【解決手段】接着剤組成物は、シリコーン系粒子と、シランカップリング剤と、重合性化合物と、硬化剤とを含有し、前記シリコーン系粒子の平均粒子径から算出される真球粒子の表面積の合計が、当該組成物100g当たり10×10
前記シリコーン系粒子が、球状シリコーンゴムパウダーの表面をシリコーンレジンで被覆した球状粉末であるシリコーン複合パウダーを含む請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.接着剤組成物
2.接続体の製造方法
3.実施例
【0015】
<1.接着剤組成物>
本実施の形態に係る接着剤組成物は、シリコーン系粒子と、シランカップリング剤と、重合性化合物と、硬化剤とを含有し、シリコーン系粒子の平均粒子径から算出される真球粒子の表面積の合計が、当該組成物100g当たり10×10
3m
2以上である。これにより、透湿性が向上し、耐湿性評価の試験法の一つであるHAST(Highly Accelerated Temperature and Humidity Stress Test)において、高い信頼性を得ることができる。
【0016】
接着剤組成物は、フィルム状、又はペースト状のいずれであってもよい。取り扱いのし易さからはフィルム状であることが好ましく、コストの面からはペースト状であることが好ましい。また、接着剤組成物の硬化型としては、熱硬化型、光硬化型、光熱併用硬化型などが挙げられ、用途に応じて適宜選択することができる。
【0017】
以下、熱硬化型の接着剤組成物を例に挙げて説明する。熱硬化型としては、例えば、カチオン硬化型、アニオン硬化型、ラジカル硬化型、又はこれらを併用することができる。重合性化合物としては、イオン重合基(カチオン重合、アニオン重合)を有するエポキシ化合物、オキセタン化合物、ラジカル重合基を有する(メタ)アクリル化合物などが挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、シランカップリング剤としては、エポキシ基、(メタ)アクリル基、ビニル基などの官能基を有するシランカップリング剤が挙げられ、重合性化合物の種類に応じて適宜選択することができる。
【0018】
熱硬化型の具体例として、アニオン硬化型のエポキシ系樹脂組成物を示す。具体例として示す接着剤組成物は、シリコーン系粒子と、エポキシ系シランカップリング剤と、エポキシ化合物と、エポキシ硬化剤とを含有する。これにより、高い透湿度を有するエポキシ系接着剤を得ることができる。
【0019】
シリコーン系粒子としては、例えば、オルガノポリシロキサンを架橋した構造を有するシリコーンゴムパウダー、シロキサン結合が(RSiO
3/2)
nで表される三次元網目状に架橋した構造を有するシリコーンレジンパウダー、球状シリコーンゴムパウダーの表面をシリコーンレジンで被覆した球状粉末であるシリコーン複合パウダーなどが挙られ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも分散性の観点から、シリコーン系粒子は、シリコーン複合パウダーを含むことが好ましい。市場で入手可能なシリコーン複合パウダーの具体例としては、信越化学工業(株)の商品名「KMP−600」、「KMP−605」、「X−52−7030」などを挙げることができる。
【0020】
シリコーン系粒子の平均粒子径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。これにより、接着剤組成物中のシリコーン系粒子の平均粒子径から算出される真球粒子の表面積の合計値を大きくすることが可能となる。
【0021】
シリコーン系粒子の平均粒子径から算出される真球粒子の表面積の合計は、組成物100g当たり10×10
3m
2以上、より好ましくは組成物100g当たり25×10
3m
2以上150×10
3m
2以下、さらに好ましくは組成物100g当たり50×10
3m
2以上150×10
3m
2以下である。シリコーン系粒子の平均粒子径から算出される真球粒子の表面積の合計が大きくなるほど、透湿度が高くなるが接着強度が低下する傾向にある。
【0022】
なお、接着剤組成物中のシリコーン系粒子の平均粒子径から算出される真球粒子の表面積の合計は、例えば、シリコーン系粒子の比表面積と、シリコーン系粒子の添加量とから算出することができる。また、シリコーン系粒子の比表面積は、例えば、平均粒子径より算出した粒子1個当たりの表面積と、平均粒子径及び真比重より算出した粒子1個当たりの質量とから求めることができる。
【0023】
シリコーン系粒子の配合量は、シリコーン系粒子を除く接着剤組成物100質量部に対し、例えば1〜30質量部とすることが好ましく、5〜30質量部とすることがより好ましく、10〜30質量部とすることがさらに好ましい。なお、接着剤組成物に導電粒子を配合する場合には、導電粒子を除く接着剤組成物100質量部に対する質量部の範囲である。
