【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の樹脂複合体を示したもので、図にも示されているように本実施形態での樹脂複合体1は、丸みを帯びた長板状である。
即ち、本実施形態の樹脂複合体1は、長さ方向Xにおける寸法に対して幅方向Yにおける寸法が小さく、厚さ方向Zにおける寸法がさらに小さい。
【0011】
図2、
図3に示すように本実施形態の前記樹脂複合体1は、コアとなる芯材2と、該芯材2を覆う外殻となる繊維強化樹脂層3とを備えている。
本実施形態における前記樹脂複合体1は、前記芯材2が複数の樹脂発泡体で構成されている。
前記芯材2を構成する複数の前記樹脂発泡体として、本実施形態では、第1樹脂発泡体21と、第2樹脂発泡体22とが備えられている。
即ち、本実施形態における前記芯材2は、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とを含む複数の樹脂発泡体で構成されている。
【0012】
本実施形態の前記芯材2では、前記第1樹脂発泡体21と、前記第2樹脂発泡体22とが樹脂複合体1の厚さ方向Zに積層されている。
本実施形態における前記樹脂複合体1は、内側に前記第1樹脂発泡体21が配されている第1表面1fと、第1表面1fとは反対面となり、且つ、内側に前記第2樹脂発泡体22が配されている第2表面1hとを備えている。
【0013】
本実施形態の前記芯材2は、厚さ方向Zにおける中央部に前記第1樹脂発泡体21と、前記第2樹脂発泡体22との接着面2aを有している。
より詳しくは、本実施における前記第1樹脂発泡体21は前記第2樹脂発泡体22に接着されている接着面21aを有しているとともに前記第2樹脂発泡体22は前記第1樹脂発泡体21に接着されている接着面22aを有しているおり、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とは、接着面を一致させて前記芯材2を構成している。
【0014】
本実施形態においては、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22との接着に接着剤が用いられており、前記芯材2は、厳密に言えば、前記第1樹脂発泡体21と、前記第2樹脂発泡体22と、これらの間に設けられた接着剤層23とで構成されている。
前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とは、外周縁部に至るまで十分接着されており、前記接着面21a,22aの外周縁(接着剤層23の外周縁)がこれらの樹脂発泡体が隣り合う境界線2xとなっている。
【0015】
本実施形態において前記芯材2を構成する前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とは、複数の樹脂発泡粒子20aが熱融着によって一体化されてなるビーズ発泡成形体である。
【0016】
前記第1樹脂発泡体21は、前記接着面21aを構成している前記樹脂発泡粒子20a1や該樹脂発泡粒子20a1に内側から接する前記樹脂発泡粒子20a2などといった表層部の樹脂発泡粒子20aと中心部に位置する前記樹脂発泡粒子20aとを比べても扁平度合いに大きな違いはない。
一方で、これらの表層部の樹脂発泡粒子20a1,20a2の内部の気泡は中心部に位置する前記樹脂発泡粒子20aの内部の気泡に比べて扁平である。
即ち、前記第1樹脂発泡体21は、前記接着面21aを構成している1層目の前記樹脂発泡粒子20a1と、その次の2層目の前記樹脂発泡粒子20a2とに比べて当該第1樹脂発泡体21の厚さ方向Z中央部の樹脂発泡粒子20aの方が球に近い形状の気泡を内部に有している。
尚、1層目の前記樹脂発泡粒子20a1と、2層目の前記樹脂発泡粒子20a2とのそれぞれは、前記接着面21aに沿った方向の寸法が前記接着面21aに直交する方向の寸法よりも僅かに長い。
【0017】
前記第2樹脂発泡体22も前記第1樹脂発泡体21と同様に構成されている。
即ち、前記第2樹脂発泡体22は、前記接着面22aを構成している前記樹脂発泡粒子20a1と、該樹脂発泡粒子20a1に内側から接する前記樹脂発泡粒子20a2とが中心部に位置する前記樹脂発泡粒子20aに比べて扁平な気泡を内部に有している。
そして、前記第2樹脂発泡体22は、前記接着面22aを構成している1層目の前記樹脂発泡粒子20a1と、その次の2層目の前記樹脂発泡粒子20a2とに比べて当該第2樹脂発泡体22の厚さ方向Z中央部の樹脂発泡粒子20aの方が球に近い形状の気泡を内部に有している。
さらに、前記第2樹脂発泡体22では、1層目の前記樹脂発泡粒子20a1と、2層目の前記樹脂発泡粒子20a2とのそれぞれの前記接着面22aに沿った方向の寸法は、前記接着面22aに直交する方向での寸法よりも僅かに長い。
【0018】
前記樹脂発泡粒子20aの内部における気泡の形状は、走査型電子顕微鏡にて断面を撮影するなどして観察することができる。
