【解決手段】発泡層10と、発泡層10の少なくとも一方の面に位置する非発泡層20と、を備え、非発泡層20を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量が、発泡層10を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量よりも小さい、結晶性樹脂発泡シート1。発泡層10を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量と、非発泡層20を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量との差が10万以上であることが好ましい。
前記発泡層を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量と、前記非発泡層を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量との差が10万以上である、請求項1に記載の結晶性樹脂発泡シート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[結晶性樹脂発泡シート]
本発明の結晶性樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう。)は、発泡層と、発泡層の少なくとも一方の面に位置する非発泡層と、を備える。
以下、本発明の発泡シートの一例について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る発泡シートの断面図である。
図1の発泡シート1は、発泡層10の一方の面に位置する非発泡層20(第一の非発泡層)と、発泡層10の他方の面に位置する非発泡層22(第二の非発泡層)とを備える。すなわち、本実施形態の発泡シート1は、発泡層10の両面に非発泡層20、22が設けられている。
【0013】
発泡シート1の厚さT
1は、例えば、0.3〜5.0mmが好ましく、0.4〜4.5mmがより好ましく、0.5〜4.0mmがさらに好ましい。発泡シート1の厚さT
1が上記下限値以上であると、後述する結晶性樹脂発泡容器(以下、単に「発泡容器」ともいう。)の強度をより高められる。発泡シート1の厚さT
1が上記上限値以下であると、発泡シート1の成形性を高めやすい。
なお、発泡シート1の厚さT
1は、以下の方法で求められる値である。発泡シート1のTD方向(幅方向)の任意の10点の厚さをマイクロゲージで測定する。10点の測定値を平均して、発泡シート1の厚さT
1とする。
【0014】
発泡シート1の坪量は、100〜1200g/m
2が好ましく、200〜1000g/m
2がより好ましく、300〜800g/m
2がさらに好ましい。発泡シート1の坪量が上記下限値以上であると、発泡容器の強度をより高められる。発泡シート1の坪量が上記上限値以下であると、発泡シート1の成形性を高めやすい。
なお、発泡シート1の坪量は、以下の方法で測定することができる。
発泡シート1の幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定する。各切片の質量(g)の平均値を1m
2当たりの質量に換算した値を、発泡シート1の坪量(g/m
2)とする。
【0015】
<発泡層>
発泡層10は、加熱により結晶化する樹脂(結晶性樹脂)及び発泡剤を含む樹脂組成物から形成される。発泡シート1は、発泡層10を備えることで、断熱性及び耐衝撃性に優れる。
発泡層10内の気泡は、個々に独立した独立気泡でもよく、気泡同士がつながった連続気泡でもよい。発泡シート1の成形性を高める観点から、発泡層10内の気泡は、独立気泡であることが好ましい。
【0016】
発泡層10の独立気泡率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、100%でもよい。発泡層10の独立気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック−連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法により測定できる。
【0017】
発泡層10の発泡倍率は、例えば、1.5〜15倍が好ましく、2〜10倍がより好ましく、3〜8倍がさらに好ましい。発泡層10の発泡倍率が上記下限値以上であると、発泡容器の断熱性をより高められる。発泡層10の発泡倍率が上記上限値以下であると、発泡シート1の成形性を高めやすい。
発泡層10の発泡倍率は、1を「発泡層10の見掛け密度」で除した値である。
【0018】
発泡層10の平均気泡径は、例えば、80〜450μmが好ましい。発泡層10の平均気泡径は、ASTM D2842−69に記載の方法に準拠して測定できる。
【0019】
