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特開2020-164668改質ポリオレフィン系樹脂粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-164668(P2020-164668A)
(43)【公開日】2020年10月8日
(54)【発明の名称】改質ポリオレフィン系樹脂粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20200911BHJP
   C08J 9/20 20060101ALI20200911BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20200911BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20200911BHJP
   C08F 255/02 20060101ALI20200911BHJP
【FI】
   C08J3/12 ZCES
   C08J9/20
   C08L23/00
   C08L83/04
   C08F255/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-67042(P2019-67042)
(22)【出願日】2019年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】大脇 皓樹
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA60
4F070AB24
4F070DA05
4F070DA55
4F070FA01
4F070FC06
4F074AA32K
4F074BA37
4F074BA38
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA49
4F074CC04Y
4F074CC10X
4F074DA02
4F074DA33
4F074DA35
4J002BB001
4J002CP032
4J002GT00
4J026AA11
4J026AB44
4J026BA05
4J026DB03
4J026DB13
4J026EA06
4J026FA02
4J026GA01
4J026GA06
4J026GA10
(57)【要約】
【課題】キシミ音や擦れ音が抑制された発泡成形体を製造可能な改質ポリオレフィン系樹脂粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】シード重合時の種粒子として使用される改質ポリオレフィン系樹脂粒子であり、前記改質ポリオレフィン系樹脂粒子が、0.1〜2.5g/10分のMFRを有するポリオレフィン系樹脂と、Si−O−Si結合を有するシリコン系重合体とを含み、前記ポリオレフィン系樹脂とシリコン系重合体とが、99:1〜80:20の質量比率で、前記種粒子中に含まれていることを特徴とする改質ポリオレフィン系樹脂粒子により上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シード重合時の種粒子として使用される改質ポリオレフィン系樹脂粒子であり、
前記改質ポリオレフィン系樹脂粒子が、0.1〜2.5g/10分のMFRを有するポリオレフィン系樹脂と、Si−O−Si結合を有するシリコン系重合体とを含み、
前記ポリオレフィン系樹脂とシリコン系重合体とが、99:1〜80:20の質量比率で、前記種粒子中に含まれていることを特徴とする改質ポリオレフィン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂が、カルボニル基を有するエチレン系共重合体を20〜100質量%含む請求項1に記載の改質ポリオレフィン系樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の改質ポリオレフィン系樹脂粒子に由来する成分100質量部と、ポリスチレン系樹脂100〜500質量部とを含むことを特徴とする複合樹脂粒子。
【請求項4】
前記複合樹脂粒子が、その中心部をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから1600cm−1の吸光度(D1600)及び1260cm−1の吸光度(D1260)を算出した場合、0.1〜10.0の範囲の中心吸光度比D1(D1260/D1600)を示す請求項3に記載の複合樹脂粒子。
【請求項5】
前記複合樹脂粒子が、その表面をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから1600cm−1の吸光度(D1600)及び1260cm−1の吸光度(D1260)を算出した場合、0.1〜10.0の範囲の表面吸光度比D2(D1260/D1600)を示す請求項4に記載の複合樹脂粒子。
【請求項6】
前記複合樹脂粒子が、前記改質ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体をシード重合することで得られる請求項3〜5のいずれか1つに記載の複合樹脂粒子。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1つに記載の複合樹脂粒子と、発泡剤とを含む発泡性粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の発泡性粒子を発泡させて得られた発泡粒子。
【請求項9】
請求項8に記載の発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体。
【請求項10】
前記シリコン系重合体が、発泡成形体中に0.2〜10質量%の割合で存在する請求項9に記載の発泡成形体。
【請求項11】
前記発泡成形体が、自動車用部材として用いられる請求項9又は10に記載の発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質ポリオレフィン系樹脂粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体に関する。具体的には、本発明は、キシミ音や擦れ音が発生しにくい発泡成形体、これを製造し得る改質ポリオレフィン系樹脂粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子及び発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成分としてポリスチレン系樹脂を含む発泡成形体が、成形加工性、断熱性、耐衝撃性、緩衝性等の優れた物性を有するため、包装用緩衝材、自動車用部材、建築用部材、各種輸送梱包材等として幅広く使用されている。
近年、発泡成形体にはより高い耐衝撃性が特に求められるようになっている。そのため、このような特性を満たすものとして、樹脂成分としてポリスチレン系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含む発泡成形体が提案されている。
【0003】
特に、自動車用部材として使用される発泡成形体は、その表面が隣接する他の部材(例えば、金属や樹脂)と接触する(擦れる)ことによるキシミ音や擦れ音(異音や不快音とも言われる)が発生することがあった。このようなキシミ音や擦れ音は、より静粛性が高い電気自動車用の部材として発泡成形体を使用する場合、大きな課題となることが予想される。
