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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-163738(P2020-163738A)
(43)【公開日】2020年10月8日
(54)【発明の名称】付加製造装置及び付加製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/135 20170101AFI20200911BHJP
   B29C 64/241 20170101ALI20200911BHJP
   B29C 64/236 20170101ALI20200911BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20200911BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20200911BHJP
【FI】
   B29C64/135
   B29C64/241
   B29C64/236
   B33Y10/00
   B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-67294(P2019-67294)
(22)【出願日】2019年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】梶田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】小島 和哉
(72)【発明者】
【氏名】中根 孝弥
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AC05
4F213AR07
4F213AR08
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL32
4F213WL35
4F213WL45
4F213WL67
4F213WL74
4F213WL75
4F213WL87
4F213WL95
(57)【要約】
【課題】造形物の製造速度を向上させることができる付加製造装置及び付加製造方法を提供する。
【解決手段】
付加製造装置は、その内部に内周面によって画成された空間と内周面の中心線に沿った方向に延在する回転軸とを有する回転体と、回転軸を中心に回転体を回転させる回転駆動部と、回転駆動部による回転体の回転中に、回転体の内周面に紫外線硬化樹脂を含むスラリーを供給する供給部と、供給部を回転体の径方向に沿って移動させる第1駆動部と、回転体の回転方向における供給部の下流に位置し、回転駆動部による回転体の回転中に、その端部で回転体の内周面に供給されたスラリーを一層分の厚さにならす平坦部と、平坦部を回転体の径方向に沿って移動させる第2駆動部と、回転体の回転方向における平坦部の下流に位置し、回転駆動部による回転体の回転中に、造形物の形状に基づいて定められた照射位置に紫外線をスポット照射する照射部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一層ごとに造形物を形成する付加製造装置であって、
その内部に内周面によって画成された空間と前記内周面の中心線に沿った方向に延在する回転軸とを有する回転体と、
前記回転軸を中心に前記回転体を回転させる回転駆動部と、
前記回転体の内部に設けられ、前記回転駆動部による前記回転体の回転中に、前記回転体の前記内周面に紫外線硬化樹脂を含むスラリーを供給する供給部と、
前記供給部を前記回転体の径方向に沿って移動させる第1駆動部と、
前記回転体の内部に設けられ、前記回転体の回転方向における前記供給部の下流に位置し、前記回転駆動部による前記回転体の回転中に、その端部で前記回転体の前記内周面に供給された前記スラリーを一層分の厚さにならす平坦部と、
前記平坦部を前記回転体の径方向に沿って移動させる第2駆動部と、
前記回転体の内部に設けられ、前記回転体の回転方向における前記平坦部の下流に位置し、前記回転駆動部による前記回転体の回転中に、前記造形物の形状に基づいて定められた照射位置に紫外線をスポット照射する照射部と、
を備える付加製造装置。
【請求項2】
前記照射部は、前記回転駆動部による前記回転体の回転速度及び前記照射位置に基づいて、紫外線の照射開始から前記回転体が一回転するまでの間に、前記造形物の一層分の照射を完了する、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項3】
前記照射部は、前記回転駆動部による前記回転体の回転速度及び前記照射位置に基づいて、前記紫外線の照射点の位置を前記回転体の回転ごとに前記回転体の前記内周面の前記中心線に沿って変更し、前記造形物の一層分の照射を完了する、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項4】
前記回転体の内部に設けられ、前記回転体の前記内周面に向けて液体又は気体を供給するノズルを備える請求項1〜3の何れか一項に記載の付加製造装置。
【請求項5】
一層ごとに造形物を形成する付加製造方法であって、
その内部に内周面によって画成された空間と前記内周面の中心線に沿った方向に延在する回転軸とを有する回転体を、前記回転軸を中心に回転させるステップと、
前記回転体の回転中に、前記回転体の前記内周面に紫外線硬化樹脂を含むスラリーを供給するステップと、
前記回転体の回転中に、前記供給するステップにおいて前記回転体の前記内周面に供給された前記スラリーを一層分の厚さにならすステップと、
前記回転体の回転中に、前記ならすステップにおいて前記回転体の前記内周面においてならされた前記スラリーに対して前記造形物の形状に基づいて定められた照射位置に紫外線をスポット照射するステップと、
を有する付加製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、付加製造装置及び付加製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層することにより三次元造形物を製造する製造方法が記載されている。この方法においては、層形成部によりステージ上に層が形成され、結着液付与手段及び紫外線照射手段により層を硬化させる。層形成部、結着液付与手段及び紫外線照射手段は、ステージの上方を水平方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2016−203425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1における層形成部、結着液付与手段及び紫外線照射手段の各構成は、ステージの上方を順に移動する必要がある。また、各構成の移動及び処理が完了した後に、ステージは積層のために降下する必要がある。このため、各構成が並行してステージの上方を移動できず、かつ、各構成の移動と並行してステージが降下できないため、造形物を得るまでの時間がかかるおそれがある。
【0005】
本開示は、造形物の製造速度を向上させることができる付加製造装置及び付加製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る付加製造装置は、一層ごとに造形物を形成する付加製造装置であって、その内部に内周面によって画成された空間と内周面の中心線に沿った方向に延在する回転軸とを有する回転体と、回転軸を中心に回転体を回転させる回転駆動部と、回転体の内部に設けられ、回転駆動部による回転体の回転中に、回転体の内周面に紫外線硬化樹脂を含むスラリーを供給する供給部と、供給部を回転体の径方向に沿って移動させる第1駆動部と、回転体の内部に設けられ、回転体の回転方向における供給部の下流に位置し、回転駆動部による回転体の回転中に、その端部で回転体の内周面に供給されたスラリーを一層分の厚さにならす平坦部と、平坦部を回転体の径方向に沿って移動させる第2駆動部と、回転体の内部に設けられ、回転体の回転方向における平坦部の下流に位置し、回転駆動部による回転体の回転中に、造形物の形状に基づいて定められた照射位置に紫外線をスポット照射する照射部とを備える。