【0024】
エポキシ系シランカップリング剤は、エポキシ基と、加水分解性基の両者を有する有機ケイ素化合物であり、シリコーン系粒子とマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂とを化学結合させ、分散性を向上させる。
【0025】
エポキシ系シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するシラン化合物を挙げることができる。市場で入手可能なエポキシ系シランカップリング剤の具体例としては、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)の「A−187」などを挙げることができる。
【0026】
エポキシ系シランカップリング剤の配合量は、シリコーン系粒子を除く接着剤組成物100質量部に対し、例えば0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.1〜5質量部とすることがより好ましく、0.5〜1質量部とすることがさらに好ましい。
【0027】
エポキシ化合物としては、特に限定されず、ナフタレン型エポキシ化合物、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ノボラックフェノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物などが挙られ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。市場で入手可能なナフタレン型2官能性エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)の「HP4032D]などを挙げることができる。
【0028】
エポキシ化合物の配合量は、シリコーン系粒子を除く接着剤組成物100質量部に対し、例えば1〜30質量部とすることが好ましく、1〜20質量部とすることがより好ましく、1〜10質量部とすることがさらに好ましい。
【0029】
エポキシ硬化剤としては、イミダゾール類、多価フェノール類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジド類、ポリメルカプタン、ルイス酸−アミン錯体などが挙られ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも保存安定性と硬化物の耐熱性の観点から、エポキシ硬化剤は、イミダゾール類を含むことがより好ましい。また、保存安定性、可使時間の観点から、エポキシ硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したマイクロカプセル型の潜在性硬化剤を用いることが好ましい。市場で入手可能なイミダゾール系の潜在性硬化剤としては、旭化成ケミカルズ(株)の「HP3941」などを挙げることができる。
【0030】
エポキシ硬化剤の配合量は、シリコーン系粒子を除く接着剤組成物100質量部に対し、例えば5〜70質量部とすることが好ましく、10〜60質量部とすることがより好ましく、20〜50質量部とすることがさらに好ましい。
【0031】
また、具体例として示す接着剤組成物は、ポリマー、ゴム成分を含有することが好ましい。
【0032】
ポリマーとしては、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネートなどが挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からビスフェノールA型フェノキシ樹脂が好適に用いられる。フェノキシ樹脂は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンより合成されるポリヒドロキシポリエーテルである。市場で入手可能なフェノキシ樹脂の具体例としては、新日鐵住金化学(株)の商品名「YP−50」などを挙げることができる。
【0033】
ポリマーの配合量は、シリコーン系粒子を除く接着剤組成物100質量部に対し、例えば質量部とすることが好ましく、10〜60質量部とすることがより好ましく、20〜50質量部とすることがさらに好ましい。
【0034】
ゴム成分としては、アクリルゴム(ACR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)などが挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からアクリルゴムが好適に用いられる。市場で入手可能なアクリルゴムの具体例としては、長瀬ケムテックス(株)の商品名「SG80H」などを挙げることができる。
