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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-163916(P2020-163916A)
(43)【公開日】2020年10月8日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20200911BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20200911BHJP
【FI】
   B60N2/42
   B60R21/207
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-64271(P2019-64271)
(22)【出願日】2019年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【テーマコード(参考)】
3B087
3D054
【Fターム(参考)】
3B087CD05
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA04
3D054AA21
3D054CC47
3D054EE01
3D054EE19
3D054FF12
(57)【要約】
【課題】車両の前面衝突時などにおいて、乗員のサブマリン現象を防止すると共に、特に後席乗員による前席乗員に対する攻撃性を抑止することができる車両用シートを提供すること。
【解決手段】シートクッション2の座面2aが車両100の前方に向かって下り勾配となるようにシートクッション2を前傾させるシートクッション可動部2dと、乗員Mの足が載置されるフロアFの下降面部F1を下降させるフロア可動部F2と、車両100が衝突したと判断したときに、シートクッション可動部2dを作動させてシートクッション2を前傾させると共に、フロア可動部F2を作動させて下降面部F1を下降させる制御部40と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの座面が自車両の前方に向かって下り勾配となるように前記シートクッションを前傾させるシートクッション可動部と、
乗員の足が載置されるフロアの下降面部を下降させるフロア可動部と、
前記自車両が衝突したと判断したときに、前記シートクッション可動部を作動させて前記シートクッションを前傾させると共に、前記フロア可動部を作動させて前記下降面部を下降させる制御部と、
を備える、
車両用シート。
【請求項2】
前記制御部は、前記自車両が前面衝突すると予測したときに、前記シートクッション可動部と前記フロア可動部とを衝突前に作動させる、
請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記制御部は、前記自車両が前面方向以外の方向から衝突すると予測したときは、前記シートクッション可動部と前記フロア可動部の作動を中止する、
請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記制御部は、前記乗員の着座姿勢を示す姿勢情報を含む乗員情報を取得する乗員情報取得部から出力された前記乗員情報に基づいて、前記乗員が正規の着座姿勢でないと判断したときは、前記シートクッション可動部と前記フロア可動部の作動を中止する、
請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記制御部は、前記乗員の顔情報と体格情報の少なくとも一方の情報を含む乗員情報を取得する乗員情報取得部から出力された前記乗員情報に基づいて、前記乗員が子供であると判断したときは、前記シートクッション可動部と前記フロア可動部の作動を中止する、
請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項6】
シートバックを前記自車両の前方に向けて前傾させるシートバック可動部を備え、
前記制御部は、前記自車両が前面衝突したと判断したとき又は前記自車両が前面衝突すると予測したときに、前記シートバック可動部を作動させて前記シートバックを前傾させる、
請求項2〜5の何れか1項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の前面衝突時又は前面衝突予測時による急停止(以下、まとめて「前面衝突時など」と記載することもある)には、シートベルトを装着した乗員が前方に移動する慣性力を受けて、乗員の腰部がシートクッションに深く沈み込みながらシートベルトの下側を潜り抜けようとする、所謂「サブマリン現象」が発生し得る。
【0003】
