【課題】自動運転により本線から分岐車線の方向へ車線変更するに際しては、搭乗者や後続車の運転者に対して不快感や違和感を与えることなく、スムーズに車線変更させることができるようにする。
【解決手段】自動運転により本線の第1走行車線から分岐車線方向へ車線変更するに際し、分岐車線の入口長さLbが長い場合は(Lb≧Lbo)、分岐車線の車線幅Wbが閾値Wbo以上となる位置(P3)を通過した後、車線変更を行う。又、分岐車線の入口長さLbが短い場合は(Lb<Lbo)、入口長さLbの開始点P1から所定車線変更開始距離Lsに達した後、すなわち、車線幅Wbが閾値Wbo以上となる前に車線変更を開始する。その結果、違和感のない車線変更を行うことができる。
前記減速開始位置を設定する際に求める減速開始距離を前記自車両の自車速及び減速終了後の目標車速及び減速時の目標減速度に基づいて設定する減速開始距離演算部を更に有する
ことを特徴とする請求項1或いは2に記載の自動運転支援装置。
前記走行状態制御部は、前記車線変更開始位置を前記分岐車線の入口長さに基づき、該入口長さが短い場合は入口開始点を基準に設定し、該入口長さが長い場合は前記分岐車線の車線幅が一定の車線幅となる位置を基準に設定する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の自動運転支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1の符号1は自動運転を行うための自動運転支援装置であり、自車両M(
図9参照)に搭載されている。この自動運転支援装置1は、ロケータユニット11と走行環境取得部としてのカメラユニット21と自動運転制御ユニット26とを備えている。
【0012】
ロケータユニット11は、地図ロケータ演算部12と記憶部としての高精度道路地図データベース16とを有している。この地図ロケータ演算部12、後述する前方走行環境認識部21d、及び自動運転制御ユニット26は、CPU,RAM,ROM、不揮発性記憶部等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。
【0013】
この地図ロケータ演算部12の入力側に、自車位置取得部としてのGNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)受信機13、運転状態取得部としての自律走行センサ14、及びルート情報入力装置15が接続されている。GNSS受信機13は複数の測位衛星から発信される測位信号を受信する。又、自律走行センサ14は、トンネル内走行等GNSS衛生からの受信感度が低く測位信号を有効に受信することのできない環境において、自律走行を可能にするもので、車速センサ、ヨーレートセンサ、及び前後加速度センサ等で構成されている。すなわち、地図ロケータ演算部12は、車速センサで検出した車速、ヨーレートセンサで検出したヨーレート(ヨー角速度)、及び前後加速度センサで検出した前後加速度等に基づき移動距離と方位からローカライゼーションを行う。
【0014】
ルート情報入力装置15は、搭乗者(主に運転者)が操作する端末装置である。すなわち、このルート情報入力装置15は、目的地や経由地(高速道路のサービスエリア等)の設定等、地図ロケータ演算部12において走行ルートを設定する際に必要とする一連の情報を集約して入力することができる。
【0015】
このルート情報入力装置15は、具体的には、カーナビゲーションシステムの入力部(例えば、モニタのタッチパネル)、スマートフォン等の携帯端末、パーソナルコンピュータ等であり、地図ロケータ演算部12に対して、有線、或いは無線で接続されている。
【0016】
搭乗者がルート情報入力装置15を操作して、目的地や経由地の情報(施設名、住所、電話番号等)の入力を行うと、この入力情報が地図ロケータ演算部12で読込まれる。
【0017】
地図ロケータ演算部12は、目的地や経由地が入力された場合、その位置座標(緯度、経度)を設定する。地図ロケータ演算部12は、自車位置を推定する自車位置推定部としての自車位置推定演算部12a、自車位置から目的地(及び経由地)までの走行ルートを設定する走行ルート設定演算部12bを備えている。
【0018】
