【解決手段】ポリアリーレンスルフィド系樹脂を含むポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物で構成されている樹脂発泡成形体であって、結晶化度が20%以上で発泡倍率が2倍以上である樹脂発泡成形体を提供する。
前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物には前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂としてポリフェニレンスルフィド樹脂が含有されている請求項1記載の樹脂発泡成形体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について説明する。以下においてはポリアリーレンスルフィド系樹脂を含むポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物より構成される樹脂粒子を用いて樹脂発泡成形体を得る方法について説明する。
本実施形態の樹脂粒子は、ポリアリーレンスルフィド系樹脂を含むポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物で構成されている。本実施形態の樹脂粒子は、樹脂発泡成形体の一部又は全部を構成すべく用いられる。
【0011】
前記樹脂発泡成形体としては、その具体的な形態が特に限定されるわけではなく、例えば、前記樹脂粒子を発泡させてなる複数の樹脂発泡粒子が成形型内で熱融着されて一体化されたビーズ発泡成形体や、複数の前記樹脂発泡粒子と該樹脂発泡粒子どうしを接着する接着剤とを含み、複数の前記樹脂発泡粒子が前記接着剤で固められた複合樹脂発泡成形体などが挙げられる。
これらの樹脂発泡成形体は、その構成材料にポリアリーレンスルフィド系樹脂が含まれるため優れた耐熱性と難燃性とを発揮する。
【0012】
前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物に含有されるポリアリーレンスルフィド系樹脂は、下記一般式(1)で示されるアリーレンスルフィドが主たる構成単位として含有されているものであれば、単独重合体であっても共重合体であってもよい。
【0013】
−(Ar−S)− ・・・(1)
ここで式中の「Ar」はアリーレン基を表している。
【0014】
ポリアリーレンスルフィド系樹脂として共重合体を採用する場合、該共重合体としては、アリーレンスルフィドによるポリアリーレンスルフィドブロックと、ポリアミドブロックとを備えたブロック共重合体であってもよい。
前記ポリアリーレンスルフィドブロックとブロック共重合体を構成するブロックは、ポリカーボネートやポリスルホンなどであってもよい。
【0015】
前記アリーレンスルフィドとしては、例えば、p−フェニレンスルフィド、m−フェニレンスルフィド、o−フェニレンスルフィドなどフェニレンスルフィドが挙げられる。
前記アリーレンスルフィドは、例えば、フェニレンスルフィドスルホン、フェニレンスルフィドケトン、フェニレンスルフィドエーテル、ジフェニレンスルフィドなどであってもよい。
【0016】
前記アリーレンスルフィドのアリーレン基は、置換基によって置換されていてもよい。
【0017】
前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂として共重合体を採用する場合、例えば、上記のようなアリーレンスルフィドとアリーレンスルフィド以外の構成単位とを含むランダム共重合などであってもよい。
前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂として共重合体を採用する場合、例えば、上記のようなアリーレンスルフィドの内の2以上を構成単位とした共重合体であってもよい。
【0018】
前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂は、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンなどの芳香族ジハロゲン化合物が、出発物質となっていることが多く、分子中にハロゲン基が残存していたり、末端がハロゲン基となっているオリゴマーが混在していたりする場合がある。このようなハロゲン基は、脱ハロゲン反応によってハロゲン化水素を発生させる要因ともなり得る。このため樹脂粒子に含まれる前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂のハロゲン含有量は、1500ppm以下であることが好ましい。
