環され、(ii)前記第4のガス分離膜ユニットの非透過ガスも前記原料ガスラインのうち前記昇圧手段よりも上流側に再循環されるように構成されている。
【0011】
「ガス分離膜システム」とは、ここでは、複数のガス分離膜ユニットを備え、原料ガスから所望のガスを分離回収するシステムのことをいう。本明細書において単に分離膜システムということもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、設備の分離膜面積を低減できかつランニングコストも抑えることが可能なガス分離膜システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る分離膜システムの構成を模式的に示す図である。
図2】分離膜モジュールの構成を模式的に示す図である。
図3】従来のシステムの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下のガス分離膜システムは混合ガスから所望のガスを分離回収するシステムである。ここで、「混合ガス」は、分離対象となる異なる2種類のガスであるガスAおよびガスBを少なくとも含むものである。ガスAおよびガスBの種類に特に制限はないが、一例でメタンと二酸化炭素であってもよい。
【0015】
1.構成
本実施形態のガス分離膜システムは、図1に示すように、4つのガス分離膜ユニット31〜34を備えている。具体的には、第1のガス分離膜ユニット31、第2のガス分離膜ユニット32、第3のガス分離膜ユニット33および第4のガス分離膜ユニット34を備えている。各ガス分離膜ユニット31〜34は、一例としていずれも同様の構成となっている。もっとも、これに限定されるものではなく、すべてのまたは一部のガス分離膜ユニット31〜34を異なる構成としてもよい。
【0016】
(ガス分離膜ユニット)
ガス分離膜ユニット31〜34(以下、符号を付さずに表記することもある)としては、例えば、図2に示すような、中空糸膜からなりガス選択透過性を備えたガス分離膜130を有するガス分離膜モジュール140を利用できる。多数のガス分離膜130の束はケーシング131内に収められる。本実施形態のガス分離膜ユニット31〜34は、ガス分離膜モジュール140を1つ用いたものであるか、または、このモジュール140を複数並列してなるものである。
【0017】
ケーシング131は、対向する二面が開口して開口部132を形成している。この開口部132は、ガス分離膜130をケーシング131内に挿入するためのものである。ガス分離膜130は、ケーシング131の各開口部132の付近において中空糸膜の各端部が開口する(すなわち外部に露出する)ように、ケーシング131内に収容される。中空糸膜の延びる方向であるY方向の両端部の位置において、ガス分離膜130の端部は、管板133、134によってケーシング131の内壁に固定されている。
【0018】
ケーシング131の各開口部132は、蓋体135、136によって閉塞されている。蓋体135にはガス入口137が設けられ、蓋体136には非透過ガス排出口138が設けられている。分離対象となる混合ガスは、蓋体135のガス入口137からモジュール内(すなわちユニット内)に導入される。導入されたガスのうち、ガス分離膜130を透過したガスは、ケーシング131に設けられた透過ガス排出口139からモジュール外(すなわちユニット外)に排出される。一方、ガス分離膜130を透過しなかった非透過ガスは、蓋体136の非透過ガス排出口138からモジュール外(すなわちユニット外)に排出される。また、場合によっては、ケーシング131にパージガスの供給口(図示せず)を設けてもよい。
【0019】
以上、図2のガス分離膜モジュール140を例に挙げて説明したが、当然ながら、本発明は他の構成の分離膜モジュールにも応用可能であり、例えば、シェルフィード型のモジュールやスパイラル型モジュールにも応用できる。
【0020】
(流路構成)
再び図1を参照する。第1のガス分離膜ユニット31のガス入口には、原料である混合ガス源(図示せず)からの原料混合ガスを第1のガス分離膜ユニット31へ供給するためのガス供給ライン11が連結されている。ガス供給ライン11の途中には、昇圧手段21が配置されている。第1昇圧手段21は、混合ガス源から供給された混合ガスおよび同ライン11に再循環(詳細後述)させたガスを加圧する目的で設置されている。なお、図1では、符号11が第1昇圧手段21の上流および下流に付されているが、別々の流路として、例えば、符号11a(上流側)、符号11b(下流側)というように捉えてもよい。
【0021】
第1のガス分離膜ユニット31と、第2のガス分離膜ユニット32とは直列に接続されている。具体的には、第1のガス分離膜ユニット31と第2ガス分離膜ユニット32とは、第1のガス分離膜ユニット31の非透過ガス排出口と第2のガス分離膜ユニット32のガス入口とをライン12aによって連結することで接続されている。他方、ガス分離膜ユニット31のガス分離膜31mを透過したガスは、透過ガス排出口を通ってライン12b経由で外部に送出される。
【0022】
