【解決手段】力覚センサ(10)は、起歪体(11)の第1の主面(11a)に設けられた第1の歪ゲージ群を含み起歪体(11)に掛かる力における特定の方向の成分を検出する主ブリッジ回路と、起歪体(11)の第2の主面(11b)に設けられた第2の歪ゲージ群を含み、当該特定の方向と同一方向の力の成分を検出する副ブリッジ回路とを備えている。
前記主ブリッジ回路が検出する成分と、前記副ブリッジ回路が検出する成分とを比較して、前記力覚センサにおける機械的な不具合が生じているか否かを判定する回路またはプロセッサをさらに備えている、請求項1に記載の力覚センサ。
前記主ブリッジ回路が検出する成分を当該特定の方向の成分として外部に出力するか、前記副ブリッジ回路が検出する成分を当該特定の方向の成分として外部に出力するかを切り替えるスイッチをさらに備えている、請求項1または2に記載の力覚センサ。
互いに直交する3軸をx軸、y軸、およびz軸として、z軸方向の力成分Fz、x軸周りのモーメント成分Mx、およびy軸周りのモーメント成分Myの成分を検出する第1ブリッジ回路群と、x軸方向の力成分Fx、y軸方向の力成分Fy、およびz軸周りのモーメント成分Mzを検出する第2ブリッジ回路群とを備え、
前記主ブリッジ回路は、前記第1ブリッジ回路群または前記第2ブリッジ回路群に属するブリッジ回路である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の力覚センサ。
前記第1の面は、前記起歪体の第1の主面であり、前記第2の面は、前記起歪体における前記第1の主面とは反対側の第2の主面である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の力覚センサ。
前記起歪体は、力を受けるコア部と、前記コア部に対して固定されるフレーム部と、前記コア部と前記フレーム部とを連結するアーム部と、前記フレーム部と前記アーム部との間に介在するフレクシャと、を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の力覚センサ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態1〕
本実施形態における力覚センサ10について、
図1および
図2を参照して説明する。力覚センサ10は、起歪体に掛かる力の特定の方向の成分を検出する力覚センサである。特定の方向とは、互いに直交する3軸をx軸、y軸、およびz軸として、x軸方向、y軸方向、z軸方向、x軸周りの方向、y軸周りの方向およびz軸周りの方向、の6方向である。また、特定の方向の成分は、Fx、Fy、Fz、Mx、MyおよびMzで表される。Fxは、起歪体に生じる力のx軸方向の成分を表し、Fyは当該力のy軸方向の成分を表し、Fzは当該力のz軸方向の成分を表す。また、Mxは当該力のx軸周りのモーメント成分を表し、Myは当該力のy軸周りのモーメント成分を表し、Mzは当該力のz軸周りのモーメント成分を表す。
【0021】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る力覚センサの第1の主面側の構成を模式的に示す平面図である。
図1(b)は、本発明の一実施形態に係る力覚センサの第2の主面側の構成を模式的に示す平面図である。
図2(a)は、
図1(a)に示す円C1で囲んだ箇所を拡大して示す、ビーム部の第1の主面における歪ゲージの配置の第1の例を模式的に示す図である。
図2(b)は、
図1(b)に示す円C2で囲んだ箇所を拡大して示す、ビーム部の第2の主面における歪ゲージの配置の第1の例を模式的に示す図である。
【0022】
なお、力覚センサ10は、後述のブリッジ回路の出力信号を処理(例えば行列演算など)するために、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)およびROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶部を有する処理部(不図示)を備える。
