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特開2020-163763結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型、および、結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-163763(P2020-163763A)
(43)【公開日】2020年10月8日
(54)【発明の名称】結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型、および、結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/44 20060101AFI20200911BHJP
   B29C 51/30 20060101ALI20200911BHJP
   B29C 51/26 20060101ALI20200911BHJP
【FI】
   B29C51/44
   B29C51/30
   B29C51/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-67709(P2019-67709)
(22)【出願日】2019年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163979
【弁理士】
【氏名又は名称】濱名 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩久
【テーマコード(参考)】
4F202
4F208
【Fターム(参考)】
4F202AC03C
4F202AG24
4F202AM32
4F202AR12
4F202CA17
4F202CB01
4F202CK12
4F202CK89
4F202CM08
4F202CM09
4F208AC03
4F208MA01
4F208MA02
4F208MA03
4F208MB01
4F208MC01
4F208MH06
4F208MK20
(57)【要約】
【課題】加熱成形により軟化した結晶性熱可塑性樹脂シートを離型する際の変形を抑制可能な結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型、および、結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法を提供する。
【解決手段】結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型は、複数の第1金型10と、空気を流通させる経路である通気路とを備え、各第1金型10は、開口部11Aを有する凹部11と、開口部11Aの外縁に位置する縁部12とを備え、通気路は、凹部11において開口する複数の凹部通気路11Vを備え、結晶性熱可塑性樹脂シートの離型のために通気路から排出される空気は、各凹部11の周囲と複数の凹部通気路11Vとから排出されるよう構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型であって、
複数の金型と、
空気を流通させる経路である通気路とを備え、
前記各金型は、
開口部を有する凹部と、
前記開口部の外縁に位置する縁部とを備え、
前記通気路は、
前記凹部において開口する複数の凹部通気路を備え、
前記結晶性熱可塑性樹脂シートの離型のために前記通気路から排出される空気は、前記各凹部の周囲と前記複数の凹部通気路とから排出されるよう構成された
結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型。
【請求項2】
前記通気路は、前記金型ごとに独立した経路である
請求項1に記載の結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型。
【請求項3】
前記通気路は、
前記縁部において開口する複数の縁部通気路と、
前記複数の凹部通気路、および、前記複数の縁部通気路と接続される共通通気路とを備え、
前記結晶性熱可塑性樹脂シートの離型のために前記凹部通気路から排出される前記空気は、前記縁部通気路に供給された後、前記共通通気路を経由して、前記凹部通気路から排出される
請求項1または2に記載の結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型。
【請求項4】
前記成形金型は、前記複数の金型が取り付けられる取付板を備え、
前記通気路は、前記取付板に形成される複数の取付板通気路を備え、
前記取付板は、前記複数の取付板通気路と接続する空気受け部を備え、
前記結晶性熱可塑性樹脂シートの離型のために前記成形金型から排出される空気は、前記空気受け部に供給された後、前記空気受け部から前記複数の取付板通気路に向けて分散し、そして、前記複数の縁部通気路に供給される
請求項3に記載の結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型。
【請求項5】
少なくとも一部の前記縁部通気路において、前記縁部通気路の各々の流路断面積は、
前記凹部通気路の各々の流路断面積よりも大きい