内部における気泡の形状が扁平であるということは、その樹脂発泡粒子20aに外力による歪みが生じ難いことを意味する。
即ち、内部の気泡が扁平な樹脂発泡粒子は、応力を吸収し難く、力を伝播させるのに有効に作用すると考えられる。
【0019】
本実施形態の樹脂複合体1や樹脂複合体1を形成する前の芯材2に外力が加わった際には、前記第1樹脂発泡体21と、前記第2樹脂発泡体22との接着面2aに対して力が作用し易く、前記第1樹脂発泡体21と、前記第2樹脂発泡体22との界面において応力集中が生じ易い。
本実施形態の芯材2は、この応力集中がしやすい部分が力の伝搬性に優れた樹脂発泡粒子で構成されている。
すなわち、接着面を構成している1層目の前記樹脂発泡粒子20a1やその次の層の前記樹脂発泡粒子20a2の内部で気泡が扁平になっていると、接着面に加わる応力がこれらの樹脂発泡粒子20a1,20a2を伝って芯材2の内部に拡散され易くなり、応力集中が抑制されることになる。
【0020】
前記樹脂発泡粒子20a1の内部における扁平な気泡の大きさは、長手方向の寸法(FL
L)が50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。
該長手方向の寸法は、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。
前記気泡の短手方向での寸法(FL
S)に対する長手方向の寸法(FL
L)の比率(FL
L/FL
S、以下「気泡アスペクト比」ともいう)は、2.0以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、3.0以上であることがとりわけ好ましい。
【0021】
尚、このような気泡を内包した1層目の前記樹脂発泡粒子20a1や2層目の前記樹脂発泡粒子20a2は、扁平であるよりは球形に近いことが好ましく、長手方向と直交する方向(短手方向)での前記気泡の寸法(BL
S)に対する長手方向の寸法(BL
L)の比率(BL
L/BL
S、以下「ビーズアスペクト比」ともいう)が2以下であることが好ましく1.5以下であることがより好ましい。
【0022】
前記樹脂発泡粒子20aの気泡の形状や樹脂発泡粒子そのものの形状は前記接着面21a,22aに直交する平面で前記第1樹脂発泡体21や前記第2樹脂発泡体22を切断したときの断面での形状を走査型電子顕微鏡(SEM)などで観察して確認することができる。
【0023】
前記気泡の長手方向の寸法(FL
L)とは、
図3に示すように気泡ABの輪郭線ABxの異なる2点間を結ぶ線分の長さが最も長くなる箇所を求め、この線分の長さを長手方向の寸法(FL
L)を意味し、短手方向での寸法(FL
S)とは、該線分の中間点を通って前記線分に直交する垂直二等分線が前記輪郭線ABxと交差する2点間の距離を意味する。
【0024】
1層目の前記樹脂発泡粒子20a1や2層目の前記樹脂発泡粒子20a2の扁平の程度は(ビーズアスペクト比)、輪郭線上の異なる2点間を結ぶ線分の長さが最も長くなる箇所を求め、この線分を樹脂発泡粒子20aの長径20L(BL
L)とし、該長径20Lの長さ方向での中間点を通って前記長径20Lに直交する線分が前記樹脂発泡粒子20aの輪郭線と交わる2点の間を短径20S(BL
S)とし、この長径20Lと短径20Sとの比率(長径20Lの長さ/短径20Sの長さ)によって確認することができる。
【0025】
前記第1樹脂発泡体21や前記第2樹脂発泡体22の1層目の前記樹脂発泡粒子20a1の扁平の程度(ビーズアスペクト比)と2層目の前記樹脂発泡粒子20a2の扁平の程度(ビーズアスペクト比)との比較は、それぞれ芯材2の断面において無作為に選択した複数(例えば、10個)の樹脂発泡粒子20aの測定結果の平均値どうしを比較して求めることができる。
これらの内部の気泡ABの扁平度合い(気泡アスペクト比)についても同様である。
さらに、第1樹脂発泡体中央部や第2樹脂発泡体22の厚み方向Zにおける中央部の樹脂発泡粒子のビーズアスペクト比と1層目の前記樹脂発泡粒子20a1のビーズアスペクト比との比較や、これらの気泡アスペクト比の比較も同様に平均値での比較とすることができる。
気泡ABの寸法や気泡アスペクト比、ビーズアスペクト比に関する前記の好ましい値は、このような平均値においてもそのような値となっていることが好ましい。
【0026】
前記第1樹脂発泡体21や前記第2樹脂発泡体22を、接着面近傍における樹脂発泡粒子の形状が上記のような状態となるように調製するには、一旦作製したビーズ発泡成形体の前記接着面となる面に対して圧力を加えて表層部を圧縮させる方法を採用することができる。
具体的には、前記第1樹脂発泡体21や前記第2樹脂発泡体22を調製するには、熱プレス機などを使ってビーズ発泡成形体に圧力を加えるなどすればよい。
なお、加圧前、又は、加圧中には、必要に応じて加圧する面を加熱するようにしてもよい。
具体的には、ビーズ発泡成形体の接着面となる面に対して輻射加熱を行うなどして、樹脂発泡粒子を扁平にさせたい部位のみを選択的に加熱してから加圧を実施すればよい。