【0023】
[起歪体]
力覚センサ10は、起歪体11を備える。より具体的には、起歪体11は、外形が例えば円形(他に矩形、多角形であってもよい)であり、第1の主面(第1の面)11a、その反対側の面である第2の主面(第2の面)11bおよび外側面を有する。
【0024】
本実施形態では、起歪体11は、中央に位置するコア部12と、コア部12の周囲に存在する枠部としてのフレーム部13と、コア部12とフレーム部13とを連結するビーム部14とを有する。
【0025】
コア部12は、本実施形態では、検出すべき力を受ける部分であり、受力部とも言われる。フレーム部13は、本実施形態では、力覚センサ10が搭載される対象物に対してコア部12の位置を相対的に固定するための部分であり、固定部とも言われる。コア部12およびフレーム部13のいずれも受力部または固定部になり得る。
【0026】
コア部12の形状は、限定されないが、本実施形態においては、底面が略正方形である柱形状(すなわち、略四角柱形状)である。また、フレーム部13の形状は、限定されないが、本実施形態においては、底面が略円形から略正方形をくり抜いた形状である筒形状である。
【0027】
ビーム部14は、コア部12の中心Oからフレーム部13へ向かって放射状に設けられている。ビーム部14の個数は、限定されないが、本実施形態においては4である。より具体的に、四本のビーム部14は、平面視クロス状(X字状、十字状)となるように、コア部12およびフレーム部13の周方向に等間隔で(中心Oの周方向に90°ごとに)配置されている。
【0028】
ビーム部14は、アーム部15と、フレクシャ16とを含む。アーム部15は、コア部12から、コア部12の中心Oから放射状に、フレーム部13に向けて延在している。アーム部15の端部は、フレーム部13との間に隙間を有しており、当該端部とフレーム部13との間には、フレクシャ16が介在する。フレクシャ16は、アーム部15の延在方向と交差する方向に延在し、フレーム部13と連結している。このように、ビーム部14は、フレーム部13とアーム部15との間にフレクシャ16を介在させた構造を有しており、起歪体11は、コア部12およびフレーム部13を剛体とみなした場合にビーム部14が弾性体とみなせるように構成されている。
【0029】
起歪体11は、例えば、NC(Numerical Control)加工機を用いてアルミニウム合金、合金鋼、ステンレス鋼などバネ性のある材料に貫通孔などを形成することによって得られる。この方法によれば、起歪体11には、コア部12、フレーム部13およびビーム部14のそれぞれを区画するための空間(貫通部)が形成される。
【0030】
コア部12に外力が掛けられると、ビーム部14に応力(曲げ、せん断、捩りといった歪み)が発生する。たとえば、ビーム部14の延在方向およびこれと直交する方向に曲げ(撓み)が発生し、ビーム部14の延在方向に対して45°方向にせん断が発生し、そしてビーム部14の周方向に捩りが発生する。
【0031】
[歪ゲージ]
力覚センサ10は、起歪体11の第1の主面11aに設けられた第1の歪ゲージ群を有する。第1の歪ゲージ群は、複数の歪ゲージ22で構成される。
【0032】
歪ゲージ22は、例えば、Cu(銅)−Ni(ニッケル)系合金やNi−Cr(クロム)系合金の金属薄膜(金属箔など)の配線パターンを、可撓性を有するポリイミドやエポキシ樹脂フィルムで覆うことで構成される。このような歪ゲージ22は、接着剤を用いてビーム部14に貼り付けられる。金属薄膜がビーム部14の歪みを受けて変形したときの抵抗変化から、歪みが検知、検出される。歪ゲージ22は、歪み(曲げ、せん断など)を分けて検出することができればよいので、金属薄膜ではなく半導体薄膜を用いた半導体歪みゲージであってもよい。
【0033】