請求項3または4に記載の結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型。
【請求項6】
前記縁部は、前記開口部の外縁に沿って形成される突条を備え、
前記複数の縁部通気路の少なくとも一部は、前記突条の凸面において開口する
請求項3から5のいずれか一項に記載の結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型。
【請求項7】
前記成形金型は、結晶性熱可塑性樹脂シートの離型のために各金型の周囲から空気を排出する外周通気路をさらに備える
請求項1から6のいずれか一項に記載の結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の成形金型を用いた結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法であって、
前記成形金型を用いて結晶性熱可塑性樹脂シートを加熱成形しつつ、結晶性熱可塑性樹脂シートの結晶化を促進する成形工程と、
前記成形工程の後、前記成形金型から離型のための空気を結晶性熱可塑性樹脂シートに対して排出することで結晶性熱可塑性樹脂シートを成形金型から離型する離型工程とを有する
結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型、および、結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性と熱可塑性とを有する樹脂である結晶性熱可塑性樹脂から成形品を製造する方法として、加熱用金型と冷却用金型とを備えた成形装置を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、シート状に成形された結晶性熱可塑性樹脂である結晶性熱可塑性樹脂シートの一部を加熱用金型によって加熱成形しつつ、加熱成形される部分の周囲を冷却用金型によって冷却する。こうして加熱成形された結晶性熱可塑性樹脂シートは、成形金型から離型された後、結晶性熱可塑性樹脂シートの全体がさらに冷却され、最後に、加熱成形された部分が成形品として抜き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−134854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、上述した成形品の製造方法において、成形装置は加熱用金型と、冷却用金型とが組み合わされた複雑な構造を有しているため、非常に高価であり、また、金型の交換作業も煩雑なものとなっている。そのため、冷却用金型を用いずに結晶性熱可塑性樹脂シートを加熱成形する技術が望まれている。
【0005】
しかしながら、加熱成形の際に冷却用金型を用いない場合、加熱成形される部分の周囲も加熱により軟化した状態となる。そのため、結晶性熱可塑性樹脂シートを成形金型から引き剥がして離型する際、加熱成形された結晶性熱可塑性樹脂シートが変形しやすく、最終的に抜き出された成形品の機能や美観性が損なわれる原因となる。
【0006】
本発明の目的は、加熱成形により軟化した結晶性熱可塑性樹脂シートを離型する際の変形を抑制可能な結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型、および、結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型は、複数の金型と、空気を流通させる経路である通気路とを備え、各金型は、開口部を有する凹部と、前記開口部の外縁に位置する縁部とを備え、前記通気路は、前記凹部において開口する複数の凹部通気路を備え、前記結晶性熱可塑性樹脂シートの離型のために前記通気路から排出される空気は、前記各凹部の周囲と前記複数の凹部通気路とから排出されるよう構成される。
【0008】
成形金型の凹部通気路のみから空気を排出する構成の場合、加熱によって軟化した結晶性熱可塑性樹脂シートは、金型の凹部から排出された空気が結晶性熱可塑性樹脂シートに対して局所的に空気圧をかけ、結果として、成形された結晶性熱可塑性樹脂シートを変形させる。上述した構成であれば、凹部通気路から排出される空気が減り、縁部において排出される空気が多くなる。そのため、結晶性熱可塑性樹脂シートにおいて成形された部分である成形部分の外周への空気圧をより強くし、かつ、成形部分の凹部への空気圧をより弱くする。結果として、結晶性熱可塑性樹脂シートを成形金型から離型する時において、結晶性熱可塑性樹脂シートの変形を抑制することが可能ともなる。
【0009】
上記結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型は、前記通気路が、前記金型ごとに独立した経路であってもよい。
上述した構成であれば、仮に加熱成形の際に結晶性熱可塑性樹脂シートの一部が破損し、そして、結晶性熱可塑性樹脂シートの離型の際に一部の通気孔が外部に対して開放されていたとしても、その他の金型の通気孔においては空気の供給と排出とを通常通り行うことが可能ともなる。
【0010】
