特開2020-164004(P2020-164004A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-164004(P2020-164004A)
(43)【公開日】2020年10月8日
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/00 20060101AFI20200911BHJP
【FI】
   B61D17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-66061(P2019-66061)
(22)【出願日】2019年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】大西 剛司
(72)【発明者】
【氏名】小畑 亮二
(72)【発明者】
【氏名】玉川 佑介
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝太
(72)【発明者】
【氏名】眞野 優太
(57)【要約】
【課題】電子機器の表示部を見易くできる鉄道車両を提供すること。
【解決手段】鉄道車両は、収容空間を開閉する点検蓋と、点検蓋を閉じた状態で収容空間内に固定される電子機器と、点検蓋を閉じた状態で収容空間内に固定される鏡と、を備え、電子機器は、電子機器の状態を示す表示部を備え、鏡は、点検蓋を開けた状態で収容空間の外部から鏡の反射面に映った表示部を視認可能な位置に配置される。これにより、電子機器の表示部を見易くできる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間を開閉する点検蓋と、
前記点検蓋を閉じた状態で前記収容空間内に固定される電子機器と、
前記点検蓋を閉じた状態で前記収容空間内に固定される鏡と、を備え、
前記電子機器は、前記電子機器の状態を示す表示部を備え、
前記鏡は、前記点検蓋を開けた状態で前記収容空間の外部から前記鏡の反射面に映った前記表示部を視認可能な位置に配置されることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記表示部を前記点検蓋側に向けた状態で前記電子機器を前記点検蓋に固定する固定フレームを備え、
前記鏡は、前記表示部側に前記反射面を向けて前記表示部と前記点検蓋との間に配置されることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記電子機器は、前記点検蓋側への電波の送信および前記点検蓋側からの電波の受信の少なくとも一方を行う通信機器であり、
前記点検蓋は、客室の内装パネルの一部であって、前記電子機器側と前記点検蓋側との間で電波を透過可能に少なくとも一部が構成されていることを特徴とする請求項2記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記点検蓋は、前記電子機器に関して客室側の位置に貫通孔を設けた金属製の蓋本体と、
前記蓋本体の前記電子機器側に重なって前記貫通孔を塞ぐカバーと、
前記蓋本体の前記電子機器側の面に接着または溶着により固定されるブラケットと、
前記ブラケットに取り付けられて前記カバーを前記蓋本体に押し付ける固定具と、を備え、
前記蓋本体は、前記カバーよりも燃え難く、
前記カバーは、前記電子機器が送受信する電波を前記蓋本体よりも透過し易いことを特徴とする請求項3記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記固定フレームは、前記ブラケットに取り付けられることを特徴とする請求項4記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記固定フレームは、前記点検蓋側に前記電子機器が固定される金属製の部材であり、
前記固定フレームには、前記点検蓋の前記固定フレーム側から前記鏡に映った前記表示部が視認可能な位置に窓開口が設けられていることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の表示部を見易くできる鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、各種の電子機器などが内部に配置される収容空間がある。