(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-163821(P2020-163821A)
(43)【公開日】2020年10月8日
(54)【発明の名称】スラッジ水の処理回収方法
(51)【国際特許分類】
B28C 7/16 20060101AFI20200911BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20200911BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20200911BHJP
C02F 1/66 20060101ALI20200911BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20200911BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20200911BHJP
【FI】
B28C7/16
B01D53/62ZAB
B01D53/78
C02F1/66 510S
C02F1/66 522C
C02F1/66 530D
C02F1/66 540B
B01D53/18 110
B01D53/14 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-69523(P2019-69523)
(22)【出願日】2019年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】兵頭彦次
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G056
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC05
4D002BA02
4D002CA06
4D002DA05
4D002FA02
4D020AA03
4D020BA02
4D020BA08
4D020BB03
4D020CB01
4D020CC05
4D020CC11
4G056AA06
4G056CD47
(57)【要約】
【課題】本発明は、コンクリートの強度に影響しないスラッジ水の処理回収方法を提供する。
【解決手段】本発明は、スラッジ水に二酸化炭素を吹き込んで、スラッジ水中の水和生成物と反応処理して炭酸カルシウムを生成させてスラッジ水を回収する、スラッジ水の処理回収方法であり、好ましくは前記二酸化炭素は、セメントクリンカの焼成時に生成する二酸化炭素を含む排ガスであり、前記水和生成物は、水酸化カルシウム、およびカルシウムシリケート水和物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラッジ水に二酸化炭素を吹き込んで、スラッジ水中の水和生成物と反応処理して炭酸カルシウムを生成させてスラッジ水を回収する、スラッジ水の処理回収方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素が、セメントクリンカの焼成時に生成する二酸化炭素を含む排ガスである、請求項1に記載のスラッジ水の処理回収方法。
【請求項3】
前記水和生成物が水酸化カルシウム、およびカルシウムシリケート水和物である、請求項1または2に記載のスラッジ水の処理回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レディーミクストコンクリート工場の運搬車やミキサ等の洗浄によって発生する洗浄排水から、骨材を除いた水を二酸化炭素で処理してスラッジ水を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レディーミクストコンクリート工場(生コン工場)の運搬車やミキサ等の洗浄によって発生する洗浄排水から、骨材を除いた水は回収水と呼ばれる。そして、該回収水は、水酸化カルシウムやカルシウムシリケート水和物等の水和生成物を含む上澄水と、該水和生成物と骨材微粒子等のスラッジ固形分を含むスラッジ水に分けられる。そして、前記水和生成物と骨材微粒子が多いスラッジ水は、コンクリートの混練水に用いると、コンクリートの強度が低下する場合がある。
【0003】
そこで、日本コンクリート工学協会の回収水利用委員会は、回収水の使用に関し、以下の提言をしている。
(i)上澄水は、上水と同様に練混水として使用できる。
(ii)水セメント比やコンシステンシーを一定にするためには、スラッジ固形分率1%につき、単位水量や単位セメント量を1〜1.5%増やす。
(iii)細骨材率はスラッジ固形分1%につき約0.5%減らす。
(iv)コンクリート中の空気量が減少傾向にあるため、AE剤や空気量調整剤を用いて空気量を調整する。
このように、スラッジ水中の固形分は、その含有量によってはコンクリートの混練水に使えないため、固形分の多いスラッジ水は廃棄せざるを得ないが、アルカリ性が高いため廃棄のための処理に手間やコストがかかっていた。
【0004】
そこで、スラッジ水や回収水を処理する方法がいくつか提案されている。例えば、
引用文献1では、コンクリート回収水を加熱する加熱工程と、加熱工程にて加熱されたコンクリート回収水を静置することにより、上澄水を分離する分離工程とを実施する上澄水の分離回収方法が提案されている。
