【解決手段】対称性を有する形状を含むワークを検査する方法であって、所定の撮像位置におけるワークの対称形状の基準となる点、直線または平面を挟んで対向する方向であって、かつ前記撮像位置に対して固定された複数の方向から画像を撮像する撮像工程、前記撮像工程によって得られ、互いに対向する方向から撮像された複数の画像間の差分情報を得る差分取得工程、前記差分取得工程で得られた差分情報が所定値を超えた場合に欠陥有りと判断する判定工程を有する検査方法。
テーブル上で、線対称または面対称な形状を含むワークを、対称の基準となる直線または平面が前記テーブルの面に垂直になった状態で撮像位置を通過するように搬送する搬送工程をさらに有する
請求項1または2に記載の検査方法。
前記判定部は、前記差分情報において予め設定されている閾値を超える部分を注目領域として抽出し、前記注目領域の有する特徴量が所定の条件を満たす場合に欠陥と判定する
請求項6〜9のいずれかに記載の検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の検査装置は、歯車のように凸部や凹部の形状部分が周期的に繰り返されて形成されたワークを対象とするものであって、ワークを回転させるための構造を必要とし、また、ワークの各歯を正確にカメラに対峙させるという位置制御が必要であるから構造が複雑となる。加えて、歯数分の撮像回数が必要になるので、検査に時間がかかる。
【0007】
文献2の検査装置も、ウェハを回転させるので構造が複雑になり、検査に時間がかかるという同様の課題を有する。
【0008】
本発明は、前記課題に鑑み、ワークの欠陥の有無を判定することのできる新たな技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の技術を提供する。
【0010】
(1)対称性を有する形状を含むワークを検査する方法であって、
所定の撮像位置において、前記ワークの対称形状の基準となる点、直線または平面を挟んで対向する方向であって、かつ前記撮像位置に対して固定された複数の方向から画像を撮像する撮像工程、
前記撮像工程によって得られ、互いに対向する方向から撮像された複数の画像間の差分情報を得る差分取得工程、
前記差分取得工程で得られた差分情報に基づき欠陥の有無を判定する判定工程
を有する検査方法。
【0011】
(2) 前記撮像工程では、ミラーによる反射を利用して複数方向からワークを撮像する、
前記(1)に記載の検査方法。
【0012】
(3) テーブル上で、線対称または面対称な形状を含むワークを、対称の基準となる直線または平面が前記テーブルの面に垂直になった状態で撮像位置を通過するように搬送する搬送工程をさらに有する
前記(1)または(2)に記載の検査方法。
【0013】
(4) ワークが面対称な形状を含み、
前記撮像工程によって得られた画像を加工することで、前記差分取得工程で用いられる画像を得る画像加工工程をさらに有し、
前記画像加工工程は、対称の基準となる平面に対して対向する方向から撮像された画像の一方を反転するステップを含む
前記(1)〜(3)のいずれかに記載の検査方法。
【0014】
(5) 前記差分情報において予め設定されている閾値を超える部分を注目領域として抽出する工程、
前記注目領域の有する特徴量が所定の条件を満たす場合に欠陥と判定する工程
を有する前記(1)〜(4)のいずれかに記載の検査方法。
【0015】
(6) 対称性を有する形状を含むワークを検査する装置であって、
所定の撮像位置において、前記ワークの対称性の基準となる点、直線または平面を挟んで対向する方向であって、かつ前記撮像位置に対して固定された複数の方向からワークを撮像する撮像装置、
前記撮像装置によって得られ、互いに対向する方向から撮像された複数の画像間の差分情報をとる差分取得部、
前記差分取得部で得られた差分情報に基づき欠陥の有無を判定する判定部
を備える検査装置。
【0016】
(7) 前記撮像装置は、撮像部と、反射によって複数方向からワークの像を前記撮像部に返すミラーとを有する、
前記(6)に記載の検査装置。
【0017】
(8) テーブル上で前記ワークを搬送する搬送装置をさらに備え、
前記搬送装置は、線対称または面対称な形状を含むワークを、対称の基準となる直線または平面が前記テーブルの面に垂直になった状態で撮像位置を通過するように搬送するようになっている、
前記(6)または(7)に記載の検査装置。
(9) ワークが面対称な形状を含み、
【0018】