又、高精度道路地図データベース16はHDD等の大容量記憶媒体であり、高精度な周知の道路地図情報(ローカルダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、基盤とする最下層の静的情報階層上に、自動走行をサポートするために必要な付加的地図情報が重畳された階層構造をなしている。付加的地図情報としては、道路の種別(一般道路、高速道路等)、道路形状、左右区画線、高速道路やバイパス道路等の出口、ジャンクションやサービスエリアに繋がる分岐車線の入口長さ(開始位置と終了位置)等の静的な位置情報、及び、渋滞情報や事故或いは工事による通行規制等の動的な位置情報が含まれている。
【0019】
自車位置推定演算部12aは、GNSS受信機13で受信した測位信号に基づき自車両Mの現在の位置座標(緯度、経度)を取得し、この位置座標を地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置(現在位置)を推定する。又、自車走行車線を特定し、地図情報に記憶されている当該走行車線の道路形状を取得し、逐次記憶させる。更に、自車位置推定演算部12aは、トンネル内走行等のようにGNSS受信機13の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境では、自律航法に切換え、自律走行センサ14によりローカライゼーションを行う。
【0020】
走行ルート設定演算部12bは、自車位置推定演算部12aで推定した自車位置の位置情報(緯度、経度)と、入力された目的地(及び経由地)の位置情報(緯度、経度)とに基づき、高精度道路地図データベース16に格納されているローカルダイナミックマップを参照する。そして、走行ルート設定演算部12bは、ローカルダイナミックマップ上で、自車位置と目的地(経由地が設定されている場合は、経由地を経由した目的地)とを結ぶ走行ルートを、予め設定されているルート条件(推奨ルート、最速ルート等)に従って構築する。
【0021】
一方、カメラユニット21は、自車両Mの車室内前部の上部中央に固定されており、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されているメインカメラ21a及びサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU)21c、及び前方走行環境認識部21dとを有している。このカメラユニット21は、メインカメラ21aで基準画像データを撮像し、サブカメラ21bで比較画像データを撮像する。
【0022】
そして、この両画像データをIPU21cにて所定に画像処理する。前方走行環境認識部21dは、IPU21cで画像処理された基準画像データと比較画像データとを読込み、その視差に基づいて両画像中の同一対象物を認識すると共に、その距離データ(自車両Mから対象物までの距離)を、三角測量の原理を利用して算出して、前方走行環境情報を認識する。
【0023】
この前方走行環境情報には、自車両Mが走行する車線(走行車線)の道路形状(左右を区画する区画線、区画線間中央の道路曲率[1/m]、及び左右区画線間の幅(車線幅))、高速道路やバイパス道路等の出口、ジャンクションに繋がる分岐車線側の区画線間の車線幅、交差点、横断歩道、信号機、道路標識、及び路側障害物(電柱、電信柱、駐車車両等)が含まれている。
【0024】
又、自動運転制御ユニット26は、入力側にカメラユニット21の前方走行環境認識部21dが接続されていると共に、地図ロケータ演算部12と車内通信回線(例えばCAN:Controller Area Network)を通じて双方向通信自在に接続されている。更に、この自動運転制御ユニット26の出力側に、自車両Mを走行ルートに沿って走行させる操舵制御部31、強制ブレーキにより自車両Mを減速させるブレーキ制御部32、自車両Mの車速を制御する加減速制御部33、及びモニタ、スピーカ等の報知装置34が接続されている。
【0025】
自動運転制御ユニット26は、走行ルート設定演算部12bで設定した走行ルートに、自動運転制御が許可された自動運転区間が設定されている場合、当該自動運転区間に自動運転を行うための目標進行路を設定する。そして、自動運転区間においては、操舵制御部31、ブレーキ制御部32、加減速制御部33を所定に制御して、GNSS受信機13で受信した自車位置を示す測位信号に基づき、自車両Mを目標進行路に沿って自動走行させる。
【0026】
その際、前方走行環境認識部21dで認識した前方走行環境に基づき、周知の追従車間距離制御(ACC制御)、及び車線維持(ALK)制御により、先行車が検出された場合は先行車に追従し、先行車が検出されない場合は制限速度内のセット車速で自車両Mを走行させる。
