【解決手段】長尺状の発泡シート101をその長手方向に移送しつつ、二次発泡シート105に容器の形状を加熱成形して発泡成形シート106を得る成形工程と、発泡成形シート106を冷却速度10℃/sec以上で空冷する空冷工程と、空冷された発泡成形シート106から容器を切り出すトリミング工程と、を有する、結晶性樹脂発泡容器107の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[結晶性樹脂発泡容器の製造方法]
本発明の結晶性樹脂発泡容器(以下、「発泡容器」ともいう。)の製造方法は、長尺状の発泡シートをその長手方向に移送しつつ、発泡シートに容器の形状を加熱成形して、発泡容器を得るものである。
本発明の発泡容器の製造方法は、成形工程と、空冷工程と、トリミング工程とを有する。
以下に、本発明の一実施形態に係る発泡容器の製造方法について説明する。
【0013】
本実施形態の発泡容器の製造方法は、ラミネート工程と、予熱工程と、成形工程と、空冷工程と、トリミング工程とを有する。
図1に、本実施形態の発泡容器の製造装置の一例を示す。
図2に、
図1の製造装置の平面図を示す。
【0014】
図1の結晶性樹脂発泡容器の製造装置100は、発泡シートロール110と、第一のフィルムロール120と、第二のフィルムロール122と、ラミネート機130と、ヒーター槽140と、成形金型150と、冷却槽160と、裁断機170と、シート搬送機180とを備える。
図1のX方向が、長尺状の発泡シートの長手方向である。
図2に示すように、シート搬送機180は、発泡シートの幅方向(Y方向)両端に位置する。発泡シートの幅方向は、発泡シートの長手方向に直交する方向である。
【0015】
発泡シートロール110は、結晶性樹脂発泡容器(以下、単に「発泡容器」ともいう。)の原料となる長尺状の発泡シート101が巻回されたロールである。発泡シート101としては、加熱により結晶化する樹脂(結晶性樹脂)を発泡させた発泡層からなる単層シートが挙げられる。結晶性樹脂については、後述する。
【0016】
第一のフィルムロール120は、発泡容器の原料となる長尺状の第一の樹脂フィルム102が巻回されたロールである。第一の樹脂フィルム102としては、結晶性樹脂を含む非発泡のフィルムが挙げられる。
第二のフィルムロール122は、発泡容器の原料となる長尺状の第二の樹脂フィルム103が巻回されたロールである。第二の樹脂フィルム103としては、第一の樹脂フィルム102と同様のフィルムが挙げられる。
【0017】
ラミネート機130は、発泡シート101と第一の樹脂フィルム102及び第二の樹脂フィルム103とを熱融着する装置である。ラミネート機130としては、一対の加熱ロールを備える装置が挙げられる。
【0018】
ヒーター槽140は、発泡シート101と第一の樹脂フィルム102及び第二の樹脂フィルム103とから得られる積層発泡シート104を予備加熱する装置である。ヒーター槽140としては、公知の加熱装置が挙げられる。
【0019】
成形金型150は、積層発泡シート104を予備加熱して得られる二次発泡シート105を加熱成形する装置である。成形金型150としては、雄型152と雌型154とを備える装置が挙げられる。
【0020】
冷却槽160は、二次発泡シート105を加熱成形して得られる発泡成形シート106を空冷する装置である。冷却槽160としては、発泡成形シート106の上部に位置し、発泡成形シート106に空気を吹き付けられる上部冷却槽160Aと、発泡成形シート106の下部に位置し、発泡成形シート106に空気を吹き付けられる下部冷却槽160Bとを備える冷却装置が挙げられる。
【0021】
裁断機170は、発泡成形シート106を切り出す装置である。裁断機170としては、容器の形状に合わせた任意の大きさの抜き刃(刃物)を備える装置が挙げられる。
【0022】
シート搬送機180は、積層発泡シート104、二次発泡シート105、あるいは、発泡成形シート106(以下、この段落において「積層発泡シート104等」ともいう。)を移送できる装置である。シート搬送機180としては、積層発泡シート104等の幅方向の両端の縁部を把持しつつ積層発泡シート104等を移送できる装置が挙げられる。シート搬送機180としては、例えば、チェーンレールが挙げられる。チェーンレールとしては、例えば、複数のスパイク状部材を取り付けたチェーンを積層発泡シート104等の縁部で周回させ、該縁部に上記スパイク状部材を突き刺すことによってチェーン周回とともに積層発泡シート104等を移送できるチェーンレールや、クランプ状態と非クランプ状態とを実現可能なクランプ部材をチェーンに取り付け、積層発泡シート104等の縁部にてクランプ状態を実現しつつチェーンを周回させて積層発泡シート104等を移送できるチェーンレール等が挙げられる。
シート搬送機180としては、積層発泡シート104等の幅方向の両端の縁部を把持し、積層発泡シート104等の幅方向に張力を与えることで、積層発泡シート104等の幅方向の長さを規制できるチェーンレールが好ましい。
【0023】
<ラミネート工程>
ラミネート工程は、発泡シート101を積層発泡シート104とする工程である。
まず、発泡シートロール110から発泡シート101を繰り出す。
次に、第一の樹脂フィルム102を第一のフィルムロール120から繰り出し、発泡シート101の一方の面に重ねる。また、第二の樹脂フィルム103を第二のフィルムロール122から繰り出し、発泡シート101の他方の面に重ねる。