発泡層10を構成する結晶性樹脂は、加熱により結晶化する樹脂であればよい。結晶性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。発泡層10を構成する結晶性樹脂としては、耐熱性に優れる観点から、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0020】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンフラノエート樹脂(PEF)、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、テレフタル酸とエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの共重合体、及びこれらの混合物並びにこれらと他の樹脂との混合物等が挙げられる。また、植物由来のポリエチレンテレフタレート樹脂、植物由来のポリエチレンフラノエート樹脂、植物由来のポリトリメチレンテレフタレート樹脂が用いられてもよい。これらのポリエステル系樹脂は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。特に好ましいポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0021】
ポリエステル系樹脂としては、いわゆるバイオPET等、植物由来のポリエステル系樹脂でもよい。
植物由来のポリエステル系樹脂は、サトウキビ、トウモロコシ等の植物原料を由来とするポリマーである。「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたポリマーが挙げられる。また、例えば、「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたモノマーが重合されたポリマーが挙げられる。「植物原料から合成され又は抽出されたモノマー」には、植物原料から合成され又は抽出された化合物を原料とし合成されたモノマーが含まれる。植物由来のポリエステル系樹脂は、モノマーの一部が「植物原料を由来とする」ものを含む。
【0022】
植物由来のポリエステル系樹脂について、PET、PEFを例にして説明する。
【0023】
PETの合成反応を(I)式に示す。nモルのエチレングリコールとnモルのテレフタル酸(Benzen−1,4−dicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PETが合成される。この合成反応における化学量論上の質量比は、エチレングリコール:テレフタル酸=30:70(質量比)である。
【0024】
【化1】
[(I)式中、nは化学量論係数である。]
【0025】
エチレングリコールは、エチレンを酸化し、水和することで、工業的に製造される。また、テレフタル酸は、パラキシレンを酸化することで、工業的に製造される。
ここで、
図2に示すように、植物由来のエタノール(バイオエタノール)の脱水反応によりエチレンを得、このエチレンから合成されたエチレングリコール(バイオエタノール由来のエチレングリコール)と、石油化学品由来のテレフタル酸からPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来30質量%のPETである。
また、
図3に示すように、植物由来のイソブタノール(バイオイソブタノール)の脱水反応によりパラキシレンを得、このパラキシレンから合成したテレフタル酸と、バイオエタノール由来のエチレングリコールとからPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来100質量%のPETである。
【0026】
PEFの合成反応を(II)式に示す。nモルのエチレングリコールと、nモルのフランジカルボン酸(2,5−Furandicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PEFが合成される。
【0027】
【化2】
[(II)式中、nは化学量論係数である。]
【0028】
フランジカルボン酸(FDCA)は、例えば、植物由来のフルクトースやグルコースの脱水反応によってヒドロキシメチルフラール(HMF)を得、HMFを酸化して得られる。
図4に示すように、FDCA及びエチレングリコールの双方が植物由来の場合、製造されるPEFは、植物由来100質量%のPEFである。
【0029】
樹脂組成物は、結晶性樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。樹脂組成物が結晶性樹脂以外の他の樹脂を含有する場合、他の樹脂の含有量は、結晶性樹脂の総質量に対して50質量%未満が好ましく、30質量%未満がより好ましく、10質量%未満がさらに好ましい。
【0030】
結晶性樹脂の極限粘度(IV値)は、例えば、0.5〜1.50dl/gが好ましく、0.90〜1.10dl/gがより好ましい。結晶性樹脂のIV値が上記下限値以上であると、発泡しやすくなり押出によって発泡シート1が得られやすくなる。結晶性樹脂のIV値が上記上限値以下であると、平滑な発泡シート1が得られやすくなる。
IV値は、JIS K7367−5:2000に記載の方法に準じて測定できる。
