【解決手段】少なくとも水、顔料、水溶性有機溶剤および樹脂を含有するインクジェット印刷用水系白色インクであって、前記水系白色インクの表面寿命10msにおける25℃の動的表面張力値が33mN/m以上42mN/m以下であり、前記水系白色インクの25℃における静的表面張力値が23mN/m以上30mN/m以下であり、前記水溶性有機溶剤は、少なくとも1つのアルカンジオール系溶剤を含むことを特徴とする水系白色インクである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の水系白色インクを詳細に説明する。本発明の水系白色インクは、少なくとも水、顔料、水溶性有機溶剤および樹脂を含有するインクジェット印刷用水系白色インクであって、前記水系白色インクの表面寿命10msにおける25℃の動的表面張力値が33mN/m以上42mN/m以下であり、前記水系白色インクの25℃における静的表面張力値が23mN/m以上30mN/m以下であり、前記水溶性有機溶剤は、少なくとも1つのアルカンジオール系溶剤を含むことを特徴とする。
【0019】
本明細書において「水系インク」とは、主溶媒として水を含有するインクである。
本明細書において「白色インク」とは、対象に白色を色付けることができるインクである。また、本明細書において「白色」は、無彩色の白を指すが、それに限らずベージュやグレーなど多少色味が入ったオフホワイトも含まれる。
本明細書において「インクジェット印刷用インク」とは、インクジェットプリンタによる印刷(インクジェット印刷)に用いるためのインクである。
【0020】
本発明の水系白色インクは、表面寿命10msにおける25℃の動的表面張力値が33mN/m以上42mN/m以下である。本発明の水系白色インクは、上記動的表面張力値を比較的低い範囲である33mN/m以上42mN/m以下に調整することで、裏刷りの際であっても白色インクが濡れ広がり難いという課題を解消することができ、表刷りと裏刷りの両方において印刷スジの発生を抑制することができる。印刷スジの発生を抑制する観点から、水系白色インクの表面寿命10msにおける25℃の動的表面張力値は、40.5mN/m以下であることが好ましく、39.0mN/m以下であることが更に好ましい。また、表面張力を低下させる能力の高い表面調整剤や溶剤を白色インクに用いた場合、裏刷りの際において着色インク層上に着弾した白インクの移動が偏り、結果として液寄り現象が発生していたことから、本発明の水系白色インクは、表面寿命10msにおける25℃の動的表面張力値が33mN/m以上である。液寄り現象の発生を抑制する観点から、水系白色インクの表面寿命10msにおける25℃の動的表面張力値は、34.5mN/m以上であることが好ましく、36.0mN/m以上であることが更に好ましい。
【0021】
「動的表面張力」とは、時間の経過とともに平衡状態へと向かっていく表面張力を指し、動的表面張力計(例えばKRUSS社製BP2)を用い、最大泡圧法(Maximum Bubble Pressure method)により測定できる。本明細書では、25℃のインクやコーティング液に対して表面寿命10msにおける表面張力の測定を行う。
最大泡圧法は、液体中に挿入したプローブ(管)に空気を流し、気泡を発生させたときの最大圧力(最大泡圧)を計測することで表面張力を算出する。液体中のプローブの先端から気泡を連続的に吐出させることでプローブ内の圧力は周期的に変化し、気泡の曲率半径とプローブ先端の半径が等しくなったとき圧力は最大となる。プローブ内で新しい界面が生成した時点を0msとし、最大泡圧となるまでの時間が表面寿命であり、ここでの最大圧力(最大泡圧)から各表面寿命における表面張力が求められる。
【0022】
表面寿命を10msに設定した理由は、着弾直後に起こるインクの濡れ広がり挙動を制御するために適したタイミングと考えられるからである。インクジェットプリンタによる高速印刷では1つのドットが着弾してから濡れ広がりが完結するまでに、凡そ10〜100msかかり、着弾直後の広がり挙動自体はとても短い時間スケールで展開される。10msは基材に着弾した直後に起こるインク濡れ広がり始めるタイミングであることから、このときの動的表面張力値を適切な値に制御することで、水系白色インクの基材接触直後によるインクの濡れを制御できると考えられる。
【0023】
なお、上記のように動的表面張力値を調整することに加えて、静的表面張力値を調整することで、インクが着弾してから濡れ広がりが完結するまでのインクの挙動を制御でき、印刷スジ現象及び液寄り現象の発生を抑制することができる。「静的表面張力値」とは、平衡状態に達している表面張力値を指し、本明細書においてはプレート法に基づき測定される。
【0024】
本発明の水系白色インクは、25℃における静的表面張力値が23mN/m以上30mN/m以下である。また、印刷スジの発生を抑制する観点から、水系白色インクの25℃の静的表面張力値は、28.5mN/m以下であることが好ましく、27.0mN/m以下であることが更に好ましい。更に、液寄り現象の発生を抑制する観点から、水系白色インクの25℃の静的表面張力値は、24.0mN/m以上であることが好ましく、25.0mN/m以上であることが更に好ましい。
【0025】
本発明の水系白色インクは水系であり、表面張力値は一般に高い傾向にあるため、有機溶剤の種類や含有量、及び/又は表面調整剤を含む添加剤の種類や含有量を適宜調整することで、表面張力値を調整することが重要である。特に、後述するようなシリコーン系表面調整剤、アセチレングリコール系表面調整剤、及びアルカンジオール系溶剤は、動的表面張力を低減させる効果が高く、動的表面張力値の調整に有効である。
【0026】
本発明の水系白色インクは、水を含むが、イオン交換水や蒸留水等の純水、超純水等が好適に挙げられる。また、インクを長期保存する場合には、カビやバクテリアの発生を防止するため、紫外線照射等により滅菌処理した水を用いてもよい。本発明の水系白色インク中において、水の含有量は、20〜90質量%の範囲であることを例示することができるが、好ましくは50〜90質量%、更に好ましくは60〜80質量%の範囲内である。これによって、より環境への負荷の少ない水系白色インクを提供することができる。
【0027】
本発明の水系白色インクは、顔料を含む。顔料としては、白色インクに通常使用されている顔料を使用できるが、白色顔料を使用することが好ましい。白色顔料の具体例としては、二酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。また、着色顔料の他、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料や、亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ハイドロカルマイト等の防錆顔料等も使用できる。本発明の水系白色インク中において、顔料の含有量は、0.5〜10質量%であることが好ましい。なお、顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明の水系白色インクにおいて、顔料は、平均粒子径(D50)が150nm以上500nm以下であることが好ましく、180nm以上400nm以下であることが更に好ましい。顔料の平均粒子径(D50)を150nm以上とすることで、印刷層の裏側(視認する側とは反対側、例えば表刷りであれば基材側)の隠ぺい率を向上させることができる。また、顔料の平均粒子径(D50)を500nm以下とすることで、インク中において顔料が沈降することを抑制することができる。
本明細書において、平均粒子径(D50)は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D
50)を指し、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えばSALD−7000:株式会社島津製作所社製)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本発明における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
【0029】
本発明の水系白色インクは水溶性有機溶剤を含むものであるが、該水溶性有機溶剤は、少なくとも1つのアルカンジオール系溶剤を含む。アルカンジオール系溶剤は、インクの表面張力値、特に動的表面張力値を調整する観点から好ましいことに加えて、裏刷りの際に発生する液寄り現象を抑制する効果を有する。また、液寄り現象の発生を抑制する観点から、水溶性有機溶剤は、少なくとも1つの1,2−アルカンジオール系溶剤を含むことがより好ましい。本発明の水系白色インク中において、アルカンジオール系溶剤の含有量は、5.0〜40.0質量%であることが好ましい。
【0030】