その収容空間内の電子機器をメンテナンス等するために、収容空間を開閉する点検蓋が設けられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−189107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、収容空間の形状や寸法、電子機器の固定方法、周囲の部材との関係などによって電子機器の向きが決まると、電子機器の状態を示す電源ランプや各種スイッチ等の表示部が、点検蓋を開けた状態で収容空間の外部から直接視認し難くなることがある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、電子機器の表示部を見易くできる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の鉄道車両は、収容空間を開閉する点検蓋と、前記点検蓋を閉じた状態で前記収容空間内に固定される電子機器と、前記点検蓋を閉じた状態で前記収容空間内に固定される鏡と、を備え、前記電子機器は、前記電子機器の状態を示す表示部を備え、前記鏡は、前記点検蓋を開けた状態で前記収容空間の外部から前記鏡の反射面に映った前記表示部を視認可能な位置に配置される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の鉄道車両によれば、点検蓋を開けた状態で収容空間の外部から直接視認し難い位置に表示部が配置されていても、鏡の反射面に映った表示部を視認できる。よって、電子機器の表示部を見易くできる。
【0008】
請求項2記載の鉄道車両によれば、電子機器が固定フレームによって点検蓋に固定される。これにより、請求項1の効果に加え、電子機器を収容空間内に固定するために、点検蓋以外の収容空間を形成する壁面から延びて設けられる梁やフレームなどを不要にしつつ、電子機器を点検蓋に近づけて固定できる。
【0009】
但し、固定フレームによって点検蓋に固定された電子機器の表示部が点検蓋側を向いているので、点検蓋を開けて点検蓋の裏側(電子機器側)から表示部を直接視認することが難しくなる。しかし、表示部側に反射面を向けて表示部と点検蓋との間に鏡が配置されるので、点検蓋を開けて点検蓋の裏側から反射面に映った表示部を視認することができる。
【0010】
請求項3記載の鉄道車両によれば、電子機器は、客室の内装パネルの一部である点検蓋側への電波の送信および点検蓋側からの電波の受信の少なくとも一方を行う通信機器である。点検蓋の少なくとも一部が電子機器側と点検蓋側との間で電波を透過可能に構成されているので、請求項2の効果に加え、電子機器と客室側の機器との通信速度や通信距離などの通信性能を向上できる。
【0011】
請求項4記載の鉄道車両によれば、点検蓋は、電子機器に関して客室側の位置に貫通孔を設けた金属製の蓋本体と、その貫通孔を塞ぐカバーとを備える。そして、蓋本体がカバーよりも燃え難く、電子機器が送受信する電波を蓋本体よりもカバーの方が透過し易い。これらの結果、請求項3の効果に加え、電子機器と客室側の機器との間の電波を、金属製の蓋本体により弱まり難くして貫通孔およびカバーを透過させ、電子機器の通信性能を向上できると共に、火災時などに点検蓋を燃え難くできる。
【0012】
さらに、蓋本体の電子機器側に接着または溶着により固定したブラケットに取り付けられる固定具によって、蓋本体の電子機器側に重ねたカバーが蓋本体に押し付けられる。これにより、蓋本体にカバーを固定するためのボルト等を点検蓋の客室側に露出しないようにでき、点検蓋の見た目の悪化を抑制できる。
【0013】
請求項5記載の鉄道車両によれば、固定フレームがブラケットに取り付けられる。これにより、請求項4の効果に加え、ブラケットや固定フレームをそれぞれ蓋本体に固定する場合に比べて蓋本体への加工を少なくできる。さらに、蓋本体に固定フレームを固定するためのボルト等を点検蓋の客室側に露出しないようにでき、点検蓋の見た目の悪化をより抑制できる。
【0014】
請求項6記載の鉄道車両によれば、固定フレームは、点検蓋側に電子機器が固定される金属製の部材である。これにより、請求項3から5のいずれかの効果に加え、電子機器に対して客室側から離れていく電波を固定フレームで反射させることができ、電子機器の通信性能をより向上できる。さらに、固定フレームには、点検蓋の固定フレーム側(裏側)から鏡に映った表示部が視認可能な位置に窓開口が設けられている。よって、点検蓋を開けて点検蓋の裏側から固定フレームの窓開口を通して表示部を見易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における鉄道車両の客室側から見た妻部の正面図である。
図2図1のII−II線における鉄道車両の断面図である。
図3図1のIII−III線における鉄道車両の断面図である。
図4図1のIV−IV線における鉄道車両の断面図である。
図5図4の矢印V方向から見た点検蓋および電子機器の背面図である。