特に、車両の走行速度がある程度以上の中・高速域で前面衝突などが生じた場合、前方に向かう慣性力が大きいため、乗員の下腿が跳ね上がり、下肢全体が車両前方側に強く引っ張られたような格好で車両前方側に移動するため、サブマリン現象の発生率が高まる。
【0004】
下記特許文献1には、乗員保護の観点から前面衝突時に発生し得るサブマリン現象を抑制して乗員に過大な衝撃荷重が加わらないようにするため、車両の前面衝突時などに、シートベルトをした乗員の腰部における重心よりも後部側を後上方に向けて押し上げるようにする押し上げ体が、シートクッションの下方におけるシート架台に支持された車両のシート装置について開示されている。
【0005】
この装置では、車両の前面衝突が検出されると、エアバッグにインフレーターからガスが送り込まれることでエアバッグが瞬間的に膨張し、シートクッションの上面部分を介して乗員の腰部の後部側を後上方に向かって押し上げて前面衝突時のサブマリン現象の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−155512公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されるシート装置は、前面衝突時などにシートクッションの座面部分を介して乗員の腰部を後上方に向かって押し上げている。しかし、このシート装置では、前面衝突時などにシートクッションに対する乗員の臀部の沈み込み量を、衝突前の着座姿勢時と同等の沈み込み量にする程度の効果しか得られず、サブマリン現象の発生を防止するには至らない。
【0008】
また、前面衝突時などにサブマリン現象が発生した場合、後部座席(後席)に着座した後席乗員は、シートベルトの下側を潜り込んで前方に移動し、膝部が前部座席(前席)の背面に衝突することがある。このとき、後席乗員の膝部が、前席の背面を突き抜け前席乗員の背中に当たると、前席乗員は、胸部がシートベルトと膝部とで強く圧迫され重大な被害を受けてしまう。
【0009】
以上のように、特許文献1の装置においては、サブマリン現象を抑制する点、前面衝突時などに後席の乗員の攻撃性を抑止して前席の乗員を保護する点について、更なる改善の余地が残されている。
【0010】
本発明は、上記課題を解決することを目的とし、車両の前面衝突時などにおいて、乗員のサブマリン現象を防止すると共に、特に後席乗員による前席乗員に対する攻撃性を抑止することができる車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の車両用シートは、シートクッションの座面が自車両の前方に向かって下り勾配となるように前記シートクッションを前傾させるシートクッション可動部と、乗員の足が載置されるフロアの下降面部を下降させるフロア可動部と、前記自車両が衝突したと判断したときに、前記シートクッション可動部を作動させて前記シートクッションを前傾させると共に、前記フロア可動部を作動させて前記下降面部を下降させる制御部と、を備える。
【0012】
好適には、前記車両用シートにおいて、前記制御部は、前記自車両が前面衝突すると予測したときに、前記シートクッション可動部と前記フロア可動部とを衝突前に作動させる。
【0013】
好適には、前記車両用シートにおいて、前記制御部は、前記自車両が前面方向以外の方向から衝突すると予測したときは、前記シートクッション可動部と前記フロア可動部の作動を中止する。
【0014】
好適には、前記車両用シートにおいて、前記制御部は、前記乗員の着座姿勢を示す姿勢情報を含む乗員情報を取得する乗員情報取得部から出力された前記乗員情報に基づいて、前記乗員が正規の着座姿勢でないと判断したときは、前記シートクッション可動部と前記フロア可動部の作動を中止する。
【0015】
好適には、前記車両用シートにおいて、前記制御部は、前記乗員の顔情報と体格情報の少なくとも一方の情報を含む乗員情報を取得する乗員情報取得部から出力された前記乗員情報に基づいて、前記乗員が子供であると判断したときは、前記シートクッション可動部と前記フロア可動部の作動を中止する。
【0016】
好適には、前記車両用シートにおいて、シートバックを前記自車両の前方に向けて前傾させるシートバック可動部を備え、前記制御部は、前記自車両が前面衝突したと判断したとき又は前記自車両が前面衝突すると予測したときに、前記シートバック可動部を作動させて前記シートバックを前傾させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両の前面衝突時などにおいて、乗員のサブマリン現象を防止すると共に、特に後席の乗員による前席の乗員に対する攻撃性を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る車両用シートを備えた車両内の概略斜視図である。
図2】同シートの概略斜視図である。
