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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-164913(P2020-164913A)
(43)【公開日】2020年10月8日
(54)【発明の名称】蒸着マスク
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20200911BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20200911BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20200911BHJP
【FI】
   C23C14/04 A
   H05B33/14 A
   H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-65387(P2019-65387)
(22)【出願日】2019年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本田 涼吾
(72)【発明者】
【氏名】田丸 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】石川 樹一郎
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG04
3K107GG33
4K029HA03
(57)【要約】
【課題】マスク本体と金属層との密着不良を防止する。
【解決手段】本発明に係る蒸着マスク1は、多数独立の蒸着通孔9からなる蒸着パターンが形成されるマスク本体2と、該マスク本体2が配置されるマスク開口5を有する枠体3と、マスク本体2と枠体3を一体的に接合する金属層4とを備える。マスク本体2には、蒸着パターンが形成されるパターン形成領域7と、金属層4が接合形成される接合領域8とを備える。そして、接合領域8の上面に密着めっき層34を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数独立の蒸着通孔(9)からなる蒸着パターンが形成されるマスク本体(2)と、該マスク本体(2)が配置されるマスク開口(5)を有する枠体(3)と、前記マスク本体(2)と前記枠体(3)を一体的に接合する金属層(4)とを備える蒸着マスクであって、
前記マスク本体(2)には、蒸着パターンが形成されるパターン形成領域(7)と、前記金属層(4)が接合形成される接合領域(8)とを備え、
前記接合領域(8)の上面に密着めっき層(34)が形成されていることを特徴とする蒸着マスク。
【請求項2】
前記接合領域(8)の上面および外周面に前記密着めっき層(34)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記接合領域(8)には、接合通孔(10)が形成されており、該接合通孔(10)の内周面に前記密着めっき層(34)が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
前記マスク本体(2)は、四隅が丸められた長方形状に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかひとつに記載の蒸着マスク。
【請求項5】
前記枠体(3)に切欠孔が設けられ、該切欠孔には、閉塞体(19)が配置されており、
前記閉塞体(19)は、前記金属層(4)が接合形成される接合領域(21)を備え、
前記接合領域(21)に密着めっき層(34)が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかひとつに記載の蒸着マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク本体を枠体で支持する形態のメタルマスクに関する。本発明に係るメタルマスクは、例えば、有機EL素子の発光層を形成する際に用いられる蒸着マスクとして好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
