特開2020-167324(P2020-167324A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2020167324-インダクタ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-167324(P2020-167324A)
(43)【公開日】2020年10月8日
(54)【発明の名称】インダクタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/24 20060101AFI20200911BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20200911BHJP
   H01F 27/22 20060101ALI20200911BHJP
【FI】
   H01F27/24 P
   H01F37/00 M
   H01F27/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-68319(P2019-68319)
(22)【出願日】2019年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】納富 隼人
【テーマコード(参考)】
5E050
【Fターム(参考)】
5E050JA03
(57)【要約】
【課題】大型化を抑制可能な複数のコアを有するインダクタを提供する。
【解決手段】インダクタ1は、巻線11が設けられ、間隔を空けて並べられた複数の第1コア10と、前記巻線の軸方向にて前記第1コア10の隣に配置された第2コア20と、伝熱性を有し、前記第2コア20を保持する保持部材21とを備え、前記巻線の軸方向に直角な面を切断面とした前記第1コア10の断面積は、前記巻線の軸方向に平行な面を切断面とした前記第2コア20の断面積よりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線が設けられ、間隔を空けて並べられた複数の第1コアと、
前記巻線の軸方向にて前記第1コアの隣に配置された第2コアと、
伝熱性を有し、前記第2コアを保持する保持部材と
を備え、
前記巻線の軸方向に直角な面を切断面とした前記第1コアの断面積は、前記巻線の軸方向に平行な面を切断面とした前記第2コアの断面積よりも大きい
インダクタ。
【請求項2】
巻線が設けられ、前記巻線の軸方向に直角な方向に間隔を空けて並べられた複数の第1コアと、
前記巻線の軸方向に直角な方向にて前記第1コアの隣に対向配置された第2コアと、
伝熱性を有し、前記第2コアを保持する保持部材と
を備え、
前記巻線に電流を流した場合に生じる磁束の方向に直角な面を切断面とした前記第1コアの断面積は前記第2コアの断面積よりも大きい
インダクタ。
【請求項3】
前記第1コアと前記第2コアとの間の距離は、前記複数の第1コアの間の距離よりも小さい
請求項1又は2に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記第2コアと前記保持部材との間に伝熱性を有する接合部材が設けられている
請求項1から3のいずれか一つに記載のインダクタ。
【請求項5】
前記複数の第1コアは前記巻線の軸方向に直交する方向に並べられており、
前記第2コアは、前記軸方向における前記第1コアの端部に対向する
請求項1から4のいずれか一つに記載のインダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、巻線型のインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、それぞれにコイルが巻かれる2つのコイル配置部(以下、第1コアと称する)と、第1コアを挟むように配置される2つの露出部(以下、第2コアと称する)とを備え、環状に磁束が通過するように第1コア及び第2コアを配置したリアクトル、即ちインダクタが提案されている。漏れ磁束を低減させたい場合は第1コアと第2コアとの間のギャップを無くし、鉄損を低減させたい場合はギャップを設ける。このように、使用目的に応じて、ギャップの有無等を設計している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−33055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻線に流れる電流が大きくなるほど鉄損及び銅損は大きくなる。例えば、CVDやエッチング等のプラズマ処理では、大電力を必要とするので、プラズマ処理に電力を供給する経路上に配置されたインダクタには大電流が流れることがあり、その場合には、コアで生じる鉄損も大きくなる。そのため、鉄損を低減させる目的で、コアのギャップを大きくしたり、コアの断面積を増加させる対策が必要である。
【0005】
しかし、ギャップを設けることによりコアの実効的な透磁率が低下するため、インダクタンス値を確保するためにコイルの巻数を増やす必要がある。そうなると、銅損が増加して発熱量が大きくなるので、巻線の冷却を行う機構も必要となる。巻線部の冷却は、インダクタ内部側の冷却となるため、行い難く、且つ、複雑な構造が必要となる。その結果、インダクタが大型化するという問題がある。
【0006】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、大型化を抑制可能なインダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るインダクタは、巻線が設けられ、間隔を空けて並べられた複数の第1コアと、前記巻線の軸方向にて前記第1コアの隣に配置された第2コアと、伝熱性を有し、前記第2コアを保持する保持部材とを備え、前記巻線の軸方向に直角な面を切断面とした前記第1コアの断面積は、前記巻線の軸方向に平行な面を切断面とした前記第2コアの断面積よりも大きい。
