【解決手段】10個積み重ねた際の10mm圧縮強度が3kgf以上であるポリスチレン系樹脂発泡容器。容器本体1の収納凹部2の側壁20は、開口部3の周囲のフランジ部4から下方に向かって延びる上部側壁21と前記上部側壁から内方向きに屈曲して形成された段部22と、前記段部から下方に向かって延びて底部に連なる下部側壁23とより形成されており、前記容器を、前記開口部を上方に向けて積み重ねた場合において、上方に位置する発泡容器の前記段部の外面の少なくとも一部が、下方に位置する発泡容器の前記フランジ部と前記上部側壁との接続部の内面の少なくとも一部と当接し、かつ、上方に位置する発泡容器の下部側壁の外面が、下方に位置する発泡容器の下部側壁の内面と当接するポリスチレン系樹脂発泡容器。
納豆を収納するための収納凹部が開口部から外方へ張り出すフランジ部を残して形成されてなるポリスチレン系樹脂発泡容器本体と、前記ポリスチレン系樹脂発泡容器にヒンジ部を介して連設された蓋体とよりなるポリスチレン系樹脂発泡容器であって、
前記ポリスチレン系樹脂発泡容器本体の収納凹部の側壁は、前記開口部の周囲のフランジ部から下方に向かって延びる上部側壁と前記上部側壁から内方向きに屈曲して形成された段部と、前記段部から下方に向かって延びて底部に連なる下部側壁とより形成されており、
前記納豆容器を、前記開口部を上方に向けて積み重ねた場合において、上方に位置する発泡容器の前記段部の外面の少なくとも一部が、下方に位置する発泡容器の前記フランジ部と前記上部側壁との接続部の内面の少なくとも一部と当接し、かつ、上方に位置する発泡容器の下部側壁の外面が、下方に位置する発泡容器の下部側壁の内面と当接する、請求項2に記載のポリスチレン系樹脂発泡容器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、その両端の数値を含むものとする。
【0012】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡容器について詳細に説明する。
【0013】
[ポリスチレン系樹脂発泡容器]
本発明のポリスチレン系樹脂発泡容器(以下「ポリスチレン系樹脂発泡容器」を単に「発泡容器」という場合がある。)は、10枚積み重ねた際の10mm圧縮強度が3kgf以上である。
【0014】
本発明の発泡容器を10個積み重ねた際の10mm圧縮強度(以下「10mm圧縮強度」という。)は、3kgf以上であり、3〜10kgfが好ましく、3〜9kgfがより好ましく、3〜7kgfがさらに好ましい。10mm圧縮強度がこの範囲内であると、発泡容器の熱成形後における熱線切断時のカットズレを抑制でき、寸法安定性が優れる。
【0015】
発泡容器が蓋体と容器本体とがヒンジ部を介して一体に成形された容器である場合は、10個の発泡容器を、蓋体を開いた状態で、下の容器本体の凹部に上の容器本体を収容し、上下の蓋体同士を重ねたときの10mm圧縮強度を測定する。
【0016】
10mm圧縮強度は、テンシロン万能試験機(UCT−10T、オリエンテック社製)及び万能試験機データ処理ソフトウェア(UTPS−458X、ソフトブレーン社製)を用いて、JIS K 6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載の方法に準じて測定する。
発泡容器として、蓋体と容器本体とがヒンジ部を介して一体に成形された納豆容器を用いる場合の10mm圧縮強度の測定方法は、具体的には、以下に説明するとおりである。
発泡容器として、ニクロムカットした納豆容器成形品を用いる。
納豆容器成形品を、容器本体と蓋が開いた状態で、下の容器本体の凹部に上の容器本体を収容し、上下の蓋体同士を重ね、10個積み重ねて試験体とする。
試験体をテンシロン万能試験機に装着し、容器本体部分を圧縮する。圧縮速度は100mm/分とする。試験体が10mm圧縮された際の圧縮強度(単位:kgf)を測定する。試験を3回繰り返し、圧縮強度の相加平均値を求める。
【0017】
本発明の発泡容器は、蓋体と容器本体とがヒンジ部を介して一体に成形された容器が好ましい。このような容器としては、納豆容器が挙げられる。
【0018】
<納豆容器>
本発明の発泡容器が納豆容器である場合の一実施形態について、
図1〜5を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限り、種々の変更が可能である。
【0019】
図1〜
図3に示すとおり、納豆容器Aは、上面に開口する断面凹状をなし、内容物である納豆(図示せず)を収納するための収納凹部2が開口部3から外方に向かって張り出すフランジ部4を残して形成されてなる容器本体1と、容器本体1の一側端にヒンジ部6を介して開閉自在に連設された蓋体5とよりなる。通常、容器本体1のフランジ部4は納豆生産ラインでの移送用の支持部材やアーム部材等による受け部として利用される。ヒンジ部6は、例えば、図に示すように平行な2条のV形溝により180°折曲できるように形成される。
【0020】
容器本体1の開口部3の縁部は開口部3に向けて段状に広がっている。すなわち、容器本体1の収納凹部2の側壁20は、開口部3の周囲のフランジ部4から下方に向かって延びる上部側壁21と上部側壁21から内方向きに屈曲して形成された段部22と、段部22から下方に向かって延びて底部24に連なる下部側壁23とより形成されている。