前記撮像工程によって得られた画像を加工することで、前記差分取得工程で用いられる画像を得る画像加工部をさらに有し、
前記画像加工部は、対称の基準となる平面に対して対向する方向から撮像された画像の一方を反転するようになっている
前記(6)〜(8)のいずれかに記載の検査装置。
【0019】
(10)前記判定部は、前記差分情報において予め設定されている閾値を超える部分を注目領域として抽出し、前記注目領域の有する特徴量が所定の条件を満たす場合に欠陥と判定する
前記(6)〜(9)のいずれかに記載の検査装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、ワークの対称性を利用することで、1つのワークについて比較可能な複数の画像を得て、それらの画像間の差分情報からワークの欠陥を検出することができるので、ワークを回転させながら複数回撮影する必要がなく、検査の時間を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
I.ワーク
本明細書で説明する方法および装置によって検査されるワークは、対称性を有する外形を持つ。対称性とは、点対称、線対称、面対称のいずれであってもよい。点対称、線対称、面対称の定義は、下記のとおり一般的なものである。
【0023】
ワークが点対称であるとは、対称点Cを通る直線がワークの外形と交わる点X,Yについて、対称点Cが線分X−Yの中点である形状をいう(
図1)。
【0024】
ワークが線対称であるとは、対称軸である直線L(対称軸L)に対して垂直な直線がワークの外形と交わる点X,Yについて、直線Lが線分X−Yを垂直二等分する形状をいう(
図2)。線対称は、回転対称と言い換えられる。
【0025】
ワークが面対称であるとは、点X,Yは、対称面である平面S(対称面S)に対して垂直な直線がワークの外形と交わる点X,Yについて、平面Sが線分X−Yを垂直二等分する形状をいう(
図3)。面対称は、鏡像対称と言い換えられる。
【0026】
それぞれに該当するワーク形状の代表例を以下に示す。形状によっては、複数の対称の定義に該当することがある。
【0028】
また、線対称な形状はそれぞれ、対称軸Lを中心とした回転対称形状であるともいえる。
図4の立方体、
図5の角面取り立方体は4回対称(90°回転毎に重なる)形状であり、
図6のドラム、
図8のキノコリベットは円対称(任意の回転角で重なる)形状であり、
図10の六角形リングは6回対称(60°回転毎に重なる)形状であり、
図11および
図12の切欠き付き六角形リングは2回対称(180°回転毎に重なる)形状である。なお、nが奇数である場合、平面視が正n角形であるリングなど、面対称であって線対称でない形状もあり、これはn角形の重心を中心軸とするn回対称形状である。
【0029】
II.検査装置
以下、所定の撮像位置において、撮像位置に対して固定された複数の方向からワークを撮像する撮像装置と;撮像装置によって得られ、互いに対向する方向から撮像された複数の画像間の差分をとる差分取得部と;差分取得部で得られた差分情報が所定値を超えた場合に欠陥有りと判断する判定部と、を備える検査装置について説明する。特に以下の形態では、ワークを搬送する機構を有し、ワークを搬送しながら検査することのできる装置を例に挙げる。
【0030】
(1)搬送装置
検査装置は、後述する制御装置を備えると共に、搬送装置を備える。
【0031】
図13に示すように、搬送装置は、回転テーブル、ガイド、ワーク供給部、撮像装置、分別装置を備える。
【0032】
回転テーブルは、ワークを載せた状態でガイドに対して相対的に回転することで、ワークを撮像部、分別装置に順に搬送する。回転テーブルが透明であると、ワークの下面についても後述するように撮像することが可能となる。また、以下では、回転テーブルの面方向は水平である。つまり、回転テーブルに垂直な方向は鉛直方向である。
【0033】
ガイドは、回転テーブル上のワークを撮像部および分別装置に導く。また、必要に応じてワークの姿勢を制御する。具体的には、ガイドは、後述の撮像時に、対称性を持ったワーク画像が得られるように、ワークの姿勢を制御する。ワークの姿勢と撮像方向との関係については後述する。ガイドによるワーク姿勢の制御については、例えば、ワークにガイド部材を接触させて姿勢を規制する等、公知の技術(特開2017-88278)を適用することができる。具体的なワークの姿勢と撮像方向の組み合わせについては後述する。
【0034】
