付加製造装置は、その中心線に沿った方向に回転軸を有する円柱状の回転体と、回転軸を中心に回転体を回転させる回転駆動部と、回転体の上方に設けられ、回転駆動部による回転体の回転中に、回転体の上面に紫外線硬化樹脂を含むスラリーを供給する供給部と、回転体の上方に設けられ、回転体の回転方向における供給部の下流に位置し、回転駆動部による回転体の回転中に、その端部で回転体の上面に供給されたスラリーを一層分の厚さにならす平坦部と、供給部及び平坦部に対して回転体を回転体の中心線に沿った方向に相対的に移動させる相対駆動部と、回転体の上方に設けられ、回転体の回転方向における平坦部の下流に位置し、回転駆動部による回転体の回転中に、造形物の形状に基づいて定められた照射位置に紫外線をスポット照射する照射部とを備える。
前記照射部は、前記回転駆動部による前記回転体の回転速度及び前記照射位置に基づいて、紫外線の照射開始から前記回転体が一回転するまでの間に、前記造形物の一層分の照射を完了する、請求項1に記載の付加製造装置。
前記照射部は、前記回転駆動部による前記回転体の回転速度及び前記照射位置に基づいて、前記紫外線の照射点の位置を前記回転体の回転ごとに前記回転体の径方向に沿って変更し、前記造形物の一層分の照射を完了する、請求項1に記載の付加製造装置。
前記照射部は、前記回転駆動部による前記回転体の回転速度及び前記照射位置に基づいて、紫外線の照射開始から前記回転体が一回転するまでの間に、前記造形物の一層分の照射を完了する、請求項4に記載の付加製造装置。
前記照射部は、前記回転駆動部による前記回転体の回転速度及び前記照射位置に基づいて、前記紫外線の照射点の位置を前記回転体の回転ごとに前記回転体の前記中心線に沿って変更し、前記造形物の一層分の照射を完了する、請求項4に記載の付加製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る付加製造装置の一例を示す概要図である。
図1に示す付加製造装置1は、一層ごとに造形物を形成する装置である。付加製造装置1は、回転体10と、回転駆動部20と、供給部30と、平坦部50と、相対駆動部60と、照射部70と、コントローラ100とを備える。付加製造装置1は、回転駆動部20により回転する回転体10の上面11上に一層ごとに造形物を形成する。具体的には、回転体10の上面11において、供給部30がスラリーを供給しスラリーの層200を形成し、平坦部50がスラリーの層200を平坦化し、照射部70が紫外線をスラリーの層200に照射し、スラリーの層200を硬化させることで造形物の層が形成される。相対駆動部60は、回転体10の上面11と、供給部30及び平坦部50との相対距離を調整する。スラリーは、造形物の基材である。スラリーは、例えば、紫外線硬化樹脂とセラミックス粉又は金属粉とを混合した流動性のある材料である。スラリーは、ジェル(ゲル)状、半固体状、ゼリー状、ムース状ないしペースト状(練状)の樹脂であってもよい。紫外線硬化樹脂とは、紫外線を受光することで硬化する樹脂であり、例えば、アクリル系及びエポキシ系である。
【0022】
図1に示す回転体10は、円柱状の部材である。回転体10は、円形の上面11及び円形の下面12を有する。回転体10は、その中心線に沿った方向に回転軸Mを有する。回転体10の中心線は、回転体10の上面11及び下面12の円の中心を結んだ直線である。以下、回転体10の中心線に沿った方向を中心線方向Dとする。回転軸Mは、例えば、中心線方向Dに延在し、回転体10の上面11及び下面12の円の中心を結ぶ軸である。
【0023】
上面11は、スラリーの層200が形成される円形の水平面である。上面11は、回転軸Mに直交している。上面11は、その中央部に、回転軸Mを中心としてスラリーが供給されない円形の領域である非供給領域13を有する。供給部30、平坦部50、及び照射部70は、上面11の上方でそれぞれが干渉しないように設けられる。供給部30、平坦部50、及び照射部70は、非供給領域13を除く上面11の上方に設けられる。下面12は、上面11に平行な円形の面である。
【0024】
回転駆動部20は、回転軸Mを中心に回転体10を回転させる。回転駆動部20は、例えば、回転体10の下面12に接続される。回転駆動部20は、ロッド21と、ロッド21を回転させる駆動源22とを有する。ロッド21は、例えば、中心線方向Dに沿って、回転軸Mと一致するように設けられる。ロッド21の上端は、回転体10の下面12に接続され、回転体10を支持する。ロッド21の下端は、駆動源22に接続される。駆動源22は、例えば、モータである。駆動源22は、ロッド21を回転させることで、ロッド21に接続された回転体10を、回転軸Mを中心に回転させる。回転駆動部20によって回転体10が回転する方向である回転方向Rは、回転体10の上面11上に載置された物体が、供給部30の下方、平坦部50の下方、及び照射部70の下方を順に通過する方向である。すなわち、平面視において、回転体10の回転方向Rの上流から供給部30、平坦部50、及び照射部70が順に設けられる。
【0025】
供給部30は、回転駆動部20による回転体10の回転中に、回転体10の上面11に紫外線硬化樹脂を含むスラリーを供給し、スラリーの層200を形成する。回転体10の回転中に供給部30がスラリーを供給するとは、供給部30によるスラリーの供給が、回転駆動部20による回転体10の回転と同時に又は交互に行われることを意味する。供給部30は、例えば、スラリーを供給するヘッド31と、スラリーをヘッド31に供給する供給源32と、ヘッド31と供給源32とを連通する供給パイプ33とを有する。
【0026】
ヘッド31は、回転体10の上面11の上方に設けられる。ヘッド31は、例えば、回転体10の上面11上に供給されたスラリーの層200の上面が層形成高さ位置となるようにスラリーを供給する。層形成高さ位置とは、照射部70から照射される光の高さ位置として予め定められた高さである。ヘッド31は、例えば、層形成高さ位置にスラリーの層200の厚さを加えた高さになるように回転体10の上面11から離間している。ヘッド31は、回転体10の上面11に沿って回転軸Mから径方向Cに延在する。
【0027】
ヘッド31は、ヘッド31の直下に位置する回転体10の上面11にスラリーを供給する。例えば、ヘッド31は、回転体10の非供給領域13の外周から回転体10の上面11の外周までの間において径方向Cに沿って線状にスラリーを供給する。ヘッド31の直下に位置する回転体10の上面11を範囲U1とした場合、ヘッド31は、範囲U1において所定の量のスラリーを供給する。回転体10の回転に応じて回転体10の上面11がヘッド31の下方を通過するため、ヘッド31は、回転体10の上面11の任意の位置にスラリーを供給できる。スラリーは、供給源32から供給パイプ33を通じてヘッド31に供給される。ヘッド31から供給するスラリーの量は、範囲U1の長さ、回転体10の回転速度又は造形物の形状などに基づいて定められる。ヘッド31は、振動機能を有し、スラリーの流動性を高めてもよい。