【0031】
発泡層10を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量は、例えば、10万〜50万が好ましく、15万〜45万がより好ましく、20万〜40万がさらに好ましい。発泡層10を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量が上記数値範囲内であると、発泡シート1の脆性を良好にしやすい。
本明細書において、Z平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値を、標準試料として昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM−105」及び「STANDARD SH−75」を用いて得られる較正曲線に基づき換算した値である。
【0032】
発泡層10の厚さT
10は、例えば、0.25〜4.5mmが好ましく、0.35〜4.0mmがより好ましく、0.45〜3.5mmがさらに好ましい。発泡層10の厚さT
10が上記下限値以上であると、後述する発泡容器の強度をより高められる。発泡層10の厚さT
10が上記上限値以下であると、発泡シート1の成形性を高めやすい。
発泡層10の厚さT
10は、発泡シート1の厚さT
1と同様の方法により求められる。
【0033】
発泡層10の坪量は、例えば、250〜900g/m
2が好ましく、250〜800g/m
2がより好ましく、300〜700g/m
2がさらに好ましい。発泡層10の坪量が上記下限値以上であると、発泡容器の強度をより高められる。発泡層10の坪量が上記上限値以下であると、発泡シート1の成形性を高めやすい。
発泡層10の坪量は、発泡シート1の坪量と同様の方法により求められる。
【0034】
発泡層10は、発泡剤を含有する。発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン等のフロン、二酸化炭素、窒素等が挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素、窒素が好ましい。
発泡剤は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
発泡剤の含有量は、特に限定されないが、結晶性樹脂100質量部に対して、例えば、0.1〜10質量部が好ましい。
【0036】
発泡層10は、結晶性樹脂以外にその他成分(任意成分)を含有していてもよい。
任意成分としては、結晶性樹脂以外の樹脂成分、気泡調整剤、界面活性剤、着色剤、収縮防止剤、難燃剤、滑剤、劣化防止剤等が挙げられる。
気泡調整剤としては、タルク、四フッ化エチレン樹脂等が挙げられる。
【0037】
<非発泡層>
第一の非発泡層20は、発泡層10を構成する結晶性樹脂よりもZ平均分子量が小さい結晶性樹脂から構成される。第一の非発泡層20は、実質的に気泡が形成されていない層である。
発泡シート1は、発泡層10の一方の面に位置する第一の非発泡層20を備えることにより、発泡シート1の金型からの離型性を向上しやすい。
【0038】
第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量は、例えば、2万〜30万が好ましく、5万〜25万がより好ましく、10万〜20万がさらに好ましい。第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量が上記数値範囲内であると、発泡シート1の金型からの離型性を向上しやすい。
【0039】
発泡層10を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量と、第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量との差は、例えば、10万以上が好ましい。発泡層10を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量と、第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量との差が上記下限値以上であると、発泡シート1の成形性と金型からの離型性との両立を図りやすい。
発泡層10を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量と、第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量との差は、大きいほど効果が得られるが、上限値は、例えば、48万が好ましい。
Z平均分子量も結晶化速度を決める要素であるため、発泡層10を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量と、第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量との差を上記の関係にすることで、発泡層10を構成する結晶性樹脂よりも、第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂の結晶化度を高くすることができる。