上記結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型は、前記通気路が、前記縁部において開口する複数の縁部通気路と、前記複数の凹部通気路、および、前記複数の縁部通気路と接続される共通通気路とを備え、前記結晶性熱可塑性樹脂シートの離型のために前記凹部通気路から排出される前記空気は、前記縁部通気路に供給された後、前記共通通気路を経由して、前記凹部通気路から排出されてもよい。
【0011】
そして、上記結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型は、少なくとも一部の前記縁部通気路において、前記縁部通気路の各々の流路断面積が、前記複数の凹部通気路の各々の流路断面積よりも大きくてもよい。
【0012】
上述した構成であれば、縁部通気路において空気が流れやすくなるため、縁部通気路から排出される空気がさらに多くなる。結果として、結晶性熱可塑性樹脂シートを成形金型から離型する際の変形を抑制することが可能ともなる。
【0013】
また、上記結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型は、前記複数の金型が取り付けられる取付板を備え、前記通気路は、前記取付板に形成される複数の取付板通気路を備え、前記取付板は、前記複数の取付板通気路と接続する空気受け部を備え、前記結晶性熱可塑性樹脂シートの離型のために前記成形金型から排出される空気は、前記空気受け部に供給された後、前記空気受け部から前記複数の取付板通気路に向けて分散し、そして、前記複数の縁部通気路に供給されてもよい。
【0014】
上述した構成であれば、成形金型に供給された空気が直接に取付板通気路、縁部通気路、および、凹部通気路に供給されることを抑え、通気路の内部において空気圧が局所的に偏ることを抑えることが可能となる。結果として、結晶性熱可塑性樹脂シートを成形金型から離型する際の変形をさらに抑制することが可能ともなる。
【0015】
上記結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型は、前記縁部が、前記開口部の外縁に沿って形成される突条を備え、前記複数の縁部通気路の少なくとも一部は、前記突条の凸面において開口してもよい。
【0016】
上述した構成であれば、成形された結晶性熱可塑性樹脂シートは突条の形状に追従した形状に成形されるため、当該形状が結晶性熱可塑性樹脂シートの機械的強度を高める。また、突条の凸面に縁部通気路が形成された構成であれば、当該形状に沿って空気による圧力をかけることが可能となり、結晶性熱可塑性樹脂シートのより広い範囲を均一に離型させやすくなる。結果として、結晶性熱可塑性樹脂シートを成形金型から離型する際の変形をさらに抑制することが可能ともなる。
【0017】
上記結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型は、各金型の周囲から空気を排出する外周通気路をさらに備えてもよい。
上述した構成であれば、空気による圧力を結晶性熱可塑性樹脂シートのさらに広い範囲に対してかけることが可能となる。そのため、結晶性熱可塑性樹脂シートのより広い範囲を均一に離型させることが可能となり、結果として、結晶性熱可塑性樹脂シートを成形金型から離型する際の変形を抑制することが可能となる。
【0018】
上記課題を解決するための結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法は、上述した成形金型を用いた成形方法であって、成形金型を用いて結晶性熱可塑性樹脂シートを加熱成形しつつ、結晶性熱可塑性樹脂シートの結晶化を促進する成形工程と、前記成形工程の後、前記成形金型から離型のための空気を結晶性熱可塑性樹脂シートに対して排出することで結晶性熱可塑性樹脂シートを成形金型から離型する離型工程とを有する。
【0019】
上記方法であれば、結晶性熱可塑性樹脂シートを成形金型から離型する際の変形を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】成形装置の第1の実施形態における全体的な構成を示す構成図。
図2】成形装置が備える成形金型の断面構造を示す断面図。
図3】(a)(b)(c)(d)は成形方法の各工程を示す工程図。
図4】成形金型の第2の実施形態における断面構造を示す断面図。
図5】(a)(b)は成形方法の各工程を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
以下、図1図3を参照して、結晶性熱可塑性樹脂シートの成形金型、および、結晶性熱可塑性樹脂シートの成形方法の第1の実施形態を説明する。
【0022】
図1に示すように、結晶性熱可塑性樹脂シートの成形装置は、予熱領域S1、成形領域S2、冷却領域S3、および、図示しないトリミング領域を備える。結晶性熱可塑性樹脂シートSは、図示しない搬送機構により、予熱工程から矢印の方向に搬送される。
【0023】
結晶性熱可塑性樹脂シートSの成形方法は、予熱領域S1における予熱工程と、成形領域S2における成型工程、および、離型工程と、冷却領域S3における冷却工程と、トリミング領域におけるトリミング工程とを含む。
【0024】