図3】同シートと接続される制御部の機能ブロック図である。
図4】(a)、(b)は、同シートにおけるシートクッション可動部の形態例を示す図である。
図5】同シートにおけるシートバック可動部の形態例を示す図である。
図6】同シートにおけるフロア可動部の形態例を示す図であり、(a)は下降面部の下降前の状態を示す図であり、(b)は下降面部が下降した状態を示す図である。
図7】(a)は同シートにおける前面衝突前の車両用シートの状態と乗員の姿勢を示す図であり、(b)は同シートにおける前面衝突時の車両用シートの状態と乗員の姿勢を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態によって本発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれるものとする。
【0020】
なお、本明細書において、「前後方向」は、車両100の前後方向(車両100の前進・後進方向)と一致し、「左右方向」は、車両100の左右方向(車両100の幅方向)と一致し、「上下方向」は、車両100の上下方向と一致する。また、「前面衝突」とは、車両100に対してフルラップの前面衝突(対称衝突)することを指す。
【0021】
[車両内部の概要]
まず、本実施形態に係る車両用シート1を備えた車両100について説明する。
図1に示すように、乗員Mが乗車する車両(自車両)100は、前方にステアリングホイール(ハンドル)103が設置される運転席と、運転席と隣り合う助手席とを含む前部座席(前席)101と、前席101の後方に配置される後部座席(後席)102とを備えている。本実施形態に係る車両用シート1は、前席101及び後席102に適用可能である。
【0022】
[車両用シートの構成]
次に、本実施形態に係る車両用シート1の構成について説明する。
図2に示すように、車両用シート1は、車内のフロアF上に設置され、乗員Mの着座面を形成するシートクッション2と、シートクッション2の後端から斜め後上方へ起立する下端が接し乗員Mの背もたれ面を形成するシートバック3と、乗員Mの頭部を保持する高さ調整可能なヘッドレスト4と、を備えている。
【0023】
車両用シート1は、フロアFに対して位置が固定された状態で設けてもよいし、フロアFに設けられた前後方向に延びる図示しないシートレールに沿って車体に対する前後方向の位置が変更可能に設けてもよい。また、車両用シート1は、乗員Mの着座向きが前後方向に可変できるように、シート自体の向きが所定方向に回転可能に設けることもできる。
【0024】
図3に示すように、車両用シート1は、前面衝突時などにシートクッション2、シートバック3及び後述する下降面部F1を制御する制御部40と接続されている。なお、制御部40の機能及び処理内容については後段で詳述する。
【0025】
シートクッション2は、構造的強度を付与するための金属製のベース部材(図示せず)を覆うように、弾性変形特性及び振動減衰特性を有する発泡ウレタン製の部材が設けられている。シートクッション2の上面には、乗員Mが着座する座面2aが設けられている。
【0026】
シートクッション2は、前面衝突時などに、座面2aが前方(前席101側に)向かって下り勾配に前傾するように設けられており、シートクッション可動部2dが作動することで座面2aが前傾する。シートクッション可動部2dは、制御部40からの作動指示に基づき作動する。
【0027】
シートクッション可動部2dの構成例としては、図4に示すように、例えばシートクッション2の後端部2cを前方に向けて押し上げる押上部材2eにモータなどの駆動部2fを設けた構成、図4(b)に示すように、図示しないガス発生部(インフレーター)が作動しエアバッグ本体内にガスが供給され膨張展開するシートクッションエアバッグ2gで座面2aを前傾させる構成など、前面衝突時などにシートクッション2の座面2aを前傾させる機構であれば特に限定されない。
【0028】
シートバック3は、構造的強度を付与するための金属製のフレーム(図示せず)を覆うように、弾性変形特性及び振動減衰特性を有する発泡ウレタン製の部材が設けられている。シートバック3は、下端部3aがシートクッション2の後端部2cに対して前後方向に揺動可能に連結されている。シートバック3は、前面衝突時などにシートバック可動部3bが作動すると、乗員Mの背中部を押すように前傾する。シートバック可動部3bは、制御部40からの作動指示に基づき作動する。シートバック3は、前面衝突時などで前傾して乗員Mの背中部を前方に押すことで、乗員Mの下肢の屈曲状態から伸長状態への変化を促し、乗員Mの移動方向規制をより強化することができる。
【0029】
シートバック可動部3bの構成例としては、図5に示すように、例えば下端部3aに設けた支軸3cにモータなどの駆動部3dを設けた構成など、前面衝突時などにシートバック3が前方に傾倒可能な機構であれば特に限定されない。
