【解決手段】ポリプロピレン系樹脂を含有し、かつ155℃以上に融点を1つ以上有する発泡層を有し、ASTM D−3763−92に準拠した衝撃試験において、23℃での衝撃吸収エネルギー(E1)が0.30〜0.60Jであり、−25℃での衝撃吸収エネルギー(E2)が0.28〜0.50Jであることよりなる。前記発泡層は、樹脂の総質量100質量部に対して、ブロックポリプロピレン45〜75質量部と、高溶融張力ポリプロピレン10〜35質量部と、エチレン−α−オレフィン共重合体10〜30質量部と、を含有することが好ましい。
前記発泡層は、樹脂の総質量100質量部に対して、ブロックポリプロピレン45〜75質量部と、高溶融張力ポリプロピレン10〜35質量部と、エチレン−α−オレフィン共重合体10〜30質量部と、を含有する、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡シート。
前記発泡層は、樹脂の総質量100質量部に対して、ブロックポリプロピレン45〜75質量部と、高溶融張力ポリプロピレン10〜35質量部と、エチレン−α−オレフィン共重合体10〜30質量部と、を含有する、請求項6又は7に記載のポリプロピレン系樹脂発泡容器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ポリプロピレン系樹脂発泡シート)
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡シート(以下、「PP発泡シート」ということがある)は、ポリプロピレン系樹脂を含有する発泡層を有する。
PP発泡シートは、発泡層のみからなる単層構造でもよいし、発泡層の片面又は両面に非発泡層を備える多層構造でもよい。
【0012】
PP発泡シートの厚さは、用途を勘案して決定でき、例えば、0.5〜1.5mmが好ましく、0.6〜1.4mmがより好ましい。厚みが上記下限値以上であれば、強度をより高められる。厚みが上記上限値以下であれば、成形しやすい。
なお、PP発泡シートの厚みは、以下の方法で求められる。PP発泡シートのTD方向の任意の10点の厚みをシックネスゲージで測定する。10点の測定値を平均して、PP発泡シートの厚みとする。
【0013】
PP発泡シートの坪量は、250〜550g/m
2が好ましく、275〜525g/m
2がより好ましく、300〜500g/m
2がさらに好ましい。坪量が上記下限値以上であれば、強度をより高められる。坪量が上記上限値以下であれば、成形しやすい。特にPP発泡シートが発泡層のみの単層構造の場合、坪量が上記範囲を満たすことが好ましい。
PP発泡シートが非発泡層を有する多層構造の場合、PP発泡シートの坪量は、250〜550g/m
2が好ましく、275〜525g/m
2がより好ましく、300〜500g/m
2がさらに好ましい。坪量が上記下限値以上であれば、強度をより高められる。坪量が上記上限値以下であれば、成形しやすい。
【0014】
<物性>
PP発泡シートは、ASTM D−3763−92に準拠した衝撃試験において、23℃での衝撃吸収エネルギー(E1)は、0.30〜0.60Jであり、0.35〜0.56Jがより好ましく、0.40〜0.52Jがさらに好ましい。E1が上記下限値以上であれば、常温環境下での耐衝撃性を高められる。E1が上記上限値以下であれば、発泡容器の剛性をより高められる。特にPP発泡シートが発泡層のみの単層構造の場合、E1が上記範囲を満たすことが好ましい。
PP発泡シートが非発泡層を有する多層構造の場合、E1は、0.30J以上であり、0.36J以上が好ましく、0.40J以上がより好ましく、0.43J以上がさらに好ましい。E1が上記下限値以上であれば、常温環境下での耐衝撃性を高められる。PP発泡シートが非発泡層を有する場合、E1の上限は特に限定されないが、1.50J以下が好ましく、1.35J以下がより好ましい、1.20J以下がさらに好ましい。E1が上記上限値以下であれば、PP発泡シートが剛直になりすぎず、成形しやすい。
なお、PP発泡シートの23℃での衝撃吸収エネルギー(E1)は、PP発泡シートの両面の23℃での衝撃吸収エネルギー(E1)の平均値である。
【0015】
PP発泡シートは、ASTM D−3763−92に準拠した衝撃試験において、−25℃での衝撃吸収エネルギー(E2)は、0.28〜0.50Jであり、0.31〜0.47Jがより好ましく、0.35〜0.44Jがさらに好ましい。E2が上記下限値以上であれば、耐寒性をより高められる。E2が上記上限値以下であれば、発泡容器の剛性をより高められる。特にPP発泡シートが発泡層のみの単層構造の場合、E2が上記範囲を満たすことが好ましい。
PP発泡シートが非発泡層を有する多層構造の場合、E2は、0.28J以上であり、0.32J以上が好ましく、0.35J以上がより好ましく、0.37J以上がさらに好ましい。E2が上記下限値以上であれば、耐寒性をより高められる。PP発泡シートが非発泡層を有する場合、E2の上限は特に限定されないが、1.20J以下が好ましく、1.05J以下がより好ましい、0.90J以下がさらに好ましい。E2が上記上限値以下であれば、PP発泡シートが剛直になりすぎず、成形しやすい。
なお、PP発泡シートの−25℃での衝撃吸収エネルギー(E2)は、PP発泡シートの両面の−25℃での衝撃吸収エネルギー(E2)の平均値である。
【0016】