発泡シート101に第一の樹脂フィルム102及び第二の樹脂フィルム103を重ねた積層体をラミネート機130に供給する。上記積層体を一対の加熱ロールで挟みつつ任意の温度で加熱して、発泡シート101と第一の樹脂フィルム102及び第二の樹脂フィルム103とを圧着して、積層発泡シート104とする。上記積層体を圧着する温度は、例えば、80〜150℃が好ましく、90〜140℃がより好ましい。
ラミネート工程により、発泡層の両面に非発泡層を備える積層発泡シート104が得られる。
【0024】
<予熱工程>
予熱工程は、積層発泡シート104をヒーター槽140に供給して予備加熱し、積層発泡シート104を軟らかくする工程である。軟らかくなった積層発泡シート104は、二次発泡シート105となる。
本実施形態では、積層発泡シート104をシート搬送機180でヒーター槽140に供給する。シート搬送機180は、定速で連続して動くものであってもよいし、成形工程での加熱成形の時間に合わせて間欠的に動くものであってもよい。
シート搬送機180の幅間隔は、ヒーター槽140の入り口では、発泡シートロール110から繰り出された発泡シート101の幅に設置されている。シート搬送機180の幅間隔は、ヒーター槽140の内部では、一定の幅になっている。
ヒーター槽140の内部で加熱により収縮しようとする積層発泡シート104は、ヒーター槽140の入り口で弛んでいても、加熱によりシートが「張る」ので、シート幅を拡張することなく、シート搬送機180の幅間隔は平行のままでシートを搬送できる。
なお、ヒーター槽140の内部で予備加熱によりドローダウンする(軟化して垂れ下がる)積層発泡シートの場合は、幅方向(Y方向)に拡張して搬送してもよい。
このように、ヒーター槽140の内部でシート搬送機180の幅間隔を拡張することで、軟化した二次発泡シート105を平坦に均すことができ、成形工程で容器の形状を成形しやすくできる。
積層発泡シート104の拡張割合は、例えば、積層発泡シート104の幅寸法の2〜6%が好ましい。積層発泡シート104の拡張割合が、積層発泡シート104の幅寸法の2%以上であると、二次発泡シート105のシート面を平坦に均しやすい。積層発泡シート104の拡張割合が、積層発泡シート104の幅寸法の6%以下であると、二次発泡シート105が過剰に延ばされることを抑制できる。そのため、得られる発泡容器107の肉厚が不均一になることを抑制できる。
【0025】
ヒーター槽140の温度は、90〜180℃が好ましく、100〜170℃がより好ましく、105〜160℃がさらに好ましい。ヒーター槽140の温度を上記下限値以上とすることで、二次発泡シート105の成形性を高められる。ヒーター槽140の温度を上記上限値以下とすることで、結晶性樹脂の過度な結晶化を抑制できる。
このとき積層発泡シート104の表面温度を105〜140℃にすることが好ましく、110〜135℃にすることがより好ましく、115〜130℃にすることがさらに好ましい。積層発泡シート104の表面温度を上記下限値以上とすることで、積層発泡シート104を充分に軟化でき、二次発泡シート105の成形性を高められる。積層発泡シート104の表面温度を上記上限値以下とすることで、結晶性樹脂の過度な結晶化を抑制でき、二次発泡シート105の成形性を高められる。
予熱工程における積層発泡シート104の予熱時間は、10〜90秒が好ましく、20〜85秒がより好ましく、30〜80秒がさらに好ましい。予熱時間を上記下限値以上とすることで、積層発泡シート104を充分に軟化でき、二次発泡シート105の成形性を高められる。予熱時間を上記上限値以下とすることで、結晶性樹脂の過度な結晶化を抑制でき、二次発泡シート105の成形性を高められる。
【0026】
予熱工程では、シート搬送機180の幅間隔を変更できる機構にすることが好ましい。
予熱工程では、予備加熱により二次発泡シート105が軟化し、寸法変化が生じる。この寸法変化をシート搬送機180の幅間隔を変更することで調整し、二次発泡シート105の幅方向の長さを規制する。
より具体的には、シート搬送機180の幅間隔を積層発泡シート104のシート幅に仮に設定しておき、試験運転で二次発泡シート105の軟化による寸法変化を確認する。確認した寸法変化と、仮に設定したシート搬送機180の幅間隔との間にズレが生じた場合、シート搬送機180の幅間隔を仮に設定した幅間隔から変更する。このように調整することで、実際の寸法変化とシート搬送機180の幅間隔との間のズレを解消できる。
実際の寸法変化とシート搬送機180の幅間隔との間のズレを解消することで、所望の大きさ、形状の容器を加熱成形できる。
予備加熱された二次発泡シート105は、シート搬送機180によって、成形金型150に供給される。
【0027】
<成形工程>
成形工程は、二次発泡シート105を成形金型150で加熱成形して発泡成形シート106を得る工程である。
成形工程における成形方法としては、例えば、真空成形又は圧空成形が挙げられ、中でも圧空成形が好ましい。真空成形又は圧空成形としては、プラグ成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形等が挙げられる。
【0028】
成形工程では、成形金型150の温度は、130〜200℃が好ましく、140〜195℃がより好ましく、160〜190℃がさらに好ましい。成形金型150の温度を上記下限値以上とすることで、結晶化樹脂の結晶化度を高めることができる。成形金型150の温度を上記上限値以下とすることで、結晶化樹脂の過度な結晶化を抑制できる。
