【解決手段】座席シート10は、乗員Pの着座姿勢の態様を解析し、解析結果に基づいてシートバック12の横断面形状を可変させるので、着座状態に応じた最適な座席シート10の形状に変化させることができる。また、座席シート10の形状を可変させることにより、乗員Pの痛みや疲労を軽減することができる。また、座席シート10の形状を可変させることにより、乗員Pに安定した着座姿勢をとらせることができ、車両衝突の際に発生するエアバッグ等の乗員保護装置の作動に対しても、適切に保護を受けさせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態における座席シートを備えた車両の一部の概略を示す断面図である。また、
図2は、本発明の実施の形態における座席シートの概略ブロック図である。
【0017】
(車両1の構成)
図1に示すように、車両1の乗員室は、下部にアンダーフロア3、上部にルーフ4が設けられている。また、アンダーフロア3には、座席シート10が配備されている。
【0018】
(座席シート10)
座席シート10は、車両1に乗車した乗員Pが着座するものである。また、座席シート10は、乗員Pの臀部から大腿部を支持するシートクッション11(座部)と、リクライニング可能に設けられ、乗員Pの背中を支持するシートバック12(背もたれ部)と、乗員Pの頭部を支持するヘッドレスト13(ヘッド部)と、を備えている。
さらに、座席シート10は、圧力検知部100と、シート形状変更装置200と、制御部300と、を備えている。
【0019】
座席シート10において、シートクッション11と、シートバック12とは、連結されている。また、ヘッドレスト13は、シートバック12に、着脱可能に取り付けられている。
また、後述するように、シートクッション11は、乗員Pが着座する座面部の傾きが変更可能となっている。また、シートバック12は、乗員Pの背中が当接する背もたれ部の傾きや凹凸が変更可能となっている。
【0020】
また、本実施の形態においては、圧力検知部100により検知された情報に基づいて、制御部300が乗員Pの着座姿勢の態様を決定するようにしているが、車両1の車内に車載カメラ60を搭載し、この車載カメラ60に撮影された画像を用いるものであってもよい。すなわち、車載カメラ60により、座席シート10に着座している乗員Pを撮影する。そして、車載カメラ60に撮影された乗員Pの姿勢に基づいて、制御部300が乗員Pの着座姿勢の態様を決定する。この場合、車載カメラ60は、座席シート10に着座している乗員Pを撮影する撮影手段として機能する。
【0021】
(圧力検知部100)
圧力検知部100は、シートクッション11およびシートバック12に対しての乗員Pからの圧力を検知するものである。したがって、圧力検知部100は、シートクッション11およびシートバック12に対しての乗員Pからの圧力を検知することにより、乗員Pの重心を検知する(圧力検知手段)ことができる。
また、圧力検知部100は、クッション圧力センサ110およびバック圧力センサ120を備えている。
【0022】
(クッション圧力センサ110)
図3は、シートクッション11に設けられたクッション圧力センサ110の一例を示す図である。なお、
図3(a)においては、紙面左方向が座席シート10の前方向を示し、紙面上方向が座席シート10の上方向を示す。また、
図3(b)、
図3(c)、
図3(d)においては、紙面左方向が座席シート10の前方向を示し、紙面上方向が座席シート10の右方向を示す。
【0023】
図3(b)に示すように、クッション圧力センサ110は、シートクッション11の座面の近傍下部に設けられた複数の圧力センサから構成される。また、クッション圧力センサ110は、複数の圧力センサにより、シートクッション11に対する上面(座面)からの圧力をそれぞれ検知するものである。なお、圧力センサは、圧電素子を用いたものや、ひずみゲージ式力センサ等を用いることができる。
【0024】
クッション圧力センサ110は、圧力センサのそれぞれの検出値により、シートクッション11に支持されている乗員Pの臀部の位置を検知することができる。したがって、クッション圧力センサ110は、着座位置検知手段として機能する。
なお、クッション圧力センサ110は、
図3(c)に示すように、シートクッション11の座面の全体に歪みセンサを用いたものであってもよいし、
図3(d)に示すように、シートクッション11の座面の四方に荷重計を設けたものであってもよい。
【0025】
(バック圧力センサ120)