【0021】
換言すると、
図4に示すように、フランジ部4から下部側壁23との間には、容器外側を起点に、下方かつ容器内側に屈曲された第1の屈曲部22sを介して上部側壁21が形成され、下方に延設された上部側壁21の端部が、容器内側を起点に下方かつ容器内側に屈曲された第2の屈曲部22tからなる段部22が形成されている。段部22(第2の屈曲部22t)の下方端部は下部側壁23に連接している。第1の屈曲部22sと第2の屈曲部22tとは異なる方向に屈曲している。ここで、第1の屈曲部の曲率半径をR1とし、第2の屈曲部の曲率半径をR2とする。
【0022】
蓋体5は、外周部にフランジ部7を残して、収納凹部2の開口部3の内側に嵌合し得る内外二重壁の断面U字形をなすリブ状凸部8が突出形成されている。リブ状凸部8は、実質的に平面ロ字形又はヒンジ部6側を除いて実質的に平面コ字形をなすように閉蓋時に容器本体1と対向する下面側(容器内面側)に突出形成されていてもよい。図の場合は、ヒンジ部6側を除いて実質的に平面コ字形をなすように閉蓋時に容器本体1と対向する下面側(容器内面側)に突出形成されている。
【0023】
リブ状凸部8は、
図5に示すように、蓋体5の平坦部9及びフランジ部7から屈曲して立ち上がる第3の屈曲部8sを介して一対の側壁部が形成され、その先端部が湾曲部8tを介して連接されている。第3の屈曲部8sはリブ状凸部8が突出する方向を起点として屈曲されている。第3の屈曲部8sの屈曲方向と湾曲部8tの湾曲方向とは異なっている。第3の屈曲部8sの曲率半径をR3とし、湾曲部8tの曲率半径をR4とする。
【0024】
リブ状凸部8は、ヒンジ部6側を除いて実質的に平面コ字形をなすように閉蓋時に容器本体1と対向する下面側(容器内面側)に突出形成されているときは、ヒンジ部6に対し直交する方向に延びる両側部分81、81におけるヒンジ部6側の端部がそのまま終端するものであってもよい。図の場合は、両側部分81、81のヒンジ部側の端部81aが内側に屈曲して内方の凹部10の個所に連続するように形成されている。これにより、リブ状凸部8の内側に沿う平坦部9が、フランジ部7から離隔して形成されている。もちろん、平坦部9をヒンジ部6側でフランジ部7に連続させておくこともできる。
【0025】
蓋体5には、閉蓋状態において収納凹部2に収納されている納豆(図示せず)の発酵、熟成に必要な空気を取り入れるために、例えば、凹部10、平坦部9、リブ状凸部8等の部分の所要個所に、通気性は有するがゴミ等の侵入は抑制できる針孔状等の通気用の細孔11が適当な間隔で形成されている。
【0026】
容器本体1の収納凹部2の側壁20は、開口部3周囲のフランジ部4から下方に向かって延びる上部側壁21と上部側壁21から内方向きに屈曲して形成された段部22と、段部22から下方に向かって延びて底部24に連なる下部側壁23とより形成されており、蓋体5を被着した閉蓋状態において、蓋体5におけるリブ状凸部8が上部側壁21の内側に嵌合するように設けられている。この上部側壁21とリブ状凸部8との嵌合は、通常、弾力的にシール性よく密着状態で嵌合するように設けられる。細孔11に代えて、上部側壁21とリブ状凸部8との嵌合部分の少なくとも一方に、通気用の細溝(図示せず)を形成しておく等、他の通気手段を設けておくこともできる。
【0027】
納豆容器Aにおいて、容器本体1における段部22が、収納凹部2の開口部3の近くの高さ位置に形成され、上部側壁21に嵌合するリブ状凸部8の突出端部(閉蓋時の下端部)が段部22に僅かに隙間を存して近接するか、又は、弾力的に当接するように設定され、上述の嵌合状態を安定性よく保持できるように設けられる。
【0028】
容器本体1の収納凹部2の側壁20における下部側壁23及び底部24には、補強リブ的な作用をする凸条25が設けられている。
【0029】
なお、前記した実施形態では、容器本体1の収納凹部2は開口部3及び底部24が平面方形をなす場合を示したが、このほか、例えば、開口部3を方形にして、段部22より下方を底部24に向かって漸次円形にしたり、収納凹部2の全体を、ヒンジ部側を方形、反対側を半円形にしたりする等、種々の形態による実施が可能である。収納凹部2の底部24が円形をなす場合は、底部24の直径が凹部10の開口の差し渡し寸法より大きいものする。
【0030】
容器本体1の上部側壁21の厚みは、1.0〜3.0mmが好ましく、1.2〜2.7mmがより好ましく、1.4〜2.4mmがさらに好ましい。
また、容器本体1の上部側壁21の高さは、開口部3を上方に向けた場合のフランジ部4の下面から下部側壁23の外面と段部22の外面との境界面までの高さであり、4.5〜7.0mmが好ましく、4.8〜6.8mmがより好ましく、5.2〜6.6mmがさらに好ましい。
【0031】
蓋体5のリブ状凸部8の側壁部の厚みは、1.0〜3.0mmが好ましく、1.2〜2.7mmがより好ましく、1.3〜2.4mmがさらに好ましい。
また、蓋体5のリブ状凸部8の高さは、蓋体5をリブ状凸部8が上方に向かって凸となるように置いた場合の平坦部9の上面からリブ状凸部8の頂点までの高さであり、5.0〜6.5mmが好ましく、5.1〜6.3mmがより好ましく、5.2〜6.1mmがさらに好ましい。
【0032】
納豆容器Aは、ポリスチレン系樹脂発泡シートから真空成形等の熱成形加工手段により容器本体1と蓋体5とがヒンジ部6を介して一体に成形される。
