【解決手段】ユーザにより携帯される車両10のワイヤレスキー3の認証キーと、車両1に登録されている認証キーとが一致する場合に車両1の開錠を含む使用を許可する車両1の認証システム10は、ワイヤレスキー3に設けられる第一集波デバイス23と、車両1に設けられる第二集波デバイス13と、を有する。認証システム10は、第一集波デバイス23により集波される第一波形と、第二集波デバイス13により集波される第二波形との合致が判定される場合に、車両1の使用許可を判定する。
ユーザにより携帯される車両のワイヤレスキーの認証キーと、前記車両に登録されている認証キーとが一致する場合に前記車両の開錠を含む使用を許可する車両の認証システムであって、
前記ワイヤレスキーに設けられる第一集波デバイスと、
前記車両に設けられる第二集波デバイスと、
前記第一集波デバイスにより集波される第一波形と、前記第二集波デバイスにより集波される第二波形との合致が判定される場合に、前記車両の使用許可を判定する許可判定部と、
を有する、
車両の認証システム。
前記比較判定部は、前記波形変換部により生成される複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値についての、1つの周波数帯の値の比較に基づいて、第一波形と第二波形との合致を判定する、
請求項1から3のいずれか一項記載の、車両の認証システム。
前記比較判定部は、前記波形変換部により生成される複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値についての、複数の周波数帯の値によるパターンの比較に基づいて、第一波形と第二波形との合致を判定する、
請求項1から3のいずれか一項記載の、車両の認証システム。
前記比較判定部は、第一波形についての複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値によるパターンと、第二波形についての複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値によるパターンとの重なりの程度に基づいて、第一波形と第二波形との合致を判定する、
請求項1から6のいずれか一項記載の、車両の認証システム。
前記比較判定部は、第一波形についての複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値によるパターンと、第二波形についての複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値によるパターンとを重ねて比較した場合に相違する相違周波数帯が、前記ワイヤレスキーの環境において連続的に発生する音に起因するものである場合、第一波形と第二波形との合致を判定する、
請求項1から7のいずれか一項記載の、車両の認証システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0021】
[第一実施形態]
図1は、本発明の認証システム10が適用可能な自動車1の説明図である。
図1の自動車1は、車両の一例である。自動車1は、ユーザが乗車する車室2を有する。ユーザは、自動車1を使用する場合、ワイヤレスキー3を所持して、自動車1へ近づく。
自動車1の認証システム10は、自動車1から送信要求としてのポーリング信号を周期的に送信する。ワイヤレスキー3は、自動車1に近づいてポーリング信号を受信すると、ワイヤレスキー3の認証キーを自動車1へ送信する。自動車1の認証システム10は、自動車1において、受信した認証キーと、自動車1に予め登録されている認証キーとの一致を判断する。そして、これらの認証キーが一致する場合、認証システム10は、自動車1をドアを開錠し、自動車1の使用を許可する。ユーザは、自ら自動車1のドアを開錠する操作をすることなく、近づくことにより開錠されているドアから自動車1に乗り込むことができる。
このように、自動車1の認証システム10は、ユーザにより携帯される自動車1のワイヤレスキー3を用いた認証により、自動車1の開錠を含む使用を許可する。
【0022】
しかしながら、近年、悪意ある人が、この認証システム10の仕組みを悪用し、所謂リレーアタックにより認証をかいくぐることが実行されている。
所謂リレーアタックでは、
図1に点線円で示す自動車1のポーリング信号の送信範囲に、電波の中継装置4を配置する。電波の中継装置4は、自動車1のポーリング信号を中継して、たとえばユーザの自宅5に到達させる。ユーザが使用するワイヤレスキー3は、ユーザが自宅5にいる場合、自宅5に置かれている。自宅5にあるワイヤレスキー3は、ポーリング信号の送信範囲の外にあるため、ワイヤレスキー3の認証キーを自動車1へ送信しないが、中継装置4からポーリング信号を受信すると、通常通り、ワイヤレスキー3の認証キーを自動車1へ送信する。中継装置4は、このワイヤレスキー3の認証キーの応答信号を中継し、自動車1まで到達させる。自動車1の認証装置11は、認証キーを受信するため、認証処理を実行して、自動車1をドアを開錠する。
このため、自動車1の認証システム10では、さらに改善することが望まれている。
自動車1の認証システム10では、ユーザの利便性を大きく損なうことなく、リレーアタックを良好に防止できるようにすることが求められている。
【0023】
図2は、
図1の自動車1に設けられる認証システム10の構成図である。
図2の認証システム10は、自動車1に設けられる認証装置11、ドア制御装置31、GPS(Global Positioning System)受信機33、外通信装置34、およびこれらを接続する車用のネットワーク35と、ユーザに携帯されるワイヤレスキー3と、を有する。
また、
図2には、認証システム10の認証装置11およびワイヤレスキー3と通信可能な基地局41と、基地局41に接続されるサーバ装置42も、示されている。サーバ装置42は、認証システム10の必須の構成ではないが、認証システム10の一部を構成してもよい。