バック圧力センサ120は、シートバック12の前面、乗員Pの背中が当たる背もたれ部の近傍下部に設けられた複数の圧力センサから構成される。また、バック圧力センサ120は、クッション圧力センサ110と同様に、複数の圧力センサにより、シートバック12に対する前面(背もたれ面)からの圧力をそれぞれ検知するものである。
【0026】
バック圧力センサ120は、圧力センサのそれぞれの検出値により、シートバック12に支持されている乗員Pの背中の接触領域を検知することができる。したがって、バック圧力センサ120は、接触領域検知手段として機能する。
【0027】
(シート形状変更装置200)
シート形状変更装置200は、シートクッション11およびシートバック12の傾きや凹凸等を変更するものである。
また、シート形状変更装置200は、クッション形状変更装置210およびバック形状変更装置220を備えている。
【0028】
(クッション形状変更装置210)
クッション形状変更装置210は、シートクッション11の傾きを変更するものである。例えば、クッション形状変更装置210は、シートクッション11の座面後部(車両1の進行方向に対して後側)の上下動、および、シートクッション11の座面前部(車両1の進行方向に対して前側)の上下動を行うことができる。
【0029】
(バック形状変更装置220)
バック形状変更装置220は、シートバック12の傾きや凹凸等を変更するものである。例えば、バック形状変更装置220は、座席シート10の幅方向と平行なシートバック12の横断面形状を可変させることができる。
また、バック形状変更装置220は、座席シート10の上下方向に対するシートバック12の縦断面形状等を変更できるものであってもよい。具体的には、バック形状変更装置220は、シートバック12の乗員側に向けた凸形状の位置、形状、高さ等を変更することで、シートバック12の縦断面形状を可変させることができる。さらに、バック形状変更装置220は、シートバック12の所定位置から下部を前方に傾斜させ、所定位置から上部を後方に傾斜させた中折れ状態にして、シートバック12の縦断面形状を変更できるものであってもよい。また、このとき、バック形状変更装置220は、シートクッション11の座面後部の下降に連動して、シートバック12を下降させる。
【0030】
図4は、バック形状変更装置220を備えたシートバック12の一例を示す横断面図である。
なお、
図4においては、紙面左方向が座席シート10の前方向を示し、紙面上方向が座席シート10の右方向を示す。また、
図4は、シートバック12を、水平方向に切断したシートバック12の横断面図を示すものである。
【0031】
図4に示すように、バック形状変更装置220は、ガス入出力装置221と、収縮バッグ222と、を有している。
ガス入出力装置221は、収縮バッグ222に対して、ガスの入出力を行うものである。すなわち、ガス入出力装置221は、収縮バッグ222にガスを入力させること、収縮バッグ222からガスを出力させること、および、収縮バッグ222内のガス量を維持させることができるものである。
【0032】
収縮バッグ222は、密閉されたエアバッグのような袋体である。また、収縮バッグ222は、内部にガスが充満されており、ガスが入力されることにより膨張し、ガスが出力されることにより収縮するものである。
さらに、収縮バッグ222は、シートバック12の幅方向において略中央に設けられている。そして、収縮バッグ222は、後方位置が固定され、前方位置がガスの入出力によって変化するようになっている。すなわち、収縮バッグ222は、ガスが入力されると、前方位置が前方に移動し、ガスが出力されると、前方位置が後方に移動するようになっている。
【0033】
したがって、ガス入出力装置221により収縮バッグ222に対してガスが入力されると、シートバック12の前面、乗員Pの背中が接触する部分が前方に移動し、ガス入出力装置221により収縮バッグ222からガスが出力されると、シートバック12の前面が後方に凹むこととなる。また、ガス入出力装置221が収縮バッグ222に対してガスの入出力を行わない場合、すなわち、通常時は、シートバック12の前面の位置は維持されることとなる。なお、収縮バッグ222は、シートバック12の縦方向に複数設けられている。また、ガス入出力装置221は、制御部300に制御され、特定の高さに配置された収縮バッグ222に対して、個別にガスの入出力を行うことができる。
このように、バック形状変更装置220は、シートバック12における乗員Pの背中が接触している位置に対して、横断面において凹形状を深くさせることにより、シートバック12の形状を可変させることができる。