本発明の水系白色インクにおいて、水溶性有機溶剤は、アルカンジオール系溶剤の他、インクの吐出安定性、濡れ性及び保存安定性をより良好にする観点から、グリコールエーテル系溶剤、三〜五員環のラクトン系溶剤、及びアミド系溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種類を含むことが好ましい。
【0031】
アルカンジオール系溶剤は、2つの水酸基を有する非環系飽和炭化水素であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールが好ましい。
【0032】
グリコールエーテル系溶剤の具体例としては、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールペンチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、エチレングリコールターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールペンチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールシクロヘキシルエーテル、ジエチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールペンチルエーテル、トリエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールシクロヘキシルエーテル、トリエチレングリコールフェニルエーテル、トリエチレングリコールベンジルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類、並びにプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールペンチルエーテル、プロピレングリコールヘキシルエーテル、プロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールペンチルエーテル、ジプロピレングリコールヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールプロピルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールペンチルエーテル、トリプロピレングリコールヘキシルエーテル及びトリプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、エチレングリコールターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0033】
三〜五員環のラクトン系溶剤は、−C(=O)−O−を一部に含むラクトン環を有する化合物のうち、環を構成する原子数が3である三員環、原子数が4である四員環又は原子数が5である五員環の化合物である。具体例としては、α−アセトラクトン、β−プロピオンラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0034】
アミド系溶剤は、非環状のアミド化合物が好ましく、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、スルファニルアミド、トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−2−エチルヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−オクトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−オクトキシプロピオンアミド等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ブトキシプロピオンアミドが好ましい。
【0035】
本発明の水系白色インク中において、水溶性有機溶剤の含有量は、5〜49質量%であることを例示することができるが、好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜35質量%、特に好ましくは15〜35質量%の低い範囲内で調整することもできる。これによって、より環境への負荷の少ない水系白色インクを提供することができるとともに、印刷層内に有機溶剤が残りにくくなることから、耐擦過性等の膜物性が向上しやすくなる。
【0036】
本発明の水系白色インクは、樹脂を含む。水系白色インクに使用できる樹脂は、特に限定されるものではなく、インク業界において通常使用されている樹脂を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記水系白色インクに使用できる樹脂は、自己分散性樹脂を含むことができる。自己分散性樹脂とは、界面活性剤や乳化剤を使用しなくても、インク中で分散状態を保つことができる樹脂であり、通常、スルホン酸又はその塩やカルボン酸又はその塩等の親水性基を末端又は側鎖に有するポリマーや、ポリカーボネート基、ポリエステル基、ポリエーテル基等の親水性基を主鎖に有するポリマー等が好適に使用される。これら自己分散性樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、自己分散性樹脂は、市販品を使用してもよい。
【0038】
上記自己分散性樹脂は、耐擦過性、耐水性等の印刷層の性能を向上させる観点から、自己分散性ウレタン樹脂を含むことが好ましく、更に各種基材への高い付着性を付与する観点から、ポリエステル基又はポリエーテル基含有自己分散性ウレタン樹脂を含むことが更に好ましい。自己分散性樹脂中における自己分散性ウレタン樹脂の割合は、30〜100質量%であることが好ましい。
【0039】
上記自己分散性ウレタン樹脂は、重量平均分子量が100,000〜1,000,000であることが好ましく、150,000〜750,000であることがより好ましく、200,000〜500,000であることが更に好ましい。上記自己分散性ウレタン樹脂の重量平均分子量が上記特定した範囲内にあれば、耐擦過性をより向上でき、強固な印刷層を形成することができる。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
【0040】
上記自己分散性ウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、任意に鎖伸長剤とを反応させて得ることができる。
【0041】
ポリエステルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクタムジオール及びポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリエステルポリオールを用いることで、ポリエステル基含有自己分散性ウレタン樹脂を得ることができる。このような樹脂は、インク中にて粒子の形態で分散していることから、本明細書においては、ポリエステルウレタン樹脂粒子とも称する。
ポリエーテルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール及びポリオキシエチレン・プロピレングリコール等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリエーテルポリオールを用いることで、ポリエーテル基含有自己分散性ウレタン樹脂を得ることができる。このような樹脂は、インク中にて粒子の形態で分散していることから、本明細書においては、ポリエーテルウレタン樹脂粒子とも称する。
ポリカーボネートポリオールは、特に制限はなく、例えば、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール、1,4−ブタンジオールポリカーボネートポリオール及びポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリカーボネートポリオールを用いることで、ポリカーボネート基含有自己分散性ウレタン樹脂を得ることができる。このような樹脂は、インク中にて粒子の形態で分散していることから、本明細書においては、ポリカーボネートウレタン樹脂粒子とも称する。
なお、ポリオール成分としては、アクリルポリオール等を用いてもよい。
これらのポリオール成分は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0042】
ポリイソシアネート成分としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらのポリイソシアネート成分の中でも、好ましくは、キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)又はノルボルナンジイソシアネートである。これらのポリイソシアネート成分は、1種を単独で使用することもでき、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0043】