キシミ音や擦れ音の対策としては、発泡成形体にシリコーンオイルや各種界面活性剤等の添加剤を塗布することで摩擦抵抗を低減することが知られている。しかし、塗布による対策の場合、塗布剤に含まれる揮発成分によりVOC値が高くなり自動車用部材での使用の制限、恒久的な効果が期待できない等の課題があった。また、発泡成形体に不織布を貼り付けたり、発泡成形体をフィルムに包んだりすることで摩擦抵抗を低減することも知られている。しかし、不織布やフィルムを使用する作業は、コストを上昇させていた。
【0004】
そこで、本願の発明者は、キシミ音や擦れ音を抑制するために、特定の密度のポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを特定の割合で含ませ、JIS K7125の摩擦係数測定における積分平均荷重及び振幅を特定の範囲に設定する技術を提案している(特開2012−197373号公報:特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−197373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の技術でもキシミ音や擦れ音を抑制できるが、更にキシミ音や擦れ音を抑制する技術を提供することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定量のシリコン系重合体が混合された改質ポリオレフィン系樹脂粒子をシード重合時の種粒子として使用することで、キシミ音や擦れ音が抑制された発泡成形体を提供できることを見出し、本発明に至った。
かくして本発明によれば、シード重合時の種粒子として使用される改質ポリオレフィン系樹脂粒子であり、
前記改質ポリオレフィン系樹脂粒子が、0.1〜2.5g/分のMFRを有するポリオレフィン系樹脂と、Si−O−Si結合を有するシリコン系重合体とを含み、
前記ポリオレフィン系樹脂とシリコン系重合体とが、99:1〜80:20の質量比率で、前記種粒子中に含まれていることを特徴とする改質ポリオレフィン系樹脂粒子が提供される。
更に、本発明によれば、上記改質ポリオレフィン系樹脂粒子に由来する成分100質量部と、ポリスチレン系樹脂100〜500質量部とを含むことを特徴とする複合樹脂粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キシミ音や擦れ音が抑制された発泡成形体を製造可能な改質ポリオレフィン系樹脂粒子を提供できる。
ポリオレフィン系樹脂が、カルボニル基を有するエチレン系共重合体を20〜100質量%含む場合、よりキシミ音や擦れ音が抑制された発泡成形体を製造可能な改質ポリオレフィン系樹脂粒子を提供できる。
【0009】
以下のいずれかの場合、キシミ音や擦れ音が抑制された発泡成形体を製造可能な複合樹脂粒子を提供できる。
(1)複合樹脂粒子が、その中心部をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから1600cm−1の吸光度(D1600)及び1260cm−1の吸光度(D1260)を算出した場合、0.1〜10.0の範囲の中心吸光度比D1(D1260/D1600)を示す。
(2)複合樹脂粒子が、その表面をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから1600cm−1の吸光度(D1600)及び1260cm−1の吸光度(D1260)を算出した場合、0.1〜10.0の範囲の表面吸光度比D2(D1260/D1600)を示す。
(3)複合樹脂粒子が、上記改質ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体をシード重合することで得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】吸光度D1260の算出手順の説明に使用した図である。
図2】吸光度D1600の算出手順の説明に使用した図である。
図3】中心部の吸光度比の測定法の説明に使用した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(改質ポリオレフィン系樹脂粒子)
本発明の改質ポリオレフィン系樹脂粒子は、シード重合時の種粒子として使用される粒子である。そして、改質ポリオレフィン系樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂と、このポリオレフィン系樹脂を改質するためのシリコン系重合体とを含む。
【0012】
(1)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂が使用できる。また、ポリオレフィン系樹脂は、架橋していてもよい。例えば、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂が挙げられる。なお、前記ポリオレフィン系樹脂は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。上記例示中、低密度は、0.91〜0.94g/cmであることが好ましく、0.91〜0.93g/cmであることがより好ましい。高密度は、0.95〜0.97g/cmであることが好ましく、0.95〜0.96g/cmであることがより好ましい。中密度はこれら低密度と高密度の中間の密度である。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂は、カルボニル基を有するエチレン系共重合体を含むことが好ましい。このエチレン系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等が挙げられる。このエチレン系共重合体を含むことで、キシミ音や擦れ音(以下、単に異音ともいう)がより発生しにくい発泡成形体を得ることができる。ポリオレフィン系樹脂は、このエチレン系共重合体を20〜100質量%含むことが好ましく、50〜100質量%含むことがより好ましい。
【0014】
ポリオレフィン系樹脂は、0.1〜2.5g/10分のMFRを有している。MFRが0.1g/10分未満の場合、成型加工性が低下することがある。MFRが2.5g/10分より大きい場合、機械強度や耐熱性が悪化し発泡成形体の優れた衝撃吸収性が得られないことがある。MFRは、0.1〜2.0g/10分であることが好ましく、0.1〜1.5g/10分であることがより好ましい。
【0015】
(2)シリコン系重合体
シリコン系重合体は、ポリオレフィン系樹脂を改質するために使用され、Si−O−Si結合を有している。シリコン系重合体を使用することは、異音が発生しにくい発泡成形体を与え得る要件の1つであると発明者は考えている。
【0016】
前記シリコン系重合体は、70000〜1000000の分子量を有することが好ましい。この分子量を有するシリコン系重合体は、ポリオレフィン系樹脂への相溶性が高く、より異音の抑制の効果を上げることができる。加えて、発泡成形体からの離脱が起こりにくく、恒久的な異音抑制の効果が期待できる。分子量が70000未満の場合、ポリオレフィン系樹脂との混練性が低下し成型加工性が低下することがある。分子量が1000000より大きい場合、異音の抑制効果が低下することがある。分子量は、100000〜800000であることがより好ましく、200000〜700000であることが更に好ましい。
なお、分子量は、例えばGPCにより測定できる。
【0017】
また、前記シリコン系重合体は、シリコンと他の樹脂とを共重合させたものであってもよく、この場合、市販の共重合体を用いてもよいし、共重合体を作製してもよい。具体例としては、シリコン−アクリル共重合体、シリコン−オレフィン共重合体等が挙げられる。また、これらを樹脂でマスターバッチ化したペレットや樹脂と部分グラフトしたペレットもシリコン系重合体として用いることができる。