【0034】
(制御部300)
制御部300は、座席シート10の動作を制御するためものである。なお、制御部300は、車両1全体を制御するECUと兼用のものであってもよい。また、制御部300は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)、CPUにより実行される制御プログラム、データテーブル、各コマンドやデータ等の記憶を行うROM(Read Only Memory)、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)および入出力インターフェース回路を備え、座席シート10にかかる動作の制御を統括するようになっている。
なお、ROMには、予め定められた適切な着座姿勢のデータ、および、予め定められた不適切と判定する着座姿勢のデータが記憶されている。
【0035】
また、制御部300は、圧力検知部100等の情報に基づいて、乗員Pの着座姿勢の態様を解析し、シート形状変更装置200を制御して、シートクッション11およびシートバック12の形状を可変させるものである。
【0036】
具体的には、制御部300は、圧力検知部100により検知された乗員Pの臀部の位置および乗員Pの重心に基づいて、乗員Pの着座姿勢の態様を解析して決定し、決定した乗員Pの着座姿勢の態様が予め定められている適切な着座姿勢であるか否かの判定を行う。したがって、制御部300は、着座姿勢解析手段、適切着座姿勢判定手段として機能する。
【0037】
また、制御部300は、圧力検知部100により検知された乗員Pの臀部の位置と、シートバック12に支持されている乗員Pの背中の接触領域と、に基づいて、乗員Pの着座姿勢の態様を決定し、決定した乗員Pの着座姿勢の態様が予め定められている適切な着座姿勢であるか否かの判定を行う。したがって、制御部300は、適切着座姿勢判定手段として機能する。
【0038】
さらに、制御部300は、乗員Pの臀部の位置が適切位置であり、乗員Pの重心が適切位置よりも前方にある場合には、適切な着座姿勢ではないと判定する。また、制御部300は、乗員Pの臀部の位置が適切位置よりも前方であり、乗員Pの重心が適切位置または適切位置よりも前方にある場合には、適切な着座姿勢ではないと判定する。
【0039】
さらに、制御部300は、適切な着座姿勢ではないと判定した場合には、シート形状変更装置200に対して、シートバック12の横断面形状を可変制御する。したがって、制御部300は、シートバック制御手段として機能する。
また、制御部300は、適切な着座姿勢ではないと判定した場合には、シートクッション11の傾きを可変制御してもよい。また、制御部300は、適切な着座姿勢ではないと判定した場合には、シートバック12の傾き、または、シートバック12の縦断面形状を可変制御してもよい。
また、制御部300は、適切な着座姿勢ではないと判定した場合には、クッション形状変更装置210およびバック形状変更装置220を連動させて、クッション形状変更装置210にシートクッション11の傾きを可変させ、バック形状変更装置220にシートバック12の位置、および、シートバック12の縦断面形状を可変制御してもよい。
【0040】
ここで、座席シート10における乗員Pの着座姿勢について、説明する。
図5は、座席シート10における乗員Pの着座姿勢を示す図である。
【0041】
まず、乗員Pの理想的な着座姿勢について、説明する。
図5(a)は、座席シート10における乗員Pの理想的な着座姿勢を示す図である。
【0042】
図5(a)に示すように、理想的な着座姿勢とは、シートクッション11に深く座り、背筋を伸ばし、背中をシートバック12につけた状態である。また、ステアリングホイール(ハンドル)の最上部を持っても、両肘が伸びきらない位置である。また、頭部の位置は、ヘッドレスト13からやや離れた前方の位置(指が3本入る程度)となる。
【0043】
このような理想的な着座姿勢では、乗員Pの背骨のラインL1が緩やかなS字形状となる。そして、シートバック12では、乗員Pから、乗員Pの肩に近い上方の位置と、臀部に近い下方の位置と、で圧力がかかることとなる。また、シートクッション11では、乗員Pが後方に着座しているので、重心が後方となり、後方でより圧力が高くなる。
【0044】
次に、背骨のラインがC字形状となっている場合について、説明する。
図5(b)は、座席シート10における乗員Pの着座姿勢が第1のC字形状となっている図である。
【0045】