【0028】
平坦部50は、回転駆動部20による回転体10の回転中に、その端部で回転体10の上面11に供給されたスラリーを一層分の厚さにならす。平坦部50は、例えばスクレーパである。回転体10の回転中に平坦部50がスラリーをならすとは、平坦部50によるスラリーの平坦化が、回転駆動部20による回転体10の回転とともに行われることを意味する。平坦部50は、回転体10の上面11の上方において、回転体10の回転方向Rにおける供給部30の下流に位置する。平坦部50は、回転体10の上面11に沿って回転軸Mから径方向Cに延在する。平坦部50の端部は、平坦部50の直下に位置する回転体10の上面11上のスラリーを平坦化する。平坦部50は、回転体10の非供給領域13の外周から回転体10の上面11の外周までの間において径方向Cに沿って線状にスラリーを平坦化する。平坦部50の直下に位置する回転体10の上面11を範囲U2とした場合、平坦部50は、範囲U2における回転体10の上面11上のスラリーを平坦化する。回転体10の回転に応じて回転体10の上面11が平坦部50の下方を通過するため、平坦部50は、回転体10の上面11の任意の位置のスラリーを平坦化できる。平坦部50の端部が供給部30から回転体10の上面11に供給されたスラリーを平坦化することにより、回転体10の上面11に一層分のスラリーの層200が形成される。
【0029】
相対駆動部60は、供給部30及び平坦部50に対して回転体10を中心線方向Dに相対的に移動させる。相対駆動部60により、供給部30及び平坦部50と回転体10とは、中心線方向Dに沿って相対的に近接又は離間するように移動する。相対駆動部60は、例えば第1駆動部61と、第2駆動部62とを有する。
【0030】
第1駆動部61は、回転体10の上面11に対して供給部30のヘッド31を中心線方向Dに移動させる。例えば、第1駆動部61は、ヘッド31を一層分の厚さ単位で中心線方向Dに移動させる。第1駆動部61は、例えば、ガイドレール及び駆動源で構成される。第1駆動部61は、径方向Cにおいて、回転体10の上面11の外周より外側に設けられる。外側とは、回転体10の上面11の外周から回転軸Mへの方向とは反対側のことである。第1駆動部61は、ヘッド31における回転体10の外周側の端部と接続し、回転体10の上面11の上方にヘッド31が位置するようにヘッド31を支持する。第1駆動部61により、ヘッド31は回転体10の上面11に対して所定の高さでスラリーを供給しスラリーの層200を形成する。
【0031】
第2駆動部62は、回転体10の上面11に対して平坦部50を中心線方向Dに移動させる。例えば、第2駆動部62は、平坦部50を一層分の厚さ単位で中心線方向Dに移動させる。第2駆動部62は、例えば、ガイドレール及び駆動源で構成される。第2駆動部62は、例えば、径方向Cにおいて回転体10の上面11の外周より外側に設けられ、回転体10の回転方向Rにおける第1駆動部61の下流に設けられる。第2駆動部62は、平坦部50における回転体10の外周側の端部と接続し、回転体10の上面11の上方に平坦部50が位置するように平坦部50を支持する。第2駆動部62により、平坦部50は回転体10の上面11に対して所定の位置でスラリーの層200を平坦化する。相対駆動部60は、第1駆動部61と第2駆動部62とを共通の1つの駆動部として供給部30及び平坦部50を駆動させてもよいし、それぞれ独立した2つの駆動部として供給部30及び平坦部50をそれぞれ駆動させてもよい。
【0032】
照射部70は、回転駆動部20による回転体10の回転中に、照射位置に紫外線をスポット照射する。照射位置とは、スラリーの層200に設定される位置であり、紫外線が照射される目標となる位置である。照射位置とは、造形物の形状に基づいて定められた、スラリーの層200を硬化させて造形物の少なくとも一部を形成する位置である。照射位置は、例えば、造形物のCADデータに基づく断面形状を再現するように定められる。ここでのスポット照射とは、スラリーに含まれる紫外線硬化樹脂が硬化に必要な照射強度を得るために、紫外線を集光させ、スラリー上に照射点(スポット)を形成させる照射方式である。スポット照射による照射点の大きさは、例えば直径0.5mm以上1mm以下の円である。回転体10の回転中に照射部70が紫外線をスポット照射するとは、照射部70による紫外線の照射が、回転駆動部20による回転体10の回転と同時に又は交互に行われることを意味する。
【0033】
照射部70は、一例として、光学ユニット71及び光反射部材72,74を備える。光学ユニット71は、例えば光源71a及び光学部材71bを備え、紫外線を出射する。光反射部材72,74は、例えばカルバノミラーであり、光学ユニット71から出射された紫外線の光路を変更する。光反射部材72,74は、回転小駆動部73,75により、所定の回転軸を中心として回転動作をする。光反射部材72,74が回転制御されることにより、照射部70は、層形成高さ位置において、スラリーの照射位置に対して紫外線を照射できる。
【0034】
照射部70は、例えば、照射部70の直下に位置する回転体10の上面11に紫外線を照射する。例えば、照射部70は、回転体10の非供給領域13の外周から回転体10の上面11の外周までの径方向Cに沿った線分上を走査するように紫外線をスポット照射する。照射部70の直下に位置する回転体10の上面11を範囲U3とした場合、照射部70は、範囲U3における回転体10の上面11上のスラリーに紫外線を照射可能なように、光反射部材72,74、及び回転小駆動部73,75を制御する。
【0035】
照射部70のうち、少なくとも光反射部材74及び回転小駆動部75は、回転体10の上面11の上方に設けられ、回転体10の回転方向Rにおける平坦部50の下流に位置する。照射部70が、平坦部50により平坦化されたスラリーの層200の照射位置に対して紫外線を照射することにより、スラリーに含まれる紫外線硬化樹脂が硬化する。照射部70は、回転体10の回転中にスラリーの層200の照射位置に対して紫外線を照射することにより、造形物の断面を一層分形成する。
【0036】
コントローラ100は、付加製造装置1を制御するハードウェアである。コントローラ100は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、及び通信装置などを有する汎用コンピュータで構成される。コントローラ100は、回転駆動部20、供給部30、相対駆動部60、及び照射部70と通信可能に接続される。
【0037】
図2は、第1実施形態に係る付加製造装置の制御部の一例を示すブロック図である。
図2に示す通り、コントローラ100は、供給制御部102と、回転駆動制御部104と、照射制御部106と、相対駆動制御部108とを有する。供給制御部102は、供給部30が回転体10の上面11に供給するスラリーの量及び供給速度などを制御する。