【0035】
また、ゴム成分として、弾性粒子を含有することが好ましい。弾性粒子は、内部応力を吸収することができ、また、硬化阻害を起こさないため、高い接続信頼性を与えることができる。弾性粒子としては、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子、シリコーン粒子などが挙げられる。市場で入手可能な架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子の具体例としては、XER−91(平均粒子径0.5μm、JSR社製)などが挙げられる。
【0036】
ゴム成分の配合量は、シリコーン系粒子を除く接着剤組成物100質量部に対し、例えば1〜30質量部とすることが好ましく、5〜25質量部とすることがより好ましく、10〜20質量部とすることがさらに好ましい。
【0037】
接着剤組成物の最低溶融粘度は、1〜100000Pa・sであることが好ましく、10〜10000Pa・sであることがより好ましい。最低溶融粘度が高すぎると、熱圧着時に電極間のバインダーが十分に排除できないため、接続抵抗が上昇する傾向にある。一方、最低溶融粘度が低すぎると、熱圧着時の加重による接着剤組成物の変形が大きくなるため、加圧解放時に接着剤組成物の復元力が接続部界面等に剥離方向の力として加わる。このため、熱圧着直後に接続抵抗が上昇したり、接続部に気泡が発生したりする傾向がある。
【0038】
このような構成の接着剤組成物は、硬化後の40℃の温度及び90%の相対湿度の条件で測定される透湿度が、好ましくは80g/m
2・24hr以上、より好ましくは85g/m
2・24hr以上、さらに好ましくは90g/m
2・24hr以上である。これにより、接着剤組成物で接着したデバイス内部に侵入した水分を即座に排出させることができ、HASTにおいて、高い信頼性を得ることができる。なお、透湿度は、JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準拠し、40℃、相対湿度90%の条件で測定することができる。
【0039】
このような接着剤組成物によれば、デバイス内部に侵入した水分を即座に排出させることができるため、優れた接続信頼性を得ることができる。耐水性を持たせた場合には、浸入した水分が滞留することになる。本発明態様を換言すると、一定の水分の浸入を許容する代わりに、接着性の劣化を過度に進行させる水分の保持は許容しないものとも言える。求められる耐水条件を調整できる点で、デバイス及びそれを組み込む機器類の設計条件の選択性を広げる効果がある。例えば、耐候性が求められる携帯端末やウェアラブル端末の他にも、より高い耐候性が求められると想定されるバイクや自動車、飛行装置(ドローンや飛行機など)、船舶類といった移動体、乗り物の電装に使用できる利点が挙げられる。
【0040】
また、接着剤組成物は、シリコーン系粒子の平均粒子径よりも大きい平均粒子径を有する導電粒子をさらに含有した導電性接着剤としてもよい。シリコーン粒子の平均粒子径に対する導電粒子の平均粒子径の比は、導電性の観点から、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは3.5以上である。これは、シリコーン系粒子が導電粒子の圧縮や扁平化を阻害しないためには数値は大きい方がよい。一方、導電粒子が電極間に挟持される場合に、電極上の酸化物などを突き破るのを補助するためには、圧縮や扁平化した導電粒子と一緒にシリコーン系粒子を挟持することが好ましい場合もあるため、数値は小さい方がよい場合もある。好ましくは1.1以下、より好ましくは1.07以下、更により好ましくは1.05以下である。これらは、目的に合わせて適宜調整すればよい。
【0041】
導電性接着剤は、フィルム状の導電性フィルム、又はペースト状の導電性ペーストのいずれであってもよい。取り扱いのし易さからは導電性フィルムが好ましく、コストの面からは導電性ペーストが好ましい。また、導電接着剤及び導電性フィルムは、異方性導電接着剤及び異方性導電フィルムとして用いることもできる。また、これらの構造体は、異方性接続構造体であってもよい。
【0042】
導電粒子としては、導電性フィルムにおいて使用されている公知の導電粒子を用いることができる。例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートさせる、絶縁性微粒子を付着させる、といった絶縁処理をしたもの等が挙げられる。これらの中から2種以上を混在させてもよい。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものである場合、樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を用いることができる。