前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂のハロゲン含有量は、1200ppm以下であることがより好ましく、900ppm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂のハロゲン含有量は、例えば燃焼イオンクロマトグラフ等の方法により、求めることができる。
前記樹脂粒子は、含有するポリアリーレンスルフィド系樹脂のハロゲン含有量が上記のような範囲内であるだけでなく、樹脂粒子自体についてハロゲン含有量を測定した場合に当該ハロゲン含有量が上記のような範囲内となっていることが好ましい。
前記樹脂発泡成形体についても同様である。
【0020】
本実施形態での前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂は、前記構成単位のなかではフェニレンスルフィドを主たる構成単位として含有するものが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド系樹脂は、構成単位に占めるフェニレンスルフィドの割合が75質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
ポリアリーレンスルフィド系樹脂は、実質的にフェニレンスルフィドのみで構成されたポリフェニレンスルフィド樹脂であることが特に好ましい。
前記ポリフェニレンスルフィド樹脂は、o−フェニレンスルフィドとp−フェニレンスルフィドとm−フェニレンスルフィドと内、p−フェニレンスルフィドとm−フェニレンスルフィドとが主体となっていることが好ましい。
前記ポリフェニレンスルフィド樹脂は、p−フェニレンスルフィドとm−フェニレンスルフィドとの合計によって占められる割合が、75質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0021】
ところで、JIS K 7201−2:2007「プラスチック−酸素指数による燃焼性の試験方法−第2部:室温における試験」で規定されている酸素指数(LOI)が26を超える樹脂は、一般的には難燃性を有するものとして判断されている。
これについて前記ポリフェニレンスルフィド樹脂は、同規格でのI型試験片(厚さ4mm、幅10mmの棒状試料)を使って求められる酸素指数が30を超えるもので、優れた難燃性を有する。また、ポリフェニレンスルフィド樹脂以外のポリアリーレンスルフィド系樹脂も同様に優れた難燃性を発揮する。従って、本実施形態の樹脂発泡成形体には優れた難燃性が発揮され得る。
【0022】
前記樹脂粒子を構成するポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物には、要求される難燃性により、必要に応じて難燃剤を含有させてもよい。
また、前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物には、ポリアリーレンスルフィド系樹脂以外の樹脂、無機フィラー、可塑剤、結晶核剤、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、抗菌剤、防鼠剤、防虫剤等を含有させてもよい。
尚、前記樹脂粒子にポリアリーレンスルフィド系樹脂に由来する特性を顕著に発揮させる上において、前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物におけるポリアリーレンスルフィド系樹脂以外の成分の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明における前記樹脂粒子の大きさ、形状は特に限定されないが、成形時の金型充填性、および発泡剤を含有させる時間等の生産性を考慮して、球換算で直径0.3mm〜2mmが好ましく、更に0.5mm〜1.5mmがより好ましい。
【0024】
前記樹脂粒子の結晶化度は20%未満とすることで発泡性、成形性が高く、軽量性や断熱性を発揮させる上で有利になり得る。
樹脂粒子の結晶化度は、10%未満であることがより好ましく、5%未満であることがさらに好ましく、3%未満であることが特に好ましい。
【0025】
本実施形態の樹脂発泡成形体は、ポリアリーレンスルフィド系樹脂を含むポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物で構成された樹脂粒子を作製する第1工程と、該第1工程で得られた樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を得る第2工程と、該第2工程で得られた発泡性樹脂粒子を加熱して発泡させることによって樹脂発泡粒子を形成させるとともに該樹脂発泡粒子どうしを融着させて樹脂発泡成形体を作製する第3工程とを実施して製造される。
【0026】
前記第1工程では、結晶化度が上記のようになった樹脂粒子を、例えば、次の工程を実施して作製することができる。