表示装置を有するスマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器において、機器の軽量化および駆動時間の長時間化を目的として、液晶ディスプレイに替えて、より軽量で消費電力が小さな有機ELディスプレイの採用が始まっている。有機ELディスプレイは、蒸着マスク法により、基板(蒸着対象)上に有機EL素子の発光層(蒸着層)を形成することで製造される。
【0003】
蒸着マスク法に用いられる蒸着マスクは、例えば本出願人が先に提案した特許文献1に開示されている。かかる特許文献1では、マトリクス状に配置される複数のマスク本体と、各マスク本体を囲むように配置される補強用の枠体と、両者を不離一体的に接合する金属層とで蒸着マスクを構成している。この蒸着マスクは、母型上に電鋳法により複数のマスク本体を形成する第1の電鋳工程と、母型上に枠体を配する枠体配設工程と、電鋳法により金属層を形成して各マスク本体と枠体を接合する第2の電鋳工程と、母型から複数のマスク本体と枠体と金属層を一体に剥離する剥離工程などを経て製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−15908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マスク本体と金属層との密着強度が十分でないと、母型からマスク本体と枠体と金属層を一体に剥離する剥離工程の際に、マスク本体と金属層との間で剥がれが生じてしまう。また、母型から剥離した蒸着マスクのマスク本体には、内方へ収縮しようとする応力が作用する。これは、マスク本体を形成する第1の電鋳工程における電鋳槽の液温が常温よりも高いことなどに起因するものである。マスク本体が収縮しようとすることにより、枠体には金属層を介して引張応力が作用するが、係る収縮しようとする応力が強い場合、マスク本体と金属層との間で剥がれが生じてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、マスク本体と枠体とを金属層を介して接合して成る蒸着マスクにおいて、マスク本体と金属層との密着性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る蒸着マスクは、多数独立の蒸着通孔9からなる蒸着パターンが形成されるマスク本体2と、該マスク本体2が配置されるマスク開口5を有する枠体3と、マスク本体2と枠体3を一体的に接合する金属層4とを備える。マスク本体2には、蒸着パターンが形成されるパターン形成領域7と、金属層4が接合形成される接合領域8とを備え、接合領域8の上面に密着めっき層34を形成することを特徴とする。
【0008】
また、接合領域8の上面および外周面に密着めっき層34を形成することができる。
【0009】
また、接合領域8に接合通孔10を形成し、該接合通孔10の内周面に密着めっき層34を形成することができる。
【0010】
また、マスク本体2は、四隅が丸められた長方形状に形成することができる。
【0011】
また、枠体3に切欠孔が設けられ、該切欠孔に閉塞体19が配置されており、閉塞体19は、金属層4が接合形成される接合領域21を備え、接合領域21に密着めっき層34を形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、蒸着マスク1のマスク本体2において、金属層4が接合形成される接合領域8の上面に密着めっき層34を形成した。これによれば、マスク本体2に対する金属層4の接合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1に係る蒸着マスクの全体を示す斜視図である。
図2図1におけるA−A線断面図である。
図3】実施例1に係る蒸着マスクの要部を示す平面図である。
図4】実施例1に係る蒸着マスクの枠体の平面図である。
図5】実施例1に係る蒸着マスクの製造方法を示す説明図である。
図6】実施例1に係る蒸着マスクの製造方法を示す説明図である。
図7】実施例1に係る蒸着マスクの製造方法を示す説明図である。
図8】本発明の実施例2に係る蒸着マスクの全体を示す斜視図である。
図9】実施例2に係る蒸着マスクの枠体の平面図である。
図10】本発明の実施例3に係る蒸着マスクの枠体の要部を示す平面図である。