【0043】
導電粒子の平均粒径としては、通常1〜30μm、好ましくは2〜20μm、より好ましくは2.5〜15μmである。また、バインダー樹脂中の導電粒子の平均粒子密度は、接続信頼性及び絶縁信頼性の観点から、好ましくは100〜100000個/mm
2、より好ましくは500〜80000個/mm
2である。例えば、フィルム状にしてフィルム面を光学顕微鏡や金属顕微鏡により得られた観察結果を、画像解析ソフトWinROOF(三谷商事(株))により、求めることができる。
【0044】
また、導電粒子は、絶縁性樹脂中に分散されていてもよく、フィルム状の場合では、フィルム平面視において個々に独立していてもよく、また任意に配置されて存在していてもよい。導電粒子が配置される場合、接続される電極のサイズやレイアウトに応じて、個数密度や導電粒子間距離などを設定することができる。このため、捕捉向上、ショート抑制などに効果があり、歩留まりの向上などコスト削減効果も見込まれる。
【0045】
導電性接着剤の最低溶融粘度は、1〜100000Pa・sであることが好ましく、10〜10000Pa・sであることがより好ましい。最低溶融粘度の適性化は、導電粒子の圧縮変形特性にも依存するが、最低溶融粘度が高すぎると、熱圧着時に導電粒子と電極との間のバインダーが十分に排除できないため、接続抵抗が上昇する傾向にある。特に、突起を有する導電粒子は、熱圧着時に導電粒子と電極との間のバインダーを十分に排除するのが困難となる。一方、最低溶融粘度が低すぎると、熱圧着時の加重による導電性接着剤の変形が大きくなるため、加圧解放時に導電性接着剤の復元力が接続部界面等に剥離方向の力として加わる。このため、熱圧着直後に接続抵抗が上昇したり、接続部に気泡が発生したりする傾向がある。
【0046】
このような構成の導電性接着剤は、硬化後の40℃の温度及び90%の相対湿度の条件で測定される透湿度が、好ましくは80g/m
2・24hr以上、より好ましくは85g/m
2・24hr以上、さらに好ましくは90g/m
2・24hr以上である。これにより、導電性接着剤で接着したデバイス内部に侵入した水分を即座に排出させることができ、HASTにおいて、高い信頼性を得ることができる。なお、透湿度は、JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準拠し、40℃、相対湿度90%の条件で測定することができる。
【0047】
このような導電性接着剤によれば、デバイス内部に侵入した水分を即座に排出させることができるため、優れた接続信頼性を得ることができる。
【0048】
<2.接続体の製造方法>
本実施の形態に係る接続体の製造方法は、シリコーン系粒子と、シランカップリング剤と、重合性化合物と、硬化剤とを含有し、シリコーン系粒子の平均粒子径から算出される真球粒子の表面積の合計が、組成物100g当たり10×10
3m
2以上である接着剤組成物を介して第1の電子部品と第2の電子部品とを配置する配置工程と、圧着ツールにより第2の電子部品を第1の電子部品に圧着させるとともに、接着剤組成物を硬化させる硬化工程とを有する。ここで、圧着ツールとは、第1の電子部品もしくは第2の電子部品、またはその両方から加圧するものを指す。また、圧着ツールの形状や材質は特に限定はされないが、一例として、加熱機構を備えた金属製の平坦状のものが挙げられる。これは、公知の熱圧着装置に使用されるものであってもよい。また、光を照射する機構を備えてもよい。
【0049】
また、本実施の形態に係る接続体は、第1の電子部品と、第2の電子部品と、第1の電子部品と第2の電子部品とが接着された接着膜とを備え、接着膜は、シリコーン系粒子と、シランカップリング剤と、重合性化合物と、硬化剤とを含有し、シリコーン系粒子の平均粒子径から算出される真球粒子の表面積の合計が、当該組成物100g当たり10×10
3m
2以上である接着剤組成物が硬化してなり、透湿度が80g/m
2・24hr以上である。
【0050】
本実施の形態に係る接続体は、第1の電子部品と第2の電子部品とが接着された接着膜が、高い透湿度を有するため、デバイス内部に侵入した水分を即座に排出させることができ、HASTにおいて、高い信頼性を得ることができる。
【0051】
以下、接着フィルムを用いた接続体の製造方法について説明する。
図1は、本実施の形態に係る接続体の製造方法の配置工程を模式的に示す断面図である。なお、接着フィルムを構成する接着剤組成物は、前述と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0052】
