【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(ポリオレフィン系樹脂のMFR)
メルトマスフローレイト(MFR)は、東洋精機製作所社製のセミオートメルトインデクサー2Aを用い、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載のb)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法により測定した。測定条件は、試料3〜8g、予熱270秒、ロードホールド30秒、試験温度190℃、試験荷重21.18N、ピストン移動距離(インターバル)25mmとした。試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトマスフローレイト(g/10分)の値とした。
【0054】
(ポリオレフィン系樹脂の融点)
融点は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載の方法により測定した。
すなわち、示差走査熱量計装置DSC6220型(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用い、アルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんした。次いで、窒素ガス流量20mL/分のもと、30℃から−40℃まで降温した後10分間保持し、−40℃から220℃まで昇温(1st Heating)、10分間保持後220℃から−40℃まで降温(Cooling)、10分間保持後−40℃から220℃まで昇温(2nd Heating)した時のDSC曲線を得た。なお、全ての昇温・降温は速度10℃/分で行い、基準物質としてアルミナを用いた。
装置付属の解析ソフトを用いて、2nd Heating過程にみられる融解ピークのトップの温度を読みとった値を融点とした。
【0055】
(ポリオレフィン系樹脂の軟化温度)
JIS K7196:1991「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」に記載の方法に準拠し測定した。
すなわち、試料を180℃で5分間熱プレスして、厚み1mm、直径10mmの円盤プレート状試験片を作製した。熱・応力・歪み測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「EXSTRAR TMA/SS6100」)を用い、窒素雰囲気下で針入試験モード(針の先端 φ1mm、石英製プローブ)、荷重500mNで、試験片に針を当てて、30℃から昇温速度5℃/分で温度を上げていきTMA曲線を得た。得られたTMA曲線を装置付属の解析ソフトで石英係数設定による補正を行い、TMA曲線の圧子(針)が侵入を始めるよりも低温側に認められる直線部分を高温側に延長し、侵入速度が最大となる部分の接線の低温側への延長との交点を針入温度とし、その針入温度を軟化温度(℃)とした。
【0056】
(改質ポリオレフィン系樹脂粒子の吸光度比(D1260/D1600))
(a)表面の吸光度比(D1260/D1600)を次の要領で測定した。
なお、赤外吸収スペクトルから得られる各吸光度は、改質ポリオレフィン系樹脂粒子に含まれる各樹脂成分の振動に由来するピークの高さとした。
無作為に選択した10個の粒子について、赤外分光分析ATR測定法により粒子断面分析を行って赤外吸収スペクトルを得た。この分析では、試料測定面から数μm(1μm前後)までの深さの範囲の赤外吸収スペクトルが得られた。
各赤外吸収スペクトルから個別の吸光度比(D1260/D1600)を算出し、それらの相加平均を吸光度比とした。
吸光度D1260およびD1600は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社から商品名「Nicolet iS5 FT−IR分光装置」で販売されている測定装置と、ATRアクセサリとして、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製iS5 分光光度計用 iD5 ATRアクセサリを用いて次の条件で測定した。
【0057】
(1)測定条件
高屈折率結晶種:Dia(ダイヤモンド)
入射角:42°±1°
測定領域:4000cm
−1〜675cm
−1
測定深度の端数依存性:補正せず
反射回数:1回
検出器:DTGS KBr
分解能:4cm
−1
積算回数:16回
その他:試料と接触させずに赤外線吸収スペクトルを下記の条件で測定し、測定されたスペクトルをバックグラウンドとした。試料の測定時には、バックグラウンドが測定スペクトルに関与しないように、測定データを処理した。ATR法では、試料と高屈折率結晶の密着度合によって、赤外吸収スペクトルの強度が変化するため、ATRアクセサリにて掛けられる最大荷重を掛けて密着度合をほぼ均一にして測定を行った。
【0058】
以上の条件で得られた赤外線吸収スペクトルについて、次のようにピーク処理をしてそれぞれの吸光度を求めた。
赤外吸収スペクトルから得られる1260cm
−1での吸光度D1260は、シリコン系重合体に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度とした。この吸光度の測定では、1260cm
−1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離は実施しなかった。吸光度D1260は、
図1の様に波数1260cm
−1±5cm
−1での最大吸収位置をピークトップとし、ピークトップから波数1200cm