図11】本発明の実施例4に係る蒸着マスクの縦断面図である。
図12】実施例4に係る蒸着マスクを用いた蒸着工程の説明図である。
図13】本発明の実施例5に係る蒸着マスクの縦断面図である。
図14】実施例1の変形例を示す蒸着マスクの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例1) 図1から図7に、本発明に係る蒸着マスクの実施例1を示す。なお、本実施例の各図における厚みや幅などの寸法は、実際の様子を示したものではなく、それぞれ模式的に示したものである。以下の各実施例の図においても同様である。
【0015】
図1および図2に示すように、蒸着マスク1は、マトリクス状に配置される複数(本実施例では9枚)のマスク本体2と、各マスク本体2を囲むように配置される補強用の枠体3と、両者2・3を不離一体的に接合する金属層4とを含む。枠体3は、マスク本体2と同数のマスク開口5を備える(図4参照)。各マスク開口5はマスク本体2よりも一回り大きく形成されており、各マスク開口5にマスク本体2が1枚ずつ配置されている。金属層4は、マスク本体2の周縁部とマスク開口5の開口縁部との間隙部分などに形成されて、マスク本体2と枠体3を接合している。
【0016】
マスク本体2は、四隅が丸められた長方形状に形成されており、その面積の過半を占める内側のパターン形成領域7と、同領域7を囲む外側の接合領域8とを備える。パターン形成領域7には、多数独立の蒸着通孔9からなる蒸着パターンが形成されている。接合領域8には、図3に示すように、マスク本体2の各辺に沿って二列に並ぶ多数個の接合通孔10を形成することができる。このマスク本体2は、ニッケルからなる電着金属を素材として電鋳法で形成される。本実施例では、各マスク本体2の厚みを8μmに設定した。なお、マスク本体2は、ニッケル以外にニッケル−コバルト等のニッケル合金、銅、その他の電着金属を素材として形成することができる。さらに、マスク本体2は、二層以上の積層構造であってもよく、具体的には例えば、光沢めっき層からなる上層と、無光沢めっき層からなる下層とを有するマスク本体2を形成し、各層の厚み比率を例えば上層:下層=5:7に設定することができる。
【0017】
図2に拡大して示すように、枠体3は、積層構造となっており、同一形状の上枠15と下枠16を接着層17で貼り合わせて構成される。上枠15と下枠16は、ニッケル−鉄合金であるインバー材などの低熱線膨張係数の金属板材で形成されている。本実施例では、上枠15と下枠16の厚み寸法をそれぞれ0.5mmに設定して、枠体3をマスク本体2よりも十分に肉厚に形成した。なお、上枠15と下枠16は、上記のインバー材以外に、ニッケル−鉄−コバルト合金であるスーパーインバー材やセラミック材などで形成してもよく、上枠15と下枠16の厚み寸法は異なっていてもよい。また枠体3は、上枠15と下枠16の二層構造以外に、三層以上の積層構造や単層構造であってもよく、また、四層構造(例えば、上枠15と下枠16を備える枠体3を2つ重ねて貼り合わせたもの)を採用してもよい。接着層17としては、シート状の未硬化感光性ドライフィルムレジストや、市販されている種々の接着剤などを用いることができる。
【0018】
枠体3は、矩形枠状の外周枠12と、該外周枠12内にマスク開口5を区画する格子枠13とを備える。外周枠12には、強度低下部14を形成することができ、図4に示すように、外周枠12のうち最も引張強度が高い部分である四隅にL字状の切欠孔からなる強度低下部14を形成することにより、四隅の引張強度を低下させ、外周枠12の全周にわたって引張強度の均一化を図ることができる(その意義については後述する)。強度低下部14が切欠孔からなる場合は、各コーナー部分はR状に形成することが好ましい。
【0019】
枠体3に強度低下部14を形成する場合、強度低下部14には、これより一回り小さいL字シート状の閉塞体19が配置される。閉塞体19は、通孔を持たない内側の閉塞領域20と、同領域20を囲む外側の接合領域21とを備え、マスク本体2と同様に金属層4を介して枠体3に不離一体的に接合される。閉塞体19の接合領域21にも、マスク本体2の接合領域8と同様に、二列に並ぶ多数個の接合通孔22を形成することができる。なお、閉塞体19は、蒸着マスクの製造工程において、マスク本体2と同時に、同一素材で同一厚みに形成される。
