【解決手段】付加製造システムは、造形物の基材となるスラリーを硬化させて造形物を造形する付加製造装置と、造形物に付着したスラリーを除去する除去装置と、を備え、除去装置は、回転軸を有し、周壁に複数の小孔が設けられ、内部に造形物を固定可能な容器と、回転軸を中心に容器を回転させる駆動部とを有する。
外部と内部とを連通する排出口を有し、前記容器を内部に収容する貯留部の内部に、前記容器の前記小孔を介して前記容器の外部に移送される前記スラリーを貯留するステップと、
前記貯留部を振動させ、前記排出口から前記貯留部内の前記スラリーを排出するステップと、
を有する請求項4に記載の除去方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、造形物の基材として、粒子が懸濁している流動体であるスラリーを用いることが考えられる。スラリーを基材として造形物を形成した場合、未硬化のスラリーに埋没した状態で造形物が得られる。そして、未硬化のスラリーに埋没した造形物を取り出す場合、未硬化のスラリーが造形物に付着していることがある。造形物に付着した未硬化のスラリーは、洗浄及び除去される必要がある。例えば、作業者が手作業によって未硬化のスラリーを洗浄及び除去することが考えられる。しかしながら、作業者の手作業では複雑な形状の造形物に付着した未硬化のスラリーを効率良く除去できないおそれがある。また、造形物の種類が多くなったり、造形物の個数が多くなったりした場合には、さらに多くの作業時間を要するおそれがある。
【0005】
本開示は、造形物に付着したスラリーを効率的に除去できる付加製造システム及び除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る付加製造システムは、造形物の基材となるスラリーを硬化させて造形物を造形する付加製造装置と、造形物に付着したスラリーを除去する除去装置と、を備え、除去装置は、回転軸を有し、周壁に複数の小孔が設けられ、内部に造形物を固定可能な容器と、回転軸を中心に容器を回転させる駆動部とを有する。
【0007】
この付加製造システムでは、付加製造装置によってスラリーが硬化して造形物が造形される。造形物は、容器の内部に固定される。容器は回転軸を有し、駆動部により回転軸を中心に回転する。造形物に付着したスラリーは、造形物として硬化したスラリーより結合力が弱いため、容器の内部に生じる遠心力により造形物から分離される。分離されたスラリーは、容器の周壁に設けられた複数の小孔を介して外部に移送される。これにより、この付加製造システムは、容器の内部において、スラリーの付着が軽減された造形物を容易に得ることができる。よって、この付加製造システムによれば、造形物に付着したスラリーを効率的に除去できる。
【0008】
一実施形態においては、除去装置は、外部と内部とを連通する排出口を有し、容器を内部に収容し、小孔を介して容器の外部に移送されるスラリーを内部に貯留する貯留部と、貯留部を振動させ、排出口から貯留部内のスラリーを排出させる振動部とを有していてもよい。この場合、容器が貯留部の内部に収容されることにより、造形物から分離されたスラリーは容器の周壁に設けられた複数の小孔を介して貯留部の内部に貯留される。振動部が貯留部を振動させることにより、貯留部内に貯留されたスラリーの流動性が増大するため、スラリーの排出口への移動が容易となる。よって、この付加製造システムは、造形物から分離された貯留部内のスラリーを排出口から容易に排出させることができる。
【0009】
一実施形態においては、除去装置は、容器の内面に向けて液体又は気体を供給するノズルを有していてもよい。造形物が複雑な形状を有する場合であっても、容器が回転することにより、供給された液体又は気体が遠心力によって造形物の細部に侵入し易くなる。このため、造形物の洗浄工程における工数は短くなる。造形物に付着したスラリーは、造形物よりも流動性が高いため、供給された液体又は気体と混合し、造形物から容易に分離する。このように、この付加製造システムは、造形物に付着したスラリーを効率的に除去できる。
【0010】
本開示の他の側面に係る除去方法は、付加製造装置によって造形された造形物に付着したスラリーを除去する除去方法であって、回転軸を有し、周壁に複数の小孔が設けられた容器の内部に造形物を固定するステップと、その内部に造形物が固定された容器を、回転軸を中心に回転させるステップとを有する。
【0011】