スパッタリング法または真空蒸着法を用いてビーム部14における第1の主面11aに金属薄膜ゲージを直接形成すれば、接着によらずに歪ゲージ22をビーム部14に配置することが可能である。この場合、歪ゲージ22の設置時における位置ズレが抑制され、起歪体11における力の成分の検出精度を十分に高めることができ有利である。
【0034】
第1の歪ゲージ群は、ビーム部14一本当たり八つの歪ゲージ22を含む。以下、特定の位置を示すために歪ゲージの符号「22」の後にアルファベットを付けることもある。
【0035】
一本のビーム部14は、
図2(a)に示されるように、4つの歪ゲージ22a、22b、22c、22dをアーム部15に有し、4つの歪ゲージ22A、22B、22C、22Dをフレクシャ16に有する。
【0036】
アーム部15において、歪ゲージ22aと歪ゲージ22c、および、歪ゲージ22bと歪ゲージ22dは、それぞれ、ビーム部14の中心線aに対して互いに対称となる位置に配置される。歪ゲージ22aと歪ゲージ22b、および、歪ゲージ22cと歪ゲージ22dは、それぞれ中心線aに沿う方向に並んで配置される。
【0037】
フレクシャ16において、歪ゲージ22Aと歪ゲージ22B、および、歪ゲージ22Cと歪ゲージ22Dは、それぞれ、フレクシャ16の中心線bに対して互いに対称となる位置に配置される。歪ゲージ22Aと歪ゲージ22D、および、歪ゲージ22Bと歪ゲージ22Cは、それぞれ中心線bに沿う方向に並んで配置される。
【0038】
[ブリッジ回路]
力覚センサ10は、上記の第1の歪ゲージ群を含み、起歪体11に掛かる力の特定の方向の成分を検出する主ブリッジ回路を備えている。
【0039】
より具体的には、力覚センサ10は、z軸方向の力成分Fz、x軸周りのモーメント成分Mx、およびy軸周りのモーメント成分Myの成分を検出する第1ブリッジ回路群を備える。
【0040】
第1ブリッジ回路群は、アーム部15の第1の主面11a上に配置されている四つの歪ゲージ22a、22b、22c、22dで構成されるFzMxMyブリッジ回路20の群である。一つのアーム部15当たり一つのFzMxMyブリッジ回路20が構成される。よって、第1ブリッジ回路群は、四つのFzMxMyブリッジ回路20で構成される。
【0041】
FzMxMyブリッジ回路20は、z軸方向の力成分Fz、x軸周りのモーメント成分Mx、およびy軸周りのモーメント成分Myの成分を検出する第1ブリッジ回路である。一つのFzMxMyブリッジ回路20は、歪ゲージ22a、22bの直列回路と、歪ゲージ22c、22dの直列回路とが、ブリッジ回路の出力に対して並列に接続されて構成される。
【0042】
歪ゲージ22a、22b、22c、22dのそれぞれが検出した歪に応じて、FzMxMyブリッジ回路20を構成する歪ゲージ22a、22b、22c、22dの抵抗値が変化する。そして、FzMxMyブリッジ回路20が非平衡状態となったときに、FzMxMyブリッジ回路20の出力信号Voが変化する。ビーム部14の第1の主面11a側に配置されている四つのFzMxMyブリッジ回路20における出力信号の組み合わせから、Fz、MxおよびMyのそれぞれが検出される。
【0043】
力覚センサ10は、x軸方向の力成分Fx、y軸方向の力成分Fy、およびz軸周りのモーメント成分Mzを検出する第2ブリッジ回路群を備える。
【0044】
第2ブリッジ回路群は、フレクシャ16の第1の主面11a上に配置されている四つの歪ゲージ22A、22B、22C、22Dで構成されるFxFyMzブリッジ回路21の群である。一つのフレクシャ16当たり一つのFxFyMzブリッジ回路21が構成される。よって、第2ブリッジ回路群は、四つのFxFyMzブリッジ回路21で構成される。
【0045】
FxFyMzブリッジ回路21は、x軸方向の力成分Fx、y軸方向の力成分Fy、およびz軸周りのモーメント成分Mzを検出する第2ブリッジ回路である。一つのFxFyMzブリッジ回路21は、歪ゲージ22A、22Bの直列回路と、歪ゲージ22C、22Dの直列回路とが、ブリッジ回路の出力に対して並列に接続されて構成される。
【0046】