図6】第2実施形態における鉄道車両の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して第1実施形態における鉄道車両10について説明する。図1は鉄道車両10の客室2側から見た妻部の正面図である。具体的には、図1は鉄道車両10のレール方向に垂直な断面図であり、妻部を客室2側から見た状態を示している。なお、図1では屋根構体13と中天井14との間に設置される部材の図示を省略している。
【0017】
図1に示すように、鉄道車両10は、台枠11と、台枠11の枕木方向の両側に立設される側構体12と、側構体12の上部に設置される屋根構体13とを備えている。屋根構体13は中天井14を吊り下げ支持する。側構体12の枕木方向の内側にパネル15が配置され、パネル15間に引き戸式の扉16が設置される。パネル15の上部にパネル17が配置される。扉16の上部(妻鴨居)であってパネル17間に、客室2の内装パネルの一部である点検蓋20が配置されている。
【0018】
次に図2図3図4及び図5を参照して点検蓋20の裏側の構成などについて説明する。図2図1のII−II線における鉄道車両10の断面図である。図3図1のIII−III線における鉄道車両10の断面図である。図4図1のIV−IV線における鉄道車両10の断面図である。図5図4の矢印V方向から見た点検蓋20及び電子機器40の背面図である。なお、図3では、ブラケット26に取り付けられる固定具30や表示部41等の図示を省略している。また、図4では、ブラケット25や固定具29等の図示を省略し、表示部41を模式的に示している。
【0019】
図2図3及び図4に示すように、点検蓋20の裏側(客室2とは反対側)であって妻鴨居には、所定の収容空間4が設けられている。点検蓋20を閉じた状態で収容空間4には、扉16を枕木方向(図2紙面垂直方向)へ移動させることで開閉する開閉装置19と、2つの電子機器40と、その2つの電子機器40を点検蓋20に固定する固定フレーム42,43とが少なくとも配置されている。
【0020】
なお、開閉装置19は、収容空間内に枕木方向に延びて設けられる梁(図示せず)に固定される。電子機器40は、点検蓋20側への電波の送信および点検蓋20側からの電波の受信の両方を行う通信機器である。例えば、電子機器40は、2.4GHz帯および5GHz帯の少なくとも一方の周波数の電波を利用して、客室2内の乗客が持つ機器などと通信する無線LANルータである。
【0021】
図2に示すように、点検蓋20は、開閉装置19等が配置される収容空間4内を、客室2側に位置する一般の乗客などから視認できなくするための板状の部材である。点検蓋20は、正面部20aと、正面部20aの下縁に連なると共に正面部20aと直交する底面部20bとを備え、枕木方向に垂直な断面が略L字状に形成されている。
【0022】
正面部20aの上縁部は、中天井14にヒンジ21を介して取り付けられている。点検蓋20は、ヒンジ21を支点として開閉することで、収容空間4を開閉する。ヒンジ21から正面部20aが略垂直に垂れ下がった点検蓋20の閉状態では、収容空間4内を客室2側から視認することができない。なお、図示しないロック機構によって、一般の乗客が閉状態の点検蓋20を開くことができないように構成されている。
【0023】
ロック機構を解除して、図2に二点鎖線で示すように、閉状態からヒンジ21を支点に点検蓋20を客室2側へ回転させた点検蓋20の開状態では、客室2側(収容空間4の外部)から収容空間4内を視認できる。なお、図示しない支持機構によって点検蓋20が支持されて、開状態が維持される。
【0024】
図3図4及び図5に示すように、点検蓋20は、板厚方向に貫通する2つの貫通孔22aが設けられた蓋本体22と、蓋本体22の裏面22b(収容空間4側の面)に重ねて2つの貫通孔22aをそれぞれ塞ぐ板状のカバー23と、蓋本体22の裏面22bに接着または溶着により固定される複数のブラケット24,25,26,27と、複数のブラケット24,25,26,27にそれぞれ取り付けられてカバー23を蓋本体22に固定する複数の固定具28,29,30,31と、を備える。
【0025】
蓋本体22は、カバー23よりも燃え難い、例えばアルミニウム合金やステンレス等の金属製であり、正面部20aの一部と底面部20bの全部とを形成している。2つの貫通孔22aは、正面部20aに当たる部分の上下方向の略中央に枕木方向に並んで設けられ、2つの電子機器40に関して客室2側の位置に設けられている。具体的には、正面部20aを正面から見て(図1参照)、貫通孔22aの内側に電子機器40が位置するように構成されている。
【0026】