【0027】
ところで、目標進行路が、本線から分岐する分岐車線側に設定されており、本線から分岐車線方向へ車線変更する場合、先ず、車線変更するタイミング、車線変更する際の目標車速に到達させるために減速を開始するタイミング(減速開始距離)を設定する。この場合、これらのタイミングは、本線に繋がる分岐車線の入口長さLbによって相違する。
【0028】
図9には、本線が片側二車線(第1走行車線、第2走行車線)であって、第1走行車線に分岐車線が接続されている状態が示されている。同図(a)に示すように、入口長さ(入口開始点P1から入口終了点P2までの距離)Lbが比較的長い場合、分岐車線の車線幅Wbが一定となる位置Wboを通過した後に車線変更を開始しても、分岐車線方向へ安定した姿勢で進入させることができる。
【0029】
これに対し、同図(b)に示すように、入口長さLbが比較的短い場合、自車両Mを分岐車線方向へ急ハンドルを切ることなく安定した姿勢で進入させるには車線幅Wbが一定となる手前から車線変更を開始する必要がある。
【0030】
そのため、自動運転制御ユニット26は、自動運転区間における分岐車線方向への車線変更に際し、分岐車線の入口長さLbに応じた車線変更タイミング、及び減速開始タイミングを設定し、自車両Mを安定した姿勢で分岐車線方向へ進入させるようにしている。
【0031】
上述した自動運転制御ユニット26で実行する分岐車線方向への車線変更に伴う自動運転支援制御は、具体的には、
図2〜
図5に示すフローチャートに従って処理される。
【0032】
システムが起動されると、先ず、
図2に示す自動運転制御ルーチンが起動し、そのステップS1で、地図ロケータ演算部12の走行ルート設定演算部12bで設定した走行ルートを読込む。次いで、ステップS2へ進み、この走行ルート上に、自動運転制御により自車両Mを進行させるための目標進行路を設定して、ルーチンを抜ける。尚、走行ルート設定演算部12bで設定する走行ルートは、道路状況に応じて時々刻々と変化するため、この自動運転制御ユニットは所定演算周期毎に繰り返し実行される。
【0033】
ステップS2で設定する目標進行路は自車両Mの前方数百メートル〜数キロ毎先まで設定するものであり、自車両Mを、走行ルートに沿って運転者の操作に寄らず自動的に走行させるために必要な制御条件を設定する。この制御条件としては、走行車線(2車線であれば、第1走行車線、第2走行車線)の何れを走行させるか、走行車線を変更する場合の車線変更させるための目標ルート、分岐車線(ジャンクション、高速道路やバイパス道路の出口等)へ進入させる際の目標ルート等がある。
【0034】
尚、走行ルートが自動運転区間以外の場合は、自動運転制御ルーチン自体が起動せず、運転者は、カーナビゲーションシステムのモニタに表示された走行ルートに沿って手動運転する。その際、直進路については、周知のACC制御とALK制御による運転支援制御が実行される。
【0035】
上述したステップS2で設定した目標進行路は、
図3に示す減速開始距離演算ルーチンで読込まれる。尚、このルーチンでの処理が、本発明の減速開始距離演算部に対応している。
【0036】
このルーチンでは、先ず、ステップS11で、目標進行路を読込み、ステップS12へ進み、この目標進行路が分岐車線方向へ設定されているか否かを調べる。そして、分岐車線へ設定されている場合は、ステップS13へ進む。又、目標進行路が直進方向の場合はルーチンを抜ける。尚、このステップS12での処理が、本発明の分岐車線判定部に対応している。
【0037】
ステップS13へ進むと、目標進行路として設定されている分岐車線の入口長さLbを読込む。この入口長さLbは、
図9に示すように、入口開始点P1から入口終了点P2までの距離であり、高精度道路地図データベース16に格納されているローカルダイナミックマップの静的情報から読込む。又、分岐車線の入口長さLbは、カメラユニット21の車載カメラ(21a,21b)で撮像した画像で認識できる場合は、前方走行環境認識部21dで取得した前方走行環境情報から取得する。
【0038】
そして、ステップS14で、入口長さLbに基づいて、記憶部に予め固定データとして記憶されているテーブルデータを参照して、分岐車線方向への車線変更時の目標車速Vtを設定する。
図6に目標車速テーブルの概念を例示する。目標車速テーブルは、本線の制限速度(60[Km/h],80[Km/h],100[Km/h]等)毎に設定されており、図においては、本線の制限速度(最高速度)が80[Km/h]の場合が例示されている。