予熱領域S1は、結晶性熱可塑性樹脂シートSを加熱する予熱オーブンOを備える。予熱工程では、結晶性熱可塑性樹脂シートSを加熱成形する前に、予熱オーブンOが結晶性熱可塑性樹脂シートSを加熱する。予熱領域S1において、結晶性熱可塑性樹脂シートSは、例えば、120〜140℃に加熱される。
【0025】
成形領域S2は、結晶性熱可塑性樹脂シートSを加熱成形するための成形金型と、結晶性熱可塑性樹脂シートSを加熱するための加熱板50,50’とを備える。
成形工程では、予熱された結晶性熱可塑性樹脂シートSを加熱板50,50’によってさらに加熱しつつ、成形金型によって成形する。成形工程によって、結晶性熱可塑性樹脂シートSは一部が成形品の形状に成形されつつ、結晶化が促進される。結晶性熱可塑性樹脂シートSにおいて、成形品の形状に成形された部分が、成形部分である。成形部分は、成形金型が備える凹部の形状に追従した形状である成形部分の凹部を備える。成型工程において、結晶性熱可塑性樹脂シートSは、例えば、130〜200℃に加熱される。
【0026】
離型工程は、成形された結晶性熱可塑性樹脂シートSを成形金型から離型する。
冷却工程は、離型された結晶性熱可塑性樹脂シートSを放冷することで冷却する。結晶性熱可塑性樹脂シートSは、例えば、10〜70℃まで冷却される。
【0027】
トリミング工程は、冷却された結晶性熱可塑性樹脂シートSから、成形された部分を抜き出すことで、成形品を得る。
図1に示すように、成形金型は、複数組の第1金型10と第2金型20とを備える。また、成形金型は、複数の第1金型10が取り付けられる第1取付板30と、複数の第2金型20が取り付けられる第2取付板40とを備える。
【0028】
図2に示すように、成形装置は一対の加熱板50,50’を備える。一方の加熱板50には第1取付板30が取り付けられ、また、他方の加熱板50’には第1取付板30と対向するように第2取付板40が取り付けられる。加熱板50,50’は、例えば、抵抗加熱などの公知の加熱機構を備える。加熱機構による発熱は、第1取付板30と第1金型10、および、第2取付板40と第2金型20とをそれぞれ伝導して、結晶性熱可塑性樹脂シートSを加熱する。
【0029】
第1金型10は、開口部11Aを有する凹部11と、開口部11Aの外縁に位置する縁部12とを備える。縁部12は、開口部11Aに沿って形成される突条12Aを備える。
第1金型10は、空気が流通する経路である第1金型通気路10Vを備える。第1金型通気路10Vは、縁部12において開口する複数の縁部通気路12Vと、凹部11において開口する複数の凹部通気路11Vとを備える。各縁部通気路12Vは、縁部12が備える縁部孔部12VSにおいて開口する。各凹部通気路11Vは、凹部11が備える凹部孔部11VSにおいて開口する。少なくとも一部の縁部孔部12VSは、突条12Aの凸面に形成される。縁部孔部12VSは、縁部12において、突条12Aの凸面とその他の部分とに形成されてもよく、突条12Aの凸面のみに形成されてもよい。
【0030】
各縁部通気路12Vは、第1空気ポンプに向かう側において開口するポンプ側孔部12VPをさらに備える。各縁部孔部12VSは、縁部通気路12Vを通じて、対応する縁部通気路12Vのポンプ側孔部12VPと接続される。
【0031】
さらに、第1金型通気路10Vは、縁部通気路12V、および、凹部通気路11Vと接続される共通通気路13Vを備える。すなわち、凹部孔部11VSは、共通通気路13Vを経由して、縁部通気路12Vのポンプ側孔部12VPに接続される。
【0032】
各縁部通気路12Vの流路断面積は、各凹部通気路11Vの流路断面積よりも大きい。各通気路の流路断面積は、通気路の内壁に対して垂直な断面における、各通気路の面積であり、流路の延在方向でほぼ一定である。各凹部通気路11Vの流路断面と各縁部通気路12Vの流路断面との形状は、例えば、円形である。各凹部通気路11Vの直径は、例えば、0.6mmである。各縁部通気路12Vの各々の直径は、例えば、0.8mm以上、1.5mm以下である。
【0033】
なお、複数の縁部通気路12Vは、凹部通気路11Vの流路断面積よりも大きい流路断面積を有した縁部通気路12Vを一部分として含む構成であってもよい。また、縁部通気路12Vは、突条12Aの凸面に開口する流路断面積のみが、凹部通気路11Vの流路断面積よりも大きい構成であってもよい。
【0034】
第1取付板30は、空気が流通する経路である複数の第1取付板通気路30Vを備える。各第1取付板通気路30Vは、第1空気ポンプに向かう側において開口するポンプ側孔部30VPと、結晶性熱可塑性樹脂シートSに向かう側において開口するシート側孔部30VSとを備える。
【0035】
第1取付板30は、複数の第1取付板通気路30Vのポンプ側孔部30VPと接続する空気受け部30VCをさらに備える。空気受け部30VCは、例えば、第1取付板30において第1取付板通気路30Vのポンプ側孔部30VPが開口する面に形成される空間である。空気受け部30VCの延在方向は加熱板通気路50Vと交差する方向である。加熱板通気路50Vから供給された空気の流れる方向は、空気受け部30VCによって変えられる。また、加熱板通気路50Vから供給された空気は、各第1取付板通気路30Vに到達するまでにその空気の流れを抑えられる。
【0036】