図5(b)に示すように、老人や太った人(肥満体形)、あるいは、姿勢の悪い人の場合、着座姿勢が第1のC字形状となってしまうことがある。この第1のC字形状の着座姿勢では、理想的な着座姿勢よりもシートクッション11の前方に着座し、背中が丸まって、頭部がヘッドレスト13からかなり離れた前方の位置となる。
【0046】
このような第1のC字形状の着座姿勢では、乗員Pの背骨のラインL2がC字形状となる。そして、シートバック12では、乗員Pから、中央からやや下方の1点で圧力がかかることとなる。また、シートクッション11では、理想的な着座姿勢よりも重心が前方となり、後方での圧力がなく、中央または前方での圧力が高くなる。
【0047】
次に、背骨のラインが第2のC字形状となっている場合について、説明する。
図5(c)は、座席シート10における乗員Pの着座姿勢が第2のC字形状となっている図である。
【0048】
図5(c)に示すように、第1のC字形状とは異なる第2のC字形状となってしまうこともある。この第2のC字形状の着座姿勢では、第1のC字形状の着座姿勢よりもさらにシートクッション11の前方に着座し、上体が後方に倒れた状態となる。また、上体が後方に倒れているため、ステアリングホイールを持った肘が伸びきってしまう虞がある。
【0049】
このような第2のC字形状の着座姿勢では、乗員Pの背骨のラインL3がC字形状となる。そして、シートバック12では、乗員Pから、第1のC字形状の場合よりも、さらに下方で圧力がかかることとなる。また、シートクッション11では、第1のC字形状の場合よりも、圧力がかかる位置は前方となるが、上体が後方に倒れているため、重心は第1のC字形状の場合よりも後方となる。
【0050】
(座席シート10における制御部300の動作)
次に、このような座席シート10における制御部300の動作について、説明する。
図6は、座席シート10における制御部300の動作概要を示すフローチャートである。
【0051】
座席シート10において、制御部300は車両1が起動する(イグニッションキーがオンされる)と、乗員Pが着座したか否かを判定する(ステップS11)。例えば、制御部300は、クッション圧力センサ110に検出された検出値が所定値以上となったか否かを判定し、所定値以上となった場合を着座した状態と判定することができる。なお、クッション圧力センサ110に検出された検出値だけでなく、バック圧力センサ120に検出された検出値をも考慮して総合的に乗員Pが着座したか否かを判定するようにしてもよい。
【0052】
そして、制御部300は、乗員Pが着座していないと判定した場合には(ステップS11でNO)、乗員Pが着座したと判定するまで、乗員Pが着座したか否かの判定を繰り返す。
一方、制御部300は、乗員Pが着座したと判定した場合には(ステップS11でYES)、カウンタT1をリセットする(ステップS12)。このカウンタT1は、タイマにより1秒ごとに発生するタイマ割り込み処理により、インクリメントされる。
【0053】
次に、制御部300は、カウンタT1が300(秒)以上となったか否かを判定する(ステップS13)。すなわち、制御部300は、乗員Pが着座してから、5分以上経過したか否かを判定する。
そして、制御部300は、カウンタT1が300(秒)以上となっていないと判定した場合には(ステップS13でNO)、カウンタT1が300(秒)以上となるまで、この判定を繰り返す。
【0054】
一方、制御部300は、カウンタT1が300(秒)以上となったと判定した場合には(ステップS13でYES)、着座姿勢情報の取得処理を行う(ステップS14)。ここで、制御部300は、乗員Pの臀部の位置の情報と、乗員Pの重心の位置の情報と、を取得する。
【0055】
具体的には、制御部300は、クッション圧力センサ110およびバック圧力センサ120からそれぞれ検出値を取得する。そして、制御部300は、クッション圧力センサ110から取得した各検出値から、乗員Pの臀部の位置を算出する。また、制御部300は、クッション圧力センサ110およびバック圧力センサ120から取得した各検出値から、乗員Pの重心の位置を算出する。
【0056】
なお、制御部300は、乗員Pの重心の位置の情報の代わりに、乗員Pのシートバック12に対する背中の接触領域を取得してもよい。この場合、制御部300は、バック圧力センサ120から各検出値を取得して、このバック圧力センサ120から取得した各検出値から、乗員Pの背中の接触領域を算出する。
【0057】