歪ゲージ22A、22B、22C、22Dのそれぞれが検出した歪に応じて、FxFyMzブリッジ回路21を構成する歪ゲージ22A、22B、22C、22Dの抵抗値が変化する。そして、FxFyMzブリッジ回路21が非平衡状態となったときに、FxFyMzブリッジ回路21の出力信号Voが変化する。ビーム部14の第1の主面11a側に配置されている四つのFxFyMzブリッジ回路21における出力信号の組み合わせから、Fx、FyおよびMzのそれぞれが検出される。
【0047】
こうして、起歪体11の第1の主面11aに設けられた第1の歪ゲージ群を含む主ブリッジ回路から、起歪体11に掛かる力の特定の方向の成分Fx、Fy、Fz、Mx、MyおよびMzが検出される。当該主ブリッジ回路は、第1ブリッジ回路群または第2ブリッジ回路群に属するブリッジ回路である。
【0048】
[第2の主面側の構成]
力覚センサ10は、第2の主面11bに設けられた第2の歪ゲージ群を含み、起歪体11に掛かる力の前記特定の方向と同一方向の成分(すなわちFx、Fy、Fz、Mx、MyおよびMz)を検出する副ブリッジ回路を備える。
【0049】
第2の歪ゲージ群は、第2の主面11b上において、第1の主面11aにおけるそれと同じ位置に配置される複数の歪ゲージ22で構成される。力覚センサ10は、z軸方向の力成分Fz、x軸周りのモーメント成分Mx、およびy軸周りのモーメント成分Myの成分を検出する第3ブリッジ回路群を備える。第3ブリッジ回路群は、アーム部15の第2の主面11b上に配置されている四つの歪ゲージ22a、22b、22c、22dで構成されるFzMxMyブリッジ回路20の群である。一つのアーム部15当たり一つのFzMxMyブリッジ回路20が構成される。よって、第3ブリッジ回路群は、四つのFzMxMyブリッジ回路20で構成される。
【0050】
力覚センサ10は、x軸方向の力成分Fx、y軸方向の力成分Fy、およびz軸周りのモーメント成分Mzを検出する第4ブリッジ回路群を備える。第4ブリッジ回路群は、フレクシャ16の第2の主面11b上に配置されている四つの歪ゲージ22A、22B、22C、22Dで構成されるFxFyMzブリッジ回路21の群である。一つのフレクシャ16当たり一つのFxFyMzブリッジ回路21が構成される。よって、第4ブリッジ回路群は、四つのFxFyMzブリッジ回路21で構成される。
【0051】
第2の主面11b上における第3ブリッジ回路群のFzMxMyブリッジ回路20および第4ブリッジ回路群のFxFyMzブリッジ回路21における歪ゲージ22の配置は、
図1(b)および
図2(b)に示されるように、第1の主面11a上における第1ブリッジ回路群および第2ブリッジ回路群における歪ゲージ22の配置と同じである。
【0052】
そして、第2の主面11b上に配置されている歪ゲージ22a、22b、22c、22dのそれぞれが検出した歪に応じて、ビーム部14の第2の主面11b側に配置されている四つのFzMxMyブリッジ回路20における出力信号が変化し、その組み合わせから、Fz、MxおよびMyのそれぞれが検出される。
【0053】
また、第2の主面11b上に配置されている歪ゲージ22A、22B、22C、22Dのそれぞれが検出した歪に応じて、ビーム部14の第2の主面11b側に配置されている四つのFxFyMzブリッジ回路21における出力信号が変化し、その組み合わせから、Fx、FyおよびMzのそれぞれが検出される。
【0054】
こうして、起歪体11の第2の主面11bに設けられた第2の歪ゲージ群を含む副ブリッジ回路から、起歪体11に掛かる力の特定の方向と同一方向の成分Fx、Fy、Fz、Mx、MyおよびMzが検出される。当該副ブリッジ回路は、第3のブリッジ回路群または第4のブリッジ回路群に属するブリッジ回路である。
【0055】