第1金型10を第1取付板30に取り付けた時、第1取付板通気路30Vのシート側孔部30VSは、縁部通気路12Vのポンプ側孔部12VPと接続される。第1取付板30を加熱板50に取り付けた時、第1取付板通気路30Vの空気受け部30VCは、加熱板通気路50Vと接続される。
【0037】
第1金型が備える第1金型通気路10Vと当該第1金型通気路10Vに接続する第1取付板通気路30Vとは、第1金型ごとに独立した経路である。すなわち、各第1金型10が備える第1金型通気路10Vに供給された空気は、他の第1金型10が備える第1金型通気路10Vには供給されない。また、各第1金型通気路10Vに接続する第1取付板通気路30Vに供給された空気は、他の第1金型通気路10Vに接続する第1取付板通気路30Vには供給されない。
【0038】
第2金型20は、第1金型10の開口部11Aを覆う大きさの平面を有する平面部21と、平面部21の周囲において、突条12Aを挿入できるよう形成された溝部22を備える。溝部22の幅は、例えば、第1金型10が備える突条12Aの幅より大きく、かつ、縁部12の幅以下である。
【0039】
第2金型20は、空気が流通する経路である第2金型通気路を備える。第2金型通気路は、平面部21において開口する平面部通気路21Vを備える。平面部通気路21Vは、平面部21が備える平面部孔部21VSにおいて開口する。平面部通気路21Vは、第2空気ポンプに向かう側において開口するポンプ側孔部21VPをさらに備える。
【0040】
第2取付板40は、空気が流通する経路である第2取付板通気路40Vを備える。第2取付板通気路40Vは、第2空気ポンプに向かう側において開口するポンプ側孔部40VPと、結晶性熱可塑性樹脂シートSに向かう側において開口するシート側孔部40VSとを備える。
【0041】
第2金型20を第2取付板40に取り付けた時、第2取付板通気路40Vのシート側孔部40VSは、平面部通気路21Vのポンプ側孔部21VPと接続される。第2取付板40を加熱板50’に取り付けた時、第2取付板通気路40Vのポンプ側孔部40VPは、加熱板通気路50’Vと接続される。
【0042】
第2金型20が備える第2金型通気路と当該第2金型通気路に接続する第2取付板通気路40Vとは、第2金型20ごとに独立した経路である。すなわち、各第2金型20が備える第2金型通気路に供給された空気は、他の第2金型20が備える第2金型通気路には供給されない。また、各第2金型通気路に接続する第2取付板通気路40Vに供給された空気は、他の第2金型通気路に接続する第2取付板通気路40Vには供給されない。
【0043】
以下、図3を参照して、成形工程および離型工程の詳細を説明する。
成型工程は、図3(a)に示すように、結晶性熱可塑性樹脂シートSが搬送機構によって予熱領域S1から成形領域S2まで搬送されたとき、第2金型20が第1金型10に向けて移動することで、第1金型10と第2金型20とが結晶性熱可塑性樹脂シートSを挟持する。
【0044】
挟持された結晶性熱可塑性樹脂シートSは、加熱板50,50’による発熱が取付板30,40と金型10,20とを通じて伝導することで、加熱される。加熱された結晶性熱可塑性樹脂シートSは、軟化すると共に、結晶化が促進される。
【0045】
図3(b)に示すように、結晶性熱可塑性樹脂シートSのうち、第1金型10の突条12Aと第2金型20の溝部22とに挟まれた部分は、第2金型20が加える押圧力により、突条12Aの形状に追従した形状に成形される。結晶性熱可塑性樹脂シートSが挟持された部分においては、第1金型10と結晶性熱可塑性樹脂シートSとの間、および、第2金型20と結晶性熱可塑性樹脂シートSとの間において空気の出入りが禁止される。すなわち、第1金型10と結晶性熱可塑性樹脂シートSとの間の空間は、第1金型通気路10Vを除いて密閉される。また、第2金型20と結晶性熱可塑性樹脂シートSとの間の空間は、第2金型通気路を除いて密閉される。
【0046】
次に、第1金型10と第2金型20とに挟持された結晶性熱可塑性樹脂シートSは、第1空気ポンプおよび第2空気ポンプの作用によって加熱成形される。第1空気ポンプは、結晶性熱可塑性樹脂シートSと第1金型10との間の空間から、矢印のように空気を排出することで、当該空間の圧力を低下させる。また、第2空気ポンプは、第2金型20と結晶性熱可塑性樹脂シートSとの間の空間に、矢印のように空気を供給することで、当該空間の圧力を上昇させる。結果として、加熱により軟化した結晶性熱可塑性樹脂シートSは、第1金型10側の空間と第2金型20側の空間との間の圧力差により、凹部11の形状に沿って密着し、そして、所望の形状に成形される。
【0047】
離型工程は、図3(c)に示すように、第2金型20が上昇することで、結晶性熱可塑性樹脂シートSを挟持から解放する。このとき、成形された結晶性熱可塑性樹脂シートSは、第1金型10の凹部11に密着し続ける。
【0048】
次いで、第1空気ポンプは、第1金型10から結晶性熱可塑性樹脂シートSを離型させるため、離型用の空気を矢印のように、縁部通気路12V、および、凹部通気路11Vに供給する。第1空気ポンプから供給された空気は、加熱板通気路50Vを通り、第1取付板通気路30Vの空気受け部30VCに供給される。空気受け部30VCに供給された空気は、複数の第1取付板通気路30Vのポンプ側孔部30VPに向けて分散し、そして、第1取付板通気路30Vのポンプ側孔部30VPから各第1取付板通気路30Vに供給される。第1取付板通気路30Vに供給された空気は、第1取付板通気路30Vのシート側孔部30VSを通じて、縁部通気路12Vのポンプ側孔部12VPに供給される。