【0007】
この付加製造装置では、回転体は、回転駆動部により回転軸を中心に回転する。回転体の回転中において、供給部により回転体の内周面にスラリーが供給される。回転体の回転方向における供給部の下流において、スラリーは、平坦部により平坦化される。回転体の回転方向における平坦部の下流において、照射部により紫外線がスラリーに対して照射される。供給部は、第1駆動部により回転体の径方向に沿った方向に移動する。平坦部は、第2駆動部により回転体の径方向に沿った方向に移動する。このように、回転体が回転することにより、スラリーは遠心力によって回転体の内周面に向かって押圧されるため、回転体の回転中にスラリーが内周面から脱離することが抑制される。また、回転体の内周面が供給部、平坦部及び照射部に対して移動するため、供給部、平坦部及び照射部が回転体の円周方向に移動しなくてよい。このため、供給部、平坦部及び照射部は、各構成の移動の完了を待たずに処理を実行でき、連続的に造形物の層を形成できる。また、供給部及び平坦部は、他の構成の処理の完了を待たずに、当該構成の処理が完了した時点で第1駆動部及び第2駆動部により移動を開始できる。これらにより、この付加製造装置は、各構成の移動又は処理の完了を待つ時間を短縮できる。よって、この付加製造装置によれば、造形物の製造速度を向上させることができる。
【0008】
一実施形態においては、照射部は、回転駆動部による回転体の回転速度及び照射位置に基づいて、紫外線の照射開始から回転体が一回転するまでの間に、造形物の一層分の照射を完了してもよい。これにより、この付加製造装置は、供給部、平坦部、及び照射部における各処理を連続して実行できるため、造形物の製造速度を向上させることができる。
【0009】
一実施形態においては、照射部は、回転駆動部による回転体の回転速度及び照射位置に基づいて、紫外線の照射点の位置を回転体の回転ごとに回転体の内周面の中心線に沿って変更し、造形物の一層分の照射を完了してもよい。この場合、照射部は、紫外線の照射開始から回転体が一回転するまでの間に紫外線の照射点の位置を照射位置に合わせて回転体の内周面の中心線に沿った方向に変更しなくてよい。これにより、この付加製造装置は、照射部における紫外線の照射点の位置の変更に伴う所要時間を減少できる。
【0010】
一実施形態においては、回転体の内部に設けられ、回転体の内周面に向けて液体又は気体を供給するノズルを備えてもよい。回転体の内周面上には未硬化のスラリー及び造形物が配置される。ノズルより供給される液体又は気体は、未硬化のスラリー及び造形物に供給される。未硬化のスラリーは、造形物よりも流動性が高いため、供給された液体又は気体によって造形物から分離される。さらに、回転体が回転することにより、未硬化のスラリーに遠心力が加わり、流動性がより高くなり、造形物から分離することが容易となる。また、造形物が複雑な形状を有する場合であっても、回転体が回転することにより、供給された液体又は気体が遠心力によって造形物の細部に侵入し易くなるため、造形物の洗浄工程における工数が短くなる。このように、この付加製造装置は、回転体の内周面において造形物のみを容易に取り出せる。
【0011】
本開示の他の側面に係る付加製造方法は、一層ごとに造形物を形成する付加製造方法であって、その内部に内周面によって画成された空間と内周面の中心線に沿った方向に延在する回転軸とを有する回転体を、回転軸を中心に回転させるステップと、回転体の回転中に、回転体の内周面に紫外線硬化樹脂を含むスラリーを供給するステップと、回転体の回転中に、供給するステップにおいて回転体の内周面に供給されたスラリーを一層分の厚さにならすステップと、回転体の回転中に、ならすステップにおいて回転体の内周面においてならされたスラリーに対して造形物の形状に基づいて定められた照射位置に紫外線をスポット照射するステップとを有する。
【0012】
この付加製造方法では、回転させるステップにおいて、回転体は回転軸を中心に回転する。供給するステップにおいて、スラリーは回転体の回転中に回転体の内周面に供給される。ならすステップにおいて、供給されたスラリーは回転体の回転中に一層分の厚さに平坦化される。照射するステップにおいて、回転体の回転中に紫外線が平坦化されたスラリーに対して照射される。このように、回転体が回転することにより、スラリーは遠心力によって回転体の内周面に向かって押圧されるため、回転体の回転中にスラリーが内周面から脱離することが抑制される。また、供給するステップにおけるスラリーを供給する位置、ならすステップにおける平坦化する位置、及び照射するステップにおける紫外線が照射される位置に対して回転体の内周面が移動するため、各位置が回転体の円周方向に移動しなくてよい。このため、各ステップは、各ステップにおける処理の位置を変えずに連続的に造形物の層を形成できる。これらにより、この付加製造方法は、各構成の移動又は処理の完了を待つ時間を短縮できる。よって、この付加製造方法によれば、造形物の製造速度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る付加製造装置及び付加製造方法によれば、造形物の製造速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態に係る付加製造装置の一例を示す概要図である。
図2図2は、第1実施形態に係る付加製造装置のコントローラの一例を示すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係る付加製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、図1におけるIV−IV矢視図である。
図5図5は、第1実施形態に係る付加製造方法の照射処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、図1におけるVI−VI矢視図である。
図7図7は、第1実施形態に係る付加製造方法の照射処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、図1におけるVIII−VIII矢視図である。
図9図9は、第2実施形態に係る付加製造装置の一例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、実施形態に係る付加製造装置の一例を示す概要図である。図1に示す付加製造装置1は、一層ごとに造形物を形成する装置である。付加製造装置1は、回転体10と、回転駆動部20と、供給部30と、第1駆動部40と、平坦部50と、第2駆動部60と、照射部70と、コントローラ100とを備える。付加製造装置1は、回転駆動部20により回転する回転体10の内周面11上に一層ごとに造形物を形成する。具体的には、回転体10の内周面11において、供給部30がスラリーを供給しスラリーの層200を形成し、平坦部50がスラリーの層200を平坦化し、照射部70が紫外線をスラリーの層200に照射し、スラリーの層200を硬化させることで造形物の層が形成される。第1駆動部40は、回転体10の内周面11と、供給部30との相対距離を調整する。第2駆動部60は、回転体10の内周面11と、平坦部50との相対距離を調整する。スラリーは、造形物の基材である。スラリーは、例えば、紫外線硬化樹脂とセラミックス粉又は金属粉とを混合した流動性のある材料である。スラリーは、ジェル(ゲル)状、半固体状、ゼリー状、ムース状ないしペースト状(練状)の樹脂であってもよい。紫外線硬化樹脂とは、紫外線を受光することで硬化する樹脂であり、例えば、アクリル系及びエポキシ系である。
【0017】