(a)ポリアリーレンスルフィド系樹脂と他の成分とを所定の割合で含有するポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物を加熱溶融状態とする熱溶融工程。
(b)前記熱溶融工程で得られた熱溶融状態のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物を急冷してポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物で固化物を形成させるとともに該固化物で形成された非発泡又は微発泡の粒子(以下「原粒」ともいう)を作製する造粒工程。
【0027】
前記熱溶融工程は、例えば、押出機やニーダーなどの装置を使ってポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物をポリアリーレンスルフィド系樹脂の融点以上の温度に加熱しながら混練する方法により実施することができる。
該熱溶融工程は、単軸押出機又は2軸押出機を用いて実施することが好ましい。
【0028】
前記造粒工程は、ウォーターリングホットカット法や水中ホットカット法などの方法により実施することができる。
ウォーターリングホットカット法や水中ホットカット法は、押出機でポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物による溶融混練物を作製し、該押出機の先端に装着された造粒用ダイスから前記溶融混練物を押し出しつつ該造粒用ダイスから押出される溶融混練物を回転するカッターで素早く切断して粒状物を形成させる、いわゆる「ホットカット造粒法」を周囲に冷却水が存在する状況下で実施する方法である。
【0029】
前記ウォーターリングホットカット法では、溶融混練物の切断自体は空気中で行われ、切断されて粒状となった溶融混練物が切断直後に冷却水に接触するように実施され、水中ホットカット法では溶融混練物を冷却水中に押出して該冷却水中で溶融混練物が粒状に切断されるように実施される。
これらはいずれにおいても溶融混練物を素早く冷却することができ、得られる原粒を結晶化度が低い状態にする上で有利である。
尚、原粒の結晶化度を低くするためには、溶融混練物の温度(T1)と冷却水の温度(T2)との間に250℃以上の温度差を設けることが好ましい。
【0030】
この造粒工程の実施態様の一例を図を参照しつつ説明する。
図1は、このような造粒工程で用いられる造粒装置Tを示したもので、
図2は、ウォーターリングホットカット法の造粒用ダイス1とその周辺機器を示したものである。
また、
図3は、
図2におけるA−A線矢視断面図であり、ダイス本体10(ダイプレートとも呼称される)を前面から見た様子を示すものである。
【0031】
図に示されているように前記造粒装置Tは、造粒用ダイス1が先端に取り付けられた押出機2と、造粒用ダイス1のダイス孔15から吐出される溶融混練物20(溶融状態のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物)を切断するカッター3が収容されるとともに、造粒用ダイス1の押出方向での前面(樹脂吐出面10f)を覆う空間4bを形成させるためのチャンバー4とを備えている。
【0032】
図にも示されているように、当該造粒装置Tは、ダイス本体10(ダイプレートとも呼称される)と、押出機2の先端側に固定されたダイホルダ11とを備え、前記ダイス本体10が、ダイホルダ11の先端側に固定されており、該ダイス本体10が固定されている前記ダイホルダ11の先端側の一部が可動式となってダイバータバルブ13として機能するようになっている。
【0033】
前記ダイホルダ11は、押出機2のシリンダに連通して設けられた内部流路11aを備え、該内部流路を通じて溶融混練物20を押出機2からダイス本体10に向けて供給すべく構成されている。
【0034】
前記ダイス本体10は、ダイホルダ11の内部流路11aを通じて供給された溶融混練物20を、押出方向に沿って延在し且つ互いに並行する複数本の樹脂流路14を流通するように分岐させるとともに各樹脂流路14の先端部に開口する複数のダイス孔15から溶融混練物20を吐出するよう構成されている。
【0035】
ダイス本体10の樹脂吐出面10fでは、各樹脂流路14からの溶融混練物20の出口が同一円周上に等間隔に配され、それぞれにおいて複数の前記ダイス孔15が群を成して配されている。
【0036】
前記カッター3は、前記樹脂吐出面10fに対向するように配された基板31と、該基板31から前記樹脂吐出面10fに向けて突出するように配された複数の切断刃32と、該基板31を回転させる回転軸33とを備えている。