【0049】
縁部通気路12Vのポンプ側孔部12VPに供給された空気の一部は、縁部孔部12VSから排出される。また、縁部通気路12Vに供給された空気の一部は、共通通気路13Vを経由して、凹部通気路11Vに供給される。凹部通気路11Vに供給された空気は、凹部孔部11VSから排出される。
【0050】
最後に、図3(d)に示すように、縁部孔部12VSと凹部孔部11VSとから排出される空気が、結晶性熱可塑性樹脂シートSに空気圧を加えることで、加熱成形した後の結晶性熱可塑性樹脂シートSが離型される。
【0051】
以上、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)成形金型の凹部通気路11Vのみから空気を排出する構成の場合、第1金型10の凹部11から排出された空気が、加熱により軟化した結晶性熱可塑性樹脂シートSの成形部分の凹部に対して局所的に空気圧をかけ、結果として、成形された結晶性熱可塑性樹脂シートSを変形させる。結晶性熱可塑性樹脂シートSの離型のために第1金型10から排出される空気が凹部通気路11Vに加えて縁部通気路12Vからも排出される構成であれば、凹部通気路11Vから排出される空気が減り、また、縁部12において排出される空気が多くなる。そのため、結晶性熱可塑性樹脂シートSの離型のために第1金型10から排出される空気が凹部通気路11Vのみから排出される構成と比べて、成形部分の外周への空気圧をより強くし、かつ、成形部分の凹部への空気圧をより弱くする。結果として、結晶性熱可塑性樹脂シートSの離型時において、結晶性熱可塑性樹脂シートSの変形を抑制することが可能となる。
【0052】
(2)結晶性熱可塑性樹脂シートSの離型のために第1金型10に供給された空気は、縁部通気路12Vに供給された後、共通通気路13Vを経由して、凹部通気路11Vに供給され得る。そのため、第1金型10に供給された空気が凹部通気路11Vに供給された後、共通通気路13Vを経由して、縁部通気路12Vに供給される構成と比べて、縁部通気路12Vにおいて空気が流れやすくなり、縁部通気路12Vから排出される空気がさらに多くなる。結果として、結晶性熱可塑性樹脂シートSの変形を抑制することが可能となる。なお、通気路において空気が流れやすいことは、例えば、空気が通気路を通過する時の圧力損失がより小さいことである。
【0053】
(3)第1取付板30は、加熱板通気路50Vから供給された空気を、複数の第1取付板通気路30Vに向けて分散させる空気受け部30VCを備える。そのため、加熱板通気路50Vから供給された空気が直接に第1金型通気路10Vに供給されることを抑え、第1金型通気路10Vの内部において空気圧が局所的に偏ることを抑えることが可能となる。
【0054】
(4)少なくとも一部の縁部通気路12Vにおいて、縁部通気路12Vの流路断面積は、凹部通気路11Vの各々の流路断面積よりも大きい。そのため、縁部通気路12Vの各々の流路断面積が凹部通気路11Vの各々の流路断面積の大きさ以下である構成と比べて、縁部12において空気が流れやすくなるため、縁部通気路12Vから排出される空気がさらに多くなる。結果として、結晶性熱可塑性樹脂シートSの変形を抑制することが可能となる。
【0055】
(5)第1金型10の縁部12は、開口部11Aの外縁に沿って形成される突条12Aを備える。そのため、成形された結晶性熱可塑性樹脂シートSは、突条12Aの形状に追従した形状に成形されるため、当該形状が結晶性熱可塑性樹脂シートSの機械的強度を高める。結果として、結晶性熱可塑性樹脂シートSの変形を抑制することが可能となる。
【0056】
(6)少なくとも一部の縁部通気路12Vは、突条12Aの凸面において開口する。そのため、結晶性熱可塑性樹脂シートSが突条12Aに沿って成形された形状において、当該形状に沿って空気による圧力をかけることが可能となる。結果として、結晶性熱可塑性樹脂シートSの変形をさらに抑制することが可能となる。
【0057】
(7)第1金型通気路10Vと当該第1金型通気路10Vに接続する第1取付板通気路30Vとは、第1金型10ごとに独立である。また、第2金型通気路と、当該第2金型通気路20Vに接続する第2取付板通気路40Vとは、第2金型20ごとに独立である。そのため、結晶性熱可塑性樹脂シートSが破損するなどして、一部の通気路が大気に開放されたとしても、その他の金型が備える通気路においては通常通り空気の供給と排出とを行うことが可能となる。
【0058】
[第2の実施形態]
図4,5を参照して、結晶性熱可塑性樹脂シートSの成形金型、および、結晶性熱可塑性樹脂シートSの成形方法の第2の実施形態を説明する。以下、第1の実施形態との相違点について主に説明し、共通する部分については説明を省略する。
【0059】
図4に示すように、第2の実施形態の成形金型は、第1の実施形態と比較して、第1金型10が取り付けられる第1取付板30が、周壁31を備える点で異なる。周壁31は、第1取付板30の外縁から立ち上がり、複数の第1金型10を囲う。第1金型10は、相互に隣接する第1金型10との間、および、周壁31との間に、結晶性熱可塑性樹脂シートに向けて開口するスリット14を形成する。すなわち、第1金型10は、各第1金型10の周囲にスリット14を形成する。