この除去方法では、固定するステップにおいて、造形物は、回転軸を有する容器の内部に固定される。回転させるステップにおいて、容器は回転軸を中心に回転する。造形物に付着したスラリーは、造形物として硬化したスラリーより結合力が弱いため、容器の内部に生じる遠心力により造形物から分離される。分離されたスラリーは、容器の周壁に設けられた複数の小孔を介して外部に移送される。これにより、この除去方法は、容器の内部において、スラリーの付着が軽減された造形物を容易に得ることができる。よって、この除去方法は、造形物に付着したスラリーを効率的に除去できる。
【0012】
一実施形態においては、外部と内部とを連通する排出口を有し、容器を内部に収容する貯留部の内部に、容器の小孔を介して容器の外部に移送されるスラリーを貯留するステップと、貯留部を振動させ、排出口から貯留部内のスラリーを排出するステップとを有してもよい。貯留するステップにおいて、容器が貯留部の内部に収容されることにより、造形物から分離されたスラリーは容器の周壁に設けられた複数の小孔を介して貯留部の内部に貯留される。排出するステップにおいて、貯留部を振動させることにより、貯留部内に貯留されたスラリーの流動性が増大するため、スラリーの排出口への移動が容易となる。よって、この除去方法は、造形物から分離された貯留部内のスラリーを排出口から容易に排出させることができる。
【0013】
一実施形態においては、容器の内面に向けて液体又は気体を供給するステップを有していてもよい。造形物が複雑な形状を有する場合であっても、容器が回転することにより、供給された液体又は気体が遠心力によって造形物の細部に侵入し易くなる。このため、造形物の洗浄工程における工数は短くなる。造形物に付着したスラリーは、造形物よりも流動性が高いため、供給された液体又は気体と混合し、造形物から容易に分離する。このように、この除去方法は、造形物に付着したスラリーを効率的に除去できる。
【0014】
一実施形態においては、固定するステップの前に、造形物の少なくとも一部の凹型を造形物に押圧するステップを有してもよい。押圧するステップにおいて、造形物に付着したスラリーの少なくとも一部が凹型の押圧により除去される。これにより、押圧するステップの後の除去方法において除去するスラリーの量が減るため、この除去方法は、造形物に付着したスラリーを効率的に除去できる。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る付加製造システム及び除去方法によれば、造形物に付着したスラリーを効率的に除去できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0018】
図1は、スラリーが付着した造形物の斜視図である。
図1に示す造形物100は、付加製造装置により造形される。造形物100は、積層することにより造形された三次元の立体物である。造形物100の一層は、例えば、スラリーに紫外線を照射し硬化させることで得られる。スラリーは、造形物100の基材である。スラリーは、例えば、紫外線硬化樹脂とセラミックス粉又は金属粉とを混合した材料であり、粘度を有する。付加製造装置から造形物100を取り出したとき、造形物100は、その表面に未硬化のスラリー110が付着する場合がある。具体的には、付加製造装置内での造形中に造形物100の周囲にあった未硬化のスラリー110が造形物100の表面に付着し、造形物100を付加製造装置から取り出した後においても造形物100の表面に付着したままである場合がある。
【0019】
図2は、実施形態に係る付加製造システムの一例を示す概要図である。
図2に示す付加製造システム1は、付加製造装置2と、除去装置3とを備える。付加製造装置2は、スラリーを硬化させて造形物100を造形する。除去装置3は、付加製造装置2により造形された造形物100に付着した未硬化のスラリー110を除去する。
【0020】
付加製造装置2は、例えばステージを下降させながらスラリーをステージ上に一層ずつ載置させ、紫外線を照射することにより造形物100を形成する。一例として、付加製造装置2は、3次元のCADデータに基づいて造形物100を形成する。3次元のCADデータは、一層ごとの断面形状のデータを含む。付加製造装置2は、断面形状のデータに基づいて造形物100の断面を一層ずつ形成する。付加製造装置2は、例えば、スラリーを載置するステージと、スラリーを供給する供給部と、供給されたスラリーを平坦化する平坦部と、紫外線を照射する照射部と、ステージ、供給部、平坦部及び照射部の移動させる駆動部と、これらの動きを制御する制御部とを有する。これらの構成により、付加製造装置2は、スラリーを用いて造形物100を造形する。
【0021】
除去装置3は、造形物100に付着した未硬化のスラリー110を遠心力により分離する装置である。一例として、除去装置3は、コントローラ5と、容器10と、駆動部20と、貯留部30と、振動部40とを備える。