上記の説明から明らかなように、力覚センサ10は、第1の主面11aに配置されている歪ゲージ22とそれを含むブリッジ回路とから、コア部12に係る外力の6軸方向の成分Fx、Fy、Fz、Mx、MyおよびMzを検出するように構成されている。また、力覚センサ10は、第2の主面11bに配置されている歪ゲージ22とそれを含むブリッジ回路とから、コア部12に係る外力の6軸方向の成分Fx、Fy、Fz、Mx、MyおよびMzを、上記の第1の主面11a側での力成分の検出とは独立して検出するように構成されている。
【0056】
力覚センサ10は、上記の構成を有することから、力の特定の方向(前述の6軸方向)の成分を複数のブリッジ回路によって独立して検出することが可能である。よって、これらの検出結果を用いて力覚センサにおける機械的な不具合に対する信頼性を高めることが可能となる。
【0057】
さらに、力覚センサ10は、ビーム部14のフレクシャ16を含むことから、当該フレクシャを有さない起歪体を有する力覚センサに比べて、高い精度で力の成分を検出することができる。
【0058】
[機械的不具合の判定処理例]
力覚センサ10は、主ブリッジ回路が検出する成分と、副ブリッジ回路が検出する成分とを比較して、力覚センサ10における機械的な不具合が生じているか否かを判定する回路またはプロセッサをさらに備える。
【0059】
機械的な不具合の例には、起歪体11の塑性変形、歪ゲージの劣化、歪ゲージの剥離、および、ブリッジ回路の配線の断線、が含まれる。当該機械的な不具合は、例えば、主ブリッジ回路が検出する成分と副ブリッジ回路が検出する成分との比較において、適当な閾値を利用することにより実行することが可能である。判定対象となる機械的不具合の種類は、例えば、採用する閾値に応じて適宜に設定することが可能である。また、当該判定の処理は、例えば前述したCPUによって実行することが可能である。
【0060】
図3は、本発明の一実施形態に係る力覚センサが実行する機械的不具合の判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。この処理例では、力覚センサ10は、通常、主ブリッジ回路が検出した力の成分を外部に出力しているものとする。
【0061】
ステップS301において、CPUは、主ブリッジ回路が検出した力の成分F1を取得する。
【0062】
ステップS302において、CPUは、副ブリッジ回路が検出した力の成分F2を取得する。
【0063】
ステップS303において、CPUは、F1に対するF1とF2との差分の比の絶対値(|1−|F2/F1||)を算出する。
【0064】
力覚センサ10において、起歪体11の塑性変形などの機械的不具合が生じている場合では、主ブリッジ回路の出力と副ブリッジ回路の出力との間の差分が、正常時のそれよりも大きくなる。たとえば、起歪体11が塑性変形を生じている場合の当該差分の閾値として、0.05(正常時の±5%)が設定されている、とする。
【0065】
ステップS304において、CPUは、当該差分の比が閾値0.05を超えているか否か(上記差分が5%を超えているか否か)を判定する。
【0066】
当該差分の比が閾値0.05を超えている場合、ステップS305において、CPUは、F1およびF2のそれぞれを、各々の基準値と比較する。当該基準値は、特定の姿勢などの特定の条件におけるF1の値およびF2の値である。
【0067】
ステップS306において、CPUは、F1およびF2のそれぞれについて、上記基準値との差を求め、基準値との差が所定の閾値、例えば基準値に対して5%以上である回路に異常があると判定する。たとえば、F1の基準値との差が閾値より大きければ、主ブリッジ回路に異常があると判定する。
【0068】
ステップS307において、CPUは、異常があると判定したブリッジ回路の存在を通知する故障検知信号を外部に送信する。
【0069】
このような処理によれば、主ブリッジ回路または副ブリッジ回路の少なくともいずれかの出力値に意図せぬ変動が生じていることに基づいて、力覚センサ10の機械的不具合の有無が判定される。「機械的不具合あり」との判定結果は、直ちに力覚センサ10の使用者に通知される。よって、力覚センサ10の信頼性がより一層高められる。
【0070】