回転体10は、その内部に内周面11によって画成された空間15を有する。内周面11は、円筒状である。内周面11上には、スラリーの層200が形成される。回転体10の内部の空間15には、供給部30、平坦部50及び照射部70が収容される。回転体10は、例えば、円筒状の部材である。回転体10は、例えば、円環状を呈する左端面12と、左端面12に平行で円環状を呈する右端面13とを有する。内周面11は、左端面12及び右端面13と接続される。回転体10は、内周面11の中心線に沿った方向に延在する回転軸Mを有する。回転体10の内周面11の中心線は、左端面12及び右端面13の中心を結ぶ直線である。以下、回転体10の内周面11の中心線に沿った方向を中心線方向Dとする。回転軸Mは、例えば、中心線方向Dに延在し、回転体10の左端面12及び右端面13の中心を結ぶ軸である。
【0018】
回転駆動部20は、回転軸Mを中心に回転体10を回転させる。回転駆動部20は、例えば、回転体10の左端面12に接続される。回転駆動部20は、ロッド21と、ロッド21と回転体10とを接続させる梁部材22と、ロッド21を回転させる駆動源23とを有する。ロッド21は、例えば、中心線方向Dに沿って、回転軸Mと一致するように設けられる。ロッド21の右端は、梁部材22に接続される。ロッド21の左端は、駆動源23に接続される。
【0019】
梁部材22は、回転体10の左端面12と接続される。梁部材22は、例えば四角柱状を呈し、径方向Cに沿って延在する。径方向Cとは、左端面12の半径が延在する方向である。梁部材22の両端は、左端面12にそれぞれ接続される。駆動源23は、ロッド21を回転させることで、ロッド21に接続された梁部材22を介して、回転軸Mを中心に回転体10を回転させる。駆動源23は、例えばモータである。回転駆動部20によって回転体10が回転する方向である回転方向Rは、回転体10の内周面11上に配置された物体が、供給部30に対応する位置、平坦部50に対応する位置、及び照射部70に対応する位置を順に通過する方向である。すなわち、回転体10の回転方向Rの上流から供給部30、平坦部50、及び照射部70が順に設けられる。対応する位置とは、対応する構成要素によってスラリーが処理される位置である。
【0020】
供給部30は、回転駆動部20による回転体10の回転中に、回転体10の内周面11にスラリーを供給し、スラリーの層200を形成する。回転体10の回転中に供給部30がスラリーを供給するとは、供給部30によるスラリーの供給が、回転駆動部20による回転体10の回転と同時に又は交互に行われることを意味する。供給部30は、例えば、スラリーを供給するヘッド31と、スラリーをヘッド31に供給する供給源32と、ヘッド31と供給源32とを連通する供給パイプ33とを有する。
【0021】
ヘッド31は、回転体10の内周面11より回転軸M側に設けられ、中心線方向Dに沿って延在する。ヘッド31は、例えば、回転体10の内周面11上に供給されたスラリーの層200の内周面が層形成高さ位置となるようにスラリーを供給する。層形成高さ位置とは、照射部70から照射される光の高さ位置として予め定められた高さである。ヘッド31は、例えば、層形成高さ位置に位置するように回転体10の内周面11から離間している。
【0022】
ヘッド31は、対応する位置の回転体10の内周面11にスラリーを供給する。例えば、ヘッド31は、回転体10の左端面12から右端面13までの間において中心線方向Dに沿って線状にスラリーを供給する。ヘッド31に対応する回転体10の内周面11の位置を範囲U1とした場合、ヘッド31は、範囲U1において所定の量のスラリーを供給する。回転体10の回転に応じて回転体10の内周面11がヘッド31に対応する位置を通過するため、ヘッド31は、回転体10の内周面11の任意の位置にスラリーを供給できる。スラリーは、供給源32から供給パイプ33を通じてヘッド31に供給される。ヘッド31から供給するスラリーの量は、範囲U1の長さ、回転体10の回転速度又は造形物の形状などに基づいて定められる。ヘッド31は、振動機能を有し、スラリーの流動性を高めてもよい。
【0023】
第1駆動部40は、供給部30を回転体10の径方向Cに沿って移動させる。一例として、第1駆動部40は、供給部30のヘッド31を径方向Cに移動させる。第1駆動部40は、例えば、径方向Cに延びるガイドレールと、駆動源とを有する。ガイドレールは、回転体10の右端面13の側方に配置され、ヘッド31の端部に接続される。第1駆動部40により、供給部30のヘッド31は、回転体10の内周面11に近接又は離間するように径方向Cに沿って移動する。第1駆動部40は、一層分の厚さ単位でヘッド31を径方向Cに移動させる。第1駆動部40により、ヘッド31は回転体10の内周面11に対して所定の高さでスラリーを供給しスラリーの層200を形成する。
【0024】
平坦部50は、回転駆動部20による回転体10の回転中に、その端部で回転体10の内周面11に供給されたスラリーを一層分の厚さにならす。平坦部50は、例えばスクレーパである。回転体10の回転中に平坦部50がスラリーをならすとは、平坦部50によるスラリーの平坦化が、回転駆動部20による回転体10の回転とともに行われることを意味する。平坦部50は、回転体10の内周面11より回転軸M側において、回転体10の回転方向Rにおける供給部30の下流に位置する。平坦部50は、回転体10の内周面11に沿って中心線方向Dに延在する。
【0025】
平坦部50の端部は、平坦部50に対応する位置の回転体10の内周面11上のスラリーを平坦化する。平坦部50は、回転体10の左端面12から右端面13までの間において中心線方向Dに沿って線状にスラリーを平坦化する。平坦部50に対応する位置の回転体10の内周面11を範囲U2とした場合、平坦部50は、範囲U2における回転体10の内周面11上のスラリーを平坦化する。回転体10の回転に応じて回転体10の内周面11が平坦部50に対応する位置を通過するため、平坦部50は、回転体10の内周面11の任意の位置のスラリーを平坦化できる。平坦部50の端部が供給部30から回転体10の内周面11に供給されたスラリーを平坦化することにより、回転体10の内周面11に一層分のスラリーの層200が形成される。
【0026】
第2駆動部60は、平坦部50を回転体10の径方向Cに沿って移動させる。第2駆動部60は、回転体10の回転方向Rにおける第1駆動部40の下流に設けられる。第2駆動部60は、例えば、径方向Cに延びるガイドレールと、駆動源とを有する。ガイドレールは、回転体10の右端面13の側方に配置され、平坦部50の端部に接続される。第2駆動部60により、平坦部50は、回転体10の内周面11に近接又は離間するように径方向Cに沿って移動する。第2駆動部60は、一層分の厚さ単位で平坦部50を径方向Cに移動させる。第2駆動部60は、例えば、ガイドレール及び駆動源で構成される。第2駆動部60により、平坦部50は回転体10の内周面11に対して所定の位置でスラリーの層200を平坦化する。第1駆動部40と第2駆動部60とは、共通の1つの駆動部として供給部30及び平坦部50を駆動させてもよいし、それぞれ独立した2つの駆動部として供給部30及び平坦部50をそれぞれ駆動させてもよい。
【0027】
照射部70は、回転駆動部20による回転体10の回転中に、照射位置に紫外線をスポット照射する。照射位置とは、スラリーの層200に設定される位置であり、紫外線が照射される目標となる位置である。照射位置とは、造形物の形状に基づいて定められた、スラリーの層200を硬化させて造形物の少なくとも一部を形成する位置である。照射位置は、例えば、造形物のCADデータに基づく断面形状を再現するように定められる。ここでのスポット照射とは、スラリーに含まれる紫外線硬化樹脂が硬化に必要な照射強度を得るために、紫外線を集光させ、スラリー上に照射点(スポット)を形成させる照射方式である。スポット照射による照射点の大きさは、例えば直径0.5mm以上1mm以下の円である。回転体10の回転中に照射部70が紫外線をスポット照射するとは、照射部70による紫外線の照射が、回転駆動部20による回転体10の回転と同時に又は交互に行われることを意味する。
【0028】
