【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本実施形態に係る積層発泡シートの製造方法に用いられる押出設備について説明する。
なお、以下においては本発明の積層発泡シートとして生分解性樹脂を主成分とした生分解性積層発泡シートを例示する。
【0010】
本実施形態の生分解性積層発泡シートは、生分解性樹脂発泡層と生分解性樹脂非発泡層との2層構造を有し、共押出法によって作製される。
本実施形態の生分解性積層発泡シートの製造には、生分解性樹脂非発泡層を形成するための第1の押出ライン6と生分解性樹脂発泡層を形成するための第2の押出ライン7とが備えられた設備が利用される。
前記第1の押出ライン6は、生分解性樹脂非発泡層を形成するための非発泡性樹脂組成物を溶融混練するための単独の押出機60を備えている。
前記第2の押出ラインは、生分解性樹脂と発泡剤とを含有する発泡性樹脂組成物を溶融混練するための押出機としてタンデム押出機70を備えている。
【0011】
前記第1の押出ライン6の押出機60は、前記生分解性樹脂非発泡層の形成材料(非発泡性樹脂組成物)を投入するためのホッパー61を有し、内部で非発泡性樹脂組成物を溶融混練し、該溶融混練によって得られた溶融混練物を吐出するように構成されている。
前記タンデム押出機70は、上流側押出機70aと下流側押出機70bの2台の押出機が連結されたものであり、上流側押出機70aには、生分解性樹脂発泡層の形成材料を投入するためのホッパー71と、ガス供給装置73から炭化水素などの発泡剤をシリンダー内に供給するためのガス導入部72とが設けられている。
前記下流側押出機70bは、上流側押出機70aで形成された溶融状態の発泡性樹脂組成物をさらに溶融混練して得られた溶融混練物を吐出するように構成されている。
【0012】
該タンデム押出機70の先端部には、該タンデム押出機70で溶融混練された前記発泡性樹脂組成物と前記第1の押出ライン6の押出機60で溶融混練された非発泡性樹脂組成物とを合流させる合流金型80と、合流した溶融状態の樹脂組成物を大気中に押出すとともに発泡させて筒状発泡シートFBを形成させるための円環状の吐出口(以下「ダイスリット111」ともいう)を有するサーキュラーダイ100とが装着されている。
【0013】
前記合流金型80は、押出方向に沿って伸びる円筒状の樹脂流路101を備えた前記サーキュラーダイ100に前記発泡性樹脂組成物と前記非発泡性樹脂組成物とを所定の状態で流通させ得るように構成されている。
具体的には、前記合流金型80は、内側が前記発泡性樹脂組成物となり外側が前記非発泡性樹脂組成物となる内外2層の円筒状の流れが前記樹脂流路101に形成されるように構成されている。
【0014】
前記押出設備には、サーキュラーダイ100の前面において開口している円環状の前記ダイスリット111から筒状に吐出された前記筒状発泡シートFBを内面側から冷却するための冷却用マンドレル200が備えられている。
【0015】
前記押出設備には、前記冷却用マンドレル200によって冷却される前の発泡シート(筒状発泡シート)に対して外側から風を吹き付けて前記筒状発泡シートを外側から冷却する冷却装置CRがさらに備えられている。
【0016】
この冷却用マンドレル200の下流側には筒状の筒状発泡シートFBに左右一対の切り込みを入れるための切断刃CTが取り付けられている。
本実施形態における押出設備には、前記切断刃CTによって押出方向に沿って切断されて上下に二分割された筒状発泡シートFBをそれぞれ平坦なシート状に展開するためのローラ91と、この展開された生分解性積層発泡シート1を上ロールURと下ロールLRとの2本の原反ロールとして巻き取るための巻取りローラ92が備えられている。
【0017】
本実施形態においては、前記サーキュラーダイ100から前記冷却用マンドレル200に至るまでに前記筒状発泡シートFBを外側から冷却するための前記冷却装置CRは、扁平なドーナッツ状の中空板である冷却リングCR1を有している。
該冷却リングCR1は、その内周が前記ダイスリット111よりも僅かに径大な円形となっており、内周部には空気を吹出させるための吹出口301が形成されており、該吹出口301は、前記冷却リングCR1の内周縁に沿って円環状に形成されている。
この冷却リングCR1には前記のように内周に沿って吹出口301が開口していることから当該吹出口301が前記ダイスリット111の外側に僅かな距離を隔てて開口しており、前記冷却機構は、押出された直後の筒状発泡シートFBに対して風を吹付け得るように構成されている。
【0018】