−1までの領域内での最低吸収位置Aを決定させ、決定した位置Aから1290cm
−1付近に赤外吸収スペクトルと交差しないが接するように直線を引き(接点の位置を位置Bとする)、その直線をベースラインBLとして波数1260cm
−1±5cm
−1の領域での赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースライン吸光度)の最大値とした。
【0059】
また、赤外吸収スペクトルから得られる1600cm
−1での吸光度D1600は、ポリスチレンに由来する吸収スペクトルに対応する吸光度とした。この吸光度の測定では、1600cm
−1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しなかった。吸光度D1600は、
図2の様に赤外吸収スペクトル曲線における波数1560cm
−1±5cm
−1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数1625cm
−1±10cm
−1での最低吸収位置とを結ぶ直線をベースラインBLとして、波数1600cm
−1±5cm
−1の領域での赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースライン吸光度)の最大値とした。
【0060】
吸光度比からポリオレフィン系樹脂とシリコン系重合体との組成割合を求める方法としては、ポリオレフィン系樹脂とシリコン系重合体とを所定の組成割合に均一に混合してなる複数種類の標準試料を作製し、各標準試料についてATR法赤外分光分析により粒子表面分析を行なって赤外線吸収スペクトルを得た。得られた赤外吸収スペクトルのそれぞれから吸光度比を算出した。そして、縦軸に組成割合(標準試料中のシリコン系重合体比率(質量%))を、横軸に吸光度比(D1260/D1600)をとることで、検量線を描いた。この検量線に基づいて、改質ポリオレフィン系樹脂粒子の吸光度比から、ポリオレフィン系樹脂とシリコン系共重体との組成割合を求めた。
【0061】
なお、前記検量線は、下記の式で近似した。
Y=5.352X
2
式中、X
2=(D1260/D1600)、Y=ポリオレフィン系樹脂量(%)
【0062】
(b)中心部の吸光度比(D1260/D1600)を次の要領で測定した。
(測定試料の作製)
無作為に選択した10個の粒子をエポキシ樹脂台座に固定した。次いで、粒子をウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製、LEICA ULTRACUT UCT)を用いてダイヤモンドナイフによって、ほぼ中心を通って約10μm厚みにスライスすることで、スライスサンプルを得た。得られたスライスサンプルを2枚のフッ化バリウム結晶(ピュアーオプテックス社製)で挟んだ。これを測定試料とした。
【0063】
スライスサンプルの画像を、下記測定装置付属のCCDで取り込んだ。画像の取り込みは、ウルトラミクロトームの刃の進行方向をY軸とし、それに対して垂直方向をX軸として行った。スライスサンプル中の粒子は、刃の進行方向に、極僅かに潰れが発生していた。取り込まれる画像のY軸を刃の進行方向に合わせることで、測定される吸光度比がバラツクことを抑制した。
吸光度D1260及びD1600は、Perkin Elmer社から商品名「高速IRイメージングシステムSpectrum Spotlight 300」で販売されている装置を用いた。この装置を用いて、下記条件にて、スライスサンプルの画像を得た。得られた画像から、各箇所における赤外吸収スペクトルを下記測定条件で得た。
【0064】
(測定条件)
モード:透過
ピクセルサイズ:6.25μm
測定領域:4000cm
−1〜650cm
−1
検出器:MCT
分解能:8cm
−1
スキャン/ピクセル:2回
取り込んだ画像から、
図3に示すように、X座標値の最小値と最大値及びY軸のY座標値の最小値と最大値を線で結び、その線の交点を中心点Aとした。画像処理における、中心点のX、Y座標値設定は、中心点Aの±20μmの範囲内におさまるようにした。
【0065】
次に、画像中に、中心点Aを通り、X軸に平行な直線を引いた。この直線が、粒子(樹脂)が存在する末端の位置(X軸の最大値)と交わる点を点Dとした。点Aと点Dを結ぶ線上の赤外吸収スペクトルをX座標値で12±2μmごとに抽出した。
抽出した赤外吸収スペクトルから、吸光度D1260及びD1600をそれぞれ読み取り、中心部における吸光度比(D1260/D1600)を算出した。10個の粒子について算出した個別吸光度比の相加平均を吸光度比とした。
【0066】
(複合樹脂粒子の中心吸光度比(D698/D2850))
赤外吸収スペクトルから得られる各吸光度は、複合樹脂粒子に含まれる各樹脂成分の振動に由来するピークの高さとした。
【0067】
(測定試料の作製)
無作為に選択した10個の粒子をエポキシ樹脂台座に固定した。次いで、粒子をウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製、LEICA ULTRACUT UCT)を用いてダイヤモンドナイフによって、ほぼ中心を通って約10μm厚みにスライスすることで、スライスサンプルを得た。得られたスライスサンプルを2枚のフッ化バリウム結晶(ピュアーオプテックス社製)で挟んだ。これを測定試料とした。
【0068】
スライスサンプルの画像を、下記測定装置付属のCCDで取り込んだ。画像の取り込みは、ウルトラミクロトームの刃の進行方向をY軸とし、それに対して垂直方向をX軸として行った。スライスサンプル中の粒子は、刃の進行方向に、極僅かに潰れが発生していた。取り込まれる画像のY軸を刃の進行方向に合わせることで、測定される吸光度比がバラツクことを抑制した。