【0040】
第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂としては、発泡層10を構成する結晶性樹脂と同様の種類の結晶性樹脂が挙げられる。
層間剥離が発生しにくい観点から、第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂は、発泡層10を構成する結晶性樹脂と同種の結晶性樹脂であることが好ましい。
第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂と、発泡層10を構成する結晶性樹脂とは、異なる種類の結晶性樹脂であってもよい。
【0041】
第一の非発泡層20の厚さT
20は、例えば、10〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましく、10〜100μmがさらに好ましい。第一の非発泡層20の厚さT
20が上記下限値以上であると、発泡シート1の金型からの離型性をより高められる。第一の非発泡層20の厚さT
20が上記上限値以下であると、発泡シート1の成形性を高めやすい。
第一の非発泡層20の厚さT
20は、例えば、発泡シート1の厚さ方向の切断面を顕微鏡で観察し、任意の10点の厚さを測定した測定値を平均して求めることができる。
【0042】
発泡層10と第一の非発泡層20との間には、印刷層(不図示)が形成されていてもよい。発泡層10と第一の非発泡層20との間に印刷層が形成されることで、発泡シート1を着色及び装飾できるため、外観意匠性を向上しやすい。
【0043】
第二の非発泡層22は、発泡層10を構成する結晶性樹脂よりもZ平均分子量が小さい結晶性樹脂から構成される。第二の非発泡層22は、実質的に気泡が形成されていない層である。
発泡シート1は、発泡層10の他方の面に第二の非発泡層22を備えることで、平面性を保持しやすく、反りを抑制できるため、成形性を向上しやすい。さらに、発泡シート1は、発泡層10の両面に第一の非発泡層20及び第二の非発泡層22を備えることで、発泡層10の表面の凹凸を隠蔽し、外観意匠性を向上しやすい。
【0044】
第二の非発泡層22を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量は、第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量と同様である。
発泡層10を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量と、第二の非発泡層22を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量との差は、発泡層10を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量と、第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量との差と同様である。
第二の非発泡層22を構成する結晶性樹脂としては、第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂と同様の種類の結晶性樹脂が挙げられる。
層間剥離が発生しにくい観点から、第二の非発泡層22を構成する結晶性樹脂は、発泡層10を構成する結晶性樹脂と同種の結晶性樹脂であることが好ましい。
第二の非発泡層22を構成する結晶性樹脂と、発泡層10を構成する結晶性樹脂とは、異なる種類の結晶性樹脂であってもよい。
第二の非発泡層22を構成する結晶性樹脂と、第一の非発泡層20を構成する結晶性樹脂とは、同種の結晶性樹脂でもよく、異なる種類の結晶性樹脂であってもよい。
【0045】
第二の非発泡層22の厚さT
22は、第一の非発泡層20の厚さT
20と同様である。
第二の非発泡層22の厚さT
22は、第一の非発泡層20の厚さT
20と同様の方法で測定できる。
【0046】
[結晶性樹脂発泡シートの製造方法]
発泡シートは、結晶性樹脂及び発泡剤を含む樹脂組成物を発泡し、硬化することで得られる。
かかる発泡シートの好適な製造方法としては、公知の発泡シートの製造方法を採用できる。
【0047】
[結晶性樹脂発泡容器]
本発明の結晶性樹脂発泡容器(以下、単に「発泡容器」ともいう。)は、上述した本発明の発泡シートを加熱成形してなるものである。
発泡容器の形状は特に限定されず、例えば、平面視形状が真円形、楕円形、半円形、多角形、扇形等のトレー、丼形状の容器、有底円筒状又は有底角筒状等の容器、納豆用容器等の蓋付容器等の種々の容器、容器本体に装着される蓋体等が挙げられる。
これらの発泡容器の用途としては、例えば、食品用が好ましく、冷蔵食品用又は冷凍食品用がより好ましい。
冷蔵食品用又は冷凍食品用の発泡容器としては、例えば、グラタンやラザニア等のように焼き目をつけ、冷蔵又は冷凍で流通した後、電子レンジやオーブンで加熱して喫食する食品の冷凍レンジアップ容器が挙げられる。