成形工程では、加熱成形の時間は、4〜15秒間が好ましく、5〜13秒間がより好ましく、6〜12秒間がさらに好ましい。加熱成形の時間を上記下限値以上とすることで、結晶化樹脂の結晶化度を高めることができる。加熱成形の時間を上記上限値以下とすることで、発泡容器の生産性を高めることができる。
【0029】
圧空成形の場合、成形金型150として160〜200℃に加熱した雄型152及び雌型154を用い、雄型152側から圧縮空気を供給して、二次発泡シート105を雌型154に4〜15秒間密着させることが好ましい。
二次発泡シート105を雌型154に密着させることで、結晶化樹脂の結晶化度を充分に高めることができる。
二次発泡シート105の結晶化樹脂の結晶化度を充分に高める観点から、成形工程における成形金型150の温度は、予熱工程におけるヒーター槽140の温度よりも高いことが好ましい。
【0030】
成形工程から空冷工程にかけては、シート搬送機180の幅間隔を変更できる機構を備える。
シート搬送機180の幅間隔は、成形金型150の入り口では、二次発泡シート105の幅に設置されている。シート搬送機180の幅間隔は、成形金型150の出口から冷却槽160の入り口にかけて、発泡成形シート106の搬送方向(X方向)に進むに連れて発泡成形シート106を幅方向(Y方向)に拡張した幅に設置されている。
成形工程で加熱成形された発泡成形シート106は、寸法変化が生じる。この寸法変化をシート搬送機180の幅間隔を変更することで調整し、発泡成形シート106の幅方向の長さを規制する。
成形工程からトリミング工程へ搬送される間に、発泡成形シート106は収縮する。このため、トリミングの抜き刃に対して想定される収縮率を加味して、成形金型は予め寸法を大きく作成されている。しかしながら、発泡成形シート106の収縮率が想定した収縮率と異なることがあり、これによりトリミング工程で抜きズレと呼ばれる位置ズレを起こす場合がある。この抜きズレを防ぐために、成形工程から空冷工程にかけて、シート搬送機180の幅間隔を広げたり狭めたりして調整している。このように調整することで、実際の寸法変化と想定した収縮率との間のズレを解消できる。
実際の寸法変化と想定した収縮率との間のズレを解消することで、所望の大きさ、形状の容器を加熱成形できる。
所望の大きさ、形状の容器が加熱成形された発泡成形シート106は、シート搬送機180によって、冷却槽160に供給される。
【0031】
<空冷工程>
空冷工程は、発泡成形シート106を空冷する工程である。空冷工程では、任意の温度に調整した空間(冷却槽160)内に発泡成形シート106を供給し、通過させることで、発泡成形シート106の表面温度が結晶性樹脂の軟化点以下になるまで冷却する。結晶性樹脂の軟化点は、例えば、結晶性樹脂がPETの場合、70℃である。
空冷工程における冷却速度は、10℃/sec以上であり、10〜100℃/secが好ましく、15〜80℃/secがより好ましく、20〜60℃/secがさらに好ましい。
なお、本明細書において、「冷却速度」は、下記式(1)で表される。
冷却速度(℃/sec)={(成形金型を出た直後の発泡成形シートの表面温度)−(結晶性樹脂の軟化点)(℃)}/(発泡成形シートが成形金型を出てから、発泡成形シートの表面温度が結晶性樹脂の軟化点になるまでに要する時間(sec))・・・(1)
冷却速度が上記下限値以上であると、結晶性樹脂の過度な結晶化を抑制でき、発泡成形シート106の脆性を良好にしやすい。発泡成形シート106の脆性が良好であると、発泡容器107が低温時に破損しにくい。冷却速度が上記上限値以下であると、発泡成形シート106に与える負荷を軽減できる。
空冷工程では、冷却速度を高めることで、発泡成形シート106を放冷した場合に比べて、結晶性樹脂の過度な結晶化を抑制できる。このため、発泡成形シート106の脆性を良好にしやすく、低温時に破損しにくい発泡容器107が得られる。
また、空冷工程では、冷却金型を用いないため、成形金型150との型ズレによる2重線の形成を防止できる。このため、2重線のない、外観の良好な発泡容器107が得られる。
【0032】
冷却槽160の上記任意の温度(調整温度)は、特に限定されないが、例えば、−50〜30℃が好ましく、−20〜30℃がより好ましく、0〜30℃がさらに好ましい。調整温度が上記下限値以上であると、発泡成形シート106に与える負荷を軽減できる。調整温度が上記上限値以下であると、結晶性樹脂の過度な結晶化を抑制しやすい。
【0033】
空冷工程では、発泡成形シート106の表面温度が結晶性樹脂の軟化点以下になるまで空気等の気体を用いて冷却すればよく、発泡成形シート106を空冷する方法は特に限定されない。発泡成形シート106を空冷する方法としては、上述した冷却槽160内に発泡成形シート106を供給し、発泡成形シート106を通過させる方法のほか、発泡成形シート106に冷却した空気を吹き付ける方法、発泡成形シート106に冷却した窒素ガスを吹き付ける方法等が挙げられる。
発泡成形シート106をより効率よく冷却できる観点から、発泡成形シート106を空冷する方法としては、発泡成形シート106に冷却した空気を吹き付ける方法が好ましい。