なお、ステップS306において、F1およびF2のどちらも基準値との差が5%以上である場合には、CPUは、主ブリッジ回路および副ブリッジ回路の両方に異常があると判定するが、上記の場合では起歪体の故障の可能性もあり得る。よって、ステップS307において、CPUは、故障検知信号として、両ブリッジ回路の異常および起歪体の故障の一方または両方を外部に通知してよい。
【0071】
[出力切り替え処理の例]
力覚センサ10は、主ブリッジ回路が検出する成分を、特定の方向の成分として力覚センサ10から外部に出力するか、副ブリッジ回路が検出する成分を当該特定の方向の成分として外部に出力するかを切り替えるスイッチをさらに備えている。
図4は、本発明の一実施形態に係る力覚センサが実行する出力信号の切り替え処理の流れの一例を示すフローチャートである。この処理例では、力覚センサ10は、通常、主ブリッジ回路が検出した力の成分を外部に出力しているものとする。
【0072】
図3のステップS301からステップS306において、CPUは、取得したF1、F2から、主ブリッジ回路および副ブリッジ回路のいずれに異常が存在するかを判定する。異常の存在を判定しない場合には、CPUは、出力の切り替えのための処理を終了する。
【0073】
異常が存在すると判定した場合には、ステップS401において、CPUは、異常が存在するブリッジ回路の出力を停止し、異常が存在すると判定したブリッジ回路以外のブリッジ回路から出力値を獲得する。たとえば、CPUは、主ブリッジ回路に異常が存在すると判定した場合では、ステップS401において主ブリッジ回路の出力を停止させ、副ブリッジ回路の出力値を採用する。このように、上記の処理例では、CPUは、力覚センサ10から外部への出力を、異常が存在するブリッジ回路の出力から、異常が存在しないブリッジ回路の出力に切り替えるスイッチに該当する。
【0074】
このような処理によれば、通常は外部への出力値を検出する主ブリッジ回路に機械的不具合が生じても、検出結果を外部に出力するためのブリッジ回路を主ブリッジ回路から副ブリッジ回路へ切り替えることにより、力覚センサ10を適切な作動状態でさらに使用することが可能となる。よって、一方のブリッジ回路が故障した後も力覚センサ10をさらに使用することが可能となる。
【0075】
[歪ゲージの配置およびブリッジ回路の他の例]
なお、本実施形態において、歪ゲージ22の配置およびブリッジ回路の構成は、所望の方向の力を検出可能な範囲において限定されない。ブリッジ回路は、歪ゲージの配置に応じて適宜に構成されればよい。歪ゲージ22の配置は、例えば
図5〜
図7に示される配置であってもよい。
【0076】
図5は、ビーム部の第1の主面における歪ゲージの配置の第2の例を模式的に示す図である。
図6は、ビーム部の第1の主面における歪ゲージの配置の第3の例を模式的に示す図である。
図7は、ビーム部の第1の主面における歪ゲージの配置の第4の例を模式的に示す図である。
【0077】
上記の第2の例では、歪ゲージ22aと歪ゲージ22c、および、歪ゲージ22bと歪ゲージ22dは、それぞれ、ビーム部14の中心線aに対して互いに対称となる位置に配置される。歪ゲージ22aと歪ゲージ22b、および、歪ゲージ22cと歪ゲージ22dは、それぞれ中心線aに沿う方向に並んで配置される。
【0078】
中心線aに沿う方向において、歪ゲージ22a、22cと歪ゲージ22b、22dとの間に、歪ゲージ22A、22B、22C、22Dが配置される。歪ゲージ22Aと歪ゲージ22D、および、歪ゲージ22Bと歪ゲージ22Cは、それぞれ、中心線aに対して互いに対称となる位置に配置される。歪ゲージ22Aと歪ゲージ22Cは、中心線aに対して45°の角度で交差する第1軸線上に配置されており、歪ゲージ22Bと歪ゲージ22Dは、中心線aに対して45°の角度で交差し、かつ上記第1軸線に直交する第2軸線上に配置されている。
【0079】