照射部70は、一例として、光学ユニット71及び光反射部材72,74を備える。光学ユニット71は、例えば光源71a及び光学部材71bを備え、紫外線を出射する。光反射部材72,74は、例えばカルバノミラーであり、光学ユニット71から出射された紫外線の光路を変更する。光反射部材72,74は、回転小駆動部73,75により、所定の回転軸を中心として回転動作をする。光反射部材72,74が回転制御されることにより、照射部70は、層形成高さ位置において、スラリーの照射位置に対して紫外線を照射できる。
【0029】
照射部70は、照射部70に対応する位置の回転体10の内周面11に紫外線を照射する。例えば、照射部70は、回転体10の左端面12から右端面13までの中心線方向Dに沿った線分上を走査するように紫外線をスポット照射する。照射部70に対応する位置の回転体10の内周面11を範囲U3とした場合、照射部70は、範囲U3における回転体10の内周面11上のスラリーに紫外線を照射可能なように、光反射部材72,74、及び回転小駆動部73,75を制御する。
【0030】
照射部70のうち、少なくとも光反射部材74及び回転小駆動部75は、例えば、回転体10の内周面11より回転軸M側に設けられ、回転体10の回転方向Rにおける平坦部50の下流に位置する。照射部70が、平坦部50により平坦化されたスラリーの層200の照射位置に対して紫外線を照射することにより、スラリーに含まれる紫外線硬化樹脂が硬化する。照射部70は、回転体10の回転中にスラリーの層200の照射位置に対して紫外線を照射することにより、造形物の断面を一層分形成する。
【0031】
コントローラ100は、付加製造装置1を制御するハードウェアである。コントローラ100は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、及び通信装置などを有する汎用コンピュータで構成される。コントローラ100は、回転駆動部20、供給部30、第1駆動部40、第2駆動部60及び照射部70と通信可能に接続される。
【0032】
図2は、第1実施形態に係る付加製造装置の制御部の一例を示すブロック図である。図2に示す通り、コントローラ100は、供給制御部102と、回転駆動制御部104と、照射制御部106と、第1駆動制御部108と、第2駆動制御部110とを有する。供給制御部102は、供給部30が回転体10の内周面11に供給するスラリーの量及び供給速度などを制御する。
【0033】
回転駆動制御部104は、回転駆動部20における回転体10の回転方向R、回転速度、回転数、回転角度、回転の開始、及び回転の停止を制御する。回転角度は、一層分に関するスラリーの供給が開始される回転体10の内周面11上の位置を示す角度であり、回転の基準位置を用いて表現される。回転の基準位置とは、回転角度の原点となる予め定められた固定位置であり、例えば、照射部70に対応する位置、つまり範囲U3の位置とすることができる。回転駆動部20は、範囲U3の位置を基準とし、一層分に関するスラリーの供給が開始される回転体10の内周面11上の位置を計測位置としてモニタする。つまり、回転駆動部20は、一層分に関するスラリーの供給が開始される回転体10の内周面11上の位置を、範囲U3の位置を原点位置とした回転角度で表現する。回転駆動制御部104は、基準位置と計測位置とが一致した場合に回転角度を0度(原点)とし、回転方向Rに計測位置が移動していくごとに回転角度を増加させる。回転駆動制御部104は、再び基準位置と計測位置とが一致した場合に回転角度を0度とする。回転駆動制御部104は、計測位置の回転角度に基づいて、回転体10が一回転したか否かを判定し、回転数を計測する。
【0034】
照射制御部106は、照射部70により照射される紫外線の強度又は紫外線の照射点の位置を制御する。照射点の位置とは、照射部70が紫外線を照射する位置である。具体的には、照射点の位置は、照射部70より照射される紫外線が回転体10の内周面11上のスラリーに到達する位置である。
【0035】
第1駆動制御部108は、第1駆動部40を制御する。第1駆動制御部108は、供給部30と回転体10との相対距離と、回転体10と供給部30とを相対的に近接又は離間させる速度及びそのタイミングとを制御する。
【0036】
第2駆動制御部110は、第2駆動部60を制御する。第2駆動制御部110は、平坦部50と回転体10との相対距離と、回転体10と平坦部50とを相対的に近接又は離間させる速度及びそのタイミングとを制御する。
【0037】
コントローラ100は、記憶装置に記憶された造形物の3次元のCADデータに基づいて回転駆動部20、供給部30、第1駆動部40、第2駆動部60、及び照射部70を動作させる。コントローラ100は、平坦部50を制御してもよい。コントローラ100は、付加製造装置1の外部に設けられてもよい。
【0038】
次に、付加製造装置1による造形物の製造工程を説明する。図3は、第1実施形態に係る付加製造方法の一例を示すフローチャートである。図3に示す付加製造方法MTは、回転駆動部20による回転体10の回転中において、コントローラ100により実行される。
【0039】
まず、相対移動処理(S10)において、コントローラ100の第1駆動制御部108及び第2駆動制御部110は、供給部30のヘッド31より供給されるスラリーの内周面が層形成高さ位置になるようにヘッド31及び平坦部50と回転体10の内周面11との距離を第1駆動部40及び第2駆動部60に調整させる。第1駆動制御部108の制御に基づき、第1駆動部40によりヘッド31が径方向Cに移動し、回転体10の内周面11との径方向Cにおける距離が調整される。ヘッド31は、層形成高さ位置に位置するように調整される。
【0040】
第2駆動制御部110の制御に基づき、第2駆動部60により平坦部50が径方向Cに移動し、回転体10の内周面11との径方向Cにおける距離が調整される。平坦部50は、その端部が層形成高さ位置に位置するように調整される。相対移動処理(S10)中では回転駆動部20による回転体10の回転を停止させてもよい。
【0041】
続いて、コントローラ100の供給制御部102は、供給処理(S20)として、供給部30にスラリーを回転体10の内周面11上に供給させる。供給制御部102は、供給源32から供給パイプ33を通じてヘッド31にスラリーを供給させる。ヘッド31は、ヘッド31に対応する位置の回転体10の内周面11上(範囲U1)にスラリーを供給する。これにより、ヘッド31に対応する位置を通過した回転体10の内周面11上にスラリーが付与される。
【0042】
続いて、コントローラ100は、平坦化処理(S30)として、回転駆動部20による回転体10の回転中に、平坦部50に回転体10の内周面11に供給されたスラリーを一層分の厚さに平坦化させる。供給部30により供給されたスラリーは、回転体10の回転方向Rの下流方向に位置する平坦部50に対応する位置まで移動する。平坦部50は、平坦部50に対応する位置の回転体10の内周面11上(範囲U2)のスラリーを平坦化する。これにより、平坦部50に対応する位置を通過した回転体10の内周面11に一層分のスラリーの層200が形成される。
【0043】
続いて、コントローラ100の照射制御部106は、照射処理(S40)として、回転駆動部20による回転体10の回転中に、回転体10の内周面11において平坦化されたスラリーの層200の照射位置に対して、照射部70に紫外線をスポット照射させる。平坦部50により平坦化されたスラリーの層200は、回転体10の回転方向Rの下流方向に位置する照射部70に対応する位置まで移動する。照射部70は、光反射部材74に対応する位置の回転体10の内周面11上(範囲U3)におけるスラリーの層200の照射位置に対して紫外線をスポット照射する。回転体10が回転することにより、照射部70は、スラリーの層200の全ての照射位置に対して紫外線をスポット照射し、回転体10の内周面11に造形物の層として造形物の断面を一層分形成する。
【0044】