【0039】
この場合、目標車速Vtは60〜80[Km/h]の間で、入口長さLbが100[m]未満の場合は60[Km/h]、1000[m]以上では80[Km/h]に固定され、60〜1000[m]の間では、入口長さLbが長くなるに従い目標車速Vtが比例的に高くなるように設定される。
【0040】
すなわち、分岐車線の入口長さLbが長い場合、緩やかな車線変更で分岐車線に進入することができるため、目標車速Vtを必要以上に低く設定する必要はない。一方、分岐車線の入口長さLbが短い場合、ある程度急な操舵で車線変更する必要があるため、目標車速Vtを低く設定する必要がある。
【0041】
次いで、ステップS15へ進み、入口長さLbと予め設定されている入口長さ判定閾値Lboとを比較する。この入口長さ判定閾値Lboは、分岐車線への車線変更を行う際の減速度を設定するもので、Lb≧Lboの場合、ステップS16へ進み、目標減速度Decを緩減速度Pg1で設定し(Dec←Pg1)、ステップS18へ進む。又、Lb<Lboの場合、ステップS17へ分岐し、目標減速度Decを急減速度Pg2で設定して(Dec←Pg2)で設定して、ステップS18へ進む。但し、Dec<0である。
【0042】
図7に示すように、目標減速度Decを、入口長さLbと入口長さ判定閾値Lboとを比較して、緩減速度Pg1と急減速度Pg2との2値で設定しているが、同図に破線で示すように、目標減速度Decを、
図6に示す目標車速Vtに対応させて、100〜1000[m]の間で、入口長さLbが短くなるに従い高い減速度となるように設定しても良い。
【0043】
ステップS18へ進むと、自律走行センサ14を構成する車速センサで検出した自車速V[Km/h]を読込み、ステップS19へ進んで、減速開始距離Ldecを、次の(1)式に基づいて算出して、ルーチンを抜ける。
Ldec←(Vt
2−V
2)/Dec …(1)
この(1)式は、設定した目標減速度Decで減速を開始した場合に、現在の車速Vから目標車速Vtに達するまでの走行距離を算出するものである。この減速開始距離Ldecは、差分(Vt
2−V
2)が同じ場合、目標減速度Decに依存する。そのため、この目標減速度Decが急減速度Pg2に設定された場合は、緩減速度Pg1で設定された場合に比し、目標車速Vtに到達する走行距離は短くなる。
【0044】
この減速開始距離Ldecは、
図4に示す減速制御処理ルーチンで読込まれる。
尚、この減速制御処理ルーチンでの処理、及び、後述する車線変更開始制御ルーチンでの処理が、本発明の車線変更演算部に対応している。
このルーチンでは、先ず、ステップS21で分岐車線の入口長さLbと予め設定した入口長さ判定閾値Lboとを比較する。この入口長さ判定閾値Lboは減速開始距離Lbの起点を設定するもので、Lb≧Lbo、すなわち、入口長さLbが比較的長い場合は、ステップS22へ進む。又、Lb<Lbo、すなわち、入口長さLbが比較的短い場合は、ステップS23へ分岐する。
【0045】
ステップS22では、減速開始距離Ldecと、分岐車線の入口終了点P2を起点に求めた自車両Mの現在位置までの距離Lp2(
図9(a)参照)とを比較し、減速可能か否かを調べる。
【0046】
そして、Ldec≦Lp2の場合、減速可能と判定し、ステップS24へ進む。又、Ldec>Lp2の場合、減速不可と判定し、ルーチンを終了する。
【0047】
一方、ステップS23へ進むと、減速開始距離Ldecと、分岐車線の入口開始点P1(
図9(b)参照)を起点として求めた自車両Mの現在地までの距離Lp1とを比較して、減速可能か否かを調べる。
【0048】
そして、Ldec≦Lp1の場合、減速可能と判定し、ステップS24へ進む。又、Ldec>Lp1の場合、減速不可と判定し、ルーチンを終了する。
【0049】
尚、ステップS22でLdec>Lp2と判定され、或いは、ステップS23でLdec>Lp1と判定された場合に、運転者がハンドル操作を行えば、操舵オーバライドとなり、自動運転制御ユニット26は自動運転制御が解除するため、手動による操舵で自車両Mを分岐車線方向へ車線変更させることができる。
【0050】
一方、Lp2<0、或いはLp1<0と判定された後も、運転者が自動運転を継続させている場合、自動運転制御ユニット26は自車両Mを走行車線に沿って直進させ、その間、地図ロケータ演算部12が新たな走行ルートを構築する。
【0051】