第2のガス分離膜ユニット32へは、ライン12a経由でガスが供給される。供給されたガスは、同ユニット内を通過し、ガス分離膜32mを透過しなかったガスは非透過ガス排出口を通って、ライン13a経由で、第3のガス分離膜ユニット33へと送られる。他方、ガス分離膜ユニット32のガス分離膜32mを透過したガスは、透過ガス排出口を通って、ライン13b経由で、第4のガス分離膜ユニット34へと送られる。
【0023】
第3のガス分離膜ユニット33へ供給されたガスは、同ユニット内を通過し、ガス分離膜33mを透過しなかったガスは非透過ガス排出口を通って、ライン14a経由で、最終的な製品ガスとして取り出される。他方、ガス分離膜ユニット33のガス分離膜33mを透過したガスは、透過ガス排出口を通って、ライン14b経由で、下記へと送られる。すなわち、この例では、ライン14bは第1のガス分離膜ユニット31の上流のガス供給ライン11に(より具体的には昇圧手段21の上流側)に戻されるように構成されている。
【0024】
第4のガス分離膜ユニット34へ供給されたガスは、同ユニット内を通過し、ガス分離膜34mを透過しなかったガスは非透過ガス排出口を通って、ライン15a経由で、下記へと送られる。すなわち、この例では、ライン15aは第1のガス分離膜ユニット31の上流のガス供給ライン11に(より具体的には昇圧手段21の上流)に戻されるように構成されている。ガス分離膜ユニット34のガス分離膜34mを透過したガスは、透過ガス排出口を通って、ライン15b経由で外部に送出される。
【0025】
なお、上記説明における「ライン」とはガスの流路を意味し、例えば中空の管部材で構成される。
【0026】
(分離膜)
ガス分離膜ユニットのガス分離膜としては、特に限定されるものではないが、例えば下記のようなものを利用可能である。ガス分離膜は、供給される混合ガスや目的とする製品ガスの種類に応じて適宜選択できる。ガス分離膜としては、当該技術分野においてこれまで用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。例えばシリコーン樹脂、ポリブタジエン樹脂などのゴム状ポリマー材料、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、セルロースなどのガラス状ポリマー材料、及びゼオライトなどのセラミックス材料が挙げられる。またガス分離膜は、均質膜、均質層と多孔層とからなる非対称膜、微多孔質膜などいずれであってもよい。ガス分離膜のケーシング内への収納形態も、プレートアンドフレーム型、スパイラル型、中空糸型などいずれであってもよい。特に好適に用いられるガス分離膜は、均質層の厚さが1nm以上200nm以下であり、多孔質層の厚さが20μm以上200μm以下の非対称構造を持ち、内径が30μm以上500μm以下程度である芳香族ポリイミドの中空糸ガス分離膜である。
【0027】
2.動作
以上の構成を有する本実施形態のガス分離膜システムの動作について説明する。
【0028】
分離対象となる混合ガスは、ガス供給ライン11経由で第1のガス分離膜ユニット31に供給される。供給に先立ち、混合ガスは、昇圧手段21によって加圧される。加圧された混合ガスが第1のガス分離膜ユニット31に供給されると、ガス分離膜に対する透過速度の相違に起因して、ガスが分離される。すなわち、ガス分離膜を透過したガスである透過ガスと、ガス分離膜を透過しなかったガスである非透過ガスとに分離される。便宜的に「ガスA」を、ガス分離膜に対する透過速度の大きいガス、つまり高透過性ガスとし、「ガスB」を、ガス分離膜に対する透過速度の小さいガス、つまり低透過性ガスとする。非透過ガスは、原料である混合ガスに比べてガスBが濃縮されたものである。一方、透過ガスは、原料である混合ガスに比べてガスAが濃縮されたものである。本実施形態では、ガスAを二酸化炭素、ガスBをメタンとする。
【0029】
第2のガス分離膜ユニット32の非透過ガス(メタンが富化されている)は、次いで、第3のガス分離膜ユニット33に供給され、ここで、ガス分離膜33mによって二酸化炭素が分離され、より濃縮された状態で、ライン14a経由で製品ガスとして取り出される。透過ガスは、記述のとおり、ライン14b経由で昇圧手段21の上流に再循環される。
【0030】
一方、第2のガス分離膜ユニット32の透過ガスは、第4のガス分離膜ユニット34に供給され、ここで、ガス分離膜34mによって二酸化炭素が分離される。ここでは、非透過ガスが、ライン15a経由で昇圧手段21の上流に再循環される。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、かかる実施例により本発明の範囲制限されるわけではない。以下の説明では、比較例との対比の都合上、第2のガス分離膜ユニット32〜第4のガス分離ユニット34をそれぞれ1段目、2段目、3段目と表すものとする。ガス分離膜ユニット31を「0」段目とする。
【0032】
[実施例]
図1のガス分離膜システムを用いて、二酸化炭素およびメタンを含む混合ガスの分離を行った。このシステムは、製品ガスのCO濃度3%を目指すものである。表1は、各段のガス分離膜ユニットのモジュール本数を示している。表2は、0段目(ガス分離膜ユニット31)への供給ガス流量(つまり昇圧手段21で圧縮したガス流量)を示すとともに、2段目(ガス分離膜ユニット33)の非透過ガスのCO濃度およびCH回収率を示している。なお、CH回収率は、原料ガス中のCHガス流量に対する、2段目の非透過ガス中のCH流量の割合を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