【0027】
そして、その後に、扁平にさせた表層部の樹脂発泡粒子を発泡剤の発泡力などによって膨らませて元通りの丸みを持たせるようにすれば、樹脂発泡粒子自体の形状は丸みを帯びながらも内部の気泡を扁平にさせることができる。
【0028】
上記のように本実施形態の樹脂複合体1は、前記芯材2が、第1樹脂発泡体21と第2樹脂発泡体22とを含む複数の樹脂発泡体で構成され、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とが接着されている接着面2aを有しており、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とそれぞれは、複数の樹脂発泡粒子20aで構成されたビーズ発泡成形体で、中心部に位置する前記樹脂発泡粒子の内部の気泡に比べて前記接着面を構成している前記樹脂発泡粒子の内部の気泡の方が扁平な形状を有している樹脂複合体となっている。
【0029】
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22は、例えば、ポリエチレン樹脂発泡体、ポリプロピレン樹脂発泡体などのポリオレフィン樹脂発泡体;汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)発泡体、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)発泡体などのポリスチレン樹脂発泡体;ポリアミド12発泡体、ポリアミド6発泡体、ポリアミド66発泡体などのポリアミド樹脂発泡体;ポリ乳酸樹脂発泡体、ポリブチレンサクシネート樹脂発泡体、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体、ポリブチレンテレフタレート樹脂発泡体などのポリエステル樹脂発泡体;ポリカーボネート樹脂発泡体;アクリル樹脂発泡体などとすることができる。
【0030】
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22は、高い強度を発揮する上において、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体、ポリカーボネート樹脂発泡体、又は、アクリル樹脂発泡体のいずれかであることが好ましい。
樹脂発泡粒子を扁平としつつ内部の気泡を丸い状態に保たせるのに有利である点において、前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22は、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体であることが特に好ましい。
【0031】
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22は、例えば、50kg/m
3以上700kg/m
3以下の見掛け密度を有する樹脂発泡体とすることができる。
前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とは見掛け密度が共通していても異なっていてもよい。
【0032】
前記第1樹脂発泡体21及び前記第2樹脂発泡体22の見掛け密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の求め方」記載の方法で測定することができる。
即ち、見掛け密度は、原則的には次のようにして求めることができる。
【0033】
(見掛け密度測定方法)
100cm
3以上の試験片を材料の元のセル構造をできるだけ変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出することができる。
見掛け密度(kg/m
3)=試験片質量(kg)/試験片体積(m
3)
尚、測定用試験片は、原則的に成形が施された後、72時間以上経過した試料から切り取り、温度23±2℃、湿度50±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものとする。
【0034】
前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22との接着は、単なる感圧接着剤ではなく、反応硬化型接着剤によって行われることが好ましい。
前記反応硬化型接着剤としては、熱硬化型であっても常温硬化型であってもよい。
但し、芯材2の中心部には、外部より効率良く熱を加えることが難しいため、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22との接着は、常温硬化型接着剤によって実施することが好ましい。
該常温硬化型接着剤としては、例えば、シリコン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。