[配置工程(S1)]
図1に示すように、配置工程(S1)では、第1の電子部品10上にシリコーン系粒子21を含有する接着フィルム20を配置する。第1の電子部品10は、第1の端子列11を備える。第1の電子部品10は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第1の電子部品10としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、有機EL(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用途、タッチパネル用途などの透明基板、プリント配線板(PWB)、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)などが挙げられる。プリント配線板の材質は、特に限定されず、例えば、FR−4基材などのガラエポでもよく、熱可塑性樹脂などのプラスチック、セラミックなども用いることができる。また、透明基板は、透明性の高いものであれば特に限定はなく、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点からセラミック基板が好適に用いられる。
【0053】
また、第1の電子部品に対向する第2の電子部品としては、ICやフレキシブル基板等のメッキバンプが形成されていることが好ましい。メッキバンプは、ディンプルが低い、もしくはないことが好ましく、又は表面がフラットであることが好ましい。また、メッキバンプの表面は、圧着時に接触面積を増大させる観点からレベリングされていることが好ましい。また、配線基板には、スタッドバンプが形成されていてもよい。
【0054】
接着フィルム20は、前述した接着剤組成物をフィルム状にしてものであるため、ここでは詳細な説明を省略する。接着フィルム20の厚みは、1〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。単層の場合にも、多層にした場合においても、この範囲は同様となる。また、ペースト状の場合には、接続に使用する際の厚みを指す。
【0055】
[硬化工程(S2)]
硬化工程(S2)では、接着フィルム20上に第2の電子部品を配置し、圧着ツールにより第2の電子部品を第1の電子部品10に加圧して、熱を加えながら圧着させる。また、硬化工程(S2)では、圧着ツールを用いて、好ましくは250℃以下の温度、より好ましくは220℃以下の温度、さらに好ましくは200℃以下の温度で押圧する。これにより、圧着ツールの熱により樹脂が溶融し、圧着ツールにより第2の電子部品が十分に押し込まれ、樹脂が熱硬化するため、優れた接着性を得ることができる。この場合、圧着ツールには、加熱機構が組み込まれていることを前提としているが、圧着ツールに加熱機構が組み込まれていない方法により接着フィルム20を加熱させ硬化させてもよい。
【0056】
第2の電子部品は、第1の端子列11に対向する第2の端子列を備える。第2の電子部品は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第2の電子部品としては、例えば、IC(Integrated Circuit)、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、テープキャリアパッケージ(TCP)基板などが挙げられる。ICをFPCに実装した場合には、COF(Chip On Film)となる。
【0057】
また、硬化工程(S2)では、圧着ツールと第2の電子部品との間に緩衝材を使用してもよい。緩衝材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)、ポリイミド、ガラスクロス、シリコンラバーなどを用いることができる。
【0058】
このような接続体の製造方法によれば、第1の電子部品と第2の電子部品とを接着させる接着膜が、高い透湿度を有するものとなるため、デバイス内部に侵入した水分を即座に排出させることができ、HASTにおいて、高い信頼性を得ることができる。
【0059】
[変形例]
なお、上述した実施の形態では、接着フィルムを用いて第1の電子部品と第2の電子部品とを接続することとしたが、これに限られることなく、導電粒子を含有した導電性接着フィルムを用いて第1の電子部品と第2の電子部品とを接続するようにしてもよい。また、導電性接着フィルムは、導電粒子を含有する層(便宜的に、導電粒子含有層とする)と、導電粒子を含有しない層(便宜的に、導電粒子非含有層とする)からなる2層以上の構成であってもよい。また、ペースト状の場合にも、接続時に同様の構成をとることができる。