【0038】
回転駆動制御部104は、回転駆動部20における回転体10の回転方向R、回転速度、回転数、回転角度、回転の開始、及び回転の停止を制御する。回転角度は、一層分に関するスラリーの供給が開始される回転体10の上面11上の位置を示す角度であり、回転の基準位置を用いて表現される。回転の基準位置とは、回転角度の原点となる予め定められた固定位置であり、例えば、照射部70の直下の位置、つまり範囲U3の位置とすることができる。回転駆動部20は、範囲U3の位置を基準とし、一層分に関するスラリーの供給が開始される回転体10の上面11上の位置を測定位置としてモニタする。つまり、回転駆動部20は、一層分に関するスラリーの供給が開始される回転体10の上面11上の位置を、範囲U3の位置を原点位置とした回転角度で表現する。回転駆動制御部104は、基準位置と測定位置とが一致した場合に回転角度を0度(原点)とし、回転方向Rに測定位置が移動していくごとに回転角度を増加させる。回転駆動制御部104は、再び基準位置と測定位置とが一致した場合に回転角度を0度とする。回転駆動制御部104は、測定位置の回転角度に基づいて、回転体10が一回転したか否かを判定し、回転数を計測する。
【0039】
照射制御部106は、照射部70により照射される紫外線の強度又は紫外線の照射点の位置を制御する。照射点の位置とは、照射部70が紫外線を照射する位置である。具体的には、照射点の位置は、照射部70より照射される紫外線が回転体10の上面11上のスラリーに到達する位置である。
【0040】
相対駆動制御部108は、相対駆動部60を制御する。相対駆動制御部108は、供給部30及び平坦部50と回転体10との相対距離と、供給部30及び平坦部50と回転体10とを相対的に近接又は離間させる速度及びそのタイミングとを制御する。
【0041】
コントローラ100は、記憶装置に記憶された造形物の3次元のCADデータに基づいて回転駆動部20、供給部30、相対駆動部60、及び照射部70を動作させる。コントローラ100は、付加製造装置1の外部に設けられてもよい。
【0042】
次に、付加製造装置1による造形物の製造工程を説明する。
図3は、第1実施形態に係る付加製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3に示す付加製造方法MTは、回転駆動部20による回転体10の回転中において、コントローラ100により実行される。
【0043】
まず、相対移動処理(S10)において、コントローラ100の相対駆動制御部108は、供給部30のヘッド31より供給されるスラリーの上面が層形成高さ位置になるようにヘッド31及び平坦部50と回転体10の上面11との距離を相対駆動部60に調整させる。相対駆動制御部108の制御に基づき、第1駆動部61によりヘッド31が中心線方向Dに移動し、回転体10の上面11との中心線方向Dにおける距離が調整される。ヘッド31は、層形成高さ位置にスラリーの層200の一層分の高さを加えた高さに位置するように調整される。
【0044】
相対駆動制御部108の制御に基づき、第2駆動部62により平坦部50が中心線方向Dに移動し、回転体10の上面11との中心線方向Dにおける距離が調整される。平坦部50は、その端部が層形成高さ位置に位置するように調整される。相対移動処理(S10)中では回転駆動部20による回転体10の回転を停止させてもよい。
【0045】
続いて、コントローラ100の供給制御部102は、供給処理(S20)として、供給部30にスラリーを回転体10の上面11上に供給させる。供給制御部102は、供給源32から供給パイプ33を通じてヘッド31にスラリーを供給させる。ヘッド31は、ヘッド31の直下の回転体10の上面11上(範囲U1)にスラリーを供給する。これにより、ヘッド31の直下を通過した回転体10の上面11上にスラリーが付与される。
【0046】
続いて、コントローラ100は、平坦化処理(S30)として、回転駆動部20による回転体10の回転中に、平坦部50に回転体10の上面11に供給されたスラリーを一層分の厚さに平坦化させる。供給部30により供給されたスラリーは、回転体10の回転方向Rの下流方向に位置する平坦部50の下方の位置まで移動する。平坦部50は、平坦部50の直下の回転体10の上面11上(範囲U2)におけるスラリーを平坦化する。これにより、平坦部50の直下を通過した回転体10の上面11に一層分のスラリーの層200が形成される。
【0047】
続いて、コントローラ100の照射制御部106は、照射処理(S40)として、回転駆動部20による回転体10の回転中に、回転体10の上面11において平坦化されたスラリーの層200の照射位置に対して、照射部70に紫外線をスポット照射させる。平坦部50により平坦化されたスラリーの層200は、回転体10の回転方向Rの下流方向に位置する照射部70の下方の位置まで移動する。照射部70は、光反射部材74の直下の回転体10の上面11上(範囲U3)におけるスラリーの層200の照射位置に対して紫外線をスポット照射する。回転体10が回転することにより、照射部70は、スラリーの層200の全ての照射位置に対して紫外線をスポット照射し、回転体10の上面11に造形物の層として造形物の断面を一層分形成する。
【0048】
続いて、コントローラ100は、形成判定処理(S50)として、回転体10の上面11において造形物の形成が完了したか否かを判定する。コントローラ100は、例えば、記憶装置に記憶された造形物の3次元のCADデータ、回転体10の回転数、供給部30のヘッド31の高さ位置、及び照射部70における照射点の位置などに基づき、全ての照射位置に紫外線の照射が完了した場合に造形物の形成が完了したと判定する。コントローラ100において、造形物の形成が完了したと判定された場合、付加製造装置1による造形物の形成を終了する。コントローラ100において、造形物の形成が完了していないと判定された場合、コントローラ100は、相対移動処理(S10)へと移行する。コントローラ100は、造形物の形成が完了するまで相対移動処理(S10)以降の処理を繰り返す。
【0049】
次に、付加製造装置1による照射処理(S40)の具体例を説明する。
図4は、第1実施形態に係る付加製造方法の照射処理の一例を示すフローチャートである。
図4に示す付加製造方法例ST1は、回転駆動部20による回転体10の回転中において、
図3に示す平坦化処理(S30)において平坦化されたスラリーの層200における照射位置が範囲U3に回転して移動してきた場合にコントローラ100により実行される。付加製造方法例ST1において、照射部70は、回転体10の一回転中に、一層分のスラリーの層200における全ての照射位置に紫外線をスポット照射する。なお、付加製造方法例ST1において、