認証システム10は、ユーザにより携帯される自動車1のワイヤレスキー3の認証キーと、自動車1に予め登録されている認証キーとが一致する場合、自動車1の開錠を含む使用を許可する。
認証装置11は、車内通信部12、車マイクロホン13、認証通信機15、認証ECU(Electric Control Unit)16、認証メモリ17、およびこれらを接続する認証内部バス18、を有する。
ワイヤレスキー3は、無線通信機21、キー通信機22、キーマイクロホン23、指紋デバイス24、キーECU25、キーメモリ26、およびこれらを接続するキー内部バス27、を有する。
【0024】
ドア制御装置31は、自動車1のドアのロック機構32が接続される。ロック機構32は、ドアを施錠し、またドアを開錠する。ドア制御装置31は、ネットワーク35から施錠指示信号を取得すると、ロック機構32により自動車1のドアを施錠する。
ドア制御装置31は、ネットワーク35から開錠指示信号を取得すると、ロック機構32により自動車1のドアを開錠する。
【0025】
GPS受信機33は、図示外のGPS衛星からの電波を受信し、GPS受信機33が設けられる自動車1についての位置情報を生成により取得する。GPS受信機33は、位置取得部として、生成した自動車1またはワイヤレスキー3についての位置の情報を、ネットワーク35へ出力する。
【0026】
車内通信部12は、ネットワーク35に接続される。車内通信部12は、ネットワーク35を通じて、たとえば図中に例示するドア制御装置31、GPS受信機33、外通信装置34などの制御装置との間で情報(データ)を送受する。
【0027】
外通信装置34は、基地局41と通信する。外通信装置34は、ネットワーク35から通信データを取得すると、基地局41へ送信する。外通信装置34は、基地局41から通信データを受信すると、ネットワーク35へ出力する。なお、外通信装置34は、この他にも、図示外の、他の自動車の外通信装置と通信したり、道路に設けられるADAS(Advanced Driver Assistance System)通信機と通信したりしてよい。外通信装置34はサーバ装置42との間で送受する通信データを、通信可能な基地局41、他の外通信装置34またはADAS通信機との間で送受してよい。
無線通信機21、基地局41と通信して、通信データを送受する。
【0028】
指紋デバイス24は、ワイヤレスキー3を携帯するユーザの指紋を読み取る。
【0029】
キーマイクロホン23は、第一集波デバイスとして、ワイヤレスキー3に設けられる。キーマイクロホン23は、ワイヤレスキー3の周囲の第一音波を広帯域で収集する。
車マイクロホン13は、第二集波デバイスとして、自動車1に設けられる。車マイクロホン13は、自動車1の周囲の第二音波を広帯域で収集する。
なお、広帯域とは、可聴帯域のすべてを含むことが実用上望ましいと考えられるが、可聴帯域の一部の周波数の範囲であってもよい。
【0030】
認証通信機15とキー通信機22とは、LF(Low Frequency)のまたはRF(Radio Frequency)の周波数の搬送波を用いた無線通信により、通信データを送受する。
【0031】
キーメモリ26は、ワイヤレスキー3のプログラムおよびデータを記録する。キーECU25は、キーメモリ26からプログラムを読み込んで実行する。これにより、ワイヤレスキー3には、ワイヤレスキー3の動作を制御するワイヤレスキー3の制御部が実現される。
認証メモリ17は、認証装置11のプログラムおよびデータを記録する。認証ECU16は、認証メモリ17からプログラムを読み込んで実行する。これにより、認証装置11には、認証装置11の動作を制御する認証装置11の制御部が実現される。
認証装置11の制御部は、詳細については後述するが、たとえば合致判定部として、キーマイクロホン23により集波される第一波形と、車マイクロホン13により集波される第二波形とを比較して、これらの合致を判定する。
第一波形と第二波形とが合致し、さらに他の認証が照合できる場合、認証装置11の制御部は、許可判定部として、自動車1の使用を許可する開錠指示を、出力する。
第一波形と第二波形とが合致しない場合、または他のいずれかの認証が照合できない場合、認証装置11の制御部は、自動車1の使用を許可する開錠指示を、出力しない。
【0032】
図3は、本発明の第一実施形態での、
図2の自動車1の認証装置11とワイヤレスキー3との認証手順のシーケンスチャートである。
図3において、処理は上から下へ進む。
【0033】
図3に示すように、自動車1の認証装置11は、LFの搬送波により、認証通信機15から周期的にポーリング信号を送信する。
ワイヤレスキー3は、自動車1に近づいていない場合、キー通信機22によりポーリング信号を受信しない。
ワイヤレスキー3は、自動車1に近づいてキー通信機22によりポーリング信号を受信すると、指紋認証を行い、キーメモリ26に記録されているワイヤレスキー3の認証キーを、キー通信機22から自動車1の認証装置11へ送信する。ワイヤレスキー3のキー通信機22は、RFの搬送波により、認証キーを送信する。
その後、ワイヤレスキー3は、ワイヤレスキー3の周囲の環境音をキーマイクロホン23により広帯域で収集し、RFの搬送波により第一音波としてキー通信機22から認証装置11へ送信する。
自動車1の認証装置11は、認証通信機15によりワイヤレスキー3から送信された認証キーを受信すると、自動車1の周囲の環境音を、車マイクロホン13により第二音波として広帯域で収集する。
その後、認証装置11は、ワイヤレスキー3のキー通信機22から認証通信機15が第一音波を受信すると、第一音波と第二音波との合致、認証キーの一致などを判定して、認証処理を実行する。