<3.実施例>
【実施例】
【0060】
以下、本技術の実施例について説明する。第1の実施例では、接着剤組成物の一形態として接着フィルムを作製し、接続体を作製した。そして、硬化後の接着フィルムの透湿度、接続体の初期の接着強度、及び信頼性試験後の接着強度、並びに、接続体の初期の導通抵抗、及び信頼性試験後の導通抵抗を測定した。
【0061】
[接着フィルムの作製、及び透湿度の測定]
表1に示す材料を配合して厚み35μmの接着フィルムを作製した。また、透湿度の測定のために、接着フィルムを温度200℃で硬化させて試料フィルムを作製した。透湿度は、JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準拠し、40℃、相対湿度90%の条件で測定した。具体的には、カップに塩化カルシウム(無水)を封入し、試料フィルムでカバーしたカップを、恒温恒湿状態に静置し、一定時間毎に秤量操作を繰り返し、カップの質量増加を水蒸気の透過量として評価した。
【0062】
[接続体の作製]
ベアチップ(ICチップ)は、厚み0.4mm、幅6mm、長さ6mm(6mm×6mm)であり、導通測定用配線(バンプサイズ:50×50μm、ピッチ:85μm(バンプ間スペース35μm)、金バンプ高さh=15μm)を形成した測定用TEG(Test Element Group)を用いた。金バンプは、メッキバンプであり、ディンプルのない平滑なものを用いた。
【0063】
フレキシブル配線板(FPC:Flexible Printed Circuits)は、基材がポリイミドであり、厚みが25μm、ピッチ:85μm(L/S=45/40)、Top:40μmである導通測定用配線を形成した測定用TEGを用いた。
【0064】
接着フィルムを用いてフレキシブル配線板上にベアチップを実装した。熱圧着条件は、温度200℃、圧力100MPa、10secとした。また、熱圧着時に、緩衝材として厚み50μmのポリテトラフルオロエチレンシートをベアチップ上に配置した。
【0065】
[接着強度の測定]
接続体のフレキシブル配線板を引っ張り速度50mm/secで90°方向に引き剥がし、その引き剥がしに要したピール強度の最大値を接着強度とした。初期の接続体、及び信頼性試験後の接続体について測定した。信頼性試験は、JEDEC(JESD22−A110)に準拠し、温度110℃、湿度85%、時間264hrの条件とした。
【0066】
[導通抵抗の測定]
ベアチップとフレキシブル配線板との接続状態について、デジタルマルチメータを使用して、接続初期及び信頼性試験後における導通抵抗(Ω)を測定した。導通抵抗値の測定は、ベアチップのバンプに接続されたフレキシブル配線板の配線にデジタルマルチメータを接続し、4端子法にて電流を1mA流して導通抵抗値を測定した。信頼性試験は、JEDEC(JESD22−A110)に準拠し、温度110℃、湿度85%、時間264hrの条件とした。
【0067】
【表1】
ポリマー:YP−50(新日鐵住金化学(株))
エポキシ硬化剤:HP3941(旭化成ケミカルズ(株))
エポキシ化合物:HP4032D(DIC(株))
ゴム粒子:XER−91(JSR(株))
ゴム成分:SG80H(ナガセケムテックス(株))
カップリング剤:A−187(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合))
シリコーン系粒子A:X−52−7030(信越シリコーン(株))、平均粒子径0.8μm、真比重1.01
シリコーン系粒子B:KMP−605(信越シリコーン(株)))、平均粒子径2μm、真比重0.99
シリコーン系粒子C:KMP−600(信越シリコーン(株)))、平均粒子径5μm、真比重0.99
【0068】
なお、シリコーン系粒子の比表面積は、平均粒子径より算出した粒子1個当たりの表面積と、平均粒子径及び真比重より算出した粒子1個当たりの質量とから求めた。
【0069】
表1に示すように、シリコーン系粒子の平均粒子径から算出される真球粒子の表面積の合計が、組成物100g当たり10×10
3m
2以上であることにより(実施例1〜8)、80g/m
2・24hr以上の透湿度を得ることができた。また、シリコーン系粒子の平均粒子径から算出される真球粒子の表面積の合計が、組成物100g当たり50×10
3m
2以上であることにより(実施例5〜7)、90g/m
2・24hr以上の透湿度を得ることができた。シリコーン系粒子を配合しない場合、透湿度は75g/m
2・24hrとなった(比較例1)。
【0070】
[第2の実施例]
第2の実施例では、接着剤組成物の一形態として導電性フィルムを作製し、接続体を作製した。そして、硬化後の導電性フィルムの透湿度、接続体の初期の接着強度、及び信頼性試験後の接着強度、並びに、接続体の初期の導通抵抗、及び信頼性試験後の導通抵抗を測定した。