ステップS22、或いはステップS23からステップS24へ進むと、分岐車線方向へ車線変更を行う前に、自車両Mの車速Vを目標車速Vtに減速させたるための
減速制御処理を実行する。
【0052】
減速開始位置は、Lb≧Lboの場合は(
図9(a)参照)、少なくとも分岐車線の車線幅Wbが閾値Wbo以上となる位置P3を通過した任意の、分岐車線に沿った位置で減速制御が終了するように設定する。尚、この閾値Wboは、自車両Mが走行可能であれば、任意に設定することができる。例えば、図においては、分岐車線の車線幅Wbが一定となる位置P3を閾値Wboとしているが、自車両Mの車幅を閾値Wboとしても良い。或いは予め設定したパラメータであっても良い。
【0053】
従って、
図9(a)においては、減速開始距離Ldecの終了点を位置P3、或いはそこをやや過ぎた位置に設定し、そこから逆算して減速開始位置を求める。
【0054】
又、Lb<Lboの場合は(
図9(b)参照)、分岐車線の入口開始点P1を減速開始距離Ldecの終了点として設定し、そこから逆算して減速開始位置を求める。
【0055】
そして、自車両Mが減速開始位置に到達した後、上述した
図3に示すルーチンのステップS16、或いはステップS17で設定した目標減速度Decに従い、自車両Mを減速させる。尚、その際、車線変更する旨を後続車や周辺の車両に伝えるため、車線変更側のウインカを点滅させる。又、ブレーキ制御部32がブレーキを作動させた場合は、ブレーキランプが点灯する。
【0056】
そして、ステップS25へ進み、現在の車速Vが目標車速Vtまで減速していない場合は(V>Vt)、ステップS24の処理を繰り返し実行する。そして、V≧Vtとなったとき、当該減速制御処理ルーチンを終了する。
【0057】
図8には、分岐車線の入口長さLbが比較的短く(Lb<Lbo)、従って、車線変更の際の目標車速Vtが60[Km/h]、減速開始距離Ldecの起点が入口開始点P1に設定されている場合のタイムチャートが例示されている。
【0058】
同図に破線で示すように、減速開始タイミングを、入口開始点P1を起点とする減速開始距離Ldecよりも手前の時間t1からエンジンブレーキのような緩やかな減速を開始し、時間t3で目標車速Vtまで減速する制御を行えば、安定した減速制御を行うことができる。しかし、減速開始タイミングが早すぎるため、搭乗者に違和感と苛立ちを覚えさせてしまう。
【0059】
このことは、後続車がある場合も同様で、当該後続車の運転者は先行車が何のために減速を行っているのか解らず、不要な減速と判断される可能性があり、後続車の運転者に対しても苛立ちを覚えさせてしまうことになる。
【0060】
これに対し、本実施形態のように、分岐車線の入口長さLbが比較的短い場合は(Lb<Lbo)、目標減速度Decが急減速度Pg2によって設定されるため(Dec←Pg2)、減速開始距離Ldecが短くなる。従って、時間t3に近い、時間t2から減速が開始されることとなり、搭乗者や後続車の運転者に対して、不快感や違和感、苛立ちを覚えさせることがない。
【0061】
そして、減速制御処理ルーチンによる減速制御処理にて減速制御が開始された後、
図5に示す車線変更開始制御ルーチンが起動する。
【0062】
このルーチンでは、先ず、ステップS31で、分岐車線の入口長さLbと入口長さ判定閾値Lboとを比較する。そして、Lb≧Lboの、入口長さLbが長いと判定した場合は、ステップS32へ進む。又、Lb<Lboの、入口長さLbが短いと判定した場合は、ステップS33へ分岐する。
【0063】
ステップS32へ進むと、自車両Mが分岐車線の入口開始点P1(
図9(a)参照)を通過したか否かを、地図ロケータ演算部12の自車位置推定演算部12aで推定した自車位置と高精度道路地図データベース16に格納されているローカルダイナミックマップの静的情報に格納されている分岐車線の入口情報とに基づいて調べる。或いは、カメラユニット21の前方走行環境認識部21dで認識した、分岐車線の左右を区画する区画線情報と自車横位置とに基づいて調べるようにしても良い。
【0064】
そして、自車両Mが入口開始点P1を未だ通過していない場合、ステップS32の処理を繰り返し実行する。又、自車両Mが入口開始点P1を通過したと判定した場合はステップS34へ進む。尚、前述した減速制御処理ルーチンでは、この入口開始点よりも先の車幅一定となる位置P3、或いはその先で減速制御が終了するように設定しているが、実際に目標車速Vtに達する位置には誤差があるため、入口開始点P1の通過を検出する必要がある。
【0065】