本実施形態の積層発泡シートは、上記のような設備を用いて生分解性樹脂発泡層と生分解性樹脂非発泡層とが同時に前記ダイスリット111から押し出される共押出法によって作製される。
本実施形態の積層発泡シートは、共押出法によらず押出発泡法によって樹脂発泡層単層の生分解性樹脂発泡シートを作製した後で、該生分解性樹脂発泡シートに生分解性樹脂フィルムを積層して前記生分解性樹脂発泡シートによって樹脂発泡層を構成させるとともに前記生分解性樹脂フィルムで樹脂非発泡層を構成させるようにして作製されてもよい。
【0019】
前記積層発泡シートは、生分解性樹脂発泡層と生分解性樹脂非発泡層とが積層された2層構造を有する。
即ち、本実施形態の積層発泡シートは、一方の最表層に前記生分解性樹脂非発泡層が備えられているとともに他方の最表層に前記生分解性樹脂発泡層が備えられている。
本実施形態の積層発泡シートは、最表層の間に1以上の中間層を備えている3層以上の積層構造を有するものであってもよい。
【0020】
本実施形態の積層発泡シートは、生分解性樹脂発泡層だけでなく生分解性樹脂非発泡層を有することで優れた強度を有する。
上記のようにして作製される生分解性積層発泡シート1は、成形品に対して優れた強度を発揮させる上において、曲げ強さが5MPa以上であることが好ましい。
積層発泡シートの曲げ強さは、10MPa以下であることが好ましく、8MPa以下であることがより好ましい。
【0021】
積層発泡シートの曲げ弾性率は、120MPa以上であることが好ましく、150MPa以上であることがより好ましく、180MPa以上であることがさらに好ましい。
積層発泡シートの曲げ弾性率は、500MPa以下であることが好ましく、350MPa以下であることがより好ましく、270MPa以下であることがさらに好ましい。
【0022】
生分解性積層発泡シート1の曲げ強さと曲げ弾性率とは、例えば、次のようにして求めることができる。
<曲げ強度測定>
(株)オリエンテック製「テンシロンUCT−10T」万能試験機、ソフトブレーン(株)製「UTPS−458X」万能試験機データ処理を用いて、試験片サイズは幅50mm×長さ150mmで圧縮速度を200mm/min、加圧くさび3.2R 、支持台3.2Rとして支点間距離 を100mmで測定する。
試験片の数は5個とし、5つの試験結果を平均して曲げ弾性率を求める。
変位の原点を回帰点とし、曲げ強さおよび曲げ弾性率を求める。
(曲げ強さ)
曲げ強さR(MPa)は次式により算出する。
R=(1.5F
R×L/bd
2)×10
3
F
R : 最大荷重(kN)
L : 支点間距離(mm)
b : 試験片の幅(mm)
d : 試験片の厚さ(mm)
(曲げ弾性率)
曲げ弾性率E(MPa)は次式により算出する。
E=αL
3/(4bd
3)
α:弾性率勾配(N/mm)
【0023】
上記の曲げ強度測定では、積層発泡シートの一面側(例えば、発泡層側)に加圧くさびが当たるように行う試験と、積層発泡シートの他面側(例えば、非発泡層側)に加圧くさびが当たるように行う試験とをそれぞれ5回ずつ実施し、得られる10点の測定結果の算術平均値を求める。
即ち、前記曲げ強さと前記曲げ弾性率とは、10点の測定値の算術平均値として求められる。
【0024】
本実施形態における積層発泡シートは、高い曲げ弾性率を有することから熱成形に際しては十分軟化した状態となるように加熱されないと成形品に対して成形型の形状を十分精度よく反映させることができなくなる場合がある。
しかしながら、積層発泡シートを十分に軟化させると熱成形時に成形型の成形面に積層発泡シートが密着してしまい、成形面と積層発泡シートとの間に適切な“すべり”が生じずに成形品における成形性をむしろ低下させてしまうことがある。
【0025】
本実施形態の積層発泡シートは、前記生分解性樹脂発泡層が所定の状態で最表層に備えられていることが当該積層発泡シートに良好な成形性を発揮させる上で重要な要件となる。
具体的には、前記積層発泡シートは、前記生分解性樹脂発泡層で構成されている表面の算術平均粗さが3μm以上10μm以下であることが重要である。
このことにより、熱成形時において積層発泡シートが成形面に過度に密着することを抑制できる。
尚、前記表面粗さが過度に粗いことは好ましいことではないので、前記表面粗さ(Ra)は、6μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0026】
前記積層発泡シートの表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)は、JIS B0601「表面粗さの定義および表示」に則って測定できる。