すべての認証が得られる場合、認証装置11は、自動車1のドアを開錠するための開錠指示信号を、車内通信部12からネットワーク35へ出力する。
ドア制御装置31は、ネットワーク35から開錠指示信号を取得し、ロック機構32により自動車1のドアを開錠する。
【0034】
図4は、
図3のワイヤレスキー3の処理についての詳細なフローチャートである。
ワイヤレスキー3のキーECU25は、
図4の処理を周期的に繰り返して実行する。
【0035】
ステップST1において、キーECU25は、ポーリング信号を受信したか否かを判断する。ポーリング信号を受信していない場合、キーECU25は、ステップST1の処理を繰り返す。ポーリング信号を受信している場合、キーECU25は、処理をステップST2へ進める。
【0036】
ステップST2において、キーECU25は、ポーリング信号に対する応答処理を実行する。キーECU25は、予めキーメモリ26に登録されているワイヤレスキー3に固有の認証キーを読み出し、キー通信機22に送信させる。
【0037】
ステップST3において、キーECU25は、キーマイクロホン23により、ワイヤレスキー3の周囲の環境音を収集する。ワイヤレスキー3の周囲の環境音は、一般的に、ワイヤレスキー3が自宅5などの屋内に存在する場合と、屋外に存在する場合とで、異なる。屋内では、屋外の音が聞こえることもあるが、一般的に屋外の音は抑制され、屋内で発生した音が相対的に大きくなる。このような屋内の音波は、屋外の音波とは異なる音の周波数成分を含み、異なる波形となる。
【0038】
ステップST4において、キーECU25は、収集した環境音を、第一音波としてキー通信機22から送信する。
【0039】
図5は、
図3の自動車1の認証装置11の処理についての詳細なフローチャートである。
認証装置11の認証ECU16は、ポーリング信号の応答を受信し、さらに車マイクロホン13により自動車1の周囲の環境音を収集した後に、
図5の処理を実行する。
【0040】
ステップST11において、認証ECU16は、ワイヤレスキー3および自動車1の双方による音波形を取得できたか否かを判断する。認証ECU16は、ワイヤレスキー3から第一音波を受信していない場合、または認証装置11の車マイクロホン13により第二音波が取得されていない場合、双方による音波形を取得できていないと判断し、ステップST11の待ち処理を繰り返し実行する。認証ECU16は、ワイヤレスキー3から第一音波を受信し、且つ認証装置11の車マイクロホン13により第二音波が取得されている場合、認証ECU16は、双方による音波形を取得できたと判断し、処理をステップST12へ進める。
【0041】
ステップST12において、認証ECU16は、ワイヤレスキー3の第一音波および自動車1の第二音波とのそれぞれを、複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値へ変換する。認証ECU16は、音波をフーリエ変換し、音波に含まれる周波数成分を得る。フーリエ変換された音波は、周波数ごとの強度値を有する。認証ECU16は、周波数および強度による特性平面は、予め定められた周波数帯ごと且つ強度範囲ごとに区分けされる。認証ECU16は、周波数帯ごとに、最大強度値が属する強度範囲を選択し、その強度範囲の値を得る。これにより、認証ECU16は、複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値を得ることができる。
【0042】
ステップST13において、認証ECU16は、GPS受信機33からの位置情報にもとづいて、自動車1の現在位置が自宅5の付近であるか否かを判断する。自宅5は、認証メモリ17において予め設定されている特別位置である。自動車1の現在位置が自宅5の付近でない場合、認証ECU16は、処理をステップST14へ進める。自動車1の現在位置が自宅5の付近である場合、認証ECU16は、処理をステップST15へ進める。
【0043】
ステップST14において、認証ECU16は、第一音波および第二音波のそれぞれにから選択されて合致判定に用いられる周波数帯として、第一周波数帯を選択する。
ステップST15において、認証ECU16は、第一音波および第二音波のそれぞれにから選択されて合致判定に用いられる周波数帯として、第一周波数帯とは異なる第二周波数帯を選択する。自宅5以外での合致判定に用いる第二周波数帯は、たとえば、自宅5での合致判定に用いる第一周波数帯より高い周波数帯としてよい。これにより、自宅5内において高い音が発生しやすい場合、第一音波と第二音波とが合致すると判定され難くなる。
認証ECU16は、比較判定部として、自動車1の現在位置が自宅5の付近であるか否かに応じて、比較する周波数帯を切り替える。
【0044】
ステップST16において、認証ECU16は、第一音波と第二音波とを、周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値により比較する。認証ECU16は、第一音波についての合致判定に選択した周波数帯の強度範囲の値が、第二音波についての合致判定に選択した周波数帯の強度範囲の値と比較する。
認証ECU16は、比較判定部として、複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値についての一部である、1つの周波数帯の値を比較する。
【0045】
ステップST17において、認証ECU16は、ステップST16の比較により第一音波と第二音波とが合致するか否かを判断する。
認証ECU16は、比較判定部として、1つの周波数帯についての強度範囲ごと且つ強度範囲ごとの値の比較に基づいて、第一波形と第二波形との合致を判定する。
第一音波と第二音波とが合致する場合、認証ECU16は、処理をステップST18へ進める。第一音波と第二音波とが合致しない場合、認証ECU16は、第一音波と第二音波との合致を判断することなく、