【0069】
吸光度D698及びD2850は、Perkin Elmer社から商品名「高速IRイメージングシステムSpectrum Spotlight 300」で販売されている装置を用いた。この装置を用いて、下記条件にて、スライスサンプルの画像を得た。得られた画像から、各箇所における赤外吸収スペクトルを下記測定条件で得た。
【0070】
(測定条件)
モード:透過
ピクセルサイズ:6.25μm
測定領域:4000cm
−1〜650cm
−1
検出器:MCT
分解能:8cm
−1
スキャン/ピクセル:2回
取り込んだ画像から、
図3に示すように、X座標値の最小値と最大値及びY軸のY座標値の最小値と最大値を線で結び、その線の交点を中心点Aとした。画像処理における、中心点のX、Y座標値設定は、中心点Aの±20μmの範囲内におさまるようにした。
【0071】
次に、画像中に、中心点Aを通り、X軸に平行な直線を引いた。この直線が、粒子(樹脂)が存在する末端の位置(X軸の最大値)と交わる点を点Dとした。点Aと点Dを結ぶ線上の赤外吸収スペクトルをX座標値で12±2μmごとに抽出した。
抽出した赤外吸収スペクトルから、吸光度D698及びD2850をそれぞれ読み取り、中心部における吸光度比(D698/D2850)を算出した。10個の粒子について算出した個別吸光度比の相加平均を吸光度比とした。
赤外吸収スペクトルから得られる698cm
−1での吸光度D698は、ポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度とした。また、赤外吸収スペクトルから得られる2850cm
−1での吸光度D2850は、ポリオレフィン系樹脂に含まれる−C−CH
2炭化水素のCH
2の対称変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度とした。
【0072】
(発泡粒子の嵩密度及び嵩倍数)
発泡粒子の嵩密度は、下記の要領で測定した。まず、発泡粒子をメスシリンダーに500cm
3の目盛りまで充填した。但し、メスシリンダーを水平方向から目視し、発泡粒子が一粒でも500cm
3の目盛りに達していれば、充填を終了した。次に、メスシリンダー内に充填した発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とした。次式により発泡粒子の嵩密度を算出した。
嵩密度(g/cm
3)=W/500
嵩倍数は、嵩密度の逆数とした。
【0073】
(発泡成形体の異音試験)
発泡成形体から50mm×50mm×30mmの試験片を得た。試験片の表皮面(50mm×50mm面)を表面平滑な鋼板と密着するように静置し、銅板の上部より10kgの荷重をかけ、水平方向に1mm/sの速度でスライドさせた。この際に、発生する音の音量(db)及び音質を測定した。また、測定前には環境音をブランクとして測定し、測定結果から差として除いた。この試験では、スースー音以外の音質(例えば、キュッキュ音)を異音(不快音)であると規定した。
音量: 良(◎) :25db以下
可(〇) :25dbを超え、30db以下
不可(△) :30dbを超える
音質: 良(〇) :スースー音
不可(×) :スースー音以外の異音が発生
【0074】
(発泡成形体の密度及び発泡倍数)
発泡成形体(成形後、50℃で4時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75mm×300mm×35mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm
3)を求めた。発泡倍数は、密度の逆数とした。
【0075】
(発泡成形体の圧縮強度)
JIS K7220:2006「硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方」記載の方法により圧縮強度を測定した。
すなわち、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、UCT−10T)を用いて、50mm×50mm×25mmのサイズの試験体(上面表皮あり)について、圧縮速度10mm/分として25%圧縮時(10mm変位時)の圧縮強度を測定した。
【0076】
(発泡成形体の静摩擦係数及び動摩擦係数)
JIS K7125:1999「プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法」記載の方法に準拠して、静摩擦係数、動摩擦係数、第一極大荷重、積分平均荷重を測定した。ここで摩擦係数試験とは、同一材料の上を滑らせた時の摩擦係数を測定する試験とした。
【0077】
まず、発泡成形体から100mm×100mm、厚み0.5mm以下の試験片を切り出した。この試験片と、63mm×63mm(接触面積40cm
2)、全質量200g(1.96N)の滑り片とを、両面テープで貼り付けた。この際、均一な圧力分布をかけるために、滑り片の底面を弾力性のある材料、フェルトで覆っておいた。
【0078】
次に、表面が水平で平滑である試験テーブルの上に、A4サイズ以上の滑り相手材料(発泡成形体)を置き、その上に上記試験片と滑り片を載せた。
テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、UCT−10T)を用いて、滑り相手材料の上を、試験速度100mm/分、試験距離80mmで試験片を動かして荷重を測定した。
測定区間における最初に現れた極大点荷重及び荷重平均値を、それぞれ第一極大荷重(N)及び積分平均荷重(N)とした。