鎖伸長剤としては、例えば、低分子量の多価アルコール及び低分子量のポリアミンを挙げることができる。低分子量の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジメチロールブタン酸及びジメチロールプロピオン酸等のジメチロールアルカン酸類等が挙げられる。低分子量のポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びイミノビスプロピルアミン等が挙げられる。これらの鎖伸長剤は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0044】
本発明の水系白色インクは、少なくとも1つのポリエーテル又はポリエステルウレタン樹脂粒子(即ち、ポリエーテルウレタン樹脂粒子又はポリエステルウレタン樹脂粒子)を含むことが好ましい。このようなインクは、貯蔵安定性が良く、また、乾燥後に非吸収性基材、難吸収性基材を含めた幅広い基材への密着性に優れた強固な膜を作ることが可能となる。
【0045】
上記自己分散性樹脂は、インク中で分散しており、粒子の形態にある。ここで、上記自己分散性樹脂は、平均粒子径(D50)が10nm〜90nmであることが好ましく、20nm〜70nmであることがより好ましく、30nm〜60nmであることが更に好ましい。上記特定した範囲内の平均粒子径であれば、自己分散性樹脂の分散状態が良く保存安定性に優れるインクを調製できる。本発明において、平均粒子径(D50)は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D
50)を指し、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えばSALD−7000:株式会社島津製作所社製)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本発明における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
【0046】
上記自己分散性樹脂は、その酸価が5.0〜60.0であることが好ましい。上記特定した範囲内の酸価であれば、分散性を向上させることができる。本明細書において、樹脂の酸価とは、樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を意味する。
【0047】
本発明の水系白色インクは、樹脂の含有量は、1〜10質量%であることが好ましい。また、上記樹脂に占める自己分散性樹脂の割合は、50質量%以上であることが好ましい。
【0048】
本発明の水系白色インクは、表面張力値を調整する観点から、表面調整剤を含むことが好ましい。表面調整剤としては、シリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤及びアセチレングリコール系表面調整剤等が挙げられるが、特に本発明の水系白色インクの動的表面張力値を調整する観点から、本発明の水系白色インクは、少なくとも1種類のシリコーン系表面調整剤を含むか又は少なくとも1種類のアセチレングリコール系表面調整剤を含むことが好ましく、シリコーン系表面調整剤及びアセチレングリコール系表面調整剤の両方を含むことが更に好ましい。ここで、シリコーン系表面調整剤とアセチレングリコール系表面調整剤の両方を含む場合、シリコーン系表面調整剤(A)とアセチレングリコール系表面調整剤(B)の質量比(A:B)は、5:1〜1:5であることが好ましく、3:1〜1:3であることが更に好ましい。また、本発明の水系白インクに用いる観点から、シリコーン系表面調整剤は、HLB値が3.0〜16.0であることが好ましく、3.0〜14.0であることが更に好ましく、アセチレングリコール系表面調整剤は、HLB値が3.0以上であることが好ましく、4.0〜16.0であることが更に好ましい。HLB値は様々な算出法が知られているが、本明細書において、表面調整剤(界面活性剤)のHLB値は、親水基の式量と分子量を元に計算するグリフィン法に基づくものである。
【0049】
シリコーン系表面調整剤の具体例としては、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリエスエル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性水酸基含有ポリシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリシロキサン等が挙げられ、BYK−Chemie社、信越化学工業社等から市販される商品が容易に入手可能である。
【0050】
アセチレングリコール系表面調整剤は、アセチレン基と2つの水酸基を有する界面活性剤であり、例えば、下記式(1)
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立した炭化水素基を示す)で表されるような、アセチレン基を中心とした左右対称構造を有する非イオン性界面活性剤が好適である。また、本明細書においては、界面活性剤の水酸基にアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を付加してなるアルキレンオキシド付加物もアセチレングリコール系表面調整剤に含まれる。アセチレングリコール系表面調整剤は、日信化学工業株式会社等から市販される商品が容易に入手可能である。
【0051】
本発明の水系白色インクは、動的表面張力値及び静的表面張力値が上記特定した範囲内になるように表面調整剤を用いることが好ましいものの、本発明の水系白色インク中における表面調整剤の含有量を0.1〜5.0質量%と例示することができる。
【0052】
本発明の水系白色インクには、更に必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、保湿剤、湿潤分散剤、防腐剤・防かび剤、溶解助剤、酸化防止剤、金属トラップ剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0053】
本発明の水系白色インクは、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することにより調製できる。
【0054】
本発明の水系白色インクは、プリンタ等の印刷機器の金属部分(特にプリントヘッド)における腐食の発生を抑える観点から、塩基性であることが好ましく、pHが7.01〜10.0の範囲内にあることが好ましい。
なお、pHの調整には、pH調整剤を使用できるが、アミン化合物の使用が好ましく、沸点が70〜270℃であるアミン化合物の使用が更に好ましい。沸点70〜270℃のアミン化合物の具体例としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等が挙げられる。これらアミン化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明の水系白色インク中において、アミン化合物の含有量は、0.1〜2.0質量%が好ましい。
【0055】
本発明の水系白色インクは、インクジェットプリンタに用いる観点から、それぞれ独立して、25℃における粘度が3.0〜10.0mPa・sの範囲内であることが好ましい。
本明細書において、インク及びコーティング液の粘度は、レオメーター(例えばTAインスツルメンツ社製レオメーターARES)を用い、液温を25℃に調整した後に測定される。
【0056】
次に、本発明のインクセットを詳細に説明する。本発明のインクセットは、上述した本発明の水系白色インクと、水系コーティング液と、水系着色インクとを含むインクセットである。ここで、水系コーティング液は、着色インクを凝集させるための液であり、通常、水、樹脂及び有機溶剤を含み、インクジェット印刷用コーティング液であることが好ましい。また、水系着色インクは、通常、水、樹脂、有機溶剤及び着色剤を含み、インクジェット印刷用インクであることが好ましい。
なお、本明細書において「着色インク」とは、白色とは異なる色を色付けることができるインクである。本明細書においては、着色剤を0.1質量%を超える量で含む組成物を「インク」とし、着色剤を含まない又は着色剤を0.1質量%以下含む組成物を単に「液」として表現している。本明細書において「水系コーティング液」とは、主溶媒として水を含有するコーティング液である。
【0057】
本発明のインクセットにおいて、水系着色インクは、異なる色を発する複数の水系着色インクからなっていてもよく、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクの4種類のインクを少なくとも含む水系着色インクを例示することができる。
【0058】
本発明のインクセットにおいて、水系コーティング液は、例えば、表刷りの場合には水系白色インク層上で印刷が行われ、裏刷りの場合には基材上で印刷が行われる。このため、水系コーティング液は、表面寿命10msにおける25℃の動的表面張力値が26.0mN/m以上34.0mN/m以下であり、25℃における静的表面張力値が19.0mN/m以上23.0mN/m以下であることが好ましい。