【0008】
本開示においては、巻線の軸方向に直角な面を切断面とした第1コアの断面積は、巻線の軸方向に平行な面を切断面とした第2コアの断面積よりも大きい。第2コアには巻線がないので、冷却構造を設け易い。故に第2コアの断面積を小さくすることができ、第2コアの寸法が大きくなることを抑制することができる。一方、第1コアは巻き線が存在するため、冷却構造を設け難く、また銅損が存在するため、鉄損そのものを抑制する必要がある。そのため、第1コアの寸法の断面積を、少なくとも第2コアの断面積よりも大きくすることによって、第1コアの鉄損を抑制することができる。
【0009】
本開示に係るインダクタは、巻線が設けられ、前記巻線の軸方向に直角な方向に間隔を空けて並べられた複数の第1コアと、前記巻線の軸方向に直角な方向にて前記第1コアの隣に対向配置された第2コアと、伝熱性を有し、前記第2コアを保持する保持部材とを備え、前記巻線に電流を流した場合に生じる磁束の方向に直角な面を切断面とした前記第1コアの断面積は前記第2コアの断面積よりも大きい。
【0010】
本開示においては、磁束が通過する第1コアの断面積は第2コアの断面積よりも大きい。第2コアには巻線がないので、冷却構造、即ち保持部材を設けることができる。故に第2コアの断面積を小さくすることによって、第2コアの寸法が大きくなることを抑制することができる。一方、第1コアは巻き線が存在するため、冷却構造を設け難く、また銅損が存在するため、鉄損そのものを抑制する必要がある。そのため、第1コアの寸法の断面積を、少なくとも第2コアの断面積よりも大きくすることによって、第1コアの鉄損を抑制することができる。また第2コアに発生した熱は保持部材に伝達される。即ちパワーインダクタで発生する大部分の鉄損による熱は第2コアから排出される。
【0011】
本開示に係るインダクタは、前記第1コアと前記第2コアとの間の距離は、前記複数の第1コアの間の距離よりも小さい。
【0012】
本開示においては、上述のように第1コアの鉄損を抑制して、第1コアの温度上昇を抑制し、また冷却構造によって第2コアの温度上昇を抑制することができるので、第1コアと第2コアとの間の距離を、複数の第1コアの間の距離よりも小さくすることができる。その結果、第1コアの巻線を少ない巻き数で製作することができ、インダクタの小型化を促進させることができる。
【0013】
本開示に係るインダクタは、前記第2コアと前記保持部材との間に伝熱性を有する接合部材が設けられている。
【0014】
本開示においては、伝熱性を有する接合部材によって、第2コアと伝熱部材とが接合される。そのため、第2コアにて発生した熱は接合部材を介して保持部材に円滑に伝達される。
【0015】
本開示に係るインダクタは、前記複数の第1コアは前記巻線の軸方向に直交する方向に並べられており、前記第2コアは、前記軸方向における前記第1コアの端部に対向する。
【0016】
本開示においては、第2コアは磁束の通り易い位置に配され、インダクタの鉄損を集中させ易い。また第2コアは冷却構造を設け易い位置に配されている。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係るインダクタにあっては、第2コアには巻線がないので、冷却構造を設け易い。故に第2コアの断面積を小さくして、鉄損が大きくなっても、熱処理を円滑に行うことができる。そのため、第2コアの断面積を小さくすることができ、第2コアの寸法が大きくなることを抑制することができる。一方、第1コアは巻き線が存在するため、冷却構造を設け難く、また銅損が存在するため、鉄損そのものを抑制する必要がある。そのため、第1コアの寸法の断面積を、少なくとも第2コアの断面積よりも大きくすることによって、第1コアの鉄損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係るインダクタの略示平面図である。
図2図1に示すII−II線を切断線とした略示断面図である。
図3】第1コア、第2コア及び放熱板の位置関係を示す模式的斜視図である。
図4】巻線に電流を流した場合に生じる磁束の方向を示す第1コア及び第2コアの模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を、インダクタ1を示す図面に基づいて説明する。図1は、インダクタ1の略示平面図、図2は、図1に示すII−II線を切断線とした略示断面図、図3は、第1コア10、第2コア20及び放熱板2の位置関係を示す模式的斜視図である。図1図3に示すように、インダクタ1は放熱板2を備える。放熱板2は高熱伝達率の部材、例えば銅部材又はアルミニウム部材などによって構成されている。
【0020】
放熱板2には二つの第1コア10、10が設けられている。第1コア10は直方体状をなし、二つの第1コア10、10は、第1コア10の軸方向に直交する方向に、間隔を空けて並んでいる。第1コア10の周囲に巻線11が設けられている。巻線11は第1コア10の軸方向に沿って螺旋状に巻かれており、巻線11の軸心と第1コア10の軸心とは略一致する。一本の巻線11が二つの第1コア10、10の両方に連続的に巻かれている。巻線11は放熱板2に接触しており、巻線11にて発生した熱は放熱板2に伝達される。なお第1コア10と放熱板2との間にスペーサを設けて、巻線11を放熱板2から離してもよい。また、巻線11又は放熱板2の少なくとも一方に絶縁処理がされている。例えば、巻線11に絶縁被覆を施してもよいし、放熱板2に絶縁シールを貼り付けてもよく、放熱板2に絶縁被膜を施してもよい。