続いて、コントローラ100は、形成判定処理(S50)として、回転体10の内周面11において造形物の形成が完了したか否かを判定する。コントローラ100は、例えば、記憶装置に記憶された造形物の3次元のCADデータ、回転体10の回転数、供給部30のヘッド31の高さ位置、及び照射部70における照射点の位置などに基づき、全ての照射位置に紫外線の照射が完了した場合に造形物の形成が完了したと判定する。コントローラ100において、造形物の形成が完了したと判定された場合、付加製造装置1による造形物の形成を終了する。コントローラ100において、造形物の形成が完了していないと判定された場合、コントローラ100は、相対移動処理(S10)へと移行する。コントローラ100は、造形物の形成が完了するまで相対移動処理(S10)以降の処理を繰り返す。
【0045】
図4は、図1におけるIV−IV矢視図である。図4の(A)は、付加製造方法MTにより一層分のスラリーの層200が形成されている状態を示す。図4の(A)に示すように、回転駆動部20により回転体10の内周面11が回転方向Rに移動し、供給部30のヘッド31に対応する位置である範囲U1に移動する。これにより、供給部30のヘッド31により内周面11上に一層分のスラリーの層200が形成される。回転駆動部20により回転体10の内周面11が平坦部50に対応する位置である範囲U2に移動するため、一層分のスラリーの層200が平坦部50により平坦化される。また、回転駆動部20により回転体10が回転することで、回転体10の内周面11上のスラリーの層200は、遠心力によって径方向Cの外方向に押圧される。このため、回転体10の回転中にスラリーが内周面11から脱離することが抑制される。
【0046】
測定位置200aは、範囲U3に対して回転方向Rの下流に位置する。スラリーの層200は、照射部70を通過しようとする部分に照射位置210が設定されていない場合、照射部70による紫外線の照射を受けずに範囲U3を通過する。照射部70は、範囲U3内のスラリーの層200の照射位置210に対して紫外線を照射する。これにより、一層分のスラリーの層200において、一層分の造形物の層が形成される。
【0047】
図4の(B)は、付加製造方法MTにより一層分のスラリーの層200が全て形成された状態を示す。図4の(B)に示すように、測定位置200aが範囲U1に到達した場合、第1駆動部40は、供給部30のヘッド31を一層分の厚さだけスラリーの層200から離間させる。第2駆動部60は、平坦部50を一層分の厚さだけスラリーの層200から離間させる。第1駆動部40が供給部30を移動させる場合、又は、第2駆動部60が平坦部50を移動させる場合、回転駆動部20は、回転体10の回転を停止させた状態であってもよい。
【0048】
図4の(C)は、付加製造方法MTにより一層分のスラリーの層200の内周面に一層分のスラリーの上層201が形成されている状態を示す。図4の(C)に示すように、供給部30のヘッド31により供給され、平坦部50により平坦化したスラリーの上層201は、一層分のスラリーの層200の内周面に積層される。
【0049】
次に、付加製造装置1による照射処理(S40)の具体例を説明する。図5は、第1実施形態に係る付加製造方法の照射処理の一例を示すフローチャートである。図5に示す付加製造方法例ST1は、回転駆動部20による回転体10の回転中において、図3に示す平坦化処理(S30)において平坦化されたスラリーの層200における照射位置210が範囲U3に回転して移動してきた場合にコントローラ100により実行される。付加製造方法例ST1において、照射部70は、回転体10の一回転中に、一層分のスラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線をスポット照射する。なお、付加製造方法例ST1において、図3に示す供給部30による供給処理(S20)及び平坦部50による平坦化処理(S30)が同時に行われる場合がある。
【0050】
まず、紫外線照射処理(S41)において、コントローラ100の照射制御部106は、回転体10の内周面11において平坦化されたスラリーの層200における照射位置210に対して、照射部70に紫外線をスポット照射させる。照射部70は、光反射部材72,74及び回転小駆動部73,75における調整により、光反射部材74に対応する位置の回転体10の内周面11上(範囲U3)における全ての照射位置210に対してスポット照射する。
【0051】
続いて、コントローラ100は、層判定処理(S42)として、照射部70が一層分のスラリーの層200における全ての照射位置210に対して紫外線を照射したか否かを判定する。具体的には、コントローラ100は、スラリーの層200における照射位置210及び回転角度に基づいて全ての照射位置210に対して紫外線を照射したか否かを判定する。あるいは、コントローラ100は、回転駆動制御部104により計測された回転角度が0度になっているか否かを判定してもよい。コントローラ100において、照射部70が一層分のスラリーの層200における全ての照射位置210に対して紫外線を照射したと判定された場合、回転体10の一回転中に一層分のスラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線がスポット照射されているため、付加製造装置1による照射処理(S40)を終了する。
【0052】
コントローラ100において照射部70が一層分のスラリーの層200における全ての照射位置210に対して紫外線を照射していないと判定された場合、コントローラ100は、回転駆動制御部104により範囲U3内に回転方向Rの上流の照射位置210が移動してくるまで回転体10を回転させた上で、紫外線照射処理(S41)へと移行する。コントローラ100は、照射部70が一層分のスラリーの層200における全ての照射位置210に対して紫外線を照射したと判定されるまで紫外線照射処理(S41)以降の処理を繰り返す。
【0053】
付加製造方法例ST1が実行されている間に測定位置200aが範囲U1を通過する場合、コントローラ100の供給制御部102は、供給部30により、図3の供給処理(S20)としてスラリーの層200の上にスラリーを供給させる。付加製造方法例ST1が実行されている間に測定位置200aが範囲U2を通過する場合、コントローラ100は、平坦部50により、平坦化処理(S30)としてスラリーの層200の上に供給されたスラリーを平坦化する。
【0054】
図6は、図1におけるVI−VI矢視図であり、図5の照射処理を実行した場合の回転体の平面視図である。図6の(A)は、一層分のスラリーの層200において、照射部70により複数回の紫外線照射処理(S41)が完了した状態を示す。図6の(A)に示すように、供給部30のヘッド31により供給され、平坦部50により平坦化したスラリーの層200において、測定位置200aは、範囲U3に対して回転方向Rの下流に位置する。スラリーの層200は、照射部70を通過しようとする部分に照射位置210が設定されていない場合、照射部70による紫外線の照射を受けずに範囲U3を通過する。付加製造方法例ST1における照射部70は、回転駆動部20による回転体10の一回転中に、範囲U3内のスラリーの層200の全ての照射位置210に対して紫外線を照射する。照射部70が照射する紫外線は、回転体10の内周面11上のスラリーにおいて、照射点70aのように点で表される。照射部70は、照射点70aの位置を範囲U3において中心線方向Dに移動させることで、範囲U3の全ての照射位置210に対して紫外線を照射できる。これにより、一層分のスラリーの層200の中心線方向Dにおいて、一層分の造形物の層が形成される。
【0055】
図6の(B)は、一層分のスラリーの層200において、照射部70により全ての紫外線照射処理(S41)が完了した状態を示す。図6の(B)に示すように、付加製造方法例ST1において、照射点70aの位置において紫外線を照射された照射位置210は、紫外線照射処理(S41)の後も回転するため、範囲U3から回転方向Rの下流に位置する。
【0056】