【0033】
図6は、
図2の納豆容器Aの容器本体1を、水平面上に、開口部3の開口が上方を向くように、二段に積み重ね、X−X’線又はY−Y’線に沿って前記水平面と直交する平面で切断した場合の容器本体1の側壁20近傍(X側、Y側)を表す縦断面図である。
図6に示すように、上方に位置する納豆容器Aの段部22の外面22bが、下方に位置する納豆容器Aのフランジ部4と上部側壁21との接続部の内面21aと当接し、かつ、上方に位置する納豆容器Aの下部側壁23の外面23bが、下方に位置する納豆容器Aの下部側壁23の内面23aと当接する。換言すれば、
図6において、下方に位置する容器本体1の第1の屈曲部22sの容器内側面と上方に位置する容器本体1の第2の屈曲部22tの容器外側面と、上方に位置する納豆容器Aの容器本体1の段部22の第2の屈曲部22tの外面22bとは、接点t1において接する。
【0034】
図7は、
図2の納豆容器Aの容器本体1を、水平面上に、開口部3の開口が上方を向くように、二段に積み重ね、蓋体5の平坦部9を前記水平面と平行にして、X−X’線又はZ−Z’線に沿って前記水平面と直交する平面で切断した場合の蓋体のリブ状凸部8近傍(X’側、Z’側)を表す縦断面図である。
図7に示すように、下方に位置する納豆容器Aのリブ状凸部8の表側面が、上方に位置する納豆容器Aの蓋体5のリブ状凸部8の裏側面と当接する。換言すれば、
図7において、下方に位置する蓋体5のリブ状凸部8の湾曲部8tの外側面8aと、上方に位置する蓋体5のリブ状凸部8の屈曲部8sの内側面8bとは、接点t2において接する。
【0035】
後述する製造工程において、容器本体1は、積層体を切断する時のカットずれを抑制するため、納豆容器Aは、容器本体1の厚み及び上部側壁21の長さ、並びに及び第1の屈曲部22sの曲率半径R1及び第2の屈曲部22tの曲率半径R2が、後述する要件(イ)を充足するように形成されることが好ましく、後述する要件(1)〜(4)のうち1つ以上を充足する形成されることがより好ましい。
【0036】
また、蓋体5も、後述する製造工程において、積層体を切断する時のカットずれを抑制するため、納豆容器Aは、リブ状凸部8の幅、高さ及び厚み、並びに第3の屈曲部8sの曲率半径R3及び湾曲部8tの曲率半径R4が、後述する要件(ロ)を充足するように形成されることが好ましく、後述する要件(5)〜(8)のうち1つ以上を充足するように形成されることがより好ましい。
【0037】
すなわち、納豆容器Aは、後述する要件(イ)及び(ロ)の一方又は両方を充足することが好ましく、後述する要件(1)〜(8)のいずれか1つ以上を充足することがより好ましい。
【0038】
・要件(イ)、(ロ)
(イ)納豆容器Aを、開口部3を上方に向けて積み重ねて水平面上に載置した際に、上方に位置する容器本体1の段部22の外面22bの少なくとも一部が、下方に位置する容器本体1のフランジ部4と上部側壁21との接続部の内面21aの少なくとも一部と当接する場合において、
上方に位置する容器本体1の段部22の外面22bと下方に位置する容器本体1のフランジ部4と上部側壁21との接続部の内面21aとが接する点t1における内面21aの接線であって、接する点t1から前記水平面に下した垂線と、接する点t1における内面21aの法線と、を含む平面上にあるものと、前記水平面とのなす角(鈍角)の大きさが、100〜140°である。
【0039】
(ロ)納豆容器Aを、開口部3を上方に向けて積み重ねて水平面上に載置し、蓋体5のフランジ部7の上面7aを前記水平面と平行とした際に、上方に位置する蓋体5のリブ状凸部8の内側面8bの一部が、下方に位置する蓋体5のリブ状凸部8の外側面8aの一部と当接する場合において、
上方に位置する蓋体5のリブ状凸部8の内側面8bと下側に位置する蓋体5のリブ状凸部8の外側面8aとが接する点t2における外側面8aの接線であって、接する点t2から前記水平面に下した垂線と、接する点t2における外側面8aの法線と、を含む平面上にあるものと、フランジ部7の上面7aと平行かつフランジ部7の上面7aに接する平面とのなす角(鈍角)の大きさが95〜140°である。
【0040】
・要件(1)〜(8)
(1)
図6において、X−X’線に沿った縦断面では、フランジ部4の上面4aに平行な直線(フランジ部4の上面4aに接するもの)L1と、下方に位置する容器本体1の第1の屈曲部22sの容器内側面の接点t1における接線T1とのなす角(鈍角α)の大きさは、100〜140°である。
【0041】
(2)
図6において、Y−Y’線に沿った縦断面では、フランジ部4の上面4aに平行な直線(フランジ部4の上面4aに接するもの)L1と、下方に位置する容器本体1の第1の屈曲部22sの容器内側面の接点t1における接線T1とのなす角鈍角α’の大きさは、100〜140°である。
【0042】
(3)
図6において、X−X’線に沿った縦断面では、当該縦断面を含む平面と容器本体1の底面が接する平面との交線H1と、下部側壁23の外面23bに平行な直線(下部側壁23に接するもの)L2とのなす角(鈍角γ)の大きさは、100〜130°である。
【0043】
(4)
図6において、Y−Y’線に沿った縦断面では、当該縦断面を含む平面と容器本体1の底面が接する平面との交線H1と、下部側壁23の外面23bに平行な直線(下部側壁23の外面23bに接するもの)L2とのなす角(鈍角γ’)の大きさは、100〜130°である。