用いるシリコン系重合体としては、ポリオレフィン系樹脂との混練性の観点からペレット状であることがより好ましい。
【0018】
前記シリコン系重合体としては、Si−O−Si結合を有していれば特に制限はなく、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリジメチル・メチルフェニルシロキサン、ポリジメチル・ジフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン等が挙げられる。より具体的には、旭化成ワッカーシリコーン社製GENIOPLAST PELLET S、東レ・ダウコーニング社製シリコーンコンセントレートBY27シリーズ(BY27−022、BY27−004等)等が挙げられる。
【0019】
(3)ポリオレフィン系樹脂とシリコン系重合体の含有状態
ポリオレフィン系樹脂とシリコン系重合体とは、99:1〜80:20の質量比率で、種粒子中に含まれ得る。ポリオレフィン系樹脂の質量比率が99より多い場合、異音発生の抑制効果が十分でないことがある。ポリオレフィン系樹脂の質量比率が80未満の場合、十分な発泡倍率の発泡成形体を得難くなることがある。質量比率は、98:2〜90:10あることが好ましく、97:3〜92:8であることがより好ましい。
【0020】
(4)製造方法
改質ポリオレフィン系樹脂粒子は、公知の方法で得ることができる。例えば、押出機を使用してポリオレフィン系樹脂及びシリコン系重合体を溶融押出した後、水中カット、ストランドカット等により造粒することで、改質ポリオレフィン系樹脂粒子を作製できる。
【0021】
改質ポリオレフィン系樹脂粒子は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状、グラニュラー状等の形状をとり得る。また、改質ポリオレフィン系樹脂粒子は、0.5〜1.4mmの平均粒子径を有していることが好ましい。更に、改質ポリオレフィン系樹脂粒子は、0.8以上のL/Dを有していることが好ましい。上限は真球の1である。なお、Lは粒子の最大長さL1(長径)を、Dは、最大長さL1を測定するにあたって、特定された粒子の表面の二点を結ぶ直線を想定し、この直線に対して直交する方向における、粒子の最大長さL2(短径)を意味する。
【0022】
改質ポリオレフィン系樹脂粒子には、重合禁止剤、重合抑制剤、連鎖移動剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等のラジカル捕捉剤が含まれていてもよい。ラジカル捕捉剤は、予めポリオレフィン系樹脂に添加しておくか、もしくは溶融押出と同時に添加してもよい。更に、改質ポリオレフィン系樹脂粒子は、他に、タルク、珪酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体等の発泡核剤を含んでいてもよい。
【0023】
(複合樹脂粒子)
複合樹脂粒子は、上記改質ポリオレフィン系樹脂粒子に由来する成分とポリスチレン系樹脂とを含む。
【0024】
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体、又はスチレン単量体を主成分とし、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体成分との共重合体等が挙げられる。ここで、主成分とは、スチレン単量体が全単量体成分100質量部中に50質量部以上、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上を占めることを意味する。
【0025】
ポリスチレン系樹脂中に含まれる共重合体成分を与える他の単量体としては、所望の物性に影響を与えない限り、公知の単量体を使用できる。具体的には、環状オレフィン系単量体、ジエン系単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸及びメチルスチレンのようなビニル系単量体を挙げることができる。また、これらは1種又は2種以上で使用できる。
【0026】
複合樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂を、改質ポリオレフィン系樹脂粒子に由来する成分100質量部に対して、100〜500質量部含み得る。ポリスチレン系樹脂の含有量が100質量部未満の場合、発泡倍率の高い発泡成形体が得られ難いことがある。ポリスチレン系樹脂の含有量が500質量部より多い場合、異音が発生しにくい発泡成形体を与え難くなることがある。ポリスチレン系樹脂の含有量は、150〜400質量部であることがより好ましく、150〜300質量部であることが更に好ましい。
【0027】
複合樹脂粒子は、改質ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体をシード重合することで得られることが好ましい。この方法により得られた複合樹脂粒子は、特に改質樹脂粒子と称する。スチレン系単量体の使用量は、ポリスチレン系樹脂の含有量とほぼ一致している。
【0028】
複合樹脂粒子は、0.5〜2.5の表面吸光度比(D698/D2850)を示すことが好ましい。D2850及びD698は、ATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから算出された2850cm−1の吸光度(D2850)及び698cm−1の吸光度(D698)である。D698は、ポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。一方、D2850は、高密度ポリエチレン系樹脂とエチレン系共重合体とに含まれる−C−CH炭化水素のCHの対称変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。表面吸光度比が大きい場合、ポリスチレン系樹脂成分が多いことを意味し、表面吸光度比が小さい場合、ポリスチレン系樹脂成分が少ないことを意味する。表面吸光度比が0.5未満の場合、得られる発泡粒子の発泡成形可能期間が短くなることがある。2.5より大きい場合、得られる発泡成形体の機械強度が低下することがある。表面吸光度比は、0.5〜2.0であることがより好ましく、0.5〜1.5であることが更に好ましい。
【0029】
複合樹脂粒子は、以下のATR法による赤外分光分析による吸光度比で規定されるような、中心部及び表面でのシリコン系重合体の分散状態を示すことが好ましい。この分散状態では、表面だけでなく、中心部にもシリコン系重合体が分散していることが示されているので、より恒久的な異音抑制効果を発泡成形体に与えることが可能となる。
【0030】
(3−1)中心部のATR法による赤外分光分析
複合樹脂粒子は、その中心部をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから1600cm−1の吸光度(D1600)及び1260cm−1の吸光度(D1260)を算出した場合、0.1〜10.0の範囲の中心吸光度比D1(D1260/D1600)を示すことが好ましい。
【0031】
D1260は、Si−O−Si結合に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。一方、D1600は、スチレンに由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。D1が大きい場合、シリコン系重合体成分が多いことを意味し、D1が小さい場合、シリコン系重合体成分が少ないことを意味する。D1が0.1未満の場合、異音が発生しにくい発泡成形体を与え難くなることがある。D1が10.0より大きい場合、成型加工性が低下することがある。D1は、0.1〜8.0であることがより好ましく、0.3〜5.0であることが更に好ましい。