図3に示す供給部30による供給処理(S20)及び平坦部50による平坦化処理(S30)が同時に行われる場合がある。
【0050】
まず、紫外線照射処理(S41)において、コントローラ100の照射制御部106は、回転体10の上面11において平坦化されたスラリーの層200における照射位置に対して、照射部70に紫外線をスポット照射させる。照射部70は、光反射部材72,74及び回転小駆動部73,75における調整により、光反射部材74の直下の回転体10の上面11上(範囲U3)における全ての照射位置に対してスポット照射する。
【0051】
続いて、コントローラ100は、層判定処理(S42)として、照射部70が一層分のスラリーの層200における全ての照射位置に対して紫外線を照射したか否かを判定する。具体的には、コントローラ100は、スラリーの層200における照射位置及び回転角度に基づいて全ての照射位置に対して紫外線を照射したか否かを判定する。あるいは、コントローラ100は、回転駆動制御部104により計測された回転角度が0度になっているか否かを判定してもよい。コントローラ100において、照射部70が一層分のスラリーの層200における全ての照射位置に対して紫外線を照射したと判定された場合、回転体10の一回転中に一層分のスラリーの層200における全ての照射位置に紫外線がスポット照射されているため、付加製造装置1による照射処理(S40)を終了する。
【0052】
コントローラ100において照射部70が一層分のスラリーの層200における全ての照射位置に対して紫外線を照射していないと判定された場合、コントローラ100は、回転駆動制御部104により範囲U3内に回転方向Rの上流の照射位置が移動してくるまで回転体10を回転させた上で、紫外線照射処理(S41)へと移行する。コントローラ100は、照射部70が一層分のスラリーの層200における全ての照射位置に対して紫外線を照射したと判定されるまで紫外線照射処理(S41)以降の処理を繰り返す。
【0053】
付加製造方法例ST1が実行されている間に測定位置が範囲U1を通過する場合、コントローラ100の供給制御部102は、供給部30により、
図3の供給処理(S20)としてスラリーの層200の上にスラリーを供給させる。付加製造方法例ST1が実行されている間に測定位置が範囲U2を通過する場合、コントローラ100は、平坦部50により、平坦化処理(S30)としてスラリーの層200の上に供給されたスラリーを平坦化する。
【0054】
図5は、
図3及び
図4の照射処理を実行した場合の回転体の平面視図である。
図5の(A)は、一層分のスラリーの層200における照射部70による全ての照射位置210を示す。
図5の(A)に示すように、照射部70が照射する紫外線は、回転体10の上面11上のスラリーにおいて、照射点70aのように点(スポット)で表される。付加製造方法例ST1において、照射点70aの位置は、回転体10が回転方向Rに移動するごとに径方向Cに移動する。照射位置210のうち、回転方向Rの最下流の部分を、最下流照射位置210aとする。以下、
図5の(A)に示す照射位置210に照射点70aの位置を合わせる例を
図5の(B)〜(D)を用いて説明する。
【0055】
図5の(B)は、一層分のスラリーの層200において、照射部70により1回目の紫外線照射処理(S41)が完了した状態を示す。
図5の(B)に示すように、供給部30のヘッド31により供給され、平坦部50により平坦化したスラリーの層200において、測定位置200aは、範囲U3に対して回転方向Rの下流に位置する。スラリーの層200は、照射部70を通過しようとする部分に照射位置210が設定されていない場合、照射部70による紫外線の照射を受けずに範囲U3を通過する。付加製造方法例ST1における照射部70は、回転駆動部20による回転体10の一回転中に、範囲U3内のスラリーの層200の全ての照射位置210に対して紫外線を照射する。照射部70は、照射点70aの位置を範囲U3において径方向Cに移動させることで、範囲U3の全ての照射位置210に対して紫外線を照射できる。これにより、一層分のスラリーの層200の径方向Cにおいて、一層分の造形物の層が形成される。
【0056】
図5の(C)は、一層分のスラリーの層200において、照射部70により複数回の紫外線照射処理(S41)が完了した状態を示す。
図5の(C)に示すように付加製造方法例ST1において、最下流照射位置210aは、紫外線照射処理(S41)の後も回転するため、範囲U3から回転方向Rの下流に位置する。
【0057】
付加製造方法例ST1では、一回転の間に一層分の造形物の層が形成されるため、供給部30は、相対移動処理(S10)及び供給処理(S20)により造形物の層の上にスラリーの上層201を供給できる。このため、測定位置200aがヘッド31の下方の範囲U1を通過した後において、ヘッド31からスラリーの層200の上面にスラリーが供給される。これにより、範囲U1から回転方向Rの下流の測定位置200aまでの間のスラリーの層200の上面には、スラリーの上層201が供給される。これにより、付加製造方法例ST1によれば、連続的にスラリーの層200を形成できるため、造形物の製造速度を向上させることができる。
【0058】
図5の(D)は、一層分のスラリーの層200において、照射部70により全ての紫外線照射処理(S41)が完了した状態を示す。
図5の(D)に示すように最下流照射位置210aは、範囲U3から回転方向Rの下流の範囲U1を通過した位置に達する。測定位置200aが範囲U3(基準位置)に達するまでの間に、一層分の造形物の層がすべて形成される。測定位置200aが範囲U3(基準位置)に達した以降の紫外線照射処理(S41)に伴い、スラリーの上層201の照射位置210においても造形物の層が形成される。
【0059】
続いて、付加製造装置1による照射処理(S40)の他の具体例を説明する。
図6は、第1実施形態に係る付加製造方法の照射処理の一例を示すフローチャートである。
図6に示す付加製造方法例ST2は、
図3に示す平坦化処理(S30)において平坦化されたスラリーの層200における照射位置210が範囲U3に回転して移動してきた場合にコントローラ100により実行される。照射位置210が範囲U3に回転して移動してきた後において、コントローラ100は、回転駆動部20による回転体10の回転を停止させた上で、付加製造方法例ST2の各処理に移行する。
【0060】
付加製造方法例ST2において、照射部70は、紫外線の照射点70aの位置を回転体10の回転ごとに回転体10の径方向Cに沿って変更する。そして、照射部70は、回転体10の一回転中に照射点70aの位置を径方向Cに移動させないように制御する。これにより、照射部70は、回転体10の回転に伴って、回転体10の上面上で回転体10の中心軸を中心とする円を描くように照射点70aの位置を走査できる。このように、照射部70は、スポット照射と回転体10の回転とを利用して、回転体10の回転方向Rへのライン照射を実現できる。一層分のスラリーの層200のうち範囲U3に位置する部分に径方向Cに沿って複数の照射位置210が設定されている場合、回転駆動部20が回転体10を一回転させるごとに照射部70は照射点70aの位置を径方向Cに移動させ、一層分のスラリーの層200の照射位置210に紫外線をスポット照射する。なお、付加製造方法例ST2は、