発泡成形シート106に冷却した空気を吹き付ける方法としては、発泡成形シート106の搬送方向に沿ってX方向の向きに冷却した空気を吹き付ける方法がより好ましく、上部冷却槽160Aと下部冷却槽160Bとの双方から搬送方向に沿ってX方向の向きに冷却した空気を吹き付ける方法がさらに好ましい。上部冷却槽160Aと下部冷却槽160Bとの双方から発泡成形シート106に冷却した空気を吹き付ける場合、上部冷却槽160Aから吹き付ける空気の温度が、下部冷却槽160Bから吹き付ける空気の温度よりも低い温度に調整することが特に好ましい。上部冷却槽160Aから吹き付ける空気の温度を下部冷却槽160Bから吹き付ける空気の温度よりも低い温度に調整することで、冷却槽160の内部の空気の対流によって、発泡成形シート106をより効率よく冷却できる。
空冷工程における冷却速度は、調整温度、吹き付ける空気の温度及び吹き付ける空気の風量等を制御することにより調整できる。
【0034】
空冷工程では、発泡成形シート106の幅方向の長さを規制しつつ、空冷することが好ましい。空冷工程では、熱せられた発泡成形シート106が急激に冷却されるため、収縮による寸法変化が生じる。この寸法変化をシート搬送機180の幅間隔を変更することで調整し、発泡成形シート106の幅方向の長さを規制する。
より具体的には、シート搬送機180の幅間隔を仮に設定しておき、試験運転で発泡成形シート106の収縮による寸法変化を確認する。確認した寸法変化と、仮に設定したシート搬送機180の幅間隔との間にズレが生じた場合、シート搬送機180の幅間隔を仮に設定した幅間隔から変更する。このように調整することで、実際の寸法変化とシート搬送機180の幅間隔との間のズレを解消できる。
このように、発泡成形シート106の幅方向の長さを規制しつつ空冷することで、調整した幅間隔のまま発泡成形シート106が冷やされ、固められる。このため、成形金型の寸法と、裁断機170の抜き刃の位置とのズレを解消できる。加えて、発泡成形シート106の結晶化を止め、所望の結晶化度を有する発泡容器107を得られやすくできる。
空冷工程で空冷された発泡成形シート106は、シート搬送機180によって、裁断機170に供給される。
【0035】
<トリミング工程>
トリミング工程は、空冷された発泡成形シート106から容器を切り出す工程である。トリミング工程により、所望の形状の発泡容器107が得られる。
裁断機170に供給された発泡成形シート106は、加熱成形された容器の形状を有する。裁断機170の抜き刃によって、加熱成形された容器の形状を切り出す。上述のように、発泡成形シート106の幅方向の長さを規制しつつ空冷することで、加熱成形された容器の形状が、裁断機170の抜き刃の位置からずれない。このため、所望の形状の発泡容器107が得られやすい。加えて、空冷工程により、発泡成形シート106の結晶化が止められているため、結晶性樹脂の過度な結晶化を抑制でき、脆性が改善され、低温時に破損しにくい発泡容器107が得られる。
発泡容器107が切り出された後のシートは、巻取機(不図示)に巻き取られて廃棄される。発泡容器107が切り出された後のシートは、発泡シート101の原料として、再利用されてもよい。
【0036】
トリミング工程では、一回の切り出し操作で1個の発泡容器を得てもよく、一回の切り出し操作で2個以上の発泡容器を得てもよい。
図1、
図2に示すように、本実施形態では、一回の切り出し操作で6個の発泡容器が得られる。
一回の切り出し操作で得られる発泡容器の数は、例えば、2〜20個が好ましく、3〜15個がより好ましく、4〜10個がさらに好ましい。
一回の切り出し操作で得られる発泡容器の数が上記下限値以上であると、発泡容器の生産性を高められる。一回の切り出し操作で得られる発泡容器の数が上記上限値以下であると、発泡容器の外観を良好にしやすい。
【0037】
以上の工程により、所望の形状、所望の大きさに成形され、所望の結晶化度を有する発泡容器107が得られる。
【0038】
次に、本実施形態の発泡容器の製造方法に用いられる発泡シートについて説明する。
【0039】
[発泡シート]
図3は、発泡シートの一例を示す断面図である。
図3の発泡シート200は、発泡層10の一方の面に位置する第一の非発泡層20と、発泡層10の他方の面に位置する第二の非発泡層22とを備える。すなわち、本実施形態の発泡シート200は、発泡層10の両面に非発泡層が設けられた積層発泡シートである。
発泡シート200において、発泡層10は発泡シート101から形成され、第一の非発泡層20は第一の樹脂フィルム102から形成され、第二の非発泡層22は第二の樹脂フィルム103から形成される。
【0040】
発泡シート200の厚さT
200は、例えば、0.3〜5.0mmが好ましく、0.4〜4.5mmがより好ましく、0.5〜4.0mmがさらに好ましい。発泡シート200の厚さT
200が上記下限値以上であると、発泡容器の強度をより高められる。発泡シート200の厚さT
200が上記上限値以下であると、発泡容器の結晶化度を高めやすく、その結果、発泡容器の耐熱性をより高められる。
なお、発泡シート200の厚さT
200は、以下の方法で求められる値である。発泡シート200の幅方向の任意の10点の厚さをマイクロゲージで測定する。10点の測定値を平均して、発泡シート200の厚さT
200とする。
【0041】
発泡シート200の坪量は、100〜1200g/m
2が好ましく、200〜1000g/m
2がより好ましく、300〜800g/m
2がさらに好ましい。発泡シート200の坪量が上記下限値以上であると、発泡容器の強度をより高められる。発泡シート200の坪量が上記上限値以下であると、発泡シート200の成形性を高めやすい。
なお、発泡シート200の坪量は、以下の方法で測定することができる。
発泡シート200の幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定する。各切片の質量(g)の平均値を1m