【0020】
金属層4は、後述する電鋳法によって、枠体3の表面からマスク本体2の接合領域8にわたって連続して形成される。この金属層4は、接合通孔10内にも形成されており、これによりマスク本体2に対する金属層4の接合強度が向上する。本実施例では、ニッケルを素材として金属層4を形成したが、これ以外にニッケル−コバルト等のニッケル合金や、その他の電着金属・合金を素材として形成することができる。なお、本発明において、金属層4を枠体3の上面に形成することは必須ではなく、少なくとも枠体3の側面(マスク開口5の内周面)に金属層4が形成されていればよい。
【0021】
本実施例に係る蒸着マスク1の製造方法の一例を図5から図7に示す。まず、図5(a)に示すように、導電性を有する部材、例えば、ステンレスや真ちゅう製などの母型24の表面に、ネガタイプのフォトレジスト層25を形成する。次いで、フォトレジスト層25の上に、ガラスマスクからなるパターンフィルム26を密着させ、パターンニング前段体27を得る。パターンフィルム26には、マスク本体2の蒸着通孔9に対応する透光孔26aと、同本体2の接合通孔10に対応する透光孔26bと、閉塞体19の接合通孔22に対応する透光孔26cとが形成されている。さらに、パターンフィルム26には、1枚のマスク本体2に対応する一群の透光孔26a・26bを囲む平面視で矩形枠状の透光溝26dと、1枚の閉塞体19に対応する一群の透光孔26cを囲む平面視で中空L字状の透光溝26eとが形成されている。矩形枠状の透光溝26dの内周縁はマスク本体2の外郭線に一致し、中空L字状の透光溝26eの内周縁は閉塞体19の外郭線に一致する。
【0022】
次いで、得られたパターンニング前段体27と、紫外線ランプ28を備える紫外線照射装置の炉内とを、露光作業時の炉内温度にそれぞれ予熱する。予熱が完了したら、パターンニング前段体27を紫外線照射装置の炉内に収容し、紫外線ランプ28で紫外線光を照射することにより、パターンフィルム26を介してフォトレジスト層25を露光する。露光後のパターンニング前段体27を取り出し、フォトレジスト層25からパターンフィルム26を取り外し、フォトレジスト層25の未露光部分を溶解除去(現像)することにより、図5(b)に示すように、母型24上に一次パターンレジスト29を形成する。一次パターンレジスト29は、パターンフィルム26の各透光孔26a〜26cと各透光溝26d・26eに対応するレジスト体29a〜29eで構成される。
【0023】
次いで、図5(c)に示すように、レジスト体29a〜29eで覆われていない母型24の表面に電鋳処理(めっき処理)を施すことにより、レジスト体29a〜29eの高さの範囲内で一次電鋳層30を形成する。一次電鋳層30は、蒸着マスク1の完成品を構成するマスク本体2および閉塞体19と、その完成前に除去される枠体支持部31とで構成される。一次電鋳層30の形成後、図5(d)に示すように、一次パターンレジスト29を溶解除去する。これにより、マスク本体2の蒸着通孔9および接合通孔10と、閉塞体19の接合通孔22とが現れる。
【0024】
次に、マスク本体2と閉塞体19に対する金属層4の接合強度(密着性)を高めるための密着めっき層34(図2参照)を形成する。マスク本体2においては、接合領域8の上面および外周面(側面)と、接合通孔10の内周面とに密着めっき層34を形成する。閉塞体19においても、接合領域21の上面および外周面(側面)と、接合通孔22の内周面とに密着めっき層34を形成する。なお、密着めっき層34は、ニッケルや銅などの金属や合金を素材として、ストライクめっきや無光沢めっきにより、一次電鋳層30よりも十分に薄く形成される。
【0025】
密着めっき層34の形成手順としては、まず、図6(a)に示すように、一次電鋳層30の表面全体にネガタイプのフォトレジスト層35を形成し、その上にパターンフィルム36を密着させる。このパターンフィルム36は、マスク本体2の接合領域8に対応する矩形枠状の非透光部36aと、閉塞体19の接合領域21に対応する中空L字状の非透光部36bと、その他の部分を占める透光部36cとを備える。次いで、紫外線ランプ28で紫外線光を照射して、パターンフィルム36を介してフォトレジスト層35を露光する。露光後、フォトレジスト層35からパターンフィルム36を取り外し、フォトレジスト層35の未露光部分を溶解除去(現像)することにより、図6(b)に示すパターンレジスト37を形成する。このパターンレジスト37は、マスク本体2と閉塞体19の接合領域8・21を露出させる開口37aを有する。つまり、パターンレジスト37は、密着めっき層34の形成領域を除く一次電鋳層30の表面全体を覆う。