即ち、生分解性積層発泡シートをJIS K7100:1999の記号23/50、2級環境下で16時間状態調節した後、下記の装置、測定条件下にて測定することができる。
(測定条件)
装置: 東京精密社製 ハンディサーフ E−35A
カットオフ(λc):0.80
評価長さ(L):4.0mm
尚、測定は、原則的には生分解性積層発泡シートのTD方向(押出方向と直交する方向、幅方向)に向けて実施し、且つ、無作為に選択した5箇所において実施する。
生分解性積層発泡シートの算術平均粗さRaは、それらの算術平均粗さRaの平均値とする。
【0027】
上記のような表面粗さを生分解性樹脂発泡層の表面に形成させるには、生分解性樹脂発泡層の表面を構成する気泡膜を気泡毎に膨出させるようにすればよい。
このような状態にするには、前記タンデム押出機70で溶融混練を実施する際に発泡剤を多めに配合しておくことが好ましい。
また、上記のような表面粗さを生分解性樹脂発泡層の表面に形成させるには、前記筒状発泡シートFBで生分解性樹脂非発泡層が設けられている側(外側)での冷却を強化し、生分解性樹脂非発泡層側からの発泡剤ガスの散逸を抑制させるのも有効である。
【0028】
該生分解性積層発泡シートの厚さは、0.2mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1.0mm以上であることがさらに好ましい。
前記生分解性積層発泡シートの厚さは、6mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、4mm以下であることがさらに好ましい。
【0029】
前記生分解性積層発泡シートの厚さは、例えば、無作為に選択した10箇所以上の測定点において測定された厚さの平均値として求めることができる。
【0030】
該生分解性積層発泡シートの生分解性樹脂非発泡層の厚さは、1μm以上200μm以下の厚さとすることができる。
生分解性樹脂非発泡層の厚さは、生分解性樹脂非発泡層の断面(生分解性積層発泡シートの平面方向に直交する平面での断面)の顕微鏡写真を撮影し、該写真において無作為に選択した複数箇所(例えば、10箇所)において生分解性樹脂非発泡層の厚さを測定して得られた測定値の算術平均値を計算することで求めることができる。
【0031】
前記生分解性積層発泡シートは、坪量が200g/m
2以上であることが好ましく、250g/m
2以上であることがより好ましく、300g/m
2以上であることがさらに好ましい。
前記生分解性積層発泡シートの坪量は、800g/m
2以下であることが好ましく、700g/m
2以下であることがより好ましい。
【0032】
前記生分解性積層発泡シートの坪量は、例えば、100cm
2以上のサンプルを複数枚(例えば10枚)切り取り、それぞれの質量と面積とを測定し次式により求めることができる。
坪量(g/m
2)=10000×試験片質量(g)/試験片面積(cm
2)
【0033】
上記のような生分解性積層発泡シートの密度(見掛け密度)については、特に限定されるものではなく、200kg/m
3以上であることが好ましく、300kg/m
3以上であることがより好ましい。
該見掛け密度は、1000kg/m
3以下であることが好ましく、900kg/m
3以下であることがより好ましく、800kg/m
3以下であることがさらに好ましい。
【0034】
生分解性積層発泡シートの見掛け密度は、JIS K7222:1999「発泡プラスチックおよびゴム−見掛け密度の測定」に記載される方法により測定され、具体的には下記のような方法で測定される。
(見掛け密度測定方法)
生分解性積層発泡シートから、100cm
3以上の試料を元のセル構造を変えないように切断し、この試料をJIS K7100:1999の記号23/50、2級環境下で16時間状態調節した後、その寸法、質量を測定して、密度を下記式により算出する。
見掛け密度(kg/m
3)=試料の質量(kg)/試料の体積(m
3)
なお、試料の寸法測定には、例えば、(株)ミツトヨ製「DIGIMATIC」CD−15タイプを用いることができる。
【0035】
前記生分解性積層発泡シートは、良好な成形性を発揮させる上において、連続気泡率が、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく15%以下であることがさらに好ましい。
該連続気泡率は、通常、1%以上である。
【0036】
前記生分解性積層発泡シートは、次のようにして測定できる。
<生分解性積層発泡シートの連続気泡率>