E1/E2で表される比(以下、「E1/E2比」ということがある)は、1.00〜1.50が好ましく、1.15〜1.43がより好ましく、1.16〜1.31がさらに好ましい。E1/E2比が上記範囲内であれば、低温(例えば、−25℃以下)での耐寒性をさらに高め、かつ常温での耐衝撃性をより高められる。特にPP発泡シートが発泡層のみの単層構造の場合、E1/E2が上記範囲を満たすことが好ましい。
PP発泡シートが非発泡層を有する多層構造の場合、E1/E2比は、1.00〜2.50が好ましく、1.05〜2.25がより好ましく、1.10〜2.00がさらに好ましい。E1/E2比が上記範囲内であれば、低温(例えば、−25℃以下)での耐寒性をさらに高め、かつ常温での耐衝撃性をより高められる。
【0017】
ASTM D−3763−92に準拠した衝撃試験は、次のようにして行う。試験片のサイズはMD方向100mm×TD方向100mm×原厚み(押出成形により得たPP発泡シートの厚み)とする。落錘衝撃試験装置CEAST9350(CEAST社製)、計測ソフトCEAST VIEWを使い、落錘が試験片を打ち貫く際の全吸収エネルギー/Total Energy(J)を測定する。測定条件を以下に示す。
≪測定条件≫
・試験速度:1.17m/sec。
・落錘荷重:1.926kg。
・試験片支持スパンφ76mm。
・使用タップ:7529.694(容量4.5kN、先端φ12.7mm)。
・試験温度:23℃、−20℃又は−25℃。
試験温度23℃の試験片は、JIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下に24時間以上静置して状態を調整した後、温度23℃、相対湿度50%の2級の標準雰囲気下で測定を行う。
試験温度−20℃の試験片は、−20℃に設定した低温恒温乾燥器に16時間以上静置して状態を調整した後、−20℃、湿度調整なしの雰囲気下で測定を行う。
試験温度−25℃の試験片は、−25℃に設定した低温恒温乾燥器に16時間以上静置して状態を調整した後、−25℃、湿度調整なしの雰囲気下で測定を行う。
【0018】
PP発泡シートのE1及びE2は、発泡層の樹脂の種類、発泡倍率、厚み等の組み合わせにより調節できる。
【0019】
<発泡層>
発泡層は、ポリプロピレン系樹脂を含む発泡層である。
発泡層の発泡倍率は、例えば、1.5〜5倍が好ましく、2〜3倍がより好ましい。発泡倍率が上記下限値以上であれば、断熱性を高められる。上記上限値以下であれば、機械強度を高められる。「発泡層の発泡倍率」は、1を「発泡層の見掛け密度」で除した値である。
【0020】
発泡層の平均気泡径は、例えば、80〜450μmが好ましい。発泡層の平均気泡径は、ASTM D2842−69に記載の方法に準拠して測定される。
【0021】
発泡層の独立気泡率は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましく、90%以上でもよい。発泡層の独立気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック−連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法により測定される。
【0022】
発泡層の厚みは、例えば、0.5〜1.5mmが好ましく、0.6〜1.4mmがより好ましい。発泡層の厚みが上記下限値以上であれば、断熱性を高められる。発泡層の厚みが上記上限値以下であれば、所望の形状に成形しやすい。
【0023】
発泡層は、155℃以上に融点を1つ以上有する。融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて下記の方法で測定される。例えば、ホモポリプロピレン(ホモPP)は160℃付近に1つのピークを示す。
発泡層が2つ以上の融点を有し、かつ第一の融点が155℃以上である場合、第二の融点は155℃未満であってもよいし、155℃以上であってもよい。
発泡層が155℃以上に融点を1つ以上有することにより、PP発泡シート及びPP発泡容器の耐寒性をさらに高め、かつ耐熱性を高められる。
【0024】
融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)で求められる値であり、具体的には、以下のように測定される。
融点(Tm)は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載の方法により測定される。ただし、サンプリング方法と温度条件を以下の通りとする。
アルミニウム製測定容器の底に、隙間を生じないように試料6±0.5mgを充填した後、アルミニウム製の蓋をした。次いでエスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「DSC6220、ASD−2」示差走査熱量計を用い、窒素ガス流量20mL/minの下、30℃から−40℃まで降温した後10分間保持し、−40℃から220℃まで昇温(1回目昇温)、10分間保持後220℃から−40℃まで降温(冷却)、10分間保持後−40℃から220℃まで昇温(2回目昇温)した時のDSC曲線を得る。なお、全ての昇温及び降温は速度10℃/分で行い、基準物質としてアルミナを用いる。本稿において、融点とは、装置付属の解析ソフトを用いて、2回目昇温過程にみられる融解ピークのトップの温度を読みとった値である。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、0.2〜15g/10分が好ましく、0.5〜10g/10分がより好ましい。