【0044】
(5)
図7において、X−X’線に沿った縦断面では、蓋体5のフランジ部7の上面7aに平行な直線(フランジ部7の上面7aに接するもの)L3と、リブ状凸部8の湾曲部8tの外側面8a上の接点t2における接線T2とのなす角(鈍角β)の大きさは、115〜140°である。
【0045】
(6)
図7において、Z−Z’線に沿った縦断面では、蓋体5のフランジ部7の上面7aに平行な直線(フランジ部7の上面7aに接するもの)L3と、リブ状凸部8の湾曲部8tの外側面8a上の接点t2における接線T2とのなす角(鈍角β’)の大きさは、115〜140°である。
【0046】
(7)
図7において、X−X’線に沿った縦断面では、蓋体5のフランジ部7の上面7aに平行な直線(フランジ部7の上面7aに接するもの)L3と、蓋体5のリブ状凸部8の湾曲部8tの外側面8a上の点t3における接線T3とのなす角(鈍角δ)の大きさは、95〜120°である。ただし、点t3は、フランジ部7の上面7aからリブ状凸部8の湾曲部8tの頂点までの高さが1/2となる、湾曲部8tの外側面8aのフランジ部7側の面上の点である。
【0047】
(8)
図7において、Z−Z’線に沿った縦断面では、蓋体5のフランジ部7の上面7aに平行な直線(フランジ部7の上面7aに接するもの)L3と、蓋体5のリブ状凸部8の湾曲部8tの外側面8a上の点t3における接線T3とのなす角(鈍角δ’)の大きさは、95〜120°である。ただし、点t3は、フランジ部7の上面7aからリブ状凸部8の湾曲部8tの頂点までの高さが1/2となる、湾曲部8tの外側面8aのフランジ部7側の面上の点である。
【0048】
納豆容器Aは、前記(イ)及び(ロ)の要件の一方若しくは両方を充足することにより、熱成形後における熱線切断時のカットズレをさらに抑制でき、前記(1)〜(8)のいずれか1つ以上の要件を充足することにより、熱成形後における熱線切断時のカットズレをよりいっそう抑制できる。すなわち、異なる屈曲方向に屈曲された部位同士を当接させ、成型時に気泡が潰されて、密な状態を作れる屈曲部及び湾曲部を形成することにより、段積みによる強度を上げることができる。
【0049】
[ポリスチレン系樹脂発泡シート]
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シート(以下「ポリスチレン系樹脂発泡シート」を単に「発泡シート」という場合がある。)は、上述した本発明の発泡容器を製造するための発泡シートである。
【0050】
本発明の発泡シートの動摩擦係数は、0.2〜1.2が好ましく、0.3〜1.0がより好ましく、0.4〜0.8がさらに好ましい。動摩擦係数がこの範囲内であると、納豆容器成形品を、容器本体と蓋が開いた状態で重ねた際の緩みがより少なくなり、ニクロムカット時の寸法のズレがより少なくなる。
【0051】
また、本発明の発泡シートの静摩擦係数は、0.3〜1.3が好ましく、0.35〜1.2がより好ましく、0.4〜1.0がさらに好ましい。静摩擦係数がこの範囲の下限値以上であると、納豆の充填ラインにおいて容器がより滑りにくく、回転したりせず、問題が生じにくい。また、静摩擦係数がこの範囲の上限値以下であると、納豆の充填ラインにおいて容器がよりスムーズに運ばれる。
【0052】
発泡シートの摩擦係数は、発泡シートの材料、発泡シートの製造条件等によって調節できる。例えば、発泡シートの材料であるポリスチレン系樹脂組成物の成分組成を変更したり、発泡シート製造時の成形工程の加熱温度及び冷却工程の冷却温度の組合せを変更したりすることによって、摩擦係数を調節できる。
【0053】
摩擦係数は、JIS K 7125:1999「プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法」記載の方法に準拠して測定する。
測定機として、テンシロン万能試験機(UCT−10T、オリエンテック社製)を使用する。
試験片は、発泡シートを63×63mmのサイズで切り出したものを使用する。
滑り片のサイズは63×63mmとし、全質量は200gとする。
試験片はすべり片に両面テープで貼り付ける。
相手材料は試験片と同一材料とし、サイズはA4サイズ以上とする。
試験片と相手材料とは、同一材料であるが、試験片と相手材料との接触面は、発泡シートの一方の面と他方の面の組合せとなるようにする。
試験速度を500mm/minとする。
以下の式により、静摩擦係数及び動摩擦係数を求める。
静摩擦係数(μs):第一極大荷重(N)/法線力(N)
動摩擦係数(μD):積分平均荷重(N)/法線力(N)
ただし、法線力は、滑り片の質量によって生じる法線力である(0.2kg×9.8m/s
2=1.96N)。
【0054】
本発明の発泡シートの表面粗さは、1.0〜8.0μmが好ましく、1.5〜7.7μmがより好ましく、1.8〜7.5μmがさらに好ましい。表面粗さがこの範囲の下限値以上であると、熱成形して容器を得る際に金型に引っかかりにくくなり、ナキ等の成形不良がより発生しにくくなる。また、表面粗さがこの範囲の上限値以下であると、熱成形した容器の外観美麗性をより保ちやすくなる。
【0055】
表面粗さは、JIS B 0601:1994「表面粗さ−定義及び表示」記載の方法に準拠して測定する。
測定機として、表面粗さ測定機(ハンディサーフ E−35A、東京精密社製)を用いる。