2当たりの質量に換算した値を、発泡シート200の坪量(g/m
2)とする。
【0042】
<発泡層>
発泡層10は、結晶性樹脂及び発泡剤を含む樹脂組成物から形成される。発泡シート200は、発泡層10を備えることで、断熱性及び耐衝撃性に優れる。
発泡層10内の気泡は、個々に独立した独立気泡でもよく、気泡同士がつながった連続気泡でもよい。発泡シート200の成形性を高める観点から、発泡層10内の気泡は、独立気泡であることが好ましい。
【0043】
発泡層10の独立気泡率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、100%でもよい。発泡層10の独立気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック−連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法により測定できる。
【0044】
発泡層10の発泡倍率は、例えば、1.5〜15倍が好ましく、2〜10倍がより好ましく、3〜8倍がさらに好ましい。発泡層10の発泡倍率が上記下限値以上であると、発泡容器の断熱性をより高められる。発泡層10の発泡倍率が上記上限値以下であると、発泡シート200の成形性を高めやすい。
発泡層10の発泡倍率は、1を「発泡層10の見掛け密度」で除した値である。
【0045】
発泡層10の平均気泡径は、例えば、80〜450μmが好ましい。発泡層10の平均気泡径は、ASTM D2842−69に記載の方法に準拠して測定できる。
【0046】
発泡層10を構成する結晶性樹脂は、加熱により結晶化する樹脂であればよい。結晶性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。発泡層10を構成する結晶性樹脂としては、耐熱性に優れる観点から、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0047】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンフラノエート樹脂(PEF)、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、テレフタル酸とエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの共重合体、及びこれらの混合物並びにこれらと他の樹脂との混合物等が挙げられる。また、植物由来のポリエチレンテレフタレート樹脂、植物由来のポリエチレンフラノエート樹脂、植物由来のポリトリメチレンテレフタレート樹脂が用いられてもよい。これらのポリエステル系樹脂は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。特に好ましいポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0048】
ポリエステル系樹脂としては、いわゆるバイオPET等、植物由来のポリエステル系樹脂でもよい。
植物由来のポリエステル系樹脂は、サトウキビ、トウモロコシ等の植物原料を由来とするポリマーである。「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたポリマーが挙げられる。また、例えば、「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたモノマーが重合されたポリマーが挙げられる。「植物原料から合成され又は抽出されたモノマー」には、植物原料から合成され又は抽出された化合物を原料とし合成されたモノマーが含まれる。植物由来のポリエステル系樹脂は、モノマーの一部が「植物原料を由来とする」ものを含む。
【0049】
植物由来のポリエステル系樹脂について、PET、PEFを例にして説明する。
【0050】
PETの合成反応を(I)式に示す。nモルのエチレングリコールとnモルのテレフタル酸(Benzen−1,4−dicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PETが合成される。この合成反応における化学量論上の質量比は、エチレングリコール:テレフタル酸=30:70(質量比)である。
【0051】
【化1】
[(I)式中、nは化学量論係数である。]
【0052】
エチレングリコールは、エチレンを酸化し、水和することで、工業的に製造される。また、テレフタル酸は、パラキシレンを酸化することで、工業的に製造される。
ここで、
図4に示すように、植物由来のエタノール(バイオエタノール)の脱水反応によりエチレンを得、このエチレンから合成されたエチレングリコール(バイオエタノール由来のエチレングリコール)と、石油化学品由来のテレフタル酸からPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来30質量%のPETである。
また、
図5に示すように、植物由来のイソブタノール(バイオイソブタノール)の脱水反応によりパラキシレンを得、このパラキシレンから合成したテレフタル酸と、バイオエタノール由来のエチレングリコールとからPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来100質量%のPETである。
【0053】