次いで、制御部300は、乗員Pの着座姿勢の態様を決定する(ステップS15)。ここでは、制御部300は、上記取得した着座姿勢情報から、乗員Pの着座姿勢の態様を決定する。これにより、乗員Pの着座姿勢が、軽く背筋を伸ばした理想的なS字形状であるのか、背筋が丸まったC字形状であるのか等、乗員Pの着座姿勢の態様を決定する。
【0058】
例えば、制御部300は、乗員Pの臀部の位置の情報が後方位置であり、乗員Pの重心の位置が後方であれば、理想的なS字形状となる着座姿勢の態様であると決定する。また、制御部300は、乗員Pの臀部の位置の情報が中央位置であり、乗員Pの重心の位置も中央であれば、第1のC字形状となる着座姿勢の態様であると決定する。また、制御部300は、乗員Pの臀部の位置の情報が中央や前方位置であり、乗員Pの重心の位置が後方であれば、第2のC字形状となる着座姿勢の態様であると決定する。
【0059】
なお、この乗員Pの着座姿勢の態様の決定処理、および、前の着座姿勢情報の取得処理は、当然のことながら、次の処理の「適切な着座姿勢」の判定方法に応じた、着座姿勢の態様の決定、および、着座姿勢情報の取得を行うこととなる。
【0060】
また、乗員Pの着座姿勢の態様の決定の仕方により、シートバック12の形状の変更をより詳細に的確に行うことができる。例えば、乗員Pの臀部の位置と重心の位置に加え、シートバック12に対して強く圧力がかかっている位置、圧力がかかっている位置が所定箇所に集中しているか否かなどの情報を得ることにより、乗員Pの着座姿勢がC字形状であり、シートバック12のどこで支えられているかなどまで検知することができ、シートバック12の調整をより詳細に行うことができる。
【0061】
次に、制御部300は、乗員Pの着座姿勢の態様が、適切な着座姿勢であるか否かを判定する(ステップS16)。すなわち、制御部300は、上記処理で決定した乗員Pの着座姿勢の態様が、予め定められている適切な着座姿勢に該当するか否か、また、予め定められている不適切な着座姿勢に該当するか否か、を判定する。
例えば、制御部300は、乗員Pの臀部の位置が適切位置であって、乗員Pの重心が適切位置よりも前方にある着座姿勢の態様である場合には、適切な着座姿勢ではないと判定する。また、制御部300は、乗員Pの臀部の位置が適切位置よりも前方であって、乗員Pの重心が適切位置または適切位置よりも前方にある着座姿勢の態様である場合には、適切な着座姿勢ではないと判定する。
【0062】
制御部300は、乗員Pの着座姿勢の態様が、適切な着座姿勢であると判定した場合には(ステップS16でYES)、ステップS19のタイマ判定処理に移行する。
一方、制御部300は、乗員Pの着座姿勢の態様が、適切な着座姿勢ではないと判定した場合には(ステップS16でNO)、乗員Pの着座姿勢の態様が、第2のC字形状であるが否かを判定する(ステップS17)。すなわち、制御部300は、上記処理で決定した乗員Pの着座姿勢の態様が、第2のC字形状であるか否かを判定する。
【0063】
制御部300は、乗員Pの着座姿勢の態様が、第2のC字形状であると判定した場合には(ステップS17でYES)、ステップS21に移行し、第2のC字形状ではないと判定した場合には(ステップS17でNO)、ステップS18に移行する。
【0064】
制御部300は、乗員Pの着座姿勢の態様が、第2のC字形状ではないと判定した場合には(ステップS17でNO)、第1のC字形状用のシートバック12の形状変更処理を行う(ステップS18)。なお、本実施の形態では、乗員Pの着座姿勢が適切ではなく、第2のC字形状でもない場合には、第1のC字形状であると判断する。また、他の不適切な着座姿勢を判断して、その姿勢に基づく形状変更処理を行うようにしてもよい。ここで、制御部300は、シートバック12の横断面形状を変更させる処理を行う。
【0065】
具体的には、制御部300は、上記決定した乗員Pの着座姿勢の態様に基づいて、バック形状変更装置220に対して、シートバック12において、横断面形状における中央部の凹形状を深くさせる処理を行う。より詳しくは、制御部300は、バック形状変更装置220に対して、乗員Pの背中が当たっているシートバック12との接触位置を、後方に凹ませる、あるいは、シートバック12の中央部を凹状とするように動作させる。
これにより、乗員Pの背中が、シートバック12に強く当たり、負荷がかかっていたものを低減させることができる。
【0066】
ここで、乗員Pの着座姿勢が第1のC字形状の場合における動作について、具体的に説明する。
図7は、乗員Pの着座姿勢が第1のC字形状の場合における動作を示す図である。
【0067】