【0032】
(3−2)表面のATR法による赤外分光分析
複合樹脂粒子は、その表面をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから1600cm−1の吸光度(D1600)及び1260cm−1の吸光度(D1260)を算出した場合、0.1〜10.0の範囲の表面吸光度比D2(D1260/D1600)を示すことが好ましい。D2が0.1未満の場合、異音が発生しにくい発泡成形体を与え難くなることがある。D2が10.0より大きい場合、成型加工性が低下することがある。D2は、0.1〜8.0であることがより好ましく、0.3〜5.0であることが更に好ましい。
更に、D1はD2より大きいことが好ましい。D1がD2より大きいことにより、複合樹脂粒子の表面に選択的にシリコン系重合体を配置でき、シリコン系重合体の添加量が少量であっても、より高いキシミ音を抑制することができるという効果を奏する。
【0033】
複合樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系重合体及びポリスチレン系樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル等のアクリル系単量体由来のアクリル系樹脂が挙げられる。複合樹脂粒子に占める他の樹脂の割合は、50質量%以下、80質量%以下、90質量%以下を取り得る。また、複合樹脂粒子は、他の樹脂を含んでいなくてもよい。
【0034】
複合樹脂粒子は、例えば、気泡調整剤、被覆剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、消泡剤、熱安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤等の他の成分を含んでいてもよい。
複合樹脂粒子の形状は球状又は略球状であることが好ましい。
【0035】
複合樹脂粒子の製造方法としては、上で説明した複合樹脂粒子を得ることができさえすれば、特に限定されない。例えば、改質ポリオレフィン系樹脂粒子とポリスチレン系樹脂とを、押出機を使用して溶融押出した後、水中カット、ストランドカット等により複合樹脂粒子を製造する方法が挙げられる。また、一例として、改質ポリオレフィン系樹脂粒子(種粒子)に含浸させたスチレン系単量体をシード重合することにより複合樹脂粒子を得ることができる。この方法は、所謂、シード重合法である。シード重合法によれば、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系重合体及びポリスチレン系樹脂が所望の状態に分散した複合樹脂粒子を得ることができる。
【0036】
より具体的な複合樹脂粒子の製造方法の一例を下記する。
まず、水性懸濁液中に、種粒子と、スチレン系単量体と、重合開始剤とを分散させる。なお、スチレン系単量体と重合開始剤とを予め混合して用いてもよい。
【0037】
重合開始剤としては、一般にスチレン系単量体の懸濁重合用の開始剤として用いられているものが使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等の有機過酸化物である。これらの重合開始剤は1種又は2種以上を使用できる。
水性懸濁液を構成する水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0038】
重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体100質量部に対して、0.1〜0.9質量部が好ましく、0.2〜0.5質量部がより好ましい。重合開始剤の使用量が0.1質量部未満ではスチレン系単量体の重合に時間がかかり過ぎることがある。重合開始剤の使用量が0.9質量部を超えると、ポリスチレン系樹脂の分子量が低くなることがある。
【0039】
水性懸濁液には、必要に応じて分散剤を添加してもよい。分散剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。具体的には、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、酸化マグネシウム等の難溶性無機物が挙げられる。更に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダのような界面活性剤を使用してもよい。
【0040】
次に、得られた分散液をスチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱してスチレン系単量体を種粒子に含浸させる。種粒子内部にスチレン系単量体を含浸させる時間は、30分〜2時間が適当である。十分に含浸させる前に重合が進行するとポリスチレン系樹脂の重合体粉末を生成してしまうことがある。単量体が実質的に重合しない温度は、高い方が含浸速度を速めるには有利であるが、重合開始剤の分解温度を考慮して決定する必要がある。
【0041】
次いで、スチレン系単量体の重合を行う。重合の温度、時間は、特に限定されないが、85〜140℃で、1.5〜5時間行うことが好ましい。重合は、通常、加圧可能な密閉容器中で行われる。なお、スチレン系単量体の含浸と重合とを複数回に分けて行ってもよい。複数回に分けることで、スチレン系樹脂の重合体粉末の発生を極力少なくできる。また、重合開始剤の分解温度を考慮して、スチレン系単量体を種粒子に含浸させてからではなく、スチレン系単量体を含浸させながら重合を行ってもよい。
上記方法により複合樹脂粒子を得ることができる。
【0042】
(発泡性粒子)
発泡性粒子は、上記複合樹脂粒子と、発泡剤とを含む。
発泡剤としては揮発性を有する公知の発泡剤を使用できる。例えば、プロパン、n−ブタン(ノルマルブタン)、i−ブタン(イソブタン)、n−ペンタン(ノルマルペンタン)、i−ペンタン(イソペンタン)、n−ヘキサン(ノルマルヘキサン)及びi−ヘキサン(イソヘキサン)の単独又はそれらの混合物が挙げられる。これらの内、より大きな発泡性能を発泡性粒子に導入できる、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタンのいずれかが好ましい。発泡剤は単独で用いてもよく2種以上を使用してもよい。
【0043】
発泡剤の含有量は、複合樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは5〜20質量部、より好ましくは8〜17質量部である。発泡剤の含有量が5質量部より少ない場合、発泡剤量が不足し、発泡性粒子は十分な発泡性を有さないことがある。他方、発泡剤の含有量が20質量部より多い場合、発泡剤量が過剰となり、この場合も、発泡性粒子は十分な発泡性を有さないことがある。
発泡性粒子の形状は球状又は略球状であることが好ましい。発泡性粒子の平均粒子径は0.71〜2.5mmが好ましく、0.85〜1.6mmがより好ましい。
【0044】
発泡性粒子は、重合中若しくは重合終了後の複合樹脂粒子に発泡剤を含浸することで得ることができる。含浸は、それ自体公知の方法により行うことができる。例えば、重合中での含浸は、重合反応を密閉式の容器中で行い、容器中に発泡剤を圧入することにより行うことができる。重合終了後の含浸は、密閉式の容器中で、発泡剤を圧入することにより行われる。
【0045】
(発泡粒子)
発泡粒子(予備発泡粒子とも称する)は、上記発泡性粒子を発泡させて得られる。