なお、冷凍レンジアップとは、冷蔵又は冷凍された食品を、電子レンジやオーブンで加熱して調理することをいう。
【0048】
本発明の発泡容器の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図5に示すように、発泡容器200は、平面視形状が真円形の丼形状の容器である。発泡容器200は、円形の底壁210と、底壁210の周縁から立ち上がる側壁220とを有する。発泡容器200には、側壁220の上端で囲まれた開口部230が形成されている。側壁220は上端に向かうに従い、外側に広がっている。側壁220の上端で囲まれた開口部230は、平面視真円形である。底壁210は、開口部230の方向に凸となる平面視真円形の凸部212と、凸部212を囲む円環状の凹部214とから形成されている。
発泡容器200は、グラタン等を収納し、電子レンジやオーブンで加熱して喫食する食品のレンジアップ容器として用いられる。
【0049】
なお、本実施形態の発泡容器200は、平面視で真円形であるが、本発明はこれに限定されない。発泡容器の平面視形状は、楕円形でもよいし多角形でもよい。
【0050】
[発泡容器の製造方法]
発泡容器の製造方法は、発泡シートを加熱成形して発泡容器を得る方法である。
例えば、発泡容器は、発泡シートを予備加熱する予熱工程、及び前記予熱工程後、発泡シートを金型で挟み、加熱成形する成形工程を含む製造方法で製造することができる。さらに、前記成形工程後、成形された前記発泡シートを冷却する冷却工程を含んでいてもよい。
【0051】
発泡容器の製造方法について、発泡層の片面に非発泡層を有する発泡シートを成形して発泡容器を得る発泡容器の製造方法を例にして説明する。
図6の発泡容器の製造装置100は、発泡シート101から積層発泡シート103を得、積層発泡シート103を成形して発泡容器104を得る装置である。製造装置100は、発泡シートロール110と、フィルムロール120と、ラミネート機130と、ヒーター槽140と、成形金型150と、冷却槽160と、裁断機170とを備える。
【0052】
<ラミネート工程>
ラミネート工程は、発泡シート101を積層発泡シート103とする工程である。
まず、発泡シートロール110から発泡シート101を繰り出す。発泡シート101は、発泡層からなる単層シートである。
次に、繰り出した発泡シート101の一方の面に非発泡層となる樹脂フィルム102を重ねる。樹脂フィルム102は、フィルムロール120から繰り出される。
発泡シート101に樹脂フィルム102を重ねたシートをラミネート機130に供給し、一対の加熱ロールで挟みつつ任意の温度で加熱して、発泡シート101と樹脂フィルム102とを圧着する。発泡シート101と樹脂フィルム102とを圧着する温度(圧着温度)は、例えば、140〜200℃が好ましく、160〜180℃がより好ましい。
発泡シート101と樹脂フィルム102とを加熱して圧着することにより、発泡層と非発泡層とを備える積層発泡シート103が得られる。
【0053】
<予熱工程>
予熱工程は、積層発泡シート103をヒーター槽140に投入して予備加熱し、積層発泡シート103を軟らかくする工程である。ヒーター槽140の温度は、90〜180℃が好ましく、100〜170℃がより好ましく、105〜160℃がさらに好ましい。ヒーター槽140の温度を上記下限値以上とすることで、積層発泡シート103をより成形しやすくできる。ヒーター槽140の温度を上記上限値以下とすることで、結晶性樹脂の過度な結晶化を抑制できる。
このとき積層発泡シート103の表面温度を105〜140℃にすることが好ましく、110〜135℃にすることがより好ましく、115〜130℃にすることがさらに好ましい。積層発泡シート103の表面温度を上記下限値以上とすることで、積層発泡シート103をより成形しやすくできる。積層発泡シート103の表面温度を上記上限値以下とすることで、積層発泡シート表面の結晶性樹脂の過度な結晶化を抑制できる。
予熱工程における積層発泡シート103の予熱時間は、10〜90秒が好ましく、20〜85秒がより好ましく、30〜80秒がさらに好ましい。予熱時間を上記下限値以上とすることで、積層発泡シート103をより成形しやすくできる。予熱時間を上記上限値以下とすることで、積層発泡シート表面の結晶性樹脂の過度な結晶化を抑制できる。
【0054】
積層発泡シート103において、発泡層の結晶化度は、例えば、4%〜15%が好ましく、5%〜10%がより好ましい。発泡層の結晶化度が上記下限値以上であると、発泡容器104の耐熱性が高められる。発泡層の結晶化度が上記上限値以下であると、積層発泡シート103の成形性に優れる。
積層発泡シート103において、非発泡層の結晶化度は、例えば、6%〜20%が好ましく、8%〜15%がより好ましい。非発泡層の結晶化度が上記下限値以上であると、積層発泡シート103の表面が粘着質になりにくく、成形金型150における金型からの離型性をより高められる。非発泡層の結晶化度が上記上限値以下であると、積層発泡シート103の表面が延びやすく、積層発泡シート103の成形性に優れる。