MFRは、JIS K 7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して測定される値である。
【0026】
発泡層を形成する樹脂は、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂が好ましい。ここで主成分とは、発泡層を形成する樹脂100質量部に対してポリプロピレン系樹脂の含有量が50質量%以上であることを意味する。ポリプロピレン系樹脂の含有量は、樹脂の総量に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
【0027】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、ホモポリプロピレン(ホモPP)、高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)等が挙げられ、中でも、ブロックPP、HMS−PPが好ましく、ブロックPP及びHMS−PPを併有することが好ましい。
【0028】
ブロックPPは、ホモPPの中にポリエチレンが分散され、さらにそのポリエチレンの周囲にはEPR相(エチレン−プロピレン−ラバー相)を有することが一般的である。このようなブロックPPは、前段でプロピレンガスの重合によってホモPPを得て、続く後段でエチレンガスを共存させてEPRを重合することにより生産される。
【0029】
発泡層におけるブロックPPの含有量は、発泡層の樹脂の総質量100質量部に対して、45〜75質量部が好ましく、50〜70質量部がより好ましく、55〜65質量部がさらに好ましい。ブロックPPの含有量が上記下限値以上であれば、耐寒性のさらなる向上を図れる。ブロックPPの含有量が上記上限値以下であれば、他の樹脂を効果的に配合できる。
【0030】
HMS−PPは、230℃での溶融張力(230℃溶融張力)が6cN以上のポリプロピレンである。
HMS−PPとしては、ウェイマックス(商品名、日本ポリプロ社製)、Daploy(商品名、Borealis社製)等が挙げられる。
HMS−PPの230℃溶融張力は、10cN以上が好ましく、15cN以上がより好ましい。230℃溶融張力が上記下限値以上であれば、PP発泡シートの発泡倍率をより高め、容器を成形しやすくできる。230℃溶融張力の上限値は、30cN以下が好ましく、28cN以下がより好ましい。230℃溶融張力が上記上限値以下であれば、PP発泡シートを製造する際に、押出機の負荷を低減できる。
230℃溶融張力は、ツインボアキャピラリーレオメーターRheologic5000T(イタリア、チアスト社製)を用いて測定する。
即ち、試験温度に加熱された径15mmのバレルに測定試料の樹脂を充填後、5分間予熱する。予熱した測定試料を、測定装置のキャピラリーダイ(口径2.0mm、長さ20mm、流入角度フラット)からピストン降下速度(0.1546mm/s)を一定に保持して紐状に押し出す。測定試料を紐状に押し出しつつ、この紐状物を、キャピラリーダイの下方27cmに位置する張力検出のプーリーに通過させた後、巻取りロールを用いて、巻き取って行き、紐状物が切断する直前の極大値と極小値の平均を試料の溶融張力とする。この際、巻取り速度を初速8.7mm/s、加速度12mm/s
2で徐々に増加させる。なお、張力チャートに極大点が1個しかない場合はその極大値を溶融張力とする。
【0031】
発泡層におけるHMS−PPの含有量は、発泡層の樹脂の総質量100質量部に対して、10〜35質量部が好ましく、15〜32質量部がより好ましく、20〜30質量部がさらに好ましい。HMS−PPの含有量が上記下限値以上であれば、発泡特性を高められる。HMS−PPの含有量が上記上限値以下であれば、耐寒性のさらなる向上を図れる。
【0032】
発泡層の樹脂は、エチレン−α−オレフィン共重合体を含有することが好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体を含有することで、耐寒性をより高められる。
エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンとα−オレフィンとを、触媒を用いて共重合して得られるポリエチレン系樹脂であり、より具体的には直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、原油やナフサ等の石油化学品由来のエチレン−α−オレフィン共重合体、サトウキビやトウモロコシ等の植物由来のエチレン−α−オレフィン共重合体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
エチレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンは、炭素数3のプロピレンでもよいし、プロピレン以外でもよい。中でも、α−オレフィンは、プロピレン以外のα−オレフィンが好ましく、炭素数4〜10のα−オレフィンがより好ましい。さらに好ましいα−オレフィンは、炭素数4の1−ブテン、炭素数6の1−ヘキセン、炭素数8の1−オクテン等である。α−オレフィンは、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