カバー23は、金属製の蓋本体22よりも電波を透過し易い、絶縁体の合成樹脂や木材などにより形成されている。カバー23の素材は、電子機器40が送受信する電波の周波数に応じて、その電波を透過し易い材料に設定される。なお、本実施形態では、カバー23はガラス繊維強化プラスチック製である。これにより、点検蓋20の機械的強度を確保できると共に、炭素繊維強化プラスチックよりも2.4GHz帯や5GHz帯の電波を透過し易くできる。
【0027】
このような点検蓋20によれば、電子機器40と客室2側の機器との間の電波を、貫通孔22a及びカバー23を透過させることができ、その電波が金属製の蓋本体22により弱まることを抑制できる。これにより、電子機器40と客室2側の機器との通信速度や通信距離などの電子機器40の通信性能を向上できる。さらに、火災時などに蓋本体22がカバー23よりも燃え難いので、合成樹脂製や木製のカバー23を用いて電子機器40の通信性能を向上させても、点検蓋20を燃え難くできる。
【0028】
ブラケット24,25,26,27は、アルミニウム合金やステンレス等の金属製である。ブラケット24,25,26,27は、正面部20aを構成する蓋本体22の裏面22bのうち貫通孔22aの周囲にそれぞれ固定され、その正面部20aから略垂直に立ち上がって設けられる。ブラケット24,25は、裏面22bに固定される板状のウェブの上縁および下縁からそれぞれフランジが略垂直に張り出して、枕木方向に垂直な断面が略U字状に構成されると共に、枕木方向に延びて設けられる。
【0029】
ブラケット24は、ウェブが貫通孔22aの上部の蓋本体22の裏面22bに固定される。ブラケット24の上縁側のフランジには、ブラケット24を正面部20aから離れる方向へ延長する金属製の屋根板35が取り付けられている。この屋根板35は、電子機器40の上方の略全体を覆っている。ブラケット25は、ウェブ及び下縁側のフランジが貫通孔22aの下部の蓋本体22の裏面22bに固定される。
【0030】
ブラケット26,27は、上下方向に延びて設けられる部材である。ブラケット26は、2つの貫通孔22aの枕木方向一方側(本実施形態では図4紙面左側)の裏面22bにそれぞれ固定される。ブラケット27は、2つの貫通孔22aの枕木方向他方側(本実施形態では図4紙面右側)の裏面22bにそれぞれ固定される。2つの貫通孔22aの枕木方向内側に位置するブラケット26とブラケット27とは一体成形されている。
【0031】
固定具28,29,30,31は、弾性体32を介してカバー23の裏側(収容空間4側)に押し付けられる、略L字状に曲げられた主に金属製の板材である。弾性体32は、ゴムや熱可塑性エラストマー、発泡合成樹脂などからなり、固定具28,29,30,31のカバー23側に接着されている。
【0032】
固定具28,29,30,31は、それぞれブラケット24,25,26,27にボルト33及びナット34によって取り付けられている。固定具28は、弾性体32を介してカバー23の上縁部を蓋本体22に押し付けている。固定具29は、弾性体32を介してカバー23の下縁部を蓋本体22に押し付けている。固定具30は、弾性体32を介してカバー23の枕木方向一方側の縁部を蓋本体22に押し付けている。固定具31は、弾性体32を介してカバー23の枕木方向他方側の縁部を蓋本体22に押し付けている。
【0033】
このように、蓋本体22の裏面22bに接着または溶着により固定したブラケット24,25,26,27に取り付けられる固定具28,29,30,31によって、蓋本体22の裏面22bに重ねたカバー23が蓋本体22に押し付けられて固定される。これにより、蓋本体22にカバー23を固定するためのボルト等を点検蓋20の客室2側に露出しないようにできる。よって、電子機器40の通信性能を向上させるために貫通孔22aやカバー23を設けても点検蓋20の見た目の悪化を抑制できる。
【0034】
さらに、ボルト33及びナット34によってブラケット24,25,26,27に取り付けられた固定具28,29,30,31がカバー23を蓋本体22に押し付けるので、カバー23が蓋本体22に接着される場合などと比べて、カバー23の交換などを容易にできる。また、カバー23を外した状態での点検蓋20や収容空間4内のメンテナンス作業などができる。
【0035】
固定フレーム42,43は、点検蓋20のブラケット26,27にそれぞれ取り付けられて、図示しないボルト等によって電子機器40が取り付けられる金属製の板材である。固定フレーム42がブラケット26に取り付けられ、固定フレーム43がブラケット26に取り付けられる。これにより、ブラケット26,27や固定フレーム42をそれぞれ蓋本体22に固定する場合に比べて、蓋本体22への加工を少なくできる。さらに、蓋本体22に固定フレーム42,43を固定するためのボルト等を点検蓋20の客室2側に露出しないようにでき、点検蓋20の見た目の悪化を抑制できる。
【0036】