前記常温硬化型接着剤としては、エポキシ系接着剤が好適である。
前記エポキシ系接着剤としては、主剤と硬化剤とを使用直前に混合する2液混合タイプであることが好ましい。
【0035】
該芯材2の表面を覆う前記繊維強化樹脂層3は、本実施形態においては、2枚のシート状の繊維強化樹脂材によって形成されている。
前記繊維強化樹脂材の一方は前記第1樹脂発泡体21に積層されており、他方は前記第2樹脂発泡体22に積層されている。
即ち、本実施形態の繊維強化樹脂層3は、前記第1樹脂発泡体21に積層された前記繊維強化樹脂材で構成されている第1の部位(以下「第1繊維強化樹脂層31」ともいう)と、前記第2樹脂発泡体22に積層された前記繊維強化樹脂材で構成されている第2の部位(以下「第2繊維強化樹脂層32」ともいう)とを備えている。
【0036】
図4に示すように前記第1繊維強化樹脂層31は、シート状の繊維基材31aと、該繊維基材31aに含浸されて繊維基材31aに担持されている樹脂31bとで構成されている。
前記第2繊維強化樹脂層32も、繊維材で構成された繊維基材32aと、該繊維基材32aに含浸されて繊維基材32aに担持されている樹脂31bとで構成されている。
即ち、本実施形態における繊維強化樹脂層3は、前記第1樹脂発泡体21に積層された第1の繊維基材31a(以下「第1繊維基材31a」ともいう)と前記第2樹脂発泡体22に積層された第2の繊維基材32a(以下「第2繊維基材32a」ともいう)とを含む複数の繊維基材が繊維強化樹脂層3の形成に用いられている。
【0037】
上記のように本実施形態の繊維強化樹脂層3は、一領域の形成に用いられている第1繊維基材31aと前記一領域とは異なる他領域の形成に用いられている第2繊維基材32aとを含む複数の繊維基材を有する。
【0038】
前記第1繊維基材31aと前記第2繊維基材32aとは、本実施形態においては前記芯材2の前記境界線2xを互いに重なり合って覆っている。
即ち、本実施形態においては、前記繊維強化樹脂層3がシート状の繊維基材31a,32aと該繊維基材31a,32aに含浸された樹脂31b,32bとを含み、前記芯材2の表面では、前記第1樹脂発泡体21を覆っている前記第1繊維基材31aが前記境界線2xを越えて前記第2樹脂発泡体22に及び、前記第2樹脂発泡体22を覆っている前記第2繊維基材32aが前記境界線2xを越えて前記第1樹脂発泡体21に及んでおり、前記境界線2xでは、前記第1樹脂発泡体21を覆っている前記第1繊維基材31aと前記第2樹脂発泡体22を覆っている前記第2繊維基材32aとが重なりあって前記芯材2を覆っている。
【0039】
前記第1繊維基材31aと前記第2繊維基材32aとが重なりあって部分の幅WD(外側の繊維基材の表面に沿って測定される幅)は、該重なり合いが形成されている全域での平均値(以下「平均ラップ幅」ともいう)が1mm以上であることが好ましい。
前記平均ラップ幅は、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることが特に好ましい。
前記幅WDは、通常、最大でも25mm以下とされ、前記平均ラップ幅も、通常、25mm以下とされる。
【0040】
本実施形態においては、この繊維基材の重なり合いは、前記接着剤層23の外周縁に沿って帯状に延在する。
従って、本実施形態においては、前記接着剤層23と、繊維基材の重なり合いとによって形成される補強構造がH鋼のような状態となっており、樹脂複合体1に対して高い補強効果を発揮する。
【0041】
上記のような効果は、
図5に示すように第1繊維基材31aと第2繊維基材32aとの少なくとも一方が境界線2xを越えて芯材2を覆っていれば発揮され得る。
即ち、前記第1樹脂発泡体21を覆っている前記第1繊維基材31aと前記第2樹脂発泡体22を覆っている前記第2繊維基材32aとの少なくとも一方が前記境界線2xを越えて他方の繊維基材と重なり合って前記芯材2を覆っており、前記芯材2の前記境界線2xに隣接する領域が重なり合った前記繊維基材(31a,32a)で覆われていると、前記接着剤層23とによって形成される補強構造がL字アングルのような状態となって形成されるため、
図4に示す態様と同様の効果が発揮され得る。
この場合に形成させる重なり合いの幅WD’やその平均値(平均ラップ幅)については、
図4に示す態様と同様とすることができる。
【0042】
尚、本実施形態の樹脂複合体1を作製する際には、加圧方向が当該樹脂複合体1の厚さ方向となるようなプレス方法が採用されることになるが、前記第1繊維基材31aと前記第2繊維基材32aとがこのプレス方向に行き違いになっていることでプレス時には前記第1繊維基材31aと前記第2繊維基材32aとが前記平均ラップ幅を増大させる方向に適宜スライドすることができ、芯材2の表面形状に対する良好な追従性を示してシワなどが生じ難くなる。
即ち、本実施形態の樹脂複合体1は、幅方向Yの端部において繊維基材どうしが重なり合っていることで、高い補強効果が発揮させるばかりでなく、外観美麗ともなり得る。