図3に示す供給部30による供給処理(S20)及び平坦部50による平坦化処理(S30)が同時に行われない点で付加製造方法例ST1と相違する。
【0061】
まず、照射調整処理(S44)では、コントローラ100の照射制御部106は、記憶装置に記憶された造形物の3次元のCADデータに基づき、一層分のスラリーの層200における照射位置210を照射部70に認識させる。照射部70は、一層分のスラリーの層200における照射位置210に基づいて、径方向Cにおける照射点70aの位置を固定する。
【0062】
続いて、コントローラ100の照射制御部106は、紫外線照射処理(S45)として、回転体10の上面11において平坦化されたスラリーの照射位置210に対して、照射部70に紫外線をスポット照射させる。照射部70は、範囲U3内の照射点70aの固定位置と一致した照射位置210に対してスポット照射する。つまり、付加製造方法例ST2においては、照射部70は、範囲U3の径方向Cにおいて照射点70a以外の位置に他の照射位置210があった場合であってもその照射位置210に対しては紫外線のスポット照射はしない。
【0063】
続いて、コントローラ100は、円周方向判定処理(S46)として、照射部70が、一層分のスラリーの層200の照射位置210のうち照射点70aの固定位置における回転方向Rの全ての照射位置210に紫外線を照射したか否かを判定する。コントローラ100は、紫外線照射処理(S45)において、照射部70により紫外線を照射した照射位置210から回転方向Rの上流方向の一層分のスラリーの層200に対して、照射部70が紫外線を照射していない照射位置210がないか否かを判定する。
【0064】
円周方向判定処理(S46)において、照射部70が一層分のスラリーの層200の照射位置210のうち照射点70aの固定位置における回転方向Rの全ての照射位置210に紫外線を照射していないと判定された場合、コントローラ100は、第1回転処理(S47)へと移行する。コントローラ100は、第1回転処理(S47)として、回転駆動部20により回転体10を回転させる。回転駆動制御部104は、範囲U3内の照射点70aの固定位置に回転方向Rの下流の照射位置210が移動してくるまで回転体10を回転させる。コントローラ100は、第1回転処理(S47)が終了した場合、紫外線照射処理(S45)へと移行する。コントローラ100は、照射部70が一層分のスラリーの層200の照射位置210のうち照射点70aの固定位置における回転方向Rの全ての照射位置210に紫外線を照射するまで紫外線照射処理(S45)以降の処理を繰り返す。
【0065】
円周方向判定処理(S46)において、照射部70が回転方向Rの全ての照射位置210に紫外線を照射したと判定された場合、コントローラ100は、径方向判定処理(S48)へと移行する。コントローラ100は、径方向判定処理(S48)として、照射部70が径方向Cにおける一層分のスラリーの層200の全ての照射位置210に紫外線を照射したか否かを判定する。コントローラ100は、記憶装置に記憶された造形物の3次元のCADデータに基づき、一層分のスラリーの層200において、紫外線照射処理(S45)にて照射部70が全ての照射位置210に紫外線を照射したか否かを判定する。
【0066】
径方向判定処理(S48)において、照射部70が一層分のスラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線を照射していないと判定された場合、コントローラ100は、第2回転処理(S49)へと移行する。コントローラ100は、第2回転処理(S49)として、回転駆動部20により回転体10を回転させる。回転駆動制御部104は、範囲U3内に回転方向Rの上流の照射位置210が移動してくるまで回転体10を回転させる。コントローラ100は、第2回転処理(S49)が終了した場合、照射調整処理(S44)へと移行する。コントローラ100は、照射点70aの位置を径方向Cに沿って移動させて固定する。コントローラ100は、照射部70がスラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線を照射するまで照射調整処理(S44)以降の処理を繰り返す。
【0067】
径方向判定処理(S48)において、照射部70が一層分のスラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線を照射したと判定された場合、コントローラ100は、照射処理(S40)を終了する。
【0068】
図7は、
図3及び
図6の照射処理を実行した場合の回転体の平面視図である。
図7の(A)は、一層分のスラリーの層200における照射部70による全ての照射位置210を示す。
図7の(A)に示すように、照射部70が照射する紫外線は、回転体10の上面11において、照射点70aのように点(スポット)で表される。照射点70aの位置は、コントローラ100において実行される照射調整処理(S44)により径方向Cに移動する。照射位置210のうち、照射制御部106により最初に照射位置210と照射点70aの位置とを一致させる位置を初発照射位置210bとする。以下、
図7の(A)に示す照射位置210に照射点70aの位置を合わせる例を
図7の(B)〜(D)を用いて説明する。
【0069】
図7の(B)は、一層分のスラリーの層200において、照射部70により複数回の円周方向判定処理(S46)が実行され、第1回転処理(S47)を介して複数回の紫外線照射処理(S45)を実行された状態を示す。
図7の(B)に示すように、供給部30のヘッド31により供給され、平坦部50により平坦化され、そして、範囲U3に達したスラリーの層200は、一層分のスラリーの層200の照射位置210のうち照射点70aの固定位置に一致する照射位置210に対して紫外線がスポット照射される。付加製造方法例ST2における照射部70は、範囲U3内のスラリーの層200に対し、径方向Cにおいて照射点70aの固定位置に一致する一点の照射位置210に対して紫外線を照射する。
図7の(B)に示すように付加製造方法例ST2において、初発照射位置210bは、紫外線照射処理(S41)の後も回転するため、範囲U3から回転方向Rの下流に位置する。
【0070】
図7の(C)は、一層分のスラリーの層200において、