図5の処理を終了する。なお、認証ECU16は、第一音波と第二音波とが合致しない場合、施錠指示の信号を、車内通信部12からネットワーク35へ出力してもよい。
【0046】
ステップST18において、認証ECU16は、ワイヤレスキー3から取得した識別情報としての認証キーと、認証メモリ17に予め登録されている認証キーとを比較し、これらの認証キーが一致するか否かを判断する。認証キーが一致する場合、処理をステップST19へ進める。認証キーが一致しない場合、認証ECU16は、
図5の処理を終了する。なお、認証ECU16は、認証キーが一致しない場合、施錠指示の信号を、車内通信部12からネットワーク35へ出力してもよい。
【0047】
ステップST19において、認証ECU16は、開錠指示の信号を、車内通信部12からネットワーク35へ出力する。ドア制御装置31は、ネットワーク35から開錠指示信号を取得し、ロック機構32により自動車1のドアを開錠する。
【0048】
図6は、認証装置11の環境音、ワイヤレスキー3の環境音、およびそれらの周波数成分の一例の組合せの説明図である。
図6(A)は、屋外に駐車している自動車1の車マイクロホン13により集音される一例の環境音の第一波形である。
図6(B)は、自動車1の近くの屋外に携帯されているワイヤレスキー3のキーマイクロホン23により集音される一例の環境音の第二波形である。これらの図において、横軸は、時間である。縦軸は、時間領域での強度値である。
図6(C)は、
図6(A)の第一波形をフーリエ変換した周波数領域での強度分布Aと、
図6(B)の第二波形をフーリエ変換した周波数領域での強度分布Bの波形である。横軸は、周波数である。縦軸は、強度である。
【0049】
そして、
図6(A)および
図6(B)に示すように、ワイヤレスキー3が自動車1の近くに存在する場合、第一波形と第二波形とは、略同一の波形となる。
この場合、フーリエ変換後の周波数ごとの強度値による波形は、
図6(C)に示すように、略同じ強度レベルの波形A,Bとなる。
【0050】
図7は、
図6の環境音に対応する周波数帯別の強度パターンの組合せの説明図である。
図7(A)は、
図6(A)および
図6(C)に一点鎖線で示す第一波形Aについての、周波数帯別の強度パターンである。
図7(B)は、
図6(B)および
図6(C)に破線で示す第二波形Bについての、周波数帯別の強度パターンである。これらの図において、横軸は、周波数帯であり、縦軸は、強度値についての強度範囲である。各周波数帯のたとえば最大強度値により、強度範囲の値(高、中、低)へ変換される。
【0051】
図6(C)に示すように、周波数領域での強度値の波形に対して、周波数帯ごとに、最大の強度値が属する強度範囲の値を対応付ける。
図6(C)では、f1〜f2の周波数帯から、f6〜f7の周波数帯までの、6つの周波数帯が設定される。また、強度範囲は、L1未満、L1以上かつL2未満、L2以上かつL3未満、の3つの強度範囲が設定される。この場合、第一波形の周波数帯別の強度パターンは、
図7(A)に示すように、低い周波数帯から順番に「低、低、中、低、低、中」の値を得る。同様に、第二波形の周波数帯別の強度パターンは、
図7(B)に示すように、低い周波数帯から順番に「低、低、中、低、低、中」の値を得る。
この場合、認証ECU16がステップST14において第一周波数帯を選択しても、ステップST15において第二周波数帯を選択しても、比較する周波数帯において、周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値が一致することになる。認証ECU16は、ステップST19において開錠指示の信号を出力できる。ドア制御装置31は、ロック機構32により自動車1のドアを開錠できる。
【0052】
これに対し、
図6(C)において細い破線Cで示すように、ワイヤレスキー3が屋内などに存在して、外での高周波の音がキーマイクロホン23により集音されない場合、第二波形についての周波数帯別の強度パターンは、
図7(C)のようになる。第二波形の周波数帯別の強度パターンは、低い周波数帯から順番に「低、低、中、低、低、低」の値を得る。そして、認証ECU16がステップST15において第二周波数帯を選択すると、比較する第二周波数帯において、周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値が一致しなくなる。認証ECU16は、ステップST19において開錠指示の信号を出力することができない。ドア制御装置31は、ロック機構32により自動車1のドアを開錠できない。悪意のある人が、所謂リレーアタックを試みたとしても、第一波形と第二波形とが合致することはないので、自動車1を開錠することはできない。
【0053】
以上のように、本実施形態では、ユーザにより携帯される自動車1のワイヤレスキー3は、キーマイクロホン23により集波し、自動車1も、車マイクロホン13により集波する。キーマイクロホン23と車マイクロホン13とは、たとえば、音波を広帯域で集める複数のマイクロホンでよい。そして、許可判定部は、キーマイクロホン23により集波される第一波形と、車マイクロホン13により集波される第二波形との合致が判定される場合に、自動車1の使用許可を判定する。
よって、本実施形態では、自動車1およびワイヤレスキー3のいずれからも音波などの信号波を出力することなく、自動車1の使用許可を判定する。このため、悪意ある人は、自動車1などから出力される音波などを録音することはできない。また、悪意ある人が自動車1とワイヤレスキー3との双方へ同じ音を出力したとしても、ユーザが自動車1から離れているために、自動車1の環境とワイヤレスキー3の環境とが本来的に異なっている状況では、これらの波形が合致しない。たとえば家にあるワイヤレスキー3は、家の中の音を含む第一波形を集波し、外に駐車されている自動車1は、家の中の音を含まない外の音による第二波形を集波する。その結果、リレーアタックに対して音を発生する技術を組み合わせたとしても、悪意ある人は、自動車1の使用が許可されなくなる。