固定フレーム42,43は、電子機器40の背面(正面部20aとは反対側の面)に固定される第1部44と、電子機器40に対して第1部44の枕木方向外側の端縁から正面部20aへ向かって延びる第2部45と、第2部45の正面部20a側の縁から電子機器40に対して枕木方向外側へ延びる第3部46とを備える。
【0037】
第1部44及び第3部46は、正面部20aと略平行に配置される。第2部45は、電子機器40から枕木方向に離れた位置に設けられ、正面部20aと略垂直に配置される。固定フレーム42の第2部45と第3部46との角には、板厚方向に貫通形成された窓開口47が設けられている。
【0038】
電子機器40は、客室2側の機器との通信性能が最も良くなるように、電波を送受信し易い部位をカバー23及び貫通孔22aに向けて固定フレーム42,43を介して点検蓋20に固定される。これにより、電子機器40を収容空間内に固定するために、点検蓋20以外の収容空間を形成する壁面から延びて設けられる梁やフレームなどを不要にしつつ、電子機器40を点検蓋20に近づけて固定できる。さらに、火災時などに蓋本体22を燃え難くするため、カバー23及び貫通孔22aをなるべく小さくしつつ、電子機器40の通信性能を確保できるように、電子機器40をカバー23及び貫通孔22aになるべく近づけて点検蓋20に固定している。
【0039】
また、金属製の固定フレーム42,43の第1部44の点検蓋20(カバー23)側に電子機器40が固定されているので、電子機器40に対して客室2側から離れていく電波を第1部44で反射させることができ、電子機器40の通信性能をより向上できる。さらに、電子機器40の枕木方向両側に離れて位置する金属製の固定フレーム42,43の第2部45や第3部46、ブラケット26,27に電波を反射させることができるので、電子機器40の通信性能をより向上できる。
【0040】
特に、ブラケット26,27から電子機器40側に延びる第3部46によって、第2部45をブラケット26,27よりも電子機器40に近づけることができる。これにより、カバー23から第1部44へ向かうにつれて金属に挟まれた枕木方向の空間を段階的に狭くできるので、電子機器40が電波を送受信し易くなって電子機器40の通信性能を更に向上できる。
【0041】
電子機器40の上方に位置する金属製の屋根板35と、電子機器40の下方に位置する金属製の底面部20bによっても電波を反射させることができるので、電子機器40の通信性能をより向上できる。また万が一、雨水や結露した水などが電子機器40の上方から落ちてきても、屋根板35によって電子機器40が濡れることを防止できる。
【0042】
また、レール方向に長い客室2の所定位置にある機器と電子機器40とを通信させるため、客室2のレール方向の端部の妻鴨居に電子機器40を設置し、レール方向(カバー23や客室2側)に指向性を持たせたアンテナを電子機器40に搭載することが好ましい。アンテナが電子機器40の外部に突出していない場合、電子機器40全体の向きを調整して、アンテナにレール方向の指向性を持たせる。
【0043】
アンテナにレール方向の指向性を持たせて、電波を送受信し易いように電子機器40を点検蓋20に固定すると、電子機器40の点検蓋20(カバー23)側の面に表示部41が位置する。この表示部41は、電子機器40の電源のオンオフや通信状態などを示す複数のランプである。本実施形態では、固定具30に近い位置に表示部41が設けられている。
【0044】
点検蓋20に固定した電子機器40の点検蓋20側に表示部41があると、点検蓋20を開けても表示部41を直接視認し難くなる。さらに、電子機器40の通信性能の向上のため、カバー23との間で電子機器40を覆うように固定フレーム42,43や屋根板35等が設けられているので、表示部41をより直接視認し難くなる。
【0045】
ここで、固定具30は、弾性体32の縁よりもブラケット26から離れるように枕木方向他方側へ延長して設けられている。そして、レール方向から見て固定具30の一部が電子機器40の一部と重なる。また、固定具30は、電子機器40側の面が反射面30aである鏡となっている。
【0046】
表示部41と点検蓋20(カバー23)との間に配置された固定具(鏡)30の反射面30aが表示部41を向いている。図2に二点鎖線で示す通り点検蓋20を作業員が開け、点検蓋20を作業員が裏側から見ると図5に示すように見えて、固定フレーム42の窓開口47から反射面30aを視認することができる。よって、作業員が点検蓋20の裏側から窓開口47を覗くと、図4に示すように作業員の視線Aが反射面30aで反射し、反射面30aに映った表示部41を視認することができる。よって、点検蓋20を開けた状態で収容空間4の外部から直接視認し難い位置に表示部41が配置されていても、反射面30aや窓開口47により表示部41を見易くできる。