【0022】
容器10は、上方が開口され、その内部に造形物100を固定可能な空間を画成する。容器10は、円筒状を呈し、中心線に沿った方向に回転軸Mを有し、底部11と、周壁12と、固定部材14とを有する。
【0023】
底部11は、容器10の下端に位置し、円盤状を呈し、円形の上面11a及び下面11bを有する部位である。底部11は、その上面11a及び下面11bが水平となる姿勢で周壁12の下端に設けられる。容器10の中心線は、底部11の上面11a及び下面11bの円の中心を通り、上面11a及び下面11bに鉛直な直線である。以下、容器10の中心線に沿った方向を中心線方向Dとする。回転軸Mは、例えば、中心線方向Dに延在し、容器10の上面11a及び下面11bの円の中心を結んだ軸である。なお、底部11は、下面11bと駆動部20とが接続する位置以外において、中心線方向Dにおいて上面11a及び下面11bを連通する複数の開口を有していてもよい。
【0024】
周壁12は、中空の円筒状を呈し、上部及び下部が開放された部位である。周壁12は、その中心線が回転軸Mと一致する。周壁12の下端は底部11の上面11aと接続される。周壁12には複数の小孔13が設けられる。複数の小孔13は、容器10の内部から外部へと連通する。複数の小孔13は、例えば径方向Cに周壁12を貫通する。径方向Cとは、底部11の上面11aの半径が延在する方向である。小孔13の大きさは、例えば造形物100の大きさより小さく、スラリーが移動可能な大きさに適宜設定される。小孔13の個数は、任意に設定できる。
【0025】
固定部材14は、容器10の内部に造形物100を固定する。固定部材14は、例えば鉤状を呈する。固定部材14は、周壁12の内側に設けられ、造形物100の移動を規制する。固定部材14は、周壁12に対して着脱自在な部材であり、適宜設けられる位置を変えることができる。固定部材14は、複数設けられてもよい。固定部材14は、位置及び個数を適宜変えることで、造形物100の大きさ及び形状に応じて周壁12の内側に固定できる。
【0026】
駆動部20は、回転軸Mを中心に容器10を回転させる。駆動部20は、例えば、容器10の下面11bに接続される。駆動部20は、ロッド21と、ロッド21を回転させる駆動源22とを有する。ロッド21は、例えば、中心線方向Dに沿って、回転軸Mを通るように設けられる。ロッド21の上端は、容器10の下面11bに接続され、容器10を支持する。ロッド21の下端は、駆動源22に接続される。駆動源22は、例えばモータである。駆動源22は、ロッド21を回転させることで、ロッド21に接続された容器10を回転させる。駆動部20によって容器10が回転する方向である回転方向Rは、適宜設定される。
【0027】
貯留部30は、容器10の複数の小孔13を介して容器10の外部に移送された未硬化のスラリー110を内部に貯留する。貯留部30は、例えば有底筒状を呈し、中心線方向Dに回転軸Mを有する。貯留部30は、容器10を内部に収容する。貯留部30の上端は、少なくとも容器10の上端と同じ位置、又は容器10の上端より上方に位置する。貯留部30の内周面は、容器10の周壁12と離間して設けられる。貯留部30は、排出口32と、開口部34と、ロッド収容筒36とを有する。
【0028】
排出口32は、貯留部30の外部と内部とを連通し、貯留部30の底面に設けられる。排出口32の大きさは、スラリーの流出が可能な大きさに適宜設定される。貯留部30の底面は、排出口32が最も低い位置になるように、排出口32に向かって傾斜を有していてもよい。排出口32は複数設けられてもよい。
【0029】
駆動部20のロッド21は、貯留部30の底面の下方から開口部34及びロッド収容筒36の内部を介して、貯留部30の内部に挿入され、容器10の下面11bと接続する。開口部34は、貯留部30の底面において回転軸Mを中心に設けられ、例えば円形の開口である。開口部34の大きさは、ロッド21の横断面の大きさと比べて大きい。
【0030】
ロッド収容筒36は、ロッド21の一部を収容する。ロッド収容筒36は、開口部34からスラリーが流出しないように貯留部30の底面に接合される。ロッド収容筒36は、例えば上部及び下部が開放された筒状の部材である。ロッド収容筒36の横断面の大きさは、ロッド21の横断面の大きさと比べて大きい。ロッド収容筒36の下端は、開口部34に設けられ、上方に延在する。ロッド収容筒36の下端は、例えば、開口部34の外周を塞ぐように開口部34に嵌め込まれて固定される。ロッド収容筒36の上端は、ロッド21の上端より下方に位置し、貯留部30の底面から離間して設けられる。ロッド収容筒36の中心線方向Dの長さは、貯留部30の下部に貯留するスラリーの量に応じて適宜設定される。ロッド収容筒36は、ロッド21の回転に干渉しない範囲で上面を設けてもよい。