【0030】
ヘッドレスト4は、構造的強度を付与するための金属製のフレーム(図示せず)を覆うように、弾性変形特性及び振動減衰特性を有する発泡ウレタン製の部材が設けられている。ヘッドレスト4は、乗員Mの頭部の位置に応じて上下方向に移動可能に設けられている。なお、ヘッドレスト4は、その下端を支点として前後方向に揺動可能に設けることも可能である。
【0031】
[フロアの構成]
フロアFは、乗員Mの足が載置される足載置領域に前面衝突時などに乗員Mの足ごと下降する下降面部F1が設けられている。下降面部F1は、通常時ではフロアFと同一面上に配置され、前面衝突時などに下降する。フロア可動部F2は、制御部40からの作動指示に基づいて下降面部F1を下降させる。
【0032】
フロア可動部F2の構成例としては、図6(a)、(b)に示すように、例えば下降面部F1の下面(裏面)に対し、上下方向に伸縮自在なパンタグラフ機構からなる支持部材F3を設け、この支持部材F3にモータなどの駆動部F4を設けた構成など、前面衝突時などに下降面部F1が下方に移動可能な機構であれば特に限定されない。
【0033】
下降面部F1が下降する移動距離(下降距離)は、一般成人の下肢の長さに基づき、前面衝突時などで乗員Mの足裏が下降面部F1に当接した状態で下肢が屈曲状態から伸長状態となって踏ん張りを効かせ易い距離に設定される。
【0034】
[車両に搭載される他の構成]
車両100は、シートクッション2の前傾制御、シートバック3の前傾制御及びフロアFの下降面部F1の下降制御(以下、これら制御をまとめて「乗員保護制御」ともいう)を実行する際に必要な情報を取得する、衝突検出部10と、衝突予測部20と、乗員情報取得部30とを備えている。
【0035】
衝突検出部10は、例えば加速度センサで構成され、車両100の前後方向への加速度を検知する。また、衝突検出部10は、車両100の前後方向に加えて、左右方向や上下方向への加速度を検出する加速度センサであってもよい。衝突検出部10は、車両100に作用する衝突の衝撃を検出し、加速度に対応する電気信号を衝突検出情報として制御部40に出力する。
【0036】
衝突予測部20は、車両100の前方を撮像して障害物を検出する車載カメラ及び車両100の前方にミリ波などの電波を照射して車両100の前方に存在する障害物から反射されたミリ波(反射波)を受信して障害物を検出する車載レーダなどのプリクラッシュセーフセンサで構成される。障害物としては、例えば歩行者、二輪車、四輪車(他車両)などの移動物体、例えば路上の落下物、交通信号、ガードレール、縁石、道路標識、樹木、建造物のような静止物体を含んでいてもよい。
【0037】
衝突予測部20は、障害物の位置(車両100と障害物との間の距離)と、障害物の車両100に対する相対的な移動方向及び移動速度(相対速度)を検出して車両100の障害物に対する前面衝突を予測する。衝突が予測された場合には、障害物と車両100とが衝突するまでの時間、障害物が衝突する車両100上の位置を予測し、衝突予測時間に関する情報と衝突予測位置に関する情報とを含む衝突予測情報を制御部40に出力する。
【0038】
乗員情報取得部30は、例えばCCDカメラ、CMOSカメラなどの固体撮像素子を用いたカメラ機能を備える撮像装置である。乗員情報取得部30は、例えば車両100のインストルメントパネルの上面などに設置され、車両100の車室内を画像として取得する。本実施形態では、乗員情報取得部30で取得された撮像画像が制御部40で解析処理されることで、この画像内の乗員Mの年代、着座姿勢などが知得される。乗員情報取得部30は、車内を撮像した撮像画像を、乗員Mの年代、着座姿勢を判別するための乗員情報として制御部40に出力する。
【0039】
なお、乗員情報には、乗員Mの着座姿勢を示す姿勢情報、乗員Mの顔情報、乗員Mの体格の大きさを示す体格情報のうち、少なくとも1つの情報が含まれていればよい。つまり、乗員情報取得部30は、判断部41による乗員保護制御の実行の可否で必要な情報が取得可能な構成であればよい。
【0040】
[制御部の構成]
制御部40は、CPU、各種メモリ(ROM、RAM)を備える周知のマイクロコンピュータ(ECU:Electronic Control Unit)で構成され、車両用シート1に対する各種制御を統括的に実施する。制御部40は、判断部41と、指示部42と、を備えている。制御部40は、車両用シート1における乗員保護制御が実行可能であればよいため、車両用シート1自体に搭載されていてもよいし、車両100の所定箇所に搭載されていてもよい。本実施形態では、制御部40が車両用シート1に具備される構成とする。
【0041】