【0059】
本発明のインクセットにおいて、水系着色インクは、通常、水系コーティング液層上で印刷が行われる。このため、水系着色インクは、表面寿命10msにおける25℃の動的表面張力値が38.0mN/m以上48.0mN/m以下であり、25℃における静的表面張力値が24.0mN/m以上30.0mN/m以下であることが好ましい。
【0060】
本発明のインクセットに用いる着色インク及びコーティング液は、水系白色インクと同様にいずれも水系であり、表面張力値は一般に高い傾向にあるため、有機溶剤の種類や含有量、及び/又は表面調整剤(好ましくはシリコーン系表面調整剤、より好ましくはポリエーテル変性ポリシロキサン)を含む添加剤の種類や含有量を適宜調整することで、表面張力値を調整することが重要である。着色インク及びコーティング液の場合は、特に、後述するアルカンジオール系溶剤やグリコールエーテル系溶剤の使用が動的表面張力値の調整に有効である。
【0061】
本発明のインクセットにおいて、水系着色インク及び水系コーティング液は、水系白色インクと同様に、水を含む。ここで、水系着色インク及び水系コーティング液中における水の含有量は、20〜90質量%の範囲であることを例示することができるが、好ましくは50〜90質量%、更に好ましくは60〜80質量%の範囲内である。
【0062】
本発明のインクセットにおいて、水系コーティング液は、通常、樹脂を含むが、該樹脂として、カチオンを有する水溶性ポリマーを含むことが好ましい。上記水溶性ポリマーは、カチオンを有するため、着色インクを凝集する能力を発揮することができる。これにより、印刷層の滲みの発生を抑えつつ、基材への印刷層の付着性を向上でき、高速印刷が可能になる。また、カチオンであれば、pHが塩基性領域にある水系コーティング液中に存在していても、着色インクを凝集する能力を発揮することができる。但し、上記水溶性ポリマーは、着色インクを凝集させる能力が高く、着色インクの凝集の発生を著しく早く起こし、印刷層の光沢が低下する場合もあるため、後述する自己分散性顔料との組み合わせが好ましい。また、カチオンを有する水溶性ポリマーを用いて調製した水系コーティング液は、長期保存をした際にも粘度やpHが保たれ、優れた保存安定性が得られる。
なお、本明細書において、水溶性ポリマーとは、水、又は水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解するポリマーを意味する。
【0063】
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、第四級アンモニウムカチオン(カチオン化された窒素原子)を有する水溶性ポリマーであることが好ましい。第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーを用いることで、印刷層の滲みの発生がより一層抑えられるとともに、印刷層の耐擦過性、水系コーティング液の保存安定性が向上する。
【0064】
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、重量平均分子量が1,000〜50,000であることが好ましく、2,500〜45,000であることがより好ましく、5,000〜40,000であることが更に好ましい。上記水溶性ポリマーの重量平均分子量を1,000以上とすることで、カチオンを有する水溶性ポリマーが着色インクを凝集させる力が高くなり、印刷層の滲みの抑制効果及び付着性の改善効果が向上できる。一方、重量平均分子量が50,000を超えると、吐出安定性を低下させる場合がある。
【0065】
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、主鎖にカチオンを有することが好ましい。このような構造を有する水溶性ポリマーを用いると、水系着色インクが水系コーティング液に着弾した際に、水系着色インクの界面のみが瞬時に凝集し、水系着色インク同士が混合することなく着弾した位置で定着するため、高速印刷を行う場合において、より好ましい。
【0066】
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、カチオン度の異なる2種類以上の水溶性ポリマーであることが好ましい。カチオン度が異なる複数の水溶性ポリマーを用いることで、ドット径の大きさ、滲みの調整が容易となる。
具体的に、上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、pH7.1でのカチオン度が5.5〜7.5meq/gである水溶性ポリマーと、pH7.1でのカチオン度が2.0〜5.0meq/gである水溶性ポリマーとを含むことが好ましく、pH7.1でのカチオン度が6.0〜7.0meq/gである水溶性ポリマーと、pH7.1でのカチオン度が2.5〜4.5meq/gである水溶性ポリマーとを含むことが更に好ましい。上記した2種類のカチオン度の範囲を有する水溶性ポリマーの割合は、カチオン度の範囲が高い水溶性ポリマー:カチオン度の範囲が低い水溶性ポリマーの質量比が1:1〜20:1の範囲内であることが好ましく、7:3〜10:1の範囲内であることがより好ましい。
なお、本明細書において、カチオン度は、ポリビニル硫酸カリウム試薬を用いたコロイド滴定により求めることができる。詳しい手順は以下のとおりである。
コニカルビーカーに脱イオン水90mLを取り、試料(乾燥品換算)の500ppm水溶液を10mL加えてアミン水溶液でpH7.1とし、約1分間攪拌する。次にトルイジンブルー指示薬を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム試薬(N/400PVSK)で滴定する。滴定速度は2mL/分とし、検水が青から赤紫色に変色して10秒間以上保持する時点を終点とする。カチオン度(meq/g)の計算式は次のとおりである。
カチオン度=(N/400PVSK滴定量)×(N/400PVSKの力価)/2
【0067】
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは市販品を使用することができる。なかでも、第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーが好ましいが、塩基性でも安定に存在できる観点から、例えば、DK6810、DK6851、DK6864、WS4030、WS4027、WS4052、CA6018(以上星光PMC社製)、ハーサイズCP−300、CP−800(以上ハリマ化成社製)、PAS−H−1L、PAS−H−5L、PAS−2401、PAS−A−1(以上ニットボーメディカル社製)、カチオマスターPDT−2、PD−7、PD−30(以上四日市合成社製)という名で市販されているエピクロロヒドリンとアルキルアミンの反応物、ポリアミン樹脂、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂等が挙げられる。なお、上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
上記水系コーティング液中に含まれる樹脂に占める上記カチオンを有する水溶性ポリマーの割合は、50質量%以上であることが好ましいが、特に、凝集作用を適切に制御する点から、上記水系コーティング液中に含まれる樹脂に占める上記第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの割合が50質量%以上であることが好ましい。
【0069】
なお、上記水系コーティング液に使用できる他の樹脂としては、上記カチオンを有する水溶性ポリマー以外の、インク業界において通常使用されている樹脂を用いることができる。例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本明細書において「樹脂」とは主としてバインダーに分類される樹脂であり、後述する増粘剤に分類されるポリマーは除外される。
【0070】
上記水系コーティング液中において、樹脂の含有量は、0.005〜15質量%であることを例示することができるが、0.005〜10質量%であることが好ましく、0.005〜5質量%であることがより好ましく、0.005〜3質量%であることが更に好ましく、0.005〜2質量%であることが特に好ましい。
【0071】
本発明のインクセットにおいて、水系着色インクは樹脂を含む。ここで、水系着色インクに使用できる樹脂については、特に限定されるものではなく、例えば、本発明の水系白色インクにおける樹脂の説明を適用することができる。従って、水系着色インクに使用できる好ましい樹脂の種類や含有量は、本発明の水系白色インクに使用できる樹脂の説明において記載した通りである。
【0072】