生分解性積層発泡シートから、縦25mm、横25mmのシート状サンプルを複数枚切り出し、切り出したサンプルを隙間があかないようにして重ね合わせて厚み25mmの測定用試料とし、この測定用試料の外寸を(株)ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」を使用して1/100mmまで測定し、見掛けの体積(cm
3)を求める。
次に空気比較式比重計1000型(東京サイエンス(株)製)を使用して、1−1/2−1気圧法により測定用試料の体積(cm
3)を求める。
これらの求めた値と下記式とにより連続気泡率(%)を計算し、試験数5個の平均値を求める。
なお、測定は、測定用試料をJIS K7100−1999 記号23/50、2級の環境下で16時間状態調節した後、JIS K7100−1999 記号23/50、2級の環境下で行う。
また、空気比較式比重計は、標準球(大28.9cc 小8.5cc)にて補正を行う。
連続気泡率(%)=
(見掛け体積−空気比較式比重計での測定体積)/見掛け体積 ×100(%)
【0037】
前記生分解性積層発泡シートは、平均気泡径が0.7mm以下であることが好ましく平均気泡径が0.6mm以下であることがより好ましい。
前記平均気泡径は、通常、0.1mm以上となる。
【0038】
前記生分解性積層発泡シートの平均気泡径は、次のようにして求めることができる。
<生分解性積層発泡シートの平均気泡径の測定>
生分解性積層発泡シートの幅方向中央部からMD方向(押出方向)、及び、TD方向(幅方向)に沿って生分解性積層発泡シートの表面に垂直に切リ出した断面を(株)日立ハイテクノロジーズ製「SU1510」走査電子顕微鏡を用いて、100倍に拡大して撮影する。
このとき、顕微境画像は、横向きのA4用紙1枚に縦横2画像(合計4画像)並んだ状態で印刷した際に所定の倍率となるように撮影する。
具体的には、上記のように印刷した画像上に、MD、TDの各方向に平行する60mmの任意の直線、及び、各方向に直交する方向(厚さ方向、VD方向ともいう)に60mmの直線を描いた際に、この直線上に存在する気泡の数が3〜10個程度となるように電子顕微鏡での撮影倍率を調整する。
MD方向に沿って切断した断面(以下、MD断面という)、及び、TD方向に沿って切断した断面(以下、TD断面という)のそれぞれに対し、2視野ずつ合計4視野の顕微鏡画像を撮影し、上記のようにA4用紙に印刷する。
MD断面の2つの画像のそれぞれにMD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描くと共に、TD断面の2つの画像のそれぞれにTD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描く。
また、MD断面の1つの画像とTD断面の1つの画像とにVD方向に平行な3本の直線(60mm)を描き、MD方向、TD方向、及び、VD方向に平行な60mmの任意の直線を各方向6本ずつ描く。
なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合には、この気泡も数に加える。
MD方向、TD方向、VD方向の各方向の6本の任意の直線について数えた気泡数Dを算術平均し、各方向の気泡数とする。
気泡数を数えた画像倍率とこの気泡数から気泡の平均弦長tを次式より算出する。
平均弦長 t(mm)=60/(気泡数×画像倍率)
画像倍率は、画像上のスケールバーを株式会社ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」にて1/100mmまで計測し、次式により求める。
画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)
そして次式により各方向における気泡径を算出する。
気泡径D(mm)=t/0.616
さらにそれらの積の3乗根を平均気泡径とする。
平均気泡径(mm)=(D
MD×D
TD×D
VD)
1/3
D
MD:MD方向の気泡径(mm)
D
TD:TD方向の気泡径(mm)
D
VD:VD方向の気泡径(mm)
【0039】
本実施形態の生分解性積層発泡シートは、上記のように生分解性樹脂を主成分として含有する樹脂組成物によって形成され得る。
以下に、前記樹脂発泡剤層の形成に用いられる樹脂組成物について説明する。
前記樹脂非発泡層を構成する樹脂組成物については、原則的に下記に例示の樹脂組成物と同様の成分を含むものを採用することができ、発泡剤を含まないこと以外は下記に例示の樹脂組成物と同様のものとすることができる。
【0040】