ここで、発泡層の結晶化度は、ヒーター槽140を出た直後の積層発泡シート103(以下、「二次発泡シート」ともいう。)に空気を吹き付けて、二次発泡シートを結晶化樹脂の軟化点以下まで急冷し、結晶化樹脂の結晶化を止めて測定される。
非発泡層の結晶化度は、発泡層の結晶化度と同様に測定される。
【0055】
本明細書において算出される結晶化度とは、融熱ピークの面積から求められる融解熱量(J/g)と結晶化ピークの面積から求められる結晶化熱量(J/g)との差を、樹脂の完全結晶の理論融解熱量で除して求められる値である(下記式(1)参照)。
結晶化度(%)={(融解熱量の絶対値(J/g)−結晶化熱量の絶対値(J/g))÷完全結晶化熱量(J/g)}×100・・・(1)
ここで、融解熱量、結晶化熱量はJIS K7122:2012「プラスチックの転移熱測定方法」に従い測定した示差走査熱量測定(DSC)曲線から求めることができる。
融解熱量及び結晶化熱量は、DSC装置付属の解析ソフトを用いて算出することができる。
完全結晶化熱量は、100%結晶化した場合の熱量を表す。なお、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂の完全結晶化熱量は、140.1J/gである。
二次発泡シートの結晶化度は、結晶性樹脂の種類、ヒーター槽140の温度等により調整できる。
【0056】
二次発泡シートにおいて、非発泡層の結晶化度と発泡層の結晶化度との比率(「非発泡層の結晶化度/発泡層の結晶化度」)は、1.4以上が好ましく、1.7以上がより好ましい。非発泡層の結晶化度と発泡層の結晶化度との比率が上記下限値以上であると、二次発泡シートの成形性と金型からの離型性との両立を図りやすい。
非発泡層の結晶化度と発泡層の結晶化度との比率は、大きいほど効果が得られるが、上限値は、例えば、3.0以下が好ましい。
【0057】
<成形工程>
成形工程は、予備加熱した積層発泡シート103(二次発泡シート)を成形金型150で挟み、さらに加熱して所望の形状の成形体を成形する工程である。
成形方法としては、例えば、真空成形又は圧空成形が挙げられ、中でも圧空成形が好ましい。真空成形又は圧空成形としては、プラグ成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形等が挙げられる。
【0058】
成形工程では、成形金型150の温度は、130〜200℃が好ましく、140〜195℃がより好ましく、160〜190℃がさらに好ましい。成形金型150の温度を上記下限値以上とすることで、結晶化樹脂の結晶化度を高めることができる。成形金型150の温度を上記上限値以下とすることで、結晶化樹脂の過度な結晶化を抑制できる。
成形工程では、加熱成形の時間は、4〜15秒間が好ましく、5〜13秒間がより好ましく、6〜12秒間がさらに好ましい。加熱成形の時間を上記下限値以上とすることで、結晶化樹脂の結晶化度を高めることができる。加熱成形の時間を上記上限値以下とすることで、発泡容器の生産性を高めることができる。
【0059】
圧空成形の場合、成形金型150として160〜200℃に加熱した雄型152及び雌型154を用い、雄型152側から圧縮空気を供給して、予備加熱した積層発泡シート103を雌型154に4〜15秒間密着させることが好ましい。
このとき、発泡シート101に比べてZ平均分子量の小さい樹脂フィルム102が雌型154側に密着する。樹脂フィルム102は結晶化度が高く、表面が粘着質になりにくい。このため、積層発泡シート103は、雌型154からの離型性に優れる。
なお、本実施形態では、積層発泡シート103は、発泡層の一方の面のみに非発泡層を有するが、発泡層の両面に非発泡層を有していてもよい。
成形工程における成形金型150の温度は、予熱工程におけるヒーター槽140の温度よりも高いことが好ましい。
【0060】
<冷却工程>
冷却工程は、成形された積層発泡シート103(以下、「発泡成形シート」ともいう。)を冷却する工程である。
冷却工程では、発泡成形シートを表面温度が50〜70℃になるまで冷却する。
冷却工程では、発泡成形シートを10〜60秒かけて、発泡成形シートの表面温度が50〜70℃になるまで冷却することが好ましい。冷却することにより、発泡成形シートの温度を結晶性樹脂の軟化点未満にして、結晶性樹脂の結晶化の進行を止めることで、所望の結晶化度にできる。
冷却工程では、発泡成形シートを冷却槽160に投入し、任意の温度、任意の風量の空気を発泡成形シートに吹き付けて冷却することが好ましい。発泡成形シートの結晶化度は、冷却槽160の温度、吹き付ける空気の温度、吹き付ける空気の風量等により調整できる。
【0061】
<トリミング工程>
トリミング工程は、冷却された発泡成形シートを切出して発泡容器104とする工程である。トリミング工程では、裁断機170によって所望のサイズに成形体を切出すことができる。
発泡容器104が切出された後のシートは、巻取機(不図示)に巻き取られて廃棄される。発泡容器104が切出された後のシートは、発泡シート101の原料として、再利用されてもよい。