しかも、ユーザにあっては、従来通りにワイヤレスキー3を携帯して自動車1に近づくことにより、自動車1とワイヤレスキー3との環境が同じになって、自動車1の車マイクロホン13が集める第二波形と、ワイヤレスキー3のキーマイクロホン23が集める第一波形とが合致するようになる。ユーザは、ワイヤレスキー3を携帯して自動車1に近づくだけで、自動車1の利用が可能になる。
本実施形態では、ユーザの利便性を大きく損なうことなく、将来的なリレーアタックに対してもさらに良好に防止することができる。
【0054】
本実施形態では、キーマイクロホン23により集波される第一波形と、車マイクロホン13により集波される第二波形との合致は、第一波形と第二波形とのそれぞれを、複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値へ変換し、その変換により得られる少なくとも一部の周波数帯についての値の比較に基づいて、判定される。よって、第一波形と第二波形とが波形として完全に一致していなくても、周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値の比較によるマージンを含む判断により、第一波形と第二波形とが合致すると判断することができる。
特に、本実施形態では、生成される複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値についての、1つの周波数帯の値の比較に基づいて、第一波形と第二波形との合致を判定するので、それ以外の周波数帯において値が異なるような相違があったとしても、第一波形と第二波形との合致を判断することができる。
しかも、本実施形態では、位置取得部により取得される位置に応じて、比較する周波数帯を切り替える。よって、たとえば家などの屋内の位置である場合と、そこから離れた屋外の位置とでは、合致判定に用いる周波数帯が異なることになる。家から離れた位置から家まで後追いしてきた悪意のある人がいたとしても、特定の位置である家において、第一波形と第二波形との合致判定を得ることはできない。
【0055】
なお、上述した実施形態では、さらに、ユーザの指紋認証を得るようにしてもよい。
図8は、
図4のワイヤレスキー3の処理についての変形例のフローチャートである。
図8のステップST5において、キーECU25は、指紋認証済みか否かを判断する。キーECU25は、指紋デバイス24から、読み取った指紋を取得する。キーECU25は、取得した指紋と、予めキーメモリ26に登録されている指紋とを比較する。
これらの指紋が一致しない場合、キーECU25は、処理をステップST3へ進める。この場合、キーECU25は、ステップST3において、ワイヤレスキー3の周囲の環境音を収集し、ステップST4において、収集した環境音を第一音波としてキー通信機22から送信する。
指紋が一致する場合、キーECU25は、処理をステップST6へ進める。キーECU25は、ステップST6において、ワイヤレスキー3の周囲の環境音の替わりに、指紋認証が得られていることをキー通信機22から送信する。
この場合、認証装置11の認証ECU16は、許可判定部として、ユーザの指紋認証済みの通知を取得すると、車両の使用許可を判定する。
これにより、ユーザは、音の一致が得られない場合でも、指紋認証操作により明示的に認証を受けて、自動車1のドアを開錠することができる。
【0056】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る自動車1の認証システム10について説明する。本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0057】
図9は、本発明の第二実施形態での、自動車1の認証装置11とワイヤレスキー3との認証手順のシーケンスチャートである。
図9において、処理は上から下へ進む。
【0058】
図9に示すように、自動車1の認証装置11は、LFの搬送波により、認証通信機15から周期的にポーリング信号を送信する。
ワイヤレスキー3は、自動車1に近づいていない場合、キー通信機22によりポーリング信号を受信しない。
ワイヤレスキー3は、自動車1に近づいてキー通信機22によりポーリング信号を受信すると、キーメモリ26に記録されているワイヤレスキー3の認証キーを、キー通信機22から自動車1の認証装置11へ送信する。ワイヤレスキー3のキー通信機22は、RFの搬送波により、認証キーを送信する。
その後、ワイヤレスキー3は、ワイヤレスキー3の周囲の環境音をキーマイクロホン23により広帯域で収集し、RFの搬送波により第一音波としてキー通信機22から認証装置11へ送信する。
ワイヤレスキー3は、所定の複数の回数にわたって、ワイヤレスキー3の周囲の環境音をキーマイクロホン23により収集して認証装置11へ送信する。
これにより、ワイヤレスキー3は、
図6(B)において複数の矢線で示すように、所定の長い期間にわたる第一音波を収集して送信できる。
図6(B)の複数の矢線の中の実線で示す期間は、上述した実施形態の第一音波の収集期間である。
【0059】
自動車1の認証装置11は、認証通信機15によりワイヤレスキー3から送信された認証キーを受信すると、自動車1の周囲の環境音を、車マイクロホン13により第二音波として広帯域で収集する。
認証装置11は、ワイヤレスキー3と同じ所定の複数の回数にわたって、自動車1の周囲の環境音を車マイクロホン13により収集する。
これにより、認証装置11は、
図6(A)において複数の矢線で示すように、所定の期間にわたる第二音波を収集して送信できる。