図7の(B)の後にさらに照射部70により複数回の紫外線照射処理(S45)及び1回の径方向判定処理(S48)が実行され、第2回転処理(S49)を介して2回目の照射調整処理(S44)が実行され、複数回の円周方向判定処理(S46)が実行された状態を示す。
図7の(C)に示すように付加製造方法例ST2において、回転駆動部20による回転体10の一回転中に、照射制御部106は径方向Cにおいて照射点70aの位置を固定しているため、照射部70は径方向Cのある位置における回転方向Rの全ての照射位置210に紫外線を照射した状態となる。これにより、付加製造方法例ST2によれば、回転駆動部20による回転体10の回転する角度に応じて、照射部70は、径方向Cに照射点70aの位置を変える必要がないため、造形物の製造速度を向上させることができる。
【0071】
照射部70が全ての照射位置210に紫外線照射するまでに、相対駆動制御部108は、相対駆動部60により供給部30及び平坦部50と回転体10の上面11との相対的な距離を調整する。これにより、スラリーの層200の上層に対する造形物の層の形成も、スラリーの層200に対する造形物の層の形成後に連続して実行できるため、付加製造方法例ST2は、造形物の製造速度を向上させることができる。
【0072】
図7の(D)は、一層分のスラリーの層200において、照射部70により全ての紫外線照射処理(S45)が完了した状態を示す。
図7の(D)に示すようにスラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線が照射されるまで、供給部30は、スラリーの層200の上面にスラリーの上層を供給しない。スラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線が照射された場合、供給部30は、スラリーの層200の測定位置200aがヘッド31の下方の範囲U1に達していなくてもスラリーの上層を形成し始めてもよい。
【0073】
以上、本実施形態の付加製造装置1及び付加製造方法MTによると、造形物の製造速度を向上させることができる。また、回転駆動部20により回転体10の上面11が供給部30、平坦部50及び照射部70に対して回転方向Rに移動するため、供給部30、平坦部50及び照射部70が回転方向Rに移動しなくてよい。このため、供給部30、平坦部50及び照射部70は、各構成の移動の完了を待たずに処理を実行でき、連続的に造形物の層を形成できる。
【0074】
また、回転体10は、各構成の処理の完了を待たずに、供給部30及び平坦部50に対して相対駆動部60により相対的に移動できる。これらにより、各構成の移動又は処理の完了を待つ時間を短縮できる。
【0075】
付加製造方法例ST1によれば、照射部70による紫外線の照射位置210から回転駆動部20により回転体10が一回転するまでの間に、一層分の造形物の層の形成が完了する。これにより、付加製造方法例ST1は、供給部30、平坦部50、及び照射部70における各処理を連続して実行できる。ヘッド31は、例えば、層形成高さ位置にスラリーの層200の高さを加えた高さになるように回転体10の上面11から離間しているため、相対駆動部60は、スラリーの上層201を形成している間に供給部30と回転体10との相対距離を調整すればよい。これにより、供給部30は、スラリーの層200の後に連続的にスラリーの上層201を形成できる。
【0076】
付加製造方法例ST2によれば、照射部70は、紫外線の照射開始から回転体10が一回転するまでの間に回転体10の径方向Cの照射点70aの位置を変更しなくてよい。これにより、付加製造方法例ST2は、照射部70における照射点70aの位置の変更に伴う所要時間を減少できる。回転体10の一回転ごとに照射部70が径方向Cの照射点70aの位置を変更して紫外線を照射している間に、相対駆動部60は、供給部30及び平坦部50と回転体10の上面11との相対距離を調整できる。スラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線が照射された場合、供給部30は、スラリーの層200の測定位置200aがヘッド31の下方の範囲U1に達していなくてもスラリーの上層を形成し始めることができる。
【0077】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る付加製造装置について説明する。本実施形態の説明では、第1実施形態との相違点を説明し、重複する説明を省略する。第2実施形態に係る付加製造装置は、第1実施形態に係る付加製造装置1と比較して、回転体の外周面においてスラリーの層が供給され、平坦化され、紫外線を照射される点において相違する。
【0078】
図8は、第2実施形態に係る付加製造装置の一例を示す概要図である。
図8に示す付加製造装置1Aは、回転体10Aと、回転駆動部20Aと、供給部30Aと、平坦部50Aと、第1駆動部61Aと、第2駆動部62Aと、照射部70と、コントローラ100Aとを備える。以下、第1駆動部61Aと第2駆動部62Aとを含む構成を相対駆動部60Aと表現する。付加製造装置1Aは、回転駆動部20Aにより回転する回転体10Aの外周面14上に一層ごとに造形物を形成する。具体的には、回転体10Aの外周面14において、供給部30Aがスラリーを供給しスラリーの層200を形成し、平坦部50Aがスラリーの層200を平坦化し、照射部70が紫外線をスラリーの層200に照射し、スラリーの層200を硬化させることで造形物の層が形成される。相対駆動部60Aは、回転体10Aの外周面14と、供給部30A及び平坦部50Aとの相対距離を調整する。
【0079】
回転体10Aは、円柱状の部材である。回転体10Aは、円形の上面11A、円形の下面12、及び上面11Aと下面12と接続する外周面14を有する。回転体10Aは、その中心線に沿った方向に回転軸Mを有する。回転体10Aの中心線は、回転体10の上面11A及び下面12の円の中心を結ぶ直線である。以下、回転体10Aの中心線に沿った方向を中心線方向Dとする。回転軸Mは、例えば、中心線方向Dに延在し、回転体10Aの上面11A及び下面12の円の中心を結ぶ軸である。外周面14は、スラリーの層200が表面に形成される円柱の円周面である。外周面14は、回転軸Mに沿って設けられる。供給部30A、平坦部50A、及び照射部70は、回転軸Mから径方向Cにおいて外周面14から離間した位置に配置される。
【0080】
回転駆動部20Aは、回転軸Mを中心に回転体10Aを回転させる。回転駆動部20Aは、例えば、回転体10Aの下面12に接続される。回転駆動部20Aによる回転体10Aの回転方向Rは、回転体10Aの外周面14上に載置された物体が、供給部30Aの下方、平坦部50Aの下方、及び照射部70の下方を順に通過する方向である。すなわち、回転体10Aの回転方向Rの上流から供給部30A、平坦部50A、及び照射部70が順に設けられる。
【0081】