【0043】
前記繊維強化樹脂層3の形成に用いられる繊維基材(31a,32a)は、例えば、平織物、綾織物、繻子織物など織布であっても、不織布であってもよい。
前記繊維基材(31a,32a)は、編布であってもよい。
【0044】
前記繊維基材(31a,32a)を構成する繊維は、特に限定されず、例えば、アラミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、塩化ビニル繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリスチレン繊維、アセテート繊維などの有機繊維や、カーボン繊維、ガラス繊維、金属繊維、などの無機繊維を挙げることができる。
【0045】
繊維基材(31a,32a)に含浸される前記樹脂(31b,32b)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。
熱硬化性樹脂の場合には、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。
【0046】
前記繊維強化樹脂層3は、繊維をシート状の状態で含有していなくてもよく、短繊維がマトリックス樹脂に分散した状態のものであってもよい。
【0047】
前記繊維強化樹脂層3は、通常、繊維基材が重なっている部分以外での平均厚さが0.05mm以上20mm以下のとなるように形成させることができ、0.1mm以上10mm以下の平均厚さとなるように形成されることが好ましい。
該平均厚さは、樹脂複合体1において無作為に選択した複数箇所(例えば、10箇所)での測定による算術平均値を計算して求めることができる。
【0048】
尚、前記繊維基材(31a,32a)は、第1繊維基材31aと第2繊維基材32aとで厚さや材質などが共通している必要はなく、これらが異なっていてもよい。
また、前記第1繊維基材31aに担持されて前記第1繊維強化樹脂層31の形成材料となっている前記樹脂31bと、前記第2繊維基材32aに担持されて前記第2繊維強化樹脂層32の形成材料となっている前記樹脂32bとは材質などが共通している必要はなく、異なっていてもよい。
従って、前記第1繊維強化樹脂層31と前記第2繊維強化樹脂層32とは平均厚さが異なっていてもよい。
【0049】
前記第1繊維強化樹脂層31と前記第2繊維強化樹脂層32とは、それぞれ繊維基材(31a,32a)が1枚ずつである必要はなく、何れか一方又は両方に複数の繊維基材が厚さ方向に積層された状態で備えられていてもよい。
その場合、第1繊維強化樹脂層31に備えられた繊維基材31aと第2繊維強化樹脂層32に備えられた繊維基材32aとは、前記境界線2xの形成地点において交互に積層されて前記芯材2を覆うことが好ましい。
また、前記第1繊維強化樹脂層31や前記第2繊維強化樹脂層32に複数枚の繊維基材が備えられる場合、全ての繊維基材が前記境界線2xの形成地点において重なり合うようにしなくてもよい。
さらには、本実施形態においては、優れた補強効果を発揮させる上において繊維基材の重なり合いを形成させているが、要すれば、繊維基材を重ね合わせるようにしなくてもよい。
【0050】
本実施形態においては、前記第1樹脂発泡体21と前記第2樹脂発泡体22とにそれぞれ繊維基材を積層しているが、要すれば、芯材全体を1枚の繊維基材で覆うようにしてもよい。
また、前記第1樹脂発泡体21や前記第2樹脂発泡体22の一方又は両方を複数の領域に分けて一領域を覆う繊維基材を他領域を覆う繊維基材と別体のものとしてもよい。
【0051】
本実施形態の樹脂複合体は、特にその製造方法が限定されるわけではないが、
第1樹脂発泡体と第2樹脂発泡体とを含む複数の樹脂発泡体と、硬化前の熱硬化性樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材とを用意し、
前記第1樹脂発泡体と前記第2樹脂発泡体とを接着剤で接着して芯材を形成させる接着工程と、
前記芯材に積層されている繊維強化樹脂材を前記芯材に向けて加圧しつつ加熱して、前記熱硬化性樹脂を硬化させて前記繊維強化樹脂材で前記繊維強化樹脂層を形成させるプレス工程とを実施し、
前記接着工程では反応硬化型の前記接着剤を使用し、該接着剤の硬化反応を前記熱硬化性樹脂の硬化よりも後に完了させて作製されることが好ましい。
【0052】
本実施形態の樹脂複合体は、自動車のドアパネルやバンパー、自動車、バイクのエアロパーツ、航空機や船舶のボディ用パーツ、ロボット用パーツ、風車用ブレード、スポーツ用ヘルメットなどの各種の用途において種々の形状で用いられ得る。
尚、本実施形態においては、前記芯材2を2つの樹脂発泡体で構成させる態様を例示しているが、前記芯材2の構成には3以上の樹脂発泡体を用いてもよい。
本実施形態の樹脂複合体は、その他の事項についても上記例示の通りでなくてもよい。
即ち、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。