図6(B)の複数の矢線の中の実線で示す期間は、上述した実施形態の第二音波の収集期間である。
その後、認証装置11は、ワイヤレスキー3のキー通信機22から認証通信機15が最後の第一音波を受信すると、第一音波と第二音波との合致、認証キーの一致などを判定して、認証処理を実行する。
すべての認証が得られる場合、認証装置11は、自動車1のドアを開錠するための開錠指示信号を、車内通信部12からネットワーク35へ出力する。
ドア制御装置31は、ネットワーク35から開錠指示信号を取得し、ロック機構32により自動車1のドアを開錠する。
【0060】
図10は、
図9の自動車1の認証装置11の処理についての詳細なフローチャートである。
認証装置11の認証ECU16は、ポーリング信号の応答を受信し、さらに車マイクロホン13により自動車1の周囲の環境音を収集した後に、
図10の処理を実行する。
【0061】
認証ECU16は、自動車1の現在位置が自宅5の付近であるか否かを判断した後、ステップST21において、第一音波および第二音波のそれぞれにから選択されて合致判定に用いられる複数の周波数帯のセットとして、第一周波数帯セットを選択する。
ステップST22において、認証ECU16は、第一音波および第二音波のそれぞれにから選択されて合致判定に用いられる複数の周波数帯のセットとして、第二周波数帯セットを選択する。
第二周波数帯セットは、
図7に示すように、第一周波数帯セットよりも高い周波数帯を含む。自宅5の周辺で使用される第二周波数帯セットは、自宅5の周辺以外で使用される第一周波数帯セットよりも高い周波数帯を含み、第一音波と第二音波とが合致すると判定され難くなる。
【0062】
その後、認証ECU16は、ステップST16において第一音波と第二音波とを期間ごとに比較し、ステップST17においてそれらの合致を判断する。そして、期間ごとの比較により第一音波と第二音波とが合致しない場合、認証ECU16は、処理をステップST24へ進める。期間ごとの比較により第一音波と第二音波とが合致する場合、認証ECU16は、ステップST23において、合致カウント数を更新する。認証ECU16は、比較判定部として、複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値についての、複数の周波数帯の値によるパターンの比較に基づいて、第一波形と第二波形との合致を判定する。その後、認証ECU16は、処理をステップST24へ進める。
【0063】
ステップST24において、認証ECU16は、
図6の場合であれば第一期間から第n期間までのすべての期間についての、第一音波と第二音波との合致判定が完了したか否かを判断する。すべての期間についての合致判断が終了していない場合、認証ECU16は、処理をステップST16へ戻し、次の期間についての合致判断を繰り返す。この場合、認証ECU16は、比較判定部として、複数のタイミングで集波される第一波形と第二波形との合致を複数回で判定することができる。すべての期間についての合致判断が終了している場合、認証ECU16は、処理をステップST25へ進める。
【0064】
ステップST25において、認証ECU16は、合致カウントの値に基づいて、所定回数以上の合致が得られたか否かを判断する。ここでは、所定回数は、期間数の半分としている。合致カウントの値が期間数の半分以上である場合、認証ECU16は、処理をステップST18へ進める。この場合、認証ECU16は、認証キーの一致を判断した後、開錠指示の信号を出力することができる。合致カウントの値が期間数の半分以上でない場合、認証ECU16は、
図10の処理を終了する。なお、認証ECU16は、合致カウントの値が期間数の半分以上でない場合、施錠指示の信号を出力してもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態では、複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値についての、複数の周波数帯の値によるパターンの比較に基づいて、第一波形と第二波形との合致を判定する。よって、本実施形態では、上述した実施形態のように1つの周波数帯の値の比較に基づいて第一波形と第二波形との合致を判定する場合と比べて、第一波形と第二波形との合致を高い確度で判定することが期待できる。しかも、本実施形態では、波形を複数の周波数帯の強度値そのものではなく、強度範囲ごとの値へ変換した後のパターンで比較するため、一部の周波数帯に相違があったとしても、第一波形と第二波形との合致を高い確度で判定することができる。
【0066】
また、本実施形態では、複数の期間で周波される第一波形と第二波形との合致を複数回で判定し、複数回の合致判定において、所定回数(半分)以上の合致が判定される場合に、自動車1の使用許可を判定する。よって、本実施形態では、仮に瞬時的な信号によりこれらの波形同士が合致することがあったとしても、それ以外のタイミングでの波形が不一致となることにより、自動車1の使用許可を判定しないようにできる。
【0067】
本実施形態では、認証ECU16は、第一音波と第二音波とを、同じタイミングとなる期間で集波したもので比較している。
この他にもたとえば、認証ECU16は、第一音波と第二音波とを、異なるタイミングとなる期間で集波したもの比較して、それらの合致を判断してもよい。
認証ECU16は、たとえば
図9において破線で示す集音期間と、実線で示す集音期間とを比較してよい。
この場合であっても、自動車1の環境とワイヤレスキー3の環境とがともに大きく変化していない状況であれば、認証ECU16は、第一音波と第二音波とが合致すると判断することかできる。
【0068】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る自動車1の認証システム10について説明する。本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0069】