力は直線的に増加して摩擦を与え、最大荷重に達するピーク値を静摩擦力FSとした。
静摩擦力FSに第一極大荷重の値を用い、次式(1)により静摩擦係数μSを求めた。
μS=FS/FP (1)
[式中、μSは静摩擦係数、FSは静摩擦力(N)、FPはすべり片の質量によって生じる法線力(=1.96N)とした]
静摩擦力のピークを無視し、接触面間の相対ずれ運動を開始した後から60mmまでの平均荷重を動摩擦力FDとした。
動摩擦力FDに積分平均荷重の値を用い、次式(2)により動摩擦係数μDを求めた。
μD=FD/FP (2)
[式中、μDは動摩擦係数、FDは動摩擦力(N)、FPはすべり片の質量によって生じる法線力(=1.96N)とした]
【0079】
(実施例1)
エチレン酢酸ビニル共重合体A(MFR0.3g/10分、融点108℃、軟化温度80℃、酢酸ビニル含有量4質量%)と超高分子量シリコン(旭化成ワッカーシリコーン GENIOPLAST PELLET S シロキサン/フュームドシリカ=70/30、分子量530000)を質量比で96:4になるようにタンブラーミキサーに投入し、10分間混合した。
【0080】
次いで、この樹脂混合物を押出機に供給して温度230〜250℃で溶融混練し、水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)に切断し、改質ポリオレフィン系樹脂粒子よりなる種粒子を得た。なおこの改質ポリオレフィン系樹脂粒子の平均質量は0.6mgであった。
【0081】
次に、攪拌機付の5リットルのオートクレーブ中で、ピロリン酸マグネシウム40g及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で改質ポリオレフィン系樹脂粒子800gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.8g溶解させたスチレン単量体400gを30分かけて滴下した。滴下後、30分間保持することで、改質ポリオレフィン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0082】
次に、90℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ3gを純水20gに分散させた分散液を10分かけて滴下した後、ベンゾイルパーオキサイドを5g、ジクミルパーオキサイドを5g溶解させたスチレン800gを3時間かけて滴下した。滴下後、90℃で1時間保持することで、改質ポリオレフィン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させた分散液を30分かけて滴下した後、90℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン単量体及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比40/60)。
【0083】
次いで、30℃以下まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。複合樹脂粒子2kgと、水2リットルと、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0gとを、5リットルの攪拌機付オートクレーブに入れた。更に、発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15質量部300g(520mL)をオートクレーブに入れた。この後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けることで発泡性粒子を得ることができた。その後、30℃以下まで冷却して、発泡性粒子をオートクレーブから取り出し、脱水乾燥させた。
【0084】
次いで、得られた発泡性粒子を予備発泡させることで、嵩密度0.033g/cm
3の予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさの成形用金型に入れた。その後、0.08MPaの水蒸気を50秒間導入して加熱して発泡成形体を得、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、密度0.033g/cm
3の発泡成形体を取り出した。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。
【0085】
(実施例2)
エチレン酢酸ビニル共重合体と超高分子量シリコンとの質量比を90:10とすること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。
【0086】
(実施例3)
エチレン酢酸ビニル共重合体A(MFR0.3g/10分、融点108℃、軟化温度80℃、酢酸ビニル含有量4質量%)と超高分子量シリコン(旭化成ワッカーシリコーン GENIOPLAST PELLET S シロキサン/フュームドシリカ=70/30、分子量530000)を質量比で90:10になるようにタンブラーミキサーに投入し、10分間混合した。
【0087】
次いで、この樹脂混合物を押出機に供給して温度230〜250℃で溶融混練し、水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)に切断し、改質ポリオレフィン系樹脂粒子よりなる種粒子を得た。なおこの改質ポリオレフィン系樹脂粒子の平均質量は0.6mgであった。
【0088】