ガス分離膜ユニット31〜34として、ポリイミド中空糸膜から構成されるガス分離膜をケース内に収容するモジュールを用いた。モジュールの膜面積は16.17m/本であり、分離膜の分離度(COとCHの透過速度比)は62であった。原料ガスは500Nm/hで供給し、ガス組成はCO/CH=40/60%であった。各ガス分離膜ユニットの圧力に関し、昇圧手段21の吐出圧力を14barG、1段目透過圧を4barG(0段目、2段目、3段目透過圧は0barG)とした。
【0036】
各実施例において、2段目ガス分離膜ユニットの非透過ガスのCO濃度が3%、メタン回収率が98%程度となるように各段のモジュール本数を調整している(表1参照)。
【0037】
[比較例1〜3]
比較例としては、図1の構成から0段目の分離膜ユニット31を省略し、ガス供給ライン11を介して直接ガス分離膜ユニット32に原料ガスを供給するようにしたシステムを利用した。実施例と同様に、2段目ガス分離膜ユニットの非透過ガスのCO濃度が3%、メタン回収率が98%程度となるように各段のモジュール本数を調整した結果を下記表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
上記の結果から明らかなように、各実施例のガス分離膜システムは、比較例1〜3と比較して、メタン回収率が約98%のときに、昇圧手段21で昇圧するガス流量が小さいことから昇圧手段の消費動力を抑え、ランニングコストを低廉にすることができるとともに、また、モジュールの合計本数も少なくできる(膜面積を減らすことができる)ことが判る。
【0040】
(付記)
本出願は少なくとも以下の発明を開示する(括弧内の符号は本発明を何ら限定するものではない):
1.少なくとも高透過性ガスと低透過性ガスを含む2種以上のガスを含む原料ガスからガス分離膜を用い所望のガスを分離回収するガス分離膜システムであって、
a:原料ガスライン(11)から原料ガスが供給されるように構成され、そのガスをガス分離膜で分離することで透過ガスと非透過ガスとが得られる第1のガス分離膜ユニット(31)と、
b:上記第1のガス分離膜ユニットの非透過ガスが供給されるように構成され、そのガスをガス分離膜で分離することで透過ガスと非透過ガスとが得られる第2のガス分離膜ユニット(32)と、
c:上記第2のガス分離膜ユニットの非透過ガスが供給されるように構成され、そのガスをガス分離膜で分離することで透過ガスと非透過ガスとが得られる第3のガス分離膜ユニット(33)と、
d:上記第2のガス分離膜ユニットの透過ガスが再圧縮されることなく供給されるように構成され、そのガスをガス分離膜で分離することで透過ガスと非透過ガスとが得られる第4のガス分離膜ユニット(34)と、
e:上記原料ガスライン(11)に配置され原料ガスを昇圧させる昇圧手段(21)と、
を備え、前記第3のガス分離膜ユニットの非透過ガスを製品ガスとして取り出すシステムであって、
(i)上記第3のガス分離膜ユニットの透過ガスが前記原料ガスライン(11)のうち前記昇圧手段よりも上流側に再循環され、(ii)前記第4のガス分離膜ユニットの非透過ガスも前記原料ガスラインのうち前記昇圧手段(21)よりも上流側に再循環されるように構成されている、ガス分離膜システム。
【0041】
2.上記原料ガスが、少なくとも、高透過性ガスである二酸化炭素と低透過性ガスであるメタンガスとを含む、上記記載のガス分離膜システム。
【0042】
3.上記第3のガス分離膜ユニットの非透過ガス中の高透過性ガス成分が3%以下である、上記記載のガス分離膜システム。
【0043】
4.上記第1のガス分離膜ユニットの透過ガスに含まれる高透過性ガスの流量が、原料ガス中の透過性ガスの流量の20%以上である、上記記載のガス分離膜システム。
【0044】
5.上記各ガス分離膜ユニットのガス分離膜の分離度である、二酸化炭素とメタンの透過速度比が60以上である、上記記載のガス分離膜システム。
【0045】
6.上記第1のガス分離膜ユニットの透過側のライン、
上記第3のガス分離膜ユニットの透過側のライン、および
上記第4のガス分離膜ユニットの透過側のライン
の少なくとも1つに減圧手段が設置され、これにより、ガス分離膜の透過側圧力が大気圧以下に保持される、上記記載のガス分離膜システム。
【0046】
7.上記第1のガス分離膜ユニット、および/または、上記第4のガス分離膜ユニットの透過ガス中から高透過性ガスを回収し、有効利用をする、上記記載のガス分離膜システム。
【0047】
8.上記ガス分離膜がポリイミド中空糸からなる、上記記載のガス分離膜システム。
【0048】
9.昇圧装置が多段からなる、上記記載のガス分離膜システム。
【0049】
なお、本出願は、物の発明として開示した上記の技術的思想を方法の発明として表現した内容をも開示する。
【符号の説明】
【0050】
11 ガス供給ライン
12a〜15a ライン
12b〜15b ライン
21 昇圧手段
31〜34 ガス分離膜ユニット
130 ガス分離膜
131 ケーシング
132 開口部
133、134 看板
135、136 蓋体
140 ガス分離膜モジュール
図1
図2
図3