【0062】
以上の工程により、所望のサイズ、所望の形状に成形された発泡容器104が得られる。
【0063】
本発明の発泡容器は、非発泡層を構成する樹脂のZ平均分子量が、隣接する発泡層を構成する樹脂のZ平均分子量よりも小さいため、表面の結晶化度が高く、金型からの離型性に優れる。加えて、本発明の発泡容器は、発泡層の結晶化度が低く、加熱成形時に柔軟性を維持でき、成形性に優れる。さらに、本発明の発泡容器は、非発泡層が加熱成形時に延びやすく、成形性に優れる。
本発明の発泡容器は、金型からの離型性に優れ、かつ、成形性に優れるため、成形性と離型性との両立が図れている。
【実施例】
【0064】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0065】
(発泡シートの製造)
結晶性樹脂としてIV値1.04のPET樹脂を100質量部と、気泡調整剤としてタルク1.0質量部と、架橋剤として無水ピロメリット酸(ダイセル社製)0.2質量部とを100℃で4時間乾燥した。乾燥後の原料をφ90mmの押出機に入れ、押出機に窒素ガスを圧入し、混練した。PET樹脂を溶融する温度(設定温度)を285℃とし、口径φ135mmのサーキュラーダイから押し出し、マンドレルで冷却しながら切り裂いて、単層の発泡シートを得た。得られた発泡シートは、厚さ0.75mm、坪量は330g/m
2、発泡倍率2.27倍であった。
【0066】
(積層発泡シートの製造)
得られた発泡シートの発泡容器の外側になる面に非発泡層として厚さが25又は50μmのPETフィルム(Z平均分子量は表1に記載)を重ね、熱ラミネートにて120℃で2.0/min圧着して、積層発泡シートを得た。
【0067】
[実施例1〜2、比較例1〜3]
各例の積層発泡シートを150℃のヒーターで90秒間加熱して、積層発泡シートの表面温度を125℃とし、二次発泡シートとした。雄型側から圧縮空気を供給して、雌型に二次発泡シートを密着させた。その後、雄型と雌型とを6秒間閉じて、180℃で真空圧空成形を行って、冷却後、トリミングすることにより、各例の発泡容器を得た。発泡容器の大きさは、直径15cm、深さ3cmであった。発泡容器の形状は、
図5に示す発泡容器200と同様の形状であった。
【0068】
得られた積層発泡シート、発泡容器、用いた結晶性樹脂について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。表1中、「Z平均分子量の差」は、発泡層を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量から、非発泡層を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量を引いた値を示す。表1中、「非発泡層の結晶化度/発泡層の結晶化度」は、非発泡層の結晶化度を、発泡層の結晶化度で除した値を示す。
【0069】
[離型性の評価]
成形直後の発泡成形シートのPETフィルムを積層した側の表面を目視で確認し、以下の評価基準に従って、離型性を評価した。
《評価基準》
○:表面にシワの発生がなく、離型性が良好である。
×:表面にシワの発生が見られ、離型性に劣る。
【0070】
[成形性の評価]
得られた発泡容器の全体の外表面を目視で確認し、以下の評価基準に従って、成形性を評価した。
《評価基準》
○:金型の形状がシャープに再現されており、成形性が良好である。
△:角部など細かい箇所で金型の再現性が悪く、成形性に劣る。
×:成形品が全体的に丸く、成形性が悪い。
【0071】
[Z平均分子量の測定]
各例の測定対象から試料5mgを取り、これにヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)0.5mL、クロロホルム0.5mLの順に追加して軽く手動で振とうした。これを浸漬時間24±1.0hrで放置した。試料が完全に溶解したことを確認後に、クロロホルムで10mLに希釈して軽く手動で振とうして、混合した。その後、ジーエルサイエンス(株)製非水系0.45μmのクロマトディスク、又は(株)島津ジーエルシー製非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過して、測定試料とした。測定試料を次の測定条件にて、クロマトグラフで測定し、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から試料のZ平均分子量を求めた。
【0072】
<測定装置>
・測定装置=東ソー(株)製、「HLC−8320GPC EcoSEC」、ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)。
<GPC測定条件>
・カラム
≪サンプル側≫
ガードカラム=東ソー(株)製 TSK guardcolumn HXL−H(6.0mm×4.0cm)×1本。
測定カラム=東ソー(株)製 TSKgel GMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本直列。