ワーク供給部は検査対象であるワークを回転テーブル上に載せる。撮像部および分別装置は、回転テーブルの回転方向に沿って配置されている。
【0035】
(2)撮像装置
撮像装置は、撮像位置において、撮像位置に対して固定された複数の方向からワークを撮像する。この複数の方向とは、ワークの対称性の基準となる点、直線または平面を挟んで対向する方向である。
【0036】
(2−1)ワークが点対称形状を有する場合
ここでは、上述の「対向する」方向から撮像するカメラの一方を第1カメラ、他方を第2カメラと呼ぶ。また、対称点Cを通る直線を基準線として図中に示す。なお、図中では基準線として1本の直線のみを例示するが、基準線は対称点Cを通ればよいので、任意に設定できる。
【0037】
基本的な撮像方向を
図14および
図15に示す。
図14は、撮像方向を鉛直方向から見た図(つまり水平方向の位置関係を示す図)であり、
図15は水平方向から見た図(つまり鉛直方向の位置関係を示す図)である。第1カメラおよび第2カメラの主軸は、ある一本の基準線上に存在する。
【0038】
図15では回転テーブルを横切るようにカメラの主軸を設定しているが、これは一例にすぎない。なお、回転テーブルを通して(例えば、下から上に向かって)ワークを撮像する場合には、回転テーブルにおける撮像位置に相当する部分は、透光性(好ましくは透明)の素材で形成される。
【0039】
また、第1カメラおよび第2カメラの主軸は、検査に必要な範囲が画像に含まれる範囲でずらすことができる。
図16,
図17では、第1カメラおよび第2カメラの主軸を基準線と平行にずらす例を示す。
【0040】
カメラは必ずしもワーク全体を捉えなくてよく、撮像範囲に関しては、検査対象ワークにおいて検査に必要な範囲が画像に含まれていれば良い。
【0041】
また、ワークの中に重点的に検査すべき部分がある場合は、そこを撮像しやすいようにワークの姿勢を制御してもよい。ここでは、第1カメラと第2カメラとを用いる例を示したが、後述するように必要な差分を取得できればよいので、2対以上のカメラを用いてもよいし、第1カメラ、第2カメラ以外にカメラを用いて、例えば、3台のカメラをセットにして撮像してもよい。
【0042】
(2−2)ワークが線対称形状を有する場合
対称軸Lを含む平面を鏡面として、第1カメラの主軸と第2カメラの主軸とが対称であればよい。
【0043】
以下、ワークの対称軸Lを回転テーブルの上下方向、つまり鉛直方向を向くように配置する場合を例に挙げて説明する。
【0044】
(i)対称軸L、第1カメラの主軸、第2カメラの主軸は、同一平面上に含まれている。また、対称軸Lと第1カメラの主軸の間の角度と、対称軸Lと第2カメラの主軸の間の角度とは、同一である。言い換えると、第1カメラの主軸と第2カメラの主軸との間の角度を対称軸Lが二等分する。
【0045】
なお、第1カメラの主軸と第2カメラの主軸の交点の、対称軸L上の位置は、必要な画像が得られる範囲で配置すればよい。
【0046】
(ii)第1カメラおよび第2カメラの主軸は、(i)の状態を基準として
図18の紙面上下方向、つまり
図19の紙面に垂直な方向に任意に平行移動することができる。
【0047】
上記(i)と(ii)はそれぞれ独立して設定することができ、さらに互いに組み合わせることができる。ここでは、第1カメラと第2カメラとを用いる例を示したが、後述するように必要な差分情報を取得できればよいので、2対以上のカメラを用いてもよいし、第1カメラ、第2カメラ以外にカメラを用いて、例えば、3台のカメラをセットにして撮像してもよい。
【0048】
なお、
図18等では、対称軸Lが回転テーブルの平面に対して鉛直方向になるようにワークの姿勢が調整されることを前提とした。しかし、本発明はこれに限定されず、カメラの主軸と対称軸Lとが上述の位置関係を満たしていれば、ワークの姿勢を任意に変更することができる。
【0049】
他の例として、例えば、
図20,21に示す例では、対称軸Lが水平方向に平行になるようにワークが配置される。この例では第1カメラが回転テーブルの上に配置され、第2カメラは回転テーブルの下に配置される。それぞれの主軸と対称軸Lとは同一平面に含まれ、2つの主軸と対称軸Lの間の角度はそれぞれ同じである。
【0050】
ワークは、対称軸Lがカメラの主軸と前述の関係を満たすように配置されればよく、対称軸Lを中心として自由に回転してよい。ただし、ワークの中に重点的に検査すべき部分がある場合は、そこを撮像しやすいように対称軸Lを中心とする回転方向でのワークの向きを制御してもよい。