エチレンと炭素数が4〜10のα−オレフィンとの共重合体としては、例えば、住友化学社から商品名「エスプレンNO416」(エチレン−1−ブテン共重合体)、日本ポリエチレン社から商品名「カーネルKS240T」(エチレン−1−ヘキセン共重合体)、ダウ・ケミカル社から商品名「アフィニティEG8100」(エチレン−1−オクテン共重合体)等が挙げられる。これらは、いずれも石油化学品由来のエチレン−α−オレフィン共重合体である。
【0034】
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、いわゆるバイオLLDPE等、植物由来のエチレン−α−オレフィン共重合体でもよい。
植物由来のエチレン−α−オレフィン共重合体は、サトウキビ、トウモロコシ等の植物原料を由来とするポリマーである。「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたポリマーが挙げられる。また、例えば、「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたモノマーが重合されたポリマーが挙げられる。「植物原料から合成され又は抽出されたモノマー」には、植物原料から合成され又は抽出された化合物を原料とし合成されたモノマーが含まれる。植物由来のエチレン−α−オレフィン共重合体は、モノマーの一部が「植物原料を由来とする」ものを含む。
植物由来のエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、Braskem社から商品名「グリーンポリエチレンSLH118」(エチレン−1−ヘキセン共重合体)、商品名「グリーンポリエチレンSLH218」(エチレン−1−ヘキセン共重合体)、商品名「グリーンポリエチレンSLL318」(エチレン−1−ブテン共重合体)等が挙げられる。
【0035】
植物由来のエチレン−α−オレフィン共重合体について、エチレン−1−ブテン共重合体〔エチレン:1−ブテン=82:18(質量比)〕、エチレン−1−ヘキセン共重合体〔エチレン:1−ヘキセン=75:25(質量比)〕を例にして説明する。
【0036】
エチレン:1−ブテン=90:10(モル比)を、触媒(メタロセン触媒、チーグラー触媒、フィリップス触媒等)を用いて共重合(気相法、スラリー法、高圧法、溶液法等)して、エチレン−1−ブテン共重合体が合成される。この合成反応における化学量論上の質量比は、エチレン:1−ブテン=82:18(質量比)である。
【0037】
ここで、
図1に示すように、植物由来のエタノール(バイオエタノール)の脱水反応によりエチレンを得、この植物由来のエチレンと、石油化学品由来の1−ブテンとを、エチレン:1−ブテン=90:10(モル比)で合成する場合、製造されるエチレン−1−ブテン共重合体(バイオエチレン−1−ブテン共重合体)は、植物由来82質量%のエチレン−1−ブテン共重合体である。なお、図中の数字は、最終物(
図1においてはバイオエチレン−1−ブテン共重合体)に対する各原料の割合(質量%)を表す(
図2〜3において同様)。
【0038】
なお、図示はしないが、
図1において、石油化学品由来の1−ブテンを植物由来の1−ブテンに換えて合成する場合、製造されるエチレン−1−ブテン共重合体は、植物由来100質量%のエチレン−1−ブテン共重合体である。
【0039】
また、
図2に示すように、植物由来のエチレンと、石油化学品由来のエチレンと、石油化学品由来の1−ブテンとを、植物由来のエチレン:石油化学品由来のエチレン:1−ブテン=45:45:10(モル比)で合成する場合、製造されるエチレン−1−ブテン共重合体(バイオエチレン−1−ブテン共重合体)は、植物由来41質量%のエチレン−1−ブテン共重合体である。
【0040】
エチレン:1−ヘキセン=90:10(モル比)を触媒(メタロセン触媒、チーグラー触媒、フィリップス触媒等)を用いて共重合(気相法、スラリー法、高圧法、溶液法等)して、エチレン−1−ヘキセン共重合体が合成される。この合成反応における化学量論上の質量比は、エチレン:1−ヘキセン=75:25(質量比)である。
【0041】
ここで、
図3に示すように、植物由来のエタノール(バイオエタノール)の脱水反応によりエチレンを得、この植物由来のエチレンと、石油化学品由来の1−ヘキセンとを、エチレン:1−ヘキセン=90:10(モル比)で合成する場合、製造されるエチレン−1−ヘキセン共重合体(バイオエチレン−1−ヘキセン共重合体)は、植物由来75質量%のエチレン−1−ヘキセン共重合体である。
【0042】
なお、図示はしないが、
図3において、石油化学品由来の1−ヘキセンを植物由来の1−ヘキセンに換えて合成する場合、製造されるエチレン−1−ヘキセン共重合体(バイオ エチレン−1−ヘキセン共重合体)は、植物由来100質量%のエチレン−1−ヘキセン共重合体である。
【0043】
発泡層におけるエチレン−α−オレフィン共重合体の含有量は、発泡層の樹脂の総質量に対して、10〜30質量部が好ましく、12〜25質量部がより好ましく、15〜20質量部がさらに好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量が上記下限値以上であれば、耐寒性のさらなる向上を図れる。エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量が上記上限値以下であれば、PP発泡容器が軟弱になりすぎず、取り扱いやすい。
【0044】
発泡層の樹脂は、他の熱可塑性樹脂を含有してもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等、が挙げられる。