本実施形態の前記樹脂組成物は、例えば、生分解性樹脂のみを含有するものであっても、生分解性樹脂と添加剤等とを含有するものであってもよい。
本実施形態に係る生分解性樹脂としては、生分解性ポリエステル系樹脂が挙げられる。
該生分解性ポリエステル系樹脂としては、例えば、グリコールと脂肪族ジカルボン酸との重縮合などにより得られる脂肪族ポリエステル系樹脂などが挙げられ、ジカルボン酸とジオールとが構成単位となっていることが好適である。
【0041】
該脂肪族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンオキザレート、ポリブチレンオキザレート、ポリネオペンチルオキザレート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートカーボネート等が挙げられる。
【0042】
本実施形態に係る生分解性ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸などのようなポリ(α−ヒドロキシ酸)またはこれらの共重合体、ポリ(ε−カプロラクトン)やポリ(β−プロピオラクトン)のようなポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバリレート)、ポリ(3−ヒドロキシカプロレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)のようなポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)及びポリ(4−ヒドロキシブチレート)などの脂肪族ポリエステル系樹脂であってもよい。
【0043】
前記生分解性ポリエステル系樹脂としては、長鎖分岐を有していないものが好ましい。
本実施形態の生分解性ポリエステル系樹脂は、生分解性の観点から脂肪族ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
前記樹脂組成物に含有される全ての生分解性ポリエステル系樹脂を100質量%とした場合、脂肪族ポリエステル系樹脂の割合は、85質量%以上とされることが好ましく、90質量%以上とされることがより好ましく、95質量%以上とされることがさらに好ましい。
前記樹脂組成物に含有される全ての生分解性ポリエステル系樹脂が脂肪族ポリエステル系樹脂であることがとりわけ好ましい。
【0044】
本実施形態で用いる生分解性ポリエステル系樹脂は、これらのなかでもポリブチレンサクシネートが特に好ましい。
前記樹脂組成物に含有される全ての生分解性ポリエステル系樹脂を100質量%とした場合、ポリブチレンサクシネートの割合は、85質量%以上とされることが好ましく、90質量%以上とされることがより好ましく、95質量%以上とされることがさらに好ましい。
前記樹脂組成物に含有される全ての生分解性ポリエステル系樹脂がポリブチレンサクシネートであることがとりわけ好ましい。
【0045】
なお、本実施形態においては、上記例示の生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂の内の一種類を選択して用い得る他に、上記例示の生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂の内の複数を混合して用いることもでき、上記例示以外の生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂も使用可能である。
【0046】
前記樹脂組成物に含有させる添加剤としては、生分解性樹脂以外のポリマーや、無機フィラーなどの無機物、各種ゴム・プラスチック薬剤などが挙げられる。
【0047】
生分解性樹脂以外に前記樹脂組成物に含有され得るポリマーとしては、高分子型帯電防止剤、気泡調整剤として用いられるフッ素系樹脂、ゴム系改質剤などが挙げられる。
【0048】
生分解性積層発泡シートに優れた生分解性を発揮させる上において、樹脂組成物に含有される全てのポリマーに占める生分解性樹脂の割合は、85質量%以上とされることが好ましく、90質量%以上とされることがより好ましく、95質量%以上とされることがさらに好ましい。
【0049】
生分解性積層発泡シートに優れた生分解性を発揮させる上において、樹脂組成物に含有される全ての生分解性樹脂に占める生分解性ポリエステル系樹脂の割合は、85質量%以上とされることが好ましく、90質量%以上とされることがより好ましく、95質量%以上とされることがさらに好ましい。
【0050】