【0051】
(2−3)ワークが面対称形状を有する場合
対称面Sを鏡面として、第1カメラおよび第2カメラの主軸が対称であればよい。
【0052】
以下、ワークの対称面Sが回転テーブルの平面に垂直な場合を例に挙げて説明する。
図22,23では、対称面Sは紙面に垂直である。
【0053】
第1カメラの主軸、第2カメラの主軸は、対称面Sを鏡面として対称である。つまり、
図22,23に示すように、対称面Sと第1カメラの主軸の間の角度と、対称面Sと第2カメラの主軸の間の角度は、同一である。言い換えると、第1カメラの主軸と第2カメラの主軸との間の角度を対称面Sが二等分する。
【0054】
なお、第1カメラの主軸と第2カメラの主軸の交点の、対称面S上の位置は、必要な画像が得られる範囲で配置すればよい。第1カメラの主軸および第2カメラの主軸は、対称面Sとワーク内で交わることが好ましいが、ワークの必要な箇所が撮像できるのであれば、ワークから外れた位置で交差してもよい。
【0055】
以上の例では、対称面Sが回転テーブルの平面に垂直になるようにワークの姿勢が調整されることを前提とした。しかし、本発明はこれに限定されず、カメラの主軸と対称面Sとが上述の位置関係を満たしていれば、ワークの姿勢を任意に変更することができる。
【0056】
ただし、一定のカメラ配置の下で、ワークの向き、特に、カメラの主軸に対する対称面Sの角度は一定に揃えることが好ましいが、それ以外のワークの位置は、カメラの主軸に対して常に同一でなくてもよい。
【0057】
例えば、搬送方向に対してカメラの主軸が垂直である場合、つまり対称面Sが回転テーブルの面方向と一致するようにワークの姿勢を制御する場合、回転テーブル上での搬送方向におけるワーク位置は、N個目のワークとN+1個目のワークとで、搬送方向に対して前後または左右にずれても、ワークの必要な部分(検査が必要かつ対象な部分)の画像が取得できていればよい。一般的なレンズを用いる場合には、固定されたカメラが捉える画像内におけるワークの存在位置が変わることで第1カメラと第2カメラが捉えるワーク画像のサイズが異なる可能性が生じるが、この差異は後述する画像前処理によって補正することができる。またこの理は、点対称や線対称も同様である。
【0058】
なお、2対以上のカメラを用いてもよいし、第1カメラ、第2カメラ以外にカメラを用いて、例えば、3台のカメラをセットにして撮像してもよいことは、他の形状のワークの撮像について説明したとおりである。
【0059】
(2−4)ワークが回転対称形状を有する場合
ワークがn回対称形状(nは2以上の整数)を有する場合は、対称軸を中心として、主軸が(360/n)°、または(360/n)°の自然数倍ずつずらして配置された、つまり回転対称に配置された複数のカメラを用いればよい。例えば、
図10のような6回対称形状であれば、60°ずつ主軸をずらして6個のカメラを配置してもよいし、120°ずつ主軸をずらして3個のカメラを配置してもよい。これらのカメラは互いに「ワークの対称形状の基準となる直線を挟んで対向」していると言える。
【0060】
例えば3つのカメラを用いる場合、後述の差分情報を取得するには、3つのカメラから得られる画像を2つずつ組み合わせて三種類の差分情報を得てもよいし、いずれか1つのカメラの画像とその他の全てのカメラの画像との差分処理を行ってもよい。
【0061】
カメラの主軸を対称な位置からずらしてもよいことは、線対称のワークの撮像と同様である。
【0062】
(2−4)ワークの形状に関わらない共通事項
以上の説明から明らかなように、複数のカメラの撮像方向(つまり主軸)は、ワークの形状の対称性に沿って、少なくとも2つの箇所について、正常なワークであれば後述の差分が一定値以下になるような画像を得られるように設定されていればよい。そのような画像が得られれば、カメラの主軸は「対向している」と言える。例えば、2つまたはそれ以上の主軸が、ワークの対称性の基準となる点、直線または平面に関して対称に配置されていてもよいし、これらの基準に対して対称な場合だけでなく、対称からずれる場合もあり得る。
【0063】
上述の例では、複数の「方向」における撮像をそれぞれ個別のカメラで実現している。ただし、本発明はこれに限らず、カメラにワークの像を返すミラーを利用することで、カメラの数を減らすことができる。
【0064】