前記回転軸33は、樹脂流路14の出口が配されている円周の中心を通り、且つ、前記樹脂吐出面10fに対して垂直となる方向(押出方向)に沿って延在するように配され、前記基板31を前記樹脂吐出面10fに平行に維持しながら回転させるように前記基板31に接続されている。
前記複数の切断刃32は、前記回転軸33と基板31との接続位置より放射状に延びる方向に刃先を延在させるように配され、該刃先が樹脂吐出面10fに摺接しながら円運動するように配されている。
そして、前記カッター3は、前記回転軸33によって前記基板31が回転した際には、刃先でダイス孔15から押出された溶融混練物20を粒状に切断するよう配されている。
【0037】
前記造粒装置Tでは、チャンバー4内での前記空間4bにおいて粒状にカットされた溶融混練物と冷却水AQとが接触されるようになっている。
前記造粒用ダイス1には、前記冷却水AQを供給するための管路5が接続され、この管路5の一端が、送水ポンプ6を介して水槽7に接続されている。
【0038】
前記樹脂吐出面10fには、前記ダイス孔15よりも外側を周回する円形の開口を備えたスリット17が設けられている。
本実施形態の前記チャンバー4では、該スリット17から前記冷却水AQを吐出して前記冷却水AQによる水膜SPが形成されるようになっており、原則的には前記ダイス孔15やダイス孔15から吐出された直後の溶融混練物20と前記冷却水AQとが接触しないようになっている。
そして、本実施形態の前記チャンバー4では、前記カッター3によって粒状に切断された溶融混練物20が切断刃32によって径方向外側に弾き飛ばされ、前記水膜SPに衝突して瞬時に冷却されるようになっている。
【0039】
前記造粒装置Tは、冷却されて固化した溶融混練物20が前記原粒Bとして冷却水AQとともにチャンバー4から排出され、分離槽8で比重分離によって冷却水と分離されるようになっている。
通常、得られる原粒Bは水に対して高比重となるため分離槽8の槽底から回収されることになる。
尚、分離槽8で分離された冷却水AQは、例えば、チラー(図示せず)で冷却した後に前記水槽7へと返送して再利用することができる。
【0040】
本実施形態における前記水中ホットカット法は、前記チャンバー内でダイス孔が常時冷却水に接するようになっているだけで、おおよその構成はウォーターリングホットカット法と同様の装置にて実施される。
【0041】
前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂は融点が高く、両方法では前記樹脂吐出面が高温になってしまうため、前記造粒工程は、前記樹脂吐出面と冷却水との接触する機会の少ないウォーターリングホットカット法によって実施される方が水中ホットカット法によって実施されるよりも効率的であるといえる。
【0042】
尚、原粒の作製方法は、上記のような方法に限定されるものではない。
本実施形態での原粒は、溶融混練物を押出機の先端に装着したダイスのダイス孔から連続的に紐状に押出してストランドを形成させ、該ストランドを冷却水槽に浸漬した後にペレタイザーでカットするようなストランド−カット法によって作製してもよい。
【0043】
本実施形態における樹脂粒子や樹脂発泡成形体の結晶化度は、次のようにして求めることができる。樹脂粒子については、該樹脂粒子を粉砕するか、刃物などで刻むかして細粒状(粉末状)とし、これを測定試料とする。樹脂発泡成形体についても、樹脂粒子で構成されている部分から細粒状(粉末状)の測定試料を採取する。
得られた測定試料は、示差走査熱量計(DSC)使って次のようにして結晶化度を求めることができる。
【0044】
(結晶化度の測定方法)
結晶化度は、JIS K7122:2012「プラスチックの転移熱測定方法」に記載されている方法に基づいて測定する。
但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行う。
示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー(株)製)を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう測定用試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/minのもと30℃で2分間保持し、速度10℃/minで30℃から350℃まで昇温した時のDSC曲線を得る。
その時の基準物質はアルミナを用いる。
前記結晶化度とは、融解ピークの面積から求められる融解熱量(J/g)と結晶化ピークの面積から求められる結晶化熱量(J/g)の差をポリアリーレンスルフィド系樹脂の完全結晶の理論融解熱量(例えば、ポリフェニレンスルフィド樹であれば「146.2J/g」)で除して求められる。
融解熱量及び結晶化熱量は装置付属の解析ソフトを用いて算出する。