供給部30Aは、回転駆動部20Aによる回転体10Aの回転中に、回転体10Aの外周面14にスラリーを供給し、スラリーの層200を形成する。供給部30Aは、例えば、スラリーを供給するヘッド31Aと、スラリーをヘッド31Aに供給する供給源32と、ヘッド31Aと供給源32とを連通する供給パイプ33とを有する。
【0082】
供給部30Aのヘッド31Aは、回転体10Aの外周面14の径方向Cの外方向に設けられる。ここで、径方向Cに沿って、回転体10Aの外周面14から回転軸Mに向かう方向が内方向、その反対の方向が外方向である。ヘッド31Aは、例えば、回転体10Aの外周面14上に供給されるスラリーの層200の外方向の面が層形成高さ位置となるようにスラリーを供給する。ヘッド31Aは、例えば、層形成高さ位置に位置するように回転体10Aの外周面14から径方向Cの外方向に離間している。ヘッド31Aは、回転体10Aの外周面14に沿って中心線方向Dに延在する。ヘッド31Aは、例えば、中心線方向Dにおいて上面11Aから下面12までの長さを有する。
【0083】
ヘッド31Aは、ヘッド31Aの径方向Cの内方向に位置する回転体10Aの外周面14にスラリーを供給する。例えば、ヘッド31Aは、回転体10Aの上面11Aの外周から下面12の外周までの間において中心線方向Dに沿って線状にスラリーを供給する。ヘッド31Aの径方向Cの内方向に位置する回転体10Aの外周面14を範囲U10とした場合、ヘッド31Aは、範囲U10において所定の量のスラリーを供給する。回転体10Aの回転に応じて回転体10Aの外周面14がヘッド31Aの下方を通過するため、ヘッド31Aは、回転体10Aの外周面14の任意の位置にスラリーを供給できる。ヘッド31Aから供給するスラリーの量は、範囲U10の長さ、回転体10Aの回転速度又は造形物の形状などに基づいて定められる。
【0084】
平坦部50Aは、回転駆動部20Aによる回転体10Aの回転中に、その端部で回転体10Aの外周面14に供給されたスラリーを一層分の厚さにならす。平坦部50Aは、回転体10Aの径方向Cの外方向において、回転体10Aの回転方向Rにおける供給部30Aの下流に位置する。平坦部50Aは、回転体10Aの外周面14に沿って中心線方向Dに延在し、中心線方向Dにおいて上面11Aから下面12までの長さを有する。平坦部50Aは、平坦部50Aの径方向Cの内方向に位置する回転体10Aの外周面14上のスラリーを平坦化する。平坦部50Aの径方向Cの内方向に位置する回転体10Aの外周面14を範囲U20とした場合、平坦部50Aは、範囲U20における回転体10Aの外周面14上のスラリーを平坦化する。回転体10Aの回転に応じて回転体10Aの外周面14が平坦部50Aの下方を通過するため、平坦部50Aは、回転体10Aの外周面14の任意の位置のスラリーを平坦化できる。平坦部50Aが供給部30Aから回転体10Aの外周面14に供給されたスラリーを平坦化することにより、回転体10Aの外周面14に一層分のスラリーの層200が形成される。
【0085】
相対駆動部60Aは、回転体10Aに対して供給部30A及び平坦部50Aを回転体10Aの径方向Cに相対的に移動させる。相対駆動部60Aにより、回転体10Aと供給部30A及び平坦部50Aとは、径方向Cに沿って相対的に近接又は離間するように移動する。
【0086】
相対駆動部60Aのうち、第1駆動部61Aは、回転体10Aの外周面14に対して供給部30Aのヘッド31Aを径方向Cに移動させる。例えば、第1駆動部61Aは、ヘッド31Aを一層分の厚さ単位で径方向Cに移動させる。第1駆動部61Aは、例えば、径方向Cにおいて上面11Aに沿って設けられる。第1駆動部61Aは、ヘッド31Aの端部に接続され、回転体10Aの外周面14の径方向Cの外方向にヘッド31Aが位置するようにヘッド31Aを支持する。第1駆動部61Aにより、ヘッド31Aは回転体10Aの外周面14に対して所定の高さでスラリーを供給する。
【0087】
相対駆動部60Aのうち、第2駆動部62Aは、回転体10Aの外周面14に対して平坦部50Aを径方向Cに移動させる。例えば、第2駆動部62Aは、平坦部50Aを一層分の厚さ単位で径方向Cに移動させる。第2駆動部62Aは、例えば、径方向Cにおいて上面11Aに沿って設けられる。第2駆動部62Aは、回転体10Aの回転方向Rにおける第1駆動部61Aの下流に設けられる。第2駆動部62Aは、平坦部50Aの端部に接続され、回転体10Aの外周面14の径方向Cの外方向に平坦部50Aが位置するように平坦部50Aを支持する。第2駆動部62Aにより、平坦部50Aは回転体10Aの外周面14に対して所定の位置でスラリーを平坦化し、スラリーの層200を形成する。
【0088】
照射部70は、回転駆動部20Aによる回転体10Aの回転中に、造形物の形状に基づいて定められた照射位置に紫外線をスポット照射する。照射位置とは、回転体10Aの外周面14に供給されたスラリーに対して照射部70が紫外線を照射する位置である。
【0089】
照射部70は、照射部70の径方向Cの内方向に位置する回転体10Aの外周面14に紫外線を照射する。例えば、照射部70は、回転体10Aの上面11Aの外周から下面12の外周までの中心線方向Dに沿った線分上を走査するように紫外線をスポット照射する。照射部70の径方向Cの内方向に位置する回転体10Aの外周面14を範囲U30とした場合、照射部70は、範囲U30における回転体10Aの外周面14上のスラリーに紫外線を照射可能なように、光反射部材72,74、及び回転小駆動部73,75を制御する。
【0090】
照射部70のうち、少なくとも光反射部材74及び回転小駆動部75は、回転体10Aの外周面14の径方向Cの外方向に設けられ、回転体10Aの回転方向Rにおける平坦部50Aの下流に位置する。照射部70は、例えば、範囲U30内に位置し、平坦部50Aにより平坦化されたスラリーの層200の照射位置に向けて紫外線を照射する。照射部70は、回転体10Aの回転中にスラリーの層200の照射位置に対して紫外線を照射することにより、造形物の断面を一層分形成する。
【0091】
コントローラ100Aは、付加製造装置1Aを制御するハードウェアである。コントローラ100Aは、回転駆動部20A、供給部30A、相対駆動部60A、及び照射部70と通信可能に接続される。コントローラ100Aは、コントローラ100と同一のハードウェア構成であり得る。
【0092】
図9は、第1実施形態に係る付加製造装置のコントローラの一例を示すブロック図である。
図9に示す通り、コントローラ100は、供給制御部102と、回転駆動制御部104と、照射制御部106と、第1駆動制御部108Aと、第2駆動制御部108Bとを有する。供給制御部102は、供給部30Aが回転体10Aの外周面14に供給するスラリーの量を制御する。回転駆動制御部104は、回転駆動部20Aを制御する。
【0093】