以上に説明した構成によれば、カメラの数を減らした構成において、カメラ、ミラー等の光学部材を撮像位置に対して回転または移動させたり、撮像位置にあるワークを回転させたりすることなく、複数方向からのワーク撮像が可能となる。
【0065】
カメラは、その撮像角度から捉えられるワークの全体を欠けなく含むように配置されてもよいし、ワークの一部分のみを撮像できるように配置されていてもよい。
【0066】
また、カメラおよびミラー等の光学部材は、ワークの全面を撮像できるように配置されていてもよいし、一部の面のみを撮像するように配置されていてもよい。例えば、上面および側面全体を撮像し、下面(テーブルに接する面)は撮像しないようになっていてもよい。
【0067】
また、上記説明では、主に一対のカメラで撮像する場合を説明したが、撮像方向が複数対あってもよい。例えば、必要に応じて、ワークの全面(あるいは検査が必要な全箇所)を撮像できるようにカメラまたはミラーを配置してもよい。
【0068】
更には、1台のカメラでワークの複数の観察対象部分を一枚の画像に含めて撮像できるようにカメラまたはミラーを配置してもよい。この場合には1台のカメラで得られたワーク像自体の異なる部分同士を基準部分、従属部分と定義、比較すればよいが、上述の通りこれらがワークの対称性を鑑みて比較可能であることが前提となる。
【0069】
対になる2つのカメラ(差分を取る対象となる映像を撮像する複数の各カメラ)から撮像位置におけるワークまでのそれぞれの距離は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。異なる場合は、得られる画像のサイズが異なるが、画像処理によってサイズを補正してもよい。また、レンズのズーム機能によってワーク像のサイズを調整してもよい。
【0070】
(3)分別装置
分別装置は、欠陥品と判定されたワークと、正常品と判定されたワークとを分別する。分別装置によるワークの分別手段としては、ガイド(固定されているもの、分別要求によって動作するもの)誘導やエアの吹きつけ等、適宜採用することができる。また排出されたワークは飛散しないよう、袋やボックスなどで受け止めて一定量を貯留することが一般的であるし、場合によっては正常分別されたワークを本検査装置とは別の供給装置に排出し、そのまま下流工程に供給してもよい。なお、一定数の不良品が混じっても出荷できる製品の製造工程に本件発明技術を適用する場合、分別装置を設けないこともあり得る。
【0071】
(4)制御装置
制御装置は、
図24に示すように、撮像制御部、画像前処理部、差分取得部、判定部、出力制御部を備える。画像前処理部、差分取得部、判定部、出力制御部は、公知の方法を用いることができる。
【0072】
画像前処理部は、得られた画像について、画像同士の比較のために必要に応じて、画像の反転、回転、切り抜き、サイズ調整、明るさ補正、ボケ補正、およびフィルタリング等の処理を行う。
【0073】
差分取得部は、得られた比較用の画像間の差分情報を取得する。
【0074】
判定部は、こうして得られた差分情報に基づき、検査対象のワークが正常品か欠陥品かを判断する。
【0075】
出力制御部は、欠陥品と判定されたワークを、正常品とは分けるように分別装置を制御する。
【0076】
III.検査方法
図25を参照して、
図24等で説明した装置構成を用いる検査方法の一例について説明する。
【0077】
搬送開始後、ワークが撮像位置に到達すると、撮像部によりワークの画像を得る(S1、S2)。撮像制御部は、ワークが撮像位置に到達するタイミングを、ワークセンサにより認識することができる。ワークセンサとしては、公知のセンサを用いることができる。ワークセンサは、例えば、ワークが撮像位置の上流の所定位置を通過したことを検出するように配置される。撮像制御部は、ワークセンサからの出力、およびあらかじめ装置に設定されているワークの移動速度やワークの検知位置と撮像位置の距離から、ワークが撮像位置に到達するタイミングを認識し、撮像部による撮像を実行する。
【0078】
画像前処理部は、上述したように、こうして得られた画像に対して、反転、回転、切り抜き、サイズ調整等の処理を行う(S3)。
【0079】
前処理の一例として回転処理について説明する。後述の差分情報の取得において対になる画像について、それぞれに撮像されているワークの画像上の回転姿勢が異なっている場合(例えば対向するカメラ同士の設置状況においてロール角度が異なるっているとこの状況が発生する)、ずれの角度が既知であれば、その角度の分だけ画像を回転させればよい。また、標準となる画像を記憶媒体に保存しておき、それと比較することで回転角度を決めてもよいし、対になる画像を比較して差分が最も小さくなるように回転角度を決めてもよい。