制御部300は、例えば、乗員Pの臀部の位置が適切位置であって、乗員Pの重心が適切位置よりも前方にあると検知した場合、乗員Pの着座姿勢が第1のC字形状であると判定する。このように、乗員Pの着座姿勢が第1のC字形状である場合、
図7(a)に示すように、乗員Pの背中とシートバック12の特定位置とが、強く接触している。
【0068】
次いで、制御部300は、乗員Pの着座姿勢が第1のC字形状であると判定した場合、乗員Pの背中が当たっているシートバック12の接触部の位置を特定する。なお、この乗員Pの接触部の位置は、乗員Pの臀部の位置と重心位置から求めることができるが、乗員Pのシートバック12に対する背中の接触領域を取得している場合には、より正確に特定することができる。なお、車載カメラ60の映像を取得している場合であっても、特定することができる。
【0069】
次に、制御部300は、乗員Pの背中が当たっているシートバック12の接触部の位置において、横断面形状における中央部の凹形状を深くさせる処理を行う。具体的には、制御部300は、ガス入出力装置221に対して、乗員Pの背中が当たっている接触部の位置の収縮バッグ222のガスを抜かせる処理を行う。これにより、
図7(b)に示すように、収縮バッグ222のガスが抜かれ、体積が小さくなるため、乗員Pとシートバック12との接触部が、後方側に後退することとなる。
【0070】
したがって、乗員Pの背中が、シートバック12が後方側に凹んだ分、後方に余裕ができ、シートバック12に強く当たり、負荷がかかっていたものを低減させることができる。
【0071】
次に、制御部300は、カウンタT1が1800(秒)以上となったか否かを判定する(ステップS19)。すなわち、制御部300は、乗員Pが着座してから、30分以上経過したか否かを判定する。なお、初めの30分経過後は、30分ごとに経過判定を行うこととなる。
そして、制御部300は、カウンタT1が1800(秒)以上となっていないと判定した場合には(ステップS19でNO)、カウンタT1が1800(秒)以上となるまで、この判定を繰り返す。一方、制御部300は、カウンタT1が1800(秒)以上となったと判定した場合には(ステップS19でYES)、ステップS20に移行する。
【0072】
また、制御部300は、カウンタT1が1800(秒)以上となったと判定した場合には(ステップS1でYES)、カウンタT1をリセットする(ステップS20)。そして、制御部300は、30分経過後に、カウンタT1をリセットすると、ステップS14の着座姿勢情報の取得処理に戻って、上記の処理を繰り返す。したがって、30分ごとに乗員Pの着座姿勢を判定して、着座姿勢が適切ではない場合には、座席シート10の形状を変更させることができる。
【0073】
一方、制御部300は、ステップS17で、乗員Pの着座姿勢の態様が、第2のC字形状であると判定した場合には(ステップS17でYES)、形状変化位置の決定処理を行う(ステップS21)。
具体的には、制御部300は、シートバック12の形状を変化させる位置とし、乗員Pの背中が当たっているシートバック12との接触部、または、接触部とそのやや下方を、形状変化位置として決定する。
【0074】
次に、制御部300は、カウンタT2をリセットする(ステップS22)。このカウンタT2は、カウンタT1と同様に、タイマにより1秒ごとに発生するタイマ割り込み処理により、インクリメントされる。
【0075】
次いで、制御部300は、第2のC字形状用のシートバック12の形状変更処理を行う(ステップS23)。ここで、制御部300は、シートバック12の横断面形状を変更させる処理を行う。
具体的には、制御部300は、バック形状変更装置220に対して、決定している形状変化位置に基づいて、シートバック12の形状を変更させる。例えば、制御部300は、乗員Pの背中が当たっているシートバック12との接触部近辺、または、接触部よりも下方の位置を凹ませる処理を行う。これにより、乗員Pの姿勢が下方にずり下がり、乗員Pが自ら着座姿勢を直す(例えば、腰位置を下げ、上体を上げる)ように、乗員Pの着座姿勢を最適な着座姿勢へと誘導させることができる。乗員Pの着座姿勢が第2のC字形状の場合における動作の詳細について、後述する。
【0076】
次に、制御部300は、カウンタT2が300(秒)以上となったか否かを判定する(ステップS24)。すなわち、制御部300は、第2のC字形状用の形状変更処理を行ってから、5分以上経過したか否かを判定する。
そして、制御部300は、カウンタT2が300(秒)以上となっていないと判定した場合には(ステップS24でNO)、カウンタT2が300(秒)以上となるまで、この判定を繰り返す。
【0077】