【0047】
互いに直交する第2部45と第3部46との角に窓開口47が設けられているので、固定フレーム42の強度を確保するために窓開口47を小さくしても、窓開口47から反射面30a側を覗いたときの視野を広くできる。また、反射面30aがカバー23を蓋本体22に固定するための固定具30に設けられているので、固定具30とは別に鏡を設ける場合と比べて部品点数を削減できる。
【0048】
次に図6を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、妻鴨居の収容空間4を開閉する点検蓋20に電子機器40が固定されている場合について説明した。これに対し第2実施形態では、側天井51の収容空間54内に電子機器55が固定される場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図6は第2実施形態における鉄道車両50のレール方向に垂直な断面図である。
【0049】
図6に示すように、鉄道車両50は、側構体12と、側構体12の上部に設置される屋根構体13とを備え、屋根構体13に中天井14が吊り下げ支持されている。さらに、側構体12の客室2側に収容空間54を形成するための側天井51が設けられている。この側天井51は、収容空間54を開閉する点検蓋52を備える。
【0050】
点検蓋52は、収容空間54内を、客室2側に位置する一般の乗客などから視認できなくするための板状の部材である。点検蓋52は、中天井14にヒンジ53を介して取り付けられている。図6に二点鎖線で示す点検蓋52の閉状態からヒンジ53を支点に点検蓋52を回転させ、図示しない支持機構により点検蓋52を支えることで、点検蓋52が図6に実線で示す開状態となる。
【0051】
点検蓋52の開閉状態に関係なく収容空間54内には、電子機器55と鏡57とが固定されている。電子機器55は、点検蓋52に設けたガラス窓(図示せず)から客室2内を撮影する防犯カメラである。電子機器55の上部には、録画中を示すランプや電源ランプ、電源スイッチ等、電子機器55の状態を示す表示部56が設けられている。
【0052】
この表示部56は、点検蓋52を開けた状態で収容空間54の外部から直接視認し難い位置にある。具体的には、点検蓋52を開けて、脚立などに乗った作業員が電子機器55の上部を覗かなければ視認できない位置に表示部56がある。
【0053】
鏡57は、反射面58を表示部56に向けて電子機器55よりも上方(屋根構体13側)に固定されている。点検蓋52を開けた状態で収容空間54の外部から、作業員が見上げるような視線Aで反射面58を見ると、反射面58に映った表示部56を視認可能な位置に鏡57が配置されている。これにより、収容空間54の外部から直接視認し難い位置に表示部56が配置されていても、表示部56を見易くできる。
【0054】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、側構体12や屋根構体13、点検蓋20、固定フレーム42,43等の各部の形状などは適宜変更しても良い。
【0055】
上記形態では、電子機器40が点検蓋20側への電波の送信および点検蓋20側からの電波の受信の両方を行う通信機器である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。電子機器40を、電波の送信または電波の受信の一方のみを行う通信機器としても良い。また、電子機器40を、鉄道車両10の外部の機器に対して電波の送受信の少なくとも一方を行う通信機器としても良い。通信機器や第2実施形態の防犯カメラ以外の電子機器を収容空間4,54に配置し、その電子機器の状態を示す表示部を反射面30a,58を介して視認可能に構成しても良い。また、収容空間4,54内に配置する電子機器の数は適宜変更しても良い。
【0056】
上記形態では、収容空間4,54を開閉する点検蓋20,52が客室2の内装パネルの一部である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。乗務員室の内装パネルや鉄道車両10,50の外面に点検蓋を設けても良い。この点検蓋が開閉する収容空間内に、各種の電子機器と、その電子機器の表示部が反射面に映る鏡とを配置しても良い。
【符号の説明】
【0057】
2 客室
4,54 収容空間
10,50 鉄道車両
20,52 点検蓋
22 蓋本体
23 カバー
24,25,26,27 ブラケット
28,29,31 固定具
30 固定具(鏡)
30a,58 反射面
40,55 電子機器
41,56 表示部
42,43 固定フレーム
47 窓開口
57 鏡
図1
図2
図3
図4
図5
図6