【0080】
また、面対称の図面では、対向するカメラからは鏡像が得られるので、画像前処理部は対になる画像の一方の左右を反転させる。
【0081】
このような前処理を経たデータに基づいて、対になる画像同士で差分取得部が差分情報を取得する(S4)。差分情報は、上述したように、対向するカメラで得られた画像間で取得される。比較すべき画像を取得するカメラ対が複数含まれる構成や、検査対象ワークが回転対称であって、対称関係にある複数の画像が得られる場合もあらかじめ決められたルールに従って複数の差分情報を取得すれば良い。
【0082】
次に、判定部が得られた差分情報に基づいて、検査対象ワークが正常品か否かを判定する(S5、S6)。
【0083】
判定部は、差分情報において所定の閾値を超えた部分が発見されれば、直ちに当該ワークを欠陥品と判定してもよい。
【0084】
また、判定部は、まず、差分情報において所定の閾値を超えた部分を注目領域として抽出し、さらにこの注目領域のパラメータに基づいて当該ワークが正常品か否かを判定してもよい。なお、1つの差分情報から複数の注目領域が抽出される場合がある。正常品か欠陥品かの判定は、個々の注目領域の特徴量(サイズ、面積、真円度、縦横比、方向性、発生位置など)、複数の注目領域が存在する場合の注目領域同士の関係性(抽出総数、密集具合、各特徴量の平均値・標準偏差など)から判断される。判断基準に用いられるパラメータのうち、少なくとも1つが条件を満たせば欠陥品と判定してもよいし、複数のパラメータが条件を満たした場合のみ欠陥品と判定してもよい。後者としては、例えば、面積が所定値以上である注目領域が2箇所以上存在する場合などが挙げられる。求められる検査内容に応じて、一つのワークに対して複数の撮像位置に起因する複数の判定を経たり、一つの撮像位置における複数の判定を経たりして、最終的な当該ワークの検査結果とすることができる。
【0085】
判定の例を以下に示す。
図26,
図27の例では、所定値を超える面積を有する注目領域が少なくとも1箇所存在する場合に、そのワークを欠陥品と判定する。
【0086】
線対称形状を有する六角形リング(片面に切欠き)(
図11)を、第1カメラと第2カメラで撮像して得た画像を
図26にA1とA2として示す。画像A1およびA2は、必要に応じて好ましい差分情報を得るために必要な前処理がなされたものである。六角形リング(片面に切欠き)は、正常な形状として、天地面の片面に切欠きを有し、その切欠きはA1およびA2の画像における上面に表れている。ここで
図26のケースでは2つの画像は実質的に同じであるので、これらの画像間の差分情報A1−A2を取得しても、そこには所定の閾値を超える部分(つまり注目領域)が発現しない。よってこの六角形リング(片面に切欠き)は正常品であると判定される。
【0087】
同形の六角形リング(片面に切欠き)が、欠陥である1箇所の欠けXを有する場合について、
図27を参照して説明する。欠けXは六角形リング(片面に切欠き)に1か所だけ存在するが、対になる画像B1とB2には、それぞれ別の部分に欠けXが表れており、その結果、両者の差分情報B1−B2には、2箇所の注目領域Xd、Xd’が発現する。この情報に基づいて、少なくとも一方の注目領域の面積が所定の閾値を超える場合には、当該ワークを欠陥品と判定する。
【0088】
図28では、基準を変えて、所定値を超える面積を有する注目領域が2箇所以上存在する場合に、そのワークを欠陥品と判定するケースを説明する。この例では、上述の例と同形の六角形リング(片面に切欠き)が、外壁の一部に2つのシミY1、Y2を有している。画像C1では、カメラの撮像方向によりこれらのシミが撮像されていないが、画像C2にはシミY1、Y2が写っている。よって、差分情報C1−C2には注目すべき領域Y1d、Y2dが発現する。Y1d、Y2dの面積がいずれも所定値を越えない場合、あるいは片方だけが所定値を超えた場合には、当該ワークを正常品であると判定し、両方が所定値を超えた場合には欠陥品と判定する。
【0089】
上記検査を実行した後に分別装置へ判定結果が送信され、分別装置により正常品と欠陥品とが分別される(S7,S8)。あるいは分別がなされずとも検査対象ワーク群にどれだけの割合で欠陥品が存在するかを当該ワーク群全体の品質として工程を管理することもできる。