【0060】
また、周壁31は、スリット14内に空気を供給するための供給口32を備える。供給口32は、成形装置が備える第3空気ポンプに接続される。第3空気ポンプによって供給口32からスリット14に供給された空気は、第1金型10の周囲から排出される。
【0061】
以下、図5を参照して、離型工程の詳細を説明する。なお、成型工程については第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
離型工程は、まず、図5(a)に示すように、第2金型20が上昇することで、結晶性熱可塑性樹脂シートSを挟持から解放する。このとき、成形された結晶性熱可塑性樹脂シートSは、第1金型10の凹部11に密着している。
【0062】
第1空気ポンプは、第1金型10から結晶性熱可塑性樹脂シートSを離型させるため、第1の実施形態の場合と同様に、離型用の空気を供給する。さらに第3空気ポンプは、第1金型10から結晶性熱可塑性樹脂シートSを離型させるため、離型のための空気をスリットに供給する。スリットに供給された空気は、スリットの中を通り、各第1金型10の周囲から排出される。
【0063】
そして、図5(b)に示すように、縁部通気路12V、凹部通気路11V、および、各第1金型10の周囲から排出される空気が、結晶性熱可塑性樹脂シートSに空気圧を加えることで、加熱成形した後の結晶性熱可塑性樹脂シートSは離型される。
【0064】
以上、上記実施形態によれば、上述した(1)〜(7)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(8)結晶性熱可塑性樹脂シートSの離型のために成形金型に供給された空気が、凹部11の周囲と凹部通気路11Vとから排出されることに加えて、各第1金型10の周囲から排出される。そのため、離型のための空気圧を結晶性熱可塑性樹脂シートSのさらに広い範囲に対して加えることが可能となり、したがって、結晶性熱可塑性樹脂シートSのより広い範囲を均一に離型させることが可能となる。結果として、結晶性熱可塑性樹脂シートSを成形金型から離型する際の変形をさらに抑制することが可能となる。
【0065】
なお、上述した各実施形態は以下のように変更して実施することも可能である。
・第2の実施形態において、結晶性熱可塑性樹脂シートSを成形金型から離型するために各第1金型10の周囲から排出される空気は、第3空気ポンプから供給される構成に限らず、第1空気ポンプ、または、第2空気ポンプによって供給される構成であってもよい。この構成であっても、上記(8)に準じた効果を得ることは可能である。なお、この構成において、各第1金型10の周囲に形成されるスリット14と空気ポンプとの間の経路には、弁やバルブ等を設け、そして、当該バルブ等が成型工程では閉じ、離型工程では開くように構成されてもよい。当該構成によれば、結晶性熱可塑性樹脂シートSが成型工程においてスリット14からの空気圧で変形することを抑え、かつ、上記(8)に準じた効果を得ることが可能である。
【0066】
・第2の実施形態において、各第1金型10の周囲から結晶性熱可塑性樹脂シートSの離型のために空気を排出することが可能な構成であれば、成形金型は、各第1金型10の周囲にスリット14が形成される構成に限られない。すなわち、相互に隣り合う第1金型10によって通気孔が形成される構成や、複数の第1金型10の間に空気が流通するための配管が設置される構成であってもよい。すなわち、第1金型10の周囲から空気を排出する通気路を備える構成であればよい。上述した構成であっても、上記(8)に準じた効果を得ることは可能である。
【0067】
・第2の実施形態において、第1金型10は、縁部通気路12Vを備えなくともよい。すなわち、第1金型通気路10Vは凹部通気路11Vのみ備え、結晶性熱可塑性樹脂シートSの離型のために排出される空気は、凹部通気路11Vと、第1金型10の周囲とから排出されればよい。上述した構成であっても、結晶性熱可塑性樹脂シートSの離型のために排出する空気を凹部通気路11Vのみから排出する構成と比べて、結晶性熱可塑性樹脂シートSのより広い範囲に空気圧をかけることが可能となり、したがって、結晶性熱可塑性樹脂シートのより広い範囲を均一に離型させることが可能となる。結果として、結晶性熱可塑性樹脂シートSを成形金型から離型する際の変形をさらに抑制することが可能となる。
【0068】
・第2の実施形態において、結晶性熱可塑性樹脂シートSを成形金型から離型することは、スリット14に供給された空気を第1金型10の周囲から排出することのみによって行ってもよい。このとき、第1金型10と第1空気ポンプとの間の経路には、通気路を大気に開放できるよう構成されたバルブ等を設けてもよい。
【0069】
成型工程において第1空気ポンプは、第1金型10と結晶性熱可塑性樹脂シートSとの間の空間から空気を排出することで、当該空間の圧力を低下させる。この時、第1金型通気路10V内の気圧も、低下する。離型工程においては、第1金型10と第1空気ポンプとの間の経路に設けられたバルブ等を開放することで、第1金型通気路10V内の気圧を大気圧にする。そして、第3空気ポンプからスリット14に供給された空気を第1金型10の周囲から排出することによって、結晶性熱可塑性樹脂シートSを離型させる。