カットオフ値0.8mm、測定長さ4mmの条件で、発泡シートの表面の表面粗さを測定し、測定値から中心線平均粗さRaを求める。
測定は、発泡シートの押出方向(MD方向)と、それと直交する方向(TD方向)について、それぞれ任意の5個所で実施して求めた値を相加平均して、MD方向及びTD方向の中心線平均粗さRa(μm)とする。
【0056】
本発明の発泡シートの平均気泡径は、0.095〜0.160mmが好ましく、0.100〜0.155mmがより好ましく、0.110〜0.150mmがさらに好ましい。平均気泡径がこの範囲内であると、熱成形した容器の外観美麗性が確保できるとともに、容器の型の出が良く、納豆容器成形品を、容器本体と蓋が開いた状態で重ねた際の緩みがより少なくなり、ニクロムカット時のズレがより少なくなる。
【0057】
平均気泡径は、以下のようにして求める。
発泡シートの幅方向中央部からMD方向(押出方向)及びTD方向(発泡シートの表面において押出方向と直交する方向)に沿って発泡シートの表面に垂直に切リ出す。
断面を走査型電子顕微鏡(SU1510、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、50倍に拡大して撮影する。このとき、顕微鏡画像は、横向きのA4用紙1枚に縦横2画像(合計4画像)並んだ状態で印刷した際に所定の倍率となるように撮影する。
具体的には、画像上に、MD、TDの各方向に平行する60mmの任意の直線及び各方向に直交する方向(VD方向)に60mmの直線を描き、MD方向に沿って切断した断面(MD断面)及びTD方向に沿って切断した断面(TD断面という)のそれぞれに対し、2視野ずつ合計4視野の顕微鏡画像を撮影し、A4用紙に印刷する。MD断面の2つの画像のそれぞれにMD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描くと共に、TD断面の2つの画像のそれぞれにTD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描く。また、MD断面の1つの画像とTD断面の1つの画像とにVD方向に平行な3本の直線(60mm)を描き、MD方向、TD方向、及び、VD方向に平行な60mmの任意の直線を各方向6本ずつ描く。なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合には、この気泡も数に加える。MD方向、TD方向、VD方向の各方向の6本の任意の直線について数えた気泡数Dを算術平均し、各方向の気泡数とする。気泡数を数えた画像倍率とこの気泡数から気泡の平均弦長tを次式より算出する。 平均弦長 t(mm)=60/(気泡数×画像倍率)
画像倍率は画像上のスケールバーをデジマチックキャリパ(ミツトヨ社製)にて1/100mmまで計測し、次式により求める。
・画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)
次式により各方向における気泡径を算出する。
・気泡径D(mm)=t/0.616
さらに、それらの積の3乗根を平均気泡径とする。
・平均気泡径(mm)=(D
MD×D
TD×D
VD)
1/3
D
MD:MD方向の気泡径(mm)
D
TD:TD方向の気泡径(mm)
D
VD:VD方向の気泡径(mm)
【0058】
本発明の発泡シートの表面のアスカーC硬度は、55〜90が好ましく、60〜85がより好ましく、65〜75がさらに好ましい。アスカーC硬度がこの範囲内であると、熱成形した容器の表面がより硬くなり、容器本体と蓋が開いた状態で重ねた際の緩みがより少なくなり、ニクロムカット時のズレがより少なくなる。
【0059】
アスカーC硬度は、以下のようにして求める。
発泡シートから幅100cm×長さ50cmの試験片を切り出し、アスカー表面硬度測定器(型式:「C2型」、アスカー社製)を用いて、表面硬度測定器を試験片表面に押し付けた際の値を表面硬度として測定する。また、測定は試験片において幅方向に20cmごと、押出方向に15cmごとに行い、それらの算術平均を表面のアスカーC硬度とする。
【0060】
本発明の発泡シートの厚みは、0.8〜4.0mmが好ましく、0.9〜2.0mmがより好ましく、1.0〜1.5mmがさらに好ましい。厚みがこの範囲内であると、熱成形した容器の蓋と本体を折り曲げた際に、蓋がより閉まりやすくなる。
【0061】
本発明の発泡シートの坪量は、70〜150g/m
2が好ましい。
【0062】
本発明の発泡シートの発泡倍率は、2〜20倍が好ましく、9〜15倍がより好ましく、10〜14倍がさらに好ましい。
【0063】
[ポリスチレン系樹脂発泡シート及びポリスチレン系樹脂発泡容器の製造方法]
本発明の発泡容器は、本発明の発泡シートを成形したものである。まず、本発明の発泡シートの製造方法を説明し、その後に本発明の発泡容器の製造方法を説明する。
【0064】
<発泡シートの製造方法>
本発明の発泡シートの製造方法としては、従来公知の発泡シートの製造方法を用いることができる。
例えば、以下に説明する製造方法によって本発明の発泡シートを製造できるが、この製造方法に限定されるものではない。