他の熱可塑性樹脂の含有量は、発泡層の樹脂の総質量100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜8質量部がより好ましく、1〜6質量部がさらに好ましい。
【0045】
発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、ヘキサン等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、石油エーテル等のエーテル化合物、二酸化炭素、窒素、アンモニア、水等が挙げられる。
また、前記発泡剤として、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、炭酸水素ナトリウム、クエン酸等の有機酸又はその塩と炭酸水素ナトリウム(重曹)との混合物等の分解性の発泡剤が用いられてもよい。
これらの発泡剤は、いずれか1種が単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
発泡剤としては、炭化水素が好ましい。炭化水素のなかでも、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンまたはこれらの混合物が好ましい。
発泡剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0046】
発泡層は、樹脂、発泡剤以外にその他成分(任意成分)を含有していてもよい。
かかる任意成分としては、気泡調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、結晶化促進剤、滑剤、架橋剤、界面活性剤、収縮防止剤、難燃剤、劣化防止剤等が挙げられる。
なお、樹脂、発泡剤及び任意成分の合計は、100質量%を超えない。
【0047】
<非発泡層>
PP発泡シートは、発泡層の片面又は両面に非発泡層を有してもよい。非発泡層を有することで、E1、E2をさらに高めて、耐寒性のさらなる向上を図れる。
【0048】
非発泡層の素材は、ポリオレフィン系樹脂であれば特に限定されない。ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体や、オレフィン系モノマーを主成分とし、オレフィン系モノマーとこれに重合可能なビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。中でも、非発泡層は、プロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分とする共重合体が好ましい。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
非発泡層を構成するポリオレフィン系樹脂は、石油化学品由来でもよいし、植物由来でもよいし、これらの混合物でもよい。
【0049】
非発泡層は、二軸延伸フィルム又は無延伸フィルムのいずれでよい。E1、E2をより高められる観点から、非発泡層は二軸延伸フィルムが好ましい。
非発泡層が二軸延伸フィルムである場合、延伸倍率は2〜10倍が好ましく、3〜8倍がより好ましい。延伸倍率が上記下限値以上であれば、E1、E2のさらなる向上を図れる。延伸倍率が上記上限値以下であれば、所望の形状に成形しやすい。
【0050】
非発泡層の厚みは、特に限定されないが、5〜200μmが好ましく、10〜100μmがより好ましく、15〜60μmがさらに好ましい。非発泡層の厚みが上記下限値以上であれば、E1、E2のさらなる向上を図れる。非発泡層の厚みが上記上限値以下であれば、所望の形状に成形しやすい。
非発泡層の厚みは、PP発泡シートの断面観察における任意の10点の平均値である。
【0051】
非発泡層の坪量は、特に限定されないが、4〜180g/m
2が好ましく、9〜90g/m
2がより好ましく、13〜54g/m
2がさらに好ましい。非発泡層の坪量が上記下限値以上であれば、E1、E2のさらなる向上を図れる。非発泡層の坪量が上記上限値以下であれば、所望の形状に成形しやすい。
【0052】
(PP発泡シートの製造方法)
PP発泡シートの製造方法としては、公知の発泡シートの製造方法を採用できる。PP発泡シートの製造方法について、単層のPP発泡シートを例にして説明する。
【0053】
樹脂及びその他成分を含有する原料組成物と、発泡剤とを押出機に供給して溶融し、混練して混合物とする。樹脂を溶融する温度(溶融温度:設定温度)は、例えば、180〜220℃が好ましい。溶融温度が上記下限値以上であれば、樹脂と他の原料とを均一に混合できる。溶融温度が上記上限値以下であれば、樹脂の分解を抑制できる。
【0054】
続いて、押出機内のスクリューで混合物を混錬しつつ、押出機の先端に取り付けたサーキュラーダイから混合物を押し出し、発泡して円筒状の発泡体を得る。
この円筒状の発泡体を拡径させ、マンドレルに供給して冷却する。冷却された円筒状の発泡体を押出方向に連続的に切断し、これを展開して、発泡層のみを有する単層構造のPP発泡シートとする。
【0055】
加えて、上述の方法で得られた発泡層の片面又は両面に、非発泡層を設けることで、発泡層の片面又は両面に非発泡層を有する多層構造のPP発泡シートを得られる。発泡層に非発泡層を設ける方法としては、例えば、発泡層に非発泡フィルムを重ね、これを熱融着する方法が挙げられる。