発泡粒子は、好ましくは0.02〜0.1g/cm、より好ましくは0.025〜0.1g/cmの嵩密度を有する。嵩密度が0.02g/cmより低いと、得られる発泡成形体の機械特性が低下することがある。一方、嵩密度が0.1g/cmより高いと、得られる発泡成形体の質量が増加することがある。
【0046】
発泡粒子の形状は球状又は略球状であることが好ましい。発泡粒子の平均粒子径は、1.0〜9.0mmであることが好ましく、2.0〜6.4mmであることがより好ましい。
発泡は、好ましくは0.05〜0.20MPa(ゲージ圧)、より好ましくは0.06〜0.15MPaの加熱蒸気を使用して行うことができる。
【0047】
(発泡成形体)
発泡成形体は、上記発泡粒子を発泡成形させて得られる。発泡成形体は、上記改質ポリオレフィン系樹脂粒子を原料として使用するため、優れた異音抑制の効果を有する。
【0048】
シリコン系重合体は、発泡成形体中に0.2〜10質量%の割合で存在していることが好ましい。シリコン系重合体の存在量が0.2質量%未満の場合、十分な異音防止性が得られないことがある。シリコン系重合体が10質量%より多い場合、成型時の融着が阻害される場合がある。シリコン系重合体の存在量は、0.2〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%であることが更に好ましい。
【0049】
発泡成形体の密度は、0.02〜0.1g/cmであることが好ましく、0.025〜0.1g/cmであることがより好ましい。
【0050】
発泡成形体は、発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、再度加熱して発泡粒子を発泡させながら、発泡粒子同士を熱融着させることで得ることができる。加熱用の媒体は水蒸気が好適に使用できる。
【0051】
各製造工程における工程温度、工程圧力及び工程時間のようなその他の製造条件は、使用する製造設備、原料等に従って適宜設定される。
発泡成形体は、自動車用部材、各種緩衝材に使用できる。この内、自動車用部材に使用することが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(ポリオレフィン系樹脂のMFR)
メルトマスフローレイト(MFR)は、東洋精機製作所社製のセミオートメルトインデクサー2Aを用い、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載のb)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法により測定した。測定条件は、試料3〜8g、予熱270秒、ロードホールド30秒、試験温度190℃、試験荷重21.18N、ピストン移動距離(インターバル)25mmとした。試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトマスフローレイト(g/10分)の値とした。
【0054】
(ポリオレフィン系樹脂の融点)
融点は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載の方法により測定した。
すなわち、示差走査熱量計装置DSC6220型(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用い、アルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんした。次いで、窒素ガス流量20mL/分のもと、30℃から−40℃まで降温した後10分間保持し、−40℃から220℃まで昇温(1st Heating)、10分間保持後220℃から−40℃まで降温(Cooling)、10分間保持後−40℃から220℃まで昇温(2nd Heating)した時のDSC曲線を得た。なお、全ての昇温・降温は速度10℃/分で行い、基準物質としてアルミナを用いた。
装置付属の解析ソフトを用いて、2nd Heating過程にみられる融解ピークのトップの温度を読みとった値を融点とした。
【0055】
(ポリオレフィン系樹脂の軟化温度)
JIS K7196:1991「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」に記載の方法に準拠し測定した。
すなわち、試料を180℃で5分間熱プレスして、厚み1mm、直径10mmの円盤プレート状試験片を作製した。熱・応力・歪み測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「EXSTRAR TMA/SS6100」)を用い、窒素雰囲気下で針入試験モード(針の先端 φ1mm、石英製プローブ)、荷重500mNで、試験片に針を当てて、30℃から昇温速度5℃/分で温度を上げていきTMA曲線を得た。得られたTMA曲線を装置付属の解析ソフトで石英係数設定による補正を行い、TMA曲線の圧子(針)が侵入を始めるよりも低温側に認められる直線部分を高温側に延長し、侵入速度が最大となる部分の接線の低温側への延長との交点を針入温度とし、その針入温度を軟化温度(℃)とした。
【0056】
(改質ポリオレフィン系樹脂粒子の吸光度比(D1260/D1600))
(a)表面の吸光度比(D1260/D1600)を次の要領で測定した。
なお、赤外吸収スペクトルから得られる各吸光度は、改質ポリオレフィン系樹脂粒子に含まれる各樹脂成分の振動に由来するピークの高さとした。
無作為に選択した10個の粒子について、赤外分光分析ATR測定法により粒子断面分析を行って赤外吸収スペクトルを得た。この分析では、試料測定面から数μm(1μm前後)までの深さの範囲の赤外吸収スペクトルが得られた。
各赤外吸収スペクトルから個別の吸光度比(D1260/D1600)を算出し、それらの相加平均を吸光度比とした。
吸光度D1260およびD1600は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社から商品名「Nicolet iS5 FT−IR分光装置」で販売されている測定装置と、ATRアクセサリとして、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製iS5 分光光度計用 iD5 ATRアクセサリを用いて次の条件で測定した。
【0057】
(1)測定条件
高屈折率結晶種:Dia(ダイヤモンド)
入射角:42°±1°
測定領域:4000cm−1〜675cm−1
測定深度の端数依存性:補正せず
反射回数:1回
検出器:DTGS KBr
分解能:4cm−1
積算回数:16回
その他:試料と接触させずに赤外線吸収スペクトルを下記の条件で測定し、測定されたスペクトルをバックグラウンドとした。試料の測定時には、バックグラウンドが測定スペクトルに関与しないように、測定データを処理した。ATR法では、試料と高屈折率結晶の密着度合によって、赤外吸収スペクトルの強度が変化するため、ATRアクセサリにて掛けられる最大荷重を掛けて密着度合をほぼ均一にして測定を行った。
【0058】
以上の条件で得られた赤外線吸収スペクトルについて、次のようにピーク処理をしてそれぞれの吸光度を求めた。