前記樹脂組成物は、その発泡成形性をより向上させる目的で収縮防止剤等の添加剤を任意に含有できる。
添加量としては生分解性樹脂100質量部に対する割合が0.05質量部以上5質量部以下の範囲内となるように前記樹脂組成物に含有される。
【0051】
該収縮防止剤の具体例としては、例えば、ラウリン酸モノグリセライド、パルミチン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ペンタエリスリットモノカプレート、ペンタエリスリットモノオレエート、ペンタエリスリットモノラウレート、ジペンタエリスリットジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキ糖油脂肪酸エステル、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、マンニタンモノオレエート、マンニタンモノラウレートなどの多価アルコールと高級脂肪酸のエステルの他、高級アルキルアミン、脂肪酸アミド、高級脂肪酸の完全エステルなどを挙げることができる。
【0052】
収縮防止剤は、上記例示のものの内の一種類を選択して用い得る他に、上記例示の収縮防止剤の内の複数を混合して用いることもでき、上記例示以外のもので従来収縮防止剤として公知のものも採用が可能である。
その中でもステアリン酸モノグリセライドが特に好ましい。
【0053】
前記樹脂組成物は、発泡時に良好な気泡構造とする目的で、一般的に使用される気泡調整剤を使用することができる。
気泡調整剤は例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂の微粉末、タルク、水酸化アルミニウム、シリカなどが挙げられる。
更に後述する分解型発泡剤は、揮発性発泡剤と併用することで発泡状態を調整することができ、気泡調整剤として用いることもできる。
【0054】
前記樹脂組成物に用いられる発泡剤としては、一般的な常温、常圧において気体となる揮発性発泡剤や、熱分解によって気体を発生させる分解型発泡剤を採用することができ前記揮発性発泡剤としては、例えば不活性ガス、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素等が採用可能である。
前記不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭酸、窒素等が挙げられ、脂肪族炭化水素としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン等が挙げられ、前記脂環族炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、シクロへキサン等が挙げられる。
【0055】
前記樹脂組成物に含有される生分解性樹脂100質量部に対して前記押出発泡に際して使用される前記発泡剤の割合は、0.1質量部以上であることが好ましく0.3質量部以上であることがより好ましく、0.6質量部以上であることが特に好ましい。
前記発泡剤の割合は、2質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましく、1.2質量部以下であることがさらに好ましい。
【0056】
前記分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、重炭素ナトリウム又はクエン酸のような有機酸もしくはその塩と重炭酸塩との混合物などが挙げられる。
【0057】
押出発泡に供する樹脂組成物には、前記生分解性樹脂とともに結晶核剤と結晶化促進剤とを含有させてもよい。
【0058】
前記結晶核剤としては、例えば、有機結晶核剤や無機結晶核剤などが挙げられる。
前記結晶核剤としては、有機結晶核剤と無機結晶核剤との内の一方のみを採用してもよく、有機結晶核剤と無機結晶核剤とを併用してもよい。
また、前記結晶核剤として無機結晶核剤だけを用いる場合、無機結晶核剤の内の1種だけを結晶核剤として採用してもよく、無機結晶核剤の内の2種以上を併用してもよい。
同様に前記結晶核剤として有機結晶核剤だけを用いる場合、有機結晶核剤の内の1種だけを結晶核剤として採用してもよく、有機結晶核剤の内の2種以上を併用してもよい。
前記結晶核剤としては、有機結晶核剤と無機結晶核剤とを併用する場合、いずれか一方、又は、両方に複数種類のものが採用されてもよい。
【0059】
前記無機結晶核剤としては、例えば、タルク、酸化スズ、スメクタイト、ベントナイト、ドロマイト、セリサイト、長石粉、カオリン、マイカ、モンモリロナイト等が挙げられる。