【0021】
インダクタ1は二つの第2コア20、20を備える。第2コア20は、第1コア10の軸方向に直交する方向に延びた板状をなす。一方の第2コア20は、二つの第1コア10の一端部に対向する。他方の第2コア20は、二つの第1コア10、10の他端部に対向する。第2コア20と第1コア10との対向間距離は二つの第1コア10、10の間の距離よりも短い。例えば、第2コア20と第1コア10との対向間距離は5mmであり、二つの第1コア10、10の間の距離は20mmである。
【0022】
第2コア20は保持部材21によって保持されている。保持部材21は伝熱部材、例えば銅部材又はアルミニウム部材によって、構成されている。保持部材21には、第2コア20の長手方向に延びた凹部22が形成されており、該凹部22に第2コア20が嵌合している。第2コア20は、伝熱性を有する接着剤23によって、凹部22の内面に接合されている。なお接着剤23は接合部材の一例であり、接着剤23に代えて、伝熱性を有する両面テープを使用してもよい。保持部材21に保持された第2コア20はスペーサ4を介して第1コア10の端部に対向する。該スペーサ4によって、第1コア10と第2コア20との対向間距離は保たれる。保持部材21の両端部には二つの側板24がそれぞれ設けられている。一方の側板24は二つの保持部材21、21の一端部に対向し、他方の側板24は二つの保持部材21の他端部に対向する。
【0023】
放熱板2に垂直な方向において、第2コア20の寸法h2は第1コア10の寸法h1よりも短い。第1コア10の軸方向における第2コア20の寸法w2は、第1コア10の軸方向に直角且つ放熱板2に平行な方向における第1コア10の寸法w1よりも短い。
【0024】
図4は、巻線11に電流を流した場合に生じる磁束の方向を示す第1コア10及び第2コア20の模式的平面図である。図4において、破線矢印は磁束の向きを示す。図4に示すように、巻線11に電流を流した場合、磁束が発生し、発生した磁束の向きは、第1コア10において軸方向に沿った向きとなり、第2コア20において、第2コア20の長手方向に沿った向きとなる。
【0025】
磁束の方向に直角な面を切断面として切断した第1コア10の断面積(換言すれば巻線11の軸方向に直角な面を切断面として切断した第1コア10の断面積)は、前述した寸法h1と寸法w1の積である。磁束の方向に直角な面を切断面として切断した第2コア20の断面積(換言すれば巻線11の軸方向に平行な面を切断面として切断した第2コア20の断面積)は、前述した寸法h2と寸法w2の積である。前述したように、第2コア20の寸法h2は第1コア10の寸法h1よりも短く、第2コア20の寸法w2は第1コア10の寸法w1よりも短い。即ち、前記第1コア10の断面積は前記第2コア20の断面積よりも大きい。そのため、第1コア10よりも第2コア20に鉄損が集中し易くなる。出願人が行ったシミュレーション結果によると、第1コア10の鉄損の割合が約30%であるのに対し、第2コア20の鉄損の割合は約70%であった。
【0026】
実施の形態に係るインダクタ1にあっては、第2コア20には巻線がないので、冷却構造を設け易い。故に第2コア20の断面積を小さくして、鉄損が大きくなっても、熱処理を円滑に行うことができる。そのため、第2コア20の断面積を小さくすることができ、第2コア20の寸法が大きくなることを抑制することができる。一方、第1コア10は巻線11が存在するため、冷却構造を設け難く、また銅損が存在するため、鉄損そのものを抑制する必要がある。そのため、第1コア10の寸法の断面積を、少なくとも第2コア20の断面積よりも大きくすることによって、第1コア10の鉄損を抑制することができる。
【0027】
また磁束が通過する第1コア10の断面積は第2コア20の断面積よりも大きい。第2コア20には巻線がないので、冷却構造、即ち保持部材21を設けることができる。故に第2コア20の断面積を小さくすることによって、第2コア20の寸法が大きくなることを抑制することができる。一方、第1コア10には巻線11が存在するため、冷却構造を設け難く、また銅損が存在するため、鉄損そのものを抑制する必要がある。そのため、第1コア10の寸法の断面積を、少なくとも第2コア20の断面積よりも大きくすることによって、第1コア10の鉄損を抑制することができる。また第2コア20に発生した熱は保持部材21に伝達される。即ちパワーインダクタで発生する大部分の鉄損による熱は第2コア20から排出される。
【0028】
また上述のように第1コア10の鉄損を抑制して、第1コア10の温度上昇を抑制し、また保持部材21によって第2コア20の温度上昇を抑制することができるので、第1コア10と第2コア20との間の距離を、複数の第1コア10の間の距離よりも小さくすることができる。その結果、第1コア10の巻線11を少ない巻数で製作することができ、インダクタの小型化を促進させることができる。
【0029】
また伝熱性を有する接着剤23によって、第2コア20と伝熱部材とが接合される。そのため、第2コア20にて発生した熱は接合部材を介して保持部材21に円滑に伝達される。また第2コア20は磁束の通り易い位置に配され、インダクタ1の鉄損を集中させ易い。また第2コアは保持部材21、すなわち冷却構造を設け易い位置に配されている。
【0030】
なお第1コア10の数は二つに限定されず、三つ以上でもよい。
【0031】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0032】
1 インダクタ 10 第1コア 11 巻線 20 第2コア 21 保持部材 23 接着剤(接合部材)
図1
図2
図3
図4