また、付加製造方法例ST1では、一回転の間に一層分の造形物の層が形成されるため、供給部30は、相対移動処理(S10)及び供給処理(S20)により造形物の層の上にスラリーの上層201を供給できる。このため、測定位置200aがヘッド31に対応する位置である範囲U1を通過した後において、ヘッド31からスラリーの層200の内周面にスラリーが供給される。これにより、範囲U1から回転方向Rの下流の測定位置200aまでの間のスラリーの層200の内周面には、スラリーの上層201が供給される。これにより、付加製造方法例ST1は、連続的にスラリーの層200を形成でき、造形物の製造速度を向上させることができる。測定位置200aが再び範囲U3(基準位置)に達するまでの間に、一層分の造形物の層がすべて形成される。測定位置200aが範囲U3(基準位置)に達した以降の紫外線照射処理(S41)に伴い、スラリーの上層201の照射位置210においても造形物の層が形成される。
【0057】
続いて、付加製造装置1による照射処理(S40)の他の具体例を説明する。図7は、第1実施形態に係る付加製造方法の照射処理の一例を示すフローチャートである。図7に示す付加製造方法例ST2は、図3に示す平坦化処理(S30)において平坦化されたスラリーの層200における照射位置210が範囲U3に回転して移動してきた場合にコントローラ100により実行される。照射位置210が範囲U3に回転して移動してきた後において、コントローラ100は、回転駆動部20による回転体10の回転を停止させた上で、付加製造方法例ST2の各処理に移行する。
【0058】
付加製造方法例ST2において、照射部70は、紫外線の照射点70aの位置を回転体10の回転ごとに回転体10の内周面11の中心線方向Dに沿って変更する。そして、照射部70は、回転体10の一回転中に照射点70aの位置を中心線方向Dに移動させないように制御する。これにより、照射部70は、回転体10の回転に伴って、回転体10の内周面11上で回転体10の中心軸を中心とする円を描くように照射点を走査できる。このように、照射部70は、スポット照射と回転体10の回転とを利用して、回転体10の回転方向Rへのライン照射を実現できる。一層分のスラリーの層200のうち範囲U3に位置する部分に中心線方向Dに沿って複数の照射位置210が設定されている場合、回転駆動部20が回転体10を一回転させるごとに照射部70は照射点70aの位置を中心線方向Dに移動させ、一層分のスラリーの層200の照射位置210に紫外線をスポット照射する。なお、付加製造方法例ST2は、図3に示す供給部30による供給処理(S20)及び平坦部50による平坦化処理(S30)は同時に行われない点で付加製造方法例ST1と相違する。
【0059】
まず、照射調整処理(S44)では、コントローラ100の照射制御部106は、記憶装置に記憶された造形物の3次元のCADデータに基づき、一層分のスラリーの層200における照射位置210を照射部70に認識させる。照射部70は、一層分のスラリーの層200における照射位置210に基づいて、中心線方向Dにおける照射点70aの位置を固定する。
【0060】
続いて、コントローラ100の照射制御部106は、紫外線照射処理(S45)として、回転体10の内周面11において平坦化されたスラリーの照射位置210に対して、照射部70に紫外線をスポット照射させる。照射部70は、範囲U3内の照射点70aの固定位置と一致した照射位置210に対してスポット照射する。つまり、付加製造方法例ST2においては、照射部70は、範囲U3の中心線方向Dにおいて照射点70a以外の位置に他の照射位置210があった場合であってもその照射位置210に対しては紫外線のスポット照射はしない。
【0061】
続いて、コントローラ100は、円周方向判定処理(S46)として、照射部70が、一層分のスラリーの層200の照射位置210のうち照射点70aの固定位置における回転方向Rの全ての照射位置210に紫外線を照射したか否かを判定する。コントローラ100は、紫外線照射処理(S45)において、照射部70により紫外線を照射した照射位置210から回転方向Rの上流方向の一層分のスラリーの層200に対して、照射部70が紫外線を照射していない照射位置210がないか否かを判定する。
【0062】
円周方向判定処理(S46)において、照射部70が一層分のスラリーの層200の照射位置210のうち照射点70aの固定位置における回転方向Rの全ての照射位置210に紫外線を照射していないと判定された場合、コントローラ100は、第1回転処理(S47)へと移行する。コントローラ100は、第1回転処理(S47)として、回転駆動部20により回転体10を回転させる。回転駆動制御部104は、範囲U3内の照射点70aに回転方向Rの下流の照射位置210が移動してくるまで回転体10を回転させる。コントローラ100は、第1回転処理(S47)が終了した場合、紫外線照射処理(S45)へと移行する。コントローラ100は、照射部70が一層分のスラリーの層200の照射位置210のうち照射点70aの固定位置における回転方向Rの全ての照射位置210に紫外線を照射するまで紫外線照射処理(S45)以降の処理を繰り返す。
【0063】
円周方向判定処理(S46)において、照射部70が回転方向Rの全ての照射位置210に紫外線を照射したと判定された場合、コントローラ100は、中心線方向判定処理(S48)へと移行する。コントローラ100は、中心線方向判定処理(S48)として、照射部70が中心線方向Dにおける一層分のスラリーの層200の全ての照射位置210に紫外線を照射したか否かを判定する。コントローラ100は、例えば、記憶装置に記憶された造形物の3次元のCADデータに基づき、一層分のスラリーの層200において、紫外線照射処理(S45)にて照射部70が全ての照射位置210に紫外線を照射したか否かを判定する。
【0064】
中心線方向判定処理(S48)において、照射部70が一層分のスラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線を照射していないと判定された場合、コントローラ100は、第2回転処理(S49)へと移行する。コントローラ100は、第2回転処理(S49)として、回転駆動部20により回転体10を回転させる。回転駆動制御部104は、範囲U3内に回転方向Rの上流の照射位置210が移動してくるまで回転体10を回転させる。コントローラ100は、第2回転処理(S49)が終了した場合、照射調整処理(S44)へと移行する。コントローラ100は、照射点の位置を中心線方向Dに沿って移動させて固定する。コントローラ100は、照射部70がスラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線を照射するまで照射調整処理(S44)以降の処理を繰り返す。
【0065】
中心線方向判定処理(S48)において、照射部70が一層分のスラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線を照射したと判定された場合、コントローラ100は、照射処理(S40)を終了する。
【0066】
図8は、図1におけるVIII−VIII矢視図であり、図7の照射処理を実行した場合の回転体の平面視図である。図8の(A)は、一層分のスラリーの層200において、照射部70により複数回の円周方向判定処理(S46)が実行され、第1回転処理(S47)を介して複数回の紫外線照射処理(S45)を実行された状態を示す。図8の(A)に示すように、照射部70が照射する紫外線は、回転体10の内周面11において、照射点70aのように点で表される。照射点70aの位置は、コントローラ100において実行される照射調整処理(S44)により中心線方向Dに移動する。供給部30のヘッド31により供給され、平坦部50により平坦化され、そして、範囲U3に達したスラリーの層200は、一層分のスラリーの層200の照射位置210のうち照射点70aの固定位置に一致する照射位置210に対して紫外線がスポット照射される。付加製造方法例ST2における照射部70は、範囲U3内のスラリーの層200に対し、中心線方向Dにおいて照射点70aの固定位置に一致する一点の照射位置210に対して紫外線を照射する。
【0067】