これらの中でも、結晶化速度向上、耐熱性、耐久性などの観点から前記無機結晶核剤としては、タルクあるいは酸化スズであることが好ましい。
【0060】
前記有機結晶核剤としては、例えば、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、および有機ホスホン酸塩などが挙げられる。
【0061】
有機スルホン酸塩としては、スルホイソフタル酸塩など、種々のものを用いることができるが、中でも、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩が、結晶化促進効果の点から好ましい。
さらに、バリウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、ナトリウム塩などが好ましい。
【0062】
前記有機アミド化合物としては、例えば、N,N’,N”−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N’−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミドなど挙げられる。
【0063】
前記結晶核剤は、例えば、前記樹脂組成物に含有される前記生分解性樹脂の含有量を100質量部としたときに0.5質量部以上となる割合で前記樹脂組成物に含有させ得る。
前記結晶核剤は、0.6質量部以上の割合で前記樹脂組成物に含有されることが好ましく、0.7質量部以上の割合で前記樹脂組成物に含有されることがより好ましい。
前記結晶核剤は、例えば、前記樹脂組成物に含有される前記ポリ乳酸樹脂の含有量を100質量部としたときに3.0質量部未満となる割合で前記樹脂組成物に含有させ得る。
前記結晶核剤は、2.5質量部以下の割合で前記樹脂組成物に含有されることが好ましく、2.2質量部以下の割合で前記樹脂組成物に含有されることがより好ましい。
【0064】
前記結晶化促進剤としては、例えば、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジオクチルイソフタレート等のイソフタル酸誘導体、ジ−n−ブチルアジペート、ジオクチルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジ−n−ブチルマレエート等のマレイン酸誘導体、トリ−n−ブチルシトレート等のクエン酸誘導体、モノブチルイタコネート等のイタコン酸誘導体、ブチルオレート等のオレイン酸誘導体、グリセリンモノリシノレート等のリシノール酸誘導体、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート等のリン酸エステル、ポリエチレンアジペート、ポリアクリレートアセチルクエン酸トリブチル等のヒドロキシ多価カルボン酸エステル類、グリセリントリアセテート、グリセリントリプロピオネート等の多価アルコールエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール誘導体、ベンジル・2−(2−メトキシエトキシ)エチル・アジパート、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0065】
前記結晶化促進剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンリシノール酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルなどが挙げられる。
これらのなかで前記結晶化促進剤としては、ポリグリセリンステアリン酸エステルを採用することが好ましい。
【0066】
前記結晶化促進剤は、例えば、前記樹脂組成物に含有される前記生分解性樹脂の含有量を100質量部としたときに0.5質量部以上となる割合で前記樹脂組成物に含有させ得る。
前記結晶化促進剤は、0.6質量部以上の割合で前記樹脂組成物に含有されることが好ましく、0.7質量部以上の割合で前記樹脂組成物に含有されることがより好ましい。
前記結晶化促進剤は、例えば、前記樹脂組成物に含有される前記ポリ乳酸樹脂の含有量を100質量部としたときに5.0質量部未満となる割合で前記樹脂組成物に含有させ得る。
前記結晶化促進剤は、4.0質量部以下の割合で前記樹脂組成物に含有されることが好ましく、3.5質量部以下の割合で前記樹脂組成物に含有されることがより好ましい。
【0067】
前記添加剤として前記樹脂組成物に含有させ得る成分としては、例えば、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、無機充填剤等が挙げられる。