【0031】
振動部40は、貯留部30を振動させる。振動部40は、例えばバイブレータである。振動部40の上面は、例えば貯留部30の底面に接続される。振動部40は、振動部40が駆動部20のロッド21と干渉しないよう、例えば、振動部40の上面と底面とを連通する連通口45を有する。ロッド21は、振動部40の底面の下方から連通口45を介して、貯留部30の底面に達する。なお、振動部40がロッド21に干渉しないような位置に設置される場合、又は振動部40がロッド21に干渉しない程度の大きさを有する場合、振動部40は連通口45を有さなくてもよい。
【0032】
除去装置3は、ノズル81を備えてもよい。
図3は、実施形態に係る付加製造システムの一例を示す平面図である。
図3においては、駆動部20及び振動部40の記載を省略する。
【0033】
ノズル81は、容器10の内面に向けて液体又は気体を供給する。ノズル81から供給される液体又は気体は、例えば洗浄液である。洗浄液の具体的な一例は、エタノール、メタノール、アセトン、イソブチルアルコール、トルエン若しくはキシレンなどの有機溶剤、又は、重合禁止剤を含有するアクリル系モノマー若しくはエポキシ系モノマーである。ノズル81は、例えば、造形物100又は造形物100に付着した未硬化のスラリー110に対し、洗浄液を供給し、洗浄する。
【0034】
ノズル81は、例えば洗浄パイプ82と、洗浄ポンプ83とに接続される。ノズル81には、洗浄ポンプ83によって洗浄パイプ82を介して洗浄液が供給される。ノズル81は、例えば、容器10の内部に配置され、回転軸Mに沿って延在する。容器10の回転に応じて容器10の周壁12の内側がノズル81に対応する位置を通過するため、ノズル81は、容器10の周壁12の内側の任意の位置に洗浄液を供給できる。ノズル81から供給する洗浄液の量は、容器10の中心線方向Dの長さ、容器10の回転速度又は造形物の形状などに基づいて定められる。ノズル81、洗浄パイプ82又は洗浄ポンプ83は、複数設けられてもよい。なお、ノズル81は、容器10の内部に対して進退可能に設けられてもよい。
【0035】
図2及び
図3に示すコントローラ5は、除去装置3を制御するハードウェアである。コントローラ5は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、及び通信装置などを有する汎用コンピュータで構成される。コントローラ5は、駆動部20と通信可能に接続される。除去装置3の各構成要素は、コントローラ5の制御に基づいて動作する。例えば、コントローラ5は、駆動部20に容器10を回転させ、容器10内に固定された造形物100における未硬化のスラリー110を遠心力により分離する。除去装置3は、分離された未硬化のスラリー110を、貯留部30内に貯留する。除去装置3は、振動部40により未硬化のスラリー110の流動性を高めた状態で回収する。コントローラ5は、ノズル81に容器10の内面に向けて洗浄液を供給させる。
【0036】
図4は、実施形態に係る付加製造システムのコントローラの一例を示すブロック図である。
図4に示す通り、コントローラ5は、駆動制御部6と、振動制御部7と、洗浄制御部8とを有する。駆動制御部6は、駆動部20における容器10の回転方向R、回転速度、回転の開始、回転の時間及び回転の停止を制御する。振動制御部7は、貯留部30を振動させる振動部40の振動強度、振動数、振動の開始、振動の時間及び振動の停止を制御する。洗浄制御部8は、ノズル81における洗浄液の供給量、供給速度、供給時間、及び散布範囲などを制御する。
【0037】
コントローラ5は、記憶装置に記憶された造形物100の3次元のCADデータ、造形物100の重さ又は未硬化のスラリー110の原料などに基づき、駆動部20、振動部40及びノズル81を動作させる。コントローラ5は、付加製造装置2を制御してもよい。
【0038】
次に、付加製造システム1によるスラリーの除去方法を説明する。
図5は、実施形態に係る除去方法の一例を示すフローチャートである。
図5に示す除去方法MTは、作業員又はコントローラ5により実行される。
【0039】
まず、押圧処理(S10)では、作業員は造形物100に付着した未硬化のスラリー110を、凹型を用いて大まかに除去する。凹型は、造形物100の少なくとも一部の外形に沿って凹みを有する治具である。凹型は、例えばコントローラ5の記憶装置に記憶された造形物100の3次元のCADデータに基づき造形される。
図6は、実施形態に係る除去方法の押圧するステップを示す概要図である。
図6の(A)は、押圧処理(S10)の準備段階を示す概要図である。