判断部41は、衝突検出部10から入力された衝突検出情報に基づいて車両100が前面衝突したか否かを判断する。判断部41は、車両100が前面衝突したと判断したときは、乗員保護制御を実行させるための制御指示を指示部42に出力する。また、判断部41は、衝突予測部20から入力された衝突予測情報に基づいて車両100が前面衝突する可能性が高いか否かを判断する。判断部41は、車両100が前面衝突する可能性が高いと判断したときは、乗員保護制御を実行させるための制御指示を指示部42に出力する。
【0042】
一方、判断部41は、入力された衝突検出情報に基づいて車両100が前面方向以外の方向から衝突、若しくは衝突予測情報に基づいて車両100が前面方向以外の方向からの衝突可能性が高いと判断したときは、乗員保護制御を実行させるための制御指示を指示部42に出力せず、乗員保護制御の実行を中止する。
【0043】
車両100は、例えば側面衝突のような前面衝突以外の衝突を受けた場合、乗員Mが受ける衝撃の方向及び慣性力による移動方向が前面衝突時とは異なる。そのため、前面衝突時以外の衝突では、サブマリン現象が発生する可能性が低く、寧ろシートクッション2とシートバック3を前傾させたり、下降面部F1を下降させたりすることで、乗員Mの着座姿勢が崩れ、衝突時などに乗員Mが重大な被害を受ける虞がある。このことから、前面衝突時若しくは前面衝突の可能性が高い場合に限り、乗員保護制御を実行するのが好ましい。
【0044】
また、判断部41は、乗員情報取得部30からの乗員情報に含まれる車内の撮像画像を解析し、乗員Mの着座姿勢が正規の着座姿勢であるか否かを判断する。判断部41は、乗員Mが正規の着座姿勢であると判断したときは、乗員保護制御を実行させるための制御指示を指示部42に出力する。
【0045】
一方、判断部41は、乗員Mの着座姿勢が正規の着座姿勢でないと判断したときは、乗員保護制御を実行させるための制御指示を指示部42に出力せず、乗員保護制御の実行を中止する。
【0046】
乗員Mの着座姿勢が正規の着座姿勢でない場合、乗員Mが受ける衝撃の方向及び慣性力による移動方向が正規の着座姿勢とは異なる。そのため、正規の着座姿勢でない場合に乗員保護制御を実行してしまうと、乗員Mの着座姿勢が崩れ、衝突時などに乗員Mが重大な被害を受ける虞がある。このことから、乗員Mの着座姿勢が正規の場合に限り、乗員保護制御を実行するのが好ましい。
【0047】
また、判断部41は、乗員情報取得部30からの乗員情報に含まれる車内の撮像画像を解析し、乗員Mが成人であると判断したときは、乗員保護制御を実行させるための制御指示を指示部42に出力する。
【0048】
一方、判断部41は、乗員情報取得部30からの乗員情報に含まれる車内の撮像画像を解析し、乗員Mが子供あると判断したときは、乗員保護制御を実行させるための制御指示を指示部42に出力せず、乗員保護制御の実行を中止する。
【0049】
乗員Mが子供の場合、前面衝突時などで乗員保護制御を実行してしまうと、例えばシートクッション2が前傾したことでシートベルトの下側から潜り抜け易くなったり、下降した下降面部F1に足裏が当接しなかったりするなど、乗員Mの保護につながらない虞がある。このことから、乗員Mが成人の場合に限り、乗員保護制御を実行するのが好ましい。
【0050】
指示部42は、判断部41からの乗員保護制御の実行を示す制御指示を入力すると、シートクッション可動部2d、シートバック可動部3b及びフロア可動部F2に作動指示を出力する。これにより、シートクッション2とシートバック3が前傾し、下降面部F1が下降する。
【0051】
[車両用シートの動作]
次に、本実施形態の車両用シート1の動作について説明する。ここでは、衝突検出部10によって前面衝突が検出された際の動作を例にとって説明する。
【0052】
図7(a)に示すように、車両用シート1は、前面衝突が検出される前において、通常状態、すなわち乗員保護制御が実行されておらず、シートクッション可動部2d、シートバック可動部3b及びフロア可動部F2が作動していない状態となる。
【0053】
次に、車両100の前面衝突が検出されると、衝突検出部10は、車両100が衝突したことを検出し、判断部41は、車両100が前面衝突したと判断すると、指示部42に乗員保護制御を実行するための制御指示を出力する。指示部42は、判断部41からの制御指示に従い、シートクッション可動部2d、シートバック可動部3b及びフロア可動部F2に作動指示を出力する。
【0054】
シートクッション可動部2dは、作動指示を入力すると、図7(b)に示すように、シートクッション2を前傾させる。シートバック可動部3bは、作動指示を入力すると、図7(b)に示すように、シートバック3を前傾させる。フロア可動部F2は、作動指示を入力すると、図7(b)に示すように、下降面部F1を下降させる。
【0055】