また、本発明のインクセットにおいては、水系着色インクに含まれる自己分散性樹脂の酸価と、水系コーティング液に含まれるカチオンを有する水溶性ポリマーのカチオン度を調整することで、水系着色インクのドット径を大きくし、かつ、滲みが発生しない、光沢に優れた印刷層を形成させることができる。ここで、上記自己分散性樹脂の酸価(C)とカチオン性ポリマーのpH7.1でのカチオン度(meq/g)(D)の比(C:D)は、10:1〜1:2の範囲内であることが好ましく、6:1〜1.2:3の範囲内であることがより好ましく、3:1〜1:1の範囲内であることが更に好ましい。
【0073】
本発明のインクセットにおいて、水系着色インクは、着色剤を含む。ここで、水系着色インクに使用できる着色剤は、特に限定されず、インク業界において着色剤として通常使用されている有機顔料、無機顔料等の顔料を用いることができるが、自己分散性顔料を含むことが好ましい。自己分散性顔料とは、顔料分散剤を使用しなくても、インク中で分散状態を保つことができる顔料であり、通常、親水性に優れた官能基を表面に付与することで得られる。本発明者は、上述のカチオンを有する水溶性ポリマー、特には第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーと自己分散性顔料の組み合わせであれば、凝集の発生が早すぎることで印刷層の表面に凹凸が形成されることを防ぐことができ、それにより印刷層の光沢の低下を防ぐことができることを見出した。
【0074】
本発明において、上記自己分散性顔料としては、カルボキシルイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、水酸化物イオン等のアニオンが表面に直接結合している顔料が好ましい。このようなアニオン型の自己分散性顔料を用いることにより分散剤を添加せずに顔料をインク中で安定に分散させることができ、より鮮明な画像を印刷することができる。これらアニオン型の自己分散性顔料は市販品を好適に使用できる。
【0075】
上記顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、42、53、55、74、83、86、93、109、110、117、120、122、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、166、168、180、181、184、185、213;ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71;ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、101、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254;ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50;ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、27、28、29、30、60、64、80;ピグメントグリーン7、36;ピグメントブラウン23、25、26;及びピグメントブラック1、7、26、27、28、ピグメントホワイト6等が挙げられる。なお、これら顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアンインクに使用できる顔料としては、例えば、ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、27、28、29、30、60、64、80等が挙げられ、
マゼンタインクに使用できる顔料としては、例えば、ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、101、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254等が挙げられ、
イエローインクに使用できる顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、42、53、55、74、83、86、93、109、110、117、120、122、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、166、168、180、181、184、185、213等が挙げられ、
ブラックインクに使用できる顔料としては、例えば、ピグメントブラック1、7、26、27、28等が挙げられる。
その他、ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71;ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50;ピグメントグリーン7、36;ピグメントブラウン23、25、26;ピグメントホワイト6等の顔料も、上記基本色インクに用いることができるとともに、オレンジインク、バイオレットインク、グリーンインク、レッドインク等の特殊色インクとして用いることもできる。
【0076】
上記水系着色インク中において、顔料の含有量は、使用する顔料の種類等により任意に決定できるが、0.5〜10質量%であることが好ましい。
【0077】
本発明のインクセットにおいて、水系着色インク及び水系コーティング液は、有機溶剤を含む。ここで、水系着色インク及び水系コーティング液に使用できる有機溶剤は、特に限定されるものではなく、インク業界において通常使用されている有機溶剤を用いることができる。なお、上記水系着色インク及び水系コーティング液中において、有機溶剤の含有量は、5〜49質量%であることを例示することができるが、好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜35質量%、特に好ましくは15〜35質量%の低い範囲内で調整することもできる。これによって、より環境への負荷の少ない水系着色インク及び水系コーティング液を提供することができるとともに、印刷層内に有機溶剤が残りにくくなることから、耐擦過性等の膜物性が向上しやすくなる。
【0078】
上記水系着色インク及び水系コーティング液に使用できる有機溶剤は、水溶性有機溶剤が好ましく、該水溶性有機溶剤は、インク及びコーティング液の吐出安定性、濡れ性及び保存安定性をより良好にする観点から、アルカンジオール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、三〜五員環のラクトン系溶剤、及びアミド系溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種類を含むことが好ましい。アルカンジオール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、三〜五員環のラクトン系溶剤及びアミド系溶剤の具体例については、本発明の水系白色インクに使用できる水溶性有機溶剤の説明において記載した通りである。
【0079】
また、本発明のインクセットにおいては、着色インク及びコーティング液の動的表面張力値を調整する観点から、アルカンジオール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種類(好ましくは少なくとも2種類)を含むことが好ましく、特にコーティング液の動的表面張力値を調整する観点から、アルカンジオール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤の両方を含むことが好ましい。ここで、アルカンジオール系溶剤とグリコールエーテル系溶剤の両方を含む場合、アルカンジオール系溶剤(E)とグリコールエーテル系溶剤(F)の質量比(E:F)は8:1〜1:8の範囲内であることが好ましく、5:1〜1:5の範囲内であることが好ましい。
【0080】
本発明のインクセットにおいて、水系コーティング液は、吐出安定性を向上させる観点から、増粘剤を含むことが好ましい。増粘剤を用いることで、顔料を含まない又は顔料を0.1質量%以下含むコーティング液や、更には樹脂の含有量も少ないコーティング液であっても、吐出安定性に優れるコーティング液が調製できることから、有機溶剤の配合量も削減することができるため、環境への負荷の少ない水系コーティング液を提供することができる。上記水系コーティング液中において、増粘剤の含有量は、0.01質量%〜2質量%であることが好ましく、0.10質量%〜1質量%であることが更に好ましく、0.20質量%〜0.80質量%であることが一層好ましい。
【0081】
上記水系コーティング液をインクジェットプリンタに用いる場合、増粘剤は、チクソ性の付与効果が低いもの又はチクソ性の付与効果がないものが好ましく、このような観点から、水系コーティング液に用いる増粘剤は、非イオン性の水溶性増粘剤を含むものが好ましく、該非イオン性の水溶性増粘剤としては、ウレタンポリマーが好ましく、ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーが更に好ましい。増粘剤に占める非イオン性の水溶性増粘剤の割合は、50質量%以上であることが好ましい。