【0056】
なお、本発明のPP発泡シートは、非発泡層の表面に印刷層が設けられていてもよく、印刷層の表面にさらに非発泡層が設けられていてもよい。また、発泡層と非発泡層との間に印刷層や中間層が設けられていてもよい。
【0057】
(ポリプロピレン系樹脂発泡容器)
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡容器(PP発泡容器)は、上述した本発明のPP発泡シートを成形してなるものである。
PP発泡容器は、底壁部と、底壁部の周縁から立ち上がる側壁部とを有する、PP発泡容器は、側壁部の上端で囲まれた開口部を有する。側壁部は、底壁部に向かうに従い、窄まっていてもよい。
PP発泡容器の形状は特に限定されず、例えば、平面視形状が真円形、楕円形、半円形、多角形、扇形等のトレー、丼形状の容器、有底円筒状又は有底角筒状等の容器、納豆用容器等の蓋付容器等の種々のPP発泡容器が挙げられる。
これらのPP発泡容器の用途としては、例えば、食品用が好ましく、冷蔵食品用又は冷凍食品用がより好ましい。
【0058】
PP発泡容器の大きさは、特に限定されず、用途を勘案して適宜決定される。
調理済食品用のPP発泡容器であれば、底壁部の長手方向が10〜25cm、底壁部の短手方向が10〜20cm、高さが3〜7cmの容器が挙げられる。
【0059】
PP発泡容器の底壁部の厚みは、PP発泡シートの厚みと同様に、0.5〜1.5mmが好ましく、0.6〜1.4mmがより好ましい。底壁部の厚みは、無作為の10点をシックネスゲージで測定した値の平均値である。
PP発泡容器の底壁部の坪量は、PP発泡シートの坪量と同様に、250〜550g/m
2が好ましく、300〜500g/m
2がより好ましい。
【0060】
PP発泡容器の側壁部の厚みは、底壁部の厚みと同様である。底壁部の厚みと側壁部の厚みとは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
PP発泡容器の側壁部の坪量は、底壁部の坪量と同様である。底壁部の坪量と側壁部の坪量とは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0061】
PP発泡容器のE1は、PP発泡シートのE1と同様に、0.30〜0.60Jであり、0.35〜0.56Jがより好ましく、0.40〜0.52Jがさらに好ましい。E1が上記下限値以上であれば、常温環境下での耐衝撃性を高められる。E1が上記上限値以下であれば、発泡容器の剛性をより高められる。特にPP発泡容器が発泡層のみの単層構造の場合、E1が上記範囲を満たすことが好ましい。
PP発泡容器が非発泡層を有する多層構造の場合、E1は、0.30J以上であり、0.36J以上が好ましく、0.40J以上がより好ましく、0.43J以上がさらに好ましい。E1が上記下限値以上であれば、常温環境下での耐衝撃性を高められる。PP発泡容器が非発泡層を有する場合、E1の上限は特に限定されないが、1.50J以下が好ましく、1.35J以下がより好ましい、1.20J以下がさらに好ましい。E1が上記上限値以下であれば、PP発泡容器の剛性をより高められる。
なお、PP発泡容器のE1は、PP発泡容器の底壁部の両面のE1の平均値である。
【0062】
PP発泡容器のE2は、PP発泡シートのE2と同様に、0.28〜0.50Jであり、0.31〜0.47Jがより好ましく、0.35〜0.44Jがさらに好ましい。E2が上記下限値以上であれば、耐寒性をより高められる。E2が上記上限値以下であれば、発泡容器の剛性をより高められる。特にPP発泡容器が発泡層のみの単層構造の場合、E2が上記範囲を満たすことが好ましい。
PP発泡容器が非発泡層を有する多層構造の場合、E2は、0.28J以上であり、0.32J以上が好ましく、0.35J以上がより好ましく、0.37J以上がさらに好ましい。E2が上記下限値以上であれば、耐寒性をより高められる。PP発泡容器が非発泡層を有する場合、E2の上限は特に限定されないが、1.20J以下が好ましく、1.05J以下がより好ましい、0.90J以下がさらに好ましい。E2が上記上限値以下であれば、PP発泡容器の剛性をより高められる。
なお、PP発泡容器のE2は、PP発泡容器の底壁部の両面のE2の平均値である。
【0063】
PP発泡容器において、E1/E2で表される比(以下、「E1/E2比」ということがある)は、PP発泡シートと同様に、1.00〜1.50が好ましく、1.15〜1.43がより好ましく、1.16〜1.31がさらに好ましい。E1/E2比が上記範囲内であれば、低温(例えば、−25℃以下)での耐寒性をさらに高め、かつ常温での耐衝撃性をより高められる。特にPP発泡容器が発泡層のみの単層構造の場合、E1/E2比が上記範囲を満たすことが好ましい。
PP発泡容器が非発泡層を有する多層構造の場合、E1/E2比は、1.00〜2.50が好ましく、1.05〜2.25がより好ましく、1.10〜2.00がさらに好ましい。E1/E2比が上記範囲内であれば、低温(例えば、−25℃以下)での耐寒性をさらに高め、かつ常温での耐衝撃性をより高められる。
【0064】
なお、PP発泡容器のE1及びE2は、PP発泡容器の底壁部から100mm×100mmの正方形の切片を切り出して試験片とする以外は、PP発泡シートにおける衝撃試験と同様にして測定される。
【0065】
PP発泡容器の発泡層は、PP発泡シート同様に155℃以上に融点を1つ以上有する。