次に、攪拌機付の5リットルのオートクレーブ中で、ピロリン酸マグネシウム40g及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で改質ポリオレフィン系樹脂粒子400gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.4g溶解させたスチレン単量体200gを30分かけて滴下した。滴下後、30分間保持することで、改質ポリオレフィン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0089】
次に、90℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ3gを純水20gに分散させた分散液を10分かけて滴下した後、ベンゾイルパーオキサイドを9g、ジクミルパーオキサイドを5g溶解させたスチレン1400gを3時間かけて滴下した。滴下後、90℃で1時間保持することで、改質ポリオレフィン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させた分散液を30分かけて滴下した後、90℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン単量体及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比20/80)。
次いで、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。
【0090】
(実施例4)
直鎖状低密度ポリエチレンB(MFR2g/10分、融点121℃、軟化温度93℃)と超高分子量シリコン(旭化成ワッカーシリコーン GENIOPLAST PELLET S シロキサン/フュームドシリカ=70/30、分子量530000)を質量比で96:4になるようにタンブラーミキサーに投入し、10分間混合した。
【0091】
次いで、この樹脂混合物を押出機に供給して温度230〜250℃で溶融混練し、水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)に切断し、改質ポリオレフィン系樹脂粒子よりなる種粒子を得た。なおこの改質ポリオレフィン系樹脂粒子の平均質量は0.6mgであった。
【0092】
次に、攪拌機付の5リットルのオートクレーブ中で、ピロリン酸マグネシウム40g及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で改質ポリオレフィン系樹脂粒子800gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.4g溶解させたスチレン単量体400gを30分かけて滴下した。滴下後、30分間保持することで、改質ポリオレフィン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0093】
次に、115℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ3gを純水20gに分散させた分散液を10分かけて滴下した後、t−ブチルパーオキシベンゾエートを3g溶解させたスチレン800gを3時間かけて滴下した。滴下後、115℃で1時間保持することで、改質ポリオレフィン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させた分散液を30分かけて滴下した後、90℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン単量体及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比40/60)。
次いで、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。
【0094】
(実施例5)
直鎖状低密度ポリエチレンBに代えて、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂C/エチレン−アクリル酸エチル共重合体Dを使用すること以外は実施例4と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂C/エチレン−アクリル酸エチル共重合体Dは、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂C(MFR1.8g/10分、融点127℃、軟化温度117℃)60質量部とエチレン−アクリル酸エチル共重合体D(MFR0.4g/10分、融点104℃、軟化温度83℃、アクリル酸エチル由来成分含有量10質量%)40質量部との混合物とした。
【0095】
(比較例1)
シリコン系重合体を使用しないこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。
【0096】
(比較例2)
エチレン酢酸ビニル共重合体に代えて、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂C/エチレン−アクリル酸エチル共重合体D(60/40)を使用し、シリコン系重合体を使用しないこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。
表1に実施例及び比較例の評価結果を示す。表1中、A樹脂はポリオレフィン系樹脂を、B樹脂はシリコン系重合体を、PSはポリスチレンを意味する。
【0097】
【表1】
【0098】
表1より、Si−O−Si結合を有するシリコン系重合体を特定割合で含む改質ポリオレフィン系樹脂粒子は、異音の発生を効果的に抑制された発泡成形体を製造し得ることが分かる。