図6の(A)に示すように、造形物100の凹型50が、支持部材60に固定され、造形物100の上方に設けられる。
【0040】
作業員は、一例として凹型50を直接操作する、作業員は、支持部材60を介して凹型50を操作してもよいし、支持部材60をロボット等に動作させてもよい。
図6の例では、凹型50は支持部材60により支持されている。支持部材60は、例えば保持部61及び本体部62を有する。保持部61は、凹型50を保持する爪部材であり、本体部62に設けられる。作業員は、支持部材60を押圧方向Pへ移動させることで、凹型50を造形物100に接触させつつ、凹型50を造形物100の少なくとも一部に嵌合させる。凹型50は、支持部材60の造形物100の表面に接触しながら移動するため、造形物100に付着した未硬化のスラリー110の一部が摩擦により剥落し得る。
【0041】
図6の(B)は、押圧処理(S10)の実行後の状態を示す概要図である。
図6の(B)に示すように、作業員により実行された押圧処理(S10)によって、造形物100に付着した未硬化のスラリー110が大まかに除去される。これにより、押圧処理(S10)以降の除去方法MTにおいて除去する未硬化のスラリー110の量を減少させることができる。
【0042】
再び
図5を参照する。続いて、作業員は、固定処理(S20)として、容器10の内部に未硬化のスラリー110が付着した造形物100を固定する。未硬化のスラリー110が付着した造形物100は、容器10の固定部材14により固定される。
【0043】
続いて、コントローラ5の駆動制御部6は、回転処理(S30)として、駆動部20により容器10を回転させる。駆動制御部6は、予め定められた回転方向R、回転速度、及び回転時間で駆動部20により容器10を回転させる。これにより、容器10の内部に固定された造形物100において、径方向Cに向かって、つまり、容器10の外側に向かって遠心力が生じる。未硬化のスラリーである未硬化のスラリー110は、造形物100として硬化したスラリーに比べて結合力が弱い。さらに、スラリーは高チクソ性を有するため、遠心力によりスラリーの粘度は低下する。このため、容器10内に生じた遠心力により、造形物100に付着した未硬化のスラリー110は、造形物100から分離される。容器10の周壁12は複数の小孔13を有しているため、分離された未硬化のスラリー110は、複数の小孔13を介して容器10の内部から容器10の外部に移送される。容器10は貯留部30の内部に収容されているため、分離された未硬化のスラリー110は容器10の周壁12に設けられた複数の小孔13を介して貯留部30の内部に貯留される。貯留部30は、容器10の周壁12における複数の小孔13から容器10の外部に未硬化のスラリー110を散布させることなく回収できる。
【0044】
続いて、コントローラ5の振動制御部7は、振動処理(S40)として、振動部40により貯留部30を振動させる。振動制御部7は、予め定められた振動強度、振動数、及び振動の時間で振動部40により貯留部30を振動させる。これにより、貯留部30内に貯留された未硬化のスラリー110の流動性が増大するため、未硬化のスラリー110の排出口32への移動が容易となる。未硬化のスラリー110は、排出口32より貯留部30の外部へ排出される。
【0045】
続いて、作業員は、回収処理(S50)として、排出口32より排出された未硬化のスラリー110を回収する。例えば、作業員は回収容器に連結されたパイプを排出口32に連結させることで、パイプを介して回収容器内に未硬化のスラリー110を回収する。回収された未硬化のスラリー110は、再利用される。
【0046】
続いて、コントローラ5の洗浄制御部8は、洗浄処理(S60)として、ノズル81により、容器10の内部の造形物及び造形物に付着した未硬化のスラリー110に洗浄液を供給させる。洗浄処理(S60)は、例えば、コントローラ5の駆動制御部6の制御に基づき、駆動部20により容器10を回転させた状態で行われる。造形物100が複雑な形状を有する場合であっても、容器10が回転することにより、供給された洗浄液が遠心力によって造形物100の細部に侵入し易くなる。造形物100に付着した未硬化のスラリー110は、造形物100よりも流動性が高いため、供給された洗浄液と混合し、造形物100から容易に分離する。洗浄液と混合した未硬化のスラリー110は、遠心力により複数の小孔13を介して容器10の内部から容器10の外部に移送され、貯留部30内に貯留する。例えば、作業員は、収集容器に連結されたパイプを排出口32に連結させることで、パイプを介して収集容器内に洗浄液と混合した未硬化のスラリー110を収集し、廃棄する。
【0047】