PP発泡容器の発泡層が2つ以上の融点を有し、かつ第一の融点が155℃以上である場合、第二の融点は155℃未満であってもよいし、155℃以上であってもよい。
PP発泡容器の発泡層が155℃以上に融点を1つ以上有することにより、PP発泡容器の耐寒性をさらに高め、かつ耐熱性を高められる。
【0066】
(ポリプロピレン系樹脂発泡容器の製造方法)
PP発泡容器の製造方法は、上述した本発明のPP発泡シートの製造方法でPP発泡シートを得、得られたPP発泡シートを加熱し、任意の形状に成形して容器とする方法である。
かかるPP発泡容器の好適な製造方法としては、公知の発泡容器の製造方法を採用でき、例えば、以下に示す製造方法が挙げられる。
【0067】
まず、PP発泡シートを任意の温度に加熱して、PP発泡シートを軟化する(予備加熱工程)。予備加熱工程では、例えば、PP発泡シートを130〜150℃とする。
次いで、任意の温度に加熱したプラグ型とキャビティ型と(金型)で、軟化したPP発泡シートを挟み込み、所望の形状に成形する。その後、雄型と雌型とを離間して、成形された容器を取り出す。成形時の金型の温度は、例えば、50〜100℃が好ましい。PP発泡シートを金型で挟み込んでいる時間は、例えば、4〜10秒間が好ましい。
【0068】
以上説明した通り、本発明のPP発泡シートによれば、特定の融点を有する発泡層を有し、特定の温度における衝撃吸収エネルギーが特定の範囲であるため、PP発泡シートの特性(耐熱性に優れる)を失わずに、耐寒性を高められる。
【実施例】
【0069】
(使用原料)
<ポリプロピレン系樹脂>
・A−1:HMS−PP。MFR=1.1g/10分、230℃溶融張力=18cN。下記製造例1で製造されたもの。
≪製造例1≫
ポリプロピレン系樹脂(ホモPP、サンアロマー社製「PM600A」、MFR=7.5g/10分、密度0.9g/cm
3)と、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(化薬アクゾ株式会社製、「カヤカルボンBIC−75」、1分間半減期温度=156℃)0.84質量部とを、リボンブレンダーにて攪拌混合して、混合物を得た。
得られた混合物を口径41mmの二軸押出機(スクリューのL/D=42)に供給し、液体注入ポンプを用いて二軸押出機の途中にスチレンモノマーを供給した。スチレンモノマーの供給量は、ホモPP100質量部に対し2.5質量部とした。
二軸押出機のフィード部の設定温度を170℃、それ以降の温度を230℃に設定し、回転数120rpm、ギアポンプ回転数25rpmの条件にて、二軸押出機中で混合物とスチレンモノマーとを溶融混練しつつダイから水中に押し出し、カット方式により造粒して、HMS−PPのペレットを得た。
【0070】
・A−2:ブロックPP。商品名「PM761A」、MFR=9.5g/10分、230℃溶融張力=0.5cN、サンアロマー社製。
・A−3:ブロックPP。商品名「PC684S」、MFR=7.5g/10分、230℃溶融張力=0.6cN、サンアロマー社製。
・A−4:ホモPP。商品名「PM600A」、MFR=7.5g/10分、230℃溶融張力=0.6cN、サンアロマー社製。
・A−5:エチレン−α−オレフィン共重合体(エチレン−1−ヘキセン共重合体)。商品名「KS240T」、石油化学品由来、MFR=2.2g/10分、230℃溶融張力=0.5cN、日本ポリエチレン社製。
・A−6:エチレン−α−オレフィン共重合体(エチレン−1−オクテン共重合体)。商品名「EG8100」、石油化学品由来、MFR=1.0g/10分、230℃溶融張力=1.5cN、ダウ・ケミカル社製。
・A−7:エチレン−α−オレフィン共重合体(エチレン−1−ヘキセン共重合体)。商品名「グリーンポリエチレン SLH118」、植物由来84質量%、MFR=1.0g/10分、230℃溶融張力=1.2cN、Braskem社製。
・A−8:エチレン−α−オレフィン共重合体(エチレン−1−ヘキセン共重合体)。商品名「グリーンポリエチレン SLH218」、植物由来87質量%、MFR=2.3g/10分、230℃溶融張力=0.5cN、Braskem社製。
・A−9:エチレン−α−オレフィン共重合体(エチレン−1−ブテン共重合体)。商品名「グリーンポリエチレン SLL318」、植物由来87質量%、MFR=2.7g/10分、230℃溶融張力=0.5cN、Braskem社製。
【0071】
<発泡剤>
・B−1:化学発泡剤。商品名「ファインセルマスターPO410K」、大日精化工業社製。
・B−2:物理発泡剤。ブタン(ノルマルブタン:65質量%、イソブタン:35質量%)。
【0072】
<非発泡層>
非発泡層に用いた非発泡フィルムは以下の通りである。
・CPP−1:無延伸ポリプロピレンフィルム。サントックス社製、「サントックスKT」、厚み25μm、坪量23g/m
2。
・CPP−2:無延伸ポリプロピレンフィルム。サントックス社製、「YJ02」、厚み30μm、坪量27g/m
2。
・CPP−3:無延伸ポリプロピレンフィルム。OJT社製、「SOPT2」、厚み25μm、坪量23g/m
2。
・OPP−1:二軸延伸ポリプロピレンフィルム。中本パックス社製、「NTSII」、厚み25μm、坪量23g/m
2、延伸倍率は、TD=6倍、MD=6倍。
【0073】
(実施例1〜11、比較例1〜4)