具体的には、融解熱量は高温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び低温側のベースラインへ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分から算出される。
結晶化熱量は低温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び高温側へ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から算出される。
つまり、結晶化度は次式より求められる。
結晶化度(%)=
((融解熱量(J/g)−結晶化熱量(J/g))/146.2(J/g))×100
【0045】
本実施形態における樹脂発泡成形体は、前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂を結晶化度の高い状態で含有する方が強度と耐熱性とに優れる。
従って、樹脂発泡成形体では、前記ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物が10%以上の結晶化度を示す状態になっていることが好ましい。樹脂発泡成形体の結晶化度は、好ましくは15%以上であり、更に好ましくは20%以上である。
【0046】
本実施形態では、前記第2工程として、当該造粒工程で得られた原粒に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とする発泡剤含浸工程を行うことができる。
該発泡剤含浸工程で発泡性樹脂粒子を作製するための具体的な方法としては、例えば、オートクレーブなどの圧力容器中で原粒と物理発泡剤とを加圧雰囲気下で接触させる方法が挙げられる。該物理発泡剤としては、ブタンやペンタンなどの炭化水素及びそのハロゲン化物、窒素、アルゴン、二酸化炭素などの無機ガスなどが挙げられる。
なかでも、原粒に含浸させる物理発泡剤は、ポリアリーレンスルフィド系樹脂への溶解性に優れた二酸化炭素であることが好ましい。
前記発泡剤含浸工程は、原粒への二酸化炭素の含浸性を強化する意味で、二酸化炭素の臨界点を超えた超臨界条件下で実施されてもよい。
【0047】
本実施形態における前記第3工程は前記発泡剤が含浸された原粒(発泡性樹脂粒子)をポリアリーレンスルフィド系樹脂のガラス転移温度以上の温度となるように加熱して発泡状態(樹脂発泡粒子)にさせるような方法で実施することができる。
即ち本実施形態における前記第3工程は、例えば、前記発泡剤を含有した原粒を成形型内に充填し、加熱することで成形型内に仕込んだ原粒の発泡化によって該成形型内に複数の樹脂発泡粒子を形成させつつ当該樹脂発泡粒子どうしを熱融着させて樹脂発泡成形体(ビーズ発泡成形体)を形成させるような方法で実施できる。
【0048】
発泡性樹脂粒子を発泡させて樹脂発泡成形体を作製する際には、150℃以上200℃以下の雰囲気加熱を実施することが好ましく、このような温度の過熱水蒸気を利用して発泡性樹脂粒子を加熱することが好ましい。
【0049】
上記のようにして作製される樹脂発泡成形体の見掛け密度は、成形型内に充填する発泡性樹脂粒子の量によって調節でき、樹脂発泡成形体の見掛け密度は50kg/m
3から500kg/m
3が好ましく、100kg/m
3から400kg/m
3がより好ましい。
樹脂発泡成形体の見掛け密度は、樹脂発泡成形体の強度、耐熱変形性、及び、難燃性を考えると発泡成形体の密度が高い方が好ましいが、軽量性も考慮すると200kg/m
3以下であることが好ましい。
【0050】
樹脂発泡成形体の見掛け密度は、例えば、次のようにしてもとめることができる。
できるだけ元のセル構造を変えないように切断して100cm
3以上の試料を切り出し、この試料をJIS K7100:1999の記号23/50、2級環境下で16時間状態調節した後、その寸法、質量を測定して、密度を下記式により算出する。
見掛け密度(kg/m
3)=試料の質量(kg)/試料の体積(m
3)
なお、試料の寸法測定には、例えば、(株)ミツトヨ製「DIGIMATIC」CD−15タイプを用いることができる。
【0051】
樹脂発泡成形体の発泡倍率は、1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることがさらに好ましい。
樹脂発泡成形体の発泡倍率は、軽量性を考慮すると高い方が好ましいが、強度や生産性を考慮すると50倍以下であることが好ましく、40倍以下であることがより好ましく、30倍以下であることがさらに好ましい。
【0052】
樹脂発泡成形体の発泡倍率は、当該樹脂発泡成形体を構成する樹脂組成物の真密度(非発泡状態での密度:ρ
0)を前記見掛け密度(ρ
1)で除した値(ρ
0/ρ
1)として求められる。
樹脂組成物の密度(ρ