【0070】
上述した方法であれば、結晶性熱可塑性樹脂シートSの広い範囲に対して空気圧をかけることが出来る。そのため、第1金型10の凹部通気路11Vのみから離型のための空気を排出する方法と比べて、結晶性熱可塑性樹脂シートSを離型する時の変形を抑制することが可能である。
【0071】
・成形金型は、結晶性熱可塑性樹脂シートSの離型のために第1金型10に供給された空気が、縁部通気路12Vに供給された後、共通通気路13Vを経由して、凹部通気路11Vに供給される構成に限られない。例えば、結晶性熱可塑性樹脂シートSの離型のために第1金型10に供給された空気が、凹部通気路11Vに供給された後、共通通気路13Vを経由して、縁部通気路12Vに供給される構成であっても、上記(1),(3)〜(8)に準じた効果を得ることは可能である。
【0072】
・各縁部通気路12Vの流路断面積が、凹部通気路11Vの流路断面積よりも大きい構成においては、通気路の一方の端から他方の端まで流路断面積が一定である構成に限られない。例えば、縁部通気路12Vが縁部孔部12VSに向けて広がる構成や、凹部通気路11Vが凹部孔部11VSに向けて狭まる構成であってもよく、すなわち、各通気路における流路断面積の違いにより、縁部通気路12Vにおいて空気が流れやすくなる構成であればよい。
【0073】
・各縁部通気路12Vの流路断面積は、凹部通気路11Vの流路断面積以下であってもよい。この構成であっても、上記(1)〜(3),(5)〜(8)に準じた効果を得ることは可能である。
【0074】
・各縁部通気路12Vは、突条12Aのなかで凸面以外に開口してもよい。この構成であっても、上記(1)〜(4),(6)〜(8)に準じた効果を得ることは可能である。
・成形金型は、複数の第1金型10が第1取付板30に取り付けられる構成でなくともよい。例えば、複数の凹部11が形成された単一の金型が加熱板50に接続される構成であったとしても、上記(1)〜(8)に準じた効果を得ることは可能である。なお、製造する成形品の形状を変更する際に金型の交換を容易にするという観点においては、複数の第1金型10を第1取付板30に取り付ける構成が好ましい。
【0075】
・第1金型10、および、第1取付板30の構成は、上述した真空圧空成形法による成形装置、および、成形方法に限らず、真空成形法、圧空成形法、マッチモールド成形法、プラグアシスト成形法などによる成形装置、および、成形方法に対しても適用可能である。
【0076】
・加熱成形の際に、第1金型10から空気を排出することと、第2金型20から空気を供給することとは、単一の空気ポンプによって行われてもよい。上述した構成であったとしても、上記(1)〜(8)に準じた効果を得ることは可能である。
【0077】
・第2金型20は、第1金型10の開口部11Aを覆う大きさの平面を有する平面部21を備える構成でなくともよく、第1金型10の凹部11を覆う大きさの面を備えてさえいればよい。すなわち、第1金型10と第2金型20とによって結晶性熱可塑性樹脂シートSを挟持した時、第2金型20と結晶性熱可塑性樹脂シートSとの間の空間が、第2金型通気路を除いて密閉される構成であればよい。上述した構成であったとしても、上記(1)〜(8)に準じた効果を得ることは可能である。
【0078】
・本実施形態では、第1金型10の凹部11に凹部孔部11VSが第2金型20に対向する面に設けられる。この時、凹部11は、底部と、側壁により形成され、そして、底部に凹部孔部11VSが設けられている。ここで、凹部を形成する側壁に段部が形成されている場合には、その段部において第2金型20に対向する面である、段部の天面部に凹部孔部11VSがさらに形成され、凹部通気路11Vに連通されていてもよい。上述した構成であっても、上記(1)〜(8)に準じた効果を得ることは可能である。
【0079】
・第2金型20は、溝部22を備えなくともよい。例えば、第2金型20のうち、第1金型10と対向する面が平面部21のみによって構成されてもよい。また、第1金型10と第2金型20とが結晶性熱可塑性樹脂シートSを挟持した時、突条12Aの外周を取り囲むように形成された第2の突条を備える構成であってもよい。すなわち、第1金型10と第2金型20とが結晶性熱可塑性樹脂シートを挟持した時、第2金型20と結晶性熱可塑性樹脂シートSとの間の空間が第2金型通気路を除いて密閉される構成であれば、突条12Aの内側において結晶性熱可塑性樹脂シートSは、突条12Aの形状に追従した形状に形成される。したがって、上記(5)に準じた効果を得ることも可能である。
【0080】
・全ての縁部通気路12Vが共通通気路13Vを経由して凹部通気路11Vに接続される構成に限らず、一部の縁部通気路12Vのみが共通通気路13Vを経由して凹部通気路11Vに接続される構成であってもよい。上述した構成であったとしても、上記(1)〜(8)に準じた効果を得ることは可能である。
【符号の説明】
【0081】
S…結晶性熱可塑性樹脂シート、10…第1金型、11…凹部、11A…開口部、11V…凹部通気路、12…縁部、12A…突条、12V…縁部通気路、13V…共通通気路、20…第2金型。
図1
図2
図3
図4
図5