発泡シートの製造装置として、第一押出機と第一押出機の出口に接続された第二押出機とからなるタンデム押出機であって、第二押出機の出口に環状ダイが取り付けられた装置を用いる。第一押出機に、後述するポリスチレン系樹脂組成物を供給し、溶融混練しながら発泡剤を注入する。続いて、第二押出機において、発泡に適した押出温度に冷却してから、環状ダイに溶融混練したポリスチレン系樹脂組成物を供給し、ダイのスリットを通して円筒状の発泡体を形成する。その直後に、円筒状の発泡体を、エアーで冷却するとともに、マンドレルの外面に沿って引き取る。さらに、押出方向に沿って2枚に切り開き、発泡シートを得る。
【0065】
(ポリスチレン系樹脂組成物)
ポリスチレン系樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂を含む。
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体成分単位を50質量%以上含む樹脂を意味する。前記ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の重合体、2種以上のスチレン系単量体の共重合体及びスチレン系単量体と他のモノマーとの共重合体等を挙げられる。前記スチレン系単量体の重合体の具体例は、ポリスチレン及びゴム変性ポリスチレンである。前記2種以上のスチレン系単量体の共重合体の具体例は、スチレン−αメチルスチレン共重合体及びスチレン−p−メチルスチレン共重合体である。前記スチレン系単量体と他のモノマーとの共重合体の具体例は、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体及びスチレン−アクリロニトリル共重合体である。前記ポリスチレン系樹脂には、ジビニルベンゼン、多分岐状マクロモノマー等の多官能モノマー成分単位が含まれていてもよい。前記ポリスチレン系樹脂は、これらのポリスチレン系樹脂の2種以上の混合物であってもよい。前記ポリスチレン系樹脂の中でも特にポリスチレンが好ましい。
【0066】
前記ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、25×10
4以上が好ましく、30×10
4以上がより好ましい。また、前記ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量(Mz)は、40×10
4以上が好ましく、60×10
4以上がより好ましい。なお、前記ポリスチレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜3が好ましい。
【0067】
前記Mn、Mw、Mzは、いずれもゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法(GPC法)により求められる。具体的には、ポリスチレン系樹脂発泡容器又はポリスチレン系樹脂発泡シートをテトラヒドロフラン(THF)20mLに溶解させ、下記に示す機器を用い、下記分析条件にてGPC法により測定し、得られたチャートのスチレン系樹脂によるピーク開始位置(本発明では、便宜上、分子量5.4×10
6位置を採用)を基準に水平(横軸と平行)にベースラインを引き、標準ポリスチレンを用いて作成した標準較正曲線により、各分子量を算出する。
【0068】
使用機器:GPC仕様高速液体クロマトグラフ(ジーエルサイエンス社製)
カラム:Shodex GPC KF−806、Shodex GPC KF−805、Shodex GPC KF−803(いずれも昭和電工社製)3本直列接続
カラム温度:40℃
溶媒:THF
流速:1.0mL/分
濃度:0.15w/v%
注入量:0.2mL
検出器:紫外可視検出器(UV702型、ジーエルサイエンス社製、測定波長254nm)
分子量分布の計算に用いた較正曲線の分子量範囲:1.9×10
7〜5.4×10
3
【0069】
前記ポリスチレン系樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂の他に、他の熱可塑性樹脂及びエラストマーからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。ただし、他の熱可塑性樹脂及びエラストマーの合計含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量%中の10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
【0070】
前記ポリスチレン系樹脂組成物は、さらに、結晶化促進剤、発泡剤、気泡調整剤及び収縮防止剤からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0071】
・発泡剤
前記発泡剤としては、揮発性発泡剤及び分解型発泡剤からなる群から選択される1種以上を使用することが好ましい。揮発性発泡剤は、常温・常圧で気体になりやすい発泡剤である。分解型発泡剤は、熱分解によって気体を発生する発泡剤である。
前記揮発性発泡剤としては、例えば、不活性ガス、脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素が挙げられる。前記不活性ガスの具体例は、炭酸ガス及び窒素ガスである。前記脂肪族炭化水素の具体例は、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタンである。前記脂環式炭化水素の具体例は、シクロペンタン及びシクロへキサンである。前記揮発性発泡剤は、脂肪族炭化水素が好ましく、なかでも、ブタン又はイソブタンが好ましい。