なお、本発明において、水溶性増粘剤とは、水、又は水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解する増粘剤を意味する。
増粘剤は市販品を使用することができるが、ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーとしては、例えば、アデカノール UH−530、UH−541VF、UH−438、UH−450VF(以上株式会社ADEKA製)、SNシックナー 612、619、612NC、621N、621TF、623N、625N(以上サンノプコ社製)等が挙げられる。なお、増粘剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
上記水系着色インク及び水系コーティング液には、更に必要に応じて、pH調整剤、表面調整剤、消泡剤、保湿剤、湿潤分散剤、防腐剤・防かび剤、溶解助剤、酸化防止剤、金属トラップ剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0083】
上記水系着色インク及び水系コーティング液は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することにより調製できる。
なお、上記水系コーティング液は、水を50質量%〜90質量%、有機溶剤を5質量%〜35質量%、樹脂を0.005質量%〜5質量%の範囲内で含むことが好ましい。このように樹脂量が少ない水系コーティング液は、乾燥が早いため、凝集後の印刷スジの発生を抑える観点から好ましい。
【0084】
上記水系着色インク及び水系コーティング液は、水系白色インクと同様の理由から、塩基性であることが好ましく、pHが7.01〜10.0の範囲内にあることが好ましい。なお、水系着色インク及び水系コーティング液のpHの調整については、本発明の水系白色インクの説明において記載した通りである。
【0085】
本発明のインクセットにおいて、水系着色インク及び水系コーティング液は、インクジェットプリンタに用いる観点から、それぞれ独立して、25℃における粘度が3.0〜10.0mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0086】
本発明のインクセットは、種々のインクジェットプリンタに使用できる。このようなインクジェットプリンタは、プリントヘッドを備えており、該プリントヘッドのノズルから、インクセットを構成するインクやコーティング液を滴状で吐出させる。
【0087】
次に、本発明の印刷方法を詳細に説明する。本発明の印刷方法は、上述した本発明のインクセットを備えたインクジェットプリンタによって印刷層を基材上に形成することを特徴とする。また、本発明の印刷方法は、水系白色インク、水系コーティング液および水系着色インクの印刷をこの順番で行い、基材上に印刷層を形成する工程、または水系コーティング液、水系着色インクおよび水系白色インクの印刷をこの順番で行い、基材上に印刷層を形成する工程を含む。
【0088】
ここで、水系白色インク、水系コーティング液および水系着色インクの印刷をこの順番で行い、基材上に印刷層を形成する工程(以下、第1工程ともいう)について詳細に説明する。本発明の印刷方法において、第1工程とは、水系白色インクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を基材上に着弾させる工程と、水系コーティング液をプリントヘッドから吐出させて、コーティング液滴を、基材上に着弾した白色インク層上に着弾させる工程と、水系着色インクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を、白色インク上に着弾したコーティング液層上に着弾させることにより印刷層を形成させる工程とを含むものであり、透明な基材に対して表刷りを行う場合に好ましい印刷工程である。
【0089】
同様に、水系コーティング液、水系着色インクおよび水系白色インクの印刷をこの順番で行い、基材上に印刷層を形成する工程(以下、第2工程ともいう)についても詳細に説明する。本発明の印刷方法において、第2工程とは、水系コーティング液をプリントヘッドから吐出させて、コーティング液滴を基材上に着弾させる工程と、水系着色インクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を、基材上に着弾したコーティング液層上に着弾させる工程と、水系白色インクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を、コーティング液上に着弾した着色インク層上に着弾させることにより印刷層を形成させる工程とを含むものであり、透明な基材に対して裏刷りを行う場合に好ましい印刷工程である。
【0090】
上記印刷方法において、基材は、特に限定されるものではなく、本発明の印刷方法は、例えば、鉄鋼、亜鉛めっき鋼(例えばトタン板)、錫めっき鋼(例えばブリキ板)、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属基材や、ガラス、セラミック等の無機系基材、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン等のプラスチック基材のような、インク吸収性のない基材(非吸収性基材)や、コート紙、アート紙、キャスト紙、微塗工紙等のような、表面コートによってインクやコーティング液を吸収し難い基材(難吸収性基材)への印刷にも適している。なお、他の基材としては、例えば、上質紙、合成紙、インクジェット用紙等の紙基材、木材、石膏、珪酸カルシウム、コンクリート、セメント、モルタル、スレート等の無機系基材等が挙げられる。なお、基材は、印刷層との付着性を向上させるため、プライマー処理やコロナ処理等の一般的な表面処理が施されていてもよい。
【0091】
本発明の印刷方法によれば、表刷りの際はもちろんのこと、裏刷りの際にも印刷スジ現象及び液寄り現象の発生を抑制できることから、透明なプラスチックフィルム、特には軟包装やラベル用のプラスチックフィルムに適用することが好ましい。
【0092】
本発明の印刷方法において、基材の温度は30〜45℃であることが好ましい。これにより、白色インクや水系コーティング液が基材上に均一に濡れ広がることができる。なお、基材の温度とは、白色インクやコーティング液滴が着弾する基材表面の温度である。
【0093】
上記印刷方法においては、インクやコーティング液の乾燥を待たずに(即ち、インクやコーティング液の乾燥を行わずに)次のインクやコーティング液の印刷を行うことができる。なお、上記印刷方法において、第1工程や第2工程の直後(即ち、水や有機溶剤が蒸発する前)の水系コーティング液、水系着色インク及び水系白色インクの総吐出液の厚みは、合計して、1〜20μmの範囲内にあることが好ましい。
【0094】
本発明の印刷方法において、水系着色インクが複数の水系着色インクからなる場合、コーティング液層上に最初に着弾させる水系着色インクは、複数の水系着色インクの中で表面寿命10msにおける25℃での動的表面張力が最も低いことが好ましい。コーティング液層上に最初に着弾させる水系着色インクは、コーティング液による着色インクの凝集作用の影響を最も強く受ける。このため、動的表面張力の最も低い水系着色インクをコーティング液層上に最初に着弾させることで、コーティング液による着色インクの凝集作用を効果的に発揮することができる。
【0095】
本発明の印刷方法においては、基材上に形成される印刷層を熱風によって乾燥させる工程を更に含むことが好ましい。なお、乾燥は、任意のタイミングで行うことができ、例えば、水系白色インク、水系コーティング液及び水系着色インクの印刷がすべて完了してから乾燥を行ってもよいし、その都度行うこともできる。熱風(通常、空気を利用)を印刷層に当てて乾燥を行うことで、印刷層中に含まれる樹脂を基材上に融着させ、強固な膜を形成することができ、結果として、堅牢性に優れる印刷物を提供することが可能である。印刷層中に含まれる樹脂を基材上に融着させる観点から、熱風の温度は70〜130℃であることが好ましく、80〜110℃であることが更に好ましい。また、乾燥時間は2秒以上20秒以内であることが好ましく、5秒以上15秒以内であることが更に好ましい。乾燥手段は、特に限定されるものではないが、送風機能を備えた乾燥機が好ましい。風量は、1.0m
3/min以上であることが好ましく、1.5〜5.0m
3/minであることが更に好ましい。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0097】
<白色顔料を含む水系白色インク>