【0026】
次いで、開口37aに臨む一次電鋳層30の表面にめっき処理(密着処理)を施すことにより、図6(c)に拡大して示す密着めっき層34を形成することができる。なお、密着めっき層34は、開口37aに臨む母型24の表面にも不可避的に形成されるが、母型24上の密着めっき層34は、後にマスク本体2と閉塞体19を母型24から剥離する際の妨げになるため、その面積をなるべく小さくすることが好ましい。密着めっき層34の形成後にパターンレジスト37を溶解除去すると、図6(c)に示す状態になる。なお、接合領域8・21と接合通孔10・22に密着めっき層34を形成するのに代えて、酸浸漬や電解処理等の活性化処理(密着処理)を施してもよい。これによってもマスク本体2と閉塞体19に対する金属層4の接合強度(密着性)を高めることができる。
【0027】
次に、一次電鋳層30のマスク本体2と閉塞体19に対して、枠体3を金属層4で接合する。具体的には、まず、図7(a)に示すように、密着めっき層34を形成した一次電鋳層30の表面全体にネガタイプのフォトレジスト層40を形成し、その上にパターンフィルム41を密着させる。このパターンフィルム41は、マスク本体2のパターン形成領域7に対応する長方形状の透光孔41aと、閉塞体19の閉塞領域20に対応するL字状の透光孔41bとを備える。
【0028】
次いで、紫外線ランプ28で紫外線光を照射して、パターンフィルム41を介してフォトレジスト層40を露光する。露光後、フォトレジスト層40からパターンフィルム41を取り外し、フォトレジスト層40の未露光部分を溶解除去(現像)することにより、図7(b)に示す二次パターンレジスト42を形成する。二次パターンレジスト42は、マスク本体2のパターン形成領域7の表面を覆うレジスト体42aと、閉塞体19の閉塞領域20の表面を覆うレジスト体42bとで構成される。パターン形成領域7の蒸着通孔9はレジスト体42aで覆われるため、その後の電鋳処理の際に、同通孔9内に電鋳液が浸入することは無い。
【0029】
次いで、図7(c)に示すように、一次電鋳層30の枠体支持部31の上面の所定の位置に枠体3を載置する。平面視において枠体支持部31は枠体3よりも一回り大きく形成されている。枠体支持部31で支持される枠体3の下面には、剥離層44を介して接着層45が予め積層されており、この接着層45によって、枠体3は枠体支持部31に対してズレ動き不能に固定される。本実施例では、剥離層44をニッケルおよびその合金で形成し、接着層45を未露光のフォトレジスト層で形成した。
【0030】
次いで、図7(d)に示すように、電鋳処理(めっき処理)を施して、枠体3の表面からマスク本体2と閉塞体19の接合領域8・21にわたって連続する二次電鋳層すなわち金属層4を形成する。一次電鋳層30の表面における金属層4は、レジスト体42a・42bの高さの範囲内で形成する。また、このとき、接合通孔10・22内に金属層4を形成することにより、接合通孔10・22の内周面に密着めっき層34を形成していることと相俟って、マスク本体2と閉塞体19に対する金属層4の接合強度がより向上する。電鋳処理後、母型24から一次電鋳層30、枠体3および金属層4を剥離し、次いで、一次電鋳層30の枠体支持部31を接着層45および剥離層44とともに、枠体3および金属層4から剥離する。最後に二次パターンレジスト42を除去することにより、図7(e)に示す蒸着マスク1の完成品を得ることができる。なお、二次パターンレジスト42の除去は、一次電鋳層30、枠体3および金属層4の剥離前に行っても良いし、枠体支持部31、接着層45および剥離層44の剥離前に行っても良い。
【0031】