前記分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカーボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)及び4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等の有機系熱分解型発泡剤、並びに炭酸水素塩、炭酸塩及び炭酸水素塩と有機酸塩の混合物等の無機系熱分解型発泡剤が挙げられる。
発泡剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
前記ポリスチレン系樹脂組成物が前記発泡剤を含む場合の、前記ポリスチレン系樹脂組成物中の前記発泡剤の含有量は、特に限定されないが、ポリスチレン系樹脂の100質量部に対して、1.0〜8.0質量部が好ましく、2.0〜6.0質量部がより好ましく、3.0〜5.0質量部がさらに好ましい。
【0073】
・気泡調整剤
前記気泡調整剤としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物粒子、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機化合物粒子などが挙げられる。
【0074】
前記ポリスチレン系樹脂組成物が前記気泡調整剤を含む場合の、前記ポリスチレン系樹脂組成物中の前記気泡調整剤の含有量は、特に限定されないが、ポリスチレン系樹脂の100質量部に対して、0.03〜2.4質量部が好ましく、0.06〜1.8質量部がより好ましく、0.06〜1.2質量部がさらに好ましい。
【0075】
・その他の添加剤
前記ポリスチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない限り、無機充填剤、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等の従来公知の添加剤を含んでもよい。
【0076】
<発泡容器の製造方法>
本発明の発泡容器の製造方法としては、従来公知の発泡容器の製造方法を用いることができる。
例えば、発泡容器が納豆容器である場合、以下に説明する製造方法によって本発明の発泡容器を製造できるが、この製造方法に限定されるものではない。
納豆容器の成形機として、容器本体と、容器本体と同じ大きさを有する蓋体とが連設された納豆容器が、一度の熱成形において数十個形成し得るように製品形状が形成された成形型を備えるものを用いる。
熱成形に際しては、サーキュラー金型から押出された円筒状の発泡体の内側に相当する発泡シートの第二表面を成形型に面接させ、発泡体の内側に相当する第一表面において容器本体が開口するようにして実施する。また、成形型から脱型された発泡シートを一回の熱成形分ごとに切断してこれを(納豆容器の容器本体の開口部を上方に向けた状態で)積み重ね、発泡シートが複数枚重ね合わされた積層体を作製し、水平方向に張設された複数のニクロム線が格子状に配置された溶断装置で積層体を下から上に切断し、納豆容器を個々に分割する。
【0077】
[作用効果]
本発明の発泡容器は、10個積み重ねた時の10mm圧縮強度が高いので、1枚に複数個の容器を成形したシートを複数枚重ね熱線切断する場合の容器の変形及びそれに伴うカットズレが抑制される結果、優れた寸法安定性を有する。
また、上述した鈍角α〜δ、α’〜δ’が上記範囲内であると、カットズレがさらに抑制される。
【実施例】
【0078】
以下では、本発明を実施例によってより具体的に説明する。本発明は、以下に記載する実施例に限定されず、本発明の要旨を変更しない限り、種々の変形が可能である。
【0079】
[実施例1〜10、比較例1〜4]
<発泡シート>
発泡シートの製造装置として、第一押出機(スクリュー径115mm)と第一押出機の出口に接続された第二押出機(スクリュー径150mm)とからなるタンデム押出機であって、第二押出機の出口に口径170mmの環状ダイが取付けられた装置を用いた。
ポリスチレン系樹脂100重量部に対し、気泡調整剤としてタルクを表1に示す平均気泡径になるように調整添加し、第一押出機に供給した。押出機のシリンダー温度は最高設定温度を240℃とし、発泡剤としてブタンガスを4.0重量部注入し、続いて第二押出機にて、発泡に適した押出温度に冷却してから、環状ダイに供給し、ダイのスリットを通して円筒状の発泡体を形成し、その直後に、円筒状の発泡体を、表1に示す表面粗さになるようにその内側と外側にエアーをかけて調整して冷却すると共に、直径675mmの冷却装置(マンドレル)の外面に沿って引取り、さらに押出方向に沿って2枚に切り開き、幅1050mmの発泡シートを得た。得られた発泡シートは実施例、比較例合わせて10種類であり、シートA〜Jとした。
【0080】
実施例1、2はシートA、実施例3〜6は、それぞれ、シートB〜E、実施例7、8はシートF、実施例9、10はシートG、Hを用いた。比較例1、2はシートA、比較例3、4は、それぞれ、シートI、Jを用いた。
上述した方法によって、シートA〜Jの摩擦係数(静摩擦係数、動摩擦係数)、表面粗さ、平均気泡径、表面のアスカーC硬度(表面硬度)を求めた。結果を表1に記載する。