図11は、本発明の第三実施形態での、自動車1の認証装置11の処理についての詳細なフローチャートである。
認証装置11の認証ECU16は、ポーリング信号の応答を受信し、さらに車マイクロホン13により自動車1の周囲の環境音を収集した後に、
図11の処理を実行する。
【0070】
認証ECU16は、ステップST16において第一音波と第二音波とを期間ごとに比較し、ステップST17においてそれらの合致を判断する。そして、期間ごとの比較により第一音波と第二音波とが合致する場合、認証ECU16は、ステップST23において、合致カウント数を更新する。認証ECU16は、比較判定部として、複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値についての、複数の周波数帯の値によるパターンの比較に基づいて、第一波形と第二波形との合致を判定する。期間ごとの比較により第一音波と第二音波とが合致しない場合、認証ECU16は、処理をステップST31へ進める。
【0071】
ステップST31において、認証ECU16は、期間ごとの第一音波の複数の周波数帯の値によるパターンと、第二音波の複数の周波数帯の値によるパターンとが、通常の比較では合致しないものの、ずらして重ねる程度に合致するか否かを判断する。ここで、パターン同士が重なるとは、たとえば、一方のパターンの強度範囲をずらして他のパターンと重ねた場合に、それらが比較する複数の周波数帯において一致する場合をいう。これにより、たとえば第一音波の強度が全体的に、第二音波の強度より小さくなっている場合に、これらが重なることになる。認証ECU16は、比較判定部として、第一波形についての複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値によるパターンと、第二波形についての複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値によるパターンとの重なりの程度に基づいて、第一波形と第二波形との合致を判定する。そして、認証ECU16は、2つの波形のパターンが重なる場合、処理をステップST23へ進める。認証ECU16は、ステップST23において、合致カウント数を更新できる。2つの波形のパターンが重ならない場合、認証ECU16は、処理をステップST32へ進める。
【0072】
ステップST32において、認証ECU16は、ステップST31の重ね合致判定において、重ならなかった相違する周波数帯について評価する。具体的には、認証ECU16は、第一音波についての相違する周波数帯について、複数の期間において定常的に一致しているものであるか否かを判断する。定常的に一致するとは、必ずしもすべての期間において同一の値であることを意味しない。たとえば少なくとも前後の期間での値と一致することをもって、複数の期間において定常的に一致しているとしてよい。認証ECU16は、比較判定部として、第一波形についての複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値によるパターンと、第二波形についての複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値によるパターンとを重ねて比較した場合に相違する相違周波数帯が、たとえばワイヤレスキー3の環境において連続的に発生する音に起因するものである場合、第一波形と第二波形とに相違がなくて合致すると判定する。そして、相違する周波数帯の値が、複数の期間において定常的に相違するものである場合、認証ECU16は、処理をステップST23へ進める。認証ECU16は、ステップST23において、合致カウント数を更新できる。相違する周波数帯の値が、複数の期間において定常的に一致して相違するものでない場合、認証ECU16は、処理をステップST24へ進める。この場合、認証ECU16は、合致カウント数を更新しない。
【0073】
図12は、自動車1の環境の第二波形についての周波数帯別の強度パターンと、ワイヤレスキー3の環境の第一波形についての周波数帯別の強度パターンとの、組合せの説明図である。
図12(A)は、自動車1の第二波形についての周波数帯別の強度パターンである。
図12(B)は、ワイヤレスキー3の第二波形についての周波数帯別の強度パターンである。
【0074】
図12(A)と
図12(B)との組み合わせの場合、認証ECU16は、ステップST17の判断では、合致すると判断しない。このため、認証ECU16は、ステップST31の処理により、これらが重なるか否かを判断する。
図12(A)の周波数帯別の強度パターンにおける各周波数帯の値は、
図12(B)の周波数帯別の強度パターンにおいて対応する周波数帯の値を、1つずつ上へシフトしたものである。この場合、認証ECU16は、ステップST31の処理により、これらが重なると判断し、ステップST23において合致カウント数を更新する。
【0075】
図12(C)は、ワイヤレスキー3の第二波形についての他の周波数帯別の強度パターンである。この場合、認証ECU16は、ステップST17の判断では、合致すると判断しない。また、認証ECU16は、ステップST31の処理において重なると判断しない。このため、認証ECU16は、ステップST32の処理により、これらの間で重ならないように相違している周波数帯の値が、他の期間においても同様であるか否かを判断する。
図12(C)において最も高い周波数帯の値が、ワイヤレスキー3の第二波形についての複数の期間について同じある場合、認証ECU16は、相違が定常的であるとして、ステップST23において合致カウント数を更新する。
【0076】