第一の単軸押出機(口径90mm)及びこれに接続された第二の単軸押出機(口径115mm)を有するタンデム型押出機と、タンデム型押出機の下流側に接続されたサーキュラーダイ(口径240mm、スリット間隙0.5mm)と、サーキュラーダイの下流に位置する冷却用マンドレル(直径:668mm×長さ:560mm)とを有する製造システムを用いて、各例のPP発泡シートを製造した。
表1に記載の組成に従い、樹脂と化学発泡剤B−1とを第一の単軸押出機に供給し、200℃〜210℃で加熱溶融した後、この溶融樹脂100質量部に対して1質量部の物理発泡剤B−2を圧入し、混練した。得られた発泡性樹脂組成物を第二の単軸押出機に供給し、発泡性樹脂組成物の温度を低下させ、この押出機の先端に接続されたサーキュラーダイから140kg/hの吐出量で円筒状に押し出した。
押し出した円筒状の発泡体を冷却用マンドレル上に沿わせて拡径させると共に、その外面にエアーを吹き付けて冷却し、冷却用マンドレルの軸線に対して対称となる2点で切開して、表中に記載の厚み、坪量のPP発泡シートを得た。
各例のPP発泡シートについて、融点及び衝撃吸収エネルギーE1及びE2を測定した。
試験用プレス成形装置を使用して、各例のPP発泡シートからトレー型のPP発泡容器を成形した。PP発泡容器は、平面視長方形の容器であった。容器の外寸は、長手200mm、短手150mm、高さ40mmであった。開口径は長手180mm、短手130mmであり、開口部周縁のフランジは10mmであり、底壁部の内径は長手140mm、短手100mmであった。
得られたPP発泡容器について、落下試験を行い、その結果を表中に示す。
なお、PP発泡容器の融点及び衝撃吸収エネルギーE1及びE2の値は、PP発泡シートの値と同じであった。
【0074】
(実施例12)
実施例1のPP発泡シートの片面に、表2記載の非発泡フィルムを熱ロールによりラミネートし、積層発泡シートを得た。
なお、熱ロールの直径は300mm、熱ロール温度180℃、加圧ゴムロール(圧着ロール)の直径は180mm、ロール速度(ラミネート速度)9m/min、加圧量は線圧120N/cmであった。
得られた積層発泡シートの厚み、坪量、融点、衝撃吸収エネルギーE1及びE2の値を表中に示す。
この積層発泡シートを用い、容器の内面に無延伸ポリプロピレンフィルムが位置するように成形した以外は、実施例1と同様にして、トレー型のPP発泡容器を成形した。
得られたPP発泡容器について、落下試験を行いその結果を表1に示す。
なお、PP発泡容器の融点、衝撃吸収エネルギーE1及びE2の値は、積層発泡シートの値と同じであった。
【0075】
(実施例13〜15)
PP発泡シートを実施例2のPP発泡シートとした以外は、実施例12と同様に、表2記載の非発泡フィルムを熱ロールによりラミネートし、積層発泡シートを得た。
なお、熱ロールの直径は300mm、熱ロール温度180℃、加圧ゴムロール(圧着ロール)の直径は180mm、ロール速度(ラミネート速度)9m/min、加圧量は線圧120N/cmであった。
得られた積層発泡シートの厚み、坪量、融点、衝撃吸収エネルギーE1及びE2の値を表中に示す。
この積層発泡シートを用い、容器の内面に無延伸ポリプロピレンフィルムが位置するように成形した以外は、実施例1と同様にして、トレー型のPP発泡容器を成形した。
得られたPP発泡容器について、落下試験を行いその結果を表1に示す。
なお、PP発泡容器の融点、衝撃吸収エネルギーE1及びE2の値は、積層発泡シートの値と同じであった。
【0076】
(実施例16)
OPP−1を発泡層の両面に設けた以外は、実施例15と同様にして、積層発泡シートを得た。
得られた積層発泡シートの厚み、坪量、融点、衝撃吸収エネルギーE1及びE2の値を表中に示す。
この積層発泡シートを用い、容器の内面に無延伸ポリプロピレンフィルムが位置するように成形した以外は、実施例1と同様にして、トレー型のPP発泡容器を成形した。
得られたPP発泡容器について、落下試験を行いその結果を表1に示す。
なお、PP発泡容器の融点、衝撃吸収エネルギーE1及びE2の値は、積層発泡シートの値と同じであった。
【0077】
(評価方法)
<落下試験>
PP発泡容器に水400mLを入れ、これを−25℃の冷凍庫で24時間静置して、容器入り凍結品を得た。
−25℃の環境下で、PP発泡容器の長手方向を鉛直方向、短手方向を水平方向に向け、容器入り凍結品を200cmの高さから、水平なコンクリート面に2回落下させた。その後、目視でPP発泡容器を観察し、PP発泡容器に亀裂及び欠損のいずれも確認できないものを「A」評価とした。「A」評価であれば、耐寒性に優れると判断した。
「A」評価ではなかった容器入り凍結品について、高さ100cmに変更した以外は同様にして、容器入り凍結品を落下させた。PP発泡容器に亀裂及び欠損のいずれも確認できないものを「B」評価とし、PP発泡容器に亀裂及び欠損のいずれかが確認できたものを「C」評価とした。「B」評価であれば、耐寒性に優れると判断した。「C」評価であれば、耐寒性に劣ると判断した。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
表1に示す通り、本発明を適用した実施例1、2、4、7、9、10は、落下試験の結果が「A」評価であり、耐寒性に特に優れていた。実施例3、5、6、8、11は、落下試験の結果が「B」評価であり、耐寒性に優れていた。
非発泡層を有する実施例12〜16は、落下試験の結果が「A」評価であり、耐寒性に優れていた。
E1が0.16〜0.21であり、E2が0.08〜0.16である比較例1〜4は、いずれも落下試験の結果が「C」評価であり、耐寒性に劣っていた。