照射制御部106は、照射部70を制御する。第1駆動制御部108Aは、第1駆動部61Aを制御する。第1駆動制御部108Aは、供給部30Aと回転体10Aとの相対距離と、供給部30Aと回転体10Aとを相対的に近接又は離間させる速度及びそのタイミングとを制御する。第2駆動制御部108Bは、第2駆動部62Aを制御する。第2駆動制御部108Bは、平坦部50Aと回転体10Aとの相対距離と、平坦部50Aと回転体10Aとを相対的に近接又は離間させる速度及びそのタイミングとを制御する。
【0094】
図10は、
図8におけるX−X矢視図である。
図10に示すように、付加製造装置1Aでは、スラリーの層200は、径方向Cの外方向に積層されていく。付加製造装置1Aで得られる造形物の一面は、外周面14の形状により、例えば弧状となる。第2実施形態における付加製造方法、付加製造装置1Aの作用及び効果は、径方向C及び中心線方向Dを置換した場合の第1実施形態に係る付加製造方法MT及び付加製造装置1と同一である。
【0095】
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。例えば、第1実施形態及び第2実施形態におけるスラリーは光硬化樹脂を含んでもよい。この場合、照射部70は、光を照射する。
【0096】
第1実施形態及び第2実施形態における供給部30,30A、平坦部50,50A、相対駆動部60,60A、及び照射部70は、複数設けられてもよい。この場合、供給部30,30A、平坦部50,50A、相対駆動部60,60A、及び照射部70を一組とした照射セットが、回転体10,10Aの回転方向Rに沿うように設けられる。
【0097】
第2実施形態における回転体10Aには、スラリーが供給される上面を有するステージが外周面14上に設けられてもよい。付加製造装置1Aは、複数のステージを備えてもよい。この場合、付加製造装置1Aは、各ステージ上に造形物を形成できる。ステージの上面は、平坦面であってもよい。この場合、ステージの上面と供給部30A、平坦部50A、及び照射部70との径方向Cにおける距離それぞれは、異なる距離となる。このため、供給部30Aは、スラリーの供給速度及び供給量を距離に応じて変更してもよい。また、平坦部50Aは、ステージの平坦面に接する端部の径方向Cにおける長さを回転体10Aの回転速度及び回転角度に応じて変更してもよい。照射部70は、層形成高さ位置を回転体10Aの回転速度及び回転角度に応じて変更してもよい。
【0098】
また、第1実施形態における供給部30のヘッド31は、層形成高さ位置に設けてもよい。第2実施形態における供給部30Aのヘッド31Aは、層形成高さ位置にスラリーの層200の厚さを加えた高さになるように回転体10の外周面14から離間させてもよい。
【0099】
また、第1実施形態及び第2実施形態における付加製造装置1,1Aにおいては、スラリーの第1層のための平坦化とスラリーの第2層のための平坦化とを時間的に連続して行う場合、スラリーの第2層のための平坦化を開始するタイミングで平坦部50,50Aを一層分だけ回転体10,10Aから離間する方向に移動させる必要がある。しかし、平坦部50,50Aの移動は短時間であるものの時間を要するため、回転体10,10Aの回転速度によっては意図したタイミングでスラリーの第2層のための平坦化を開始できないおそれがある。このため、付加製造装置1,1Aは、スラリーの第2層のための平坦化を開始するタイミングで回転体10,10Aの回転を停止し、平坦部50,50Aを一層分だけ回転体10,10Aから離間する方向に移動させ、その後、回転体10,10Aの回転を再開するように制御してもよい。
【0100】
あるいは、付加製造装置1,1Aは、並設された2つの平坦部50,50Aを有してもよい。例えば、付加製造装置1,1Aは、上流側の平坦部50,50Aと、下流側の平坦部50,50Aを有してもよい。付加製造装置1,1Aは、2つの平坦部50,50Aを異なるタイミングで移動させることにより、スラリーの第2層のための平坦化を意図したタイミングで開始させる。具体的には、上流側の平坦部50,50Aは、その端部がスラリーの上層201(第2層)の高さ位置になるように配置され、下流側の平坦部50,50Aは、その端部がスラリーの層200(第1層)の高さ位置になるように配置される。この場合、第1層の上に供給されたスラリーは上流側の平坦部50,50Aによって平坦化されて第2層となる。第2層となったスラリーが下流側の平坦部50,50Aに到達するまでの時間を利用して、下流側の平坦部50,50Aは、回転体10,10Aから離間する方向に移動できる。これにより、付加製造装置1,1Aは、スラリーの第2層のための平坦化を意図したタイミングで実行できる。
【0101】
あるいは、平坦部50,50Aは、回転体10の回転方向Rに移動可能に構成されてもよい。この場合、付加製造装置1,1Aは、平坦部50,50Aと回転体10,10Aとの回転方向Rの相対速度を調整できる。これにより、付加製造装置1,1Aは、スラリーの第2層のための平坦化を開始するタイミングで回転体10,10Aの回転を平坦部50,50Aから見て相対的に停止させることができる。これにより、付加製造装置1,1Aは、平坦部50,50Aの平坦化のための移動完了のタイミングと、スラリーの第2層のための平坦化を開始するタイミングとのタイムラグを解消できる。
【0102】
第1実施形態における相対駆動部60は、回転体10の上面11が下方に移動するようにしてもよい。この場合、第1駆動部61及び第2駆動部62は備えなくてもよい。相対駆動部60は、回転駆動部20による回転体10の回転を停止した上で、回転体10の上面11を下方に移動させてもよい。回転駆動部20による回転体10の回転を停止しない場合、付加製造装置1は、回転体10の上面11にらせん状にスラリーを供給することになる。
【0103】
第1実施形態及び第2実施形態における照射部70は、光反射部材72,74を備えなくてもよい。つまり、照射部70は、照射点70aの位置を変更する機能を有さず、光学ユニット71から出射される紫外線をスラリーの層200に直接照射してもよい。この場合、付加製造装置1,1Aは、照射部70の光学ユニット71を移動させる移動機構を有すればよい。例えば、第1実施形態における付加製造装置1は、照射部70を径方向Cに移動させる移動機構を有する。第2実施形態における付加製造装置1Aは、照射部70は中心線方向Dに移動させる移動機構を有する。これらの移動機構により、照射部70は、スラリーの層200における全ての照射位置210に対して紫外線を照射できる。
【0104】
第2実施形態においては、スラリーの流動性が高いほど供給部30Aから照射部70までの距離が短くなるように、供給部30A、平坦部50A、及び照射部70が配置されてもよい。第2実施形態においては、供給部30A、平坦部50A、及び照射部70は、回転軸Mの上方に設けられてもよい。この場合、付加製造装置1Aは、供給されたスラリーのうち、少なくとも造形物となる部分が重力により外周面14から分離することを抑制できる。