PEFの合成反応を(II)式に示す。nモルのエチレングリコールと、nモルのフランジカルボン酸(2,5−Furandicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PEFが合成される。
【0054】
【化2】
[(II)式中、nは化学量論係数である。]
【0055】
フランジカルボン酸(FDCA)は、例えば、植物由来のフルクトースやグルコースの脱水反応によってヒドロキシメチルフラール(HMF)を得、HMFを酸化して得られる。
図6に示すように、FDCA及びエチレングリコールの双方が植物由来の場合、製造されるPEFは、植物由来100質量%のPEFである。
【0056】
樹脂組成物は、結晶性樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。樹脂組成物が結晶性樹脂以外の他の樹脂を含有する場合、他の樹脂の含有量は、結晶性樹脂の総質量に対して50質量%未満が好ましく、30質量%未満がより好ましく、10質量%未満がさらに好ましい。
【0057】
発泡層10を構成する結晶性樹脂の重量平均分子量は、例えば、10万〜50万が好ましく、15万〜45万がより好ましく、20万〜40万がさらに好ましい。発泡層10を構成する結晶性樹脂の重量平均分子量が上記数値範囲内であると、発泡シート200の脆性を良好にしやすい。発泡シート200の脆性が良好であると、発泡容器が低温時に破損しにくい。
本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値を、標準試料として昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM−105」及び「STANDARD SH−75」を用いて得られる較正曲線に基づき換算した値である。
【0058】
結晶性樹脂の極限粘度(IV値)は、例えば、0.50〜1.50dl/gが好ましく、0.90〜1.10dl/gがより好ましい。結晶性樹脂のIV値が上記下限値以上であると、発泡しやすくなり押出によって発泡シート200が得られやすくなる。結晶性樹脂のIV値が上記上限値以下であると、平滑な発泡シート200が得られやすくなる。
IV値は、JIS K7367−5:2000に記載の方法に準じて測定できる。
【0059】
発泡層10の厚さT
10は、例えば、0.25〜4.5mmが好ましく、0.35〜4.0mmがより好ましく、0.45〜3.5mmがさらに好ましい。発泡層10の厚さT
10が上記下限値以上であると、発泡容器の強度をより高められる。発泡層10の厚さT
10が上記上限値以下であると、発泡容器の耐熱性をより高められる。
発泡層10の厚さT
10は、発泡シート200の厚さT
200と同様の方法により求められる。
【0060】
発泡層10の坪量は、例えば、250〜900g/m
2が好ましく、250〜800g/m
2がより好ましく、300〜700g/m
2がさらに好ましい。発泡層10の坪量が上記下限値以上であると、発泡容器の強度をより高められる。発泡層10の坪量が上記上限値以下であると、発泡シート200の成形性を高めやすい。
発泡層10の坪量は、発泡シート200の坪量と同様の方法により求められる。
【0061】
発泡層10を形成する樹脂組成物は、発泡剤を含有する。発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン等のフロン、二酸化炭素、窒素等が挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素、窒素が好ましい。
発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
発泡剤の含有量は、特に限定されないが、結晶性樹脂100質量部に対して、例えば、0.1〜10質量部が好ましい。
【0063】
発泡層10は、結晶性樹脂以外にその他成分(任意成分)を含有していてもよい。
任意成分としては、結晶性樹脂以外の樹脂成分、気泡調整剤、界面活性剤、着色剤、収縮防止剤、難燃剤、滑剤、劣化防止剤等が挙げられる。
気泡調整剤としては、タルク、四フッ化エチレン樹脂等が挙げられる。
【0064】
<非発泡層>
第一の非発泡層20は、実質的に気泡が形成されていない層である。
発泡シート200は、発泡層10の一方の面に位置する第一の非発泡層20を備えることにより、発泡層10の表面の凹凸を隠蔽し、外観を良好にしやすい。加えて、第一の非発泡層20の表面に印刷層(不図示)を形成しやすく、印刷層が形成されることで、発泡シート200を着色及び装飾できるため、外観を良好にしやすい。
【0065】
第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂としては、発泡層10を構成する結晶性樹脂と同様の種類の結晶性樹脂が挙げられる。
層間剥離が発生しにくい観点から、第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂は、発泡層10を構成する結晶性樹脂と同種の結晶性樹脂であることが好ましい。
第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂と、発泡層10を構成する結晶性樹脂とは、異なる種類の結晶性樹脂であってもよい。
【0066】
第一の非発泡層20の厚さT
20は、例えば、10〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましく、20〜100μmがさらに好ましい。第一の非発泡層20の厚さT