引用文献2では、生コンクリートの混練設備や残存した生コンクリートの処理工程から排出されるセメントを含んだスラッジ水を脱水機によって処理する方法において、前記スラッジを電解処理することによって、スラッジ水に含まれる混和剤の形態を変える電解工程を経て脱水機へ送られる、生コンクリートスラッジ水の脱水処理方法が提案されている。
引用文献3では、セメントが水に分散しているスラッジ水に、分離剤を添加して撹拌し、セメントが水和活性を有しない部分と、未だ水和活性を有する部分とに分離し、未だ水和活性を有する部分を再使用する、セメント排水の分離方法が提案されている。
しかし、これらの方法は、処理や分離後のスラッジ水の処理や分離に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−72947号公報
【特許文献2】特開2003−190998号公報
【特許文献3】特開2003−071466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、コンクリートの強度に影響しないスラッジ水の処理回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、スラッジ水を二酸化炭素で処理して回収する方法は前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の構成を有するスラッジ水の処理回収方法である。
【0008】
[1]スラッジ水に二酸化炭素を吹き込んで、スラッジ水中の水和生成物と反応処理して炭酸カルシウムを生成させてスラッジ水を回収する、スラッジ水の処理回収方法。
[2]前記二酸化炭素が、セメントクリンカの焼成時に生成する二酸化炭素を含む排ガスである、前記[1]に記載のスラッジ水の処理回収方法。
[3]前記水和生成物が水酸化カルシウム、およびカルシウムシリケート水和物である、前記[1]または[2]に記載のスラッジ水の処理回収方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスラッジ水の処理回収方法によれは、コンクリートの強度に影響しないスラッジ水を得ることができ、スラッジ水の有効活用に資することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、前記のとおり、スラッジ水に二酸化炭素を吹き込んで、スラッジ水中の水和生成物と反応処理して炭酸カルシウムを生成させてスラッジ水を回収する、スラッジ水の処理回収方法等である。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.スラッジ水
本発明の処理対象であるスラッジ水は、レディーミクストコンクリート工場の運搬車やミキサ等の洗浄によって発生する洗浄排水から、骨材を除いた水であって、該回収水は、水酸化カルシウムやカルシウムシリケート水和物等の水和生成物と、骨材微粒子等のスラッジ固形分を含む水である。
【0012】
2.二酸化炭素
本発明で用いる二酸化炭素は、工業品としての二酸化炭素、空気、およびセメントクリンカの焼成時に生成する二酸化炭素や窒素酸化物を含む排ガスが挙げられる。これらの中でも、前記排ガスは、二酸化炭素等の大気中への放出抑制と有効活用に資するため好ましい。
二酸化炭素の吹き込み方法は、単なるバブリングのほか、撹拌しながらバブリングする方法、および、超音波を照射しながらバブリングする方法が挙げられる。
【0013】
3.水和生成物
本発明で二酸化炭素と反応する水和生成物は、主に、水酸化カルシウムとカルシウムシリケート水和物である。これらのカルシウム化合物と二酸化炭素が反応すると、スラッジ水のpHは12以下に低下するため、スラッジ水の取り扱いが、より容易になるほか、環境への影響を軽減することができる。
【0014】
4.炭酸カルシウム
本発明において、二酸化炭素と水和生成物が反応して生成する炭酸カルシウムは微細であるため、混練水として再利用した場合、コンクリート中で微細なフィラーとして作用するため、コンクリートの強度の向上効果がある。この炭酸カルシウムの粒径は0.01〜20μmが好ましい。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.使用材料と配合
表1にコンクリートに用いた材料を示し、表2にコンクリートの配合を示す。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
2.試験と結果
スラッジ水A、Bに液化炭酸ガスを注入し、炭酸カルシウムを生成した水を練混ぜ水として使用した。スラッジに含まれる固形分率、および、その中の炭酸カルシウムの割合を表2に示す。
また、圧縮強度をJIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して測定した。その結果を
図1に示す。
スラッジ水A、Bをそのまま使用した比較例2、3は、上水道水を用いた比較例1と、圧縮強度が同程度かやや低い。これに対し、炭酸ガスを注入したスラッジ水A、Bを使用した実施例1、2は、いずれも比較例よりも圧縮強度が高い。