【0068】
尚、本実施形態においては、積層発泡シートとして生分解性を有する積層発泡シートを例示しているが、本発明の積層発泡シートは生分解性を有していなくてもよい。
その場合、樹脂発泡層や樹脂非発泡層を構成させるための樹脂は、生分解性樹脂である必要性はなく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂;GPPSやHIPSといったポリスチレン系樹脂;ポリアミド12やポリアミド66といったポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートといったポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。
また、本発明は、これまでに述べた例示には何等限定されるものではなく、上記例示に適宜変更を加え得るものである。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが本発明は以下の例示にも何等限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
生分解性樹脂発泡層を形成させるための生分解性樹脂として、生分解性ポリエステル系樹脂(PTT MCC Biochem社製、商品名「BioPBS FZ91PM」)を用意した。
この生分解性ポリエステル系樹脂100質量部に対し、気泡調整剤として松村産業社製「クラウンタルク」を2.0質量部加えた樹脂組成物を調整した。
口径φ50mmの第1押出機(上流側)及び口径φ65mmの第2押出機(下流側)を備えたタンデム押出機において、口径φ50mmの第1の押出機に、得られた樹脂組成物をホッパーを通じて供給し、加熱溶融させた。
その後、発泡剤としてイソブタンを第1押出機に圧入し、前記樹脂組成物とともに溶融混練して当該押出機にて発泡性樹脂組成物を調製した。
熱溶融された状態の前記発泡性樹脂組成物を第2押出機へ流入させ第2押出機で発泡に適した温度になるまで発泡性樹脂組成物の温度を低下させて合流金型に流入させた。
一方、生分解性樹脂非発泡層を形成させるために生分解性樹脂発泡層に用いたのと同じ生分解性ポリエステル系樹脂(PTT MCC Biochem社製、商品名「BioPBS FZ91PM」)を用意した。
この生分解性ポリエステル系樹脂を口径32mmの単軸押出機のホッパーに供給して溶融混練した後、溶融混練物(非発泡性樹脂組成物)を前記合流金型へ流入させた。
合流金型で合流させた発泡性樹脂組成物と非発泡性樹脂組成物とは、サーキュラーダイより共押出した。
共押出は、口径70mm、間隔0.7mmのダイスリットから40kg/hの総吐出量となるように実施し、外側が樹脂非発泡層、内側が樹脂発泡層となるように実施した。
共押出された円筒状発泡シートを冷却用マンドレルによって冷却成形後、冷却用マンドレルの後部に取り付けたカッターにより押出方向に沿って切開して長尺帯状の生分解性積層発泡シートを作製した。
【0071】
(実施例2)
樹脂非発泡層を形成するための樹脂組成物を、生分解性ポリエステル系樹脂(PTT MCC Biochem社製、商品名「BioPBS FZ91PM」)50質量部と、松村産業社製「クラウンタルク」50質量部との混合物とした以外は実施例1と同様の方法で生分解性積層発泡シートを作製した。
【0072】
(比較例1)
樹脂非発泡層を積層せず、押出時の吐出量を40kg/hに代えて30kg/hとして、樹脂発泡層のみの単層構造を有する樹脂発泡シート作製した以外は、実施例1と同様の方法で生分解性樹脂発泡シートを作製した。
【0073】
(比較例2)
吐出量を37kg/hとした以外は比較例1と同様の方法で単層構造を有する生分解性樹脂発泡シートを作製した。
【0074】
(比較例3)
樹脂非発泡層を樹脂発泡層の両面に設けた三層構造の生分解性積層発泡シートを作製した以外は、実施例1と同様の方法で生分解性積層発泡シートを作製した。
【0075】
<成形性評価>
生分解性積層発泡シートを熱成形して、容器を作製した。
容器底面の厚さと側壁の厚さとをそれぞれ測定し、その差を確認した。
成形性の判断は下記の通り行った。
○:底面と側壁の肉厚バランスがいい成形品が得られた
×:側壁の肉厚が薄く、成形品の肉厚バランスが悪い
この成形性の評価結果を他のシート物性とともに表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
上記のようなことからも本発明によれば成形性に優れた積層発泡シートが得られることがわかる。