以上のように、本実施形態では、第一波形についての複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値によるパターンと、第二波形についての複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値によるパターンとの重なりの程度に基づいて、第一波形と第二波形との合致を判定する。これにより、自動車1とワイヤレスキー3との間に距離があり、環境音のレベルが若干相違して、その結果として周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値として互いに異なる値へ割り当てられていたとしても、これらのパターンの重なりの程度により、第一波形と第二波形との合致を判定することができる。周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値の設定が、判定に影響を与え難くできる。
また、ワイヤレスキー3に設けられるキーマイクロホン23と、自動車1に設けられる車マイクロホン13との間に性能差や特性差がある場合でも、第一波形と第二波形との合致を判定し易くなる。
【0077】
また、本実施形態では、第一波形についての複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値によるパターンと、第二波形についての複数の周波数帯ごと且つ強度範囲ごとの値によるパターンとを(重ねて)比較した場合に相違することになる相違周波数帯が、ワイヤレスキー3の環境において連続的に発生する音に起因するものである場合、第一波形と第二波形との合致を判定する。これにより、たとえばワイヤレスキー3がカバンや衣服に入れられていて、カバンや衣服において定常的に発生するこすれる音などが第一波形に含まれていたとしても、その影響を抑制して、第一波形と第二波形との合致を判定することができる。
【0078】
[第四実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る自動車1の認証システム10について説明する。本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0079】
図13は、本発明の第四実施形態での、サーバ装置42を用いた自動車1の認証装置11とワイヤレスキー3との認証手順のシーケンスチャートである。
図13において、処理は上から下へ進む。
【0080】
ワイヤレスキー3は、自動車1に近づいていない場合、キー通信機22によりポーリング信号を受信しない。
ワイヤレスキー3は、自動車1に近づいてキー通信機22によりポーリング信号を受信すると、ワイヤレスキー3の周囲の環境音である第一波形を収集し、無線通信機21から基地局41を通じてサーバ装置42へ送信する。
ワイヤレスキー3から第一波形を受信すると、サーバ装置42は、自動車1の認証装置11へリクエストを送信する。リクエストは、サーバ装置42から基地局41へ送信され、さらに認証装置11の外通信装置34へ送信される。
【0081】
認証装置11の認証ECU16は、車マイクロホン13を用いて、自動車1の周囲の環境音である第二音波を収集し、外通信装置34から基地局41を通じてサーバ装置42へ送信する。
双方の音情報を受信すると、サーバ装置42は、第一音波と第二音波とを比較して、判定する。この際、サーバ装置42は、双方の音波を、周波数帯ごとかつ強度範囲ごとの値へ変換し、選択した1つの周波数帯または複数の周波数帯の値について合致を判定すればよい。サーバ装置42は、合致するとの判定結果、または合致しないとの判定結果を、ワイヤレスキー3および認証装置11へ送信する。
サーバ装置42から合致するとの判定結果を受信する場合、ワイヤレスキー3のキーECU25は、認証キーをキー通信部から認証装置11へ送信する。キー通信機22は、RFの搬送波により、認証キーを認証装置11の認証通信機15へ送信する。
ワイヤレスキー3から認証キーを受信すると、認証装置11の認証ECU16は、第一音波と第二音波とが合致するとの判定結果と、認証キーの一致判定結果などに基づいて、最終的な認証処理を実行する。
すべての認証が得られる場合、認証装置11は、自動車1のドアを開錠するための開錠指示信号を、車内通信部12からネットワーク35へ出力する。
ドア制御装置31は、ネットワーク35から開錠指示信号を取得し、ロック機構32により自動車1のドアを開錠する。
【0082】
このように、本実施形態では、第一音波と第二音波との比較判定は、サーバ装置42で実行される。この場合でも、自動車1の認証システム10は、第一音波と第二音波との合致判定を含む認証結果に基づいて、自動車1のドアの開錠または施錠を制御することができる。
【0083】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0084】
たとえば、上述した実施形態では、自動車1の認証装置11とワイヤレスキー3とは、マイクロホンによりそれらの環境の音波を広帯域に集めている。
この他にもたとえば、認証装置11とワイヤレスキー3とは、可聴帯域以外の周波数帯を含む環境の電波を広帯域に集めてもよい。可聴帯域以外の周波数帯には、たとえば複数の商用電波の周波数が含まれ得る。
ただし、複数の商用電波の周波数は、比較的広い地域において、ほぼ一定に安定した強度となる。したがって、自動車1の認証装置11とワイヤレスキー3とは、可聴帯域以外の周波数帯の電波のみを集めるのではなく、可聴帯域の音波も含むように、広帯域で周波するとよい。この場合、複数の商用電波の周波数は、ワイヤレスキー3の第一波形のレベルと、自動車1の認証装置11の第二波形のレベルとを合致するように調整するための基準強度に使用することができる。認証ECPUは、そのように調整された第一波形の可聴帯域の強度の値と第二波形の可聴帯域の強度の値との合致を判定してよい。