赤外吸収スペクトルから得られる1260cm−1での吸光度D1260は、シリコン系重合体に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度とした。この吸光度の測定では、1260cm−1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離は実施しなかった。吸光度D1260は、図1の様に波数1260cm−1±5cm−1での最大吸収位置をピークトップとし、ピークトップから波数1200cm−1までの領域内での最低吸収位置Aを決定させ、決定した位置Aから1290cm−1付近に赤外吸収スペクトルと交差しないが接するように直線を引き(接点の位置を位置Bとする)、その直線をベースラインBLとして波数1260cm−1±5cm−1の領域での赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースライン吸光度)の最大値とした。
【0059】
また、赤外吸収スペクトルから得られる1600cm−1での吸光度D1600は、ポリスチレンに由来する吸収スペクトルに対応する吸光度とした。この吸光度の測定では、1600cm−1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しなかった。吸光度D1600は、図2の様に赤外吸収スペクトル曲線における波数1560cm−1±5cm−1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数1625cm−1±10cm−1での最低吸収位置とを結ぶ直線をベースラインBLとして、波数1600cm−1±5cm−1の領域での赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースライン吸光度)の最大値とした。
【0060】
吸光度比からポリオレフィン系樹脂とシリコン系重合体との組成割合を求める方法としては、ポリオレフィン系樹脂とシリコン系重合体とを所定の組成割合に均一に混合してなる複数種類の標準試料を作製し、各標準試料についてATR法赤外分光分析により粒子表面分析を行なって赤外線吸収スペクトルを得た。得られた赤外吸収スペクトルのそれぞれから吸光度比を算出した。そして、縦軸に組成割合(標準試料中のシリコン系重合体比率(質量%))を、横軸に吸光度比(D1260/D1600)をとることで、検量線を描いた。この検量線に基づいて、改質ポリオレフィン系樹脂粒子の吸光度比から、ポリオレフィン系樹脂とシリコン系共重体との組成割合を求めた。
【0061】
なお、前記検量線は、下記の式で近似した。
Y=5.352X
式中、X=(D1260/D1600)、Y=ポリオレフィン系樹脂量(%)
【0062】
(b)中心部の吸光度比(D1260/D1600)を次の要領で測定した。
(測定試料の作製)
無作為に選択した10個の粒子をエポキシ樹脂台座に固定した。次いで、粒子をウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製、LEICA ULTRACUT UCT)を用いてダイヤモンドナイフによって、ほぼ中心を通って約10μm厚みにスライスすることで、スライスサンプルを得た。得られたスライスサンプルを2枚のフッ化バリウム結晶(ピュアーオプテックス社製)で挟んだ。これを測定試料とした。
【0063】
スライスサンプルの画像を、下記測定装置付属のCCDで取り込んだ。画像の取り込みは、ウルトラミクロトームの刃の進行方向をY軸とし、それに対して垂直方向をX軸として行った。スライスサンプル中の粒子は、刃の進行方向に、極僅かに潰れが発生していた。取り込まれる画像のY軸を刃の進行方向に合わせることで、測定される吸光度比がバラツクことを抑制した。
吸光度D1260及びD1600は、Perkin Elmer社から商品名「高速IRイメージングシステムSpectrum Spotlight 300」で販売されている装置を用いた。この装置を用いて、下記条件にて、スライスサンプルの画像を得た。得られた画像から、各箇所における赤外吸収スペクトルを下記測定条件で得た。
【0064】
(測定条件)
モード:透過
ピクセルサイズ:6.25μm
測定領域:4000cm−1〜650cm−1
検出器:MCT
分解能:8cm−1
スキャン/ピクセル:2回
取り込んだ画像から、図3に示すように、X座標値の最小値と最大値及びY軸のY座標値の最小値と最大値を線で結び、その線の交点を中心点Aとした。画像処理における、中心点のX、Y座標値設定は、中心点Aの±20μmの範囲内におさまるようにした。
【0065】
次に、画像中に、中心点Aを通り、X軸に平行な直線を引いた。この直線が、粒子(樹脂)が存在する末端の位置(X軸の最大値)と交わる点を点Dとした。点Aと点Dを結ぶ線上の赤外吸収スペクトルをX座標値で12±2μmごとに抽出した。
抽出した赤外吸収スペクトルから、吸光度D1260及びD1600をそれぞれ読み取り、中心部における吸光度比(D1260/D1600)を算出した。10個の粒子について算出した個別吸光度比の相加平均を吸光度比とした。
【0066】
(複合樹脂粒子の中心吸光度比(D698/D2850))
赤外吸収スペクトルから得られる各吸光度は、複合樹脂粒子に含まれる各樹脂成分の振動に由来するピークの高さとした。
【0067】
(測定試料の作製)
無作為に選択した10個の粒子をエポキシ樹脂台座に固定した。次いで、粒子をウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製、LEICA ULTRACUT UCT)を用いてダイヤモンドナイフによって、ほぼ中心を通って約10μm厚みにスライスすることで、スライスサンプルを得た。得られたスライスサンプルを2枚のフッ化バリウム結晶(ピュアーオプテックス社製)で挟んだ。これを測定試料とした。
【0068】
スライスサンプルの画像を、下記測定装置付属のCCDで取り込んだ。画像の取り込みは、ウルトラミクロトームの刃の進行方向をY軸とし、それに対して垂直方向をX軸として行った。スライスサンプル中の粒子は、刃の進行方向に、極僅かに潰れが発生していた。取り込まれる画像のY軸を刃の進行方向に合わせることで、測定される吸光度比がバラツクことを抑制した。
【0069】
吸光度D698及びD2850は、Perkin Elmer社から商品名「高速IRイメージングシステムSpectrum Spotlight 300」で販売されている装置を用いた。この装置を用いて、下記条件にて、スライスサンプルの画像を得た。得られた画像から、各箇所における赤外吸収スペクトルを下記測定条件で得た。
【0070】
(測定条件)
モード:透過
ピクセルサイズ:6.25μm
測定領域:4000cm−1〜650cm−1
検出器:MCT
分解能:8cm−1
スキャン/ピクセル:2回
取り込んだ画像から、図3に示すように、X座標値の最小値と最大値及びY軸のY座標値の最小値と最大値を線で結び、その線の交点を中心点Aとした。画像処理における、中心点のX、Y座標値設定は、中心点Aの±20μmの範囲内におさまるようにした。
【0071】
次に、画像中に、中心点Aを通り、X軸に平行な直線を引いた。この直線が、粒子(樹脂)が存在する末端の位置(X軸の最大値)と交わる点を点Dとした。点Aと点Dを結ぶ線上の赤外吸収スペクトルをX座標値で12±2μmごとに抽出した。
抽出した赤外吸収スペクトルから、吸光度D698及びD2850をそれぞれ読み取り、中心部における吸光度比(D698/D2850)を算出した。10個の粒子について算出した個別吸光度比の相加平均を吸光度比とした。
赤外吸収スペクトルから得られる698cm−1での吸光度D698は、ポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度とした。また、赤外吸収スペクトルから得られる2850cm−1での吸光度D2850は、ポリオレフィン系樹脂に含まれる−C−CH炭化水素のCHの対称変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度とした。
【0072】