そして、ステップS34へ進むと、自車両Mの横位置の分岐車線入口の車線幅(左右区画線間の車線幅)Wbを検出する。この車線幅Wbは、自車位置推定演算部12aで推定した自車位置とローカルダイナミックマップの静的情報に格納されている分岐車線の入口情報とに基づいて調べる。或いは、前方走行環境認識部21dで認識した、分岐車線の左右を区画する区画線情報に基づいて調べるようにしても良い。
【0066】
次いで、ステップS35へ進み、分岐車線の車線幅Wbを閾値Wboと比較する。この閾値Wboは、自車両Mが通過可能な車線幅あれば、任意に設定することができる。従って、
図9に示すように、分岐車線の車線幅Wbが一定となる位置P3を閾値Wboとしても良く、自車両Mの車幅を閾値Wboとしても良い。或いは、予め設定したパラメタ(固定値)であっても良い。
【0067】
そして、Wb<Wboの未だ、車線幅Wbが閾値Wboに達していない場合は、ステップS34へ戻り、ステップS34,S35の処理を繰り返し実行する。又、Wb≧Wboの、車線幅Wbが閾値Wbo(
図9(a)のP3)に達した場合は、車線変更開始位置であると判定し、ステップS38へ進む。
【0068】
一方、ステップS31からステップS33へ進むと、車線変更開始位置の補正距離Lsを、
Ls←V・Ty
から算出する。ここで、Vは現在の自車速、tyは余裕時間であり、この余裕時間Tyは、1〜3[sec]等、任意に設定することができる。
【0069】
その後、ステップS36へ進み、走行車線(
図9においては第1走行車線)から分岐車線に進入する(走行車線からから出る)ために必要な車線変更距離Llcを、
Llc←V・W1/Xv1+V・Tw
から算出する。ここで、W1は走行車線(
図9では第1走行車線)の車線幅、Xv1は車線変更制御における横方向速度の最大値Xv1(パラメータ)、Twは車線変更の前に点滅させるウインカの点灯時間である。
【0070】
次いで、ステップS37へ進み、入口開始点P1までの距離Lp1に車線変更開始位置の補正距離Lsを加算した値と車線変更に必要な距離(車線変更距離)Llcとを比較する。そして、Llc<Lp1+Lsの場合はステップS37を繰り返し実行し、Llc≧Lp1+Lsとなった場合(
図9(b)のP5)、車線変更開始位置であると判定し、ステップS38へ進む。
【0071】
ステップS35、或いはステップS37からステップS38へ進むと車線変更開始指令を出力して、ルーチンを終了する。
【0072】
自動運転制御ユニット26は、車線変更開始指令を受信すると、車線変更制御を実行する。この車線変更制御では、先ず、分岐車線側のウインカを所定時間Tw(例えば3[sec])点滅させ、周辺の車両に車線変更を報知した後、操舵制御部31に対して操舵信号を送信し、自車両Mを分岐車線側へ車線変更させる。そして、自車両Mが分岐車線に沿って走行するように操舵角が戻されたことで、車線変更制御を終了する。
【0073】
その結果、
図9(b)に示すように、分岐車線の入口長さLbが比較的短い場合は、入口開始点P1に補正距離Lsを加算した位置、すなわち、分岐車線の車線幅Wbが閾値Wboに達する前に車線変更が開始されるため、運転者の感覚に沿った違和感のない車線変更を行うことができる。従って、自動運転制御ユニット26は、本発明の走行状態制御部としての機能を備えている。
【0074】
このように、本実施形態では、
図9(a)に示すように、分岐車線の入口長さLbが長い場合の、分岐車線への車線変更に際しては、先ず、緩減速度Pg1で減速して、車速Vを目標車速Vtまで減速させる。次いで、分岐車線の車線幅Wbが閾値Wbo以上となる位置を通過した後に、車線変更を開始するようにしたので、無理のないスムーズな車線変更を行うことができる。
【0075】
又、
図9(b)に示すように、分岐車線の入口長さLbが比較的短い場合は、先ず、急減速度Pg2によって、入口開始点P1で目標車速Vtになるように減速させる。従って、減速開始位置が入口開始点P1寄りとなるため、自車両Mの搭乗者や後続車の運転者に対して不快感や違和感を与えることがない。その結果、分岐車線の入口長さLbに応じて、違和感なくスムーズに車線変更させることができる。
【0076】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、先行車が自車両Mと同じ分岐車線方向へ車線変更しようとしている場合、自車両Mは先行車の走行軌跡を目標進行路として設定して車線変更するようにしても良い。