上記の第3の例では、歪ゲージ22a、22b、22c、22dは、第2の例のそれと同じに配置されている。歪ゲージ22A、22B、22C、22Dは、それぞれ、中心線aに対して歪ゲージ22a、22b、22c、22dよりも外側に配置されている以外は、第2の例と同様に、第1軸線および第2軸線上に前述のように配置されている。当該第3の例では、歪ゲージ22A、22Dは、歪ゲージ22a、22cよりもコア部12側に配置されており、歪ゲージ22B、22Cは、歪ゲージ22b、22dよりもフレーム部13側に配置されている。
【0080】
上記の第4の例では、歪ゲージ22a、22b、22c、22dの配置が異なる以外は、前述の第2の例のそれと同じである。歪ゲージ22a、22b、22c、22dは、中心線b上に並んで配置されている。歪ゲージ22a、22cが中心線aに対してより近い位置に配置され、歪ゲージ22b、22dがより遠い位置に配置されている。より具体的には、歪ゲージ22a、22cは、アーム部15におけるフレクシャ16との連結部分に配置され、歪ゲージ22b、22dは、フレクシャ16におけるフレーム部13との連結部に配置されている。
【0081】
上記の第2の例から第4の例において、FzMxMyブリッジ回路およびFxFyMzブリッジ回路は、
図2(a)および
図2(b)に示される前述した第1の例と同じ符号の歪ゲージ22の組み合わせによって構成される。
【0082】
本実施形態では、第1の主面11aと第2の主面11bにおける歪ゲージ22の配置およびブリッジ回路の構成が同様と説明したが、第1の主面11aと第2の主面11bにおいて、歪ゲージ22の配置およびブリッジ回路の構成が互いに異なっていてもよい。この場合、前述の故障検知または切り替えの判定において、第1の主面11a側の主ブリッジ回路と第2の主面11b側の副ブリッジ回路との比較は、力に換算して実行してもよい。
【0083】
本実施形態では、起歪体11の第1の主面11aと、その反対側の第2の主面11bのそれぞれに、前述の歪ゲージ群が配置される。所期の構成のブリッジ回路となるように歪ゲージを予め接続した一体物(ブリッジ形成ゲージ)をビーム部に貼り付けることにより、歪ゲージとブリッジ回路を一度に設置することが可能である。このようなブリッジ形成ゲージの採用は、歪ゲージの接続不良の発生が低減することにより信頼性を高める観点から有利である。また、力覚センサの製造における作業性を高め、生産性を向上させる観点からも有利である。
【0084】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0085】
本実施形態では、3本のビーム部14が平面視Y字状に配置される起歪体を有する力覚センサを説明する。本実施形態は、起歪体の形状が異なる以外は、前述した実施形態1と実質的に同じである。
図8は、本発明の実施形態2に係る力覚センサの起歪体を模式的に示す斜視図である。
【0086】
本実施形態の力覚センサ10Aにおいて、コア部12の形状は、本実施形態においては、底面が略六角形である柱形状(すなわち、略六角柱形状)である。また、フレーム部13の形状は、本実施形態においては、底面が略円形から略六角形をくり抜いた形状である筒形状である。
【0087】
起歪体11Aは、ビーム部14を有する。ビーム部14の個数は、本実施形態においては3である。三本のビーム部14は、平面視Y字状となるように、コア部12およびフレーム部13の周方向に等間隔で(中心Oの周方向に120°ごとに)配置される。コア部12の平面形状は、例えば円形である。それぞれのビーム部14の第1の主面11a側および第2の主面11b側のそれぞれには、実施形態1のそれと同様に、歪ゲージ22が配置され、ブリッジ回路が形成される。
【0088】
本実施形態では、ビーム部14の第1の主面11a側に配置されている三つのFzMxMyブリッジ回路における出力信号の組み合わせから、Fz、MxおよびMyのそれぞれが検出され、三つのFxFyMzブリッジ回路における出力信号の組み合わせから、Fx、FyおよびMzのそれぞれが検出される。そして、ビーム部14の第2の主面側に配置されている三つのFzMxMyブリッジ回路における出力信号の組み合わせからも、Fz、MxおよびMyのそれぞれが検出され、三つのFxFyMzブリッジ回路における出力信号の組み合わせからも、Fx、FyおよびMzのそれぞれが検出される。