20が上記下限値以上であると、発泡シート200の外観を良好にしやすい。第一の非発泡層20の厚さT
20が上記上限値以下であると、発泡シート200の成形性を高めやすい。
第一の非発泡層20の厚さT
20は、例えば、発泡シート200の厚さ方向の切断面を顕微鏡で観察し、任意の10点の厚さを測定した測定値を平均して求めることができる。
【0067】
第二の非発泡層22は、実質的に気泡が形成されていない層である。
発泡シート200は、発泡層10の他方の面に第二の非発泡層22を備えることで、発泡層10の表面の凹凸を隠蔽し、外観を良好にしやすい。加えて、発泡シート200は、発泡層10の両面に第一の非発泡層20及び第二の非発泡層22を備えることで、平面性を保持しやすく、反りを抑制できるため、成形性を向上しやすい。
【0068】
第二の非発泡層22を構成する結晶性樹脂としては、第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂と同様の種類の結晶性樹脂が挙げられる。
層間剥離が発生しにくい観点から、第二の非発泡層22を構成する結晶性樹脂は、発泡層10を構成する結晶性樹脂と同種の結晶性樹脂であることが好ましい。
第二の非発泡層22を構成する結晶性樹脂と、発泡層10を構成する結晶性樹脂とは、異なる種類の結晶性樹脂であってもよい。
第二の非発泡層22を構成する結晶性樹脂と、第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂とは、同種の結晶性樹脂でもよく、異なる種類の結晶性樹脂であってもよい。
【0069】
第二の非発泡層22の厚さT
22は、第一の非発泡層20の厚さT
20と同様である。
第二の非発泡層22の厚さT
22は、第一の非発泡層20の厚さT
20と同様の方法で測定できる。
【0070】
発泡シート200は、発泡層10の両面に第一の非発泡層20及び第二の非発泡層22を備えるが、発泡シートの形態はこれに限定されない。
発泡シートは、発泡層の一方の面のみに非発泡層を備える形態でもよく、発泡層のみの単層シートであってもよい。
発泡シートは、成形性に優れ、外観を良好にしやすい観点から、発泡層の両面に非発泡層を備える形態が好ましい。
【0071】
[発泡シートの製造方法]
発泡シートは、結晶性樹脂及び発泡剤を含む樹脂組成物を発泡し、硬化することで得られる。
かかる発泡シートの好適な製造方法としては、公知の発泡シートの製造方法を採用できる。
【0072】
[結晶性樹脂発泡容器]
次に、本実施形態の発泡容器の製造方法で得られる発泡容器について説明する。
発泡容器は、上述した本実施形態の発泡シートを加熱成形してなるものである。
発泡容器の形状は特に限定されず、例えば、平面視形状が真円形、楕円形、半円形、多角形、扇形等のトレー、丼形状の容器、有底円筒状又は有底角筒状等の容器、納豆用容器等の蓋付容器等の種々の容器、容器本体に装着される蓋体等が挙げられる。
これらの発泡容器の用途としては、例えば、家電包装容器、機械部品包装容器、食品包装容器等が挙げられる。
これらの発泡容器は、特に、食品包装容器として有用なものである。本実施形態の発泡容器の製造方法で得られる発泡容器は、耐熱性に優れるため、電子レンジやオーブンで加熱して使用される発泡容器が好ましい。
さらに、本実施形態の発泡容器の製造方法で得られる発泡容器は、低温時に破損しにくいため、グラタンやラザニア等のように焼き目をつけ、冷蔵又は冷凍で流通した後、電子レンジやオーブンで加熱して喫食する食品の冷凍レンジアップ容器として、特に好ましい。
なお、冷凍レンジアップとは、冷凍された食品を、電子レンジやオーブンで加熱して調理することをいう。
【0073】
発泡容器の一例について、
図7を用いて説明する。
図7に示すように、発泡容器107は、平面視で楕円形の底壁1と、底壁1の周縁から立ち上がり、底壁1を囲む略円筒状の側壁2とを有し、側壁2の上端で囲まれた開口部7が形成された容器本体8を備える。側壁2は開口部7から底壁1に向かうに従い窄まっている。開口部7は平面視において、X1方向を長手、Y1方向を短手とする楕円形である。
本実施形態では、側壁2の上端に、開口部7の外方に張り出すフランジ部3を有する。フランジ部3は開口部7を周回しており、長手方向X1の両側に張り出したつまみ部3Aが形成されている。
また、底壁1の中央に平面視で楕円形の底壁補強部4を有する。側壁2に断面形状が波状の側壁補強部5を有する。
発泡容器107は、グラタン等を収納し、電子レンジやオーブンで加熱して喫食する食品のレンジアップ容器として用いられる。
【0074】
発泡容器107において、長手方向の長さL1は215〜230mmが好ましい。短手方向の長さW1は130〜150mmが好ましい。高さH1は30〜45mmが好ましい。
【0075】
図8は
図7の発泡容器107のA−A断面図である。
図8に示すように、底壁1と側壁2との間のコーナー部6は、断面形状が円弧状であることが好ましい。
図7及び
図8に示すように、底壁補強部4は、平面視楕円形の中央部が窪んだ凹状である。楕円形状の底壁1の外周部は底壁補強部4と同様に凹状であり、底壁補強部4と同様に設置面と接している。
底壁補強部4から底壁1までの高さh1は4〜7mmが好ましい。底壁補強部4は接地面に接していなくても良い。
側壁補強部5は、
図7のように連続して形成されていてもよく、分断して形成されていてもよい。側壁補強部5の断面は、波状であることが好ましい。