(発泡粒子の嵩密度及び嵩倍数)
発泡粒子の嵩密度は、下記の要領で測定した。まず、発泡粒子をメスシリンダーに500cmの目盛りまで充填した。但し、メスシリンダーを水平方向から目視し、発泡粒子が一粒でも500cmの目盛りに達していれば、充填を終了した。次に、メスシリンダー内に充填した発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とした。次式により発泡粒子の嵩密度を算出した。
嵩密度(g/cm)=W/500
嵩倍数は、嵩密度の逆数とした。
【0073】
(発泡成形体の異音試験)
発泡成形体から50mm×50mm×30mmの試験片を得た。試験片の表皮面(50mm×50mm面)を表面平滑な鋼板と密着するように静置し、銅板の上部より10kgの荷重をかけ、水平方向に1mm/sの速度でスライドさせた。この際に、発生する音の音量(db)及び音質を測定した。また、測定前には環境音をブランクとして測定し、測定結果から差として除いた。この試験では、スースー音以外の音質(例えば、キュッキュ音)を異音(不快音)であると規定した。
音量: 良(◎) :25db以下
可(〇) :25dbを超え、30db以下
不可(△) :30dbを超える
音質: 良(〇) :スースー音
不可(×) :スースー音以外の異音が発生
【0074】
(発泡成形体の密度及び発泡倍数)
発泡成形体(成形後、50℃で4時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75mm×300mm×35mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm)を求めた。発泡倍数は、密度の逆数とした。
【0075】
(発泡成形体の圧縮強度)
JIS K7220:2006「硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方」記載の方法により圧縮強度を測定した。
すなわち、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、UCT−10T)を用いて、50mm×50mm×25mmのサイズの試験体(上面表皮あり)について、圧縮速度10mm/分として25%圧縮時(10mm変位時)の圧縮強度を測定した。
【0076】
(発泡成形体の静摩擦係数及び動摩擦係数)
JIS K7125:1999「プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法」記載の方法に準拠して、静摩擦係数、動摩擦係数、第一極大荷重、積分平均荷重を測定した。ここで摩擦係数試験とは、同一材料の上を滑らせた時の摩擦係数を測定する試験とした。
【0077】
まず、発泡成形体から100mm×100mm、厚み0.5mm以下の試験片を切り出した。この試験片と、63mm×63mm(接触面積40cm)、全質量200g(1.96N)の滑り片とを、両面テープで貼り付けた。この際、均一な圧力分布をかけるために、滑り片の底面を弾力性のある材料、フェルトで覆っておいた。
【0078】
次に、表面が水平で平滑である試験テーブルの上に、A4サイズ以上の滑り相手材料(発泡成形体)を置き、その上に上記試験片と滑り片を載せた。
テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、UCT−10T)を用いて、滑り相手材料の上を、試験速度100mm/分、試験距離80mmで試験片を動かして荷重を測定した。
測定区間における最初に現れた極大点荷重及び荷重平均値を、それぞれ第一極大荷重(N)及び積分平均荷重(N)とした。
力は直線的に増加して摩擦を与え、最大荷重に達するピーク値を静摩擦力FSとした。
静摩擦力FSに第一極大荷重の値を用い、次式(1)により静摩擦係数μSを求めた。
μS=FS/FP (1)
[式中、μSは静摩擦係数、FSは静摩擦力(N)、FPはすべり片の質量によって生じる法線力(=1.96N)とした]
静摩擦力のピークを無視し、接触面間の相対ずれ運動を開始した後から60mmまでの平均荷重を動摩擦力FDとした。
動摩擦力FDに積分平均荷重の値を用い、次式(2)により動摩擦係数μDを求めた。
μD=FD/FP (2)
[式中、μDは動摩擦係数、FDは動摩擦力(N)、FPはすべり片の質量によって生じる法線力(=1.96N)とした]
【0079】
(実施例1)
エチレン酢酸ビニル共重合体A(MFR0.3g/10分、融点108℃、軟化温度80℃、酢酸ビニル含有量4質量%)と超高分子量シリコン(旭化成ワッカーシリコーン GENIOPLAST PELLET S シロキサン/フュームドシリカ=70/30、分子量530000)を質量比で96:4になるようにタンブラーミキサーに投入し、10分間混合した。
【0080】
次いで、この樹脂混合物を押出機に供給して温度230〜250℃で溶融混練し、水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)に切断し、改質ポリオレフィン系樹脂粒子よりなる種粒子を得た。なおこの改質ポリオレフィン系樹脂粒子の平均質量は0.6mgであった。
【0081】
次に、攪拌機付の5リットルのオートクレーブ中で、ピロリン酸マグネシウム40g及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で改質ポリオレフィン系樹脂粒子800gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.8g溶解させたスチレン単量体400gを30分かけて滴下した。滴下後、30分間保持することで、改質ポリオレフィン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0082】
次に、90℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ3gを純水20gに分散させた分散液を10分かけて滴下した後、ベンゾイルパーオキサイドを5g、ジクミルパーオキサイドを5g溶解させたスチレン800gを3時間かけて滴下した。滴下後、90℃で1時間保持することで、改質ポリオレフィン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させた分散液を30分かけて滴下した後、90℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン単量体及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比40/60)。
【0083】
次いで、30℃以下まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。複合樹脂粒子2kgと、水2リットルと、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0gとを、5リットルの攪拌機付オートクレーブに入れた。更に、発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15質量部300g(520mL)をオートクレーブに入れた。この後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けることで発泡性粒子を得ることができた。その後、30℃以下まで冷却して、発泡性粒子をオートクレーブから取り出し、脱水乾燥させた。
【0084】