図8の(B)は、一層分のスラリーの層200において、図8の(A)の後に照射部70によりさらに複数回の円周方向判定処理(S46)が実行され、第1回転処理(S47)を介して複数回の紫外線照射処理(S45)を実行された状態を示す。図8の(B)に示すように付加製造方法例ST2において、照射点70aの位置において紫外線を照射された照射位置210は、紫外線照射処理(S41)の後に実行される第1回転処理(S47)により回転するため、範囲U3から回転方向Rの下流に位置する。付加製造方法例ST2において、回転駆動部20による回転体10の一回転中に、照射制御部106は中心線方向Dにおいて照射点70aの位置を固定している。このため、これらの処理を繰り返すことにより、照射部70は中心線方向Dのある位置における回転方向Rの全ての照射位置210に紫外線を照射した状態となる。これにより、回転駆動部20による回転体10の回転する角度に応じて、照射部70は、中心線方向Dに照射点70aの位置を変える必要がないため、付加製造方法例ST2は、造形物の製造速度を向上させることができる。
【0068】
照射部70が全ての照射位置210に紫外線照射するまでに、第1駆動制御部108は、第1駆動部40により回転体10の内周面11と供給部30との相対的な距離を調整する。照射部70が全ての照射位置210に紫外線照射するまでに、第2駆動制御部110は、第2駆動部60により回転体10の内周面11と平坦部50との相対的な距離を調整する。これにより、スラリーの層200の上層に対する造形物の層の形成も、スラリーの層200に対する造形物の層の形成後に連続して実行できるため、付加製造方法例ST2は、造形物の製造速度を向上させることができる。
【0069】
図8の(C)は、一層分のスラリーの層200において、図8の(B)の後に照射部70によりさらに複数回の中心線方向判定処理(S48)及び複数回の円周方向判定処理(S46)が実行され、複数回の紫外線照射処理(S45)を実行された状態を示す。図8の(C)に示すように付加製造方法例ST2において、照射点70aの位置は、中心線方向判定処理(S48)の後の照射調整処理(S44)において、中心線方向Dに沿って移動し固定される。これにより、中心線方向Dにおける照射位置210に対して照射点70aの固定位置を一致させることができる。
【0070】
図8の(D)は、一層分のスラリーの層200において、照射部70により全ての紫外線照射処理(S45)が完了した状態を示す。図8の(D)に示すようにスラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線が照射されるまで、供給部30は、スラリーの層200の内周面にスラリーの上層を供給しない。スラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線が照射された場合、供給部30は、スラリーの層200の測定位置200aがヘッド31の径方向Cの外方向における範囲U1に達していなくてもスラリーの上層201を形成し始めてもよい。
【0071】
以上、本実施形態の付加製造装置1及び付加製造方法MTによると、造形物の製造速度を向上させることができる。また、回転体10が回転することにより、スラリーは回転体10の内周面11において遠心力によって径方向Cの外方向に押圧される。このため、付加製造装置1及び付加製造方法MTは、回転体10の回転中にスラリーが内周面11から脱離することを抑制できる。
【0072】
また、回転駆動部20により回転体10の内周面11が供給部30、平坦部50及び照射部70に対して回転方向Rに移動するため、供給部30、平坦部50及び照射部70が回転方向Rに移動しなくてよい。このため、供給部30、平坦部50及び照射部70は、各構成の移動の完了を待たずに処理を実行でき、連続的に造形物の層を形成できる。
【0073】
また、供給部30及び平坦部50は、各構成の処理の完了を待たずに、回転体10に対して第1駆動部40及び第2駆動部60により移動することができる。これらにより、付加製造装置1及び付加製造方法MTは、各構成の移動又は処理の完了を待つ時間を短縮できる。
【0074】
付加製造方法例ST1によれば、照射部70による紫外線の照射位置210から回転駆動部20により回転体10が一回転するまでの間に、一層分の造形物の層の形成が完了する。これにより、付加製造方法例ST1は、供給部30、平坦部50、及び照射部70における各処理を連続して実行できる。
【0075】
付加製造方法例ST2によれば、照射部70は、紫外線の照射開始から回転体10が一回転するまでの間に回転体10の内周面11の中心線方向Dの照射点70aの位置を変更しなくてよい。これにより、付加製造方法例ST2は、照射部70における照射点70aの位置の変更に伴う所要時間を減少できる。回転体10の一回転ごとに照射部70が中心線方向Dの照射点70aの位置を変更して紫外線を照射している間に、第1駆動部40は、回転体10の内周面11と供給部30との相対距離を調整できる。回転体10の一回転ごとに照射部70が中心線方向Dの照射点70aの位置を変更して紫外線を照射している間に、第2駆動部60は、回転体10の内周面11と平坦部50との相対距離を調整できる。スラリーの層200における全ての照射位置210に紫外線が照射された場合、供給部30は、スラリーの層200の測定位置200aがヘッド31に対応する位置である範囲U1に達していなくてもスラリーの上層を形成し始めることができる。
【0076】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る付加製造装置について説明する。本実施形態の説明では、第1実施形態との相違点を説明し、重複する説明を省略する。第2実施形態に係る付加製造装置は、第1実施形態に係る付加製造装置1と比較して、ノズルを備える点が相違し、その他は同一である。
【0077】
図9は、第2実施形態に係る付加製造装置の一例を示す概要図である。図9においては、供給部30、平坦部50及び照射部70の記載を省略している。図9に示すように、付加製造装置1Aは、回転体10と、回転駆動部20と、ノズル81と、コントローラ100Aとを備える。ノズル81は、回転体10の内周面11に向けて液体又は気体を供給する。ノズル81から供給される液体又は気体は、例えば洗浄液である。洗浄液の具体的な一例は、エタノール、メタノール、アセトン、イソブチルアルコール、トルエン若しくはキシレンなどの有機溶剤、又は、重合禁止剤を含有するアクリル系モノマー若しくはエポキシ系モノマーである。ノズル81は、例えば、第1実施形態に係る付加製造装置1によって回転体10の内周面11上に形成されたスラリーの層200又は造形物に対し、洗浄液を供給し、洗浄する。
【0078】
ノズル81は、例えば洗浄パイプ82と、洗浄ポンプ83とに接続される。ノズル81には、洗浄ポンプ83によって洗浄パイプ82を介して洗浄液が供給される。ノズル81は、回転体10の内周面11より回転軸M側に配置され、回転軸Mに沿って延在する。回転体10の回転に応じて回転体10の内周面11がノズル81に対応する位置を通過するため、ノズル81は、回転体10の内周面11の任意の位置に洗浄液を供給できる。ノズル81から供給する洗浄液の量は、中心線方向Dにおける左端面12から右端面13までの長さ、回転体10の回転速度又は造形物の形状などに基づいて定められる。ノズル81、洗浄パイプ82又は洗浄ポンプ83は、複数設けられてもよい。また、造形物の形成後において、供給部30、平坦部50及び照射部70を回転体10の内部から取り出し、その後にノズル81を回転体10の内部に配置してもよい。
【0079】
コントローラ100Aは、回転駆動部20A及びノズル81と通信可能に接続される。コントローラ100Aは、コントローラ100と同一のハードウェア構成であり得る。コントローラ100Aは、回転駆動制御部104Aと、洗浄制御部112とを有する。回転駆動制御部104Aは、回転駆動部20における回転体10の回転方向R、回転速度、回転数、回転の開始、回転の時間及び回転の停止を制御する。洗浄制御部112は、ノズル81における洗浄液の供給量、供給速度、供給時間、及び散布範囲などを制御する。