続いて、作業員は、取出処理(S70)として、容器10の内部から固定された造形物100を取り出す。造形物100を容器10の内部から取り出した場合、除去方法MTは終了し、未硬化のスラリー110が除去された造形物100が得られる。
【0048】
以上、実施形態に係る付加製造システム1及び除去方法MTによれば、造形物100に付着したスラリーを効率的に除去できる。付加製造システム1及び除去方法MTは、駆動部20により容器10を回転させて遠心力を生じさせることで、容易に造形物100に付着した未硬化のスラリー110を分離できる。また、貯留部30が設けられることで、容器10の周壁12における複数の小孔13から容器10の外部に移送された未硬化のスラリー110は、外部に散布することなく回収される。また、振動部40が貯留部30を振動させることで、付加製造システム1及び除去方法MTは、造形物100から分離された貯留部30内の未硬化のスラリー110を排出口32から容易に排出できる。
【0049】
ノズル81により液体又は気体が造形物100及び造形物100に付着した未硬化のスラリー110に供給され、容器10が回転することにより、供給された液体又は気体が遠心力によって造形物100の細部に侵入し易くなる。このため、造形物100の洗浄工程における工数は短くなる。造形物100に付着したスラリー110は、造形物100よりも流動性が高いため、供給された液体又は気体と混合し、造形物から容易に分離する。
【0050】
除去方法MTの押圧処理(S10)において、造形物100に付着した未硬化のスラリー110の少なくとも一部が凹型50の押圧により大まかに除去される。これにより、押圧処理(S10)以降の除去方法MTにおいて除去する未硬化のスラリー110の量が減るため、除去方法MTは、造形物100から未硬化のスラリー110を効率的に除去できる。
【0051】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。例えば、造形物100は容器10の内部に複数設けられてもよい。この場合、複数の造形物100に対して同時に除去方法MTを実行することによって、未硬化のスラリー110が効率的に除去できる。除去装置3は、貯留部30と振動部40とノズル81とを備えなくてもよい。
図7は、実施形態に係る付加製造システムの一例を示す概要図である。
図7に示すように、容器10の外部において、除去装置3は貯留部30、振動部40及びノズル81を設けなくてもよい。
【0052】
容器10は底部11を有しなくてもよい。この場合、付加製造システム1及び除去方法MTは、容器10の底部11の上面11aにおいて、造形物100から分離した未硬化のスラリー110が堆積することを抑制できる。容器10は上端に上面を設けてもよい。この場合、付加製造システム1及び除去方法MTは、容器10の上端の開口から貯留部30の外部に未硬化のスラリー110が排出されることを回避できる。容器10は、駆動部20により回転方向Rとは反対の方向に回転してもよい。
【0053】
駆動部20は、容器10の上方に設置されてもよい。この場合、貯留部30は、開口部34及びロッド収容筒36を有しなくてもよい。駆動部20は、例えば、ロッド21の下端において径方向Cに延在する梁部材を有し、梁部材と容器10の周壁12の上端とを接続させてもよい。また、貯留部30は上端に上面を設けてもよい。ノズル81は、回転方向R又は回転方向Rの反対の方向に容器10に対して相対的に回転してもよい。ノズル81は、容器10の内部における未硬化のスラリー110に対して吸気することで造形物100から分離させてもよい。
【0054】
除去方法MTにおける作業員の作業は、コントローラ5及びロボットが行ってもよい。この場合、除去装置3は、凹型50及び支持部材60を有してもよい。除去方法MTでは、押圧処理(S10)において、作業員又はロボットは、押圧方向Pとして、造形物100の上下方向、左右方向、前後方向のいずれか2方向以上に沿って凹型50を押圧させ、嵌合させてもよい。この場合、凹型50は、押圧する各方向において、造形物100の少なくとも一部の外形に沿って凹みを有する。
【0055】
除去方法MTの各処理の順序は、適宜入れ替えてもよい。具体的には、押圧処理(S10)は、固定処理(S20)の後に行われてもよい。この場合、押圧処理(S10)は、容器10の内部で実行されてもよい。取出処理(S60)は、振動処理(S40)の前に行われてもよい。振動処理(S40)、回収処理(S50)又は洗浄処理(S60)は、回転処理(S30)の開始と同時に実行されてもよい。押圧処理(S10)、振動処理(S40)、回収処理(S50)又は洗浄処理(S60)は実行されなくてもよい。