表1〜2に示す配合処方に従い、白色顔料、消泡剤、水溶性溶剤、湿潤分散剤、イオン交換水を公知の方法により分散した水系着色分散液に、樹脂ならびに表面調整剤を加え、白色顔料を含む水系白色インク1〜23(ただし、白色インク8はクリアインクである)を調製した。なお、各水系白色インクの静的表面張力(25℃)、表面寿命10ms時の動的表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表1〜2に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
上記表1〜2に記載される配合剤は、下記の通りである。
*1 白色顔料としては、以下を用いた。
・JR−600A(Al処理ルチル型酸化チタン顔料、テイカ社製、平均粒子径(D50)250nm)
・A−220(Al処理ルチル型酸化チタン顔料、石原産業社製、平均粒子径(D50)160nm)
・JR−301(Al処理ルチル型酸化チタン顔料、テイカ社製、平均粒子径(D50)300nm)
・TTO−55(A)(Al処理ルチル型酸化チタン顔料、石原産業社製、平均粒子径(D50)55nm)
*2 消泡剤(SNデフォーマー1312、サンノプコ社製)
*3 湿潤分散剤(BYK190、分散剤含有量40質量%、BYK社製)
*4 樹脂分散液Aとしては以下を用いた。
NEOREZ R−9621(DSM Coating Resins製、ポリエステル基含有自己分散性ウレタン樹脂、平均粒子径(D50)50nm、酸価18、樹脂含有量38質量%)
*5 樹脂分散液Bとしては以下を用いた。
NEOREZ R−967(DSM Coating Resins製、ポリエーテル基含有自己分散性ウレタン樹脂、平均粒子径(D50)60nm、酸価15、樹脂含有量40質量%)
*6 樹脂分散液Cとしては以下を用いた。
ネオステッカー HA−560(日華化学製、ポリカーボネート基含有自己分散性ウレタン樹脂、平均粒子径(D50)30nm、酸価14、樹脂含有量35質量%)
*7 樹脂分散液Dとしては以下を用いた。
AE986B(イーテック社製、自己分散性アクリル樹脂、平均粒子径(D50)60nm、酸価15、樹脂含有量35質量%)
*8 SAG008(日信化学工業社製、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、界面活性剤含有量100質量%、HLB値 7.0、表面調整剤)
*9 WET280(EVONIK社製、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、界面活性剤含有量100質量%、HLB値 3.5、表面調整剤)
*10 SAG502A(日信化学工業社製、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、界面活性剤含有量100質量%、HLB値 11.0、表面調整剤)
*11 オルフィンD−10PG(日信化学工業社製、アセチレングリコール系界面活性剤、界面活性剤含有量50質量%、HLB値 4.0、表面調整剤)
*12 サーフィノール107L(日信化学工業社製、アセチレングリコール系界面活性剤、界面活性剤含有量50質量%、HLB値 4.0、表面調整剤)
【0101】
<水系コーティング液の調製例>
表3に示す配合処方に従い、樹脂、アミン化合物、水溶性溶剤、表面調整剤及びイオン交換水を公知の方法により混合し、水系コーティング液1〜3を調製した。なお、各水系コーティング液のpH、静的表面張力(25℃)、表面寿命10ms時の動的表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表3に示す。
【0102】
下記表3に記載される配合剤は、下記の通りである。
*13 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Aとしては以下を用いた。
カチオマスター PE−30(四日市合成製、ジメチルアミン・エチレンジアミン・エピクロロヒドリン系ポリマー樹脂、樹脂含有量50質量%、重量平均分子量(Mw):9000、pH7.1でのカチオン度6.5meq/g)
*14 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Bとしては以下を用いた。
DK6851(星光PMC社製、ポリアミン樹脂、樹脂含有量70.0質量%、pH7.1でのカチオン度6.8meq/g)
*15 第一級カチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Cとしては以下を用いた。
PAA−SA(ニットボーメディカル製、アリルアミンアミド硫酸塩重合体樹脂、樹脂含有量20質量%、Mw:12,000、pH7.1でのカチオン度5.8meq/g)
*16 WET270(EVONIK社製、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーンオイル含有量100質量%、表面調整剤)
【0103】
【表3】
【0104】
<自己分散性顔料を含む水系着色インクの調製例>
表4に示す配合処方に従い、自己分散性顔料、樹脂、水溶性溶剤、表面調整剤及びイオン交換水を公知の方法により混合し、自己分散性顔料を含む水系着色インクを調製した。なお、各水系着色インクの静的表面張力(25℃)、表面寿命10ms時の動的表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表4に示す。
【0105】
【表4】
【0106】
上記表4に記載される配合剤は、下記の通りである。既に説明した配合剤については省略する。
*17 自己分散性顔料分散液としては、以下を用いた。
・CAB−O―JET 250C
(キャボット社製、シアンの自己分散性顔料水分散液、顔料含有量10質量%)
・CAB−O―JET―465M
(キャボット社製、マゼンタの自己分散性顔料水分散液、顔料含有量15質量%)
・CAB−O―JET 270Y
(キャボット社製、イエローの自己分散性顔料水分散液、顔料含有量10質量%)
・CAB−O―JET 300K
(キャボット社製、ブラックの自己分散性顔料水分散液、顔料含有量15質量%)
【0107】
<非自己分散型顔料を含む水系着色インク>
表5に示す配合処方に従い、非自己分散型顔料、消泡剤、水溶性溶剤、湿潤分散剤、イオン交換水を公知の方法により分散した水系着色分散液に、樹脂ならびに表面調整剤を加え、非自己分散型顔料を含む水系着色インクを調製した。なお、各水系着色インクの静的表面張力(25℃)、表面寿命10ms時の動的表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表5に示す。
【0108】
【表5】
【0109】
上記表5に記載される配合剤は、下記の通りである。既に説明した配合剤については省略する。
*18 非自己分散型顔料としては、以下を用いた。
・FASTOGEN Blue FA5380(フタロシアニンブルー、DIC社製シアン色顔料)
・シンカシャマゼンタRT(ジクロロキナクリドン、BASF社製マゼンタ色顔料)
・Hostaperm Yellow H5G(キノキサリンジオン、クラリアント社製イエロー色顔料)
・Nerox−1000(カーボンブラック、オリオンエンジニアリドカーボン社製、ブラック色顔料)
*19 湿潤分散剤(ノイゲンEA−157、第一工業製薬社製)
【0110】
<表刷り印刷 印刷スジと液寄り>
表6〜7の実施例1〜50及び表8の比較例1〜10に示されるインクセットを用意して表刷り印刷の評価を行った。
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系白色インク滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で2つのヘッドからシングルパス吐出し、各100%のベタ画像を透明PETシート表面に印刷した。その後、80℃の温度で5分間乾燥を行った。その後、水系コーティング液滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、70%のベタ画像を白色インク層上に印刷し、その後、水系コーティング液を乾燥させずに、着弾した水系コーティング液上にブラックインクを除いたシアンインク、マゼンタインク、イエローインクのインク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で表5〜7の着色インクセットの順番に従いシングルパス吐出し着弾させ、各インクの印刷濃度80%、合計印刷濃度240%のベタ印刷を行い、80℃の温度で5分間乾燥を行った。目視により下記の評価基準で評価した。ここで水系白色インク及び水系コーティングインク、水系着色インクの解像度は縦×横=600×600dpiと設定した。評価基準は以下の通りである。なお、使用したインクセットの構成と評価結果を表6〜8に示す。
○:印刷面にスジ及び液寄りが見られない。
△:印刷面にスジは見られるが液寄りは発生せず、ベタ印刷として問題ない。
×:印刷面にスジ及び液寄りが見られ、ベタ印刷も埋まっていない。
−:印刷されているが、白色の濃度が薄すぎるため、スジや液寄りの目視での確認が難しい。