【0089】
本実施形態において、故障検知または切り替えの判定は、実施形態1のそれと同様に実行される。本実施形態も、実施形態1と同じ効果を奏する。
【0090】
〔ソフトウェアによる実現例〕
前述の実施形態において、塑性変形の判定または出力信号の切り替えに係る判定のための制御ブロックは、集積回路(ICチップ)などに形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0091】
後者の場合、当該判定のための構成は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、当該判定の実行という目的が達成される。
【0092】
上記プロセッサとしては、例えばCPUを用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROMなどの他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAMなどをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波など)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0093】
[変形例]
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0094】
たとえば、前述の実施形態では、本発明を6軸力覚センサに適用した場合について説明した。本発明に係る力覚センサは、6軸力覚センサに限定されず、物体が受ける力の大きさまたは方向の少なくともいずれか一方の成分を検出(計測)する力覚センサ(慣性力を検出するのであれば、加速度センサや角速度センサなどの運動センサとも呼ばれている。)にも適用することができる。
【0095】
また、起歪体は、当該力覚センサの所期の目的を達成可能な構造を有していればよく、例えば、アームまたはフレクシャを有していなくてもよい。
【0096】
さらに、起歪体の外形も限定されない。起歪体の外形は、円形以外の形状、例えば矩形、あるいは多角形、であってもよい。
【0097】
また、前述の実施形態では、起歪体の中央部をコア部とし、その周辺の枠部をフレーム部としている。本発明に係る力覚センサは、枠部をコア部とし、中央部をフレーム部とすることも可能である。
【0098】
また、前述の実施形態では、6軸力覚センサの形態において、主ブリッジ回路が検出する力の成分の向きと、副ブリッジ回路が検出する力の向きとが実質的に同じであるが、本発明はそれに限定されない。たとえば、主ブリッジ回路が起歪体に生じた応力の前述の6方向の成分を検出するように構成される場合、副ブリッジ回路は、当該6方向のうちの3方向の成分を検出するように構成されてもよい。このような構成は、力覚センサに係る情報処理の負荷軽減の観点から有利である。
【0099】
また、例えば、主ブリッジ回路における歪ゲージの配置およびブリッジ回路の構成(歪ゲージの組み合わせ)と、副ブリッジ回路におけるそれとは異なっていてもよい。より具体的には、副ブリッジ回路は、FzMxMyブリッジ回路およびFxFyMzブリッジ回路以外のブリッジ回路によるブリッジ回路群に属していてもよい。この場合、副ブリッジ回路を構成する歪ゲージも、副ブリッジ回路に応じて第2の面に配置される。
【0100】
また、前述の実施形態では、第1の主面に第1の歪ゲージ群の歪ゲージを配置し、第2の主面に第2の歪ゲージ群の歪ゲージを配置しているが、歪ゲージの配置は、これに限定されない。たとえば、第1の歪ゲージ群の歪ゲージをビーム部14の一側面に配置し、第2の歪ゲージ群の歪ゲージをビーム部14の他側面に配置してもよい。