【0076】
なお、本実施形態の発泡容器107は、平面視で楕円形であるが、本発明はこれに限定されない。発泡容器の平面視形状は、真円形でもよいし多角形でもよい。
【0077】
発泡容器107において、発泡層10の結晶化度は、例えば、21%〜30%が好ましく、21%〜27%がより好ましい。発泡層10の結晶化度が上記下限値以上であると、発泡容器107の耐熱性が高められる。発泡層10の結晶化度が上記上限値以下であると、低温時に、より破損しにくい発泡容器107が得られる。
なお、結晶化度は、下記式(2)により算出できる。
結晶化度(%)={(融解熱量の絶対値(J/g)−結晶化熱量の絶対値(J/g))÷完全結晶化熱量(J/g)}×100・・・(2)
ここで、融解熱量、結晶化熱量はJIS K7122:2012「プラスチックの転移熱測定方法」に従い測定した示差走査熱量測定(DSC)曲線から求めることができる。
【0078】
本明細書において算出される結晶化度とは、融熱ピークの面積から求められる融解熱量(J/g)と結晶化ピークの面積から求められる結晶化熱量(J/g)との差を、樹脂の完全結晶の理論融解熱量で除して求められる値である。融解熱量及び結晶化熱量は、DSC装置付属の解析ソフトを用いて算出することができる。
完全結晶化熱量は、100%結晶化した場合の熱量を表す。なお、ポリエチレンテレフタレート(PET)の完全結晶化熱量は、140.1J/gである。
発泡容器107の結晶化度は、積層発泡シート104の成形条件によって調整できる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0080】
(発泡シートの製造)
結晶性樹脂としてIV値1.04のPET樹脂を100質量部と、気泡調整剤としてタルク1.0質量部と、架橋剤として無水ピロメリット酸(ダイセル社製)0.2質量部とを100℃で4時間乾燥した。乾燥後の原料をφ90mmの押出機に入れ、押出機に窒素ガスを圧入し、混練した。PET樹脂を溶融する温度(設定温度)を285℃とし、口径φ135mmのサーキュラーダイから押し出し、マンドレルで冷却しながら切り裂いて、単層の発泡シートを得た。得られた発泡シートは、厚さ0.75mm、坪量は330g/m
2、発泡倍率2.27倍であった。
【0081】
(積層発泡シートの製造)
得られた発泡シートの両方の面に非発泡層として厚さが25μmのPETフィルムを重ね、熱ラミネートにて120℃で2.0/min圧着して、積層発泡シートを得た。
【0082】
[実施例1、比較例1〜2]
得られた積層発泡シートを150℃のヒーターで90秒間加熱して、積層発泡シートの表面温度を125℃とした(二次発泡シート)。雄型側から圧縮空気を供給して、雌型に二次発泡シートを密着させた。その後、雄型と雌型とを6秒間閉じて、180℃で真空圧空成形を行って発泡成形シートを得た。得られた発泡成形シートを表1に記載の冷却条件で冷却し、トリミングすることで各例の発泡容器を得た。
得られた発泡容器の形状は、
図7の発泡容器107と同様の形状であった。得られた発泡容器の大きさは、
図7のL1が222mmで、
図7のW1が140mmで、
図8のH1が37mmであった。
【0083】
得られた発泡容器について、以下の評価方法に示す成形性、耐熱性、低温脆性を評価した。結果を表1に示す。
【0084】
[成形性の評価]
得られた発泡容器の表面の外観を目視で観察し、下記評価基準に基づいて成形性を評価した。外観が良好であれば、成形性に優れる。
《評価基準》
○:発泡容器の表面に皺や2重線がなく、外観が良好である。
×:発泡容器の表面に皺や2重線がある。
【0085】
[耐熱性の評価]
得られた発泡容器の長径(
図7のL1)の寸法をノギスで測定し、その後200℃のオーブンで10分間加熱して焼成した。その後、該容器を取り出し、再度長径の寸法を測定し、加熱前後の寸法変化を下記式(3)で計算した。得られた値を焼成後の寸法変化率(%)とし、下記評価基準に基づいて耐熱性を評価した。寸法変化率の絶対値が小さいほど、発泡容器は耐熱性に優れる。
焼成後の寸法変化率(%)={(加熱後の長径の寸法)−(加熱前の長径の寸法)}/(加熱前の長径の寸法)×100・・・(3)
《評価基準》
○:寸法変化率の絶対値が2.0%以下。
△:寸法変化率の絶対値が2.0%超3.0%以下。
×:寸法変化率の絶対値が3.0%超。
【0086】
[低温脆性の評価]
得られた発泡容器に200gの水を入れ、−25℃の冷凍室で12時間養生して凍らせて試験体とした。冷凍室内で試験体の底壁を下にして鉄板面に水平落下させ、発泡容器が破損する落下高さ(破損高さ)を確認し、下記評価基準に基づいて低温脆性を評価した。なお、試験体を水平落下させる高さは、10cm、20cm、30cm、40cm、50cm、60cmとした。破損高さが高いほど、発泡容器は低温脆性が良好である。低温脆性が良好な発泡容器は、低温時に破損しにくい。
《評価基準》
○:破損高さが50cm以上。
△:破損高さが40cm以上50cm未満。
×:破損高さが40cm未満。
【0087】
【表1】
【0088】
本発明を適用した実施例1は、成形性、耐熱性、低温脆性いずれの評価も「○」であった。
一方、冷却金型を使用した比較例1は、成形性が「×」だった。冷却速度が本発明の範囲外である比較例2は、低温脆性が「×」だった。
【0089】
これらの結果から、本発明の結晶性樹脂発泡容器の製造方法によれば、外観が良好で、耐熱性に優れ、かつ、低温時に破損しにくい結晶性樹脂発泡容器が得られることが分かった。