0)は、JIS K7112:1999「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」での「A法(水中置換法)」などによって求めることができる。
【0053】
また、樹脂発泡成形体は内部の平均気泡径が100μm以下となった緻密な構造を有することが好ましい。該平均気泡径は90μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましい。
【0054】
該平均気泡径は、次のようにして求めることができる。
(平均気泡径の求め方)
平均気泡径は、樹脂発泡成形体が樹脂発泡粒子で構成されている場合は、樹脂発泡粒子どうしの界面部では気泡の大きさが内部と大きく異なっていることがあるため、このような場所を避けて測定する。
即ち、平均気泡径は、当該樹脂発泡粒子を概ね中心部で2分割するように切断した断面を走査型電子顕微鏡により撮影し、該撮影で得られた画像に基づいて測定することができる。具体的には、前記断面の写真を走査型電子顕微鏡(例えば、(株)日立製作所製、S−3000Nや(株)日立ハイテクノロジーズ製、S−3400N)にて撮影する。
撮影は、概ね中心部で2分割するように切断されているとみられる樹脂発泡粒子から無作為に選択した4つの樹脂発泡粒子のそれぞれ中央部を撮影する。
撮影した写真をA4用紙上に縦横2画像ずつ、合計4画像印刷し、縦・横方向に平行な任意の一直線上(長さ60mm)にある気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出する。ただし任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにして描くこととする(接してしまう場合は気泡数に含める)。
計測は縦・横それぞれ1画像につき6ヶ所ずつとする。
平均弦長t(mm)=60/(気泡数×写真の倍率)
そして次式により各方向における気泡径を算出する。
D(mm)=t/0.616
さらにそれらの積の2乗根を平均気泡径とする。
平均気泡径(mm)=(D縦×D横)
1/2
【0055】
前記樹脂発泡成形体は、難燃性に優れるとともに耐熱性にも優れ、軽量性を有する。
該樹脂発泡成形体の用途としては、例えば、自動車、電車、船舶、飛行機などの移動体;テレビ、オーディオ、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、ルームエアコン、ヒーター、オーブン、電子レンジ、炊飯器などの家電製品;スマートフォン、タブレット、パソコンなどの電子機器;などの各種の用途において利用できる。
また、本発明の樹脂発泡粒子や樹脂発泡成形体は、このような用途以外にも利用可能であり、本明細書中での例示に何等限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
ポリフェニレンスルフィド樹脂(商品名「Ryton QC160P」、Solvay社製、融点=279℃、ガラス転移温度=91℃)を除湿乾燥機にて130℃の温度で4時間以上乾燥させ、押出機(15mm二軸押出機(L/D=40))にて、樹脂温度302℃で溶融混練し、溶融混練物を紐状に押出した。
紐状の溶融混練物を14℃の冷却水が貯留されている冷却水槽に導入して水冷してストランドを得た後に、該ストランドを小型ペレタイザーにてカットして直径約1mm、長さ1.5mmの樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の結晶化度は7.1%であった。
この樹脂粒子をオートクレーブ内に充填し、4.0MPaの圧力下で発泡剤である二酸化炭素に接触させ、該圧力を24時間維持して二酸化炭素が含浸された樹脂粒子(発泡性樹脂粒子)を得た。
この発泡性樹脂粒子での発泡剤含有量は、3.5質量%であった。
次いで、得られた発泡性樹脂粒子を、縦200mm×横200mm×厚さ10mmの直方体の成形空間を有する成形型内に充填し、0.5MPa(152℃)の過熱水蒸気で20秒加熱することで見掛け密度が300kg/m
3(発泡倍率:約4.5倍)の樹脂発泡成形体を得た。
【0058】
(実施例2)
溶融混練物をウォーターリングカット法で粒子化したこと以外は実施例1と同様に樹脂発泡成形体を作製した。
尚、ここで得られた樹脂粒子の結晶化度は8%であり、最終的に得られた樹脂発泡成形体の見掛け密度は600kg/m
3(発泡倍率:約2.2倍)であった。
【0059】
(参考例1)
冷却水槽の温度を55℃とした以外は、実施例1と同様に樹脂粒子を得た後に、樹脂発泡成形体を作製した。得られた樹脂粒子の結晶化度は14%であり、この樹脂粒子に発泡剤を含浸させた発泡性樹脂粒子では樹脂発泡成形体を得ることができなかった。
【0060】
上記のことからも本発明によれば耐熱性や難燃性に優れた樹脂発泡成形体が提供されると理解できる。