【0071】
[導電性フィルムの作製、及び透湿度の測定]
表1に示す材料を配合して厚み35μmの導電性フィルムを作製した。また、透湿度の測定のために、導電性フィルムを温度200℃で硬化させて試料フィルムを作製した。透湿度は、JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準拠し、40℃、相対湿度90%の条件で測定した。具体的には、カップに塩化カルシウム(無水)を封入し、試料フィルムでカバーしたカップを、恒温恒湿状態に静置し、一定時間毎に秤量操作を繰り返し、カップの質量増加を水蒸気の透過量として評価した。
【0072】
[接続体の作製]
ベアチップ(ICチップ)は、厚み0.4mm、幅6mm、長さ6mm(6mm×6mm)であり、導通測定用配線(バンプサイズ:50×50μm、ピッチ:85μm(バンプ間スペース35μm)、金バンプ高さh=15μm)を形成した測定用TEG(Test Element Group)を用いた。金バンプは、メッキバンプであり、ディンプルのない平滑なものを用いた。
【0073】
導電性フィルムを用いてフレキシブル配線板上にベアチップを実装した。熱圧着条件は、温度200℃、圧力100MPa、10secとした。また、熱圧着時に、緩衝材として厚み200μmのシリコンラバーをベアチップ上に配置した。
【0074】
[接着強度の測定]
接続体のフレキシブル配線板を引っ張り速度50mm/secで90°方向に引き剥がし、その引き剥がしに要したピール強度の最大値を接着強度とした。初期の接続体、及び信頼性試験後の接続体について測定した。信頼性試験は、JEDEC(JESD22−A110)に準拠し、温度110℃、湿度85%、時間264hrの条件とした。
【0075】
[導通抵抗の測定]
ベアチップとフレキシブル配線板との接続状態について、デジタルマルチメータを使用して、接続初期及び信頼性試験後における導通抵抗(Ω)を測定した。導通抵抗値の測定は、ベアチップのバンプに接続されたフレキシブル配線板の配線にデジタルマルチメータを接続し、4端子法にて電流を1mA流して導通抵抗値を測定した。信頼性試験は、JEDEC(JESD22−A110)に準拠し、温度110℃、湿度85%、時間264hrの条件とした。
【0076】
【表2】
ポリマー:YP−50(新日鐵住金化学(株))
エポキシ硬化剤:HP3941(旭化成ケミカルズ(株))
エポキシ化合物:HP4032D(DIC(株))
ゴム粒子:XER−91(JSR(株))
ゴム成分:SG80H(ナガセケムテックス(株))
カップリング剤:A−187(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合))
導電粒子A:Ni/Auメッキアクリル樹脂粒子、平均粒子径5μm、日本化学(株)
導電粒子B:Ni/Auメッキアクリル樹脂粒子、平均粒子径3.5μm、日本化学(株)
導電粒子C:Ni/Auメッキアクリル樹脂粒子、平均粒子径3μm、日本化学(株)
シリコーン系粒子A:X−52−7030(信越シリコーン(株))、平均粒子径0.8μm、真比重1.01
シリコーン系粒子B:KMP−605(信越シリコーン(株)))、平均粒子径2μm、真比重0.99
シリコーン系粒子C:KMP−600(信越シリコーン(株)))、平均粒子径5μm、真比重0.99
【0077】
なお、シリコーン系粒子の比表面積は、平均粒子径より算出した粒子1個当たりの表面積と、平均粒子径及び真比重より算出した粒子1個当たりの質量とから求めた。
【0078】
表2に示すように、シリコーン系粒子の平均粒子径が、導電粒子の平均粒子径よりも小さく、シリコーン系粒子の平均粒子径から算出される真球粒子の表面積の合計が、組成物100g当たり10×10
3m
2以上であることにより(実施例9〜17)、80g/m
2・24hr以上の透湿度を得ることができた。また、シリコーン系粒子の平均粒子径から算出される真球粒子の表面積の合計が、100g当たり50×10
3m
2以上であることにより(実施例13〜15)、90g/m
2・24hr以上の透湿度を得ることができた。シリコーン系粒子を配合しない場合、透湿度は75g/m
2・24hrとなった(比較例2)。また、シリコーン系粒子の平均粒子径が、導電粒子の平均粒子径以上である場合、抵抗値が高くなった(比較例3、4)。
【0079】
実施例9〜17のように導電膜の透湿度を80g/m
2・24hr以上とすることにより、信頼性試験後の抵抗上昇を抑制することができた。これは、導電膜の高い透湿度により、デバイス内部に侵入した水分を即座に排出させることができたためであると考えられる。