【0081】
<納豆容器>
表1に示した実施例、比較例のように製造した発泡シート(シートA〜J)を用い、縦(発泡シートの長手方向に相当)1030mm×横(発泡シートの幅方向に相当)1010mmの大きさを有する成形型を用いて熱成形を実施した。その際、表1に示す二次発泡値になるように、加熱を行った。なお、成形型として、82mm×82mmの開口を有し、深さ26mmの収納凹部を有する平面視における大きさが95mm×98mmの容器本体と、容器本体と同じ大きさを有する蓋体とが連設された納豆容器が、一度の熱成形において50個形成し得るように縦方向に5個、横方向に10個の製品形状が形成されたものを用いた。また、納豆容器のスタックにおける厚み、高さが表1に示すような形状になるような成形型を用いた。
熱成形に際しては、サーキュラー金型から押出された円筒状の発泡体の内側に相当する発泡シートの第二表面を成形型に面接させ、発泡体の内側に相当する第一表面において容器本体が開口するようにして実施した。
また、成形型から脱型された発泡シートを一回の熱成形分ごとに切断してこれを積み重ね、発泡シートが10枚重ね合わされた積層体を作製し、水平方向に張設された複数のニクロム線が格子状に配置された溶断装置で積層体を下から上に切断し、納豆容器を個々に分割した。
【0082】
(カットズレの評価)
切断した納豆容器を折り曲げ、蓋と本体の端面のズレをカットズレ値とし、下記の基準にて評価した。
〇:カットズレ値が2.0mm未満である
×:カットズレ値が2.0mm以上である
【0083】
実施例1〜10及び比較例1〜4について、分割した納豆容器を10個積み重ねた際の10mm圧縮強度を上述した方法によって求めた。結果を表1に記載する。
また、実施例1〜8の納豆容器について、容器本体を切断して、上部側壁の厚みを測定した。測定結果を、表1の発泡容器の厚みの「容器本体」の欄に記載する。同様に、容器本体を切断して、上部側壁の高さを測定した。測定結果を、表1の発泡容器の高さの「容器本体」の欄に記載する。
また、実施例1〜10及び比較例1〜4の納豆容器について、蓋部を切断して、リブ状突起の側壁の厚みを測定した。測定結果を、表1の発泡容器の厚みの「蓋部」の欄に記載する。同様に、蓋部を切断して、リブ状突起の側壁の高さを測定した。測定結果を、表1の発泡容器の高さの「蓋部」の欄に記載する。
ここで、上部側壁の高さ及びリブ状突起の高さは、上述した定義によるものである。
さらに、実施例1の納豆容器を2個重ね、容器の接する部分を検討した。その結果を
図4に示す。
【0084】
(角度の測定)
積み重ねた容器の本体スタック部及び、蓋体スタック部を容器の長軸方向(
図2のX−X’方向)及び短軸方向(
図2のY−Y’方向、Z−Z’方向)に沿って切り出した断面を20倍の拡大写真をデジタルマイクロスコープ(KEYENCE社製「VHX−1000」、レンズ:VH−Z 20R)を用いて撮影し、得られた拡大写真をA4サイズの紙面に印刷した。
容器本体について、得られた紙面において、下方に位置する納豆容器の容器本体のフランジ部の上面に平行な直線(フランジ部の上面の接線)と、上方に位置する納豆容器の容器本体の段部の第2の屈曲部の外面と下方に位置する納豆容器の容器本体の第1の屈曲部の内面との接点における接線とのなす角度(α、α’)を測定した。また、下方に位置する納豆容器の容器本体の底面が接する平面との交線と、下方に位置する納豆容器の容器本体の下部側壁の外面に平行な直線とのなす角度(γ、γ’)を測定した。
蓋体について、得られた紙面において、下方に位置する納豆容器の蓋体のフランジ部の上面に平行な直線と、上方に位置する納豆容器のリブ状凸部の第3の屈曲部の下面に相当する凹面部と下方に位置する納豆容器の蓋体のリブ状凸部の湾曲部の上面に相当する凸面部との接点における接線とのなす角度(β、β’)を測定した。また、下方に位置する納豆容器の蓋体のフランジ部の上面に平行な直線と、下方に位置する納豆容器の蓋体のリブ状凸部の湾曲部の上面に相当する凸面部のフランジ部7側の側面において、フランジ部の上面からリブ状凸部の頂点までの高さが1/2となる点における接線とのなす角度(δ、δ’)を測定した。
測定結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
[結果の説明]
実施例1〜10の納豆容器は、いずれも、10mm圧縮強度が3kgf以上であった。熱線切断時のカットズレが抑制され、優れた寸法安定性を有していた。比較例1〜3については、納豆容器の10mm圧縮強度が3kgf未満であり、ニクロムカット時にズレが大きい結果となった。比較例4の納豆容器の10mm圧縮強度が3kgf以上であったが、熱成形時にナキが発生し、良品を得ることができなかった。また、
図4に示すように、納豆容器を、開口部を上方に向けて積み重ねた際には、上方に位置する納豆容器の段部の外面22bが、下方に位置する納豆容器のフランジ部と上部側壁との接続部の内面21aと当接し、かつ、上方に位置する納豆容器Aの下部側壁の外面23bが、下方に位置する納豆容器の下部側壁の内面23aとが当接することがわかった。
【0089】
実施例1〜10の納豆容器は、α、α’、β、β’、γ、γ’、δ、δ’がすべて、上述した要件(1)〜(8)の範囲内であり、要件(1)〜(8)をすべて充足していた。