次いで、得られた発泡性粒子を予備発泡させることで、嵩密度0.033g/cmの予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさの成形用金型に入れた。その後、0.08MPaの水蒸気を50秒間導入して加熱して発泡成形体を得、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、密度0.033g/cmの発泡成形体を取り出した。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。
【0085】
(実施例2)
エチレン酢酸ビニル共重合体と超高分子量シリコンとの質量比を90:10とすること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。
【0086】
(実施例3)
エチレン酢酸ビニル共重合体A(MFR0.3g/10分、融点108℃、軟化温度80℃、酢酸ビニル含有量4質量%)と超高分子量シリコン(旭化成ワッカーシリコーン GENIOPLAST PELLET S シロキサン/フュームドシリカ=70/30、分子量530000)を質量比で90:10になるようにタンブラーミキサーに投入し、10分間混合した。
【0087】
次いで、この樹脂混合物を押出機に供給して温度230〜250℃で溶融混練し、水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)に切断し、改質ポリオレフィン系樹脂粒子よりなる種粒子を得た。なおこの改質ポリオレフィン系樹脂粒子の平均質量は0.6mgであった。
【0088】
次に、攪拌機付の5リットルのオートクレーブ中で、ピロリン酸マグネシウム40g及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で改質ポリオレフィン系樹脂粒子400gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.4g溶解させたスチレン単量体200gを30分かけて滴下した。滴下後、30分間保持することで、改質ポリオレフィン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0089】
次に、90℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ3gを純水20gに分散させた分散液を10分かけて滴下した後、ベンゾイルパーオキサイドを9g、ジクミルパーオキサイドを5g溶解させたスチレン1400gを3時間かけて滴下した。滴下後、90℃で1時間保持することで、改質ポリオレフィン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させた分散液を30分かけて滴下した後、90℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン単量体及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比20/80)。
次いで、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。
【0090】
(実施例4)
直鎖状低密度ポリエチレンB(MFR2g/10分、融点121℃、軟化温度93℃)と超高分子量シリコン(旭化成ワッカーシリコーン GENIOPLAST PELLET S シロキサン/フュームドシリカ=70/30、分子量530000)を質量比で96:4になるようにタンブラーミキサーに投入し、10分間混合した。
【0091】
次いで、この樹脂混合物を押出機に供給して温度230〜250℃で溶融混練し、水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)に切断し、改質ポリオレフィン系樹脂粒子よりなる種粒子を得た。なおこの改質ポリオレフィン系樹脂粒子の平均質量は0.6mgであった。
【0092】
次に、攪拌機付の5リットルのオートクレーブ中で、ピロリン酸マグネシウム40g及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.6gを純水2kgに分散させて分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で改質ポリオレフィン系樹脂粒子800gを分散させて10分間保持し、次いで60℃に昇温して懸濁液を得た。更に、この懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.4g溶解させたスチレン単量体400gを30分かけて滴下した。滴下後、30分間保持することで、改質ポリオレフィン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0093】
次に、115℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ3gを純水20gに分散させた分散液を10分かけて滴下した後、t−ブチルパーオキシベンゾエートを3g溶解させたスチレン800gを3時間かけて滴下した。滴下後、115℃で1時間保持することで、改質ポリオレフィン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。その後、気泡調整剤としてエチレンビスステアリン酸アミド3gを純水100gに分散させた分散液を30分かけて滴下した後、90℃で1時間保持することで、種粒子中にスチレン単量体及び気泡調整剤を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子を得ることができた(種粒子とポリスチレンとの質量比40/60)。
次いで、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。
【0094】
(実施例5)
直鎖状低密度ポリエチレンBに代えて、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂C/エチレン−アクリル酸エチル共重合体Dを使用すること以外は実施例4と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂C/エチレン−アクリル酸エチル共重合体Dは、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂C(MFR1.8g/10分、融点127℃、軟化温度117℃)60質量部とエチレン−アクリル酸エチル共重合体D(MFR0.4g/10分、融点104℃、軟化温度83℃、アクリル酸エチル由来成分含有量10質量%)40質量部との混合物とした。
【0095】
(比較例1)
シリコン系重合体を使用しないこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。
【0096】
(比較例2)
エチレン酢酸ビニル共重合体に代えて、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂C/エチレン−アクリル酸エチル共重合体D(60/40)を使用し、シリコン系重合体を使用しないこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。
表1に実施例及び比較例の評価結果を示す。表1中、A樹脂はポリオレフィン系樹脂を、B樹脂はシリコン系重合体を、PSはポリスチレンを意味する。
【0097】
【表1】
【0098】
表1より、Si−O−Si結合を有するシリコン系重合体を特定割合で含む改質ポリオレフィン系樹脂粒子は、異音の発生を効果的に抑制された発泡成形体を製造し得ることが分かる。
図1
図2
図3