車両用シート1は、乗員保護制御が実行されたことで図7(b)に示す状態となる。これにより、着座姿勢の乗員Mの腰部は、座面2aから浮き上がり、乗員Mの下肢は、屈曲状態から伸長状態に近付いて下肢の移動方向が前方からフロアFに向くようになる。そのため、乗員Mは、足裏が下降面部F1に着いた状態で前面衝突時に前方へ移動しないように踏ん張りを効かせ易い姿勢となる。よって、乗員Mは、前面衝突時の前方への慣性力に抗することができるようになるため、結果としてサブマリン現象の発生が防止される。
【0056】
[作用効果]
以上のように、本実施形態に係る車両用シート1は、シートクッション2の座面2aが車両100の前方に向かって下り勾配となるようにシートクッション2を前傾させるシートクッション可動部2dと、乗員Mの足が載置されるフロアFの下降面部F1を下降させるフロア可動部F2と、車両100が衝突したと判断したときに、シートクッション可動部2dを作動させてシートクッション2を前傾させると共に、フロア可動部F2を作動させて下降面部F1を下降させる制御部40と、を備える構成となっている。
【0057】
これにより、乗員Mは、前面衝突時に前方へ移動しないように踏ん張りを効かせ易い姿勢となって、前面衝突時の前方への慣性力に抗することができるため、サブマリン現象の発生が防止される。また、サブマリン現象が防止されることで、前面衝突の際に、後席に着座する乗員Mの、前席の乗員Mに対する胸部攻撃性も抑止される。
【0058】
また、本実施形態に係る車両用シート1において、制御部40は、車両100が前面衝突すると予測したときに、シートクッション可動部2dとフロア可動部F2とを前面衝突前に作動させる構成となっている。
【0059】
これにより、制御部40は、前面衝突が予測された時点でシートクッション可動部2dとフロア可動部F2とを作動させることができるため、前面衝突時に発生し得るサブマリン現象が防止され乗員Mの安全性を確保することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る車両用シート1において、制御部40は、車両100が前面方向以外の方向から衝突すると予測したときは、シートクッション可動部2dとフロア可動部F2の作動を中止する構成となっている。
【0061】
これにより、乗員Mは、前面衝突以外の衝突が予測されたときに、シートクッション2の前傾制御と、下降面部F1の下降制御とを実行したことで生じ得る着座姿勢の崩れが防止され、衝突時などに乗員Mが重大な被害を受けることを防止することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る車両用シート1において、制御部40は、乗員Mの着座姿勢を示す姿勢情報を含む乗員情報を取得する乗員情報取得部30から出力された乗員情報に基づいて、乗員Mが正規の着座姿勢でないと判断したときは、シートクッション可動部2dとフロア可動部F2の作動を中止する構成となっている。
【0063】
これにより、乗員Mは、正規の着座姿勢以外の着座姿勢のときに、シートクッション2の前傾制御と、下降面部F1の下降制御とを実行したことで生じ得る着座姿勢の崩れが防止され、衝突時などに乗員Mが重大な被害を受けることを防止することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る車両用シート1において、制御部40は、乗員Mの顔情報と体格情報の少なくとも一方の情報を含む乗員情報を取得する乗員情報取得部40から出力された乗員情報に基づいて、乗員Mが子供であると判断したときは、シートクッション可動部2dとフロア可動部F2の作動を中止する構成となっている。
【0065】
これにより、乗員Mである子供は、シートクッション2の前傾制御と、下降面部F1の下降制御とを実行したことで生じ得る着座姿勢の崩れが防止され、衝突時などに乗員Mが重大な被害を受けることを防止することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る車両用シート1において、シートバック3を車両100の前方に向けて前傾させるシートバック可動部3bを備え、制御部40は、車両100が前面衝突したと判断したとき又は車両100が前面衝突すると予測したときに、シートバック可動部3bを作動させてシートバック3を前傾させる構成となっている。
【0067】
これにより、乗員Mは、シートクッション2の前傾制御と、下降面部F1の下降制御に加えて、シートバック3により背中部が前方に押されるため、下肢の屈曲状態が伸長状態となるように促される。そのため、乗員Mは、前面衝突時に前方へ移動しないように踏ん張りを効かせ易い姿勢となって、前面衝突時の前方への慣性力に抗することができるため、サブマリン現象の発生が防止される。