母型24から剥離した完成後の蒸着マスク1において、マスク本体2には内方へ収縮しようとする応力が作用する。これは、マスク本体2を含む一次電鋳層30を形成する際の電鋳槽の液温(例えば40〜50℃)が、常温よりも高いことなどに起因するものである。各マスク本体2が収縮しようとすることにより、枠体3には金属層4を介して引張応力が作用する。枠体3のうち格子枠13の各部は、隣り合う2枚のマスク本体2(マスク開口5)で両側から挟まれており、該マスク本体2により両側から引張られるが、引張応力が互いに打ち消されるため殆ど変形しない。一方、外周枠12の各部は、1枚のマスク本体2(マスク開口5)にのみ隣接しており、該マスク本体2により一方のみから引張られるため、格子枠13に比べて変形し易い。
【0032】
外周枠12の各部の引張強度は同一ではなく、特に四隅は相対的に引張強度が高く変形し難い(難変形部)。外周枠12の変形量が各部で異なると、各辺部が内向きに撓み変形するおそれがある。そこで、本実施例では、外周枠12の四隅のそれぞれに、L字状の切欠孔からなる強度低下部14を形成した。これによれば、外周枠12の四隅の引張強度を低下させて、外周枠12の全周にわたって引張強度の均一化を図ることができる。換言すれば、マスク本体2の収縮により生じる引張応力が、外周枠12の各辺部の中央(易変形部)に集中するのを避けて、外周枠12の全体に分散させることができる。これにより、外周枠12の各辺部が内向きに撓み変形することを抑制して、枠体3ひいては蒸着マスク1の全体の外形を良好に保つことができる。なお、本実施例では、マスク本体2と同時に形成される閉塞体19にも、内方へ収縮しようとする応力が作用する。この応力は作用する方が好ましいが、応力がゼロもしくは限りなく小さくなるように閉塞体19を形成することもできる。また、必要があれば、閉塞体19を省略することもできる。この場合、強度低下部14としての切欠孔は、有底状のものであっても良い。また、密着めっき層34において、本実施例では、マスク本体2と閉塞体19の接合領域8・22の全体(上面および外周面)に密着めっき層34を形成したが、図14に示すように、接合領域8・22の外周縁部を除く上面のみに密着めっき層34を部分的に形成しても良い。図2に示すように、密着めっき層34を接合領域8・22の全体に形成した形態に比べ、図14に示すように、密着めっき層34の形成領域(母型24との接地面積)を小さくした形態とすれば、母型24からマスク本体2と閉塞体19を比較的容易に剥離することができる。
【0033】
(実施例2) 図8および図9に、本発明に係る蒸着マスクの実施例2を示す。本実施例では、枠体3の外周枠12の全周にわたって複数個の強度低下部14を形成し、これら強度低下部14の開口面積(外周枠12の周方向の長さ寸法)が、外周枠12の隅部から辺部中央にかけて徐々に小さくなるようにした。外周枠12の隅部は、相対的に引張強度が高く変形し難い難変形部であり、外周枠12の辺部中央は、相対的に引張強度が低く変形し易い易変形部である。本実施例のように、外周枠12の難変形部から易変形部にかけて、強度低下部14の開口面積を徐々に小さくしていくと、外周枠12の各部の引張強度をその全周にわたってより正確に均一化させることができ、これにより、外周枠12の各辺部の撓み変形をより確実に防止することができる。他は実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。なお、外周枠12の周方向における強度低下部14の長さ寸法を徐々に小さくするのに代えて、該周方向に直交する幅方向における強度低下部14の幅寸法を徐々に小さくする場合にも、本実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0034】
マスク本体2と同一の素材および厚みからなる閉塞体19は、自らが変形する(ダミーとなる)ことにより、マスク本体2の変形を抑制する作用効果を発揮する。本実施例のように、マスク本体2を囲むように閉塞体19の一群を配置すると、マスク本体2の変形をより的確に抑制できる。なお、各閉塞体19をマスク本体2と同一の形状および大きさに形成すると、上記の作用効果が最大限に発揮される。
【0035】