一方、制御部300は、カウンタT2が300(秒)以上となったと判定した場合には(ステップS24でYES)、着座姿勢情報の取得処理を行う(ステップS25)。この着座姿勢情報の取得処理は、上記ステップ14と同様の処理であり、例えば、制御部300は、乗員Pの臀部の位置の情報と、乗員Pの重心の位置の情報と、を取得する。
【0078】
次いで、制御部300は、乗員Pの着座姿勢が、適切な着座姿勢であるか否かを判定する(ステップS26)。すなわち、制御部300は、上記取得した着座姿勢情報に基づいて、乗員Pの着座姿勢が第2のC字形状から解消されているか否かを判定する。例えば、制御部300は、乗員Pが着座姿勢を直していれば、第2のC字形状が解消されたと判定する。
【0079】
制御部300は、乗員Pの着座姿勢の態様が、適切な着座姿勢であると判定した場合には(ステップS26でYES)、ステップS20に処理を移行する。
【0080】
一方、制御部300は、乗員Pの着座姿勢の態様が、適切な着座姿勢でないと判定した場合には(ステップS26でNO)、形状変化位置の変更処理を行う(ステップS27)。
具体的には、制御部300は、シートバック12の形状を変化させる位置とし、上記処理(ステップS23)で変更した位置よりも下方の位置として、決定する。
【0081】
そして、制御部300は、形状変化位置の変更処理が終了すると、ステップS22のカウンタT2のリセット処理に戻って、上記の処理を繰り返す。したがって、5分ごとに乗員Pの着座姿勢を判定して、着座姿勢が第2のC字形状のままであったら、シートバック12の形状を変化させることができる。
【0082】
ここで、乗員Pの着座姿勢が第2のC字形状の場合における動作について、具体的に説明する。
図8は、乗員Pの着座姿勢が第2のC字形状の場合における動作を示す図である。
【0083】
制御部300は、例えば、乗員Pの臀部の位置が適切位置よりも前方であって、乗員Pの重心が適切位置または適切位置よりも前方にあると検知した場合、乗員Pの着座姿勢が第2のC字形状であると判定する。
【0084】
次いで、制御部300は、乗員Pの着座姿勢が第2のC字形状であると判定した場合、乗員Pの背中が当たっているシートバック12の接触部の位置を特定する。この乗員Pの接触部の位置の特定処理は、上記第1のC字形状における接触部の位置の特定処理と同様である。
【0085】
次に、制御部300は、乗員Pの背中が当たっているシートバック12の接触部の位置およびやや下方の位置において、横断面形状における中央部の凹形状を深くさせる処理を行う。具体的には、制御部300は、ガス入出力装置221に対して、乗員Pの背中が当たっている接触部の位置およびやや下方の収縮バッグ222のガスを抜かせる処理を行う。これにより、
図8(b)に示すように、収縮バッグ222のガスが抜かれ、体積が小さくなるため、乗員Pとシートバック12との接触部が、後方側に後退することとなる。
【0086】
さらに、制御部300は、所定時間経過後に、乗員Pの姿勢が適切な着座姿勢となっていなければ、形状変化位置を、上記の位置よりも下方に変更して、再び、横断面形状における中央部の凹形状を深くさせる処理を行う。これにより、
図8(c)に示すように、乗員Pの姿勢が、下方にずり下がった状態となる。このため、
図8(d)に示すように、乗員Pは、自ら姿勢を正すこととなる。
このように、第1制御処理の後、所定時間経過後に、第2制御処理を行うことにより、乗員Pの姿勢を正させることができる。したがって、乗員Pの着座姿勢が第2のC字形状であった場合、適切な姿勢に誘導することができる。
【0087】
なお、本実施の形態においては、シートバック12のみを可変させることで、乗員Pの着座姿勢を矯正するようにしたが、これに限らず、シートクッション11も可変させるものであってもよい。この場合、シートクッション11とシートバック12とを連動させる、あるいは、協働させることにより、乗員Pの着座姿勢を矯正するものであるとよい。
【0088】
以上のように、本実施の形態における座席シート10は、乗員Pの着座姿勢の態様を解析し、解析結果に基づいてシートバック12の横断面形状を可変させるので、着座状態に応じた最適な座席シート10の形状に変化させることができる。また、座席シート10の形状を可変させることにより、乗員Pの痛みや疲労を軽減することができる。また、座席シート10の形状を可変させることにより、乗員Pに安定した着座姿勢をとらせることができ、車両衝突の際に発生するエアバッグ等の乗員保護装置の作動に対しても、適切に保護を受けさせることができる。