【0068】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下に示すように使用環境などに応じて適宜変更して実施することもできる。また、以下の変形例を本発明の要旨を逸脱しない範囲の中で任意に組み合わせて実施することもできる。
【0069】
上述した形態において、車両用シート1は、乗員保護制御としてシートクッション可動部2d、フロア可動部F2及びシートバック可動部3bにそれぞれ作動指示を出力して駆動させる構成で説明したが、これに限定されない。車両用シート1は、少なくともシートクッション可動部2dとフロア可動部F2とを作動させる構成としても、サブマリン現象の発生を防止する効果を十分に発揮させることができる。
【0070】
上述した形態において、判断部41は、乗員Mの着座姿勢を乗員情報取得部30により撮像した撮像画像である乗員情報に基づいて乗員保護制御の実行の可否を判断する構成で説明したが、これに限定されない。乗員情報取得部30の他の構成例としては、例えば座面2aにおける乗員Mの臀部と当接する箇所、シートバック3における乗員Mの背中部と当接する箇所にそれぞれ乗員Mの姿勢を検出する感圧シートを内蔵させ、乗員Mの着座姿勢における臀部、背中部の位置などを取得する構成とすることもできる。この場合、判断部41は、乗員情報取得部30で取得された乗員Mの臀部の位置情報及び背中部の位置情報を乗員情報として入力し、この乗員情報に基づいて乗員Mの着座姿勢が正規の着座姿勢であるか否かを判断して乗員保護制御の実行の可否を判断することも可能である。
【0071】
上述した形態において、乗員Mが子供の場合、前面衝突時などで乗員保護制御を実行しないようにする構成で説明したが、これに限定されない。判断部41は、例えば、乗員Mが子供であると判断した場合、シートクッション可動部2d、シートバック可動部3b、フロア可動部F2を、子供の体格に合わせた可動量で制御する制御指示を指示部42に出力する構成とすることもできる。また、指示部42は、シートクッション可動部2d、シートバック可動部3b、フロア可動部F2に対して子供に合わせた可動量で可動させる作動指示を出力する構成とすることもできる。このように、乗員Mの年代に応じて各部の可動量を調整する構成とすることで、乗員Mの年代に拘わらずサブマリン現象を防止する効果を奏することができる。
【0072】
[その他]
上述の実施形態において、車両用シート1は、特許請求の範囲に記載された「車両用シート」の一例に該当する。シートクッション2は、特許請求の範囲に記載された「シートクッション」の一例に該当する。座面2aは、特許請求の範囲に記載された「座面」の一例に該当する。シートクッション可動部2dは、特許請求の範囲に記載された「シートクッション可動部」の一例に該当する。シートバック3は、特許請求の範囲に記載された「シートバック」の一例に該当する。シートバック可動部3bは、特許請求の範囲に記載された「シートバック可動部」の一例に該当する。乗員情報取得部30、特許請求の範囲に記載された「乗員情報取得部」の一例に該当する。制御部40は、特許請求の範囲に記載された「制御部」の一例に該当する。車両100は、特許請求の範囲に記載された「自車両」の一例に該当する。フロアFは、特許請求の範囲に記載された「フロア」の一例に該当する。下降面部F1は、特許請求の範囲に記載された「下降面部」の一例に該当する。フロア可動部F2は、特許請求の範囲に記載された「フロア可動部」の一例に該当する。乗員Mは、特許請求の範囲に記載された「乗員」の一例に該当する。
【0073】
上述の実施形態及び特許請求の範囲で使用される用語は、限定的でない用語として解釈されるべきである。例えば、「含む」という用語は、「含むものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「備える」という用語は、「備えるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0074】
1 車両用シート、2 シートクッション(2a 座面、2b 前端部、2c 後端部、2d シートクッション可動部、2e 押上部材、2f 駆動部、2g シートクッションエアバッグ)、3 シートバック(3a 下端部、3b シートバック可動部、3c 支軸、3d 駆動部)、4 ヘッドレスト、10 衝突検出部、20 衝突予測部、30 乗員情報取得部、40 制御部、41 判断部、42 指示部、100 車両、101 前部座席(前席)、102 後部座席(後席)、103 ステアリングホイール(ハンドル)、F 車内のフロア、F1 下降面部、F2 フロア可動部、F3 支持部材、F4 駆動部、M 乗員
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図7