(実施例3) 図10に、本発明に係る蒸着マスクの実施例3を示す。本実施例では、枠体3の強度低下部14の開口縁どうしを繋ぐ複数本の桟47を、外周枠12と一体に設けた。これらの桟47は、外周枠12の四隅の引張強度を補強するものであり、強度低下部14を形成することで四隅の引張強度が低下し過ぎるのを避けるために設けられている。本実施例において、強度低下部14と桟47を備える外周枠12の四隅(難変形部)の引張強度は、外周枠12の辺部中央(易変形部)の引張強度に略等しい。桟47は、最初から枠体3と一体に形成してもよく、別体からなる桟47を枠体3に接合して一体化してもよい。両者3・47を別体とする場合、桟47は枠体3と同じ材質でも異なる材質でも良い。ただし、桟47を枠体3とは異なる材質とする場合でも、枠体3と同様にインバー材やセラミック材などの低熱膨張係数の材質で桟47を形成することが好ましい。
【0036】
本実施例の別形態として、外周枠12の全周にわたって強度低下部14を無端状に形成するとともに、四隅(難変形部)から辺部中央(易変形部)にかけて、隣接ピッチが徐々に小さくなるように桟47を設けることができ、あるいは、隣接ピッチは変えずに桟47を徐々に太くすることができる。これらの別形態によれば、先の実施例2と同様の作用効果を得ることができる。なお、実施例3とその別形態において、桟47で区切られた部分の1つ1つを強度低下部14と解釈することも可能であり、また、実施例2の強度低下部14間の非開口部分を桟47と解釈することも可能である。さらに、枠体3(格子枠13)の強度の向上や、枠体3(外周枠12)の強度低下部14の周囲の強度の調整を目的として、マスク開口5内に桟47を設けることができる。この場合の桟47の位置や形状などは任意であるが、蒸着の障害とならないように、マスク本体2のパターン形成領域7(蒸着通孔9)と重ならないようにすることが望ましい。
【0037】
(実施例4) 図11および図12に、本発明に係る蒸着マスクの実施例4を示す。本実施例では、枠体3を構成する上枠15を下枠16よりも細く形成して、上枠15のマスク開口5が下枠16の同開口5よりも一回り大きくなるようにした。上枠15の格子枠13を構成する縦枠と横枠の幅寸法は、下枠16の同幅寸法の3分の1に設定されており、上枠15と下枠16を接着層17で貼り合わせた状態では、上枠15の縦枠および横枠の幅寸法W1と、上枠15の両側における下枠16の上面の幅寸法W2とが等しくなる。
【0038】
基板(蒸着対象)B上に蒸着層を形成する蒸着工程において、図12に示すように、蒸着マスク1は上下を反転した状態で基板Bの下面に密着配置されて、下から上昇する蒸着物質を蒸着パターン(蒸着通孔9)に従って通過させる場合に、本実施例のように、上枠15のマスク開口5を下枠16の同開口5よりも一回り大きくしていると、蒸着工程において上枠15が下側になるように蒸着マスク1を反転させたとき、上枠15の両側部分を細くした分、上昇する蒸着物質にとっての障害物になることを防止することができる。なお、上記四層構造(上枠15と下枠16を備える枠体3を2つ重ねて貼り合わせた四層構造)を採用する場合に、本実施例と同様の作用効果を得るためには、一方の枠体3を構成する上枠15と下枠16を、他方の枠体3を構成する上枠15と下枠16よりも細く形成し、細い方の枠体3を太い方の枠体3の上に貼り合わせるとよい。
【0039】
(実施例5) 図13に、本発明に係る蒸着マスクの実施例5を示す。本実施例では、閉塞体19の表面全体を金属層4で覆った。密着めっき層34は、金属層4と閉塞体19の接合面の全体に形成されている。閉塞体19の表面全体に金属層4を形成すると、強度低下部14の周囲の強度が上昇するため、これを利用して当該部分の強度を調整することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 蒸着マスク
2 マスク本体
3 枠体
4 金属層
5 マスク開口
7 パターン形成領域
8 接合領域
9 蒸着通孔
10 接合通孔
19 閉塞体
21 接合領域
34 密着めっき層
図1
図2
図3
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図5
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図10
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