【0111】
<裏刷り印刷 印刷スジと液寄り>
表6〜7の実施例1〜50及び表8の比較例1〜10に示されるインクセットを用意して裏刷り印刷の評価を行った。
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系コーティング液滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、70%のベタ画像を透明PETシート表面に印刷し、その後、水系コーティング液を乾燥させずに、着弾した該水系コーティング液上にブラックインクを除いたシアンインク、マゼンタインク、イエローインクのインク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で表5〜7の着色インクセットの順番に従いシングルパス吐出し着弾させ、各インクの印刷濃度80%、合計印刷濃度240%のベタ印刷を行った。その後、80℃の温度で5分間乾燥を行ったのち、水系白色インク滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で2つのヘッドからシングルパス吐出し、各100%のベタ画像を水系コーティング液及び水系着色インク上に印刷した。その後、80℃の温度で5分間乾燥を行い、目視により下記の評価基準で評価した。ここで水系コーティング液及び水系着色インク、水系白色インクの解像度は縦×横=600×600dpiと設定した。評価基準は以下の通りである。なお、使用したインクセットの構成と評価結果を表6〜8に示す。
○:印刷面にスジ及び液寄りが見られない。
△:印刷面にスジは見られるが液寄りは発生せず、ベタ印刷として問題ない。
×:印刷面にスジ及び液寄りが見られ、ベタ印刷も埋まっていない。
−:印刷されているが、白色の濃度が薄すぎるため、スジや液寄りの目視での確認が難しい。
【0112】
<表刷り印刷 密着性>
表6〜7の実施例1〜50及び表8の比較例1〜10に示されるインクセットを用意して表刷り印刷の評価を行った。
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系白色インク滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で2つのヘッドからシングルパス吐出し、各100%のベタ画像を透明PETシート表面に印刷した。印刷後、80℃にて5分間乾燥させた後、水系コーティング液滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、70%のベタ画像を白色インク層上に印刷し、その後、水系コーティング液を乾燥させずに、着弾した該水系コーティング液上にブラックインクを除いたシアンインク、マゼンタインク、イエローインクのインク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で表5〜7の着色インクセットの順番に従いシングルパス吐出し着弾させ、各インクの印刷濃度80%、合計印刷濃度240%のベタ印刷を行った。その後、80℃の温度で5分間乾燥を行った。印刷部分に幅24mmのセロテープ(登録商標、NICHIBAN社製)を密着させ、その後、テープを剥がし、剥離部分の状態を目視により下記の評価基準で評価した。ここで水系白色インク及び水系コーティングインク、水系着色インクの解像度は縦×横=600×600dpiと設定した。評価基準は以下の通りである。なお、使用したインクセットの構成と評価結果を表6〜8に示す。
○:剥離しなかった
△:テープを貼った箇所の50%未満が剥離した。
×:テープを貼った箇所の50%以上、あるいは全面が剥離した。
【0113】
<裏刷り印刷 密着性>
表6〜7の実施例1〜50及び表8の比較例1〜10に示されるインクセットを用意して裏刷り印刷の評価を行った。
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系コーティング液滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、70%のベタ画像を透明PETシート表面に印刷し、その後、水系コーティング液を乾燥させずに、着弾した該水系コーティング液上にブラックインクを除いたシアンインク、マゼンタインク、イエローインクのインク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で表5〜7の着色インクセットの順番に従いシングルパス吐出し着弾させ、各インクの印刷濃度80%、合計印刷濃度240%のベタ印刷を行った。その後、80℃の温度で5分間乾燥を行ったのち、水系白色インク滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で2つのヘッドからシングルパス吐出し、各100%のベタ画像を水系コーティング液及び水系着色インク上に印刷し、80℃にて5分間乾燥させた。印刷部分に幅24mmのセロテープ(登録商標、NICHIBAN社製)を密着させ、その後、テープを剥がし、剥離部分の状態を目視により下記の評価基準で評価した。ここで水系コーティング液及び水系着色インク、水系白色インクの解像度は縦×横=600×600dpiと設定した。評価基準は以下の通りである。なお、使用したインクセットの構成と評価結果を表6〜8に示す。
○:剥離しなかった
△:テープを貼った箇所の50%未満が剥離した。
×:テープを貼った箇所の50%以上、あるいは全面が剥離した。
【0114】
<耐擦過性>
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系白色インク滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で2つのヘッドからシングルパス吐出し、各100%のベタ画像を透明PETシート表面に印刷した。印刷後、80℃にて5分間乾燥させた後、印刷部分に綿棒(商標登録、白十字社製)で5往復擦過を行い、目視により下記の評価基準で評価した。なお、評価結果を表6〜8に示す。
○:綿棒にインクが付かない
△:綿棒にインクが付くが、基材からインクが剥れない
×:綿棒にインクが付き、かつ基材からインクが剥れる
【0115】
<吐出率>
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系白色インクをプリンターに充填した後、透明OHPシート上に着弾させ、装置に読み込まれているチェックパターンを印刷した(工程A)。次いで、水系白色インク滴を吐出し、25m
2相当の12pL100%ベタ印刷を行った。その後、水系白色インク滴を透明OHPシート上に着弾させ、装置に読み込まれている工程Aと同一のチェックパターンを印刷した(工程B)。工程A及び工程Bにおいてチェックパターンが印刷されたそれぞれのOHPシートを目視で確認し、チェックパターンから抜けているピンの割合を評価した。評価基準は以下の通りである。なお、評価結果を表6〜8に示す。
○・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が5%未満である。
△・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が5%以上〜30%未満である。
×・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が30%以上である。
【0116】
<隠ぺい率>
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系白色インクを12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で2つのヘッドからシングルパス吐出し、各100%のベタ画像を透明PETシート表面に印刷した。その後、80℃の温度で5分間乾燥を行い、隠ぺい試験紙(モトフジ社製)と色彩色差計(コニカミノルタ社製 CR−400)を用いて黒色下での三刺激値Y
Bと白色下での三刺激値Y
Wをそれぞれ測定、Y
B/Y
Wを百分率で計算を行い、隠ぺい率を算出した。その値を基に下記の評価基準で評価した。ここで水系白色インクの解像度は縦×横=600×600dpiと設定した。評価基準は以下の通りである。なお、評価結果を表6〜8に示す。
○:隠ぺい率が50.0%以上
△:隠ぺい率が40.0%を超え50.0%未満
×:隠ぺい率が40.0%以下
【0117】
<保存安定性>
水系白色インクを110ccのガラス瓶に100gとり、60℃で4週間保存を行い、保存前と保存後の粘度や表面張力、比重、pHの測定を行った。その結果について比較を行った。評価基準は以下の通りである。なお、評価結果を表6〜8に示す。
○:すべての項目に対し変化率10%以内
△:いずれか1つの項目で変化率が10%を超え20%未満
×:いずれか1つの項目で変化率20%以上
【0118】
【表6】
【0119】
【表7】
【0120】
【表8】