≪リファレンス側≫
抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本直列。
カラム温度=40℃。
移動相=クロロホルム。
≪移動相流量≫
サンプル側ポンプ=1.0mL/min。
リファレンス側ポンプ=0.5mL/min。
検出器=UV検出器(254nm)。
注入量=15μL。
測定時間=26min。
サンプリングピッチ=500msec。
【0073】
<検量線用標準ポリスチレン試料>
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM−105」及び「STANDARD SH−75」から、Z平均分子量M
Zが5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、131,000、54,000、20,000、7,590、3,450、1,320のものを用いた。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、131,000、20,000、3,450)及びB(3,120,000、442,000、54,000、7,590、1,320)にグループ分けした。Aを秤量(2mg、3mg、4mg、4mg、4mg)した後、クロロホルム30mLに溶解した。Bを秤量(3mg、4mg、4mg、4mg、4mg)した後、クロロホルム30mLに溶解した。
標準ポリスチレン検量線は、作成した各A及びB溶解液を50μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得た。その検量線を用いてZ平均分子量を算出した。
【0074】
[結晶化度の測定]
得られた二次発泡シートに空気を吹き付けて冷却し、試料を採取した。採取した二次発泡シートのフィルム面をスライスして、発泡層と非発泡層とに分割し、下記測定装置を用いて、下記測定条件のもと、JIS K7122に従いDSC測定を行い、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線の融解熱量及び結晶化熱量から、下記式(1)より結晶化度を算出した。
結晶化度(%)={(融解熱量の絶対値(J/g)−結晶化熱量の絶対値(J/g))÷完全結晶化熱量(J/g)}×100・・・(1)
【0075】
<測定装置>
・測定装置=(株)日立ハイテクサイエンス製、示差走査熱量計装置(DSC装置)、「DSC7000X型」。
<DSC測定条件>
試料量:5.5±0.5mg。
リファレンス(アルミナ)量:5mg。
窒素ガス流量:20mL/min。
試験数:2。
【0076】
[焼成試験]
得られた発泡容器の直径と深さの寸法をノギスで測定し、その後200度のオーブンで10分間加熱焼成した。その後、該容器を取り出し、再度直径と深さの寸法を測定し、加熱前後の寸法変化を下記式(2a)、(2b)で計算した。直径と深さの寸法変化量の平均値を下記式(3)で計算し、焼成後の寸法変化率(%)とし、以下の評価基準に従って評価した。寸法変化率が小さいほど、発泡容器は耐熱性に優れる。
直径の寸法変化量(%)={(加熱後の直径の寸法)−(加熱前の直径の寸法)}/(加熱前の直径の寸法)×100・・・(2a)
深さの寸法変化量(%)={(加熱後の深さの寸法)−(加熱前の深さの寸法)}/(加熱前の深さの寸法)×100・・・(2b)
焼成後の寸法変化率(%)={(直径の寸法変化量の絶対値)+(深さの寸法変化量の絶対値)}/2・・・(3)
《評価基準》
○:寸法変化率2.0%未満。
△:寸法変化率2.0%以上3.0%未満。
×:寸法変化率3.0%以上。
【0077】
[冷凍落下試験]
得られた発泡容器に250mLの水を入れ、−20℃の冷凍室で16時間養生して凍らせて試験体とした。冷凍室内でこの試験体の底壁を下にして高さ70cmから鉄板面に落下させ、凍った水が溶解した後の発泡容器の破損状況を確認し、以下の評価基準に従って評価した。評価が「○」で、発泡容器は、耐寒脆性に優れる。
《評価基準》
○:発泡容器に亀裂が入らない。
△:発泡容器に亀裂が入るが、水が漏れる貫通穴はない。
×:水が漏れる貫通穴ができる。
【0078】
【表1】
【0079】
本発明を適用した実施例1〜2は、離型性、成形性いずれの評価も「○」であった。
一方、非発泡層を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量が、発泡層を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量よりも大きい比較例1〜2は、離型性が「×」で、成形性が「△」だった。非発泡層を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量と、発泡層を構成する結晶性樹脂のZ平均分子量とが同じである比較例3は、離型性が「×」で、成形性が「△」だった。
【0080】
これらの結果から、本発明の結晶性樹脂発泡シートによれば、成形性と離型性との両立を図れることが分かった。