【0080】
以下に、付加製造装置1Aによる造形物の洗浄工程を説明する。コントローラ100の回転駆動制御部104Aは、回転駆動部20により回転体10を回転方向Rに回転させる。続いて、コントローラ100の洗浄制御部112は、ノズル81により、回転体10の内周面11上のスラリーの層200及び造形物に洗浄液を供給させる。未硬化のスラリーは、造形物よりも流動性が高いため、供給された洗浄液によって造形物から分離される。さらに、回転体が回転することにより、未硬化のスラリーに遠心力が加わり、流動性がより高くなり、造形物から分離することが容易となる。また、造形物が複雑な形状を有する場合であっても、回転体10が回転することにより、供給された洗浄液が遠心力によって造形物の細部に侵入し易くなるため、造形物の洗浄工程における工数が短くなる。これにより、付加製造装置1Aは、造形物の表面から硬化していないスラリーを分離でき、造形物を取り出させることができる。
【0081】
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。例えば、第1実施形態及び第2実施形態におけるスラリーは光硬化樹脂を含んでもよい。この場合、照射部70は、光を照射する。
【0082】
第1実施形態における供給部30、平坦部50、第1駆動部40、第2駆動部60、及び照射部70は、複数設けられてもよい。この場合、供給部30、平坦部50、第1駆動部40、第2駆動部60、及び照射部70を一組とした照射セットが、回転体10の回転方向Rに沿うように設けられる。第1実施形態においては、スラリーの流動性が高いほど供給部30から照射部70までの距離が短くなるように、供給部30、平坦部50、及び照射部70が配置されてもよい。第1実施形態においては、供給部30、平坦部50、及び照射部70は、回転軸Mの下方に設けられてもよい。この場合、付加製造装置1は、供給されたスラリーのうち、少なくとも造形物となる部分が重力により内周面11から分離することを抑制できる。
【0083】
第1実施形態及び第2実施形態における回転体10は、円筒状でなくてもよい。この場合、回転体10は、四角柱状などであってもよい。回転体10は、外形の形状によらず、その内部に内周面11により空間15が画成されればよい。第1実施形態及び第2実施形態における回転体10には、スラリーが供給される上面を有するステージが内周面11上に設けられてもよい。付加製造装置1は、複数のステージを備えてもよい。この場合、付加製造装置1は、各ステージ上に造形物を形成できる。ステージの上面は、平坦面であってもよい。この場合、ステージの上面と供給部30、平坦部50、及び照射部70との径方向Cにおける距離それぞれは、異なる距離となる。このため、供給部30は、スラリーの供給速度及び供給量を距離に応じて変更してもよい。また、平坦部50は、ステージの平坦面に接する端部の径方向Cにおける長さを回転体10の回転速度及び回転角度に応じて変更してもよい。照射部70は、層形成高さ位置を回転体10の回転速度及び回転角度に応じて変更してもよい。
【0084】
また、第1実施形態における供給部30のヘッド31は、層形成高さ位置にスラリーの層200の厚さを加えた高さになるように回転体10の内周面11から離間させてもよい。
【0085】
また、第1実施形態における付加製造装置1においては、スラリーの第1層のための供給及び平坦化とスラリーの第2層のための供給及び平坦化とを時間的に連続して行う場合、スラリーの第2層のための供給及び平坦化を開始するタイミングで供給部30及び平坦部50を一層分だけ回転体10から離間する方向に移動させる必要がある。しかし、供給部30及び平坦部50の移動は短時間であるものの時間を要するため、回転体10の回転速度によっては意図したタイミングでスラリーの第2層のための供給及び平坦化を開始することができないおそれがある。このため、付加製造装置1は、スラリーの第2層のための供給及び平坦化を開始するタイミングで回転体10の回転を停止し、供給部30及び平坦部50を一層分だけ回転体10から離間する方向に移動させ、その後、回転体10の回転を再開するように制御してもよい。
【0086】
あるいは、付加製造装置1は、並設された2組の供給部30及び平坦部50を有してもよい。例えば、付加製造装置1は、上流側の供給部30及び平坦部50と、下流側の供給部30及び平坦部50とを有してもよい。付加製造装置1は、2組の供給部30及び平坦部50を異なるタイミングで移動させることにより、スラリーの第2層のための供給及び平坦化を意図したタイミングで開始させる。具体的には、上流側の供給部30及び平坦部50は、その端部がスラリーの上層201(第2層)の高さ位置になるように配置され、下流側の供給部30及び平坦部50は、その端部がスラリーの層200(第1層)の高さ位置になるように配置される。この場合、上流側の供給部30により第1層の上に供給されたスラリーは上流側の平坦部50によって平坦化されて第2層となる。第2層となったスラリーが下流側の供給部30及び平坦部50に到達するまでの時間を利用して、下流側の供給部30及び平坦部50は、回転体10から離間する方向に移動できる。これにより、付加製造装置1は、スラリーの第2層のための供給及び平坦化を意図したタイミングで実行できる。
【0087】
あるいは、供給部30及び平坦部50は、回転体10の回転方向Rに移動可能に構成されてもよい。この場合、付加製造装置1は、供給部30及び平坦部50と回転体10との回転方向Rの相対速度を調整できる。これにより、付加製造装置1は、スラリーの第2層のための供給及び平坦化を開始するタイミングで回転体10の回転を供給部30及び平坦部50から見て相対的に停止させることができる。これにより、付加製造装置1は、供給部30及び平坦部50の平坦化のための移動完了のタイミングと、スラリーの第2層のための供給及び平坦化を開始するタイミングとのタイムラグを解消できる。
【0088】
第1実施形態における照射部70は、光反射部材72,74を備えなくてもよい。つまり、照射部70は、照射点70aの位置を変更する機能を有さず、光学ユニット71から出射される紫外線をスラリーの層200に直接照射してもよい。この場合、付加製造装置1は、照射部70の光学ユニット71を移動させる移動機構を有すればよい。例えば、第1実施形態における付加製造装置1は、照射部70は中心線方向Dに移動させる移動機構を有する。この移動機構により、照射部70は、スラリーの層200における全ての照射位置210に対して紫外線を照射できる。
【0089】
第2実施形態における回転体10は、回転体10の内周面11から排出された未硬化のスラリー、液体又は気体を貯留する貯留容器を設けてもよい。この貯留容器は、回転体10と共に回転する構成であってもよいし、左端面12及び右端面13に近接するように固定された構成であってもよい。貯留容器に回収された未硬化のスラリーは、再利用される。貯留容器に回収された液体又は気体は、廃棄される。未硬化のスラリーと液体又は気体とはそれぞれ別の貯留容器に回収されてもよい。第2実施形態における回転体10は、回転方向Rとは反対の方向に回転してもよい。第2実施形態におけるノズル81は、回転方向R又は回転方向Rの反対の方向に回転体10に対して相対的に回転してもよい。第2実施形態におけるノズル81は、回転体10の内周面11におけるスラリーに対して吸気することで造形物から分離させてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1,1A…付加製造装置、10…回転体、11…内周面、20…回転駆動部、30…供給部、40…第1駆動部、50…平坦部、60…第2駆動部、70…照射部、70a…照射点、81…ノズル、100,100A…コントローラ、210…照射位置、C…径方向、M…回転軸、MT…付加製造方法、R…回転方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9